【課題を解決するための手段】
【0013】
本課題は、請求項1の特徴を備えるスラリー分配装置及び請求項12に係るコンベアラ
インによって解決される。本発明の有利な成果の特徴は、個々の従属請求項に記載されて
いる。
【0014】
すなわち、本発明に係るスラリー分配装置は、少なくとも一つの撹拌装置からスラリー
が供給され、前記スラリーの速度をコンベアベルトの速度に適合し、望まれる幅に亘って
前記スラリーを均一に分配し、且つ、低層の上に分配されたスラリーを送出するように装
備されている。前記スラリー分配装置は、前記スラリーを能動的に移送する。いかなる種
類のホース排出口も前記スラリーの能動的な移送に関与せず、単に前記スラリーの速度を
修正し得る前記スラリーのためのラインを設ける。しかし、前記ホース排出口は、この速
度へのいかなる能動的な影響も有さない。
【0015】
前記スラリー分配装置は、少なくとも一つの撹拌装置からスラリーが供給されるように
装備されている。前記スラリーの供給は、例えば、一つ又はより多くのホースによって行
うことができ、前記ホースは、前記撹拌装置と前記分配装置との間の連結部を与える。前
記スラリーは、例えば、上から該分配装置の上に送出され得る。従って、ホースによる供
給の場合、前記スラリーは、例えば、前記分配装置に一つ又は複数のホースから流出し得
る。好ましくは三つ又は四つの吐出ホースが用いられ、該吐出ホースの直径は、自己清掃
効果のために最適な様式で適合される。前記スラリーの吐出は、初めに前記分配装置の上
に行われるため、吐出速度には決定的な重要性はない。従って、前記ホースの直径の選択
において、既知のシステムの場合よりも、より多くの自由度がある。
【0016】
この発明の範囲内において、前記スラリーのための前記分配装置は、前記送出方向にお
いて前記スラリーを能動的に移送する装置を示す。例えば、ローラーコンベア又はベルト
装置又はこれら二つの組合せを含んでいてもよい。前記分配装置を通すことによる前記ス
ラリーの能動的な移送は、前記低層又は製造される石膏帯の最後に堆積された層に供給ラ
イン又は当該層の上に連通された出口開口から前記スラリーを直接排出することとは区別
される。前記分配装置は、前記撹拌機からの前記スラリー供給ラインと製造される石膏帯
の上に適用する所との間に配置される追加的な装置である。
【0017】
乱れた状態で流出する前記スラリーが落ち着き、搬送装置の速度に適合され、望まれる
幅に亘って均一に分配されると、前記スラリーは前記低層の上に送出される。前記低層は
、例えば、コンベアベルトのような搬送装置であり得る。しかし、前記低層は、石膏ボー
ド用のボード用原紙(ボード用原紙網)若しくは不織布又はこれに類する外装材であって
もよい。さらに、前記低層は、一つ又はより多くの石膏層がすでに注がれている外装材で
あってもよい。簡潔にするために、前記低層への前記スラリーの送出については後述する
こととする。
【0018】
本発明の好ましい実施形態として、前記スラリー分配装置は、互いに平行に配置されて
いる少なくとも二つの、好ましくは複数のローラーを備え、前記ローラーが、共通の平面
に配置され、該ローラーの縦軸の周りを回転自在に設置されている。前記複数のローラー
の平行な軸は、前記スラリーの送出方向に対して実質的に垂直になるように配置されてい
る。実質的に垂直な配置とは、前記複数のローラーを回転することによって低層の上に前
記スラリーを搬送することができる配置を意味するものと理解される。このように、本発
明の好ましい実施形態は、前記複数のローラーが前記送出方向に回転するように規定され
る。しかし、反対の方向に回転することも個々のローラーにとって有利であり得る。
【0019】
特に好ましくは、前記複数のローラーは、回転中に円筒形のローラー本体の外側面が互
いにすれ違う(slide past)ように、物理的に互いに接近している。個々のローラーの間
の間隔は、好ましくは0.02mm未満であり、特に好ましくは、0.01mm〜0.0
05mmの範囲を含む。
【0020】
互いに横に並んだ前記複数のローラーが最も接近している配置は、二つの有利な効果を
有する。一方では、実質的に隙間がない配置は、スラリーが途切れることを防ぎ、又は、
下方へ滴ることを防止する。他方では、接近している配置は、ローラーの自己清掃をもた
らす結果、ローラー上の前記スラリーの付着や堆積を効果的に防ぎ、又は、少なくとも大
幅に軽減する。
【0021】
本発明の他の実施形態によれば、前記ローラーは、間隔を開けて配置されてもよい。個
々のローラーの間の最大の間隔は、前記スラリーの粘度及び前記分配装置上の搬送速度に
よって決定される。前記スラリーの粘度が高くなり、且つ/又は、前記搬送速度が大きく
なるほど、前記装置を通して滴る前記スラリーのない、選択され得る間隔は大きくなる。
【0022】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、前記複数のローラーは、一様の直径を有する
。同じ大きさ及び形状の前記複数のローラーは、それぞれが特殊なローラーであるよりも
効率良く製造され得る。
【0023】
前記複数のローラーが互いに直接接触するように配置されている場合、スラリーの流出
に対する前記分配装置の耐久性及び良好な気密性のために、前記ローラーができるだけ完
全な同心円を回転する性質を有することが不可欠となる。完全な同心円を回転する性質は
、前記複数のローラーが一様でない表面によって互いに損傷されないため、前記複数のロ
ーラーの消耗の程度をより低下させる。特に好ましくは、前記複数のローラーの同心度公
差が、0.01mm未満であり、より好ましくは、0.005mm未満である。
【0024】
好ましい実施形態は、搬送のために用いられる前述のローラーに加えて、前記送出方向
において少なくとも一つの最終ローラー(吐出ローラー)を含む。前記吐出ローラーは、
他のローラーよりも小さい直径を有していてもよい。特に好ましくは、このローラーは、
前記送出方向と逆の方向に回転する。
【0025】
この最終ローラーは、好ましくは、他の複数のローラーの面の下に配置されている。前
記最終ローラーは、例えば、バネによって引っ張られ得、それによって、前記ローラーに
消耗があるときでも、前記ローラーコンベアの最後から二番目のローラーを圧迫する。一
方で、前記ローラーコンベアの最後から二番目のローラーに対する前記最終ローラーの圧
迫は、最後から二番目のローラーに対する摩擦を通した力の移行によって前記最終ローラ
ーを駆動させることができるため、このローラーはそれ自体の駆動を必要としない。この
他、前記ローラーコンベアの他の複数のローラーの平面にないこの吐出ローラーの駆動は
、別々に行う必要がある。さらに、前記最終ローラーの自己清掃も確保される。
【0026】
このような配置は、前記スラリーが、段差越しに自由落下高さが低減されるように前記
低層に流れるという有利な点も有する。このように、前記スラリーは、著しく衝撃が低減
されて前記低層に衝突することによって、フラッシング効果が完全に回避され、又は、少
なくとも大幅に小さくされ得る。このローラーの平均直径は、好ましくは、5mmと50
mmとの間にある。
【0027】
特に好ましくは、前記最終ローラーは、他の複数のローラーよりも小さい直径を有する
。前記ローラーの軸が前記低層の表面からの小さい間隔に配置され得るため、前記複数の
ローラーの表面から前記低層の表面上への前記スラリーのより小さい落下高さが達成され
得る。
【0028】
単なる一つだけの吐出ローラーに代えて、複数の吐出ローラーが付与されてもよい。該
複数の吐出ローラーは、例えば傾斜した面を形成することによって前記スラリーの吐出高
さを連続的に低減する。
【0029】
前記ローラーコンベアは、前記コンベアライン上に製造される石膏ボードと少なくとも
ほとんど同じ幅を有する。有利には、前記ローラーコンベアは、製造される石膏ボードよ
りも幅が広い。従って、有利には、1200mm〜1250mmの幅を有する石膏ボード
のためのローラーコンベアは、1200mm〜1500mmの幅を有し得る。製造される
ボードの幅が、例えば450mm〜900mmのようにより小さい場合、任意に付与され
る側部遮蔽プレートによって適切に調節され、言い換えれば、該側部遮蔽プレートを(搬
送方向に対して平行に)中央部に向かって動かし得る。
【0030】
搬送方向における前記ローラーコンベアの長さは、とりわけ製造設備のベルト速度に依
存し、他のものとは独立している。ベルト速度が50m/分以下の場合、典型的なローラ
ーコンベアの長さは、好ましくは、少なくとも900mmになる。より速いベルト速度を
有する製造設備では、通常、前記ローラーコンベアはより長く設定される必要がある。前
記ローラーコンベアの長さは、好ましくは、750mmと1500mmとの間にある。原
則、前記分配装置は、乱れた状態で流れる前記スラリーを安定させて、スラリーを望まれ
る幅に亘って分配させることを可能にする長さを有するべきである。
【0031】
前記ローラーは、少なくとも一つの制御可能な駆動部によって駆動され且つ制御され得
る。例えば、回転速度が制御されることによって、前記低層の上に送出される単位時間当
たりのスラリーの量が制御され得る。一つよりも多い制御可能な駆動部の使用は、異なる
ローラー群が互いに独立して制御され得るために有利である。従って、例えば、ひとつお
きのローラーが駆動方向とは反対に回転され得、又は、前記ローラーコンベアの末端部の
ローラー群が、前記ローラーコンベアの開始部のローラー群よりも速く回転し得る。
【0032】
円筒形の逆流が、前記複数のローラーの間のガセット(gusset)に生じ、該逆流は、前
記分配装置上の前記スラリーの横方向への分配をもたらす。これは、例えば一つ又はより
多くのホースによる前記スラリー供給の比較的狭い排出範囲が、前記逆流及びそれに付随
した横方向への分配によって拡大されるという利点を有する。同時に、前記搬送方向にお
ける前記スラリーが動く速度の低下がある。一つのローラーの後ろに配置されるローラー
が多いほど、上記二つの効果がより顕著になる。
【0033】
これらの効果は、本発明の範囲内において使用される。低下した速度、及び、前記スラ
リー分配装置の幅に亘る前記スラリーの均一な分配は、フラッシング効果がほとんど生じ
ず又は全く生じない点で、特別な技術的工夫なく前記低層の幅全体に亘る均一なスラリー
の供給を可能にし、前記スラリーの供給が堅牢になり、優れた結果物を製造することがで
きる。先行技術で示されるような、複雑な排出口の漏斗のような技術は必要とされない。
前記分配装置は開放して運転され得ることによって、保守作業のために簡単にアクセスで
きる。自己清掃効果は、保守作業の頻度及び期間を最小限にする。
【0034】
前記スラリー分配装置は、好ましくは、共通の平面に少なくとも三つのローラーを備え
る。前記分配装置上の前記スラリーの均一な横方向への分配を達成するためには、10〜
20のローラーの使用が有利であることが示されている。前記スラリーの粘度及び前記分
配装置上の石膏帯の速度によっては、より多くの又はより少ないローラーの使用が有利で
あり得る。14〜18のローラーの使用が特に好ましく、通常の粘度を有するスラリーは
この数のローラーによって良好に分配される。
【0035】
試験において、10mm〜100mmの直径を備えるローラーが、好結果であることが
証明されている。ローラーの直径は、30mmと80mmとの間の範囲が好ましい。
【0036】
前記分配装置は、部分的に又は全体的にプロセスベルトによって構成されていてもよい
。特に好ましくは、ローラーコンベアが、前記分配装置におけるプロセスベルトに結合さ
れていてもよい。
【0037】
前記分配装置におけるプロセスベルトの使用は、前記撹拌設備からのスラリーを前記分
配装置に供給するホースの末端部が、走行ベルトの上に設置され得るため、有利である。
前記ローラーコンベアに対して、前記スラリーは前記ローラーコンベアの最初のローラー
に衝突せずに前記プロセスベルト上に流れる。従って、スラリーが前記分配装置上に堆積
するときのしぶきが大幅に低減される。さらに、ベルトに衝突するときに、石膏スラリー
の流れは、すでに相対的に著しく遅くなっている。
【0038】
前記コンベアベルトは、例えば、熱可塑性ポリウレタン又はシリコンのような被覆材が
付与されていてもよい。これによって、固まった石膏の付着を低減し、前記プロセスベル
トの保守に対する影響を低減する。
【0039】
前記プロセスベルトの被覆に加えて又は代わりに、好ましくはローラーコンベアにおけ
る隣り合うローラーに0.01mm未満、小さい隙間だけが、プロセスベルトの偏向点に
おいて付与されていてもよい。この小さい間隔は、前記プロセスベルトへの石膏の付着を
、前記ローラーコンベアの隣り合うローラーから剥がすことを可能にする。従ってここで
も、簡単な方法によって前記分配装置の自己清掃を達成することが可能である。自己清掃
の効果は、前記スラリーの送出速度から概ね独立している。
【0040】
このように、本発明の好ましい実施形態は、プロセスベルト及びローラーコンベアの組
合せを提供し、前記プロセスベルトは、好ましくは、前記ローラーコンベアの上流に配置
されている。
【0041】
前記コンベアベルト及び前記ローラーコンベアは、有利には、二つの単位の独立した制
御を可能にするために、別々に制御可能な駆動単位によって駆動されてもよい。
【0042】
プロセスベルト及びローラーコンベアを含む併せた分配装置の大きさは、上記のローラ
ーコンベアに関係して設定され得る。
【0043】
前記分配装置がプロセスベルトのみを含む場合(前記分配装置において下流のローラー
コンベアなし)、前記低層の上への前記スラリーの送出は、剥離部の補助によって又はプ
ロセスベルトの先鋭形状の末端部によって行われてもよい。
【0044】
上記のように、本発明に係るスラリー分配装置は、連続プロセスにおける石膏ボードの
製造に有利に用いられ得る。
【0045】
本発明は、さらに、石膏ボードを製造するコンベアラインに関し、該コンベアラインは
、搬送装置、少なくとも一つのスラリーを撹拌するための少なくとも一つの撹拌装置、及
び、少なくとも一つのスラリー分配装置を備える。前記スラリー分配装置は、前記スラリ
ーの供給装置と前記スラリーの送出との間に配置される。前記スラリー分配装置は、前記
撹拌装置から供給される前記スラリーを低層の上に実質的に均一に送出するように装備さ
れ、前記低層は前記搬送装置それ自体又は前記搬送装置上にある好ましくは連続的に供給
される外装材である。さらに、前記スラリー分配装置は、前記スラリーを能動的に移送す
るように装備されている。
【0046】
前記スラリーが前記低層に衝突するときの前記スラリーの衝撃をできるだけ小さくなる
ように維持することによって流出の効果を最小にするためには、前記スラリーの吐出高さ
は5cm未満であり、4cm未満であることが好ましい。吐出高さは、前記最終ローラー
の最高点と前記低層の表面との間の高さの差を意味するものと理解される。この場合、前
記低層は、すでに堆積された層、特に石膏の層も含み得る。この場合の吐出高さは、前記
最終ローラーの最高点と最後に堆積された前記低層の表面との間の差を示す。原則として
、吐出高さは、できるだけ小さくなるように選択されるべきである。
【0047】
本発明の特に好ましい実施形態は、石膏ボードを製造するためのコンベアラインが、複
数のスラリー分配装置を備え、該複数のスラリー分配装置は前記コンベアラインにおいて
順々に配置されている。前記分配装置は、前記低層に、同一の又は異なった構成のスラリ
ーを送出し得ることによって、前記石膏ボードの多層構造を可能にする。フラッシング効
果が低減され又は生じない有利性は、特に、本発明のこの実施形態によって確実に有益と
なる。下にある複数の層が広範囲に及んで固まることを全く必要とせず、複数の層は問題
なく互いの上に堆積され得る。特許請求の範囲に記載された装置によれば、前記スラリー
は、ベルトの動く速度とほとんど同じ速度で供給され得る。従って、送出方向における前
記スラリーの相対速度は、(技術的に可能な範囲において)ほとんどゼロに等しくなる。
【0048】
前記分配装置は、同種又は異種であってもよい。例えば、最初の分配装置が単にローラ
ーコンベアだけを備え、一方で、他の分配装置がプロセスベルト及びローラーコンベアの
組合せであってもよい。もちろん他の組合せも可能である。
【0049】
ここに示した石膏ボードを製造するためのスラリー分配装置は、連続プロセスにおいて
有利に使用される。
【0050】
以下、図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。同じ参照符号は同様の又は
類する特徴を示す。