【解決手段】特定のアミノ酸配列からなるvhCDR1、vhCDR2、vhCDR3、vlCDR1、vlCDR2、および、vlCDR3、を含有する配列を有する抗CD3可変領域を含有する組成物。
配列番号411を有するvhCDR1、配列番号413を有するvhCDR2、配列番号416を有するvhCDR3、配列番号420を有するvlCDR1、配列番号425を有するvlCDR2、および、配列番号430を有するvlCDR3、を含有する配列を有する抗CD3可変領域を含有する組成物。
配列T−Y−A−M−Xaa1を有するvhCDR1(ここで、Xaa1はN、S、またはH(配列番号435))、配列R−I−R−S−K−Xaa1−N−Xaa2−Y−A−T−Xaa3−Y−Y−A−Xaa4−S−V−K−Gを有するvhCDR2(ここで、Xaa1はY、またはAであり、Xaa2はN、またはSであり、Xaa3はY、またはAであり、および、Xaa4はD、またはA(配列番号436))、配列H−G−N−F−G−Xaa1−S−Y−V−S−W−F−Xaa2−Yを有するvhCDR3(ここでXaa1はN、D、またはQであり、および、Xaa2はA、またはD(配列番号437))、配列Xaa1−S−S−T−G−A−V−T−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Y−A−Nを有するvlCDR1(ここで、Xaa1はG、R、またはKであり、Xaa2はT、またはSであり、Xaa3はS、またはGであり、および、Xaa4は、N、またはH(配列番号438))、配列Xaa1−T−N−Xaa2−R−A−Xaa3を有するvlCDR2(ここで、Xaa1はG、またはDであり、Xaa2は、K、またはNであり、および、Xaa3はP、またはS(配列番号439))および、配列Xaa1−L−W−Y−S−N−Xaa2−W−Vを有するvlCDR3(ここで、Xaa1はA、またはLであり、および、Xaa2は、L、またはH(配列番号440))、を含有する配列を有する抗CD3可変領域を含有する組成物。
前記抗CD3可変領域が、配列番号411を有するvhCDR1、配列番号413を有するvhCDR2、配列番号417を有するvhCDR3、配列番号420を有するvlCDR1、配列番号425を有するvlCDR2、および、配列番号430を有するvlCDR3、を含有する配列を有する、請求項3に記載の組成物。
前記組成物が、可変重鎖CDRを含有する第一のアミノ酸配列、および可変軽鎖CDRを含有する第二のアミノ酸配列、を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
前記vhCDR1は配列番号411であり、前記vhCDR2は配列番号413であり、前記vhCDR3は配列番号417であり、前記vlCDR1は配列番号420であり、前記vlCDR2は配列番号425、および、前記vlCDR3は配列番号430である、請求項22に記載の異種二量体抗体。
前記抗CD3可変領域は、配列番号411を有するvhCDR1、配列番号413を有するvhCDR2、配列番号417を有するvhCDR3、配列番号420を有するvlCDR1、配列番号425を有するvlCDR2、および、配列番号430を有するvlCDR3、を含有する配列を有する、請求項24に記載の組成物。
前記組成物が、可変重鎖CDRを含有する第一のアミノ酸配列、および可変軽鎖CDRを含有する第二のアミノ酸配列、を含有する、請求項22〜25のいずれか1項に記載の組成物。
前記第一の荷電scFvリンカーが、配列番号443〜451からなる群から選択され、および、前記第二の荷電scFvリンカーが、配列番号453〜459からなる群から選択される、請求項75に記載の異種二量体抗体。
【発明を実施するための形態】
【0044】
USSN61/593,846の
図1〜76、および明細書中のその関連説明文および考察は、参照により本明細書に援用される。
【0045】
USSN61/778,157およびUSSN61/818,410は、その全体、特にその中の図および説明文において、参照により具体的に、および完全に援用される。
【0046】
I.
概要
本発明は、二特異性抗体(または、以下に検討されるように、三特異性もしくは四特異性抗体もまた作製される)をもたらすための新規構築物を目的としたものである。抗体技術に関し現在ある課題は、2(またはそれ以上)の異なる抗原に同時に結合し、それにより、概して、異なる抗原を近接させることが可能となり、結果、新たな機能性および新たな療法が可能となる、「二特異性(および/または多特異性)」の抗体に関する要求である。一般的に、これらの抗体は、重鎖および軽鎖に対する遺伝子の各々を宿主細胞へと導入することにより作製される。これにより、通常、所望される異種二量体(A−B)、ならびに2つの同種二量体(A−AおよびB−B)が形成される。しかしながら、多特異性抗体形成の主な障害は、同種二量体抗体から異種二量体抗体を精製すること、および/または、同種二量体の形成よりも異種二量体の形成を多くさせることの困難性にある。
【0047】
本発明は、概して、たとえばいくつかの方法で抗体を共捕捉することができる抗体等の、異種二量体タンパク質の作製を目的とするものであり、異種二量体形成を促進し、および/または、同種二量体よりも異種二量体の精製を容易とすることができる、各鎖で異なる定常領域におけるアミノ酸変異に依っている。
【0048】
ゆえに、本発明は、少なくとも第一および第二の抗原を共捕捉する新規イムノグロブリン組成物を目的とする。本発明の第一および第二の抗原は、本明細書において、それぞれ抗原1および抗原2と呼称される。抗体の1つの重鎖は、一本鎖Fv(以下に定義される「scFv」)を含有し、他方の重鎖は可変重鎖および軽鎖を含有する「通常の」FAb形式である。この構造は、一部の場合において、本明細書において、「三重F」形式(scFv−FAb−Fc)または、栓抜きに類似した起伏のある見た目ゆえに、「栓抜き型」形式と呼称される(図を参照のこと)。2つの鎖は、以下に詳述される異種二量体抗体の形成を促進する、定常領域(たとえば、Fcドメインおよび/またはヒンジ領域)におけるアミノ酸変異の使用により接合される。
【0049】
本発明の「三重F」形式にはいくつかの明白な利点がある。当分野において公知であるが、2つのscFv構築物による抗体アナログは多くの場合、安定性と凝集の問題を抱えているが、それは、「通常の」重鎖および軽鎖の対を加えることにより本発明において解決することができる。さらに、2つの重鎖および2つの軽鎖による形式とは対照的に、重鎖と軽鎖の不完全な対に伴う問題が生じない(たとえば、軽鎖2と重鎖1の対形成等)。
【0050】
本発明の異種二量体を形成するために用いることができる多くのメカニズムが存在する。さらに、当分野に公知であり、以下に詳述されるように、これらメカニズムを組み合わせ、確実に高度な異種二量体化を行うことができる。
【0051】
1つのメカニズムは、当分野において一般的に「knobs and holes(KIH)」と呼称され、または、一部の場合においては、異種二量体の形成を多くし、同種二量体形成を少なくする立体構造的影響を与えるアミノ酸操作を指す、本明細書において、「ねじれ」変異の呼称もまた任意選択的に用いることができる;これは、一部の場合において、「knobs and holes」と呼称される(USSN 61/596,846、Ridgway et al., Protein Engineering 9(7):617 (1996); Atwell et al., J. Mol. Biol. 1997 270:26;米国特許第8,216,805号(それらはすべて、参照により本明細書にその全体で援用される)に開示される)。図面は、「knobs and holes」に依る、多くの「モノマーA−モノマーB」の対を特定している。さらに、Merchant et al., Nature Biotech. 16:677 (1998)に開示されるように、これら「knobs and holes」の変異は、ジスルフィド結合と組み合わせて、構造を異種二量体へとねじれさせることができる。
【0052】
異種二量体形成の作製に使用することができる追加のメカニズムは、一部の場合において、「静電的ステアリング」と呼称されるものである(Gunasekaran et al., J. Biol. Chem. 285(25):19637 (2010)(参照によりその全体が本明細書に援用される)に開示される)。これは、一部の場合において、本明細書において「電荷対」と呼称される。この実施態様においては、静電学を用いて、構造を異種二量体形成へとねじれさせる。当分野において公知であるが、これらはまた、pIに対する効果を有してもよく、ゆえに精製に対しても効果があり、一部の場合においては、pI変異ともみなされることがある。しかしながら、これらは異種二量体化を推し進めるために作製されたものであり、精製のためのツールとして用いられたものではないため、それらは、「立体構造変異」として分類されている。これらには、限定されないが、D221R/P228R/K409Rと対形成したD221E/P228E/L368E(たとえば、これらは、モノマー対応セットである)および、C220R/E224R/P228R/K409Rと対形成したC220E/P228E/368Eが挙げられる。(220の変異は、システインを除去するためのものであり、重鎖と軽鎖のジスルフィド構造に必要とはされていないことに注意されたい(以下に詳述される))。
【0053】
本発明において、異種二量体タンパク質の精製を容易にすることができるいくつかの基本的なメカニズムが存在する;1つはpI変異の使用に依っているものであり、たとえば、各モノマーは異なるpIを有し、それによって、A−A、A−BおよびB−Bの二量体タンパク質の等電性の精製が可能となる。あるいは、「三重F」の形式により、サイズに基づいた分離も可能となる。以下にさらに概説するように、構造を、同種二量体よりも異種二量体に「ねじれ」させることも可能である(以下に一般的に概説)。ゆえに、立体構造異種二量体変異と、pIまたは電荷対変異の組み合わせは、本発明において、特定の用途が見出される。さらに、以下にさらに概説するように、三重F形式のscFvモノマーは、荷電されたscFvリンカー(正または負のいずれか)を含有することができ、それにより、精製目的のためのさらなるpIの強化がもたらされる。当業者には公知であるが、一部の三重Fの形式は、荷電されたscFvリンカーに有用であり、さらなるpIの調節は無いが、本発明は、荷電scFvリンカーを有するねじれ変異(および、Fc、FcRnおよびKO変異の組み合わせ)の使用も同様に提示するものである。
【0054】
異種二量体三重F形式を作製するための分離メカニズムとしてpIを利用する本発明において、アミノ酸変異を、モノマーポリペプチドの1つまたは両方に導入しても良く;すなわち、モノマーのうちの1つ(本明細書において、単純に「モノマーA」と呼称される)のpIは、モノマーBとは別に操作されても良く、または、モノマーAとBの両方が変更されても良い(モノマーAのpIが増加し、モノマーBのpIが減少する)。以下にさらに概説されるように、モノマーのいずれか、または両方のpIの変化は、荷電残基の除去または追加によりなされても良く(たとえば、中性のアミノ酸が、正荷電アミノ酸残基または負荷電アミノ酸残基により置換される(たとえば、グリシンがグルタミン酸へ))、正または負の荷電残基を反対の荷電へと変更することによりなされても良く(アスパラギン酸をリシンへ)、または、荷電残基を中性残基へと変更することによりなされても良い(たとえば、荷電の消失については、リシンをセリンへ)。多くのこれらの変異を、図に示す。
【0055】
従って、本発明の本実施態様において、モノマーの内の少なくとも1つのpIにおいて十分な変化がもたらされ、それにより、異種二量体が同種二量体から分離される。当業者に公知であり、以下にさらに検討されることであるが、これは、「野生型」の重鎖定常領域および、そのpIが増加または減少するよう操作された可変領域(wtA−+B、または、wtA−−B)、または、1つの領域を増加させ、他の領域を減少させるために操作された可変領域(A+−B−、またはA−B+)を用いることにより為すことができる。この検討において、どのモノマーがscFvを含有し、どのモノマーがFabを含有するかは問題ではない。
【0056】
ゆえに、概して、本発明の構成要素は、アミノ酸置換(「pI変異」または「pI置換」)をモノマーのうちの1つまたは両方へと組み込むことによる、「pI異種二量体」(タンパク質が抗体である場合、それらは「pI抗体」と呼称される)を形成するための二量体タンパク質のモノマーのうちの少なくとも1つ(もし両方でなければ)の等電点(pI)を改変することを目的とした抗体の定常領域におけるアミノ酸変異である。本明細書において示されるように、2つの同種二量体からの異種二量体の分離は、もし2つのモノマーのpIがわずか0.1pH単位(0.2、0.2,0.4または0.5以上であれば、本発明において用いられる)で異なっていれば、為すことができる。
【0057】
当業者に認識されているように、分離を成功させるための各モノマーまたは両方のモノマーに含有されるpI変異の数は、対象のscFvおよびFabの開始pIに部分的には依っている。すなわち、いずれのモノマーを操作するべきか、またはその「方向」(たとえば、より正か、より負か)を決定するために、2つの標的抗原のFv配列を算出し、それらから決定を行われる。当分野で公知であるように、異なるFvは、異なる開始pIを有しており、それを本発明では活用する。概して、本明細書に記述されるように、pIは、各モノマーの総pI差が、少なくとも約0.1log(0.2〜0.5が好ましい)となるよう操作される。
【0058】
さらに、当業者に認識され、本明細書に記述されるように、異種二量体は、サイズに基づいて同種二量体から分離されることもできる。たとえば、
図11に示されるように、2つのscFvを有する異種二量体(
図1A)は、「三重F」形式(
図1B)および、二特異性mAb(
図1C)により分離されることができる。これはさらに、追加の抗原結合部位が活用されている、より多価の場合において活用することができる。たとえば、追加的に示されているように、1つのモノマーは2つのFab断片を有し、および、他方は1つのscFvを有し、それによりサイズが異なり、ゆえに、分子量が異なっている。
【0059】
さらに、当分野で認識され、本明細書に記述されるように、本明細書に概要される形式を拡張し、三重特異的抗体および四重特異的抗体を同様に作製することができる。この実施態様において、それら一部の変異が図に示されており、一部の抗原は二価性に結合されることが可能であることが認識されるであろう(たとえば、1つの抗原に対する2つの抗原結合部位、たとえば、AおよびBは、典型的な二価結合の一部であり、ならびに、CおよびDは、任意選択的に存在しても良く、ならびに、任意選択的に同一または異なっていても良い)。認識されるように、FabおよびscFvの任意の組み合わせを用いて、所望される結果および組み合わせを得ても良い。
【0060】
pI変異を用いて異種二量体化を行う場合において、重鎖(複数含む)の定常領域(複数含む)を用いることによる、抗体を含む多特異的タンパク質を設計および精製するための、よりモジュール的な方法が提示される。ゆえに、一部の実施態様において、異種二量体化変異(ねじれおよび精製異種二量体化変異を含む)は可変領域内には含まれておらず、そのように、各個々の抗体が操作されなければならない。さらに、一部の実施態様において、pI変異からもたらされる免疫原性の可能性は、異なるIgGアイソタイプ由来のpI変異を導入することにより減少され、それによって、pIは、明らかな免疫原性が導入されることなく、変化する。ゆえに、解決すべき追加の課題は、ヒト配列が多く含まれている低pIの定常ドメインの解明であり、たとえば、任意の特定の位置での非ヒト残基の最小化または忌避である。
【0061】
1つの実施態様において、異種二量体抗体により、scFvを用いた1つの抗原の一価性の捕捉と、Fabを用いた他の抗原の一価性の捕捉がもたらされる。以下に概説されるように、この形式は変化しても良い;一部の実施態様において、3つの抗原の一価性の捕捉、1つの抗原の二価性の捕捉、および、第二の抗原の一価性の捕捉等がある(たとえば、AおよびCは同じ抗原に対するものであり、Bは異なる抗原に対するものである)
【0062】
pI操作で得られる別の利点は、血清半減期の延長と、FcRn結合の増加である。すなわち、USSN13/194,904(その全体で参照により援用される)に記述されるように、抗体定常ドメイン(抗体およびFc融合物に存在するものを含む)のpIを低下させることにより、in vivoの血清滞留を延長することができる。血清半減期を増加させるためのこれらpI変異により、精製のためのpI変化もまた促進される。
【0063】
可変重鎖定常ドメインのすべて、または一部に加え、モノマーのうちの1つまたは両方が1または2の融合パートナーを含有しても良く、それにより、異種二量体は多価性のタンパク質を形成する。USSN13/648,951の
図64(参照により、付随する説明書きとともに本明細書に援用される)に概要があるように、融合パートナーはA、B、CおよびDとして表され、すべての組み合わせが可能である。概して、A、B、CおよびDは、異種二量体が少なくとも二特異性、または追加のタンパク質と相互作用する性質において二価性であるように選択される。本発明の「三重F」形式の文脈において、通常、AおよびBは、scFvおよびFvであり(認識されるように、いずれかモノマーがscFvを含有し、他方がFv/Fabを含有しても良い)、次いで、任意選択的に、1または2の追加の融合パートナーである。
【0064】
さらに、本明細書に概要されるように、追加の機能性を付加するために追加のアミノ酸変異を本発明の二特異性抗体に導入しても良い。たとえば、ADCCまたはCDCの増強を促進するためにFc領域内のアミノ酸変化を(1つのモノマーまたは両方のモノマーのいずれかに)追加しても良く(たとえば、Fcγ受容体に対する結合を改変)、追加の毒素および薬物(たとえば、ADCのための)の産生を可能とするために、または産生量を増加させるために追加しても良く、ならびに、FcRnに対する結合を増加させるためおよび/または得られた分子の血清半減期を増加させるために追加しても良い。本明細書にさらに詳述され、および当業者に認識されているように、本明細書に概要されるいずれかの変異および全ての変異は、任意選択的に、および独立して、他の変異と組み合わされても良い。
【0065】
同様に、機能性変異の他のカテゴリーは、「Fcγ欠落変異」または「Fcノックアウト(FcKOまたはKO)変異」である。これらの実施態様においては、一部の治療応用を目的とし、Fcドメインの、1以上またはすべてのFcγ受容体(たとえば、FcγR1、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa等)に対する通常の結合を減少させ、または除去し、追加作用メカニズムを回避することが望ましい。すなわち、たとえば多くの実施態様において、特にCD3および他の腫瘍抗原(たとえば、CD19、her2/neu等)に一価性に結合する二特異性抗体の使用において、ADCC活性を排除または有意に減少させるために、FcγRIIIa結合を除去することが通常望ましい。
【0066】
さらに、本発明により、新規ヒト化抗CD3配列(CDRのセット、全長可変軽鎖および重鎖、ならびに関連scFv(任意選択的に荷電scFvリンカーを含有しても良い)を含む)が提示される。これら最適化配列は、他の抗体の形式においても用いることができる。
【0067】
従って、本発明は、多価抗体を作製するための新規構築物を提示するものである。
【0068】
II.定義
本用途をより完全に理解するために、いくつかの定義を以下に説明する。そのような定義は、文法的に均等であるものを含有することが意図される。
【0069】
本明細書において、「欠落」とは、活性の減少または除去を意味する。ゆえに、たとえば、「FcγR結合の欠落」とは、Fc領域のアミノ酸変異が、特定の変異を含有していないFc領域と比較して、50%の開始結合未満を有することを意味し、好ましくは70〜80〜90〜95〜98%未満の活性消失であり、通常、Biacoreアッセイにおいて検出可能な結合レベルを下回る活性である。欠落変異(また一部の場合において、本明細書において「FcγR欠落変異」、「Fc欠落変異」、「Fcノックアウト」(「FcKO」)、または「ノックアウト」(KO)変異と呼称される)が用いられる場合、特定の用途の変異は、
図35に示されるものである。
【0070】
本明細書において、「ADCC」または「抗体依存性細胞介在性細胞障害」とは、細胞介在性の反応を意味し、ここで、FcγRを発現する非特異的細胞障害正細胞は、標的細胞上に結合された抗体を認識し、次いで、当該標的細胞の溶解をもたらすものである。ADCCは、FcγRIIIaへの結合と関連しており、FcγRIIIaへの結合の増加により、ADCC活性の増加がもたらされる。
【0071】
本明細書において、「ADCP」または抗体依存性細胞介在性ファゴサイトーシスとは、細胞介在性反応を意味し、ここで、FcγRを発現する非特異的細胞傷害性細胞は、標的細胞上に結合された抗体を認識し、次いで、標的細胞のファゴサイトーシスをもたらすものである。
【0072】
本明細書において、「修飾」とは、ポリペプチド配列におけるアミノ酸置換、挿入、および/または、欠失を意味し、または、タンパク質に化学的に連結された部分への改変を意味する。たとえば、修飾は、タンパク質に付着した改変炭水化物または改変PEG構造であっても良い。本明細書において、「アミノ酸置換」とは、ポリペプチド配列におけるアミノ酸置換、挿入、および/または、欠失を意味する。明確性のために、他で定義されない限り、アミノ酸修飾は常に、DNAによりコードされるアミノ酸(たとえば、DNAおよびRNAにコドンを有する20のアミノ酸)に対するものである。
【0073】
本明細書において、「アミノ酸置換」または「置換」とは、元のポリペプチド配列中の特定の位置で、異なるアミノ酸とアミノ酸を置換することを意味する。特に、一部の実施態様において、置換は、当該生物体内で、または任意の生物内のいずれかで自然発生しない特定の位置の非天然型のアミノ酸に対するものである。たとえば、置換E272Yとは、変異ポリペプチドを指し、Fc変異の場合においては、272位のグルタミン酸がチロシンで置換されている。明確性のために、核酸コード配列が変更されているが、開始アミノ酸(たとえば、宿主生物体の発現レベルを上げるための、CGG(アルギニンをコードする)からCGA(まだアルギニンをコードする)への交換)は変更しないよう操作されているタンパク質は、「アミノ酸置換」ではない。すなわち、同じタンパク質をコードする新しい遺伝子の創出であるにもかかわらず、もし当該タンパク質が開始される特定の位置で同じアミノ酸を有している場合、それはアミノ酸置換ではない。
【0074】
本明細書において、「アミノ酸挿入」または「挿入」とは、元のポリペプチド配列の特定の位置にアミノ酸配列を追加することを意味する。たとえば、−233Eまたは233Eとは、233位の後、234位の前にグルタミン酸を挿入することを意味する。さらに、−233AEDまたはA233ADEとは、233位の後、234位の前にAlaAspGluを挿入することを意味する。
【0075】
本明細書において、「アミノ酸欠失」または「欠失」とは、元のポリペプチド配列の特定の位置でアミノ酸を除去することを意味する。たとえば、E233−またはE233#またはE233delとは、233位でグルタミン酸を欠失することを意味する。さらに、EDA233−またはEDA233#とは、233位で始まるGluAspAlaの配列が欠失することを意味する。同様に、一部の異種二量体変異は、「K447del」を含有し、447位でリシンが欠失していることを意味する。
【0076】
本明細書において、「変異タンパク質」または「タンパク質変異体」または「変異体」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾を理由として元のタンパク質とは異なるタンパク質を意味する。タンパク質変異体とは、それ自身のタンパク質、当該タンパク質を含有する組成物、またはそれをコードするアミノ酸配列を指しても良い。好ましくは、タンパク質変異体は、元のタンパク質と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を有している(たとえば、元のものと比較して約1〜約70のアミノ酸修飾、および好ましくは約1〜約5のアミノ酸修飾)。以下に記述されるように、一部の実施態様において、元のポリペプチド(たとえばFc等の元ポリペプチド)は、たとえば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4由来のFc領域等のヒト野生型配列であるが、変異を有するヒト配列もまた、「元のポリぺプチド」として機能してもよい。本明細書において、タンパク質変異配列は、好ましくは、元のタンパク質の配列と少なくとも約80%の同一性を有し、および最も好ましくは少なくとも約90%の同一性、よりさらに好ましくは少なくとも約95〜98〜99%の同一性を有している。変異タンパク質は、それ自身の変異タンパク質、当該タンパク質変異体を含有する組成物、またはそれをコードするDNA配列を指しても良い。従って、本明細書において、「抗体変異体」または「変異抗体」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾を理由として元の抗体と異なる抗体を意味し、本明細書において、「IgG変異体」、または「変異IgG」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾を理由として元のIgGと異なる(再度、多くの場合において、ヒトIgG配列と異なる)抗体を意味し、および、本明細書において、「イムノグロブリン変異体」または「変異イムノグロブリン」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾を理由として元のイムノグロブリン配列とは異なるイムノグロブリン配列を意味する。本明細書において、「Fc変異体」または「Fc変異」とは、Fcドメインにアミノ酸修飾を含有するタンパク質を意味する。本発明のFc変異体は、それらを構成するアミノ酸修飾に従い定義される。たとえば、N434Sまたは434Sは、元のFcポリペプチドと比較して、434位にセリン置換を有するFc変異体を意味する(ナンバリングはEUインデックスに従っている)。同様に、M428L/N434Sは、元のFcポリペプチドと比較して、M428LおよびN434Sの置換を有するFc変異体を定義するものである。WTアミノ酸のアイデンティティは、明確にされていなくても良く、その場合、前述の変異体は、428L/434Sと呼称される。置換が行われる順序は任意のものであり、すなわち、たとえば、428L/434Sは、M428L/N434Sなどと同じFc変異体であることを注記されたい。抗体に関し、本発明において検討される全ての位置に対し、他で明記されない限り、アミノ酸の位置のナンバリングは、EUインデックスに従っている。EUインデックスまたは、KabatにあるようなEUインデックスまたは、EUナンバリングスキームとは、EU抗体のナンバリングを指す(Edelman et al., 1969, Proc Natl Acad Sci USA 63:78-85。参照により全体で本明細書に援用される)。修飾は、追加、欠失または置換であっても良い。置換は、天然型アミノ酸を含有しても良く、一部の場合においては、合成アミノ酸を含有しても良い。例としては、米国特許第6,586,207号;WO98/48032;WO03/073238;US2004−0214988A1;WO05/35727A2;WO05/74524A2; J. W. Chin et al., (2002), Journal of the American Chemical Society 124:9026-9027; J. W. Chin, & P. G. Schultz, (2002), ChemBioChem 11:1135-1137; J. W. Chin, et al., (2002), PICAS United States of America 99:11020-11024;および、L. Wang, & P. G. Schultz, (2002), Chem. 1-10(すべて、参照により全体で援用される)が挙げられる。
【0077】
本明細書において、「タンパク質」とは、少なくとも2つの共有結合されたアミノ酸を意味し、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチドおよびペプチドを含有する。ペプチジル基は、天然型アミノ酸とペプチド結合を含有しても良く、または、合成ペプチド模倣構造(すなわち、たとえばペプトイド等の「アナログ」(Simon et al., PNAS USA 89(20):9367 (1992)を参照のこと。参照により全体で援用される))を含有しても良い。アミノ酸は、当業者に認識されているように、天然型または合成(たとえば、DNAによりコードされていないアミノ酸ではない)のいずれかであっても良い。たとえば、ホモ−フェニルアラニン、シトルリン、オルニチンおよびノルロイシンは、本発明の目的に合致する合成アミノ酸と見なされ、D−およびL−(RまたはS)構成のアミノ酸の両方を利用しても良い。本発明の変異体は、たとえば、Schultzらにより開発された技術(限定されないが、Cropp & Shultz, 2004, Trends Genet. 20(12):625-30, Anderson et al., 2004, Proc Natl Acad Sci USA 101 (2):7566-71, Zhang et al., 2003, 303(5656):371-3、およびChin et al., 2003, Science 301(5635):964-7に記述される方法が挙げられる。すべて参照により全体で援用される)等を用いて組み込まれた合成アミノ酸の使用を含む修飾を含有しても良い。さらに、ポリペプチドは、1以上の側鎖または末端の合成誘導体化、グリコシル化、PEG化、円順列、環化、他の分子へのリンカー、タンパク質またはタンパク質ドメインへの融合、およびペプチドタグまたは標識の付加を含有しても良い。
【0078】
本明細書において、「残基」とは、タンパク質中の位置およびその関連アミノ酸のアイデンティティを意味する。たとえば、アスパラギン297(Asn297またはN297とも呼称される)は、ヒト抗体IgG1中の297位の残基である。
【0079】
本明細書において、「Fab」または「Fab領域」とは、VH、CH1、VLおよびClイムノグロブリンドメインを含有するポリペプチドを意味する。Fabは、分離したこの領域を指しても良く、または、全長抗体、抗体断片もしくはFab融合タンパク質に関連してこの領域を指しても良い。本明細書において、「Fv」または「Fv断片」または「Fv領域」とは、1つの抗体のVLおよびVHドメインを含有するポリペプチドを意味する。
【0080】
本明細書において、「IgGサブクラス修飾」または「アイソタイプ修飾」とは、1つのIgGアイソタイプを、異なる、位置合わせされたIgGアイソタイプ中の対応するアミノ酸へと転換するアミノ酸修飾を意味する。たとえば、IgG1はEU位置で296位にチロシンを含有し、IgG2はフェニルアラニンを含有するため、IgG2におけるF296Y置換は、IgGサブクラス修飾と見なされる。
【0081】
本明細書において、「非天然型修飾」とは、アイソタイプ型ではないアミノ酸修飾を意味する。たとえば、434位にセリンを含有したIgGは存在しないため、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4(またはそれらのハイブリッド)における434S置換は、非天然型修飾と見なされる。「アイソタイプ型」の修飾とは、ある位置の1つのアイソタイプのアミノ酸を、異なるアイソタイプの主鎖へと導入することを指し、たとえば、IgG1のアミノ酸を同じ位置でIgG2の主鎖へ導入することなどである。
【0082】
本明細書において、「アミノ酸」および「アミノ酸アイデンティティ」とは、DNAおよびRNAによりコードされる20のアミノ酸のうちの1つを意味する。
【0083】
本明細書において、「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域とFc受容体またはリガンドとの相互作用から生じる生化学的事象を意味する。エフェクター機能としては、限定されないが、ADCC、ADCPおよびCDCが挙げられる。
【0084】
本明細書において、「IgG Fcリガンド」とは、IgG抗体のFc領域へ結合し、Fc/Fcリガンド複合体を形成する任意の生物体由来の分子、好ましくはポリペプチドを意味する。Fcリガンドとしては、限定されないが、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、FcRn、C1q、C3、マンナン結合型レクチン、マンノース受容体、ブドウ球菌プロテインA、連鎖球菌プロテインG、およびウイルス性FcγRが挙げられる。Fcリガンドはまた、FcγRと相同なFc受容体のファミリーであるFc受容体ホモログ(FcRH)を含有する(Davis et al., 2002, Immunological Reviews 190:123-136、参照により全体で援用される)。Fcリガンドは、Fcに結合する未発見の分子を含有しても良い。特定のIgG Fcリガンドは、FcRnおよびFcγ受容体である。本明細書において、「Fcリガンド」は、抗体のFc領域に結合し、Fc/Fcリガンド複合体を形成する任意の生物体由来の分子、好ましくはポリペプチドを意味する。
【0085】
本明細書において、「Fcγ受容体」、「FcγR」、または「FcガンマR」とは、IgG抗体Fc領域に結合するタンパク質ファミリーの任意の1つを意味し、FcγR遺伝子によりコードされる。ヒトにおいては、このファミリーには限定されないが、FcγRI(CD64)(FcγRIa、FcγRIb、およびFcγRIcのアイソフォームを含む);FcγRII(CD32)(FcγRIIa(H131およびR131のアロタイプを含む)、FcγRIIb(FcγRIIb01およびFcγRIIb−2を含む)およびFcγRIIcのアイソフォームを含む);および、FcγRIII(CD16)(FcγRIIIa(V158およびF158のアロタイプを含む)およびFcγRIIIb(FcγRIIb−NA1およびFcγRIIb−NA2のアロタイプを含む)のアイソフォームを含む)(Jefferis et al., 2002, Immunol Lett 82:57-65、参照により全体で援用される)、ならびに、任意の未開発のヒトFcγRまたはFcγRアイソフォームもしくはアロタイプが挙げられる。FcγRは、任意の生物体(限定されないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、およびサルが挙げられる)由来であっても良い。マウスのFcγとしては、限定されないが、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)、およびFcγRIII−2(CD16−2)、ならびに、任意の未発見のマウスFcγRまたはFcγRアイソフォームもしくはアロタイプが挙げられる。
【0086】
本明細書において、「FcRn」または「新生児型Fc受容体」とは、IgG抗体のFc領域に結合するタンパク質を意味し、FcRn遺伝子により少なくとも部分的にコードされる。FcRnは、任意の生物体(限定されないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、およびサルが挙げられる)由来であっても良い。当分野に公知であるが、機能性FcRnタンパク質は、2つのポリペプチド(多くの場合、重鎖および軽鎖と呼称される)から構成される。軽鎖はベータ−2−マイクログロブリンであり、重鎖は、FcRn遺伝子によりコードされる。本明細書において他で注記されない限り、FcRnまたはFcRnタンパク質とは、FcRn重鎖とベータ−2−マイクログロブリンの複合体を指す。FcRn受容体への結合を増強させるため、および一部の場合においては、血清半減期を延長させるために用いられる様々なFcRn変異体は、
図24の凡例Aに検討されている。
【0087】
本明細書において、「元のポリペプチド」とは、開始ポリペプチドを意味し、次いで、それは変異体を作製するために修飾される。元のポリペプチドは天然型ポリペプチドであっても良く、または天然型ポリペプチドの変異体もしくは操作されたものであっても良い。元のポリペプチドとは、それ自身のポリペプチド、元のポリペプチドを含有する組成物、または、それをコードするアミノ酸配列を指しても良い。従って、本明細書において、「元のイムノグロブリン」とは、変異体を作製するために修飾される非修飾のイムノグロブリンポリペプチドを意味し、および、本明細書において、「元の抗体」とは、変異抗体を作製するために修飾される非修飾の抗体を意味する。「元の抗体」とは、公知の市販された、組換生産された抗体(以下に概要する)を含有することを注記されたい。
【0088】
本明細書において、「Fc融合タンパク質」または「イムノアドヘシン」とは、通常、異なるタンパク質(たとえば本明細書に記述される標的タンパク質への結合部分)に、(任意選択的に、本明細書に記述されるリンカー部分を介して)連結されているFc領域を含有するタンパク質を意味する。
【0089】
本明細書において、「位置」とは、タンパク質の配列中の位置を意味する。位置は、連続的に番号づけられたものであってもよく、または、確立された形式(たとえば、抗体のナンバリングに関しては、EUインデックス等)に従うものであっても良い。
【0090】
本発明の異種二量体タンパク質のモノマーとの関連において、「鎖状構造らしさ」とは、「合致する」DNAの2つの鎖と同じように、異種二量体を形成するための「合致する」能力を保持するように異種二量体化変異が各モノマーに組み込まれていることを意味する。たとえば、もし一部のpI変異がモノマーAに操作されて組み込まれ(たとえば、pIをより高くするために)、次いで、同様に用いることができる「電荷対」である立体構造変異が、そのpI変異に干渉しない場合、たとえば、pIをより高くするその電荷変異は、両方の機能性を保持するよう、同じ「鎖」または「モノマー」に置かれる。
【0091】
本明細書において、「標的抗原」とは、所与の抗体の可変領域により特異的に結合される分子を意味する。標的抗原は、タンパク質、炭水化物、脂質、または他の化学的化合物であっても良い。多くの適切な標的抗原を、以下に記述する。
【0092】
本明細書において、「標的細胞」とは、標的抗原を発現している細胞を意味する。
【0093】
本明細書において、「可変領域」とは、V.kappa.、V.lamda.、および/または、VH遺伝子(それぞれ、カッパ、ラムダ、および重鎖イムノグロブリン遺伝子座を構成する)のいずれかにより実質的にコードされているIgドメインを1つ以上含有するイムノグロブリンの領域を意味する。
【0094】
本明細書において、「野生型」または「WT」とは、自然界に存在するアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を意味し、対立遺伝子変異を含んでいる。WTタンパク質は、意図的に修飾されていないアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を有している。
【0095】
本明細書において、当分野公知である「一本鎖可変断片」、「scFv」または「一本鎖Fv」とは、抗体の可変重鎖と軽鎖の融合タンパク質を意味し、通常、リンカーペプチドで連結されている。一般的なscFvリンカーは当分野に公知であり、通常、10〜25のアミノ酸の長さであり、グリシンおよびセリンを含有する。
【0096】
本明細書において、「荷電scFvリンカー」とは、少なくとも1つのscFvを含有する異種二量体抗体の生成および精製における使用のために、荷電アミノ酸を利用するscFvリンカーを意味する。適切な荷電scFvリンカーを
図7に示すが、他を用いることもできる。概して、本発明の使用に適した荷電scFvリンカーは、従来から用いられている例えば(GGGGS)
3〜5配列等の標準的な非荷電scFvリンカーと比較して、3〜8(3、4、5、6、7または8のすべてが可能である)の電荷の変化を有している(負または正のいずれか)。当業者に認識されているように、2つのscFvを利用する異種二量体抗体は、1つの荷電リンカーおよび1つの中性リンカーを有しても良く(たとえば、正に荷電されたscFvリンカーまたは負に荷電されたscFvリンカーのいずれか)、または、2つの反対の荷電を有するscFvリンカー(1つは正であり、1つは負)を有しても良い。
【0097】
異種二量体タンパク質
本発明は、多特異性、特に二特異性結合タンパク質の生成を目的としており、特に、scFvを含有する1つのモノマー、および、Fvを含有する他のモノマーを有する多特異性抗体を目的とする。
【0098】
抗体
本発明は、多特異性抗体(通常、治療用抗体)の生成に関する。以下に検討されるように、「抗体」という用語が通常用いられている。本発明に用途が見出される抗体は、本明細書に記述される多くの形式をとることができ、以下に記述される抗体ならびに抗体誘導体、断片および模倣物が挙げられる。概して、「抗体」という用語には、定常ドメイン(限定されないが、CH1、CH2、CH3およびCLが挙げられる)を少なくとも1つ含有する任意のポリペプチドが含まれる。
【0099】
従来的な抗体構造の単位は通常、テトラマーを含有する。各テトラマーは通常、2つの同一なポリペプチド鎖の対から構成され、各対は、1つの「軽い」鎖(通常、約25kDaの分子量を有する)および1つの「重い」鎖(通常、約50〜70kDaの分子量を有する)を有している。ヒトの軽鎖は、カッパ軽鎖およびラムダ軽鎖として分類される。本発明は、いくつかのサブクラス(限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4が挙げられる)を有するIgGクラスを目的としている。ゆえに、本明細書において、「アイソタイプ」とは、その定常領域の化学的および抗原的特徴により定義されるイムノグロブリンの任意のサブクラスを意味する。治療抗体はまた、アイソタイプおよび/またはサブクラスのハイブリッドを含有しうることを理解されたい。たとえば、US公開2009/0163699(参照により援用される)に示されるように、本発明は、IgG1/G2ハイブリッドのpI操作を含むものである。
【0100】
各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う約100〜110以上のアミノ酸の可変領域を含有しており、通常、当分野において、および本明細書において、「Fvドメイン」または「Fv領域」と呼称される。可変領域において、3つのループが、重鎖および軽鎖のVドメインの其々に対して集合し、抗原結合部位を形成している。各ループは、相補性決定領域(以下、CDRと呼称される)と呼称されており、アミノ酸配列の変異が最も顕著である。「可変」とは、可変領域のあるセグメントが、抗体間で、配列にかなりの違いがあるという事実を指す。可変領域内の可変性は、等しく分布していない。むしろ、V領域は、各々が9〜15アミノ酸以上の長さである「超可変領域」と呼ばれる、かなり可変性が高い短い領域により分離される、15〜30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的普遍な連続配列からなる。
【0101】
VHとVLのそれぞれは、3つの超可変領域(「相補性決定領域」、「CDR」)と、4つのFRから構成され、以下の順番で、アミノ末端からカルボキシ末端に配置されている:FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4。
【0102】
超可変領域は通常、軽鎖可変領域における、アミノ酸残基約24〜34(LCDR1;「L」は軽鎖を示す)、50〜56(LCDR2)および89〜97(LCDR3)のアミノ酸残基、および、重鎖可変領域における、約31〜35B(HCDR1;「H」は重鎖を示す)、50〜65(HCDR2)、および95〜102(HCDR3)のアミノ酸残基を包含し;Kabat et al., SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)、および/または、超可変ループを形成する残基を包含する(たとえば、軽鎖可変領域における、26−32残基(LCDR1)、50−52残基(LCDR2)および91−96残基(LCDR3)、ならびに、重鎖可変領域における、26−32残基(HCDR1)、53−55残基(HCDR2)および96−101残基(HCDR3)); Chothia and Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917。本発明の具体的なCDRは以下に記述する。
【0103】
本明細書を通じて、可変ドメイン中の残基について言及する際は、Kabatのナンバリングシステムが通常用いられている(おおよそ、軽鎖可変領域の1〜107残基、および重鎖可変領域の1〜113残基)(たとえば上記のKabat et al., (1991))。
【0104】
CDRは、抗原結合の形成、またはより具体的には、抗体のエピトープ結合部位に寄与している。「エピトープ」とは、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域中の特定の抗原結合部位と相互作用する決定基を指す。エピトープは、たとえばアミノ酸または糖の側鎖等の分子の集団であり、通常、特異的な構造的特徴ならびに電荷的特徴を有している。1つの抗原が、2以上のエピトープを有していても良い。
【0105】
エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基(エピトープの主要抗原成分とも呼称される)を含有しても良く、および、結合に直接は関与しない他のアミノ酸残基(たとえば、特異的な抗原結合ペプチドにより効率的にブロックされるアミノ酸残基等。つまり、当該アミノ酸残基は、特異的抗原結合ペプチドのフットプリント(footprint)内にある)を含有しても良い。
【0106】
エピトープは、立体構造または線状のいずれであっても良い。立体構造的なエピトープは、線状ポリペプチド鎖の異なるセグメントから空間的に並べられたアミノ酸により産生される。線状エピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接したアミノ酸残基により産生されるものである。立体構造的および非立体構造的なエピトープは、変性溶媒の存在下でも結合する場合は前者、結合が失われる場合には後者という具合に識別されても良い。
【0107】
エピトープは通常、ユニークな空間的構造中に、少なくとも3、より普遍的には、少なくとも5または8〜10のアミノ酸を含有する。同じエピトープを認識する抗体は、たとえば「ビンニング(binning)」等の、標的抗原に対する他の抗体の結合を阻害する抗体の活性を示すシンプルな免疫アッセイにおいて立証することができる。
【0108】
各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に主に関与する定常領域を規定する。Kabatらは、重鎖および軽鎖の可変領域の多くの主要配列を収集した。配列の保存の程度に基づき、個々の主要配列をCDRおよびフレームワークへと分類し、そのリストを作製した(SEQUENCES OF IMMUNOLOGICAL INTEREST, 5th edition, NIH publication, No. 91-3242, E.A. Kabat et al.、参照により全体で援用される)。
【0109】
イムノグロブリンのIgGサブクラスにおいて、重鎖にはいくつかのイムノグロブリンドメインが存在する。本明細書において、「イムノグロブリン(Ig)ドメイン」とは、明白に異なる三次元構造を有するイムノグロブリンの領域を意味する。本発明において対象となるのは、重鎖ドメインであり、定常重鎖(CH)ドメインおよびヒンジドメインが含まれる。IgG抗体に関する記述において、IgGアイソタイプのそれぞれは、3つのCH領域を有している。従って、IgGに関し、「CH」ドメインとは以下である:「CH1」とは、KabatのEUインデックスに従い、118〜220位を指す。「CH2」とは、KabatのEUインデックスに従い、237〜340位を指し、および、「CH1」とは、KabatのEUインデックスに従い、341〜447位を指す。本明細書において示され、以下に記述されるように、pI変異は、CH領域のうちの1以上にあってもよく、ならびに、以下に検討されるヒンジ領域に合っても良い。
【0110】
本明細書に開示される配列は、CH1領域(118位)に始まり、可変領域は、記述されるものを除き、含まれていないことに注記されたい。たとえば、配列番号2の第一のアミノ酸は、配列表において「1」位として指定されているが、CH1領域の118位に相当する(EUナンバリングに従う)。
【0111】
重鎖の他のタイプのIgドメインは、ヒンジ領域である。本明細書において、「ヒンジ」または「ヒンジ領域」または「抗体ヒンジ領域」または「イムノグロブリンヒンジ領域」とは、抗体の第一定常ドメインと第二定常ドメインの間にあるアミノ酸を含有する可塑性のポリぺプチドを意味する。構造的に、IgG CH1ドメインは、EUの220位に終わり、および、IgG CH2ドメインは、EUの237位残基で始まる。ゆえに、本明細書において、IgGに対する抗体のヒンジは、221位(IgG1においてはD221)〜236(IgG1においてはG236)を含むと規定される(ナンバリングはKabatらのEUインデックスに従っている)。一部の実施態様においては、たとえばFc領域に関する文脈において、より低いヒンジが含有されており、「低ヒンジ」とは通常、226または230位を指す。本明細書に記述されるように、pI変異は、ヒンジ領域に同様に作製されても良い。
【0112】
軽鎖は通常、可変軽鎖ドメイン(軽鎖CDRを含有し、可変重鎖ドメインと共にFv領域を形成する)および、定常軽鎖領域(多くの場合、CLまたはC
κと呼称される)の2つのドメインを含有する。
【0113】
追加の置換に対する対象の他の領域としては、以下に概要されるように、Fc領域がある。本明細書において、「Fc」または「Fc領域」または「Fcドメイン」とは、第一の定常領域イムノグロブリンドメイン(および、一部の場合においてはヒンジの一部)を除外した抗体の定常領域を含有するポリペプチドを意味する。ゆえに、Fcとは、IgA、IgDおよびIgGの最後の2つの定常領域イムノグロブリンドメイン、IgEおよびIgMの最後の3つの定常領域イムノグロブリンドメイン、および、これらのドメインのN末端にある可塑性ヒンジを指す。IgAおよびIgMに対しては、Fcは、J鎖を含有しても良い。IgGに対しては、Fcドメインは、イムノグロブリンドメインCγ2およびCγ3(Cγ2およびCγ3)、および、Cγ1(Cγ1)およびCγ2(Cγ2)の間の低ヒンジ領域を含有する。Fc領域の境界は変化しうるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、C226またはP230残基からそのカルボキシル末端までを含有すると定義づけられている(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従っている)。一部の実施態様において、以下にさらに完全に記述するように、アミノ酸修飾をFc領域に施し、たとえば、1以上のFcγR受容体またはFcRn受容体に対する結合を変化させている。
【0114】
一部の実施態様において、抗体は全長である。本明細書において、「全長抗体」とは、抗体の天然の生物学的形態を構成する構造を意味し、可変領域および定常領域を含有し、本明細書に概要される1以上の修飾を含有している。
【0115】
あるいは、抗体は、様々な構造(限定されないが、抗体断片、モノクローナル抗体、二特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(場合により、本明細書において「抗体模倣物」と呼称される)、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体融合物(場合により、「抗体結合物」と呼称される)および、それぞれの各断片が挙げられる)を含有しても良い。
【0116】
1つの実施態様において、抗体は、たとえばpI操作等の、異種二量体を産生するための操作を行うことができる定常ドメインを少なくとも1つ含有する限りにおいては、抗体断片である。用いることができる他の抗体断片としては、pI操作された本発明のCH1、CH2、CH3、ヒンジおよびCLドメインのうちの1以上を含有する断片が挙げられる。たとえば、Fc融合物は、他のタンパク質に融合されたFc領域(CH2およびCH3、任意選択的にヒンジ領域を伴う)の融合物である。多くのFc融合物が当分野に公知であり、本発明の異種二量体化変異の付加により改善することができる。この場合において、抗体融合物は、CH1;CH1、CH2およびCH3;CH2;CH3; CH2およびCH3;CH1およびCH3を含有して作製することができ、本明細書に記述される異種二量体化変異の任意の組み合わせを利用し、それらのうちのいずれか、またはすべては、任意選択的にヒンジ領域と共に作製することができる。
【0117】
本発明の一部の実施態様において、1つのモノマーはFcドメインに連結されたscFvを含有する重鎖を含有し、および、他のモノマーは、Fcドメインに連結されたFabを含有する重鎖を含有し、たとえば、「典型的な」重鎖および軽鎖がある。本明細書において用いられる「Fab」または「Fab領域」とは、VH、CH1、VL、およびCLイムノグロブリンドメインを含有するポリペプチドを意味する。Fabは、分離されたこの領域を指し、または全長抗体、抗体断片もしくはFab融合タンパク質に関する文脈におけるこの領域を指す。
【0118】
本明細書において、「Fv」または「Fv断片」または「Fv領域」は、1つの抗体のVLおよびVHドメインを含有するポリペプチドを意味する。
【0119】
キメラ抗体およびヒト化抗体
一部の実施態様において、抗体は、異なる種由来の混合物であっても良い(たとえば、キメラ抗体および/またはヒト化抗体)。概して、「キメラ抗体」および「ヒト化抗体」の両方は、2以上の種由来の領域を混合させた抗体を指す。たとえば、「キメラ抗体」は伝統的に、マウス(または一部の場合においてはラット)由来の可変領域(複数含む)と、ヒト由来の定常領域(複数含む)を含有する。「ヒト化抗体」とは通常、ヒト抗体に存在する配列と、可変ドメインのフレームワーク領域を交換した非ヒト抗体を指す。一般的に、ヒト化抗体において、CDRを除く全抗体は、ヒト由来のポリヌクレオチドによりコードされるか、または、そのCDRを除き、その抗体と同一である。CDRは、その一部またはすべてが非ヒト生物に起源を有する核酸によりコードされており、ヒト抗体可変領域のβシートフレームワークへと移植され、抗体を産生し、その特異性は、移植されたCDRにより決定される。そのような抗体の作製は、たとえば、WO92/11018、Jones, 1986, Nature 321:522-525, Verhoeyen et al., 1988, Science 239:1534-1536(すべて、参照により全体で援用される)に記述されている。最初に移植された構築物において失われたアフィニティを復活させるために、対応するドナー残基に対する選択されたアクセプターのフレームワーク残基の「復帰突然変異(backmutation)」がしばしば必要とされる(US5530101;US5585089;US5693761;US5693762;US6180370;US5859205;US5821337;US6054297;US6407213、すべて、参照により全体で援用される)。またヒト化抗体は、好ましくは、イムノグロブリン定常領域(通常は、ヒトイムノグロブリンのもの)の一部を少なくとも含有し、および、それにより、ヒトFc領域を通常は含有する。ヒト化抗体はまた、遺伝子操作された免疫システムを有するマウスを用いて作製されても良い。Roque et al., 2004, Biotechnol. Prog. 20:639-654、参照により全体で援用される。ヒト化、および非ヒト抗体に再形成するための様々な技術および方法が当分野に公知である(Tsurushita & Vasquez, 2004, Humanization of Monoclonal Antibodies, Molecular Biology of B Cells, 533-545, Elsevier Science (USA)およびその中に引用される参照文献を参照のこと。すべて参照により全体で援用される)。ヒト化の方法としては、限定されないが、Jones et al., 1986, Nature 321:522-525; Riechmann et al.,1988; Nature 332:323-329; Verhoeyen et al., 1988, Science, 239:1534-1536; Queen et al., 1989, Proc Natl Acad Sci, USA 86:10029-33; He et al., 1998, J. Immunol. 160: 1029-1035; Carter et al., 1992, Proc Natl Acad Sci USA 89:4285-9, Presta et al., 1997, Cancer Res. 57(20):4593-9; Gorman et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4181-4185; O’Connor et al., 1998, Protein Eng 11:321-8に記述される方法が挙げられる(すべて参照により全体で援用される)。ヒト化、または非ヒト抗体可変領域の免疫原性を減少させる他の方法としては、たとえばRoguska et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:969-973(参照により全体で援用される)に記述される再現方法が挙げられる。1つの実施態様において、当分野で公知であるように、元の抗体は、アフィニティが成熟されている。構造を基にした方法を、ヒト化およびアフィニティ成熟のために用いても良い(たとえば、USSN 11/004,590に記述されている)。選択ベースの方法を用いて、抗体可変領域をヒト化および/またはアフィニティ成熟してもよく、限定されないが、Wu et al., 1999, J. Mol. Biol. 294:151-162; Baca et al., 1997, J. Biol. Chem. 272(16):10678-10684; Rosok et al., 1996, J. Biol. Chem. 271(37): 22611-22618; Rader et al., 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 8910-8915; Krauss et al., 2003, Protein Engineering 16(10):753-759(すべて参照により全体で援用される)に記述される方法がある。他のヒト化の方法は、CDRの部分のみを移植するものであり、限定されないが、USSN 09/810,510; Tan et al., 2002, J. Immunol. 169:1119-1125; De Pascalis et al., 2002, J. Immunol. 169:3076-3084に記述される方法(すべて参照により全体で援用される)が挙げられる。
【0120】
多特異性抗体構築物
当業者に認識され、以下に詳述されるように、本発明の異種二量体融合タンパク質は、多くの構造をとることができ、好ましい実施態様は、「三重F」構築物として
図1Bに示されている。
【0121】
異種二量体重鎖定常領域
従って、本発明により、変異重鎖定常領域を含有するモノマーの第一ドメインとしての使用に基づいた異種二量体タンパク質が開示される。本明細書において、「モノマー」とは、異種二量体タンパク質の半分を意味する。従来的な抗体は、実際には四量体(2つの重鎖と2つの軽鎖)であることに注記されたい。本発明の文脈において、重鎖と軽鎖の1つの対(もし該当する場合、たとえばもしモノマーがFabを含有する場合)は、「モノマー」とみなされる。同様に、scFvを含有する重鎖領域はモノマーとみなされる。Fv領域が1つの融合パートナー(たとえば、重鎖と軽鎖)であり、および、抗体ではないタンパク質が他の融合パートナーである場合においては、それぞれの「半分」は、モノマーとみなされる。本質的に、定常領域のすべて(たとえば、Ch1−ヒンジ−CH2−CH3)、Fc領域(CH2−CH3)または、ただCH3ドメインのみであろうと、各モノマーは異種二量体化操作を行うための十分な重鎖定常領域を含有している。
【0122】
変異重鎖定常領域は、全長構築物、CH1−ヒンジ−CH2−CH3、またはその一部(たとえば、CH2−CH3またはCH3のみ)を含む、重鎖定常領域のすべて、または一部を含有しても良い。さらに、各モノマーの重鎖領域は、同じ主鎖(CH1−ヒンジ−CH2−CH3、またはCH2−CH3)であっても、異なっていても良い。N末端切断およびC末端切断および富化もまた、定義の中に含まれ;たとえば、一部のpI変異は、重鎖ドメインのC末端への荷電アミノ酸の付加を含む。
【0123】
ゆえに、概して、本発明の「三重F」構築物の1つのモノマーはscFv領域−ヒンジ−Fcドメインであり、他方はVH−CH1−ヒンジ−CH2−CH3+関連軽鎖であり、異種二量体化変異(立体構造変異およびpI変異、FcおよびFcRn変異を含む)を伴い、および、追加の抗原結合ドメイン(任意のリンカーと共に)がこれら領域に含有される。
【0124】
本明細書に概要される異種二量体化変異(たとえば、立体構造変異およびpI変異)に加え、重鎖領域はまた、追加のアミノ酸置換(以下に検討されるFcγRおよびFcRn結合を改変するための変化を含む)を含有しても良い。
【0125】
加えて、一部のモノマーは、変異重鎖定常領域とその融合パートナーの間にリンカーを用いても良い。「栓抜き型」のscFv部分に対しては、標準的なリンカーが当分野に公知であり、用いることができる。追加の融合パートナーを作製する場合においては(たとえば、USSN13/648,951の
図64)、従来的なペプチドリンカー(グリシンおよびセリンの可塑性リンカーが挙げられる)を用いても良い。一部の場合において、モノマー成分としての使用のためのリンカーは、ADC構築物に対し以下に定義されるものとは異なり、および、多くの実施態様においては、開裂可能なリンカー(たとえば、プロテアーゼ感受性のもの)ではないが、開裂可能なリンカーも、一部の実施態様においては用途が見出されうる。
【0126】
あるいは、抗体の形式によっては、以上の荷電scFvリンカーを本明細書に概要されるように用いても良い。三重F形式においては、1つの荷電scFvリンカーが用いられる。本明細書に注記されるように、標的抗原に対するscFvの固有pI、および他の標的抗原のFabの固有pIに依存して、荷電scFvリンカーは、正または負のいずれかであっても良い。二重scFv形式において、1つの荷電scFvリンカーのいずれかが、1つのモノマー(再度、正または負のいずれか)、または両方(1つが正、1つが負)で用いられる。この実施態様において、2つのリンカーのそれぞれの電荷は、同じである必要はない(たとえば、1つは+3であり、他方は−4等)。
【0127】
異種二量体化変異には多くの異なるタイプの変異が含まれ、限定されないが、立体構造変異(電荷変異が挙げられる)およびpI変異が挙げられ、任意選択的および独立して、任意の他の変異と組み合わせることができる。これらの実施態様において、「モノマーA」と「モノマーB」を合致させることが重要である;すなわち、もし異種二量体タンパク質が立体構造変異およびpI変異の両方に依っている場合、これらは的確に互いのモノマーに合致している必要がある:たとえば、作用する立体構造変異のセット(モノマーの1セット、モノマーBの1セット)は、各モノマー上の変異が、所望される機能が得られるように設計されるよう、pI変異セット(モノマーAの1セット、モノマーBの1セット)と組み合わされる。たとえば立体構造変異が電荷を変え得る場合において、的確なセットが、的確なモノマーに合致されていなくてはならない。
【0128】
本明細書に概要される異種二量体化変異(たとえば、限定されないが、
図9、26、29、30、31および32に示される変異が挙げられる)は、任意選択的に、および独立して、任意の他のモノマー上で、および、任意の他の変異と組み合わせることができることに注記されたい。ゆえに、たとえば、1つの形式由来のモノマー1に対するpI変異は、異なる形式におけるモノマー1に対する他の異種二量体化変異に付加することができ、またはモノマー2由来の他の異種二量体化変異に付加することができる。すなわち、異種二量体化にとって重要なことは、変異の「セット」が存在し、1つのモノマーに対する1つのセットは、他のモノマーに対する1つのセットでもあるということである。これらが形式1から1へと組み合わされるか(たとえば、モノマー1のリストは両立することができる)、または、交換されるか(モノマー1のpI変異とモノマー2の立体構造変異を交換)は重要ではない。しかしながら、本明細書に注記されるように、上述のように組み合わせが形成された際、異種二量体化に有利に働くように、「鎖状構造らしさ」が保存されていなければならない;たとえば、pIを増加させる電荷変異は、増加pI変異および/またはpIの増加を伴うscFvリンカー等と共に用いられなければならない。さらに、追加のFc変異に対して(たとえば、FcγR結合、FcRn結合、欠落変異等に対して)は、いずれかモノマー、または両方のモノマーが、列記される変異のいずれかを独立して、および任意選択的に含有することができる。一部の場合において、両方のモノマーが、追加の変異を有しており、および、一部においては、1つのモノマーのみが追加の変異を有しており、またはそれらは組み合わされても良い。
【0129】
異種二量体化変異
本発明により、たとえば
図11Bに示される「三重F」または「栓抜き型」スキャホールド上の、多特異性抗体の形式が開示される。
【0130】
立体構造変異
一部の実施態様において、異種二量体の形成は、立体構造変異の追加により促進することができる。すなわち、各重鎖のアミノ酸を変えることにより、異なる重鎖が関連し、同じFcアミノ酸配列を有する同種二量体の形成よりも、異種二量体構造の形成のほうが多くなる可能性がある。適切な立体構造変異は図に示されている。
【0131】
1つのメカニズムは通常、当分野において「knobs and holes」と呼称されており、同種二量体形成に不利に働き、異種二量体形成に有利に働くよう、立体的影響を与えるアミノ酸操作を指し、これもまた任意選択的に用いることができる;これは、場合により、「knobs and holes」と呼称され、USSN 61/596,846、Ridgway et al., Protein Engineering 9(7):617 (1996); Atwell et al., J. Mol. Biol. 1997 270:26;米国特許第8,216,805号に記述されている(すべて参照により全体で本明細書に援用される)。
図4および5においてさらに、「knobs and holes」に依存する多くの「モノマーA−モノマーB」の対を特定している。さらに、Merchant et al., Nature Biotech. 16:677 (1998)に記述されるように、これら「knobs and holes」変異は、ジスルフィド結合と組み合わせ、構造を異種二量体化へとねじれさせてもよい。
【0132】
異種二量体形成の作製に使用することができる追加のメカニズムは、一部の場合において、「静電的ステアリング」と呼称されるものである(Gunasekaran et al., J. Biol. Chem. 285(25):19637 (2010)(参照によりその全体が本明細書に援用される)に開示される)。これは、場合によって、本明細書において「電荷対」と呼称される。この実施態様においては、静電学を用いて、構造を異種二量体形成へとねじれさせる。当分野において公知であるが、これらはまた、pIに対する効果を有してもよく、ゆえに精製に対しても効果があり、一部の場合においては、pI変異ともみなされることがある。しかしながら、これらは異種二量体化を推し進めるために作製されたものであり、精製のためのツールとして用いられるものではなかったため、それらは、「立体構造変異」として分類されている。これらには、限定されないが、たとえばD221R/P228R/K409Rと対形成したD221E/P228E/L368E(たとえば、これらは、「モノマー対応セット」である)および、C220R/E224R/P228R/K409Rと対形成したC220E/P228E/368E等の、図面において75%を超える異種二量体形成をもたらす変異が挙げられる。
【0133】
他の変異と組み合わせることができる追加のモノマーAおよびモノマーB変異は、任意選択的および独立して、任意の量で、たとえば本明細書に概要されるpI変異またはUS2012/0149876の
図37(図およびその説明箇所は、参照により本明細書に明示的に援用される)に示される他の立体構造変異等がある。
【0134】
一部の実施態様において、本明細書に概要される立体構造変異は、任意選択的に、および独立して、pI変異(または、たとえばFc変異、FcRn変異、欠落変異等の他の変異)を含む、任意の異種二量体化変異とともに1つのモノマーまたは両方のモノマーへと組み込まれることができる。
【0135】
異種二量体に対するpI(等電点)変異
概して、当業者に認識されているように、pI変異には2つの一般的なカテゴリーが存在する:タンパク質のpIを増加させるもの(塩基性変化)、および、タンパク質のpIを増加させるもの(酸性変化)である。本明細書に開示されるように、これら変異のすべての組み合わせを行うことができる:1つのモノマーは野生型、または野生型と有意に異なるpIを示さない変異であっても良く、および、他方は、より塩基性またはより酸性であっても良い。あるいは、各モノマーが変更され、1つのより塩基性に、および1つがより酸性となる。
【0136】
pI変異の好ましい組み合わせを、図面に示す。
【0137】
重鎖の酸性pI変化
従って、変異重鎖定常ドメインを含有する1つのモノマーが、より正に作製される(たとえば、pIを低下させる)場合、以下の置換のうちの1以上が行われても良い:S119E、K133E、K133Q、T164E、K205E、K205Q、N208D、K210E、K210Q、K274E、K320E、K322E、K326E、K334E、R355E、K392E、K447の欠落、C末端へのペプチドDEDEの付加、G137E、N203D、K274Q、R355Q、K392N、および、Q419E。本明細書に概要され、図面に示されるように、これら変化は、IgG1と比較して示されているが、全てのアイソタイプならびにアイソタイプハイブリッドもこのように改変することができる。
【0138】
重鎖定常ドメインがIgG2〜4由来である場合において、R133EおよびR133Qを用いても良い。
【0139】
塩基性pI変化
従って、変異重鎖定常ドメインを含有する1つのモノマーが、より負に作製される(たとえば、pIを増加させる)場合、以下の置換のうちの1以上が行われても良い:Q196K、P217R、P228R、N276K、および、H435R。本明細書に概要され、図面に示されるように、これら変化は、IgG1と比較して示されているが、全てのアイソタイプならびにアイソタイプハイブリッドもこのように改変することができる。
【0140】
抗体異種二量体軽鎖の変異
抗体をベースにした異種二量体の場合、たとえば、モノマーの内の少なくとも1つが重鎖ドメインに加えて軽鎖を含有する場合、pI変異を当該軽鎖に行っても良い。軽鎖のpIを低下させるためのアミノ酸置換としては、限定されないが、K126E、K126Q、K145E、K145Q、N152D、S156E、K169E、S202E、K207E、および軽鎖のC末端へのペプチドDEDEの付加が挙げられる。定常λ軽鎖に基づいたこのカテゴリーにおける変化は、R108Q、Q124E、K126Q、N138D、K145T、およびQ199Eで1以上の置換を含有する。さらに、軽鎖のpIの増加が行われても良い。
【0141】
アイソタイプ変異
さらに、本発明の多くの実施態様は、1つのIgGアイソタイプから他のタイプへと、特定の位置でpIアミノ酸を「導入すること」に依っており、それにより、望ましくない免疫原性が変異体に導入される可能性が減少または排除される。すなわち、IgG1は、様々な理由(高いエフェクター機能を含む)により、治療抗体として普遍的なアイソタイプである。しかしながら、IgG1の重鎖定常領域は、IgG2よりも高いpI(7.31に対して、8.10)を有している。特定の位置でIgG1主鎖にIgG2の残基を導入することにより、得られたモノマーのpIは低下し(または増加し)、さらに、血清半減期が延長される。たとえば、IgG1は、137位でグリシン(pI5.97)を有しており、IgG2は、グルタミン酸(pI3.22)を有している;グルタミン酸の導入により、結果として得られるタンパク質のpIは影響を受ける。以下に記述されるように、通常、変異抗体のpIに有意な影響を与えるためには、多くのアミノ酸置換が必要とされる。しかしながら、以下に検討されるように、IgG2分子に等しい変化をもたらすことにより、血清半減期を増加することができる。
【0142】
他の実施態様において、得られるタンパク質全体の電荷状態を減少させる(たとえば、高いpIのアミノ酸を低いpIのアミノ酸へと変えることにより)、または、安定性を目的とした構造の調節を可能とさせる等ために、非アイソタイプのアミノ酸変化が行われる(以下に詳述される)。
【0143】
さらに、重鎖および軽鎖の定常ドメインの両方をpI操作することにより、異種二量体の各モノマーにおいて有意な変化が見られる。本明細書において検討されるように、2つのモノマーのpIを少なくとも0.5まで変えることにより、イオン交換クロマトグラフィー、等電点電気泳動、または他の等電点を感知できる方法による分離が可能となる。
【0144】
pIの算出
各モノマーのpIは、変異重鎖定常ドメインおよび総モノマー(変異重鎖定常ドメインおよび融合パートナーを含む)のpIに依存しうる。ゆえに、一部の実施態様において、pIにおける変化は、図の表を用いて、変異重鎖定常ドメインに基づいて算出される。あるいは、各モノマーのpIが比較されても良い。同様に、「開始」可変領域のpI(たとえば、scFvまたはFabのいずれか)を算出し、どのモノマーがどの方向で操作されているかの情報を得る。
【0145】
FcRnのin vivo結合の改善にも寄与するpI変異
pI変異がモノマーのpIを減少させる場合、in vivoの血清滞留を改善するという利点が加わりうる。
【0146】
まだ検証中ではあるが、エンドソーム内でpH6でFcRnに結合することによりFcが隔離されるため、Fc領域は、in vivo半減期を延長させると考えられている(Ghetie and Ward, 1997 Immunol Today. 18(12): 592-598、参照により全体で援用される)。次いで、エンドソーム分画は、Fcを細胞表面へとリサイクルする。分画が細胞外領域(pHは約7.4で高い)へと開いた時点で、Fcは血液中へ放出される。マウスにおいて、Dall’ Acquaらが、pH6およびpH7.4でのFcRn結合を増強したFc変異体が、血清濃度を実際に減少させ、野生型Fcと同じ程度の半減期を有したことを示している(Dall’ Acqua et al. 2002, J. Immunol. 169:5171-5180、参照により全体で援用される)。pH7.4でのFcRnに対するFcのアフィニティを増加させることにより、Fcの血液中への放出が阻害されると考えられている。それゆえ、Fcのin vivo半減期を増加させるFc変異は、高いpHでFcを放出させながら、低いpHでFcRn結合を理想的に増強する。アミノ酸のヒスチジンは、6.0〜7.4のpH範囲でのその電荷状態を変化させる。それゆえ、Fc/FcRn複合体において、His残基が重要な位置に存在することは、驚くべきことではない。
【0147】
近年、低い等電点を有する可変領域を伴う抗体は、血清半減期が長いということが推測されている(Igawa et al., 2010 PEDS. 23(5): 385-392、参照により全体が援用される)。しかしながら、そのメカニズムはまだ解明されていない。さらに、可変領域は抗体ごとに異なっている。pIが減少し、半減期が延長された定常領域変異体は、本明細書に開示される、抗体の薬物動態学的特性を改善するための、よりモジュール的な方法を提示するものである。
【0148】
本実施態様ならびに、精製最適化のための用途が見出されるpI変異は、図中に開示されている。
【0149】
異種二量体変異の組み合わせ
当業者に認識されているように、列挙される異種二量体化変異のすべては、その「鎖状構造らしさ」または「モノマー分離」が保持されている限り、任意選択的に、および独立して、いずれかの方法で組み合わせることができる。さらに、これら変異のすべては、任意の異種二量体形式へと組み合わせることができる。
図28およびその説明文を参照のこと。
【0150】
pI変異の場合において、図に実施態様から見出される特定の用途が示されているが、精製を容易にするための2つのモノマー間のpI差の改変に関する基本的なルールに従い、他の組み合わせを作製しても良い。
【0151】
標的抗原
本発明のイムノグロブリンは、事実上、全ての抗原を標的としうる。「三重F」形式は、特に2(以上)の異なる抗原を標的とする場合に有益である。(本明細書に概要されるように、この標的化は、形式によって、一価性および二価性の結合のいずれの組み合わせであっても良い)。ゆえに、本明細書において、イムノグロブリンは、好ましくは2つの標的抗原を共捕捉するが、一部の場合においては、3または4の抗原が、一価性に捕捉されてもよい。各モノマーの特異性は、以下のリストから選択されても良い。本明細書に開示される三重Fイムノグロブリンが、異なる抗原を標的化する場合に特に有益である一方、一部の場合においては、1つの抗原のみを標的とすることが有益である場合もある。すなわち、各モノマーが、同じ抗原に対する特異性を有しても良い。
【0152】
本明細書のイムノグロブリンの特定の適当な応用としては、各標的抗原を一価性に捕捉することが有益または重要である共標的対である。そのような抗原は、たとえば、免疫複合体の形成で活性化される免疫受容体であっても良い。多くの免疫受容体の細胞活性化は、通常、抗体/抗原免疫複合体により、またはエフェクター細胞の標的細胞捕捉を介して得られる架橋によってのみ発生する。一部の免疫受容体について、たとえば、T細胞上のCD3シグナル伝達受容体の例に関しては、共捕捉された標的の捕捉でのみ発生する活性化が重要であり、臨床状況で非特異的架橋が発生すると、サイトカインストームや毒性が発現しうる。治療的には、本明細書のイムノグロブリンを用いてそのような抗原を多価性ではなく一価性に捕捉することにより、主要標的抗原の微小環境中の架橋に対してのみ応答し、そのような活性化が発生する。2つの異なる抗原を、異なる価数で標的とする能力は、新規であり、本発明の有用性でもある。治療的に有益であり、一価性の共捕捉が必要とされる標的抗原の例としては、限定されないが、たとえばCD3、FcγR、トールライク受容体(TLR)(たとえば、TLR4およびTLR9)、サイトカイン、ケモカイン、サイトカイン受容体およびケモカイン受容体等の免疫活性化受容体など挙げられる。多くの実施態様において、抗原結合部位のうちの1つがCD3に結合し、一部の実施態様においては、それはscFv含有モノマーである。
【0153】
事実上、すべての抗原が、本明細書のイムノグロブリンの標的となり得、限定されないが、以下の標的抗原のリストにあるタンパク質、サブユニット、ドメイン、モチーフ、および/または、エピトープが挙げられ、それらは、たとえば、サイトカイン等の可溶性因子および膜結合因子(膜貫通型受容体(17−IA、4−1BB、4Dc、6−ケト−PGF1a、8−イソ−PGF2a、8−オキソ−dG、A1アデノシン受容体、A33、ACE、ACE−2、アクチビン、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンRIA、アクチビンRIA ALK−2、アクチビンRIB ALK−4、アクチビンRIIA、アクチビンRIIB、ADAM、ADAM10、ADAM12、ADAM15、ADAM17/TACE、ADAM8、ADAM9、ADAMTS、ADAMTS4、ADAMTS5、アドレシン、aFGF、ALCAM、ALK、ALK−1、ALK−7、α−1−抗トリプシン、α−V/β−1アンタゴニスト、ANG、Ang、APAF−1、APE、APJ、APP、APRIL、AR、ARC、ART、アルテミン(Artemin)、抗−Id、ASPARTIC、心房ナトリウム利尿性因子、av/b3インテグリン、Axl、b2M、B7−1、B7−2、B7−H、B−リンパ球刺激因子(BlyS)、BACE、BACE−1、Bad、BAFF、BAFF−R、Bag−1、BAK、Bax、BCA−1、BCAM、Bcl、BCMA、BDNF、b−ECGF、bFGF、BID、Bik、BIM、BLC、BL−CAM、BLK、BMP、BMP−2 BMP−2a、BMP−3 Osteogenin、BMP−4 BMP−2b、BMP−5、BMP−6 Vgr−1、BMP−7(OP−1)、BMP−8(BMP−8a、OP−2)、BMPR、BMPR−IA(ALK−3)、BMPR−IB(ALK−6)、BRK−2、RPK−1、BMPR−II(BRK−3)、BMPs、b−NGF、BOK、ボンベシン、骨由来神経栄養因子、BPDE、BPDE−DNA、BTC、補体因子3(C3)、C3a、C4、C5、C5a、C10、CA125、CAD−8、カルシトニン、cAMP、癌胎児抗原(CEA)、癌関連抗原、カテプシンA、カテプシンB、カテプシンC/DPPI、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンH、カテプシンL、カテプシンO、カテプシンS、カテプシンV、カテプシンX/Z/P、CBL、CCI、CCK2、CCL、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9/10、CCR、CCR1、CCR10、CCR10、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CD1、CD2、CD3、CD3E、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD13、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD27L、CD28、CD29、CD30、CD30L、CD32、CD33(p67 proteins)、CD34、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD46、CD49a、CD52、CD54、CD55、CD56、CD61、CD64、CD66e、CD74、CD80(B7−1)、CD89、CD95、CD123、CD137、CD138、CD140a、CD146、CD147、CD148、CD152、CD164、CEACAM5、CFTR、cGMP、CINC、ボツリヌス菌毒素、ウェルシュ菌毒素、CKb8−1、CLC、CMV、CMV UL、CNTF、CNTN−1、COX、C−Ret、CRG−2、CT−1、CTACK、CTGF、CTLA−4、CX3CL1、CX3CR1、CXCL、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCR、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、サイトケラチン腫瘍関連抗原、DAN、DCC、DcR3、DC−SIGN、崩壊促進因子、des(1−3)−IGF−I(脳IGF−1)、Dhh、ジゴキシン、DNAM−1、Dnase、Dpp、DPPIV/CD26、Dtk、ECAD、EDA、EDA−A1、EDA−A2、EDAR、EGF、EGFR(ErbB−1)、EMA、EMMPRIN、ENA、エンドセリン受容体、エンケファリナーゼ、eNOS、Eot、エオタキシン1、EpCAM、エフリンB2/EphB4、EPO、ERCC、E−セレクチン、ET−1、第IIa因子、第VII因子、第VIIIc因子、第IX因子、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fas、FcR1、FEN−1、フェリチン、FGF、FGF−19、FGF−2、FGF3、FGF−8、FGFR、FGFR−3、Fibrin、FL、FLIP、Flt−3、Flt−4、濾胞刺激ホルモン、フラクタルキン、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、G250、Gas 6、GCP−2、GCSF、GD2、GD3、GDF、GDF−1、GDF−3(Vgr−2)、GDF−5(BMP−14、CDMP−1)、GDF−6(BMP−13、CDMP−2)、GDF−7(BMP−12、CDMP−3)、GDF−8(ミオスタチン)、GDF−9、GDF−15(MIC−1)、GDNF、GDNF、GFAP、GFRa−1、GFR−α1、GFR−α2、GFR−α3、GITR、グルカゴン、Glut4、糖タンパク質IIb/IIIa(GPIIb/IIIa)、GM−CSF、gp130、gp72、GRO、成長ホルモン放出因子、ハプテン(NP−capまたはNIP−cap)、HB−EGF、HCC、HCMV gBエンベロープ糖タンパク質、HCMV)gHエンベロープ糖タンパク質、HCMV UL、造血増殖因子(HGF)、HepB gp120、ヘパラナーゼ、Her2、Her2/neu(ErbB−2)、Her3(ErbB−3)、Her4(ErbB−4)、ヘルペス単純ウイルス(HSV)gB糖タンパク質、HSV gD糖タンパク質、HGFA、高分子量メラノーマ関連抗原(HMW−MAA)、HIV gp120、HIV IIIB gp120 V3ループ、HLA、HLA−DR、HM1.24、HMFG PEM、HRG、Hrk、ヒト心筋ミオシン、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、ヒト成長ホルモン(HGH)、HVEM、I−309、IAP、ICAM、ICAM−1、ICAM−3、ICE、ICOS、IFNg、Ig、IgA受容体、IgE、IGF、IGF結合タンパク質、IGF−1R、IGFBP、IGF−I、IGF−II、IL、IL−1、IL−1R、IL−2、IL−2R、IL−4、IL−4R、IL−5、IL−5R、IL−6、IL−6R、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IL−13、IL−15、IL−18、IL−18R、IL−23、インターフェロン(INF)−α、INF−β、INF−γ、インヒビン、iNOS、インスリンA鎖、インスリンB鎖、インスリン様成長因子1、インテグリンα2、インテグリンα3、インテグリンα4、インテグリンα4/β1、インテグリンα4/β7、インテグリンα5(αV)、インテグリンα5/β1、インテグリンα5/β3、インテグリンα6、インテグリンβ1、インテグリンβ2、インターフェロンγ、IP−10、I−TAC、JE、カリクレイン2、カリクレイン5、カリクレイン6、、カリクレイン11、カリクレイン12、カリクレイン14、カリクレイン15、カリクレインL1、カリクレインL2、カリクレインL3、カリクレインL4、KC、KDR、角化細胞増殖因子(KGF)、ラミニン5、LAMP、LAP、LAP(TGF− 1)、潜在型TGF−1、潜在型TGF−1 bp1、LBP、LDGF、LECT2、Lefty、ルイスY抗原、ルイスY関連抗原、LFA−1、LFA−3、Lfo、LIF、LIGHT、リポタンパク質、LIX、LKN、Lptn、L−セレクチン、LT−a、LT−b、LTB4、LTBP−1、肺サーファクタント、黄体形成ホルモン、リンホトキシンΒ受容体、Mac−1、MAdCAM、MAG、MAP2、MARC、MCAM、MCAM、MCK−2、MCP、M−CSF、MDC、Mer、METALLOPROTEASES、MGDF受容体、MGMT、MHC(HLA−DR)、MIF、MIG、MIP、MIP−1−α、MK、MMAC1、MMP、MMP−1、MMP−10、MMP−11、MMP−12、MMP−13、MMP−14、MMP−15、MMP−2、MMP−24、MMP−3、MMP−7、MMP−8、MMP−9、MPIF、Mpo、MSK、MSP、ムチン(Muc1)、MUC18、Muellerianインヒビチン物質、Mug、MuSK、NAIP、NAP、NCAD、N−Cadherin、NCA 90、NCAM、NCAM、ネプリリシン、ニューロトロフィン−3,−4、または−6、ニュールツリン、神経増殖因子(NGF)、NGFR、NGF−β、nNOS、NO、NOS、Npn、NRG−3、NT、NTN、OB、OGG1、OPG、OPN、OSM、OX40L、OX40R、p150、p95、PADPr、副甲状腺ホルモン、PARC、PARP、PBR、PBSF、PCAD、P−カドヘリン、PCNA、PDGF、PDGF、PDK−1、PECAM、PEM、PF4、PGE、PGF、PGI2、PGJ2、PIN、PLA2、胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP)、PlGF、PLP、PP14、プロインスリン、プロリラキシン、プロテインC、PS、PSA、PSCA、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、PTEN、PTHrp、Ptk、PTN、R51、RANK、RANKL、RANTES、RANTES、リラキシンA鎖、リラキシンB鎖、レニン、呼吸系発疹ウイルス(RSV)F、RSV Fgp、Ret、リウマチ性因子、RLIP76、RPA2、RSK、S100、SCF/KL、SDF−1、SERINE、血清アルブミン、sFRP−3、Shh、SIGIRR、SK−1、SLAM、SLPI、SMAC、SMDF、SMOH、SOD、SPARC、Stat、STEAP、STEAP−II、TACE、TACI、TAG−72(腫瘍関連糖タンパク質72)、TARC、TCA−3、T細胞受容体(たとえば、T細胞受容体α/β)、TdT、TECK、TEM1、TEM5、TEM7、TEM8、TERT、精巣PLAP様アルカリホスファターゼ、TfR、TGF、TGF−α、TGF−β、TGF−β Pan Specific、TGF−β RI(ALK−5)、TGF−β RII、TGF−β RIIb、TGF−β RIII、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、TGF−β5、トロンビン、胸腺Ck−1、甲状腺刺激ホルモン、Tie、TIMP、TIQ、組織因子、TMEFF2、Tmpo、TMPRSS2、TNF、TNF−α、TNF−α β、TNF−β2、TNFc、TNF−RI、TNF−RII、TNFRSF10A(TRAIL R1 Apo−2、DR4)、TNFRSF10B(TRAIL R2 DR5、KILLER、TRICK−2A、TRICK−B)、TNFRSF10C(TRAIL R3 DcR1、LIT、TRID)、TNFRSF10D(TRAIL R4 DcR2、TRUNDD)、TNFRSF11A(RANK ODF R、TRANCE R)、TNFRSF11B(OPG OCIF、TR1)、TNFRSF12(TWEAK R FN14)、TNFRSF13B(T
ACI)、TNFRSF13C(BAFF R)、TNFRSF14(HVEM ATAR、HveA、LIGHT R、TR2)、TNFRSF16(NGFR p75NTR)、TNFRSF17(BCMA)、TNFRSF18(GITR AITR)、TNFRSF19(TROY TAJ、TRADE)、TNFRSF19L(RELT)、TNFRSF1A(TNF RI CD120a、p55−60)、TNFRSF1B(TNF RII CD120b、p75−80)、TNFRSF26(TNFRH3)、TNFRSF3(LTbR TNF RIII、TNFC R)、TNFRSF4(OX40 ACT35、TXGP1 R)、TNFRSF5(CD40 p50)、TNFRSF6(Fas Apo−1、APT1、CD95)、TNFRSF6B(DcR3 M68、TR6)、TNFRSF7(CD27)、TNFRSF8(CD30)、TNFRSF9(4−1BB CD137、ILA)、TNFRSF21(DR6)、TNFRSF22(DcTRAIL R2 TNFRH2)、TNFRST23(DcTRAIL R1 TNFRH1)、TNFRSF25(DR3 Apo−3、LARD、TR−3、TRAMP、WSL−1)、TNFSF10(TRAIL Apo−2リガンド、TL2)、TNFSF11(TRANCE/RANKリガンド ODF、OPGリガンド)、TNFSF12(TWEAK Apo−3リガンド、DR3リガンド)、TNFSF13(APRIL TALL2)、TNFSF13B(BAFF BLYS、TALL1、THANK、TNFSF20)、TNFSF14(LIGHT HVEMリガンド、LTg)、TNFSF15(TL1A/VEGI)、TNFSF18(GITRリガンド AITRリガンド、TL6)、TNFSF1A(TNF−a コネクチン、DIF、TNFSF2)、TNFSF1B(TNF−b LTa、TNFSF1)、TNFSF3(LTb TNFC、p33)、TNFSF4(OX40リガンド gp34、TXGP1)、TNFSF5(CD40リガンド CD154、gp39、HIGM1、IMD3、TRAP)、TNFSF6(Fasリガンド Apo−1リガンド、APT1リガンド)、TNFSF7(CD27リガンド CD70)、TNFSF8(CD30リガンド CD153)、TNFSF9(4−1BBリガンド CD137リガンド)、TP−1、t−PA、Tpo、TRAIL、TRAIL R、TRAIL−R1、TRAIL−R2、TRANCE、transferring受容体、TRF、Trk、TROP−2、TSG、TSLP、腫瘍関連抗原CA 125、腫瘍関連抗原発現ルイスY関連糖質、TWEAK、TXB2、Ung、uPAR、uPAR−1、ウロキナーゼ、VCAM、VCAM−1、VECAD、VE−カドヘリン、VE−カドヘリン2、VEFGR−1(flt−1)、VEGF、VEGFR、VEGFR−3(flt−4)、VEGI、VIM、ウイルス性抗原、VLA、VLA−1、VLA−4、VNRインテグリン、von Willebrands因子、WIF−1、WNT1、WNT2、WNT2B/13、WNT3、WNT3A、WNT4、WNT5A、WNT5B、WNT6、WNT7A、WNT7B、WNT8A、WNT8B、WNT9A、WNT9A、WNT9B、WNT10A、WNT10B、WNT11、WNT16、XCL1、XCL2、XCR1、XCR1、XEDAR、XIAP、XPDが挙げられる)、ならびにホルモンおよび増殖因子に対する受容体、が挙げられる)の両方が挙げられる。本発明の二特異性または三特異性抗体を形成するために、これら抗原に対する任意の組み合わせに対する抗体を作製することができる;すなわち、これら抗原の各々は、任意選択的に、および独立して、本発明による多特異性抗体から排除、または含有されても良い。
【0154】
本発明のイムノグロブリンにより特異的に標的とされうる抗原の例としては、限定されないが、以下が挙げられる:CD20、CD19、Her2、EGFR、EpCAM、CD3、FcγRIIIa(CD16)、FcγRIIa(CD32a)、Fc?RIIb(CD32b)、FcγRI(CD64)、トールライク受容体(TLR)(たとえば、TLR4およびTLR9)、サイトカイン(たとえば、IL−2、IL−5、IL−13、IL−12、IL−23、および、TNFα)、サイトカイン受容体(たとえば、IL−2R)、ケモカイン、ケモカイン受容体、増殖因子(たとえば、VEGFおよびHGF)。本発明の多特異性抗体を形成するために、これら抗原の任意の組み合わせに対する抗体を作製することができる;すなわち、これら抗原の各々は、任意選択的に、および独立して、本発明による多特異性抗体から排除、または含有されても良い。
【0155】
二特異性抗体の特に好ましい組み合わせは、CD3に対する抗原結合ドメインおよび、CD19に対する抗原結合ドメイン;CD3に対する抗原結合ドメインおよび、CD33に対する抗原結合ドメイン;CD3に対する抗原結合ドメインおよび、CD38に対する抗原結合ドメイン、である。再度、多くの実施態様において、CD3結合ドメインは、図に例示的な配列が示されている、scFvであり、および/または、概要されるCD3 CDRである。
【0156】
適切な標的抗原および共標的の選択は、所望される治療アプリケーションによる。抗体治療に特に適していることが証明されている標的の一部は、シグナル伝達機能を有するものである。他の治療用抗体は、受容体とその関連リガンドの間の結合を阻害することによって、受容体のシグナル伝達を妨害することにより、その効果を発揮する。治療用抗体の他の作用メカニズムは、受容体の下方制御をもたらすものである。他の抗体は、その標的抗原を介したシグナル伝達により、作用しない。共標的の選択は、治療される症状の病態の根底にある詳細な生態に依存する。
【0157】
モノクローナル抗体療法は、癌に対する重要な治療モダリティとして統合されている(Weiner et al., 2010, Nature Reviews Immunology 10:317-327; Reichert et al., 2005, Nature Biotechnology 23[9]:1073-1078、参照により本明細書に明示的に援用される)。抗癌治療に関しては、1つの抗原(抗原1)を標的とすることが望ましく、抗原1の発現は癌性細胞に限定されている一方で、何らかの免疫学的殺傷活性を調節する第二の抗原(抗原2)を共標的化する。他の治療に対しては、2つの抗原を共標的化することが有益であり得、たとえば、腫瘍の増殖に何らかの役割を果たすことが知られている2つの血管新生因子、または2つの増殖因子等を共標的化する。腫瘍に関する、共標的の例としては、限定されないが、HGFおよびVEGF、IGF−1RおよびVEGF、Her2およびVEGF、CD19およびCD3、CD20およびCD3、Her2およびCD3、CD19およびFcγRIIIa、CD20およびFcγRIIIa、Her2およびFcγRIIIaが挙げられる。本発明のイムノグロブリンは、VEGFおよびホスファチジルセリン;VEGFおよびErbB3;VEGFおよびPLGF;VEGFおよびROBO4;VEGFおよびBSG2;VEGFおよびCDCP1;VEGFおよびANPEP;VEGFおよびc−MET;HER−2およびERB3;HER−2およびBSG2;HER−2およびCDCP1;HER−2およびANPEP;EGFRおよびCD64;EGFRおよびBSG2;EGFRおよびCDCP1;EGFRおよびANPEP;IGF1RおよびPDGFR;IGF1RおよびVEGF;IGF1RおよびCD20;CD20およびCD74;CD20およびCD30;CD20およびDR4;CD20およびVEGFR2;CD20およびCD52;CD20およびCD4;HGFおよびc−MET;HGFおよびNRP1;HGFおよびホスファチジルセリン;ErbB3およびIGF1R;ErbB3およびIGF1,2;c−MetおよびHer−2;c−MetおよびNRP1;c−MetおよびIGF1R;IGF1,2およびPDGFR;IGF1,2およびCD20;IGF1,2およびIGF1R;IGF2およびEGFR;IGF2およびHER2;IGF2およびCD20;IGF2およびVEGF;IGF2およびIGF1R;IGF1およびIGF2;PDGFRaおよびVEGFR2;PDGFRaおよびPLGF;PDGFRaおよびVEGF;PDGFRaおよびc−Met;PDGFRaおよびEGFR;PDGFRbおよびVEGFR2;PDGFRbおよびc−Met;PDGFRbおよびEGFR;RONおよびc−Met;RONおよびMTSP1;RONおよびMSP;RONおよびCDCP1;VGFR1およびPLGF;VGFR1およびRON;VGFR1およびEGFR;VEGFR2およびPLGF;VEGFR2およびNRP1;VEGFR2およびRON;VEGFR2およびDLL4;VEGFR2およびEGFR;VEGFR2およびROBO4;VEGFR2およびCD55;LPAおよびS1P;EPHB2およびRON;CTLA4およびVEGF;CD3およびEPCAM;CD40およびIL6;CD40およびIGF;CD40およびCD56;CD40およびCD70;CD40およびVEGFR1;CD40およびDR5;CD40およびDR4;CD40およびAPRIL;CD40およびBCMA;CD40およびRANKL;CD28およびMAPG;CD80およびCD40;CD80およびCD30;CD80およびCD33;CD80およびCD74;CD80およびCD2;CD80およびCD3;CD80およびCD19;CD80およびCD4;CD80およびCD52;CD80およびVEGF;CD80およびDR5;CD80およびVEGFR2;CD22およびCD20;CD22およびCD80;CD22およびCD40;CD22およびCD23;CD22およびCD33;CD22およびCD74;CD22およびCD19;CD22およびDR5;CD22およびDR4;CD22およびVEGF;CD22およびCD52;CD30およびCD20;CD30およびCD22;CD30およびCD23;CD30およびCD40;CD30およびVEGF;CD30およびCD74;CD30およびCD19;CD30およびDR5;CD30およびDR4;CD30およびVEGFR2;CD30およびCD52;CD30およびCD4;CD138およびRANKL;CD33およびFTL3;CD33およびVEGF;CD33およびVEGFR2;CD33およびCD44;CD33およびDR4;CD33およびDR5;DR4およびCD137;DR4およびIGF1,2;DR4およびIGF1R;DR4およびDR5;DR5およびCD40;DR5およびCD137;DR5およびCD20;DR5およびEGFR;DR5およびIGF1,2;DR5およびIGFR、DR5およびHER−2、ならびに、EGFRおよびDLL4に結合することができる。他の標的の組み合わせとしては、EGF/efb−2/erb−3ファミリーのうちの1以上の因子が挙げられる。
【0158】
本明細書のイムノグロブリンが結合しうる癌性疾患に関与する他の標的(1以上)としては、限定されないが、CD52、CD20、CD19、CD3、CD4、CD8、BMP6、IL12A、IL1A、IL1B、1L2、IL24、INHA、TNF、TNFSF10、BMP6、EGF、FGF1、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF2、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、GRP、IGF1、IGF2、IL12A、IL1A、IL1B、1L2、INHA、TGFA、TGFB1、TGFB2、TGFB3、VEGF、CDK2、FGF10、FGF18、FGF2、FGF4、FGF7、IGF1R、IL2、BCL2、CD164、CDKN1A、CDKN1B、CDKN1C、CDKN2A、CDKN2B、CDKN2C、CDKN3、GNRH1、IGFBP6、IL1A、IL1B、ODZ1、PAWR、PLG、TGFB1I1、AR、BRCA1、CDK3、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK9、E2F1、EGFR、ENO1、ERBB2、ESR1、ESR2、IGFBP3、IGFBP6、IL2、INSL4、MYC、NOX5、NR6A1、PAP、PCNA、PRKCQ、PRKD1、PRL、TP53、FGF22、FGF23、FGF9、IGFBP3、IL2、INHA、KLK6、TP53、CHGB、GNRH1、IGF1、IGF2、INHA、INSL3、INSL4、PRL、KLK6、SHBG、NR1D1、NR1H3、NR1I3、NR2F6、NR4A3、ESR1、ESR2、NR0B1、NR0B2、NR1D2、NR1H2、NR1H4、NR112、NR2C1、NR2C2、NR2E1、NR2E3、NR2F1、NR2F2、NR3C1、NR3C2、NR4A1、NR4A2、NR5A1、NR5A2、NR6μl、PGR、RARB、FGF1、FGF2、FGF6、KLK3、KRT1、APOC1、BRCA1、CHGA、CHGB、CLU、COL1A1、COL6A1、EGF、ERBB2、ERK8、FGF1、FGF10、FGF11、FGF13、FGF14、FGF16、FGF17、FGF18、FGF2、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、GNRH1、IGF1、IGF2、IGFBP3、IGFBP6、IL12A、IL1A、IL1B、1L2、IL24、INHA、INSL3、INSL4、KLK10、KLK12、KLK13、KLK14、KLK15、KLK3、KLK4、KLK5、KLK6、KLK9、MMP2、MMP9、MSMB、NTN4、ODZ1、PAP、PLAU、PRL、PSAP、SERPINA3、SHBG、TGFA、TIMP3、CD44、CDH1、CDH10、CDH19、CDH20、CDH7、CDH9、CDH1、CDH10、CDH13、CDH18、CDH19、CDH20、CDH7、CDH8、CDH9、ROBO2、CD44、ILK、ITGA1、APC、CD164、COL6A1、MTSS1、PAP、TGFB1I1、AGR2、AIG1、AKAP1、AKAP2、CANT1、CAV1、CDH12、CLDN3、CLN3、CYB5、CYC1、DAB21P、DES、DNCL1、ELAC2、ENO2、ENO3、FASN、FLJ12584、FLJ25530、GAGEB1、GAGEC1、GGT1、GSTP1、HIP1、HUMCYT2A、IL29、K6HF、KAI1、KRT2A、MIB1、PART1、PATE、PCA3、PIAS2、PIK3CG、PPID、PR1、PSCA、SLC2A2、SLC33μl、SLC43μl、STEAP、STEAP2、TPM1、TPM2、TRPC6、ANGPT1、ANGPT2、ANPEP、ECGF1、EREG、FGF1、FGF2、FIGF、FLT1、JAG1、KDR、LAMA5、NRP1、NRP2、PGF、PLXDC1、STAB 1、VEGF、VEGFC、ANGPTL3、BAI1、COL4A3、IL8、LAMA5、NRP1、NRP2、STAB 1、ANGPTL4、PECAM1、PF4、PROK2、SERPINF1、TNFAIP2、CCL11、CCL2、CXCL1、CXCL10、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL9、IFNA1、IFNB1、IFNG、IL1B、IL6、MDK、EDG1、EFNA1、EFNA3、EFNB2、EGF、EPHB4、FGFR3、HGF、IGF1、ITGB3、PDGFA、TEK、TGFA、TGFB1、TGFB2、TGFBR1、CCL2、CDH5、COL1A1、EDG1、ENG、ITGAV、ITGB3、THBS1、THBS2、BAD、BAG1、BCL2、CCNA1、CCNA2、CCND1、CCNE1、CCNE2、CDH1(E−カドヘリン)、CDKN1B(p27Kip1)、CDKN2A(p161NK4a)、COL6A1、CTNNB1(b−カテニン)、CTSB(カテプシンB)、ERBB2(Her−2)、ESR1、ESR2、F3(TF)、FOSL1(FRA−1)、GATA3、GSN(ゲルソリン)、IGFBP2、IL2RA、IL6、IL6R、IL6ST(糖タンパク質130)、ITGA6(a6インテグリン)、JUN、KLK5、KRT19、MAP2K7(c−Jun)、MKI67(Ki−67)、NGFB(GF)、NGFR、NME1(M23A)、PGR、PLAU(uPA)、PTEN、SERPINB5(マスピン)、SERPINE1(PAI−1)、TGFA、THBS1(トロンボスポンジン−1)、TIE(Tie−1)、TNFRSF6(Fas)、TNFSF6(FasL)、TOP2A(トポイソメラーゼIia)、TP53、AZGP1(亜鉛−a−糖タンパク質)、BPAG1(プラセチン)、CDKN1A(p21Wap1/Cip1)、CLDN7(クローディン−7)、CLU(クラステリン)、ERBB2(Her−2)、FGF1、FLRT1(フィブロネクチン)、GABRP(GABAa)、GNAS1、ID2、ITGA6(a6インテグリン)、ITGB4(b4インテグリン)、KLF5(GC Box BP)、KRT19(ケラチン19)、KRTHB6(毛髪特異的II型ケラチン)、MACMARCKS、MT3(メタロチオネクチン−III)、MUC1(ムチン)、PTGS2(COX−2)、RAC2(p21Rac2)、S100A2、SCGB1D2(リポフィリンB)、SCGB2A1(マンマグロビン2)、SCGB2A2(マンマグロビン1)、SPRR1B(Spr1)、THBS1、THBS2、THBS4およびTNFAIP2(B94)、RON、c−Met、CD64、DLL4、PLGF、CTLA4、ホスファチジルセリン、ROBO4、CD80、CD22、CD40、CD23、CD28、CD80、CD55、CD38、CD70、CD74、CD30、CD138、CD56、CD33、CD2、CD137、DR4、DR5、RANKL、VEGFR2、PDGFR、VEGFR1、MTSP1、MSP、EPHB2、EPHA1、EPHA2、EpCAM、PGE2、NKG2D、LPA、SIP、APRIL、BCMA、MAPG、FLT3、PDGFR alpha、PDGFR beta、ROR1、PSMA、PSCA、SCD1、および、CD59からなる群から選択されるものが挙げられる。本発明の二特異性抗体または三特異性抗体を形成するために、これら抗原の任意の組み合わせに対する抗体を作製することができる;すなわち、これら抗原の各々は、任意選択的に、および独立して、本発明による多特異性抗体から排除、または含有されても良い。
【0159】
モノクローナル抗体療法は、自己免疫性疾患および炎症性疾患の治療にとって、重要な治療モダリティとなっている(Chan & Carter, 2010, Nature Reviews Immunology 10:301-316; Reichert et al., 2005, Nature Biotechnology 23[9]:1073-1078、参照により本明細書に明示的に援用される)。多くのタンパク質が、一般的な自己免疫応答および炎症性応答に関与しており、ゆえに、本発明のイムノグロブリンの標的となりうる。自己免疫および炎症の標的としては、限定されないが、C5、CCL1(I−309)、CCL11(エオタキシン)、CCL13(mcp−4)、CCL15(MIP−1d)、CCL16(HCC−4)、CCL17(TARC)、CCL18(PARC)、CCL19、CCL2(mcp−1)、CCL20(MIP−3a)、CCL21(MIP−2)、CCL23(MPIF−1)、CCL24(MPIF−2/エオタキシン−2)、CCL25(TECK)、CCL26、CCL3(MIP−1a)、CCL4(MIP−1b)、CCL5(RANTES)、CCL7(mcp−3)、CCL8(mcp−2)、CXCL1、CXCL10(IP−10)、CXCL11(1−TAC/IP−9)、CXCL12(SDF1)、CXCL13、CXCL14、CXCL2、CXCL3、CXCL5(ENA−78/LIX)、CXCL6(GCP−2)、CXCL9、IL13、IL8、CCL13(mcp−4)、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CX3CR1、IL8RA、XCR1(CCXCR1)、IFNA2、IL10、IL13、IL17C、IL1A、IL1B、IL1F10、IL1F5、IL1F6、IL1F7、IL1F8、IL1F9、IL22、IL5、IL8、IL9、LTA、LTB、MIF、SCYE1(内皮単球活性化サイトカイン)、SPP1、TNF、TNFSF5、IFNA2、IL10RA、IL10RB、IL13、IL13RA1、IL5RA、IL9、IL9R、ABCF1、BCL6、C3、C4A、CEBPB、CRP、ICEBERG、IL1R1、IL1RN、IL8RB、LTB4R、TOLLIP、FADD、IRAK1、IRAK2、MYD88、NCK2、TNFAIP3、TRADD、TRAF1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF5、TRAF6、ACVR1、ACVR1B、ACVR2、ACVR2B、ACVRL1、CD28、CD3E、CD3G、CD3Z、CD69、CD80、CD86、CNR1、CTLA4、CYSLTR1、FCER1A、FCER2、FCGR3A、GPR44、HAVCR2、OPRD1、P2RX7、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、BLR1、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL8、CCL11、CCL13、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CX3CL1、CX3CR1、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCR4、GPR2、SCYE1、SDF2、XCL1、XCL2、XCR1、AMH、AMHR2、BMPR1A、BMPR1B、BMPR2、C19orf10(IL27w)、CER1、CSF1、CSF2、CSF3、DKFZp451J0118、FGF2、GFI1、IFNA1、IFNB1、IFNG、IGF1、IL1A、IL1B、IL1R1、IL1R2、IL2、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3、IL4、IL4R、IL5、IL5RA、IL6、IL6R、IL6ST、IL7、IL8、IL8RA、IL8RB、IL9、IL9R、IL10、IL10RA、IL10RB、IL11、IL12RA、IL12A、IL12B、IL12RB1、IL12RB2、IL13、IL13RA1、IL13RA2、IL15、IL15RA、IL16、IL17、IL17R、IL18、IL18R1、IL19、IL20、KITLG、LEP、LTA、LTB、LTB4R、LTB4R2、LTBR、MIF、NPPB、PDGFB、TBX21、TDGF1、TGFA、TGFB1、TGFB1I1、TGFB2、TGFB3、TGFB1、TGFBR1、TGFBR2、TGFBR3、TH1L、TNF、TNFRSF1A、TNFRSF1B、TNFRSF7、TNFRSF8、TNFRSF9、TNFRSF11A、TNFRSF21、TNFSF4、TNFSF5、TNFSF6、TNFSF11、VEGF、ZFPM2、およびRNF110(ZNF144)が挙げられる。本発明の二特異性抗体または三特異性抗体を形成するために、これら抗原の任意の組み合わせに対する抗体を作製することができる;すなわち、これら抗原の各々は、任意選択的に、および独立して、本発明による多特異性抗体から排除、または含有されても良い。
【0160】
自己免疫性疾患および炎症性疾患の共標的の例としては、限定されないが、IL−1およびTNFalpha、IL−6およびTNFalpha、IL−6およびIL−1、IgEおよびIL−13、IL−1およびIL−13、IL−4およびIL−13、IL−5およびIL−13、IL−9およびIL−13、CD19およびFcγRIIb,およびCD79およびFcγRIIbが挙げられる。
【0161】
炎症性疾患の治療のための以下の標的対に対する特異性を有する、本発明のイムノグロブリンが予期される:TNFおよびIL−17A;TNFおよびRANKL;TNFおよびVEGF;TNFおよびSOST;TNFおよびDKK;TNFおよびαVβ3;TNFおよびNGF;TNFおよびIL−23p19;TNFおよびIL−6;TNFおよびSOST;TNFおよびIL−6R;TNFおよびCD−20;IgEおよびIL−13;IL−13およびIL23p19;IgEおよびIL−4;IgEおよびIL−9;IgEおよびIL−9;IgEおよびIL−13;IL−13およびIL−9;IL−13およびIL−4;IL−13およびIL−9;IL−13およびIL−9;IL−13およびIL−4;IL−13およびIL−23p19;IL−13およびIL−9;IL−6RおよびVEGF;IL−6RおよびIL−17A;IL−6RおよびRANKL;IL−17AおよびIL−1β;IL−1βおよびRANKL;IL−1βおよびVEGF;RANKLおよびCD−20;IL−1αおよびIL−1β;IL−1αおよびIL−1β。
【0162】
本明細書に開示されるイムノグロブリンが結合することができ、および、喘息治療に有用でありうる標的の対は、決定されても良い。1つの実施態様において、そのような標的としては、限定されないが、IL−13およびIL−1βが挙げられる(IL−1βは、喘息の炎症性応答に関与しているため);IL−13ならびに、炎症に関与するサイトカインおよびケモカイン(たとえば、IL−13およびIL−9;IL−13およびIL−4;IL−13およびIL−5;IL−13およびIL−25;IL−13およびTARC;IL−13およびMDC;IL−13およびMIF;IL−13およびTGF−β;IL−13およびLHRアゴニスト;IL−13およびCL25;IL−13およびSPRR2a;IL−13およびSPRR2b;ならびに、IL−13およびADAM8)。本明細書のイムノグロブリンは、CSF1(MCSF)、CSF2(GM−CSF)、CSF3(GCSF)、FGF2、IFNA1、IFNB1、IFNG、ヒスタミンおよびヒスタミン受容体、IL1A、IL1B、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12A、IL12B、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18、IL19、KITLG、PDGFB、IL2RA、IL4R、IL5RA、IL8RA、IL8RB、IL12RB1、IL12RB2、IL13RA1、IL13RA2、IL18R1、TSLP、CCLi、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL8、CCL13、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL22、CCL24、CX3CL1、CXCL1、CXCL2、CXCL3、XCLi、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CX3CR1、GPR2、XCR1、FOS、GATA3、JAK1、JAK3、STAT6、TBX21、TGFB1、TNF、TNFSF6、YY1、CYSLTR1、FCER1A、FCER2、LTB4R、TB4R2、LTBR、およびキチナーゼからなる群から選択される、喘息に関与する標的の1以上に対する特異性を有しても良い。本発明の二特異性抗体または三特異性抗体を形成するために、これら抗原の任意の組み合わせに対する抗体を作製することができる;すなわち、これら抗原の各々は、任意選択的に、および独立して、本発明による多特異性抗体から排除、または含有されても良い。
【0163】
リウマチ性関節炎(RA)に関与する標的対が、本発明により共捕捉されても良く、限定されないが、TNFおよびIL−18;TNFおよびIL−12;TNFおよびIL−23;TNFおよびIL−1beta;TNFおよびMIF;TNFおよびIL−17;ならびに、TNFおよびIL−15が挙げられる。
【0164】
本明細書のイムノグロブリンによって全身性エリテマトーデスを治療するために標的となりうる抗原は、限定されないが、CD−20、CD−22、CD−19、CD28、CD4、CD80、HLA−DRA、IL10、IL2、IL4、TNFRSF5、TNFRSF6、TNFSF5、TNFSF6、BLR1、HDAC4、HDAC5、HDAC7A、HDAC9、ICOSL、IGBP1、MS4A1、RGSI、SLA2、CD81、IFNB1、IL10、TNFRSF5、TNFRSF7、TNFSF5、AICDA、BLNK、GALNAC4S−6ST、HDAC4、HDAC5、HDAC7A、HDAC9、IL10、IL11、IL4、INHA、INHBA、KLF6、TNFRSF7、CD28、CD38、CD69、CD80、CD83、CD86、DPP4、FCER2、IL2RA、TNFRSF8、TNFSF7、CD24、CD37、CD40、CD72、CD74、CD79A、CD79B、CR2、ILIR2、ITGA2、ITGA3、MS4A1、ST6GALI、CDIC、CHSTIO、HLA−A、HLA−DRA、およびNT5E.;CTLA4、B7.1、B7.2、BlyS、BAFF、C5、IL−4、IL−6、IL−10、IFN−α、およびTNF−αが挙げられる。本発明の二特異性抗体または三特異性抗体を形成するために、これら抗原の任意の組み合わせに対する抗体を作製することができる;すなわち、これら抗原の各々は、任意選択的に、および独立して、本発明による多特異性抗体から排除、または含有されても良い。
【0165】
本明細書のイムノグロブリンは、多発性硬化症(MS)の治療のための抗原を標的としてもよく、限定されないが、IL−12、TWEAK、IL−23、CXCL13、CD40、CD40L、IL−18、VEGF、VLA−4、TNF、CD45RB、CD200、IFNgamma、GM−CSF、FGF、C5、CD52、および、CCR2が挙げられる。実施態様には、MSの治療のための、抗IL−12およびTWEAKの共捕捉が含まれる。
【0166】
本発明の1つの態様は、敗血症に関与する標的の1つ以上に結合することができるイムノグロブリンに関するものであり、1つの実施態様においては、2つの標的であり、TNF、IL−1、MIF、IL−6、IL−8、IL−18、IL−12、IL−23、FasL、LPS、Toll様受容体、TLR−4、組織因子、MIP−2、ADORA2A、CASP1、CASP4、IL−10、IL−1B、NFκB1、PROC、TNFRSFIA、CSF3、CCR3、ILIRN、MIF、NFκB1、PTAFR、TLR2、TLR4、GPR44、HMOX1、midkine、IRAK1、NFκB2、SERPINA1、SERPINE1、および、TREM1からなる群から選択される。本発明の二特異性抗体または三特異性抗体を形成するために、これら抗原の任意の組み合わせに対する抗体を作製することができる;すなわち、これら抗原の各々は、任意選択的に、および独立して、本発明による多特異性抗体から排除、または含有されても良い。
【0167】
一部の例において、本明細書のイムノグロブリンは、感染性疾患の治療のための抗原を目的としても良い。
【0168】
本発明の抗体は通常、単離されていても、または組換え体であっても良い。本明細書に開示される様々なポリペプチドを記述する際、「単離された」とは、それが発現された細胞または細胞培養物から特定され、ならびに、分離および/または回収されたポリペプチドを意味する。通常、単離されたポリペプチドは、少なくとも1回の精製工程により調製される。「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体から実質的に離れている抗体を指す。
【0169】
特定の抗原への「特異的結合」または「特異的に結合する」または特定の抗原に対し「特異的である」とは、非特異的相互作用とは測定可能な程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、たとえば、対照分子(通常、結合活性を有していない類似の構造の分子である)の結合と比較して、分子の結合を測定することにより測定することができる。たとえば、特異的結合は、標的と類似した対照分子との競合により測定することができる。
【0170】
特定の抗原またはエピトープに対する特異的結合は、たとえば、少なくとも約10−4M、少なくとも約10−5M、少なくとも約10−6M、少なくとも約10−7M、少なくとも約10−8M、少なくとも約10−9M,あるいは、少なくとも約10−10M、少なくとも約10−11M、少なくとも約10−12Mかそれ以上の、抗原またはエピトープに対するKDを有する抗体により、示されてもよく、ここで、KDとは、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度を指す。典型的には、抗原に特異的に結合する抗体は、抗原またはエピトープに関し、対照分子に対して、20〜、50〜、100〜、500〜、1000〜、5,000〜、10,000倍かそれ以上大きなKDを有する。
【0171】
または、特定の抗原またはエピトープに対する特異的結合は、たとえば、対照と比較して、エピトープに対し、20〜、50〜、100〜、500〜、1000〜、5,000〜、10,000倍かそれ以上大きな抗原またはエピトープに対するKAまたはKaを有する抗体により示されても良く、KAまたはKaとは、特定の抗体−抗原相互作用の会合速度を指す。
【0172】
改変抗体
上述の修飾に加え、他の修飾を施しても良い。たとえば、VHとVLドメインを連結するジスルフィド結合の組み込みにより分子を安定化させても良い(Reiter et al., 1996, Nature Biotech. 14:1239-1245、参照により本明細書に全体で援用される)。さらに、以下に概要されるように、様々な共有結合修飾を抗体に施すことができる。
【0173】
抗体の共有結合修飾は、本発明の範囲に含まれ、および、通常は(常にではない)、翻訳後に行われるものである。たとえば、抗体の特定のアミノ酸残基と、有機誘導体化剤(選択された側鎖、またはN末端残基もしくはC末端残基と反応させることができる)とを反応させることにより、分子内にいくつかのタイプの抗体の共有結合修飾が導入される。
【0174】
システイニル残基は、最も普遍的な、たとえばクロロ酢酸またはクロロアセトアミド等のαハロアセテート(および相当するアミン)と反応する残基であり、カルボキシメチル誘導体またはカルボキシアミドメチル誘導体を生成する。システイニル残基はまた、ブロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミドゾイル)プロピオン酸、リン酸クロロアセチル、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル2−ピリジルジスルフィド、p−クロロ安息香酸水銀、2−クロロ水銀−4−ニトロフェノール、またはクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール等との反応により誘導体化されても良い。
【0175】
さらに、システインでの修飾は、抗体−薬剤結合物(ADC)応用において特に有用である(以下に詳述)。一部の実施態様において、抗体の定常領域は、特定の「チオール反応性」である1以上のシステインを含有するように操作することができ、それにより、薬剤部分の配置がより特異的および制御可能となる。たとえば、米国特許第7,521,541号(本明細書に参照によりその全体で援用される)を参照のこと。
【0176】
ヒスチジル残基は、pH5.5〜7.0での、ジエチルピロカーボネートとの反応により誘導体化される(この剤は、ヒスチジル側鎖に対し比較的特異性であるため)。パラブロモフェナシルブロミドもまた、有用である;反応は、pH6.0で、0.1Mのカコジル酸ナトリウム中で行われるのが好ましい。
【0177】
リシニル残基およびアミノ末端残基は、コハク酸または他の無水カルボン酸と反応する。これら剤の誘導体化は、リシン残基の電荷を戻すのに有効である。α−アミノ含有残基の誘導体化に適切な他の試薬としては、たとえば、メチルピコリンイミデート等のイミドエステル;リン酸ピリドキサール;ピリドキサール;クロロほう化水素;トリニトロベンゼンスルホン酸;O−メチルイソウレア;2,4−ペンタンジオン;および、グリオキシル酸とのトランスアミナーゼ触媒反応が挙げられる。
【0178】
アルギニル残基は、1または数種の標準的な試薬、とりわけ、フェニルグリオキサル、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンとの反応により修飾される。アルギニン残基の誘導体化には、グアニジン官能基の高いpKaのために、その反応がアルカリ条件下で行われる必要がある。さらに、これら試薬は、リシン基、ならびにアルギニンイプシロン−アミノ基と反応しうる。
【0179】
チロシル残基の特異的修飾は、芳香族ジアゾニウムまたはテトラニトロメタンとの反応により、チロシル残基へとスペクトル標識を導入することに特に関心を持ちながら、行われても良い。最も普遍的には、N−アセチルイミダゾールおよびテトラニトロメタンを用いて、それぞれ、O−アセチルチロシル種および3−ニトロ誘導体が形成される。チロシル残基は、125Iまたは131Iを用いてヨウ素化され、放射性免疫アッセイにおける使用のための標識タンパク質が調製される(上述のクロルアミンT法が適切である)。
【0180】
カルボキシル側鎖(アスパルチルまたはグルタミル)は、カルボジイミド(R´−N=C=N−−R´)との反応により選択的に修飾され、ここで、RおよびR´は、任意選択的に、アルキル基(たとえば、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミド、または1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミド等)と異なっている。さらに、アスパルチル残基およびグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応により、アスパラギニル残基およびグルタミニル残基へと転換される。
【0181】
二機能性剤の誘導体化は、以下に記述される方法に加え、様々な方法における使用のための、抗体の水不溶性支持体マトリクスまたは表面への架橋に有用である。普遍的に用いられる架橋剤としては、たとえば、1−bis(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(たとえば、4−アジドサリチル酸を伴うエステル)、同種二機能性イミドエステル(ジスクシンイミジルエステル(たとえば、3,3´−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)等)が挙げられる)、および二機能性マレイミド(たとえば、bis−N−マレイミド−1,8−オクタン、が挙げられる。たとえば、メチル−3−[(p−アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデート等の誘導体化剤は、光の存在下で架橋を形成することができる光活性化中間体を産生する。あるいは、反応性の水−不溶性のマトリクス(たとえば、シノモルグソゲン(cynomolgusogen)ブロミド活性化炭水化物)および反応性基質(米国特許第3,969,287号;第3,691,016号;第4,195,128号;第4,247,642号;第4,229,537号;および第4,330,440号に記述される。すべて参照により全体で援用される)が、タンパク質の固定に用いられる。
【0182】
グルタミニル残基およびアスパラギニル残基は多くの場合、それぞれ対応するグルタミル残基およびアスパルチル残基へと脱アミド化される。あるいは、これら残基は、弱酸性の条件下で脱アミド化される。これら残基のいずれの形式も、本発明の範囲内にある。
【0183】
他の修飾としては、プロリンおよびリシンのヒドロキシル化、セリル残基またはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖のαアミノ基のメチル化(T. E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W. H. Freeman & Co., San Francisco, pp. 79-86 [1983]、参照により全体で援用される)、N末端アミンのアセチル化およびC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
【0184】
さらに、当業者に認識されているように、標識(蛍光、酵素、磁性、放射性標識等を含む)はすべて、抗体(ならびに、本発明の他の組成物)に付加されても良い。
【0185】
グリコシル化
他のタイプの共有結合修飾は、グリコシル化における改変である。他の実施態様において、本明細書に開示される抗体は、1以上の操作された糖型を含有するよう修飾されても良い。本明細書において、「操作された糖型」とは、抗体に共有結合された糖質組成物を意味し、ここで、前記糖質組成物は、元の抗体から化学的に異なっている。操作された糖型は、様々な目的に対し有用であり得、その目的としては、限定されないが、エフェクター機能の増強または減少が挙げられる。操作された糖型のこのましい形態は、脱フコシル化であり、脱フコシル化は、ADCC機能の増加に相関していることが示されており、FcγRIIIa受容体に対するより強い結合を介すると推測されている。この文脈において、「脱フコシル化」とは、宿主細胞中で産生された抗体の大部分が、実質的にフコースを欠いていることを意味し、産生された抗体の90〜95〜98%が、抗体の糖質部分(通常、Fc領域のN297に付着している)の成分として、検知可能な量のフコースを有していない。既定の機能上、脱フコシル化された抗体は、通常、FcγRIIIaに対し、少なくとも50%かそれ以上のアフィニティを示す。
【0186】
操作された糖型は、当分野公知の様々な方法により生成されても良い(Umana et al., 1999, Nat Biotechnol 17:176-180; Davies et al., 2001, Biotechnol Bioeng 74:288-294; Shields et al., 2002, J Biol Chem 277:26733-26740; Shinkawa et al., 2003, J Biol Chem 278:3466-3473; US6,602,684;USSN10/277,370;USSN10/113,929;PCT WO00/61739A1;PCT WO01/29246A1;PCT WO02/31140A1;PCT WO02/30954A1。すべて参照により全体で援用される);(ポテリジェント(登録商標)技術[Biowa, Inc., Princeton, NJ];GlycoMab(登録商標)グリコシル化操作技術 [Glycart Biotechnology AG, Zurich, Switzerland])。これら技術の多くが、たとえば、操作された、様々な生物体または細胞株におけるIgGの発現による(たとえば、Lec−13CHO細胞またはラットハイブリドーマYB2/0細胞)、または、グリコシル化経路に関与する酵素を制御することによる(たとえば、FUT8[α1,6−フコシルトランスフェラーゼ]および/またはβ1−4−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII[GnIII]))、または、IgGが発現された後に糖質(複数含む)を修飾することによる、Fc領域に共有結合されたオリゴ糖のフコシル化および/または二等分化のレベルの制御に基づいている。たとえば、「糖操作抗体」または、製造の間のフコシル化を阻害する、修飾単糖を付加することによる、Seattle Genetics機能の「SEA技術」(たとえば、20090317869を参照のこと(参照により、その全体で本明細書に援用される))。操作された糖型とは、通常、普通ではない糖質またはオリゴ糖を指し、ゆえに、抗体は、操作された糖型を含有しても良い。
【0187】
あるいは、操作された糖型とは、普通ではない糖質またはオリゴ糖を含有するIgG変異体を指しても良い。当分野に公知のように、グリコシル化パターンは、タンパク質の配列(たとえば、以下に検討される特定のグリコシル化アミノ酸残基の存在の有無)、またはタンパク質が産生される宿主細胞もしくは生物体の両方に依っている。特定の発現システムを、以下に検討する。
【0188】
ポリペプチドのグリコシル化は通常、N結合型またはO結合型のいずれかである。N結合型とは、アスパラギン残基の側鎖に糖質部分が付着することを指す。トリペプチド配列であるアスパラギン−X−セリン、および、アスパラギン−X−スレオニン(ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への糖質部分の酵素付着に対する認識配列である。ゆえに、ポリペプチド中のこれらトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的なグリコシル化部位が創出される。O結合型グリコシル化とは、糖類であるN−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つが、ヒドロキシアミノ酸(最も普遍的なのはセリンまたはスレオニンだが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシセリンもまた用いても良い)に付着することを指す。
【0189】
抗体へのグリコシル化部位の付加は、上述のトリペプチド配列のうちの1以上を含有するよう、アミノ酸配列を改変することにより簡便に行うことができる(N−結合型グリコシル化部位に対しては)。改変はまた、開始配列に、1以上のセリンまたはスレオニン残基を付加、または置換することにより行ってもよい(O−結合型グリコシル化部位に対しては)。簡便にするために、抗体のアミノ酸配列は、所望のアミノ酸へと翻訳されるコドンが作製されるよう、DNAレベルでの変更を介して改変することが好ましく、特に、標的ポリペプチドをコードするDNAにあらかじめ選択された塩基で、変異誘導を行うことにより、改変することが好ましい。
【0190】
抗体上の糖質部分の数を増加させる他の手段は、タンパク質にグリコシドを酵素的にカップリング、または化学的にカップリングする方法である。これらの手順は、N結合型グリコシル化およびO結合型グリコシル化に対するグリコシル化の能力を有する宿主細胞中でのタンパク質の酸性が必要とされない場合において、有利である。用いるカップリングの様式に基づいて、糖類(複数含む)は、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフヒドリル基(たとえば、システインのもの)、(d)遊離ヒドロキシル基(たとえば、セリン、スレオニン、またはヒドロキシプロリンのもの)、(e)芳香族残基(たとえば、フェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンのもの)、または(f)グルタミンのアミド基、に付着されても良い。これらの方法は、WO87/05330、および、Aplin and Wriston, 1981, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306に記述されている(両方とも参照により全体で援用される)。
【0191】
開始抗体上に存在する糖部分の除去(たとえば、翻訳後に)は、化学的または酵素的に行われても良い。化学的な脱グリコシル化には、タンパク質が、トリフルオロメタンスルホン酸化合物または均等な化合物に曝露される必要がある。この処置により、結合糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)以外のほとんどの糖、または全ての糖が切断される一方、ポリペプチドは生のままに保たれる。化学的な脱グリコシル化は、Hakimuddin et al., 1987, Arch. Biochem. Biophys. 259:52、および、Edge et al., 1981, Anal. Biochem. 118:131に記述されている(両方とも参照により全体で援用される)。ポリペプチド上の糖部分の酵素開裂は、様々なエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼを使用することにより行うことができる(Thotakura et al., 1987, Meth. Enzymol. 138:350に記述される。参照により全体で援用される)。潜在的なグリコシル化部位でのグリコシル化は、ツニカマイシン化合物の使用により阻害されうる(Duskin et al., 1982, J. Biol. Chem. 257:3105に記述される。参照により全体で援用される)。ツニカマイシンは、タンパク質−N−グリコシド結合の形成を阻害する。
【0192】
他のタイプの抗体の共有結合修飾には、抗体を、たとえば、2005−2006 PEGカタログ(Nektar Therapeutics)(Nektarのウェブサイトから入手可能)、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号、または、第4,179,337号(すべて、参照により全体で援用される)に記述される方法で、様々な非タンパク質性のポリマー(限定されないが、たとえばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレン等の様々なポリオールが挙げられる)に結合することが含まれる。さらに、当分野で公知であるように、抗体内の様々な位置でアミノ酸置換を行い、たとえばPEG等のポリマーの付加を容易にしても良い。たとえば、米国特許公開2005/0114037A1を参照のこと(参照により全体で援用される)。
【0193】
機能性追加のための追加のFc変異
pIアミノ酸変異に加え、様々な理由のために行うことができる、多くの有用なFcアミノ酸修飾が存在する(限定されないが、1以上のFcγR受容体への結合の改変、FcRn受容体への結合の改変等)。
【0194】
従って、本発明のタンパク質は、本明細書に概要される異種二量体化変異(pI変異を含む)を含む、アミノ酸修飾を含有することができる。
【0195】
FcγR変異
従って、1以上のFcγR受容体に対する結合を改変するために行うことができる、有用なFc置換が数多く存在する。結合の増加、ならびに結合の低下をもたらす置換が、有用でありうる。たとえば、Fc□RIIIaに対する結合の増加は、通常、ADCCの増加(抗体依存性細胞介在性細胞毒性;細胞が介在する反応であり、FcγRを発現する非特異的細胞毒性細胞が、標的細胞上に結合された抗体を認識し、次いで、標的細胞の溶解をもたらす)をもたらす。同様に、FcγRIIb(阻害性受容体)に対する結合の低下は、一部の環境下において同様に有益でありうる。本発明における用途が見出されるアミノ酸置換としては、USSN11/124,620(特に、
図41)、11/174,287、11/396,495、11/538,406(それらすべて、特に、その中に開示されている変異に対して、参照により明示的に全体で援用される)にリストアップされているものが挙げられる。用途が見出される特定の変異としては、限定されないが、236A、239D、239E、332E、332D、239D/332E、267D、267E、328F、267E/328F、236A/332E、239D/332E/330Y、239D、332E/330Lおよび、299Tが挙げられる。
【0196】
さらに、これらは、FcRn受容体に対する結合の増加、および結成は安源基の延長に用途が見出される追加のFc置換であっても良く(USSN12/341,769に具体的に開示される。参照によりその全体で本明細書に援用される)、434S、428L、308F、259I、428L/434S、259I/308F、436I/428L、436I or V/434S、436V/428L、および、259I/308F/428L限定されないが、が挙げられる。
Fc欠落変異
本発明に用途が見出される追加の変異は、Fcγ受容体に対する結合が欠落(たとえば、減少または消滅)しているものである。これは、本発明の異種二量体抗体の潜在的な作用メカニズムを減少させる場合に望ましい(たとえば、ADCC活性を減少させる)。多くの適切なFc欠落変異が
図35に示されており、任意選択的に、および独立して、任意の他の異種二量体変異(pI変異および立体構造変異を含む)と組み合わせて、包含または除外されても良い。
【0197】
リンカー
本発明は、任意選択的に、たとえばさらなる抗原結合部位を追加する場合において、必要に応じてリンカーを備えるものであり、たとえば
図11、12および13に示されるものがあり、ここで、分子の「他の末端」は、追加の抗原結合成分を含有している。さらに、以下に概要されるように、リンカーは、任意選択的に、抗体薬剤結合物(ADC)システムにおいても用いられる。中心mAb−Fv構築物の成分の連結に用いられる場合、リンカーは通常、ペプチド結合により連結される2以上のアミノ酸残基を含有するポリペプチドであり、本発明の1以上の成分を連結するために用いられる。そのようなリンカーポリペプチドは当分野に公知である(たとえば、Holliger, P., et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448; Poljak, R. J., et al. (1994) Structure 2:1121-1123を参照のこと)。様々なリンカーが、本明細書の一部の実施態様における用途が見出される。当業者に認識されているように、本発明において、少なくとも3つの異なるリンカーのタイプが存在する。
【0198】
本明細書において、「リンカー」とは、「リンカー配列」、「スペーサー」、「テザリング配列」、またはそれらの文法的均等物のことを指す。同種、または異種二機能性リンカーも当分野に公知である(1994 Pierce Chemical Company のカタログの、架橋剤に関する技術セクション、155−200ページを参照のこと。参照により全体で援用される)。(包括的な「リンカー」と「scFvリンカー」および「荷電scFvリンカー」の間の差異に注意されたい)。多くの戦略を用いて、分子を共有結合させてもよい。これらとしては、限定されないが、タンパク質またはタンパク質ドメインのN末端およびC末端間のポリペプチド結合、ジスルフィド結合を介した結合、および、化学的架橋剤を介した結合が挙げられる。本実施態様の1つの態様において、リンカーは、組み換え技術またはペプチド合成により作製されたペプチド結合である。リンカーペプチドは、主に、以下のアミノ酸残基を含有しても良い:Gly、Ser、Ala、またはThr。リンカーペプチドは、所望の活性が保持されるよう、お互いに対して正しい構造をとるようなやり方で、2つの分子を連結させるために適切な長さを有していなければならない。1つの実施態様において、リンカーは、約1〜50アミノ酸の長さ、好ましくは約1〜30アミノ酸の長さである。1つの実施態様において、1〜20のアミノ酸の長さのリンカーが用いられても良い。有用なリンカーとしては、グリシン−セリンのポリマー(たとえば、(GS)n、(GSGGS)n、(GGGGS)n、および(GGGS)nが挙げられ、ここで、nは、少なくとも1つの整数である)、グリシン−アラニンのポリマー、アラニン−セリンのポリマー、および他の可塑性のリンカーが挙げられる。あるいは、様々な非タンパク質性のポリマー(限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマーが挙げられる)がリンカーとしての用途が見出される。
【0199】
他のリンカー配列としては、任意の長さのCL/CH1ドメイン(全残基のCL/CH1を除く)の任意の配列が挙げられ;たとえば、CL/CH1ドメインの最初の5〜12のアミノ酸残基が挙げられる。リンカーは、イムノグロブリン軽鎖(たとえば、C
κまたはCλ)由来であっても良い。リンカーは、任意のアイソタイプ(たとえば、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4、Cα1、Cα2、Cδ、Cε、およびCμが挙げられる)のイムノグロブリン重鎖由来であっても良い。リンカー配列はまた、たとえばIg様タンパク質(たとえば、TCR、FcR、KIR等)、ヒンジ領域由来配列、および他のタンパク質の天然配列等の他のタンパク質由来であっても良い。
【0200】
抗体−薬剤結合物
一部の実施態様において、本発明の多特異性抗体は、薬剤と結合され、抗体−薬剤結合物(ADC)を形成する。概して、ADCは、癌応用に用いられており、抗体−薬剤結合物を、細胞毒性剤または細胞増殖抑制剤の局所送達のために用いることにより、薬剤部分を腫瘍へ標的化送達することが可能になり、それによって、毒性は低く、高い有効性等が得られる。この技術の概要は、Ducry et al., Bioconjugate Chem., 21:5-13 (2010), Carter et al., Cancer J. 14(3):154 (2008)および、Current Opin. Chem. Biol. 13:235-244 (2009)に開示されている(それらすべて、本明細書に参照によりその全体で援用される)。
【0201】
ゆえに、本発明により、薬剤に結合された多特異性抗体が開示される。一般的に、結合は、以下に詳述するように抗体への共有結合によってなされ、および、通常、リンカー(多くの場合、ペプチドリンカー)に依っている(以下に記述されるように、標的部位で、プロテアーゼによる開裂に感受性であるよう、または感受性ではないように設計される)。さらに、上述のように、リンカー−薬剤ユニット(LU−D)の連結は、抗体内のシステインへの付加により行われても良い。当業者に認識されているように、抗体当たりの薬剤の数は、反応条件により変更されてもよく、および、1:1〜10:1の薬剤:抗体の割合で変化しても良い。当業者に認識されているように、実数は平均である。
【0202】
ゆえに、本発明により、薬剤に結合された多特異性抗体が開示される。以下に記述されるように、ADCの薬剤は、任意の数の剤であっても良く、限定されないが、細胞毒性剤(たとえば、化学療法剤、増殖抑制剤、毒素(たとえば、酵素的に活性となる細菌毒素、真菌毒素、植物毒、もしくは動物起源の毒、またはそれらの断片等)または放射性同位体(すなわち、放射性結合物)等)が挙げられる。他の実施態様において、本発明により、ADCを用いる方法が皿に開示される。
【0203】
本発明における使用のための薬剤としては、細胞毒性剤、特に、癌治療に用いられるものが挙げられる。そのような薬剤としては、通常、DNA傷害罪、抗代謝剤、天然物質、およびそのアナログが挙げられる。細胞毒性剤の例示的な種類としては、たとえばジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤およびチミジル酸合成酵素阻害剤等の酵素阻害剤、DNAインターカレーター、DNA開裂剤、トポイソメラーゼ阻害剤、アントラサイクリン薬剤ファミリー、ビンカ剤、ミトマイシン、ブレオマイシン、細胞毒性ヌクレオシド、プテリジン薬剤ファミリー、ジイネン(diynenes)、ポドフィロトキシン、ドラスタチン、マイタンシノイド、分化誘導剤およびタキソールが挙げられる。
【0204】
これらの分類の薬剤としては、たとえば、メトトレキサート、メトプテリン、ジクロロメトトレキサート、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、シトシンアラビノシド、メルファラン、ロイロシン、ロイロシダイン(leurosideine)、アクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ミトマイシンC、ミトマイシンA、カミノマイシン、アミノプテリン、タリソマイシン(tallysomycin)、ポドフィロトキシンおよびポドフィロトキシン誘導体(たとえば、エトポシドまたはリン酸エトポシド)、ビンブラスチン、ビンクラスチン、ビンデシン、タキサン、(タキソールを含む)、タキソテレレチノイン酸、酪酸、N8−アセチルスペルミジン、カンプトテシン、カリケアミシン、エスペラミシン、エンジイン、ズオカルミシンA、ズオカルミシンSA、カリケアミシン、カンプトテシン、マイタンシノイド(DM1を含む)、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、モノメチルオーリスタチンF(MMAF)、およびマイタンシノイド(DM4)およびそれらのアナログが挙げられる。
【0205】
毒素を、抗体−毒素結合物として用いても良く、たとえばジフテリア毒素等の細菌毒素、たとえばリシン等の植物毒、たとえばゲルダナマイシン(Mandler et al (2000) J. Nat. Cancer Inst. 92(19):1573-1581; Mandler et al (2000) Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028; Mandler et al (2002) Bioconjugate Chem. 13:786-791)、マイタンシノイド(EP 1391213; Liu et al., (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623)、およびカリケアミシン(Lode et al (1998) Cancer Res. 58:2928; Hinman et al (1993) Cancer Res. 53:3336-3342)等の小分子毒素が挙げられる。毒素は、チューブリン結合、DNA結合、またはトポイソメラーゼ阻害を含むメカニズムにより、その細胞毒性効果および細胞増殖抑制効果を発揮しうる。
【0206】
多特異性抗体と、1以上の小分子毒素(たとえば、マイタンシノイド、ドラスタチン、オーリスタチン、トリコテセン、カリケアミシン、およびCC1065ならびに、毒素活性を有するこれら毒素の誘導体等)の結合物が予期される。
【0207】
マイタンシノイド
マイタンシノイド薬剤部分としての使用に適したマイタンシン化合物は、当分野に公知であり、公知の方法に従い、天然物質から単離することができ、遺伝子操作技術を用いて製造することができ(Yu et al (2002) PNAS 99:7968-7973を参照のこと)、または、マイタンシノールおよびマイタンシノールアナログは、公知の方法に従い合成的に調製することができる。以下に記述されるように、薬剤は、たとえばチオールまたはアミン基等の、抗体の結合に対し機能的に活性な基を組み込むことにより、修飾されてもよい。
【0208】
例示的なマイタンシノイド薬剤部分の例としては、たとえば、C−19−デクロロ(米国特許第4,256,746号)(アンサマイトシンP2の水素化アルミニウムリチウム還元により調製される);C−20−ヒドロキシ(または、C−20−デメチル)+/−C−19−デクロロ(米国特許第4,361,650号および第4,307,016号)(ストレプトマイセスまたは亜口のマイセスを用いた脱メチル化、または、LAHを用いた脱塩素により調製される);および、C−20−デメトキシ、C−20−アシルオキシ(−−OCOR)、+/−デクロロ(米国特許第4,294,757号)(アシルクロリドを用いたアシル化により調製される)等の修飾芳香族環を有するもの、および、他の位置で修飾を有するもの、が挙げられる。
【0209】
マイタンシノイド薬剤部分の例としてはまた、たとえば、C−9−SH(米国特許第4,424,219号)(H2SまたはP2S5を用いたマイタンシノールの反応により調製される);C−14−アルコキシメチル(デメトキシ/CH2OR)(米国特許第4,331,598号);C−14−ヒドロキシメチルまたはアシルオキシメチル(CH2OHまたはCH2OAc)(米国特許第4,450,254号)(ノカルジアから調製される);C−15−ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4,364,866号)(ストレプトマイセスによるマイタンシノールの転換により調製される);C−15−メトキシ(米国特許第4,313,946号および第4,315,929号)(Trewia nudlfloraから単離される);C−18−N−デメチル(米国特許第4,362,663号および第4,322,348号)(ストレプトマイセスによるマイタンシノールの脱メチル化により調製される);および、4,5−デオキシ(米国特許第4,371,533号)(チタニウムトリクロリド/マイタンシノールののLAH還元により調製される)等の修飾を有する者が挙げられる。
【0210】
DM1(米国特許第5,208,020号に開示される。参照により援用される)およびDM4(米国特許第7,276,497号に開示される。参照により援用される)が特に使用される。また、5,416,064、WO/01/24763、7,303,749、7,601,354、USSN 12/631,508、WO02/098883、6,441,163、7,368,565、WO02/16368および、WO04/1033272(それらすべて、参照によりその全体において明示的に援用される)の多くのさらなるマイタンシノイド誘導体および方法を参照のこと。
【0211】
マイタンシノイドを含有するADC、それを作製する方法、およびその治療用途は、たとえば、米国特許第5,208,020号;第5,416,064号;第6,441,163号および欧州特許第0 425 235 B1号に開示されている(それら開示は、参照により明示的に本明細書に援用される)。Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623 (1996)において、ヒト結腸直腸癌に対するモノクローナル抗体C242に連結された、DM1と指定されるマイタンシノイドを含有するADCが記述されている。結合物は、培養結腸癌細胞に対し、高い細胞毒性があることが判明しており、in vivo腫瘍増殖アッセイにおいて、抗腫瘍活性を示した。
【0212】
Chari et al., Cancer Research 52:127-131 (1992)において、マイタンシノイドが、ヒト結腸癌細胞株上の抗原に結合するマウス抗体A7、または、HER−2/neu癌遺伝子に結合する他のマウスマウスモノクローナル抗体TA.1に、ジスルフィド結合を介して結合されているADCが開示されている。TA.1マイタンシノイド結合物の細胞毒性は、ヒト乳癌細胞株SK−BR−3(3x105のHER−2表面抗原/細胞を発現している)に対し、in vitroで検証された。薬剤結合物は、遊離マイタンシノイド薬物と同程度の細胞毒性を発揮し、抗体分子あたりのマイタンシノイド分子の数を増加させることにより、細胞毒性の程度も増加した。A7−マイタンシノイド結合物は、マウスにおいて、全身性の細胞毒性が低かった。
【0213】
オーリスタチンおよびドラスタチン
一部の実施態様において、ADCは、ドラスタチンまたはドラスタチンペプチドアナログおよび誘導体、オーリスタチン(米国特許第5,635,483号;第5,780,588号)に結合された多特異性抗体を含有する。ドラスタチンおよびオーリスタチンは、微小管の動態、GTP加水分解、ならびに核および細胞の分裂に干渉することが示されており(Woyke et al (2001) Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12):3580-3584)、抗癌活性(米国特許第5,663,149号)および抗真菌活性(Pettit et al (1998) Antimicrob. Agents Chemother. 42:2961-2965)を有している。ドラスタチンまたはオーリスタチン薬剤部分は、ペプチド薬剤部分のN(アミノ)末端またはC(カルボキシル)末端を介して抗体に付加されていても良い(WO 02/088172)。
【0214】
例示的なオーリスタチンの実施態様としては、N末端結合モノメチルオーリスタチン薬剤部分DEおよびDFが挙げられ、Senter et al, Proceedings of the American Association for Cancer Research, Volume 45, Abstract Number 623(2004年3月28日公開)に開示され、および、米国特許公開2005/0238648に記述されている(それら開示は、明示的にその全体で参照により援用される)。
【0215】
オーリスタチンの例示的な実施態様は、MMAEである(米国特許第6,884,869号を参照のこと。参照によりその全体で明示的に援用される)。
【0216】
オーリスタチンの他の例示的な実施態様は、MMAFである(US2005/0238649、5,767,237および6,124,431を参照のこと。参照によりその全体で明示的に援用される)。
【0217】
MMAEまたはMMAFおよび様々なリンカー成分(本明細書に詳述される)を含むさらなる例示的な実施態様は、以下の構造および略語を有している(Abは抗体を意味し、pは1〜約8である)。
【0218】
典型的には、ペプチドを基にした薬剤部分は、2以上のアミノ酸および/またはペプチド断片の間にペプチド結合を形成することにより調製されることができる。そのようなペプチド結合は、たとえば、ペプチド化学の分野において公知である液相合成法(E. Schroder and K. Lubke, “The Peptides”, volume 1, pp 76-136, 1965, Academic Pressを参照のこと)に従い、調製されてもよい。オーリスタチン/ドラスタチン薬剤部分は、米国特許第号5,635,483号;米国特許第5,780,588号; Pettit et al (1989) J. Am. Chem. Soc. 111:5463-5465; Pettit et al (1998) Anti-Cancer Drug Design 13:243-277; Pettit, G. R., et al. Synthesis, 1996, 719-725; Pettit et al (1996) J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 5:859-863;および、Doronina (2003) Nat Biotechnol 21(7):778-784の方法に従い調製されてもよい。
【0219】
カリケアミシン
他の実施態様において、ADCは、1以上のカリケアミシン分子に結合された本発明の抗体を含有する。たとえば、Mylotargは、最初に市販されたADC薬物であり、カリケアミシンγ1をペイロードとして使用している(米国特許第4,970,198号を参照のこと。その全体で参照により援用される)。さらなるカリケアミシン誘導体は、米国特許第5,264,586号、第5,384,412号、第5,550,246号、第5,739,116号、第5,773,001号、第5,767,285号、および第5,877,296号に開示されている(すべて、参照により明示的に援用される)。抗生物質のカリケアミシンファミリーは、ピコモル以下の濃度で二本鎖DNAの破壊をもたらすことができる。カリケアミシンファミリー結合物の調製については、米国特許第5,712,374号、第5,714,586号、第5,739,116号、第5,767,285号、第5,770,701号、第5,770,710号、第5,773,001号、第5,877,296号を参照のこと(すべて、American Cyanamid Company)。用いることができるカリケアミシンの構造アナログとしては、限定されないが、γ1I、α2I、α2I、N−アセチル−γ1I、PSAGおよびθI1が挙げられる(Hinman et al., Cancer Research 53:3336-3342 (1993), Lode et al., Cancer Research 58:2925-2928 (1998)、および前述のAmerican Cyanamidに対する米国特許)。抗体が結合することができる他の抗腫瘍薬剤は、抗葉酸剤のQFAである。カリケアミシンおよびQFAの両方とも、細胞内に作用部位を有し、細胞膜を容易に透過しない。それゆえ、これらの剤を、抗体介在性の内在化により細胞内に取り込ませることにより、細胞毒性効果を大幅に増強させることができる。
【0220】
ズオカルミシン
CC−1065(4,169,888を参照のこと。参照により援用される)およびズオカルミシンは、ADCに用いられる抗腫瘍抗生物質のファミリーの一つである。これら構成物質は、副溝のアデニンのN3で、配列選択的にDNAをアルキル化することにより作用すると考えられており、アポトーシスをもたらすカスケード事象を開始させる。
【0221】
ズオカルミシンの重要なメンバーとしては、ズオカルミシンA(米国特許第4,923,990号、参照により援用される)、およびズオカルミシンSA(米国特許第5,101,038号。参照により援用される)、および、米国特許第7,517,903号、第7,691,962号、第5,101,038号、第5,641,780号、第5,187,186号、第5,070,092号、第5,070,092号、第5,641,780号、第5,101,038号、第5,084,468号、第5,475,092号、第5,585,499号、第5,846,545号、WO2007/089149、WO2009/017394A1、第5,703,080号、第6,989,452号、第7,087,600号、第7,129,261号、第7,498,302号、および第7,507,420号(それらすべて、明示的に参照により援用される)に開示される多くのアナログが挙げられる。
【0222】
他の細胞毒性剤
本発明の抗体に結合することができる他の抗腫瘍剤としては、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン、および5−フルオロウラシル、集合的にLL−E33288複合体(米国特許第5,053,394号、第5,770,710号に記述される)として知られる剤のファミリー、ならびにエスペラミシン(米国特許第5,877,296号)が挙げられる。
【0223】
用いることができる酵素的に活性な毒素およびその断片としては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、αサルシン、Aleurites fordiiタンパク質、dianthinタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、momordica charantia阻害物質、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害物質、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノミシン、エノミシンおよびトリコテシンが挙げられる。たとえば、WO93/21232(1993年10月公開)を参照のこと。
【0224】
本発明からさらに、抗体と、核酸分解活性を有する化合物(たとえば、リボヌクレアーゼまたはDNAエンドヌクレアーゼ(たとえば、デオキシリボヌクレアーゼ;DNase))の間に形成されるADCが予期される。
【0225】
腫瘍の選択的崩壊のために、抗体は、高い放射性原子を含有しても良い。様々な放射性同位体が、放射性結合抗体の製造に利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212およびLuの放射性同位体が挙げられる。
【0226】
放射性標識または他の標識を、公知の方法で結合物に組み込んでも良い。たとえば、ペプチドは、たとえば、水素の代わりにフッ素−19を含有する適切なアミノ酸前駆体を用いた化学アミノ酸合成により生合成または合成されても良い。たとえば、Tc99mまたはI123、Re186、Re188およびIn111等の標識物を、ペプチドのシステイン残基を介して付加しても良い。イットリウム−90を、リシン残基を介して付加しても良い。IODOGEN法(Fraker et al (1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80: 49-57)を、ヨウ素−123を組み込むために用いることができる。“Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy” (Chatal, CRC Press 1989)は他の方法を詳細に開示している。
【0227】
複数の抗体を含有する組成物のために、薬剤量は、抗体ごとの薬剤分子の平均数である、薬剤量は、pによりあらわされる。1〜20薬剤(D)/抗体
の範囲であっても良い。結合物調製の反応における、抗体ごとの薬剤の平均数は、たとえば質量分析、ELISAアッセイ、およびHPLC等の従来的な手段により特徴解析されても良い。pを単位として、抗体−薬剤−結合物の量的分布が測定されても良い。
【0228】
一部の例において同種抗体−薬剤−結合物の分離、精製、および特徴解析(pは、他の薬剤担持を伴う抗体−薬剤−結合物由来のある値である)は、たとえば、逆相HPLCまたは電気泳動等の手段により行われても良い。例示的な実施態様において、pは、2、3、4、5、6、7または8またはその分数である。
【0229】
抗体−薬剤−結合物の作製は、当業者公知の任意の方法により行うことができる。簡略に述べれば、抗体−薬剤−結合物は、抗体ユニットとして多特異性抗体、薬剤、および任意選択的に薬剤を結合するリンカー、および結合剤を含有しても良い。
【0230】
多くの異なる反応が、薬剤および/またはリンカーの結合剤に対する共有結合に対し利用可能である。これは、結合剤のアミノ酸残基の反応により行うことができ、たとえば、リシンのアミン基、グルタミン酸およびアスパラギン酸の遊離カルボキシル酸基、システインのスルフヒドリル基、および、芳香族アミノ酸の様々な部分を含む抗体分子が挙げられる。普遍的に用いられている非特異的な共有結合法は、化合物のカルボキシ(またはアミノ)基を、抗体のアミノ(またはカルボキシ)基に連結するためのカルボジイミド反応である。さらに、たとえばジアルデヒドまたはイミドエステル等の二機能性剤を用いて、化合物のアミノ基を、抗体分子のアミノ基に連結させる。
【0231】
また、Schiffベース反応が、結合剤へ薬剤を付着するために利用可能である。この方法には、グリコールまたはヒドロキシ基を含有する薬剤の過ヨウ素酸塩酸化が含まれ、それによって、アルデヒドが形成され、次いで、結合剤と反応させる。付加は、結合剤のアミノ基を伴うSchiffベースの形成を介して発生する。イソチオシアネートを、結合剤への共有結合する薬剤に対するカップリング剤として用いることもできる。他の技術も当業者に公知であり、本発明の範囲内にある。
【0232】
一部の実施態様において、リンカーの前駆体である中間体を適切な条件下で薬剤と反応させる。他の実施態様において、反応基は、薬剤および/または中間体に用いられる。薬剤と中間体の間の反応の産物、または誘導体化薬剤を、次いで、本発明の多特異性抗体と適切な条件下で反応させる。
【0233】
化学的修飾を所望される化合物に施し、本発明の結合物の調製の目的に対し、より簡便にその化合物の反応を行っても良い。たとえば、アミン、ヒドロキシルまたはスルフヒドリル等の官能基を、薬剤の活性または他の特性に最小限の受容可能な影響に留まる位置で、薬剤に付加しても良い。
【0234】
リンカーユニット
典型的には、抗体−薬剤結合物は、薬剤ユニットと抗体ユニットの間にリンカーユニットを含有する。一部の実施態様において、リンカーは、細胞内または細胞外の条件下で開裂可能であり、リンカーの開裂により、適切な環境下で抗体から薬剤ユニットが放出される。たとえば、あるプロテアーゼを分泌する固形腫瘍を、開裂可能なリンカーの標的とし、他の実施態様においては、細胞内プロテアーゼが用いられる。さらに他の実施態様において、リンカーユニットは開裂可能ではなく、たとえばリソソームにおける抗体の分解により、薬剤が放出される。
【0235】
一部の実施態様においてリンカーは、細胞内環境(たとえば、リソソームまたはエンドソームまたはカベオラ内)に存在する開裂剤により開裂可能である。リンカーは、たとえば、細胞内ペプチダーゼ酵素またはプロテアーゼ酵素(限定されないが、リソソームプロテアーゼまたはエンドソームプロテアーゼが挙げられる)により開裂されるペプチジルリンカーであっても良い。一部の実施態様においては、ペプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸の長さであり、または、少なくとも3アミノ酸もしくはそれ以上の長さである。
【0236】
開裂剤としては、限定されないが、カテプシンBおよびDならびにプラスミン(それらすべて、ジペプチド薬剤誘導体を加水分解することが知られており、標的細胞の内側で活性薬剤の放出をもたらす)が挙げられる(たとえば、Dubowchik and Walker, 1999, Pharm. Therapeutics 83:67-123を参照のこと)。CD38発現細胞に存在する酵素により開裂可能なペプチジルリンカー。たとえば、癌性組織において高度に発現されているチオール依存性プロテアーゼカテプシンBにより開裂可能なペプチジルリンカーを用いても良い(たとえば、Phe−LeuまたはGly−Phe−Leu−Glyリンカー(配列番号X))。そのようなリンカーの他の例は、米国特許第6,214,345号(全ての目的に対し、参照によりその全体で本明細書に援用される)に開示されている。
【0237】
一部の実施態様において、細胞内プロテアーゼにより開裂可能なペプチジルリンカーは、Val−CitリンカーまたはPhe−Lysリンカーである(たとえば、val−citリンカーとドキソルビシンの合成を開示する米国特許第6,214,345号を参照のこと)。
【0238】
他の実施態様において、開裂可能なリンカーは、pH感受性である。すなわち、あるpH値での加水分解に感受性である。典型的には、pH感受性リンカーは、酸性条件下で加水分解可能である。たとえば、リソソームで加水分解可能な酸−不安定性リンカー(たとえば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、シス−アコニットアミド、オルトエステル、アセタール、ケタール等)を用いても良い(たとえば、米国特許第5,122,368号、第5,824,805号、第5,622,929号、Dubowchik and Walker, 1999, Pharm. Therapeutics 83:67-123; Neville et al., 1989, Biol. Chem. 264:14653-14661を参照のこと)。そのようなリンカーは、たとえば血液中などの中性pH条件下で比較的安定であるが、リソソームの近似pHであるpH5.5または5.0を下回る場合は不安定である。ある実施態様において、加水分解可能なリンカーは、チオエステルリンカーである(たとえば、アシルヒドラゾン結合を介して治療剤に付加されるチオエステル)(米国特許第5,622,929号を参照のこと)。
【0239】
さらに他の実施態様において、リンカーは、還元条件下で開裂可能である(たとえば、ジスルフィドリンカー)。様々なジスルフィドリンカーが当分野に公知であり、たとえば、SATA(N−スクシンイミジル−5−アセチルチオアセテート)、SPDP(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート)およびSMPT(N−スクシンイミジル−オキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジル−ジチオ)トルエン)−、SPDBおよびSMPTが挙げられる。(たとえば、Thorpe et al., 1987, Cancer Res. 47:5924-5931; Wawrzynczak et al., In Immunoconjugates: Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer (C. W. Vogel ed., Oxford U. Press, 1987を参照のこと。米国特許第4,880,935号も参照のこと)。
【0240】
他の実施態様において、リンカーは、マロン酸リンカー(Johnson et al., 1995, Anticancer Res. 15:1387-93)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lau et al., 1995, Bioorg-Med-Chem. 3(10):1299-1304)、または、3´−N−アミドアナログ(Lau et al., 1995, Bioorg-Med-Chem. 3(10):1305-12)である
【0241】
さらに他の実施態様において、リンカーユニットは、開裂可能ではなく、薬剤は、抗体の分解により放出される。米国特許公開2005/0238649を参照のこと(全ての目的に対し、全体で本明細書に参照により援用される)。
【0242】
多くの実施態様において、リンカーは自壊性である。本明細書において、「自壊性スペーサー」という用語は、2つの離れて置かれた化学的部分を共に共有結合させ、三部構成分子とすることができる二機能性化学部分を指す。もし第一の部分に対するその結合が開裂された場合、第二の化学的部分から自発的に分離する。たとえば、WO2007059404A2、WO06110476A2、WO05112919A2、WO2010/062171、WO09/017394、WO07/089149、WO07/018431、WO04/043493およびWO02/083180を参照のこと(薬剤および開裂可能な基質が任意選択的に自壊性リンカーを介して連結されている薬剤−開裂可能な基質の結合物を目的としており、すべて参照により明示的に援用される)。
【0243】
多くの場合、リンカーは細胞外環境に対し実質的に感受性ではない。本明細書において、リンカーに関し、「細胞外環境に対し実質的に感受性ではない」とは、抗体−薬剤結合物が細胞外環境(たとえば、血漿中)に存在した際に、抗体−薬剤結合物試料中のリンカーの約20%、15%、10%、5%、3%未満またはリンカーの約1%未満が、開裂されることを意味する。
【0244】
リンカーが細胞外環境に実質的に感受性ではないかどうかは、たとえば、抗体−薬剤結合物と血漿を、既定の時間(たとえば、2、4、8、16または24時間)、インキュベートし、次いで、血漿中に存在する遊離薬剤の量を定量することによって、測定することができる。
【0245】
他の、非相互排他的な実施態様において、リンカーは、細胞内在化を促進する。ある実施態様において、リンカーは、治療剤と結合された際に細胞内在化を促進する(すなわち、本明細書に記述される抗体−薬剤結合物のリンカー治療剤部分の環境において)。さらに他の実施態様において、リンカーは、オーリスタチン化合物および本発明の多特異性抗体の両方と結合された際に、細胞の内在化を促進する。
【0246】
本発明の組成物および方法に用いることができる様々なリンカーの例は、WO2004−010957、米国特許公開2006/0074008、米国特許公開20050238649、および米国特許公開2006/0024317に記述されている(各々が、全ての目的に対し、参照により本明細書にその全体で援用される)。
【0247】
薬剤量
薬剤量は、pにより表され、および、分子中の抗体当たりの薬剤部分の平均数である。薬剤量(p)は、抗体当たり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上の部分であっても良いが、しばしば、平均数は、分数または小数である。一般的に、1〜4の薬剤量が多くの場合有用であり、および1〜2もまた有用である。本発明のADCは、1〜20の薬剤部分の範囲で結合された抗体のコレクションを含有する。結合反応から調製されたADCの抗体当たりの薬剤部分の平均数は、たとえば質量分析およびELISAアッセイ等の標準的な手段により解析されてもよい。
【0248】
pを単位としたADCの量的分布もまた測定されても良い。一部の例において、同種ADCの分離、精製および特徴解析(pは、他の薬剤量を有するADC由来のある値である)は、たとえば電気泳動等の手段により行うことができる。
【0249】
一部の抗体−薬剤結合物に対し、pは、抗体の付加部位の数により限定されうる。たとえば、付加がシステインチオールである場合、上述の例示的な実施態様のように、抗体は、たった1つ、またはいくつかのシステインチオール基のみを有しても良く、または、たった1つまたはいくつかの十分に反応性のあるチオール基を有しても良く、それらを介してリンカーは付加される。ある実施態様において、たとえばp>5等、薬剤量が高いと、ある抗体−薬剤結合物の凝集、不溶、毒性、または細胞透過性の消失が発生することがある。ある実施態様において、本発明のADCに対する薬剤量は、1〜約8;約2〜約6;約3〜約5;約3〜約4;約3.1〜約3.9;約3.2〜約3.8;約3.2〜約3.7;約3.2〜約3.6;約3.3〜約3.8;または、約3.3〜約3.7の範囲である。実施に、あるADCに対し、抗体当たりの最適な薬剤部分の比率は、8未満、および約2〜約5でありうることが示されている。2005−0238649 A1を参照のこと(参照によりその全体で本明細書に援用される)。
【0250】
ある実施態様において、薬剤部分の理論上の最大値よりも少ない量が、結合反応の間に抗体に結合される。抗体は、たとえば、薬剤−リンカー中間体またはリンカー試薬と反応しないリシン残基を含有してもよい(以下に記述)。胃パン的に、抗体は、薬剤部分と連結されうる多くの遊離および反応性のシステインチオール基を含有しない;実際に、抗体中のほとんどのシステインチオール残基は、ジスルフィド架橋として存在している。ある実施態様において、抗体を、たとえばジチオスレイトール(DTT)またはトリカルボニルエチルホスフェート(TCEP)等の還元剤を用いて、部分的にまたは全体的に還元条件下で還元し、反応性のシステインチオール基を生じさせても良い。ある実施態様において、抗体は、たとえばリシンまたはシステイン等の反応性求核基を示すために、変性条件に供される。
【0251】
ADCの量(薬剤/抗体比)は、異なる方法で制御されても良く、たとえば、(i)薬剤−リンカー中間体のモル過剰を制限する、または抗体に対するリンカー試薬のモル過剰を制限する、(ii)結合反応時間または温度を制限する、(iii)システインチオール修飾に対する、部分的または制限還元条件、(iv)リンカー−薬剤付着物の数および/または位置の制御のためにシステイン残基の数および位置が修飾されるよう、抗体のアミノ酸配列を組み換え技術により操作する(たとえば、本明細書およびにWO2006/034488開示されるように調製される、thioMabまたはthioFab等。その全体で参照により本明細書に援用される)。
【0252】
2以上の求核基が薬剤−リンカー中間体またはリンカー試薬と反応し、次いで薬剤部分試薬と反応する場合、得られた産物は、抗体の付加された1以上の薬剤部分が分布されたADC化合物の混合物であることを理解されたい。抗体当たりの薬剤の平均数は、抗体に対し特異的であり、および、薬剤に対して特異的である、二重ELISA抗体アッセイにより混合物から算出されても良い。個々のADC分子は、質量分析およびHPLC分離(たとえば、疎水性相互作用クロマトグラフィー)によって、混合物中で特定されても良い。
【0253】
一部の実施態様において、1つの担持値を有する異種ADCが、電気泳動またはクロマトグラフィーにより結合物混合物から単離されても良い。
【0254】
ADCの細胞毒性効果の測定法
薬剤または抗体−薬剤結合物が細胞増殖抑制効果および/または細胞毒性効果を細胞に対し発揮しているかどうかを測定する方法は公知である。一般的に、抗体薬剤結合物の細胞毒性活性または細胞増殖抑制活性は、以下により測定することができる:抗体薬剤結合物の標的タンパク質を発現する哺乳類細胞を、細胞培養培地中に曝すこと;約6時間〜約5日間、細胞を培養すること;および、細胞の活性を測定すること。細胞ベースのin vitroアッセイを用いて、活性(増殖)、細胞毒性および、抗体薬剤結合物によるアポトーシスの誘導(カスパーゼ活性化)を測定することができる。
【0255】
抗体−薬剤結合物が、細胞増殖抑制効果を発揮しているかどうかを測定するために、チミジン取り込みアッセイを用いても良い。例えば、標的抗原を発現している癌細胞を5,000細胞/ウェルの密度で播種し、72時間培養し、そして、72時間の最後の8時間の間に、3H−チミジンの0.5μCiに曝しても良い。培養細胞への3Hチミジンの取り込みは、抗体薬剤結合物の存在下、または非存在下で測定される。
【0256】
細胞毒性の測定に対しては、ネクローシスまたはアポトーシス(プログラム化された細胞死)を測定しても良い。ネクローシスは、通常、細胞膜の透過性増加により発生する;細胞の膨張および細胞膜の破裂。アポトーシスは通常、膜のブレブ形成、細胞質の凝縮、および内在性エンドヌクレアーゼの活性化二より特徴づけられる。癌細胞に対するこれら効果が測定された場合、当該抗体薬剤結合物が、癌の治療に有用であることを示している。
【0257】
細胞活性は、たとえばニュートラルレッド、トリパンブルー、またはALAMAR(登録商標)ブルー(たとえば、Page et al., 1993, Intl. J. Oncology 3:473-476を参照)等の色素の細胞における取り込みを測定することにより、確定することができる。そのようなアッセイにおいては、細胞は、色素を含有する培地中でインキュベートされ、細胞が洗浄され、そして色素が残留すれば、それは色素の細胞取込を反映しており、分光光度計により測定される。タンパク質結合色素であるスルホローダミンB(SRB)もまた、細胞毒性の測定に用いることができる(Skehan et al., 1990, J. Natl. Cancer Inst. 82:1107-12)。
【0258】
あるいは、たとえばMTT等のテトラゾリウム塩が、生きた細胞は検出するが、死んだ細胞は検出しないことにより、哺乳類細胞の生存および増殖に対する定量比色アッセイに用いられる(たとえば、Mosmann, 1983, J. Immunol. Methods 65:55-63を参照のこと)。
【0259】
アポトーシスは、たとえば、DNAの断片化を測定することにより定量することができる。DNA断片化のin vitro定量測定のための市販の光分析法が利用可能である。そのようなアッセイの例としては、TUNEL(断片化DNAにおける標識ヌクレオチドの組み込みを検出する)およびELISAベースアッセイが挙げられ、(Biochemica, 1999, no. 2, pp. 34-37 (Roche Molecular Biochemicals))に記述されている。
【0260】
アポトーシスはまた、細胞における形態変化を測定することにより、確定することができる。たとえば、ネクローシスに関しては、細胞膜の完全性の消失が、ある色素の取り込みを測定することにより確定することができる(たとえば、アクリジンオレンジまたはエチジウムブロミド等の蛍光色素)。アポトーシスの細胞数を測定する方法は、Duke and Cohen, Current Protocols in Immunology (Coligan et al. eds., 1992, pp. 3.17.1-3.17.16)に開示されている。また、細胞をDNA色素で標識してもよく(たとえば、アクリジンオレンジ、エチジウムブロミド、またはヨウ化プロピジウム等)、クロマチン凝集および、核膜内部に沿った辺縁趨向が細胞に観察される。アポトーシスを確定するために測定することができる他の形態変化としては、たとえば、細胞質凝縮、膜ブレブ化の増加、および細胞萎縮が挙げられる。
【0261】
アポトーシス細胞の存在は、培養物の付着分画および「浮遊」分画の両方で測定することができる。たとえば、両方の分画を上清を除去することにより回収し、付着細胞をトリプシン処理し、遠心洗浄工程(たとえば、2000rpmで10分)の後で調製物を混合し、そしてアポトーシスを検出する(たとえば、DNA断片化の測定により)(たとえば、Piazza et al., 1995, Cancer Research 55:3110-16を参照のこと)。
【0262】
本発明の多特異性抗体の治療組成物のin vivoにおける治療効果は、適切な動物モデルにおいて評価することができる。たとえば、異種癌モデルを用いることができ、ここで、癌移植片または継代異種組織は免疫不全動物(たとえば、ヌードマウスまたはSCIDマウス)へと導入されている(Klein et al., 1997, Nature Medicine 3: 402-408)。有効性は、腫瘍形成、腫瘍退縮または転移等の阻害を測定するアッセイを用いて測定することができる。
【0263】
上述の実施において用いられる治療組成物は、所望の送達法に適した担体を含有する医薬組成物へと製剤化することができる。適切な担体としては、治療組成物と混合した際に当該治療組成物の抗腫瘍機能が保持され、一般的に、患者の免疫システムに対し非反応性である任意の物質が挙げられる。例としては、限定されないが、たとえば滅菌リン酸緩衝生理食塩水、静菌性水等の標準的な多くの医薬担体の内の任意のものが挙げられる(概要として、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th Edition, A. Osal., Ed., 1980を参照のこと)。
【0264】
in vivo投与のための抗体組成物
本発明に従い用いられる抗体の製剤は、所望の程度の純度を有する抗体と、任意の薬学的に受容可能な担体、賦形剤または安定化剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. [1980])を混合することにより、凍結乾燥製剤または水性溶液の形態で、保管のために調製される。受容可能な探知、賦形剤または安定化剤は、用いられる投与量および濃度で、受け手に対し非毒性であり、たとえばリン酸、クエン酸および他の有機酸等の緩衝剤;抗酸化剤(アスコルビン酸およびメチオニンが挙げられる);保存剤(たとえば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン(たとえば、メチルパラベンまたはプロピルパラベン);カテコール;レゾルシン;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;たとえば血清アルブミン、ゼラチン、またはイムノグロブリン等のタンパク質;たとえばポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;たとえばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシン等のアミノ酸;単糖、二糖および他の糖質(グルコース、マンノースまたはデキストリンが挙げられる);たとえばEDTA等のキレート剤;たとえばスクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール等の糖類;塩形成カウンターイオン(たとえばナトリウム);金属錯体(たとえば、Zn−タンパク質錯体);および/または、非イオン性界面活性剤(たとえば、TWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG))、が挙げられる。
【0265】
本明細書の製剤はまた、治療される特定の疾患に対して、必要に応じて2以上の活性化合物(好ましくは、互いに悪影響を絶えない相補的な活性を有するもの)を含有しても良い。たとえば、他の特異性を有する抗体を加えることが望ましい。あるいは、またはさらに、組成物は、細胞毒性剤、サイトカイン、増殖阻害剤、および/または小分子アンタゴニストを含有しても良い。そのような分子は、意図される目的に対し有効な量で組み合わせて適切に存在する。
【0266】
活性成分はまた、たとえば、液滴形成技術により、または界面重合により調製されたマイクロカプセル(たとえば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセル、およびポリ−(メチルメタシレート)マイクロカプセル)に、コロイド薬剤送達システム(たとえば、リポソーム、アルブミンマイクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)、または、マクロエマルション中で、内包されても良い。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示されている。
【0267】
in vivo投与に用いられる製剤は、滅菌されている、またはそれに近いものでなければならない。これは、滅菌ろ過膜を通してろ過することにより、容易に行うことができる。
【0268】
徐放性製剤が調製されても良い。徐放性製剤の適切な例としては、抗体を含有する疎水性個体ポリマーの半透過性基質が挙げられ、当該基質は、たとえばフィルムまたはマイクロカプセル等の造形品の形態である。徐放性基質の例としては、ポリエステル、ハイドロゲル(たとえば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレンビニル酢酸、分解性の乳酸‐グリコール酸のコポリマー(たとえば、LUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸‐グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成される注射用マイクロスフィア)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。たとえばエチレンビニル酢酸および乳酸‐グリコール酸等のポリマーは、100日間にわたり分子を放出することができる一方で、あるハイドロゲルは、もっと短い期間、タンパク質を放出する。
【0269】
内包化された抗体が、体内に長期間滞留する場合、37℃で湿潤な環境に曝されたことによって分解または凝集する可能性があり、その結果、生物学的活性を失い、免疫原性が変化する可能性がある。関与するメカニズムに依存した安定化のための合理的戦術を策定しても良い。たとえば、もし凝集のメカニズムがチオ−ジスルフィド交換を介した分子間S−S結合の形成であることが判明した場合、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥させ、適切な添加剤を用いて含水率を制御し、および、特異的なポリマー基質組成物を開発することにより、安定化を達成することができる。
【0270】
投与モダリティ
本発明の抗体および化学療法剤は、たとえばボーラス投与として、または、ある期間にわたる持続注入による静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、脳脊髄内投与、皮下投与、動脈内投与、滑液嚢内投与、くも膜下投与、口腔投与、局所投与または吸入経路等の公知方法に従い、対象投与される。抗体の静脈内投与または皮下投与が好ましい。
【0271】
治療モダリティ
本発明の方法において、治療を用いて、疾患または状態に関し、治療に対する好反応を得る。「治療に対する好反応」とは、疾患もしくは状態における改善、および/または、疾患もしくは状態と関連した症状における改善が意図される。たとえば、治療に対する好反応とは、以下の疾患における改善のうちの1以上を指す:(1)腫瘍細胞の数の減少;(2)腫瘍細胞死の増加;(3)腫瘍細胞生存の阻害;(5)腫瘍増殖の阻害(すなわち、ある程度までの減速、好ましくは停止);(6)患者の生存率の増加;および(7)疾患または状態に関連した症状の1つ以上からの何らかの緩和。
【0272】
所与の疾患または状態における治療に対する好反応は、その疾患または状態二特異的な、標準化された反応基準により測定することができる。腫瘍応答は、たとえば、磁気共鳴画像撮影法(MRI)スキャン、X線放射線画像撮影、コンピューター断層撮影(CT)スキャン、骨スキャン画像撮影法、内視鏡、および、骨髄穿刺(BMA)を含む腫瘍生検試料採取および、循環系中の主要細胞数の計測等のスクリーニング技術を用いて、腫瘍の形態(すなわち、全体的な腫瘍体積、腫瘍サイズ等)における変化に対して評価することができる。
【0273】
これらの治療に対する好反応に加え、治療を受けた対象は、疾患と関連した症状の改善の有益な効果を経験するであろう。
【0274】
ゆえに、B細胞腫瘍に対しては、対象は、いわゆるB症状(すなわち、寝汗、発熱、体重減少および/またはじんましん)の減少を経験するであろう。前悪性状態に対しては、多特異性治療剤を用いた治療によって、関連悪性疾患の発症(たとえば、意義不明のモノクローナル性高ガンマグロブリン血症(MGUS)に罹患する対象における、多発性骨髄腫の発症等)が阻害、および/または、発症までの時間が延長されてもよい。
【0275】
疾患の改善は、完全寛解として特徴付けられても良い。「完全寛解」とは、従前の異常なX線検査のいずれかの正常化を伴う、臨床的に検出可能な疾患の消失が意図される(骨髄腫の場合には、骨髄、および脳脊髄液(CSF)または以上なモノクローナル性タンパク質)。
【0276】
本発明方法に従う治療の後に、そのような応答が、少なくとも4〜8週間、場合によっては6〜8週間、維持されても良い。あるいは疾患における改善は、部分反応であるとしてカテゴライズされても良い。「部分反応」とは、新たな病変部位を除き、すべての計測可能な腫瘍組織量(すなわち、対象に存在する悪性細胞の数、または腫瘍量の測定量、または異常なモノクローナル性タンパク質の量)における少なくとも約50%の減少が、4〜8週間、または6〜8週間維持されることが意図される。
【0277】
本発明に従う治療には、用いられる医薬品の「治療有効量」が含まれる。「治療有効量」とは、所望される治療効果を得るために、必要な期間、および投与量での有効な量を指す。
【0278】
治療有効量は、たとえば個々の疾患状態、年齢、性別および体重等の因子、および、当該医薬の個々において所望される応答を惹起する能力に従い変化しうる。治療有効量はまた、抗体または抗体部分の治療上の有益な効果が、毒性効果または有害作用を上回る量である。
【0279】
腫瘍療法に対する「治療有効量」はまた、疾患の進行を安定化させる能力により測定されても良い。化合物の癌を阻害する能力は、ヒト腫瘍における効果を予測させる動物モデルシステムにおいて評価されても良い。
【0280】
あるいは、組成物のこの特性は、または当業者公知のin vitroアッセイにより、化合物の、細胞増殖を阻害する、アポトーシスを誘導する能力を検証することにより、評価しても良い。治療化合物の治療有効量は、腫瘍サイズを減少させてもよく、または、対象における症状を改善しても良い。当業者であれば、対象のサイズ、対象の症状の重篤度、および特定の組成物または選択された投与経路等の因子に基づいて、その量を決定することができる。
【0281】
投与レジメンは、最適な所望される応答(たとえば、治療応答)がもたらされるよう調節される。たとえば、単回ボーラス投与が行われても良く、数回に分けられた投与量が、経時的に投与されても良く、または、治療状況の要件によって、投与量を比例的に増加または減少させても良い。非経口投与組成物は、投与を簡便にするために、および投与量を均一にするために、投与単位の形態で処方されても良い。本明細書において用いられる投与単位の形態とは、治療される対象に対して単一化された投与量として適した、物理的に別個の単位を指し;各単位には、必要とされる医薬担体と関連した、所望の治療効果をもたらすように算出された既定量の活性化合物を含有する。
【0282】
本発明の投与単位の形態に対する仕様は、(a)活性化合物のユニークな特徴および得られる特定の治療効果、ならびに、(b)たとえば個々における治療感受性に対する、当該活性化合物の構成に関する当分野固有の制限、により決定され、および直接的に依存している。
【0283】
本発明において用いられる多特異性抗体に対する効率的な投与量および投与レジメンは、治療される疾患または状態に依っており、および、当業者によって決定されても良い。
【0284】
本発明において用いられる多特異性抗体の治療有効量に対する非限定的な範囲の例は、0.1〜100mg/kgであり、たとえば、約0.1〜50mg/kg、たとえば、約0.1〜20mg/kg、たとえば約0.1〜10mg/kg、たとえば約0.5、たとえば約0.3、約1、または約3mg/kgである。他の実施態様において、抗体は、1mg/kg以上の投与量、たとえば、1〜20mg/kgの投与量、たとえば、5〜20mg/kgの投与量、たとえば、8mg/kgの投与量で投与される。
【0285】
当分野の医療専門家であれば、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定および処方することができる。たとえば、医者または獣医であれば、所望される治療効果を得るために必要とされる量よりも低いレベルで、医薬組成物中の薬剤の投与を開始し、および、所望される効果が得られるまで、徐々に投与量を増加させることができる。
【0286】
1つの実施態様において、多特異性抗体は、10〜500mg/kgの投与量(たとえば、200〜400mg/kg)で毎週、点滴により投与される。そのような投与をたとえば、1〜8回、たとえば3〜5回、繰り返しても良い。投与は、2〜24時間(たとえば、2〜12時間)の期間にわたる持続注入により行われても良い。
【0287】
1つの実施態様において、多特異性抗体は、もし毒性を含む副作用を減少させることが必要とされる場合には、長い期間(たとえば、24時間以上)にわたる、ゆっくりとした持続注入により投与される。
【0288】
1つの実施態様において、多特異性抗体は、250mg〜2000mg(たとえば、300mg、500mg、700mg、1000mg、1500mg、または2000mg)の投与量で、8回(たとえば、4〜6回)まで、毎週投与される。投与は、2〜24時間(たとえば、2〜12時間)の期間にわたる持続注入により行われても良い。当該レジメンは、たとえば6か月〜12か月後に、必要に応じて1回以上繰り返されても良い。投与量は、たとえば生物学的試料を採取し、当該多特異性抗体の抗原結合領域を標的とする抗イディオタイプ抗体を用いることによって本発明の化合物の血中量を測定することにより決定または調節されても良い。
【0289】
さらなる実施態様において、多特異性抗体は、2〜12週間(たとえば、3〜10週間、たとえば4〜8週間)に1度、投与されても良い。
【0290】
1つの実施態様において、多特異性抗体は、維持療法により、たとえば、6か月以上の期間、週に1度、投与される。
【0291】
1つの実施態様において、多特異性抗体は、多特異性抗体の1度の点滴と、その後の放射性同位体に結合された多特異性抗体の点滴を含むレジメンにより投与される。レジメンは、たとえば、7〜9日後に繰り返されても良い。
【0292】
非限定的な例として、本発明に従う治療は、治療開始後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40日目のうちの少なくとも1つで、あるいは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20週目のうちの少なくとも1つで、またはそれらの任意の組み合わせで、24、12、8、6、4もしくは2時間またはそれらの任意の組み合わせ毎に、単回投与、または分割投与を用いて、1日当たり約0.1〜100mg/kg(たとえば、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90または100mg/kg)の量の抗体を1日投与量として投与しても良い。
【0293】
一部の実施態様において、多特異性抗体分子は、1以上の追加の治療剤(たとえば、化学療法剤)と組み合わせて用いられる。DNA損傷化学療法剤の非限定的な例としては、トポイソメラーゼI阻害物質(たとえば、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、およびそのアナログまたは代謝物、ならびにドキソルビシン);トポイソメラーゼII阻害物質(たとえば、エトポシド、テニポシド、およびダウノルビシン);アルキル化剤(たとえば、メルファラン、クロラムブシル、ブシルファン、チオテパ、イホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、デカルバジン、メトトレキサート、ミトマイシンC、およびシクロホスファミド);DNAインターカレーター(たとえば、シスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチン);DNAインターカレーターおよびフリーラジカル生成物質(たとえば、ブレオマイシン);ならびに、ヌクレオシド模倣体(たとえば、5−フルオロウラシル、カペシチビン、ゲムシタビン、フルダラビン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、およびヒドロキシウレア)が挙げられる。
【0294】
細胞複製を妨害する化学療法剤としては、:パクリタキセル、ドセタキセル、および関連アナログ;ビンクリスチン、ビンブラスチン、および関連アナログ;サリドマイド、レナリドミド、および関連アナログ(たとえば、CC−5013およびCC−4047);タンパク質チロシンキナーゼ阻害物質(たとえば、イマチニブメシレートおよびゲフチニブ);プロテアソーム阻害物質(たとえば、ボルテゾミブ);NF−κB阻害物質(IκBキナーゼの阻害物質を含む);癌で過剰発現されているタンパク質に結合する抗体で、それにより細胞複製を下方制御するもの(たとえば、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブおよびベバシズマブ);ならびに、癌において上方制御、過剰発現または活性化されており、その阻害により細胞複製が下方制御されることが知られている他のタンパク質または酵素の阻害物質。
【0295】
一部の実施態様において、本発明の抗体は、Velcade(登録商標)(ボルテゾミブ)を用いた治療の前、治療と同時、または治療の後に用いられても良い。
【0296】
すべての引用された参照文献は、その全体において、参照により本明細書に明示的に援用される。
【0297】
解説の目的のために本発明の特定の実施態様が上述されているが、当業者であれば、添付の請求項に記述される本発明から逸脱することなく、詳細に関する多くの変更が行われ得ることを認識するであろう。
【実施例】
【0298】
本発明を解説するために、実施例が以下に提示される。これら実施例は、任意の特定の応用または動作理論に本発明が限定されることを意図しない。本発明に検討される全ての定常領域の位置に関し、ナンバリングは、Kabat(Kabat et al., 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed., United States Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda。参照により全体が援用される)のEUインデックスに従っている。当業者であれば、この慣習が、イムノグロブリン配列の具体的な領域における非連続的なナンバリングからなり、それによりイムノグロブリンファミリーの保存された位置に基準を標準化することが可能となることが認識されるであろう。従って、EUインデックスにより定義された任意の所与のイムノグロブリンの位置は、その連続的な配列に対応する必要はない。
【0299】
実施例1.「三重F」二特異性抗体の試作
本発明は、第一の抗原と第二の抗原を共捕捉する新規イムノグロブリン組成物を開示するものである。抗体の1つの重鎖は、一本鎖Fv(scFv、本明細書において定義される)を含有し、他方の重鎖は、「正規の」Fab形式であり、可変重鎖および軽鎖を含有する(
図1を参照)。この構造は、場合によって、本明細書において「三重F」形式(scFv−Fab−Fc)と呼称される。2つの鎖は、二量体Fc領域により結合される(
図2を参照)。Fc領域は、アミノ酸置換により修飾され、「三重F」異種二量体の効率的な精製を可能としても良い。さらに、Fc領域は、アミノ酸置換により置換され、「三重F」異種二量体の形成を促進しても良い。Fc置換の例は、以下に詳述する。
【0300】
望ましくない二重scFv−FcおよびmAb同種二量体よりも、所望される「三重F」異種二量体の精製が効率的となるように、Fc置換が「三重F」形式に含有されても良い。この例としては、各モノマーが異なるpIを有するように、各モノマーの等電点(pI)を改変するFc置換の含有がある。この場合において、所望される「三重F」異種二量体は、望まない二重scFv−FcおよびmAb同種二量体とは異なるpIを有しており、それによって、「三重F」異種二量体の等電点精製が容易となる(たとえば、アニオン交換カラム、カチオン交換カラム)。これら置換はまた、精製後に二重scFv−FcおよびmAb同種二量体のいずれかが混入しているかを測定およびモニタリングするのに役に立つ(たとえば、IEFゲル、cIEF、および分析IEXカラム)。所望の「三重F」異種二量体の精製を効率的にするために、Fcモノマー1およびFcモノマー2に作製することができる置換に関しては、
図3のリストを参照のこと。
【0301】
所望されない二重scFv−FcおよびmAb同種二量体を超えて、所望される「三重F」異種二量体へと形成が「ねじれる」よう、「三重F」形式中にFc置換が含有されても良い。「三重F」異種二量体へと産生を「ねじれさせる」ために、Fcモノマー1およびFcモノマー2に作製することができる置換のリストについては、たとえば、
図4を参照のこと。
図3および
図4にリストアップされるアミノ酸置換は組み合わせても良く、それにより、何らかの二重scFv−FcおよびmAb同種二量体の混入からの精製が容易な、「三重F」異種二量体の産生量が増加する。
【0302】
「三重F」形式中の含有に対するscFvドメインの最適化の後、最適化されたscFvドメインは、様々な標準的な抗体重鎖と、簡便な様式で結合させても良い。たとえば、T細胞の細胞毒性を補強するために、抗CD3scFvを、様々な抗腫瘍抗原抗体重鎖(たとえば、CD5、CD20、CD30、CD40、CD33、CD38、EGFR、EpCAM、Her2、HM1.24または他の腫瘍抗原に結合するもの)と結合させても良い。標準的な抗体重鎖と簡便に結合することができる最適化scFvドメインのさらなる例としては、ナチュラルキラー細胞の細胞毒性に対する抗CD16scFv;阻害活性のための抗CD32bscFv(ここで、結合された抗体重鎖は、たとえば、CD19、CD40、CD79a、CD79bまたは他の免疫受容体に結合する);および、抗トランスフェリン受容体scFv、抗インスリン受容体、または、脳血液関門を横切り輸送するための抗LRP1が挙げられる。
【0303】
実施例2.「三重F」形式由来の多特異性抗体
多特異性抗体は、第三の抗原に結合する追加のscFvまたはFabドメインを、「三重F」重鎖のうちの1つのC末端に付加することにより構築することができる。
図5を参照のこと。あるいは、scFvまたはFabのC末端は、第一または第二の抗原に結合してもよく、それにより、二価性が寄与され、その抗原に対する全体的な結合アフィニティが増加する。
【0304】
多特異性抗体はまた、
図6に示されるように、再配置された抗体重鎖と、「三重F」のscFv−Fc重鎖を結合することにより構築されても良い。そのような再配置された重鎖は、第三の抗原に結合する追加のFv領域、または、第一の抗原と第二の抗原に結合する追加のFv領域を含有してもよく、それにより、二価性が寄与され、その抗原に対する全体的な結合アフィニティが増加する。
【0305】
実施例3.抗CD19Fab x 抗CD3scFv「三重F」二特異性抗体
抗CD19Fab x 抗CD3scFv「三重F」二特異性抗体のアミノ酸配列は図にリストアップされている。所望されない二重scFv−FcおよびmAb同種二量体を超えて、所望される「三重F」異種二量体が効率的に精製されるよう作製されたアミノ酸置換は、下線を引いてある。好ましいヒト化抗CD3可変領域のアミノ酸配列は
図2および
図6にリストアップされる(CDRは下線を引いてある)。所望される「三重F」種の発現および精製、ならびにその生物活性のいくつかの例は、以下に示す。
【0306】
抗CD19Fabおよび抗CD3scFvを有する「三重F」二特異性抗体である、XENP11874の産生は
図9に概要を示す。
図9Aにおいて、所望されない二重scFv−FcおよびmAb同種二量体からの、所望される「三重F」異種二量体のイオン交換精製が示されている。「三重F」分画の純度は、IEFゲルによりチェックされた(データはUSSN61/818,410の
図9Bに示す。その全ての図および説明文は明示的に参照により援用される)。最後に、SECを用いて、「三重F」産物の同種サイズを確認した(データはUSSN61/818,410の
図9Cに示す。その全ての図および説明文は明示的に参照により援用される)。
【0307】
抗CD19Fabおよび抗CD3scFvの「三重F」二特異性抗体であるXENP11874は、強力な生物活性を有していることが示された。B細胞枯渇に対し、T細胞を強力に補強するXENP11874の能力は、USSN61/818,410の
図10に示す(参照により明示的に援用される)。
【0308】
抗CD19Fabおよび抗CD3scFvを有する「三重F」二特異性抗体である、XENP11924は、USSN61/818,410の
図11に概要を示す(参照により明示的に援用される)。USSN61/818,410の
図11Aにおいて、所望されない二重scFv−FcおよびmAb同種二量体からの、所望される「三重F」異種二量体のイオン交換精製が示されている。「三重F」分画の純度は、IEFゲルによりチェックされた(USSN61/818,410の
図11Bに示す)。最後に、SECを用いて、「三重F」産物の同種サイズを確認した(USSN61/818,410の
図11Cを参照)。
【0309】
抗CD19Fab x 抗CD3scFvの「三重F」二特異性抗体である、XENP11924は、強力な生物活性を有していることが示された。Raji腫瘍細胞株の殺傷に関する、T細胞を強力に補強するXENP11924の能力は、USSN61/818,410の
図12に示す。
【0310】
実施例4.抗CD38Fab x 抗CD3scFv「三重F」二特異性抗体
抗CD38Fab x 抗CD3scFv「三重F」二特異性抗体のアミノ酸配列はUSSN61/818,410の
図13にリストアップされる。所望されない二重scFv−FcおよびmAb同種二量体よりも、所望される「三重F」異種二量体が効率的に精製されるよう作製されたアミノ酸置換は、下線を引いてある。所望される「三重F」種の発現および精製、ならびにその生物活性のいくつかの例は、以下に示す。
【0311】
抗CD38Fabおよび抗CD3scFvを有する「三重F」二特異性抗体である、XENP11925は、USSN61/818,410の
図14に概要を示す。USSN61/818,410の
図14Aにおいて、所望されない二重scFv−FcおよびmAb同種二量体からの、所望される「三重F」異種二量体のイオン交換精製が示されている。「三重F」分画の純度は、IEFゲルによりチェックされた(USSN61/818,410の
図14Bに示す)。最後に、SECを用いて、「三重F」産物の同種サイズを確認した(USSN61/818,410の
図14Cを参照)。
【0312】
抗CD38Fab x 抗CD3scFvの「三重F」二特異性抗体である、XENP11925は、強力な生物活性を有していることが示された。RPMI8226腫瘍細胞株の殺傷に関する、T細胞を強力に補強するXENP11925の能力は、USSN61/818,410の
図15に示す。
【0313】
実施例5.pI改変アイソタイプ定常領域変異体の脱安定化の特定および修復
上述のように、IgGサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)間のアイソタイプの差異を利用して、pIを増加または減少させる置換によって免疫原性が惹起されるリスクを最小化する試みを行う。新規アイソタイプの新たなセットは、この主題に基づいて設計した。これら新たな変異体は、ISO(−)、ISO(+)およびISO(+RR)と呼ばれる。これら新規アイソタイプの熱安定性は、ヒンジ−CH2−CH3(H−CH2−CH3)システム(Fc領域のみ)で測定された。タンパク質は上述の様に発現および精製された。この概念実証システムのための配列は、
図16にリストアップされている。
【0314】
示差走査熱量測定法(DSC)により測定された熱安定性の測定結果(
図17)から、ISO(−)/ISO(+RR)異種二量体(XENP12488、
図16に配列を示す)が、野生型IgG1(XENP8156、
図16に配列を示す)よりも安定性が劣ることが明らかにされた。次なる操作により、脱安定化の源として、ISO(−)重鎖におけるN384S/K392N/M397Vの置換が特定された。結果として、ISO(−)と指定される変異体が設計され、検証された(
図16参照)。この変異体の384、392、および397位は、野生型IgG1(S384N/N392K/M397V)に戻っていた。ISO(−NKV)/ISO(+RR)異種二量体(XENP12757、配列は
図16に示す)の熱安定性はDSCにより測定し、野生型IgG1と同等であることが判明した(
図17)。この結果から、脱安定化を回避するためには、特定のpI改変アイソタイプ置換を選択、または選択しないことが重要であることが強調された。
【0315】
実施例6.追加の異種二量体−ねじれFc変異
上述のように、所望されない同種二量体に対し、所望される異種二量体の形成が多くなるように異種二量体−ねじれFc変異体が作製されても良い。れう以下の異種二量体−ねじれFc変異体L368D/K370S−S364K/E357Q(XENP12760、配列は
図18に示す)を設計し、ヒンジ−CH2−CH3システム(Fc領域のみ)で検証した。タンパク質は上述のように発現および精製された。
【0316】
たった1度の標準的なプロテインA精製工程の後に存在したタンパク質を、カチオン交換(CIEX)カラムを用いた高速液体クロマトグラフィ(HPLC)により検証した(
図19)。これにより、所望されない同種二量体に対する、所望される異種二量体の産生量の測定が可能となった。L368D/K370S−S364K/E357Q変異(XENP12760、
図19、下のパネル)の存在により、この変異が無い場合(XENP12757、
図19、上のパネル)と比較して、所望される異種二量体の形成へと、かなり偏った。異種二量体の産生量は、 L368D/K370S−S364K/E357Q変異がある場合には95.8%であった(変異が無い場合にはたった52.7%であった)。
【0317】
さらに追加の異種二量体−ねじれFc変異体を設計し、検証した。
図36において、操作された異種二量体−ねじれFc変異体と、異種二量体の産生量(HPLC−CIEXにより測定)、および熱安定性(DSCにより測定)のリストを示す。高い異種二量体産生量と、高い熱安定性を有するL368D/K370S−S364K/E357Q変異が特に好ましい。
【0318】
実施例7.Fab−scFv−Fcの関連における、追加の異種二量体−ねじれFc変異体
異種二量体−ねじれFc変異体 L368D/K370S−S364K/E357Qを、抗CD19 x 抗CD3Fab−scFv−Fcへと操作した(アミノ酸配列は
図15を参照)。対照のFab−scFv−Fc XENP13228は、これら異種二量体−ねじれFc変異を欠落していた。たった1度の標準的なプロテインA精製工程の後に存在したタンパク質を、等電点電気泳動(IEF)ゲルにより検証した。これにより、所望されない同種二量体に対する、所望される異種二量体の産生量の測定が可能となった。L368D/K370S−S364K/E357Q変異の存在(XENP13122、
図22、右のレーン)により、この変異が無い(XENP13228、
図22、左のレーン)と比較して、所望される異種二量体の形成(真ん中のバンド)の形成へと、かなり偏った。
配列番号411を有するvhCDR1、配列番号413を有するvhCDR2、配列番号416を有するvhCDR3、配列番号420を有するvlCDR1、配列番号425を有するvlCDR2、および、配列番号430を有するvlCDR3、を含有する配列を有する抗CD3可変領域を含有する組成物。