【実施例1】
【0018】
本発明に係るドレッシング用ダイヤモンド工具についてドレッシング用ダイヤモンド工具1を例に説明する。ドレッシング用ダイヤモンド工具1は、円筒研削装置等において、研削加工等を行う砥石をドレッシング対象物として、円筒研削装置等の所定位置の取り付け、砥石に対して、機能を回復させるドレッシング加工を行う際に用いる工具である。
【0019】
第1 構成
(1)全体構成
ドレッシング用ダイヤモンド工具1の構成について
図1〜
図7を用いて説明する。
図1はドレッシング用ダイヤモンド工具1の斜視図を、
図2はドレッシング用ダイヤモンド工具1の正面図を、
図3はドレッシング用ダイヤモンド工具1の背面図を、
図4はドレッシング用ダイヤモンド工具1の平面図を、
図5はドレッシング用ダイヤモンド工具1の底面図を、
図6はドレッシング用ダイヤモンド工具1の右側面図を、
図7はドレッシング用ダイヤモンド工具1の左側面図を、それぞれ示す。
【0020】
図1に示すように、ドレッシング用ダイヤモンド工具1は、ドレッシング部1D、及び、シャンク部1Sを有している。ドレッシング部1Dは、第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1a、第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部1b、及び、基礎部1cを有している。
【0021】
シャンク部1Sは、円柱形状を有している(
図2、
図3、
図5等参照)。シャンク部1Sは、ドレッシング対象物にドレッシング処理を行う際に、所定のホルダ等に固定される。シャンク部1Sは、
図5に示すように、ドレッシング部1Dの基礎部1cの第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1a、第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部1bが配置される側とは反対側の端面P1cに接続するように配置されている。
【0022】
(2)ドレッシング部1Dの構成
図1から第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部1bを取り除いた状態を
図8に示す。第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aは、粉末冶金による焼結金属により形成されている。第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aは、五角柱形状を有している。第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aは、平行な2面P1a1、P1a2(
図6参照)、傾斜接合面P1a3、ダイヤモンド配置面P1a4、傾斜面P1a5(
図2参照)、及び、2つの端面P1a6、P1a7(
図6、
図7等参照)を有している。平行な2面P1a1、P1a2、傾斜接合面P1a3、ダイヤモンド配置面P1a4、及び、傾斜面P1a5は、矩形状を有している。また、2つの端面P1a6、P1a7は、五角形状を有している。なお、端面P1a6、P1a7の五角形状は、平行な2面P1a1、P1a2、傾斜接合面P1a3、ダイヤモンド配置面P1a4、及び、傾斜面P1a5の短辺によって形成される。
【0023】
平行な2面P1a1、P1a2、傾斜接合面P1a3、ダイヤモンド配置面P1a4、傾斜面P1a5は、端面P1a6、P1a7に対して、垂直に位置する(
図2、
図3等参照)。傾斜接合面P1a3の端面P1a6、P1a7に接合しない2つの側縁のうちの一つに面P1a1が、他の一つにP1a2が、それぞれ連続して、位置する。平行な2面P1a1、P1a2のうち、基礎部1cが位置する側とは反対側に位置する面P1a1に連続して、ダイヤモンド配置面P1a4が位置する。また、ダイヤモンド配置面P1a4に連続して、傾斜面P1a5が位置し、面P1a2に接続する。
【0024】
図8に示すように、第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aは、傾斜接合面P1a3が、シャンク部1Sの軸J1Sに沿うように、基礎部1cに配置される。また、
図2に示すように、第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aは、端面P1a6から端面P1a7に向かって、0度〜25度の間で所定角度だけ、下がりながら傾斜するように配置されている。なお、ドレッシング対象物が所定の軸を中心に回転する場合には、傾斜上流側の端面P1a7が、ドレッシング対象物の回転上流側に位置するように、ドレッシング用ダイヤモンド工具1が配置される(
図11参照)
【0025】
図2に示すように、ダイヤモンド配置面P1a4には、端面P1a6から端面P1a7に向かう方向M3a、つまり、矩形状のダイヤモンド配置面P1a4の長辺に沿う方向に沿って、ドレッシング用ダイヤモンド1dが、複数、所定間隔で直線上に配置されている。ドレッシング用ダイヤモンド1dは、粉末冶金による焼結金属の焼結時に埋め込み固定することによって、第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aに配置される。
【0026】
なお、
図1に示すように、ダイヤモンド配置面P1a4内において、端面P1a6から端面P1a7に向かう方向M3aに垂直に交差する方向M1a、つまり、矩形状のダイヤモンド配置面P1a4の短辺に沿って、ダイヤモンド工具1は移動する。ダイヤモンド工具1の移動については、後述する。
【0027】
ドレッシング用ダイヤモンド1dは、平端面P1dが矩形状の柱形状を有している。なお、ドレッシング用ダイヤモンド1dは、合成ダイヤモンドにより形成され、結晶構造に起因する耐磨耗方向を有している。なお、合成ダイヤモンドは、合成単結晶、合成多結晶、焼結ダイヤモンド等を使用する。合成ダイヤモンドを使用することにより、安定した供給を確保できる。
【0028】
図9に、
図8の第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aの断面を示す。
図9に示すように、ドレッシング用ダイヤモンド1dは、平端面P1dが、ダイヤモンド配置面P1a4内に位置するように、第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aに埋設される。
図10に示すように、ドレッシング用ダイヤモンド1dは、矩形状を有し、各辺が、ダイヤモンド配置面P1a4の長辺、短辺に沿うように配置される。また、ドレッシング用ダイヤモンド1dは、耐摩耗方向A1dが、ダイヤモンド配置面P1a4内において、ダイヤモンド配置面P1a4の長辺に沿う方向M3a、つまり、ドレッシング用ダイヤモンド工具1の移動方向M1aに垂直に交差する方向M3aに沿うように、配置される。これにより、ドレッシング用ダイヤモンド工具1の耐久性を高めることができる。
【0029】
ドレッシング用ダイヤモンド1dは、平端面P1dがダイヤモンド配置面P1a4に含まれるように、第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aに配置されるため、ドレッシング用ダイヤモンド1dの欠損や折損を防止できる。また、ドレッシング用ダイヤモンド1dの平端面P1dとドレッシング対象物との接触関係が変化しないため、ドレッシング精度のばらつきを防止できる。
【0030】
第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部1bについても、第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aと同様である。
【0031】
第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aと第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部1bとは、それぞれの傾斜接合面P1a3、P1b3が合わさるように接合される。つまり、
図6、
図7に示すように、第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aと第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部1bとは、端面形状がV字形状となるように接合される。なお、第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aと第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部1bとは、銀ローを用いて接合される。
【0032】
このとき、ドレッシング用ダイヤモンド1dが配置される各ダイヤモンド配置面P1a4、P1b4のドレッシング対象物が配置される側に向かう法線N1a、N1bが、互いに交差しないように位置する。つまり、各ダイヤモンド配置面P1a4、P1b4が、それぞれ、外側に向かって開いて位置する。これにより、ドレッシング用ダイヤモンド工具1は、ドレッシング対象物に対して制限なく相対的に移動できるため、作業性よく、広い領域をドレッシングできる。
【0033】
基礎部1cは、接合された第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1a、第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部1bの、ドレッシング用ダイヤモンド1dが位置する側とは反対側の端部、つまり、V字状の先端部と接合され、接合された第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1a、第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部1bを支持する。基礎部1cは、鋼材により形成されている。なお、基礎部1cと接合された第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1a、第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部1bとは、銀ローを用いて接合される。
【0034】
第2 ドレッシング用ダイヤモンド工具1の使用方法
ドレッシング用ダイヤモンド工具1の使用方法について、
図11を用いて説明する。ドレッシング用ダイヤモンド工具1は、2つのダイヤモンド配置面P1a4、P1b4を有している。ドレッシング用ダイヤモンド工具1の異なる2面、ダイヤモンド配置面P1a4、P1b4を用いて、ドレッシング対象物の異なる2面をドレッシングできる。このように、複数の面を用いてドレッシング対象物をドレッシングできるので、ドレッシング用ダイヤモンド工具1の耐久性を高めることができる。
【0035】
図11に示すように、ドレッシング対象物Dが、回転軸JDを中心に回転方向Rに向かって回転する砥石である場合、ドレッシング対象物Dを回転させながら、ドレッシング用ダイヤモンド工具1のダイヤモンド配置面P1b4(
図3参照)が、ドレッシング対象物Dのドレッシング面PDbに沿うように、ドレッシング用ダイヤモンド工具1を配置する。
【0036】
そして、ドレッシング用ダイヤモンド工具1をドレッシング対象物Dに対して相対的に移動させながら、例えば、ドレッシング対象物Dの位置が固定されている場合はドレッシング用ダイヤモンド工具1を移動させる。これにより、ドレッシング用ダイヤモンド工具1のダイヤモンド配置面P1b4に配置されているドレッシング用ダイヤモンド1dによって、ドレッシング対象物Dのドレッシング面PDbをドレッシングする。
【0037】
なお、ドレッシング用ダイヤモンド工具1は、
図1、
図3に示すように、ダイヤモンド配置面P1b4内において、端面P1b6から端面P1b7に向かう方向M3bに垂直な方向M1bを、ダイヤモンド配置面P1b4でのドレッシング処理の際におけるドレッシング用ダイヤモンド工具1のドレッシング対象物に対する相対的移動方向として、移動する。
【0038】
図12に示すように、ドレッシング面PDbのドレッシングが終了すると、ドレッシング用ダイヤモンド工具1のダイヤモンド配置面P1a4が、ドレッシング対象物Dのドレッシング面PDaに沿うように、ドレッシング用ダイヤモンド工具1を配置する。そして、相対的移動方向M1bと同様の相対的移動方向M1aに沿って、ドレッシング用ダイヤモンド工具1をドレッシング対象物Dに対して移動させる。これにより、ドレッシング用ダイヤモンド工具1のダイヤモンド配置面P1a4に配置されているドレッシング用ダイヤモンド1dによって、ドレッシング対象物Dのドレッシング面PDaをドレッシングする。
【0039】
このように、ドレッシング用ダイヤモンド工具1は、ドレッシング対象物Dに対して制限なく相対的に移動できるため、作業性よく、広い領域をドレッシングできる。
【0040】
[その他の実施形態]
(1)第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aの端面P1a6、端面P1a7間の傾斜角度:前述の実施例1においては、第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aを、端面P1a6から端面P1a7に向かう方向M3aに向かって傾斜させるとしたが、
図13に示すドレッシング用ダイヤモンド工具2の第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部2aのように、端面P1a6から端面P1a7に向かう方向に、傾斜させないようにしてもよい。ドレッシング用ダイヤモンド工具2は、たとえば、平面研削装置におけるドレッシング処理に用いることができる。なお、
図13に示すドレッシング用ダイヤモンド工具2では、ドレッシング用ダイヤモンド工具1と同様の構成については、同様の符号を付している。
【0041】
(2)第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aと第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部1bの位置関係:前述の実施例1においては、第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aと第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部1bとを、シャンク部1Sの軸J1Sを中心に対象に配置したが、例示のものに限定されない。例えば、
図14に示すドレッシング用ダイヤモンド工具3のように、第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部3aを軸J1S方向に、第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部3bを軸J1Sから所定角度だけ傾けた方向に配置するようにしてもよい。なお、
図14に示すドレッシング用ダイヤモンド工具3では、ドレッシング用ダイヤモンド工具1と同様の構成については、同様の符号を付している。
【0042】
(3)ドレッシング用ダイヤモンド配置部の数:前述の実施例1においては、第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1a、及び、第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部1bの2つのドレッシング用ダイヤモンド配置部を有するとしたが、複数であれば、例示のものに限定されない。例えば、
図15に示すドレッシング用ダイヤモンド工具4のように、第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部4a、第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部4b、第3ドレッシング用ダイヤモンド配置部4cの3つ以上のドレッシング用ダイヤモンド配置部を配置するようにしてもよい。なお、
図15に示すドレッシング用ダイヤモンド工具4では、ドレッシング用ダイヤモンド工具1と同様の構成については、同様の符号を付している。
【0043】
(4)第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aと第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部1bとの接合:前述の実施例1においては、第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aと第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部1bとを、互いの傾斜接合面P1a3、P1b3を接合することにより一体としたが、もともと第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aと第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部1bとを一体として形成するようにしてもよい。
【0044】
(5)ドレッシング用ダイヤモンド1d:前述の実施例1においては、ドレッシング用ダイヤモンド1dを、粉末冶金による焼結金属の焼結時に埋め込みによって固定したが、例えば、ドレッシング用ダイヤモンド1dを焼結金属や電気的に析出させたニッケルメッキ層によって固定する等、他の方法によって固定するようにしてもよい。
【0045】
(6)ドレッシング用ダイヤモンド1dの形状:前述の実施例1においては、ドレッシング用ダイヤモンド1dは、端面矩形状としたが、円形や三角形、五角形以上の多角形であってもよい。
【0046】
(7)ドレッシング用ダイヤモンド1dの数:前述の実施例1においては、第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1a、第2ドレッシング用ダイヤモンド配置部1bのそれぞれにドレッシング用ダイヤモンド1dを3つ配置するとしたが、2つや4つ以上を配置するようにしてもよい。
【0047】
(8)ドレッシング用ダイヤモンド1dの配置方向:前述の実施例1においては、ドレッシング用ダイヤモンド1dの平端面P1dは、第1ドレッシング用ダイヤモンド配置部1aにおいては、矩形状のダイヤモンド配置面P1a4の長辺に沿う方向、つまり、ドレッシング用ダイヤモンド工具1のドレッシング対象物に対する相対的な移動方向に沿う短辺に垂直に交差する方向に沿って、直線上に配置されるとしたが、ドレッシング用ダイヤモンド工具1のドレッシング対象物に対する相対的な移動方向に交差する方向であれば、例示のものに限定されない。例えば、
図16Aに示すドレッシング用ダイヤモンドのダイヤモンド配置面P5a4ように、ドレッシング用ダイヤモンド1dを、ダイヤモンド配置面P5a4内において、ドレッシング用ダイヤモンド工具1のドレッシング対象物に対する相対的な移動方向M1aに沿う短辺に対して所定角度θで交差する方向M3a’に沿って、配置するようにしてもよい。
【0048】
(9)ドレッシング用ダイヤモンド1dの配向方向:前述の実施例1においては、ドレッシング用ダイヤモンド1dは、矩形状を有し、各辺が、ダイヤモンド配置面P1a4の長辺、短辺に沿うように配置されていたが、ドレッシング用ダイヤモンド1dの耐摩耗方向A1dが、ダイヤモンド配置面P1a4内において、ドレッシング用ダイヤモンド工具1移動方向M1aに交差する方向M3aに沿うように、配置されるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、
図16Bに示すドレッシング用ダイヤモンドのように、耐摩耗方向A7dが端面P7dの対角線方向と同一である場合、矩形状のレッシング用ダイヤモンドの端面P7dを、耐摩耗方向A7dがドレッシング用ダイヤモンド工具1移動方向M1aに交差する方向M3aに沿うように、配置するようにしてもよい。
【0049】
(9)シャンク部1Sの形状:前述の実施例1においては、シャンク部1Sは円柱形状としたが、所定のホルダに保持できる形状であれば、つまり、ホルダの形状に合う形状であれば、例示のものに限定されない。例えば、四角柱形状、多角柱形状等であってもよい。また、ドレッシング部1Dの位置決めのために、キー溝等を形成するようにしてもよい。