(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-183661(P2020-183661A)
(43)【公開日】2020年11月12日
(54)【発明の名称】軒樋支持具
(51)【国際特許分類】
E04D 13/072 20060101AFI20201016BHJP
【FI】
E04D13/072 502T
E04D13/072 501T
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-88356(P2019-88356)
(22)【出願日】2019年5月8日
(71)【出願人】
【識別番号】593178409
【氏名又は名称】株式会社オーティス
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌司
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で容易に取付部と樋支持具本体とを連結させることができる軒樋支持具を提供する。
【解決手段】軒先7に固定される固定部3と該固定部から下方に延びる取付部4とを有する固定部材2と、前記取付部に対して上下方向にスライド移動可能に連結自在とされ、軒樋8を支持する樋支持具本体5とを備える軒樋支持具1において、前記取付部は、上下方向に延びる長孔41と、該長孔の幅方向に位置し、間隔を空けて上下方向に連続して設けられている複数の係合凹部42とを有し、前記樋支持具本体の後端部5bには、接続部6が設けられ、前記接続部は、前記長孔に挿通される挿通部61と、該挿通部に連設され、前記係合凹部のいずれかに係合される係合突部63が設けられた、前記取付部に前記樋支持具本体が連結されたときに、前記取付部の後方に位置する引っ掛け部62とを有し、上下寸法T1が前記長孔の幅寸法Wより小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軒先に固定される固定部と該固定部から下方に延びる取付部とを有する固定部材と、前記取付部に対して上下方向にスライド移動可能に連結自在とされ、軒樋を支持する樋支持具本体とを備える軒樋支持具において、
前記取付部は、上下方向に延びる長孔と、該長孔の幅方向に位置し、間隔を空けて上下方向に連続して設けられている複数の係合凹部とを有し、
前記樋支持具本体の後端部には、接続部が設けられ、
前記接続部は、前記長孔に挿通される挿通部と、該挿通部に連設され、前記係合凹部のいずれかに係合される係合突部が設けられた、前記取付部に前記樋支持具本体が連結されたときに、前記取付部の後方に位置する引っ掛け部とを有し、上下寸法が前記長孔の幅寸法より小さいことを特徴とする軒樋支持具。
【請求項2】
請求項1において、
前記係合突部は、幅方向内方に突出する抜け止め部が設けられていることを特徴とする軒樋支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軒先に軒樋を支持する軒樋支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1のような軒樋支持具が知られている。このような軒樋支持具は、樋支持具本体を取付部に対して上下方向の所望の位置で固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−060822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような軒樋支持具は、取付部の長孔と樋支持具本体の挿通孔とが重なりあった部分にボルトを挿通させ、ボルトに座金を装着させてナットで締結して固定する必要がある。そのため、樋支持具本体を取付部に固定させる作業に時間と労力がかかるだけでなく、軒樋支持具の部品点数が増えてしまう。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、簡易な構成で容易に取付部と樋支持具本体とを連結させることができる軒樋支持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の軒樋支持具は、軒先に固定される固定部と該固定部から下方に延びる取付部とを有する固定部材と、前記取付部に対して上下方向にスライド移動可能に連結自在とされ、軒樋を支持する樋支持具本体とを備える軒樋支持具において、前記取付部は、上下方向に延びる長孔と、該長孔の幅方向に位置し、間隔を空けて上下方向に連続して設けられている複数の係合凹部とを有し、前記樋支持具本体の後端部には、接続部が設けられ、前記接続部は、前記長孔に挿通される挿通部と、該挿通部に連設され、前記係合凹部のいずれかに係合される係合突部が設けられた、前記取付部に前記樋支持具本体が連結されたときに、前記取付部の後方に位置する引っ掛け部とを有し、上下寸法が前記長孔の幅寸法より小さいことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の軒樋支持具は、前記係合突部は、幅方向内方に突出する抜け止め部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の軒樋支持具は、上述した構成とされているため、簡易な構成で容易に取付部と樋支持具本体とを連結させることができる。
【0009】
請求項2に記載の軒樋支持具は、上述した構成とされているため、抜け止め部により樋支持具本体が取付部から脱落しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】は、本発明の一実施形態における軒樋支持具の側面図である。
【
図2】(a)は、軒樋支持具の部分斜視図、(b)は、接続部の拡大部分斜視図である。
【
図3】(a)は、取付部に接続部を連結させる前の状態を示した軒樋支持具の要部拡大斜視図、(b)〜(d)は、取付部に接続部を連結させる手順を示した(a)のX−X線矢視断面図である。
【
図4】は、樋支持具本体の上下方向の位置調整を示した側面図である。
【
図5】(a)(b)は、それぞれ接続部の他の変形例を示した説明図、(c)は、係合凹部の他の変形例を示した正面図である。
【
図6】は、他の実施形態における軒樋支持具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。まず、軒樋支持具の基本構成について説明する。なお、軒樋支持具が軒先に固定されている状態を基準にして、前後方向(軒先から離れる方向を前方向、軒先に近づく方向を後ろ方向)、幅方向(軒先に対する見付の方向と一致する方向)、上下方向等を規定する。また、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
【0012】
図1,2に示す軒樋支持具1は、軒先7に固定される固定部3と固定部3から下方に延びる取付部4とを有する固定部材2と、取付部4に対して上下方向にスライド移動可能に連結自在とされ、軒樋8を支持する樋支持具本体5とを備える。取付部4は、上下方向に延びる長孔41と、長孔41の幅方向に位置し、間隔を空けて上下方向に連続して設けられている複数の係合凹部42とを有する。樋支持具本体5の後端部5bには、接続部6が設けられている。接続部6は、長孔41に挿通される挿通部61と、挿通部61に連設され、係合凹部42のいずれかに係合される係合突部63が設けられた、取付部4に樋支持具本体5が連結されたときに、取付部4の後方に位置する引っ掛け部62とを有し、上下寸法T1が長孔41の幅寸法Wより小さい。以下、詳しく説明する。
【0013】
固定部材2は、金属製の帯体を加工して固定部3と取付部4が一体に形成されている。固定部3は、スレート屋根等の軒先7を挟持するU字状の挟持部31と、軒先7に打ち込まれる打ち込み部32と、固着具が挿通される挿通孔33とが形成されている。
【0014】
取付部4は、固定部3の挟持部31の端部31aから下方に延びて形成されている。取付部4には、上下方向に延びて幅寸法Wの大きさで形成されている長孔41と、長孔41に沿って上下方向に間隔を空けて複数の係合凹部42が形成されている。係合凹部42は、取付部4の両側の側端面4b,4bから幅方向の内側に向けて凹むように形成されている。これにより、取付部4の側端面4b,4bは櫛刃状になっている。
【0015】
樋支持具本体5は、軒樋8を受け支持する本体部50と、本体部50の軒樋8の前耳8a、後耳8bを保持する耳保持部51,51とを有する。本体部50は、固定部材2と略同じ材質と厚みの金属製の帯体を加工して形成されている。耳保持部51,51は、本体部50とは別体の薄板を樋支持具本体5の前端部5aと後端部5bとに固定してなり、
図1中の二点鎖線の矢印方向に折り曲げることで、軒樋8の前耳8a、後耳8bをそれぞれ係止できる。
【0016】
接続部6は、樋支持具本体5の後端部5bから後方に延びた挿通部61と、挿通部61の後端部61aから幅方向に延びている引っ掛け部62と、引っ掛け部62の前面62aから前方に突出している係合突部63とが一体に形成されている。接続部6の上下寸法T1は、長孔41の幅寸法Wより小さい大きさで形成されている。挿通部61は、取付部4の長孔41に挿通されるように、長孔41の幅寸法Wよりも小さい幅寸法で形成されている。また、挿通部61は、挿通される長孔41内で挿通部61(
図2(a)に示す前後方向に延びる一点鎖線A)を軸にして回転可能な大きさで形成されている。そのため、
図2(b)の状態から挿通部61(
図2(b)に示す一点鎖線A)を軸にして樋支持具本体5を約90度回転させることで、
図3(a)(b)に示すように引っ掛け部62は長孔41を通過することができる。引っ掛け部62には、前面62aから、取付部4のいずれかの係合凹部42に係合される係合突部63が形成されている。
【0017】
係合突部63は、係合凹部42に係合する形状で形成されている。また、係合突部63が係合凹部42に係合され、且つ引っ掛け部62の前面62aが取付部4に当接された状態において、係合突部63の前端部63aが取付部4の前面4aから突出する大きさで形成されている。また、係合突部63の前端部63aの幅方向内方側の面には、湾曲状に突出している抜け止め部64が形成されている。抜け止め部64は幅方向に湾曲状に突出しているので、係合突部63が係合凹部42に挿入される際のガイドとなる。
【0018】
次に
図3を参照して、取付部4に樋支持具本体5を連結させる手順について説明する。
図3(a)(b)に示す接続部6を長孔41に挿入させる時の樋支持具本体5は、
図2(b)の状態から挿通部61を軸にして約90度回転された状態である。この状態を維持したまま、接続部6を取付部4の前方から長孔41に挿入させる。そして、係合突部63が長孔41を通過したら、
図2(b)の状態に戻るように回転させる(
図3(c)参照)。これにより、樋支持具本体5は取付部4に連結される。そして、係合突部63が後方からいずれかの係合凹部42に係合されるように、樋支持具本体5を前方に移動させる。このとき、係合突部63は、抜け止め部64が係合凹部42の側面42aに接触することで、幅方向外側に若干変形しながら、係合凹部42を通過する。抜け止め部64が、係合凹部42を通過することで係合突部63の形状は元に戻り、取付部4の前面4aに引っ掛かることで、係合突部63は、係合凹部42から脱落しにくくなる。
【0019】
樋支持具本体5の上下の位置を調整する場合には、
図4に示すように、樋支持具本体5の前端部5a側を持ち上げるようにして係合突部63と係合凹部42との係合を解除する。これにより、樋支持具本体5は取付部4に連結された状態を維持したまま上下位置を調整できる。そして、樋支持具本体5の上下の位置が定まったら、再び係合突部63をいずれかの係合凹部42に係合させて、樋支持具本体5を取付部4に固定すればよい。
【0020】
樋支持具本体5は、固定部3が軒先7に固定される前に取付部4に連結されていてもよく、固定部3が軒先7に固定された後に取付部4に連結されていてもよい。打ち込み部32や挿通孔33に通した固着具(不図示)により、軒先7に複数の軒樋支持具1が固定された後、それらの樋支持具本体5に軒樋8を架け、軒樋8の前耳8a、後耳8bを耳保持部51,51により保持させる。
【0021】
本実施形態の軒樋支持具1は、固定部材2と樋支持具本体5の二つの部材により構成されているので、構成が簡易となっている。また、接続部6の引っ掛け部62を、取付部4の長孔41に挿入させてから挿通部61を軸にして樋支持具本体5を回転させることで、取付部4と樋支持具本体5とを容易に連結させることができる。
【0022】
次に、軒樋支持具1の変形例について、
図5を参照して説明する。なお、
図1の軒樋支持具1と共通する部分については、説明を省略する。
図5(a)の接続部6Aは、挿通部61の上部に引っ掛け部62が形成されている。この挿通部61と引っ掛け部62とを合わせた接続部6の上下寸法T2は、取付部4の長孔41の幅寸法Wよりも小さく形成されている。これにより、
図5(a)の接続部6Aは、
図3(a)(b)に示す接続部6と同様にして、長孔41内を通過させることができる。
【0023】
図5(b)に示す接続部6Bの係合突部63は、係合凹部42に係合され、且つ引っ掛け部62の前面62aが取付部4に当接された状態において、取付部4の前面4aから突出しない寸法で形成されている。また、抜け止め部64は、係合凹部42の側面42aに圧接するように形成されているため、係合突部63は、係合凹部42から脱落しにくくなる。
【0024】
図5(c)に示す取付部4Aは、係合凹部42が形成されている位置が、
図1〜
図4の取付部4とは異なる。
図5(c)の係合凹部42は、長孔41と側端面4b,4bとの間に、前後方向に開設して形成されている。この係合凹部42に係合される接続部6の係合突部63は、
図1〜
図4の係合突部63と比べて幅方向内方に形成されているものが用いられる。本実施形態の取付部4Aの係合凹部42は、
図1の取付部4の係合凹部42とは異なり、取付部4Aの側端面4b側が開放されていない。この係合凹部42に係合突部63が係合されると、係合突部63の上下の面と幅方向の面が係合凹部42に囲まれる態様となる。そのため、係合突部63に抜け止め部64が形成されていなくても、係合突部63は、係合凹部42から脱落しにくくなる。
【0025】
図6の軒樋支持具1の固定部材2は全体として、くの字状に形成されている。固定部3は、軒先7の傾斜に沿うように折曲されており、取付部4は、固定部3の先端部3aから下方に延びて形成されている。接続部6は、挿通部61から前方に延びて段落ち形成された足部65を有し、足部65の下方には、足部65に対して前後方向に位置調整可能に連結された状態で樋支持具本体5が設けられている。樋支持具本体5は、耳保持部51,51によって、軒樋8の前耳8aと後耳8bとを保持して、軒樋8を吊り支持する吊り具である。樋支持具本体5の下方に設けられているロックレバー52を回動させることによって、樋支持具本体5の前後方向のスライド移動のロック/アンロックを切り替えることができる。接続部6の他の構成である挿通部61、引っ掛け部62、係合突部63、抜け止め部64は、
図1の軒樋支持具1と同様である。また、取付部4の長孔41、係合凹部42も、
図1の軒樋支持具1と同様である。
【0026】
軒樋支持具1は、上述した各構成に限定されることはなく、例えば、軒樋支持具1は、金属製の帯体を加工して形成されているが、樹脂製であってもよい。上述の樋支持具本体5の本体部50は、接続部6の挿通部61より幅寸法が大きく形成されているが、挿通部61と同じ幅寸法であってもよい。係合突部63には、抜け止め部64が形成されているが、形成されていなくてもよい。軒樋8の形状は、図中のものに限定されることはなく、また、軒樋8の形状に合わせて樋支持具本体5が形成されればよい。また、係合突部63と係合凹部42との係合を解除する場合には、樋支持具本体5の前端部5a側を持ち上げるようにすることに限定されることはなく、係合突部63が係合凹部42との係合が解除されるまで、樋支持具本体5を後方に押し出してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 軒樋支持具
2 固定部材
3 固定部
4,4A 取付部
41 長孔
42 係合凹部
5 樋支持具本体
5b 後端部
6,6A,6B 接続部
61 挿通部
62 引っ掛け部
63 係合突部
64 抜け止め部
7 軒先
8 軒樋
T1,T2 (接続部の)上下寸法
W (長孔の)幅寸法