【実施例】
【0016】
<実施例1>
図1〜
図5を参照しつつ実施例1の車両用ステアリング装置10を説明する。
図1に示されるように、車両用ステアリング装置10は、車両のステアリングホイール21から車輪31,31(操舵用車輪31,31)に至るステアリング系20と、このステアリング系20に補助トルクを付加する補助トルク機構40と、からなる。
【0017】
ステアリング系20は、ステアリングホイール21と、このステアリングホイール21に連結されたステアリング軸22と、このステアリング軸22に自在軸継手23によって連結された入力軸24と、この入力軸24に第1伝動機構25によって連結された転舵軸26と、この転舵軸26の両端にボールジョイント27,27とタイロッド28,28とナックル29,29とを介して連結された左右(車幅方向Wd両側)の車輪31,31と、からなる。
【0018】
第1伝動機構25は、例えばラックアンドピニオン機構によって構成される。転舵軸26は、軸方向(車幅方向Wd)へ移動可能である。
【0019】
ステアリング系20によれば、運転者がステアリングホイール21を操舵することによって、操舵トルクにより第1伝動機構25と転舵軸26と左右のタイロッド28,28とを介して、左右の車輪31,31を操舵することができる。
【0020】
補助トルク機構40は、操舵トルクセンサ41と制御部42と電動モータ43と第2伝動機構50とからなる。操舵トルクセンサ41は、ステアリングホイール21に加えられたステアリング系20の操舵トルクを検出する。制御部42は、操舵トルクセンサ41のトルク検出信号に基づいて制御信号を発生する。電動モータ43は、制御部42の制御信号に基づき、前記操舵トルクに応じたモータトルク(補助トルク)、つまり駆動力を発生する。第2伝動機構50は、電動モータ43が発生した補助トルクを前記転舵軸26に伝達する。
【0021】
この車両用ステアリング装置10によれば、運転者の操舵トルクに電動モータ43の補助トルクを加えた複合トルクにより、転舵軸26によって車輪31,31を転舵することができる。
【0022】
図2に示されるように、第2伝動機構50は、ボールねじ60とベルト伝動機構70とからなる。
【0023】
ボールねじ60は、転舵軸26(ねじ軸26)に形成されたネジ部61と、複数のボール62と、ネジ部61に複数のボール62を介して連結されたナット63とからなる。ナット63は、軸受64によってハウジング80に回転可能に支持されるとともに、軸受64に対して軸方向への相対移動を規制されている。
【0024】
ベルト伝動機構70は、電動モータ43が発生した補助トルクをボールねじ60に伝える。このベルト伝動機構70は、電動モータ43によって駆動される軸71と、軸71に設けられている第1のプーリ72と、ボールねじ60のナット63に設けられている第2のプーリ73と、第1のプーリ72と第2のプーリ73との間に掛けられているベルト74と、からなる。第1のプーリ72の径に対して、第2のプーリ73の径は大径である。従って、ベルト伝動機構70は、電動モータ43の回転速度を減速してボールねじ60に伝達する。
【0025】
軸71(駆動軸71)は、転舵軸26に対して平行に位置しており、例えば一端71aが自由端であり、他端部71bのみが2つの軸受75,76によって、ハウジング80に回転可能且つ軸方向への移動を規制されて支持されている。
【0026】
この軸71は、電動モータ43の出力軸43aに対して同心上に位置している。軸71の他端部71bは、電動モータ43の出力軸43aに連結されている。なお、軸71は、電動モータ43の出力軸43aと同一の部材によって構成することが可能である。つまり、軸71は出力軸43aを含む。
【0027】
第1のプーリ72の回転中心線L1は、軸71の回転中心線に合致する。第2のプーリ73の回転中心線L2は、転舵軸26及びナット63の回転中心線に合致する。
【0028】
図1及び
図2に示されるように、ハウジング80は、横置きに配置可能な筒状の部材であって、車幅方向Wdへ水平に延びている。このハウジング80は、第1伝動機構25と転舵軸26と第2伝動機構50を収納している。
【0029】
このハウジング80は、筒状の第1のハウジング81と、筒状の第2のハウジング82とに、車幅方向Wdに二分割されるとともに、互いにボルト結合によって一体化されている。このハウジング80は、第1のハウジング81と第2のハウジング82との結合部分に、収納室83を有する。第2伝動機構50は、ハウジング82のなかの収納室83に収納されている。
【0030】
以下、ハウジング80について詳しく説明する。
図3(a)は、
図2に示される第1のハウジング81と第2のハウジング82との組み合わせ部分の分解図である。
図3(b)は、
図3(a)に示される密封装置102周りの拡大図である。
図3(c)は、
図3(b)に示される密封装置102の組み付け過程の作用図である。
【0031】
図2及び
図3(a)に示されるように、第1のハウジング81の一端と、第2のハウジング82の一端とは、互いに向かい合っている。第1のハウジング81の一端の縁には、第1のフランジ84が一体に設けられている。第2のハウジング82の一端の縁には、第2のフランジ85が一体に設けられている。第1のフランジ84と第2のフランジ85とは、互いに重ね合わされるとともに、複数のボルト86によって互いに結合されている。第2のフランジ85には、電動モータ43が取り付けられている。
【0032】
図4も参照すると、第1のプーリ72の回転中心線L1と第2のプーリ73の回転中心線L2とは、一定の間隔で離間するとともに、互いに平行である。第1のプーリ72の回転中心線L1(回転中心L1)と第2のプーリ73の回転中心線L2(回転中心L2)とを通る直線L3のことを、「基準線L3」という。この基準線L3は、車両の上下方向(Up,Dn方向)に延びている。なお、この基準線L3は、傾いている線を含む。
【0033】
収納室83のなかの、ベルト伝動機構70を収納する収納部83aは、第1のハウジング81の一端の膨出した部分によって画成されている。回転中心線L1,L2間が離間しているので、収納部83aは基準線L3に沿って細長い。このため、収納部83aの開口(第1のハウジング81の開口)と、第1のフランジ84及び第2のフランジ85は、回転中心線L1,L2の離間方向に細長い。
【0034】
図2、
図3(a)及び
図3(b)に示されるように、第2のハウジング82は、第1のハウジング81の内周面81aに嵌め込み可能な、環状の嵌め込み部87を有している。この嵌め込み部87の外周面87aには、全周にわたって連続したループ状のシール嵌め込み溝90が設けられている。
図4に示されるように、収納部83aが基準線L3に沿って細長いので、シール嵌め込み溝90も同方向に細長い。
【0035】
このシール嵌め込み溝90には、弾性を有したループ状のシール部材101が嵌め込まれている。このシール部材101は、第1のハウジング81の内周面81aと、第2のハウジング82の嵌め込み部87の外周面87aと、の間を封止(シール)しており、例えばラバー製のOリングによって構成される。
【0036】
第1のハウジング81の内周面81aと、嵌め込み部87の外周面87aと、シール嵌め込み溝90と、シール部材101とによって、密封装置102が構成されている。この密封装置102は、第1のハウジング81の内周面81aと、嵌め込み部87の外周面87aと、の間をループ状のシール部材101によって封止する構成、いわゆる軸シール構造である。
【0037】
次に、密封装置102について詳しく説明する。
図3(a)及び
図3(b)に示されるように、シール嵌め込み溝90の断面は、嵌め込み部87の外周面87aに向かって開放された略U字状であって、平坦な底面90aと、嵌め込み部87の先端面87bに近い方の第1壁90bと、嵌め込み部87の先端面87bから遠い方の第2壁90cと、によって構成されている。
【0038】
図4に示されるように、このシール嵌め込み溝90は、1つの第1の溝部91と、1つの第2の溝部92と、一対の第3の溝部93,93と、によって構成されており、互いに連続している。
【0039】
第1の溝部91は、
図3(a)に示される嵌め込み部87の先端面87bの方から見て、第1の中心C1を基準としてループ状の溝90(嵌め込み溝90)の外方へ凸となる円弧状の溝である。第1の溝部91の円弧の第1の中心C1は、第1のプーリ72の中心L1に合致している。
【0040】
第2の溝部92は、前記第1の中心C1とは異なる第2の中心C2を基準として、第1の溝部91の円弧に対し逆向き円弧状の第2の溝部92と、第2の溝部92の円弧の第2の中心C2は、第2のプーリ73の中心L2に合致している。
【0041】
一対の第3の溝部93,93は、第1の溝部91の両端91a,91aと第2の溝部92の両端92a,92aとにそれぞれ連続している(言い換えると、連通している。連なっている)。さらに、一対の第3の溝部93,93は曲線状を呈している。例えば、一対の第3の溝部93,93は、嵌め込み部87の先端面87bの方から見て、互いに離反する方向へ凸となる円弧状である。
【0042】
このように、シール嵌め込み溝90は、第1の溝部91と第2の溝部92と一対の第3の溝部93,93と、によって構成されている、曲線のみからなる輪郭に構成されている。
【0043】
図5も参照する。
図5は、
図4に示される嵌め込み溝90の中央部分の斜視図である。ここで、
図4に想像線によって示される一対の直線93X,93Xのことを、「仮の第3の溝部93X,93X」という。この仮の第3の溝部93X,93Xは、第1の溝部91の両端91a,91aと第2の溝部92の両端92a,92aとの間を直線状に繋いでいる、いわゆる直線溝の構成である。
【0044】
これに対し、実施例1の一対の第3の溝部93,93は、互いに離反する方向へ凸となる円弧状の溝の構成であることが明らかである。この一対の第3の溝部93,93の円弧(曲線)の曲率や、互いに離反する方向への突出量は、ループ状のシール部材101を、このシール部材101のループ径方向へ張りつつ嵌め込み可能な程度、つまり、シール部材101の弛みの緩和や解消を勘案して、設定される。言い換えると、前記曲率や前記突出量は、一対の第3の溝部93,93の底90a(底面90a)から、シール部材101が浮き上がる、いわゆる浮き上がり現象を防止可能に設定される。
【0045】
図1及び
図2を参照すると、以上の説明から明らかなように、車両用ステアリング装置10は、電動モータ43と、ボールねじ60のナット63と、ボールねじ60のねじ軸26により構成された転舵軸26と、伝動装置110と、を含む。この伝動装置110は、第2伝動機構50とハウジング80と密封装置102とを含む。
【0046】
上記構成の密封装置102の作用を、
図3及び
図5を参照しつつ説明する。
図3(b)及び
図5に示されるように、ループ状のシール部材101は、第3の溝部93に対して、底90aから浮き上がることなく、嵌め込まれている。このため、シール部材101が嵌め込み部87の外周面87aから突出する突出高さHiは、封止の際に必要な圧縮量に相当する、小さい値である。
【0047】
嵌め込み部87を第1のハウジング81の内周面81aに嵌め込む、一例を考える。先ず、例えば、
図3(b)に示されるように、第1のハウジング81の内周面81aに、第2のハウジング82の嵌め込み部87の外周面87aの位置を合わせる。その後に、嵌め込み部87を第1のハウジング81の内周面81aに嵌め込んでいく(矢印R1)。このときに、第3の溝部93に嵌め込まれているシール部材101は、第3の溝部93を構成する第2壁90cに押されて矢印R1へ移動し、第1のハウジング81の内周面81aの縁81bに接する。突出高さHi(
図3(b)参照)が小さいシール部材101は、そのまま内周面81aの縁81bに案内されて矢印R2へ移動し、第3の溝部93の中に圧縮されつつ収まる。従って、第1のハウジング81の内周面81aに第2のハウジング82の嵌め込み部87を嵌め込むときに、シール部材101を傷める心配はない。
【0048】
以上の実施例1の説明をまとめると、次の通りである。
図2〜
図5に示されるように、密封装置102は、
第1のハウジング81と、
前記第1のハウジング81の内周面81aに嵌め込み可能な嵌め込み部87を有している、第2のハウジング82と、
前記第1のハウジング81の前記内周面81aと、前記第2のハウジング82の前記嵌め込み部87の外周面87aと、の間を封止することが可能な弾性を有したループ状のシール部材101と、
前記シール部材101を嵌め込み可能に前記嵌め込み部87の前記外周面87aに有しているループ状の溝90であって、前記嵌め込み部87の先端面87bの方から見て(
図4参照)、第1の中心C1を基準として前記ループ状の溝90の外方へ凸となる円弧状の第1の溝部91と、前記第1の中心C1とは異なる第2の中心C2を基準として前記第1の溝部91の円弧に対し逆向き円弧状の第2の溝部92と、前記第1の溝部91の両端91a,91aと前記第2の溝部92の両端92a,92aとにそれぞれ連続しているとともに互いに離反する方向へ凸となる円弧状の一対の第3の溝部93,93と、によって構成された、曲線のみからなる輪郭のシール嵌め込み溝90と、を含む。
【0049】
このように、軸シール構造において、シール嵌め込み溝90は、第1の中心C1を基準とした円弧状の第1の溝部91と、第1の溝部91の円弧に対して第2の中心C2を基準とした逆向き円弧状の第2の溝部92と、第1の溝部91の両端91a,91aと第2の溝部92の両端92a,92aとにそれぞれ連続している曲線状の一対の第3の溝部93,93と、からなる。
【0050】
つまり、このシール嵌め込み溝90は、第1の中心C1を基準とした第1の溝部91と、第2の中心を基準とした第2の溝部92と、一対の第3の溝部93,93とによって、曲線のみからなる輪郭に構成されている。このシール嵌め込み溝90は、曲線のみからなる輪郭のループ状の溝なので、ループ状のシール部材101を、このシール部材101のループ径方向へ張りつつ(張力を付加しつつ。緊迫力を発生しつつ)、嵌め込むことが可能である。
【0051】
このシール嵌め込み溝90は、曲線のみからなる輪郭のループ状の溝なので、ループ状のシール部材101をループ径方向へ張りつつ(張力を付加しつつ。緊迫力を発生しつつ)、嵌め込むことが可能である。このため、軸シール構造において、ループ状のシール部材101の一部が弛んで、嵌め込み溝90の底90a(底面90a)から浮き上がる、いわゆる浮き上がり現象を防止することができる。
【0052】
この結果、シール部材101が嵌め込み部87の外周面87aから突出する突出高さHiを抑制することができる。従って、第1のハウジング81の内周面81aに第2のハウジング82の嵌め込み部87を嵌め込むときに、シール部材101の挟み込み現象を防止することができる。シール部材101のシール性能を、十分に発揮することができる。しかも、一対の第3の溝部93,93を曲線状にするだけの簡単な構成ですむ。
【0053】
さらには、
図3及び
図4に示されるように、前記一対の第3の溝部93,93は、嵌め込み部87の先端面87bの方から見て、互いに離反する方向へ凸となる円弧状である。このため、シール嵌め込み溝90の全体の輪郭は、嵌め込み部87の先端面87bの方から見て、英文字の”O”の字状(卵状や楕円形状を含む)となる。従って、ループ状のシール部材101の全体を、ループ径方向へ極力均等の張り力で張りつつ、シール嵌め込み溝90に嵌め込むことが可能である。シール部材101には、局部的に過大な張り力が負荷されない。シール部材101の耐久性を極力維持しつつ、シール部材101をシール嵌め込み溝90に嵌め込むことができる。
【0054】
図1〜
図3に示されるように、伝動装置110は、
前記密封装置102と、
第1のプーリ72と、第2のプーリ73と、前記第1のプーリ72と前記第2のプーリ73とに掛けられているベルト74と、からなるベルト伝動機構70と、を有し、
前記ベルト伝動機構70は、前記第1のハウジング81と前記第2のハウジング82とによって囲まれた収納室83に収納されており、
前記第1の中心C1は、前記第1のプーリ72の中心L1(回転中心線L1)に位置し、
前記第2の中心C2は、前記第2のプーリ73の中心L2(回転中心線L2)に位置している。
【0055】
ベルト伝動機構70であるから、各プーリ72,73の離間距離(中心L1,L2間距離)は比較的長い。このため、嵌め込み溝90に、ループ状のシール部材101を嵌め込んだ場合には、特に、一対の第3の溝部93,93の底90aから、シール部材101が浮き上がりやすい。
【0056】
これに対し、実施例1の嵌め込み溝90は、曲線のみからなる輪郭のループ状の溝である。このため、ループ状のシール部材101をループ径方向へ張りつつ嵌め込むことが可能である。一対の第3の溝部93,93の底90a(底面90a)からの、シール部材101の浮き上がりを防止することができる。
【0057】
図1及び
図2に示されるように、車両用ステアリング装置10は、
前記伝動装置110と、
前記伝動装置110の前記第1のプーリ72へ伝達する転舵用駆動力を発生する電動モータ43と、
前記伝動装置110の前記第2のプーリ73に連結されるボールねじ60のナット63と、
前記ボールねじ60のねじ軸26によって構成され、前記第1のハウジング81と前記第2のハウジング82とに収納されており、転舵用車輪31,31を転舵する転舵軸26と、
を有しており、
前記第1のハウジング81と前記第2のハウジング82とは、車両(図示せず)の車幅方向Wdに延びている。
【0058】
第1のハウジング81と前記第2のハウジング82とは、車幅方向Wdに移動可能な転舵軸26を収納するので、車幅方向Wdに長い。第1のハウジング81と第2のハウジング82とを、転舵軸26を収納しつつ組み立てるのであるから、横置き状態にして組み立てる方が、組立作業性は良い。その場合であっても、嵌め込み溝90が曲線のみからなる輪郭のループ状の溝であるから、ループ状のシール部材101を、ループ径方向へ張りつつ嵌め込むことが可能である。
【0059】
実施例1の説明を、より具体的にまとめると、次の通りである。
図1〜
図5に示されるように、車両用ステアリング装置10は、
筒状の第1のハウジング81と、
前記第1のハウジング81の内周面81aに嵌め込み可能な環状の嵌め込み部87を有している、筒状の第2のハウジング82と、
前記第1のハウジング81の前記内周面81aと、前記第2のハウジング82の前記嵌め込み部87の外周面87aと、の間を封止することが可能な弾性を有したOリング101(シール部材101)と、
前記Oリング101を嵌め込み可能に前記嵌め込み部87の前記外周面87aに有しているループ状の溝90であって、前記嵌め込み部87の先端面87bの方から見て、第1の中心C1を基準として前記ループ状の溝90の外方へ凸となる円弧状の第1の溝部91と、前記第1の中心C1とは異なる第2の中心C2を基準として前記第1の溝部91の円弧に対し逆向き円弧状の第2の溝部92と、前記第1の溝部91の両端91a,91aと前記第2の溝部92の両端92a,92aとにそれぞれ連続しているとともに互いに離反する方向へ凸となる円弧状の一対の第3の溝部93,93と、によって構成された曲線のみからなる輪郭のOリング嵌め込み溝90(シール嵌め込み溝90)と、
第1のプーリ72と、第2のプーリ73と、前記第1のプーリ72と前記第2のプーリ73とに掛けられているベルト74と、からなるベルト伝動機構70と、
前記第1のプーリ72へ伝達する転舵用駆動力を発生する電動モータ43と、
前記第2のプーリ73に連結されるボールねじ60のナット63と、
前記ボールねじ60のねじ軸26によって構成され、前記第1のハウジング81と前記第2のハウジング82とに収納されており、転舵用車輪31,31を転舵する転舵軸26と、を含み、
前記第1のハウジング81と前記第2のハウジング82とは、車両の車幅方向Wdに延びており、
前記ベルト伝動機構70は、前記第1のハウジング81と前記第2のハウジング82とによって囲まれた収納室83に収納されており、
前記第1の中心C1は、前記第1のプーリ72の中心L1に位置し、
前記第2の中心C2は、前記第2のプーリ73の中心L2に位置している。
【0060】
<実施例2>
図6を参照しつつ実施例2の密封装置102Aを説明する。
図6(a)及び
図6(b)は、上記
図3(b)に対応して表してある。実施例2の密封装置102Aは、
図1〜
図5に示される上記実施例1の密封装置102のシール部材101を、
図6(a)及び
図6(b)に示される密封装置102Aのシール部材101A,101Bに変更したことを特徴とし、他の構成は実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0061】
図6(a)に示される実施例2のシール部材101Aは、断面甲丸状である甲丸リングによって構成されている。
図6(b)に示される実施例2のシール部材101Bは、断面甲山状である甲山リングによって構成されている。実施例2の密封装置102Aの作用、効果は、実施例1と同様である。
【0062】
<実施例3>
図7を参照しつつ実施例3の密封装置102Bを説明する。
図7は、上記
図3(b)に対応して表してある。実施例3の密封装置102Bは、
図1〜
図5に示される上記実施例1の密封装置102のシール嵌め込み溝90を、
図7に示されるシール嵌め込み溝90Bに変更したことを特徴とし、他の構成は実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0063】
実施例3のシール嵌め込み溝90Bは、「あり溝」によって構成されている。この「あり溝」は、底面90Baの幅W1に比べて開口90Bbの幅W2が小さい。このため、シール嵌め込み溝90Bの底面90Baから、シール部材101が浮き上がる、いわゆる浮き上がり現象を、より一層防止することができる。その他の作用、効果は、実施例1と同様である。
【0064】
なお、本発明による密封装置102,102A,102B、この密封装置102,102A,102Bを備えた伝動装置110、及びこの伝動装置110を備えた車両用ステアリング装置10は、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、実施例に限定されるものではない。
【0065】
例えば、本発明では、密封装置102,102A,102Bは、伝動装置110やこの伝動装置110を備えた車両用ステアリング装置10に限定されるものではなく、
図4に示される第1の溝部91と第2の溝部92との間が離間している構成であれば、適用することができる。つまり、密封装置102,102A,102Bは、用途を限定されない。
【0066】
また、ハウジング80は二分割される構成であればよく、いずれか一方を第1のハウジング81とし、いずれか他方を第2のハウジング82とすればよい。
【0067】
また、シール部材101,101A,101Bは、弾性を有したループ状の部材であればよく、Oリング、甲丸リング、甲山リングの他に、例えば断面角形状のリングや断面中空状のリングであってもよい。
【0068】
また、実施例1〜3の各構成を適宜組み合わせることは任意である。
【0069】
また、
図1に示される車両用ステアリング装置10は、ステアリングホイール21と転舵軸26との間を機械的に分離し、ステアリングホイール21の操舵量に従って電動モータ43が転舵用動力を発生し、この転舵用動力をベルト伝動機構70及びボールねじ60によって転舵軸26に伝える方式の、いわゆる、ステア バイ ワイヤ(steer-by-wire)式ステアリング装置であってもよい。