特開2020-183336(P2020-183336A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-183336カートリッジ、水素の固定化方法、及び、水素ガスの発生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-183336(P2020-183336A)
(43)【公開日】2020年11月12日
(54)【発明の名称】カートリッジ、水素の固定化方法、及び、水素ガスの発生方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/06 20060101AFI20201016BHJP
   B01J 20/04 20060101ALI20201016BHJP
   B01J 7/00 20060101ALI20201016BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALN20201016BHJP
【FI】
   C01B3/06
   B01J20/04 A
   B01J7/00 A
   H01M8/0606
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-88826(P2019-88826)
(22)【出願日】2019年5月9日
(71)【出願人】
【識別番号】520320022
【氏名又は名称】津田 訓範
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】特許業務法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 訓範
(72)【発明者】
【氏名】藤野 正勝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 八左右
【テーマコード(参考)】
4G066
4G068
5H127
【Fターム(参考)】
4G066AA11B
4G066CA38
4G066DA01
4G066GA11
4G068AA01
4G068AB01
4G068AC20
4G068AD49
4G068AF36
5H127AB04
5H127AC02
5H127AC14
5H127BA16
5H127EE12
5H127EE13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】取扱性に優れ、水素の固定化及び水素ガスの発生が可能なカートリッジを提供する。
【解決手段】開口部2を備えた容器3と、該容器の開口部に着脱可能なキャップとを備えるカートリッジ1であって、キャップは、容器内部に水を供給する水供給口と、容器内部から発生した水素ガスを外部へ排出する水素排出口とを有し、容器内部に、水素ガスと反応して水素を固定化できる化合物、又は、水と反応して水素ガスを発生する化合物を配することが可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を備えた容器と、該容器の開口部に着脱可能なキャップとを備えるカートリッジであって、
キャップは、容器内部に水を供給する水供給口と、容器内部から発生した水素ガスを外部へ排出する水素排出口とを有し、
容器内部に、水素ガスと反応して水素を固定化できる化合物、又は、水と反応して水素ガスを発生する化合物を配することが可能である、カートリッジ。
【請求項2】
水供給口の口径が水素排出口の口径よりも小さい、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
キャップは、フェルールリングにより容器の開口部に取り付けられる、請求項1又は2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のカートリッジの容器の開口部から、水素ガスと反応して水素を固定化できる化合物を投入し、容器内部の温度を昇温し、該化合物に水素ガスを接触させて、水と反応して水素ガスを発生する化合物を生成するとともに、水素を固定化する、水素の固定化方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法により製造されたカートリッジの水供給口から容器内部に水を供給し、容器内部に配された、水と反応して水素ガスを発生する化合物と水とを反応させることで水素ガスを発生させ、水素排出口から水素ガスを外部へ排出する、水素ガスの発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素の固定化及び水素ガスの発生が可能なカートリッジ、水素の固定化方法、及び、水素ガスの発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、多くの化学プロセスにおいて重要な材料であり、近年では、自動車用の燃料電池をはじめとしたクリーンエネルギー源としての利用が期待されている。
【0003】
自動車用の燃料電池において、燃料極に用いられる水素ガスは、自動車に搭載された水素ガスボンベから供給される(例えば、特許文献1参照)。燃料電池の発電量は、このボンベの容積に依存する。それゆえ、積載する水素ガス量を多くしようとすると、ボンベの容積や重量が課題となってくる。
【0004】
このような課題へのアプローチとして、水素ガスボンベの代わりに、水素ガスの発生源として水素化ホウ素ナトリウムを利用する方法が検討されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2は、安全性の面から、水素化ホウ素ナトリウムを水溶液とし、クエン酸水溶液との反応により水素を発生させるものであり、固形の水素化ホウ素ナトリウムを利用するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−149509号公報
【特許文献2】特開2018−188317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、水素ガスと反応して水素を固定化できる化合物、又は、水と反応して水素ガスを発生する化合物を、容器の内部に充填することができ、取扱性に優れ、水素の固定化又は水素ガスの発生が可能なカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]〜[5]のいずれかにより上記課題を解決するものである。
[1]開口部を備えた容器と、該容器の開口部に着脱可能なキャップとを備えるカートリッジであって、キャップは、容器内部に水を供給する水供給口と、容器内部から発生した水素ガスを外部へ排出する水素排出口とを有し、容器内部に、水素ガスと反応して水素を固定化できる化合物、又は、水と反応して水素ガスを発生する化合物を配することが可能である、カートリッジ。;
[2]水供給口の口径が水素排出口の口径よりも小さい、前記[1]に記載のカートリッジ。;
[3]キャップは、フェルールリングにより容器の開口部に取り付けられる、前記[1]又は[2]に記載のカートリッジ。;
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載のカートリッジの容器の開口部から、水素ガスと反応して水素を固定化できる化合物を投入し、容器内部の温度を昇温し、該化合物に水素ガスを接触させて、水と反応して水素ガスを発生する化合物を生成するとともに、水素を固定化する、水素の固定化方法。;
[5]前記[4]に記載の製造方法により製造されたカートリッジの水供給口から容器内部に水を供給し、容器内部に配された、水と反応して水素ガスを発生する化合物と水とを反応させることで水素ガスを発生させ、水素排出口から水素ガスを外部へ排出する、水素ガスの発生方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水素ガスと反応して水素を固定化できる化合物、又は、水と反応して水素ガスを発生する化合物を、容器の内部に充填することができ、取扱性に優れ、水素の固定化及び水素ガスの発生が可能なカートリッジを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、カートリッジの構造を示す概略図である。
図2】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、カートリッジの構造を示す概略図である。
図3】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、カートリッジを用いた水素ガス発生システムを説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下、効果に関する記載は、本発明の実施の形態の効果の一側面であり、ここに記載するものに限定されない。
【0011】
本発明のカートリッジは、容器の内部に、水素ガスと反応して水素を固定化できる化合物、又は、水と反応して水素ガスを発生する化合物を配することが可能である。カートリッジの容器の内部に、水素ガスと反応して水素を固定化できる化合物を配することで、水素の固定化をすることができ、また、容器の内部に、水と反応して水素ガスを発生する化合物を配することで、水素ガスを供給することができる。
【0012】
(カートリッジ)
本発明のカートリッジ1は、図1に示すように、上部に開口部2を備えた容器3からなる。該容器3の開口部2には、図2に示すように、着脱可能なキャップ4を備えている。着脱可能なキャップ4は、シリコンゴムなどのパッキンを介してフェルールリングなどの継手5により容器3の開口部2に取り付けられ、これにより容器3を密閉状態にすることができる。
【0013】
キャップ4は、カートリッジ1内部に水を供給する水供給口6と、カートリッジ1に水を供給することで発生した水素ガスを外部へ排出する水素排出口7とを有する。水供給口6は、後述するカートリッジ1に水を供給する水供給手段からカートリッジ1の容器内部へ水を供給する配管を接続するためのものである。一方、水素排出口7は、容器内部で発生する水素ガスを外部に排出する配管を接続するために設けられる。
【0014】
水供給口6と、水素排出口7との口径は、それぞれ、カートリッジ1に水を供給できる大きさ、又は、カートリッジ1から水素ガスを排出できる大きさであれば、特に限定されるものではない。例えば、水供給口6の口径が水素排出口7の口径よりも小さい場合は、発生した水素ガスが、水供給口6よりも水素排出口7から優先的に排出される。例えば、外径が100〜130mmであり、内径が90〜110mmのキャップ4に対して、10Aソケット(外径23mm)の水供給口6と、15Aソケット(外径28mm)の水素排出口7とすることができる。
【0015】
容器3の内部には、水素ガスと反応して水素を固定化できる化合物、又は、水と反応して水素ガスを発生する化合物が配される。水素ガスと反応して水素を固定化できる化合物、としては、例えば、メタホウ酸ナトリウム、メタホウ酸リチウム、メタホウ素カリウムなどが挙げられる。水と反応して水素ガスを発生する化合物としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウムなどが挙げられる。これらの中でも、原材料の価格や取り扱いやすさ等の観点から、メタホウ酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
【0016】
これらの水と反応して水素ガスを発生する化合物は、水素ガスと反応して水素を固定化できる化合物をもとに、水素を固定化することで得ることができる。例えば、メタホウ酸ナトリウムと水素ガスを接触させることで、水素化ホウ素ナトリウムを得ることができる。さらに、水素化ホウ素ナトリウムを水に接触させることで、水素ガスを発生させ、メタホウ酸ナトリウムを得ることができる。したがって、本発明のカートリッジは、容器内の化合物を交換しなくても、水素を固定化させたのち、水素ガスを発生させ、さらにまた、水素を固定化させるといったように、繰り返し使用することが可能である。
【0017】
カートリッジ1の容器3及びキャップ4の材質としては、容器3の内部の化合物が、運搬中に水分と接触することを防いだり、生成する水素ガスの圧力に耐えるために、ステンレス系の金属や、耐熱耐水素性を有する樹脂が好ましい。
【0018】
(カートリッジの調製)
次に、水素ガスと反応して水素を固定化できる化合物として、メタホウ酸ナトリウムを用いた場合における、カートリッジの調製方法について説明する。まず、カートリッジ1の容器3の内部に、メタホウ酸ナトリウムを充填する。メタホウ酸ナトリウムを充填したカートリッジ1は、開口部2を開放したまま、水素化反応容器(不図示)内に設置する。水素化反応容器内には、複数のカートリッジを設置してもよい。
【0019】
水素化反応容器を密閉した後、水素化反応容器内へ水素ガスの供給を開始する。水素化反応容器内の圧力が所定の圧力となったところで、水素化反応容器内の温度が所定の温度(100〜500℃)となるまで、水素化反応容器内を加熱する。所定の温度を維持するように加熱条件を制御しながら、メタホウ酸ナトリウム1モルに対して水素ガス4モルとなるまで、水素ガスの供給を継続する。メタホウ酸ナトリウムの反応量は、反応容器に供給した全水素ガス流量により概算することができる。
【0020】
上記のようにメタホウ酸ナトリウムの水素化を行うことにより、カートリッジ1の容器3内に水素化ホウ素ナトリウムが生成する。反応が終了すると、シリコンゴムパッキンを利用して容器3をキャップ4により密閉する。このとき、キャップ4の水供給口6と水素排出口7とは、コックやシリコン栓などにより密閉する。このような手順により、容器3内に水と反応して水素ガスを発生する化合物が配されたカートリッジ1が調製される。
【0021】
(水素ガス発生システム)
図3は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、カートリッジを用いた水素ガス発生システムを説明するための概略図である。本発明における水素ガス発生システムは、図3に示すように、カートリッジ1と、加水制御装置8と、水素圧力調整装置9と、中央制御装置10と、純水生成装置11と、タンク12と、水素供給手段13と、その他、水素ガスが供給される外部14を備える。カートリッジ1には、水と反応して水素ガスを発生する化合物が配されている。
【0022】
加水制御装置8はカートリッジ1に水を供給するものである。本発明においては水として、純水又は蒸留水を用いることができる。加水制御装置8は、より具体的には、純水生成装置11で生成された純水をタンク12に貯留し、電磁バルブなどの弁機能である加水制御装置8を介してカートリッジ1の水供給口6と接続された配管を通して、水を供給する。その他、純水生成装置11を用いずに、市販により入手可能な純水タンクを上記タンク12として適用し、純水タンクから加水制御装置8を介してカートリッジ1の水供給口6とに接続された配管を通して水を供給するようにしてもよい。
【0023】
中央制御装置10は、水素圧力調整装置9にて測定された水素ガスの圧力又は発生量を受信する。中央制御装置10は、カートリッジ1において発生した水素ガスの圧力又は発生量に関する情報に基づいて、加水制御装置8によりカートリッジ1に供給される水の量を制御する。供給した水と化合物との反応により、カートリッジ1における水素ガスの発生量が多くなれば、加水制御装置8からの水の供給量を減少させる。一方、カートリッジ1における水素ガスの発生量が少なくなれば、加水制御装置8による水の供給量を増加させることができる。水の供給量は、例えば、流速により調整することができる。
【0024】
水素供給手段13は、上記カートリッジ1内の化合物と水との反応により発生した水素ガスを外部14へ供給する手段であり、例えば、カートリッジ1のキャップ4に設けられた水素排出口7に接続される配管である。さらに配管で接続された外部14へ、水素圧力調整装置9を介して水素ガスを供給する。
【0025】
カートリッジ1に充填した水素化ホウ素ナトリウムが反応し、水素ガスの発生が得られなくなった場合、新たな水素の供給源が必要となる。カートリッジ1にて発生した水素ガスの圧力若しくは発生量、又は、水素供給手段13により外部14へ供給された水素ガスの圧力若しくは供給量が、所定の基準以下となった場合に、カートリッジ1の交換が必要であることを通知する通知手段を備えることができる。通知を受けた利用者は、カートリッジ1を交換することで、水素ガス発生システムを継続的に稼働させることができる。
【0026】
上記水素ガス発生システムにおいてカートリッジ1は予め複数備えられ、また、備えられたカートリッジ1が自動交換可能な態様とすることができる。例えば、水素ガスの発生量が所定の基準以下であると検知されると、加水制御装置8と水素圧力調整装置9のそれぞれに接続されているカートリッジ1の水供給口6と水素排出口7に接続された配管の弁が閉じられる。そして、これらの配管が、新たなカートリッジ1のキャップ4の水供給口6と水素排出口7とに接続され、配管の弁が開けられる。このような操作により水素ガス発生用のカートリッジの交換が完了する。交換後、新たなカートリッジ1への水の供給により、水素ガスの発生が中央制御装置10の制御により行なわれる。
【0027】
また、複数のカートリッジ1間の交換は、カートリッジ1のそれぞれに加水制御装置8と水素圧力調整装置9が弁を備えた配管により接続された形態とし、カートリッジ1の交換が必要となった場合に、弁の開閉の切り替えにより新たなカートリッジ1へ接続するようにしてもよい。カートリッジ1は2つに限られず、3以上の複数を用意するようにしてもよい。
【0028】
複数のカートリッジ1の一部または全てから水素ガスの発生が不可となった場合は、上記のように弁を閉じ、水素ガス発生システムから取り出し、新たに水素化ホウ素ナトリウムを充填したカートリッジ1と交換することで、水素ガス発生システムの稼働を継続させることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 カートリッジ
2 開口部
3 容器
4 キャップ
5 継手
6 水供給口
7 水素排出口
8 加水制御装置
9 水素圧力調整装置
10 中央制御装置
11 純水生成装置
12 タンク
13 水素供給手段
14 外部
図1
図2
図3