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特開2020-183658波力発電システムおよび波力発電方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-183658(P2020-183658A)
(43)【公開日】2020年11月12日
(54)【発明の名称】波力発電システムおよび波力発電方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 9/08 20060101AFI20201016BHJP
   F03B 13/12 20060101ALI20201016BHJP
   H02P 9/00 20060101ALI20201016BHJP
   H02P 103/20 20150101ALN20201016BHJP
【FI】
   E02B9/08
   F03B13/12
   H02P9/00 Z
   H02P103:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-88176(P2019-88176)
(22)【出願日】2019年5月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】松田 和久
(72)【発明者】
【氏名】中野 訓雄
【テーマコード(参考)】
3H074
5H590
【Fターム(参考)】
3H074AA02
3H074AA12
3H074BB06
3H074BB07
3H074BB19
5H590AA11
5H590CA11
5H590CA28
5H590CC01
5H590CD01
5H590CD03
5H590CE01
5H590CE05
5H590EB14
5H590FA08
5H590FC27
5H590GA06
5H590HA06
5H590KK04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】波力発電電力を平準化して安定的に系統に出力可能とした、波力発電システムを提供する。
【解決手段】波力発電部2による発電電力P1(P2)を系統7へ送電するにあたり、送電すべき有効電力設定APSに対して波力発電電力P1(P2)が小さい場合に蓄電池9からの放電によって不足分を補い、送電すべき有効電力設定APSに対して波力発電電力P1(P2)が大きい場合に蓄電池9への充電によって余剰分を回収することで電力変動を平準化する波力発電システムWGSにおいて、有効電力設定APSを波力発電電力P1(P2)に追従して変化させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波力発電部による発電電力を系統へ送電するにあたり、送電すべき有効電力設定に対して波力発電電力が小さい場合に蓄電池からの放電によって不足分を補い、送電すべき有効電力設定に対して波力発電電力が大きい場合に蓄電池への充電によって余剰分を回収することで電力変動を平準化する波力発電システムであって、
前記有効電力設定を波力発電電力に追従して変化させるように構成したことを特徴とする、波力発電システム。
【請求項2】
蓄電池の蓄電量を監視し、蓄電量に応じた有効電力設定の増減制御を行うように構成している、請求項1に記載の波力発電システム。
【請求項3】
蓄電量が適正範囲を上回った場合に有効電力設定を大きくし、蓄電量が適正範囲を下回った場合に有効電力設定を小さくする、請求項2に記載の波力発電システム。
【請求項4】
有効電力設定の増減は、所定のタイミングで段階的に行う、請求項2又は3に記載の波力発電システム。
【請求項5】
適正範囲での蓄電量の変化は、有効電力設定に反映させない不感帯とする、請求項3に記載の波力発電システム。
【請求項6】
波力発電部による発電電力を供給するにあたり、供給すべき有効電力設定に対して波力発電電力が小さい場合に蓄電池からの放電によって不足分を補い、供給すべき有効電力設定に対して波力発電電力が大きい場合に蓄電池への充電によって余剰分を回収することで電力変動を平準化する波力発電方法であって、
前記有効電力設定を前記波力発電電力に追従して変化させることを特徴とする、波力発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波力発電電力を平準化して、安定的に系統等に出力可能とした、波力発電システムおよび波力発電方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
波力発電を利用するものとして、例えば特許文献1に示すものが挙げられる。この波力発電システムは、沿岸に立設された杭に対して、波力を受けたフロートが昇降することで電力を生じさせ、生じさせた電力を負荷の動力として使用する波力発電装置と、前記波力発電装置により生成された電力と、商用電源からの電力とが入力され、前記負荷に対して所望される電力に対して予め定めた割合で、前記波力発電装置からの電力と前記商用電源からの電力を混合し、前記負荷に対して出力する電力制御設備と、を備えて構成されている。
【0003】
前記電力制御設備には、前記波力発電装置により生成される電力のうち、前記割合に応じて消費される電力よりも多い余剰電力を蓄電する蓄電手段を備えている。
【0004】
ところで、波力発電電力を系統に出力することが今後考えられる。この場合も、波力発電電力は波の周期(6〜14秒)に基づき、その半分の周期(3〜7秒)で大幅に増減を繰り返すが、電力会社などの系統へ連系出力するためには電力変動を抑える必要があるため、発電電力を平準化する必要がある。
【0005】
このような場合、従来手法によれば、電力平準化にリチウム蓄電池(大電力の出し入れに良好な特性を持つもの)を用いて、平準化を実施することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−205273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、波力発電は自然の影響で常に状況変化することから、連系出力を一定にするために、発電電力では不足する電力を蓄電池から放電出力してまかなう一方、余った電力で蓄電池を充電しておく必要があり、そのような運用では、蓄電池の著しい劣化が懸念される。
【0008】
すなわち、送電電力(有効電力設定)>波力発電電力の場合、送電不足分を蓄電池から出力(放電)するため、蓄電量が徐々に減少する。
【0009】
逆に、送電電力(有効電力設定)<波力発電電力の場合、送電余剰分を蓄電池へ入力(充電)するため、蓄電量が徐々に増加する。
このように蓄電量が減少または増加し続けると、蓄電量が上下又は下限に達して電力平準化の役割を果たせなくなると共に、蓄電池システムを保護するためにシステムをシャットダウンしなければいけないといった問題がある。
【0010】
本発明は、このような課題に着目し、有効電力設定を自動的に変化させて、蓄電池の放電出力が安定するように制御することで問題の解決を図った、新たな波力発電システムおよび波力発電方法を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0012】
すなわち、本発明の波力発電システムは、波力発電部による発電電力を系統へ送電するにあたり、送電すべき有効電力設定に対して波力発電電力が小さい場合に蓄電池からの放電によって不足分を補い、送電すべき有効電力設定に対して波力発電電力が大きい場合に蓄電池への充電によって余剰分を回収することで電力変動を平準化する波力発電システムであって、前記有効電力設定を前記波力発電電力に追従して変化させるように構成したことを特徴とする。
【0013】
このようにすると、有効電力設定が一定の場合に比べて、有効電力設定と波力発電電力の偏差が小さくなるので、電力変動を補う蓄電池の蓄電量が上限又は下限に達することを有効に回避して、蓄電池の放電出力を安定させることができる。
【0014】
この場合、蓄電池の蓄電量を監視し、蓄電量に応じた有効電力設定の増減制御を行うように構成すること、具体的には、蓄電量が適正範囲を上回った場合に有効電力設定を大きくし、蓄電量が適正範囲を下回った場合に有効電力設定を小さくすることが望ましい。波力発電電力は不規則であるため、有効電力設定に直接反映させるのではなく、蓄電池の充電量を通じて間接的に有効電力設定に反映させることで、蓄電池の保護を行いつつ、有効電力設定が不規則に変動することを防止することができる。
【0015】
特に、有効電力設定の増減は、所定のタイミングで段階的に行うことが効果的である。これによれば、有効電力設定の変化を、波力発電電力の大局的な変化に追従させることができる。
【0016】
また、適正範囲での蓄電量の変化は、有効電力設定に反映させない不感帯とすることが好ましい。許容範囲では有効電力設定を変えないようにすることで、有効電力設定が小刻みに変動することを防止し、安定した送電を行うことができる。
【0017】
また、本発明は波力発電方法として、波力発電部による発電電力を供給するにあたり、供給すべき有効電力設定に対して波力発電電力が小さい場合に蓄電池からの放電によって不足分を補い、供給すべき有効電力設定に対して波力発電電力が大きい場合に蓄電池への充電によって余剰分を回収することで電力変動を平準化するにあたり、前記有効電力設定を前記波力発電電力に追従して変化させることを特徴とする。
【0018】
このように、本発明は系統連系するシステムに限らず、波力発電方法として捉えても、上記に準じた作用効果が奏される。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上説明した構成であるから、蓄電池を過度な充放電パターン(充放電の頻度、深度)で運用することを回避できるため、蓄電池の劣化や送電電力の安定化を図れるとともに、波力発電システムの異常発生を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る波力発電システムWGSのシステム構成図。
図2】波力発電電力の平準化についての説明図。
図3図1におけるメインコントローラ1内に組み込まれた有効電力設定用の制御ブロック図。
図4図3の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、この実施形態に係る波力発電システムWGSのシステム構成図であり、図2は波力発電電力の平準化についての説明図である。
【0023】
先ず、波力発電システムWGSは、同期発電機a、bを有する波力発電部2(2a、2b)で発電した交流電力を発電機用インバータ3(3a、3b)で直流電力に変換して直流母線4に流し、その直流母線4から系統連系用DC/ACコンバータ5で交流電力に変換して、変圧器6を介し系統7へ出力するように構成される。
【0024】
直流母線4には蓄電池用DC/DCコンバータ8を介して蓄電池9が接続されており、直流母線4上の電力を蓄電池9内の蓄電池モジュール9bに充電し、或いは蓄電池モジュール9bの電力を直流母線4上に放電する。
【0025】
発電機用インバータ3はスイッチング動作を行い、交流の波力発電電力P1(P1a+P1b)を直流の波力発電電力P2(P2a+P2b)に変換する。
【0026】
このために、系統連系用DC/ACコンバータ5および蓄電池用DC/DCコンバータ8は、コンバータ用制御基盤10を介してメインコントローラ1に接続され、メインコントローラ1からの指令S10がコンバータ用制御基盤10に入力され、これに応じてコンバータ用制御基盤10から系統連系用DC/ACコンバータ5および蓄電池用DC/DCコンバータ8にゲート信号S5、S8が出力される。
【0027】
メインコントローラ1は、系統連系用DC/ACコンバータ5を通じて、系統7に送電する電力として設定した有効電力設定APS分を変圧器6を通して系統7に出力させ、また、蓄電池用DC/DCコンバータ8を通じて、有効電力設定APSに対して直流母線4上に余剰または不足している電力ΔPを蓄電池9の充放電でまかなう制御を行う。
【0028】
ここで、波力発電電力P1(P2)の電力変動と平準化について説明する。波力発電部2(2a、2b)は、同期発電機a、bを主体として構成され、発電機用インバータ3(3a、3b)を通じたトルク制御によって力行運転か回生運転かが制御される。回生方向となるようにトルクを掛けると、同期発電機a、bが回転して電圧が発生する。そして、発電機用インバータ3a、3bで交流を直流に変換して直流母線4に供給する。この実施形態における発電能力は、例えば同期発電機a、bの1機ごとに25kWである。
【0029】
直流母線4上の電力P2(P2a+P2b)は、系統連系用DC/ACコンバータ5で所定周波数の交流電力に変換し、変圧器6を通して系統7へ出力される。これと並行して、直流母線4上の電力が有効電力設定APSに対して過多となるときは、メインコントローラ1はコンバータ用制御基盤10を通じて蓄電池用DC/DCコンバータ8を制御し、直流母線4の電力を所定電圧にして蓄電池9に蓄電し、直流母線4上の電力が有効電力設定APSに対して不足するときは、メインコントローラ1はコンバータ用制御基盤10を通じて蓄電池用DC/DCコンバータ8を制御し、蓄電池9の電力を所定電圧にして直流母線4の電力に重畳させるという、平準化を行う。
【0030】
直流母線4上の電力P2(P2a+P2b)の変動は、波の周期に連動している。図2(a)に示す波力発電電力P1を全波整流すると、図2(b)のように正弦波の半周期分が繰り返す波になり、目標電力設定APSを超える部分が余剰電力ΔPOとして蓄電池9に充電され、目標電力設定APSを下回る部分が不足電力ΔPUとして蓄電池9からの放電によって補われて、図2(c)に示す目標電力設定APS分が系統7に出力される。
【0031】
図3は、図1におけるメインコントローラ1内に組み込まれている有効電力設定用の制御ブロックであり、図3の一部を拡大して示す図4は、蓄電池9の蓄電量(蓄電率)を管理するための蓄電管理テーブルCTである。この蓄電管理テーブルCTは、メインコントローラ1が蓄電量を管理する際に用いられる。この実施形態の蓄電池9は、例えばリチウム蓄電池(大電力の出し入れに良好な特性を持つもの)で、最大蓄電量(100%)に対して、蓄電量の上限(例えば90%)と下限(例えば20%)が設定されている。この範囲を超えると、蓄電池9は使用不可または使用不能になるため、上記上限と下限の間が波力発電可能な範囲とされる。また、充放電が可能であるためには、充電や放電に対して余力を持つことが必要であることから、目標蓄電量(目標蓄電量)は例えば70%に設定される。
【0032】
ここで、図1において有効電力設定APS(送電電力)>波力発電電力P1(P2)の場合、すなわち図2(b)において不足分ΔPU>余剰分ΔPOの場合、差分を蓄電池9から出力(放電)し続けるため、蓄電池9の蓄電量は徐々に減少する。
【0033】
逆に、図1において送電電力(有効電力設定)<波力発電電力の場合、すなわち図2(b)において不足分ΔPU<余剰分ΔPOの場合、差分を蓄電池へ入力(充電)し続けるため、蓄電池9の蓄電量は徐々に増加する。
【0034】
蓄電池9の蓄電量が減少または増加し続けると、蓄電量が上下又は下限に達し、電力平準化の役割を果たせなくなると共に、蓄電池システムを保護するためにシステムをシャットダウンすることを余議なくされる。
【0035】
このような問題は、有効電力設定APSが波力発電電力P1の如何によらず一定に設定されているために生じる。
【0036】
そこで本実施形態は、図1に示すメインコントローラ1で有効電力設定(系統連系出力)APSを自動的に変化させて、蓄電池9の放電出力を安定化させる制御を行う。ここで、蓄電池用コントローラ9aは蓄電池モジュール9bの蓄電量(蓄電量)を監視し、メインコントローラ1に入力する。メインコントローラ1は図4の蓄電管理テーブルCTにおいて、目標蓄電量(例えば70%)の近傍(±5%)を除き、そこから蓄電量上限までの間を「発電量増」として扱い、そこから蓄電量下限までの間を「発電量減」として扱う。
【0037】
図3は、有効電力設定APSの制御ブロックである。有効電力設定APSは周期的(例えば1分ごと)に変更するか否かが決定される。具体的には、系統連系中かつ波力発電中である場合に判断部C1から出力される信号と、発電量増(すなわち蓄電量増)である場合に蓄電池用コントローラ9aから出力される信号が判断部C2に入った場合は、有効電力設定APSを所定値α(例えば+2)だけインクリメントする。逆に、系統連系中かつ波力発電中である場合に判断部C1から出力される信号と、発電量減(すなわち蓄電量減)である場合に蓄電池用コントローラ9aから出力される信号が判断部C3に入った場合は、有効電力設定APSを所定値β(例えば−2)だけデクリメントする。すなわち、本実施形態においては、有効電力設定APSの変更は所定のタイミングで段階的に行われる。
【0038】
この増減量は、有効電力設定部C4において、直前の有効電力設定APSに対して加減された後、ゲイン部C5で適宜ゲイン調整され、図1のコンバータ用制御基盤10に対して指令信号S10の一部として送信される。
【0039】
メインコントローラ1はコンバータ用制御基盤10を通して、有効電力設定APSに見合う電力が直流母線4上に確保されるように蓄電池用DC/DCコンバータ8を制御しつつ、有効電力設定APSに相当する電力が系統7に出力されるように系統連系用DC/ACコンバータ5を制御する。
【0040】
メインコントローラ1がこのように有効電力設定APSで設定された電力を系統7に出力するなかで、図4に矢印aで示すように蓄電池9が「蓄電量増」の状態にあるとすると、図1における有効電力設定APSは大きくなる方向に変化する。つまり、「蓄電量増」の状態は、波力発電電力P1(P2)が有効電力設定ASPよりも大きいことに由来するが、これに起因して図3の制御ブロックで有効電力設定APSが大きくなる方向に変化すると、時間とともに系統9への出力が多くなり、これに伴って図2(b)の有効電力設定ASPのレベルが上がって充電分ΔPOが減り、放電分ΔPUが増えるため、図4における蓄電量が図示矢印aの位置から次第に下がって、目標蓄電量に近づく。
【0041】
一方、図4に矢印bで示すように蓄電池9が「蓄電量減」の状態にあるとすると、図1における有効電力設定APSは小さくなる方向に変化する。つまり、「蓄電量減」の状態は、波力発電電力P1(P2)が有効電力設定ASPよりも小さいことに由来するが、これに起因して図3の制御ブロックで有効電力設定APSが小さくなる方向に変化すると、時間とともに系統9への出力が少なくなり、これに伴って図2(b)の有効電力設定ASPのレベルが下がって充電分ΔPOが増え、放電分ΔPUが減る結果、図4における蓄電量が図示矢印bの位置から次第に上がって、目標蓄電量に近づく。
【0042】
つまり、有効電力設定APSは、波力発電電力P1(P2)に対して大きい場合には小さくなる方向に追従して変化し、逆に小さい場合には大きくなる方向に追従して変化する。
【0043】
なお、図4において目標蓄電量(この実施形態では70%)の周囲所定範囲内(70±5%)は適正範囲として「発電量増」とも「発電量減」とも扱わず、判断部C2、C3のいずれからも出力がなされないためにスイッチSWはONにならず、有効電力設定APSは更新されないようにしている。
【0044】
このように、有効電力設定(送電電力)APSは波力発電電力P1に追従して変化することで、有効電力設定APSが一定の場合に比べて、周期ごとの変動を平準化するための偏差が小さくなる方向に更新される。このため、蓄電池9の蓄電量が上限または下限に達する事態が回避され、蓄電池9の蓄電量が適正範囲内に制御されることになる。
【0045】
全体として見れば、この波力発電システムWGSは、同期発電機1a、1bは発電したものを全て直流母線4に流し、メインコントローラ1は、発電量P1(P2)の如何に拘わらず有効電力設定ASP分の電力を系統7に流す。その前提の下、メインコントローラ1は蓄電池用コントローラ9aと協働して蓄電池9の充放電を管理し、蓄電量に応じた有効電力設定ASPの増減制御を通じて、どの程度の電力を系統4へ流し、どの程度の電力を蓄電池9に対して充放電させるかを通じて、充電量を適正範囲に制御している。
【0046】
なお、蓄電池保護のため、蓄電量が図4に示す強制充電開始以下となった場合は、メインコントローラ1は波力発電及び系統連系運転を停止し、強制充電により蓄電量を強制充電量まで回復する制御を行うように構成されている。
【0047】
同様に、蓄電池保護のため、蓄電量が図4に示す発電可能下限以下では、メインコントローラ1は波力発電及び系統連系運転を停止する制御を行うように構成されている。
【0048】
また、定期強制充電等のため、蓄電量が図4に示す波力発電上限以上となったときは、メインコントローラ1は、波力発電可能範囲となるまで、波力発電を停止し、放電のみで系統への送電を行う制御を行うように構成されている。
【0049】
以上のように、本実施形態の波力発電システムWGSは、波力発電部2による発電電力P1(P2)を系統7へ送電するにあたり、送電すべき有効電力設定APSに対して波力発電電力P1(P2)が小さい場合に蓄電池9からの放電によって不足分を補い、送電すべき有効電力設定APSに対して波力発電電力P1(P2)が大きい場合に蓄電池9への充電によって余剰分を回収することで電力変動を平準化するシステムにおいて、有効電力設定APSを波力発電電力P1(P2)に追従して変化させるように構成したものである。
【0050】
このようにすると、有効電力設定APSが一定である場合に比べて、有効電力設定APSと波力発電電力P1(P2)の偏差が小さくなるので、電力変動を補う蓄電池9の蓄電量が上限又は下限に達することを有効に回避して、蓄電池9の放電出力を安定させることができる。このため、蓄電池9を過度な充放電パターン(充放電の頻度、深度)で運用することを回避でき、蓄電池9の劣化や送電電力の安定化を図れるとともに、波力発電システムWGSの異常発生を適切に抑制することが可能になる。
【0051】
この場合、蓄電池の蓄電量を監視し、蓄電量に応じた有効電力設定の増減制御を行うように構成している。具体的には、蓄電池9の充電量を監視し、適正範囲を上回った場合には電力余剰の傾向にあるため有効電力設定APSを大きくし、適正範囲を下回った場合には電力不足の傾向にあるため有効電力設定APSを小さくしている。すなわち、波力発電電力P1(P2)は不規則であるため、有効電力設定APSに直接反映させるのではなく、蓄電池9の充電量を通じて間接的に有効電力設定APSに反映させることで、蓄電池9の保護を行いつつ、有効電力設定APSが不規則に変動することを防止することができる。
【0052】
特に、有効電力設定APSの増減を、所定のタイミングで段階的に行うようにしているので、有効電力設定APの変化を、波力発電電力P1(P2)の大局的な変化に追従させることができる。
【0053】
また、適正範囲での蓄電量の変化は、有効電力設定に反映させない不感帯としているので、有効電力設定APSが小刻みに変動することを防止し、安定した送電を行うことができる。
【0054】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0055】
例えば、上記実施形態では波力発電電力を系統連系させるシステムについて説明したが、システムとしてではなく方法として、また系統連系以外の電力供給方法として、以下のように手法を一般化しても、同様の作用効果が奏される。
【0056】
すなわち、この波力発電方法は、波力発電部による発電電力を供給するにあたり、供給すべき有効電力設定に対して波力発電電力が小さい場合に蓄電池からの放電によって不足分を補い、供給すべき有効電力設定に対して波力発電電力が大きい場合に蓄電池への充電によって余剰分を回収することで電力変動を平準化する波力発電方法であって、前記有効電力設定を前記波力発電電力に追従して変化させることを特徴とする。
【0057】
この場合にも、蓄電量を監視して有効電力設定を変化させる方法や、有効電力設定を段階的に変化させる方法、不感帯を設ける方法等も、上記システムと同様に採用することができる。
【0058】
また、上記実施形態では、発電機2機を並列的に直流母線に接続して構成したが、1機のみ、あるいは3機以上であっても勿論構わない。
【0059】
その他、必要に応じてポンプ小屋等の負荷に対する電力を並行してまかなうなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0060】
2、2a、2b…波力発電部
7…系統
9…蓄電池
APS…有効電力設定
P1(P2)…波力発電電力
WGS…波力発電システム
図1
図2
図3
図4