【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例によって上記実施形態をさらに具体的に説明するが、本開示の積層板は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
1.積層板の構成
<実施例1〜4>
実施例1〜4では、上述の製造方法のようにして芯材11の両面に表皮材21が積層された積層板10を形成した。実施例1〜4の芯材11と表皮材21の詳細は、
図5及び以下の通りである。
芯材; 無架橋ポリプロピレン樹脂の発泡シート(発泡剤:ブタン、見掛け密度(圧着前):200kg/m
3、発泡倍率(圧着前):5倍、厚み(圧着前):2.5mm)
表皮材; 株式会社イノアックコーポレーション製の商品名「FOLEC LZ−2000」(超臨界発泡体)
【0044】
実施例1〜3では、スキン層22が、各表皮材21の両面に形成されている(
図1及び
図2(A)の構成)。実施例1〜3は、表皮材21の密度及び厚みが異なる。
【0045】
実施例4では、スキン層22が、各表皮材21のうち芯材11側の面のみに、形成されている(即ち、積層板10の外面にスキン層22が露出していない)。実施例4の表皮材21は、実施例1の表皮材21と同様のものを半分にスライスしたものである。
【0046】
なお、
図5における表皮材21の「密度(圧着前)」、「厚み(圧着前)」とは、それぞれ、積層ライン50において芯材11と圧着する前の表皮材21の密度(見掛け密度)と厚みのことである。また、「密度(圧着後)」とは、積層ライン50において芯材11と圧着した後の表皮材21の密度(見掛け密度)である(即ち、積層板10が形成された後の表皮材21の密度である)。
【0047】
<比較例1,2>
比較例1,2の積層板は、芯材の両面に1対の表皮材を積層したものである。各比較例における芯材と表皮材の詳細は、
図5及び以下の通りである。比較例1,2では、芯材は、実施例1〜4の芯材11と同様のものを用いて、芯材と表皮材を熱融着させた。
【0048】
比較例1では、表皮材として、無架橋ポリエチレン樹脂の発泡シート(超臨界発泡体ではない。発泡剤:ブタン)を用いた。
【0049】
比較例2では、表皮材として、架橋ポリエチレン樹脂の発泡シート(株式会社イノアックコーポレーション製の「P・E−ライト」。化学発泡剤が使用されている)を用いた。
【0050】
2.評価方法
<密度>
JIS K 7112に準拠して、表皮材の見掛け密度を測定した。表皮材の圧着後の見掛け密度は、積層板を形成した後に表皮材を芯材から分離して測定した。
【0051】
<25%圧縮硬さ>
JIS K6767に準拠して、表皮材の25%圧縮硬さを測定した。具体的には、積層板を形成した後に、表皮材を芯材から分離して測定した。
【0052】
<表面粗さ>
JIS B 0601に準拠して、表皮材の最外面(積層板の外面)における、中心線平均粗さRa、最大高さRmax、十点平均粗さRzを測定した。測定には、株式会社東京精密の表面粗さ計「Surfcom」を使用した。
【0053】
<耐摩耗性>
JIS L0849の「摩擦に対する染色堅牢度試験」に準拠し、2型試験機(学振型)を用いて、耐摩耗性の評価を行った。具体的には、各実施例及び各比較例の積層板を、試験機の支持台に固定すると共に、試験機の摩擦子に、白綿布の代わりに綿汎布6号を取り付け、その綿汎布にて積層板を擦る試験を行った。摩擦子の押圧荷重を、9.8Nとし、摩擦子を、100mmのストロークにて毎分30回往復する速度で、 100回往復させた。
【0054】
そして、上記試験後の積層板の外観を、目視にて確認し、耐摩耗性を評価した。積層板の摩耗が、全く認められない場合を◎、わずかに認められるがほとんど目立たない場合を〇、明らかに認められるが目立たない場合を△、やや著しい場合を×、かなり著しい場合を××、とした。また、上記試験による積層板の摩耗量を、試験前後の積層板の重量差として算出した。
【0055】
<傷付性>
耐摩耗性の試験と同様に、JIS L0849の「摩擦に対する染色堅牢度試験」に準拠し、2型試験機(学振型)を用いて評価を行った。具体的には、ポリプロピレン樹脂製の試験シートを、試験機の支持台に固定すると共に、試験機の摩擦子に、白綿布の代わりに各実施例、各比較例の積層板(詳細には、積層板のカットサンプル)を取り付け、その積層板にて試験シートを擦る試験を行った。摩擦子の押圧荷重を、10Nとし、摩擦子を、500mmのストロークにて毎分30回往復する速度で、2000回往復させた。
【0056】
そして、上記試験後の試験シートの外観を、目視にて確認し、傷付性を評価した。ここでいう「傷付性」とは、積層板で擦った相手(試験シート)に対しての、傷の付けにくさのことをいい、試験シートに傷が付いていないほど、評価が良いということになる。試験シートの外観において、全く傷が見えない場合を◎、わずかに傷が見える場合を〇、とした。また、試験後の試験シートの外観において、目立つ傷が見える場合を△以下とし、その目立つ傷が少ない場合を△、多い場合を×、とした。
【0057】
<VOC発生量>
VDA−278に準拠して、VOC(揮発性有機化合物)の発生量を測定した。具体的には、積層板のカットサンプルを、ガラス管に充填して、90℃で30分間加熱した。これにより発生したガスを、GC−MSにより分析し、VOCの発生量を測定した。
【0058】
<評価結果>
各実施例及び各比較例について、
図5に記載された評価項目で、傷付性と耐摩耗性の評価が、共に◎である場合には総合評価を◎とし、前記評価に△、×、××が1つでも含まれる場合には、総合評価を×とし、それら以外の場合には、総合評価を〇とした。
【0059】
図5に示されるように、実施例1〜4と、比較例1,2との比較から、十点平均粗さRzが50μm以下である実施例1〜4では、傷付性(傷付けにくさ)が〇以上と良好であると共に、耐摩耗性(摩耗しにくさ)についても〇以上と良好であることがわかる(摩耗量は測定されなかった)。なお、実施例1〜3は、比較例1,2に比べて、中心線平均粗さRaと最大高さRmaxも低くなっている。
【0060】
実施例4の積層板10では、外面にスキン層22が配置されていないので、表面粗さ(十点平均粗さRz等)は、実施例1〜3の積層板10に比べて、大きくなっているが、超臨界発泡体の表皮材21を有する実施例4では、比較例1,2に比べて、表皮材21の外面が平滑となっていて(即ち、Rzが低くなっていて)、傷付性と耐摩耗性において十分な性能を発揮している(評価:〇)。外面にスキン層22が配置された実施例1〜3では、特に耐摩耗性が良好となっている(評価:◎)。
【0061】
実施例1〜4の結果から、25%圧縮硬さや密度(圧着後)が低いほど(即ち、柔らかいほど)、傷付性が良好となる傾向があると共に、耐摩耗性についても良好となる傾向があることがわかる。また、表皮材21の表裏の両側にスキン層22を有する実施例1は、表皮材21の片面側のみにスキン層22を有する実施例4に対して、圧着前の密度が同じであるが、圧着後の密度が低くなっている(即ち、圧着後では柔らかい)。このように、表皮材21の表裏の両側にスキン層22が設けられている構成では、芯材11と表皮材21を圧着する際に、表皮材21が潰れて硬くなることを抑えることが可能となり、傷付性が良好になっていると考えられる。
【0062】
実施例1〜4の積層板10では、架橋剤が含まれず、芯材11と表皮材21を熱融着させているので、架橋剤を含む比較例2の積層板に比べて、VOCの発生量を200ppm未満と低く抑えられることがわかる。
【0063】
以上の結果から、十点平均粗さRzを5〜50μmとし、25%圧縮硬さを0.01〜0.05MPaとした実施例1〜4では、傷付性(傷付けにくさ)が良好になると共に、表皮材21が摩耗し難くなり、さらに、VOCの発生量も抑えられることがわかった(総合評価:〇以上)。
【0064】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、表皮材21が、芯材11の表裏の両面に積層されていたが、芯材11の片面のみに積層されていてもよい。この構成では、積層板10を、例えば入れ物110の底部や側壁部や蓋部に用いる場合、表皮材21が入れ物110の内側を向くように積層板10を配置すれば、入れ物110内に収容する物が積層板10に接触して傷つくことを抑制可能となる。
【0065】
(2)上記実施形態では、芯材11が、発泡体であったが、これに限定されるものではなく、非発泡体又は木製であってもよい。芯材11は、紙製又はプラスチック製のダンボールであってもよい。また、芯材11は、複数のシート状の部材が積層されたものであってもよい。
【0066】
(3)上記実施形態では、芯材11と表皮材21が熱融着されていたが、芯材11と表皮材21が接着剤や粘着剤により一体化していてもよい。このような場合、例えば、積層ライン50(
図3参照)において、芯材11と表皮材21の少なくとも一方に接着剤又は粘着剤を塗布してから、1対の送りローラ52により、芯材11と表皮材21を挟むことで、芯材11と表皮材21を一体化させてもよい。
【0067】
(4)上記実施形態では、芯材11と表皮材21の貼り合わせを、1対の送りローラ52で挟むことで行っていたが、プレス機等でプレスすることで行ってもよい。この場合でも、表皮材21を表裏の両側にスキン層を有する構成とすれば、芯材11と表皮材21の圧着の際に、表皮材21が潰れて硬くなることを抑制可能となる。
【0068】
(5)上記実施形態では、表皮材21が、スキン層22を有していたが、スキン層22を有していなくてもよい。