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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-183810(P2020-183810A)
(43)【公開日】2020年11月12日
(54)【発明の名称】媒体管用コネクタ
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/088 20060101AFI20201016BHJP
   F16L 37/14 20060101ALI20201016BHJP
【FI】
   F16L37/088
   F16L37/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-79249(P2020-79249)
(22)【出願日】2020年4月28日
(31)【優先権主張番号】10 2019 111 199.4
(32)【優先日】2019年4月30日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】505055505
【氏名又は名称】フォス・アウトモーティヴ・ゲー・エム・ベー・ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・オーバーデルファー
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス・レーリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ベンシュ
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106AB01
3J106BA01
3J106BA02
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE29
3J106EA03
3J106EB06
3J106EC01
3J106ED33
3J106EE02
3J106EF04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い機能性を備えた、取り付け及び取り外しが簡単なコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、連結部を含み、その中にプラグSを差し込み可能であり、四つの固定アーム15a、15bを有する保持クリップ3を含み、連結部2に半径方向に差込方向SRで押し込むことで取り付け可能である。この保持クリップ3は、U字状に形成されており、U字の脚部は二つの対15a/15b、16a/16bが互いに正反対に向かい合った、バネ弾性を備えた固定アーム15a、15b、16bを形成し、軸方向X−Xに相前後して配置されている。プラグSの差込方向SRに面した側にある、固定アーム15a、15bの第一の対15a/15bに、それぞれ手前側の傾斜面があり、この傾斜面は、プラグSと協働するために、プラグSの差込方向SRとは逆向きに広がっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホース接続部及び/又はパイプ接続部のためのコネクタ(1)であって、
−軸つば(S2)を有する差込シャフト(S1)を具備するプラグ(S)を、差込軸(X−X)に沿って差込方向(SR)に差し込み可能な受入開口部(10)を備えた連結部(2)、及び
−挿入方向(M)において半径方向の挿入によって、前記連結部(2)に事前取り付け可能であり、半径方向にスリットが入れられ(17)、少なくとも部分的にバネ弾性を備えた、四つの固定アーム(15a、15b、16a、16b)有する保持クリップ(3)を含み、かつ
a)事前取付位置においては前記プラグ(S)のための差込ポジションがとられ、該差込ポジションにおいて前記プラグ(S)は前記保持クリップ(3)を通して前記受入開口部(10)に差し込み可能であり、及び
b)取付位置においては前記プラグ(S)の差込後に、差し込まれた前記プラグ(S)のための保持ポジションがとられ、該保持ポジションにおいて前記プラグ(S)は前記受入開口部(10)内で、前記保持クリップ(3)によって形状結合され、引き抜きに対して阻害可能であり、その際
c)前記保持クリップ(3)は基本形状に関して、前記差込軸(X−X)の方向から見て、U字状に形成されており、及びU字の脚部は、それぞれ互いに正反対に向かい合った固定アーム(15a、15b、16a、16b)の二つの対(15a/15b、16a/16b)を形成し、該固定アームは軸方向(X−X)に相前後して配置されており、それぞれ一つのスリット(18)によって互いに分離され、及び半径方向に及び軸方向(X−X)にバネ弾性があり、その際
d)前記保持クリップ(3)の、前記プラグ(S)の前記差込方向(SR)に面した側にある、固定アーム(15a、15b)の第一の対(15a/15b)の、前記プラグ(S)の前記差込方向(SR)に面した側に、それぞれ手前側の傾斜面(21a、21b)があり、該傾斜面は前記プラグ(S)と協働するために前記プラグ(S)の前記差込方向(SR)とは逆向きに広がっている、コネクタにおいて、
前記手前側の傾斜面(21a、21b)は、それぞれ半径方向内側に、前記差込軸(X−X)の方向に向けられた、固定アーム(15a、15b)の前記第一の対(15a/15b)の角部(14a、14b)が、前記保持クリップ(3)の挿入方向(M)から見て、前記差込軸(X−X)の下方に配置されており、その際、前記角部(14a、14b)は、前記手前側の傾斜面(21a、21b)が前記プラグ(S)の差込時に、差込方向(SR)において前記プラグ(S)の軸つば(S2)の前にある、前記プラグ(S)のシール部(S3)によって広げられるように、互いに間隔(A)を空けていることを特徴とする、コネクタ。
【請求項2】
固定アーム(15a、15b)の前記第一の対(15a/15b)の前記角部(14a、14b)の、前記プラグ(S)の前記差込方向(SR)の反対側に、それぞれ奥側の傾斜面(22a、22b)があり、該傾斜面は前記プラグ(S)の前記軸つば(S2)と協働するために前記プラグ(S)の前記差込方向(SR)とは逆向きに窄まっていることを特徴とする、請求項1に記載のコネクタ(1)。
【請求項3】
前記保持クリップ(3)の前記事前取付位置及び前記取付位置は互いにオフセットされており、及び前記連結部(2)の前記軸(X−X)について揃えられており、
その際前記保持クリップ(3)は前記事前取付位置において、好ましくは半径方向の動きのための遊びを有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコネクタ(1)。
【請求項4】
前記保持クリップ(3)は、一体型の、特にプラスチック製の射出成形による、成形品として形成されており、及び好ましくは該保持クリップを通る縦軸(Y−Y)に関して対称に形成されていることを特徴とする、請求項1から3のうちのいずれか一項に記載のコネクタ(1)。
【請求項5】
縦軸(X−X)の方向から見て、基本形状に関してU字状に形成されている保持クリップ(3)において、前記U字の脚部の接続領域(19)によって、前記固定アーム(15a、15b、16a、16b)の自由端と反対側に、前記保持クリップ(3)のための操作面(20)が形成されていることを特徴とする、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載のコネクタ(1)。
【請求項6】
前記保持クリップ(3)の前記差込ポジションにおいて及び前記保持ポジションにおいて、前記プラグ(S)の前記差込方向(SR)に面した前記連結部(2)の表壁(29)の側にある、前記固定アーム(15a、15b)の前記対(15a/15b)の前記固定アーム(15a、15b)のそれぞれには、特に前記固定アーム(15a、15b)の中央の領域に、ガイドピン(23a、23b)が、前記連結部(2)の相補的なガイドスリット(24a、24b)にかみ合うために存在することを特徴とする、請求項1から5のうちのいずれか一項に記載のコネクタ(1)。
【請求項7】
前記プラグ(S)の前記差込方向(SR)に面した前記連結部(2)の表壁(29)とは反対側にある、前記固定アーム(16a、16b)の前記対(16a/16b)の前記固定アーム(16a、16b)のそれぞれには、前記連結部(2)において割線のように配設された縦ガイドバー(25a、25b)又は縦ガイド段が、前記プラグ(S)の前記差込方向(SR)の反対側にある前記連結部(2)の表壁にある、少なくとも一つの相補的なガイド(26)と協働するために、存在することを特徴とする請求項1から6のうちのいずれか一項に記載のコネクタ(1)。
【請求項8】
前記連結部(2)において割線のように配設された前記縦ガイドバー(25a、25b)又は縦ガイド段は、一つの/前記接続領域(19)の両側又は一つの/前記接続領域(19)に配置されて、該接続領域において前記固定アーム(15a、15b、16a、16b)が互いに接続されていることを特徴とする、請求項7に記載のコネクタ(1)。
【請求項9】
前記保持クリップ(3)のロックのために、前記保持クリップ(3)の前記差込ポジションにおいて及び前記保持ポジションにおいて、前記プラグ(S)の前記差込方向(SR)に面した前記連結部(2)の表壁(29)とは反対側にある、前記固定アーム(16a、16b)の前記対(16a/16b)の前記固定アーム(16a、16b)のそれぞれには、前記固定アーム(16a、16b)の自由端のそれぞれに、内側に、互いに、向かい合わされた先端、及び、特に平坦な、底面を有するカム(27a、27b)が存在することを特徴とする、請求項1から8のうちのいずれか一項に記載のコネクタ(1)。
【請求項10】
前記プラグ(S)の前記軸つば(S2)と協働するために、前記保持クリップ(3)の前記差込ポジションにおいて及び前記保持ポジションにおいて、前記プラグ(S)の前記差込方向(SR)に面した前記連結部(2)の表壁(29)とは反対側にある、前記固定アーム(16a、16b)の前記対(16a/16b)の前記固定アーム(16a、16b)に、中央の領域において半径方向に内側に向いた膨らみ(28a、28b)が存在することを特徴とする、請求項1から9のうちのいずれか一項に記載のコネクタ(1)。
【請求項11】
前記連結部(2)は、特にスリーブ部として形成された、本体(4)と、特に基本形状に関して環状の、前記保持クリップ(3)のための受入体(5)とを含み、これらは、好ましくはレーザー溶接のような材料結合によって、互いに接続可能であるか又は取り付けられた状態で互いに接続されており、その際特に前記本体(4)及び/又は前記受入体(5)は、プラスチック製の射出成形品として形成されていることを特徴とする、請求項1から10のうちのいずれか一項に記載のコネクタ(1)。
【請求項12】
前記連結部(2)は、特に前記保持クリップ(2)のための受入体(5)によって、基本形状に関して中空円筒形であり、前記中空円筒の各表壁(29、30)には、前記保持クリップ(3)のために、それぞれ閉じられたハウジングが形成されており、該ハウジングは、前記保持クリップ(3)を差し込むために、二つの互いに正反対に向かい合った側に円周の開口部(31、32)、特に差込開口部(31)及び出口開口部(32)、を有していることを特徴とする、請求項1から11のうちのいずれか一項に記載のコネクタ(1)。
【請求項13】
前記連結部(2)内には、特に前記連結部(2)の前記受入体(5)の前記出口開口部(32)の領域の中央に、固定アーム(16a、16b)の終端に配置されたカム(27a、27b)と協働するための、それぞれ一つの反対輪郭(34a、34b)を備えたブロック要素(33)が存在し、その際前記反対輪郭(34a、34b)は前記カム(27a、27b)と、前記取付位置において摩擦結合及び形状結合を前記保持クリップ(3)と前記連結部(2)との間に形成し、かつ、前記ブロック要素(33)は前記反対輪郭(34a、34b)により、前記事前取付位置において、前記カム(27a、27b)のためのストッパーを形成することを特徴とする、請求項1から12のうちのいずれか一項に記載のコネクタ(1)。
【請求項14】
前記保持クリップ(3)の、前記固定アーム(15a、15b、16a、16b)の前記自由端と逆の方を向いた側に、特に両側及び好ましくは全ての固定アーム(15a、15b、16a、16b)に、それぞれ一つのストッパー部(35a、35b)が形成されており、該ストッパー部は、取付状態において、その下側と両側で前記連結部(2)の一つの/前記差込開口部(31)の壁に当たることを特徴とする、請求項1から13のうちのいずれか一項に記載のコネクタ(1)。
【請求項15】
前記保持クリップ(3)の、前記固定アーム(15a、15b、16a、16b)の前記自由端と逆の方を向いた側に、特に両側及び好ましくは全ての固定アーム(15a、15b、16a、16b)に、それぞれ一つの把持構造(36a、36b)が、前記保持クリップ(3)を手でつかんでその取付位置から引き抜くための、特に刻みのある輪郭を備えて、形成されていることを特徴とする、請求項1から14のうちのいずれか一項に記載のコネクタ(1)。
【請求項16】
前記プラグ(S)の前記差込方向(SR)に面する、前記固定アーム(15a、15b)の前記第一の対(15a/15b)の側に、プッシュロックの役目を果たすロックカム(38a、38b)が、前記連結部(2)の対応する溝(39a、39b)にかみ合うために形成されていることを特徴とする、請求項1から15のうちのいずれか一項に記載のコネクタ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホース接続部及び/又はパイプ接続部のためのコネクタであって、
−軸つばを有する差込シャフトを具備するプラグを、差込軸に沿って差込方向に差し込み可能な受入開口部を備えた連結部、及び
−挿入方向において半径方向の挿入によって、前記連結部に事前取り付け可能であり、半径方向にスリットが入れられ、少なくとも部分的にバネ弾性を備えた、四つの固定アーム有する保持クリップを含み、かつ
a)事前取付位置においては前記プラグのための差込ポジションがとられ、該差込ポジションにおいて前記プラグは前記保持クリップを通して前記受入開口部に差し込み可能であり、及び
b)取付位置においては前記プラグの差込後に、差し込まれた前記プラグのための保持ポジションがとられ、該保持ポジションにおいて前記プラグは前記受入開口部内で、前記保持クリップによって形状結合され、引き抜きに対して阻害可能であり、その際
c)前記保持クリップは基本形状に関して、前記差込軸の方向から見て、U字状に形成されており、及びU字の脚部は、それぞれ互いに正反対に向かい合った固定アームの二つの対を形成し、該固定アームは軸方向に相前後して配置されており、それぞれ一つのスリットによって互いに分離され、及び半径方向に及び軸方向にバネ弾性があり、その際
d)前記保持クリップ、前記プラグの前記差込方向に面した側にある、固定アームの第一の対の、前記プラグの前記差込方向に面した側に、それぞれ手前側の傾斜面があり、該傾斜面は前記プラグと協働するために前記プラグの前記差込方向とは逆向きに広がっている、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなコネクタは例えば国際公開第2017/067950号で公知であり、そこに記載されている技術的解決法はコネクタを提示することであり、保持クリップの事前取り付け手順でも、プラグの取り付け手順及び取り外し手順でも、既知の従来技術よりも改善されている。その場合特に当該保持クリップにも、紛失防止対策がなされている。軸方向に相前後してあるスプリングアームの対は、ここではさまざまな機能を果たしている。固定アームの第一の対は、当該プラグを当該保持ポジションで形状接続により引き抜きに対して阻害することで主機能を果たし、及び固定アームの第二の対は、当該保持クリップが当該事前取付位置においても当該取付位置においても紛失防止されて当該連結部内に保持されることで副機能を果たしている。公知のコネクタでは、特に当該保持クリップの事前取付位置と取付位置が一致しており、すなわち保持クリップが事前取付位置と取付位置のどちらの位置でも、当該連結部の軸に対して同軸に調整されている。
【0003】
固定アームの第一の対は、当該プラグを保持ポジションで形状接続により引き抜きに対して阻害し、及び当該プラグの差込方向に面した当該保持クリップの側にあり、当該保持クリップが当該差込ポジションにおいて及び当該保持ポジションで当該連結部内にある場合は、特に当該プラグの差込方向に面した側にある、当該固定アームにそれぞれ傾斜面を有し、この傾斜面は、当該プラグと、すなわちその軸つばと、協働するため、当該プラグの差込方向とは逆向きに広がっている。この、当該プラグの差込方向に面した側にある傾斜面は、「手前側の傾斜面」と呼ばれ得る。取り付けのために当該プラグを当該保持クリップへ挿入することは、この手前側の傾斜面によって容易になる。なぜならこれは当該プラグを中心合わせするガイド面として作用するからである。
【0004】
当該プラグの差し込み時、当該プラグ軸つばはまずこの、好ましくは面取りされた領域に形成された、当該保持クリップの当該スプリングアームの傾斜面に当たり、その際その後で傾斜面上で軸つばが滑ることで当該保持クリップが半径方向に広げられ、つまり対の当該スプリングアームが互いに外側へ押され、及び当該プラグが、当該傾斜面を備えた当該手前側のスプリングアームの後ろで、かみ合うことが可能である。当該スプリングアームはその後で再び半径方向に内側へはずみ、このようにしてその基本位置になる。
【0005】
これに関して、当該傾斜面がそれぞれ少なくとも二つの部分面から形成されており、この部分面が当該プラグの差込方向に対して異なった広がり角を有していることが特に企図されている。当該各固定アームの自由端にあるそれぞれ一つの第一の部分面は、有利には、当該固定アームの真ん中部分にある第二の部分面のそれぞれの広がり角よりも小さい広がり角を備えている。第一の部分面は当該保持クリップをその広がりの前に半径方向に引き込み、そのことは特に当該保持クリップが当該事前取付位置において、好ましくは半径方向に動くための遊びを有し得るという観点から重要である。そのために、各第一の部分面はカップリング開口部の方向に、軸方向に当該プラグの当該軸つばが、差込時に決定的にこの第一部分面と協働し、及び第二の部分面とはまだ協働しないように各第二の部分面が事前配置されていなければならない。当該プラグの当該保持軸つばはすなわちまず第一の部分傾斜面に接触し、その後で、当該プラグの差込方向への前進運動時に、第二の部分傾斜面との接触が徐々に増えていく。このことは特に、当該第一の部分面が中心軸に対して、真ん中部分にある当該第二の部分面よりも急な角度であることによって達成され得る。当該第二の部分面は、このようにして、当該第一の部分面に続いて作用し、当該保持クリップが半径方向にその開位置まで広がり、その結果当該プラグの当該軸つばは当該第一の固定アーム対に軸方向に通過し得る。その後、固定アームは半径方向に、プラグの当該軸つばの後ろでしなって戻り、及びこれが引き抜きを阻害する。当該部分傾斜面は、有利には、統合された固定アーム運動を連続する個々の運動に分解する。
【0006】
公知の当該コネクタは現場では実証済みであり、これまでに市場で流通している出願人の「VOSSコネクタシステム241N」の構成部品であり、さまざまな変形例でストレート型及びアングル型のコネクタ及びさまざまな保持クリップ構造が含まれている。これら全ての変形例では、当該保持クリップの当該連結部への挿入後に、当該連結部と当該プラグとのはめ合わせにより接続が、特にSAEJ2044規格に準拠して形成されたおすコネクタが、作り出される。
【0007】
このようなプラグは、規格SAEJ2044に準拠して形成されたおすコネクタであり、国際公開第2017/067950号にも同様に詳細が記述されている。当該プラグは中空円筒形に形成されている。これは差込部を有し、その円周には周りを巡る軸つばが配置されている。当該軸つばは当該差込部をシール部とロッキング部とに分離しており、その際当該シール部は軸方向に、すなわち当該プラグの縦軸上に、差込方向で当該ロッキング部の前に配置されている。取り付けられた状態で、当該保持クリップはSAEコネクタ輪郭の後ろに形成された軸つばをつかむ。当該シール部には当該コネクタの差し込み後に通常シールパッケージが置かれる。
【0008】
上述のコネクタシステムは自動車製造に、すなわち特に燃料システム及び加熱式及び非加熱式のSCRシステムに使用される。SCRとは「Selective catalytic reduction、選択型触媒還元」の略であり、排気ガス中の窒素酸化物を低減する技術である。自動車技術においては、当該SCR方式は2004年の導入以降ディーゼル車両において窒素酸化物の排出量を低減するために使用されている。この技術を使用して、商用車はEuro−5規格を、及び乗用車は非常に厳しいアメリカ合衆国のBIN−5規格を、及びEuro−6規格をクリアしている。SCRシステムの管内には一般に尿素水溶液が通され、この水溶液は産業界ではAdBlueと呼ばれ、その組成がDIN70070又はISO22241−1で規定されている。この水溶液は、排気ガス通路でSCR触媒コンバータの上流側で、例えば配量ポンプ又はインジェクタを使用して噴射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2017/067950号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、公知のコネクタシステムに柔軟性を持たせるという意義において、高い機能性を備えた、取り付け及び取り外しが簡単なコネクタをわずかな費用で製造可能な、冒頭の種類のコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は本発明により、請求項1に記載された特徴により解決される。それに従って、当該手前側の傾斜面は、それぞれ半径方向内側に、当該差込軸の方向に向けられた、固定アームの当該第一の対の角部が、当該保持クリップの挿入方向から見て、当該差込軸の下方に配置されており、その際、当該角部は、当該手前側の傾斜面が当該プラグの差込時に、差込方向において当該プラグの軸つばの前にある、当該プラグのシール部によって広げられるように、互いに間隔を空けていることが企図される。
【0012】
従来技術と同様、相前後してあるスプリングアームの対は、本発明により、異なった機能を果たすが、しかしその際にこの機能を果たす方法が、従来技術とは細部で異なっている。当該プラグの差込方向に面した対は、接続実現という主機能、すなわちプラグの半径方向のロックを果たすために働き、他方で当該プラグの差込方向の軸方向とは反対向きの対は、副機能を果たすために働く。
【0013】
それにより、手前側の傾斜面は本発明により半径方向に内側に向けられた、固定アームの第一の対の角部は、差込軸の下側に配置されており、及び当該角部は、その傾斜面が当該プラグの差込時に、公知のように、当該プラグの軸つばではなく当該軸つばよりも外径が小さいシール部をすでに備え、交互に表れるように形成されており、一方で当該固定アームの広がりは、有利には上述の公知のコネクタよりもすでに挿入運動の早い段階に開始される。傾斜面がそれぞれ少なくとも二つの、当該プラグの差込方向に対して異なった広がり角を有する部分面に分かれることは、ここでは不要である。この点で、本発明は有利には従来技術で公知のコネクタと比べて構造的な費用が低減される。
【0014】
他方では、当該保持クリップの当該事前取付位置及び当該取付位置は、本発明によるコネクタでも、公知のように、一致しなくてもよく、すなわち当該保持クリップはその事前取付位置で当該連結部の軸に対しては同軸に向けられず、その取付位置においてだけ向けられる。当該プラグの差込時には、公知のように、まず第一に当該保持クリップが当該プラグに中心を合わせず、当該保持クリップはその偏心した、及びそれによって有利には視覚的に容易に検知可能な事前取付位置が、当該プラグによって半径方向に内側に、その取付位置へと動く。その際、当該コネクタの手前側の部分は、部分運動のために当該取付位置で作用する。
【0015】
本発明の有利な実施形態ではさらに、固定アームの当該第一の対の当該角部の、当該プラグの当該差込方向の反対側に、それぞれ奥側の傾斜面があり、該傾斜面は当該プラグの当該軸つばと協働するために当該プラグの当該差込方向とは逆向きに窄まっていることが企図されてよい。奥側の傾斜面は、手前側の傾斜面と同様有利には面取りとして形成されてよく、当該プラグが取り外しのために簡単に再度外れるか又はクランプから引き出され得ることが可能になるよう働く。これら傾斜面は、当該プラグの戻り運動の際に、すなわち差込方向とは反対の動きの時に、スプリングアームの当該第一の対が開くよう作用する。
【0016】
当該スプリングアームが固定するか又は当該固定アームにバネ弾性がある場合において、用語「固定アーム」及び「スプリングアーム」は本願において同義語として使用される。
【0017】
当該保持クリップのロックのために、当該保持クリップの当該差込ポジションにおいて及び当該保持ポジションにおいて、当該プラグの当該差込方向に面した当該連結部の表壁とは反対側にある、当該固定アームの当該対の当該固定アームのそれぞれには、当該固定アームの自由端のそれぞれに、内側に、互いに、向かい合わされた先端、及び、特に平坦な、底面を有するカムが存在し得る。取り付けが終わったあとに当該保持クリップの当該連結部を半径方向へ押し込むことで、好ましくは奥側のスプリングアームのカムにある傾斜面により、この奥側のスプリングアームが広げられ得、及び両側が当該連結部のブロック要素を滑って過ぎていき、これが半径方向に内側にしなった後で、後側又は下側でかみ合うことができるまで半径方向に動かされ得る。追加のロック部はこの場合不要である。当該連結部の当該ブロック要素は、第二のスプリングアーム対の当該カムと協働するために、相補的な保持輪郭を備えており、これが有利には同様に当該ブロック要素に、すなわち両側に、保持突出部として形成され得る。スプリングアームの第二の対の別の副機能として、当該クランプがプラグなしでロックされ得ることを防止することが企図されてよい。そのことはカムの特殊な構造に作用し得、本明細書の領域では好ましくは以下に続く実施例で詳細が説明される。
【0018】
当該保持クリップ全体は、ここでは製造技術的により単純な仕様で、一体型であり、特に有利にはプラスチック製の射出成形による、成形部品として形成されており、基本形状に関して、縦軸の方向から見て、特にU字状に形成されている。その際に、U字の脚部は、それぞれ互いに正反対に向かい合ったスプリングアームの二つの対であり、すなわち合計四つのスプリングアームから形成されている。当該スプリングアームの対は、ここでは軸方向に相前後して配置されており、及び当該軸方向に相前後してあるスプリングアームは、それぞれ一つのスリットによって分離されている。これにより、当該スプリングアームは、当該保持クリップの事前取り付けの際に、及び取り外しのためにも、軸方向に押しつけられ得る。U字の脚部の、半径方向の外側にある側は、有利には、取り外しの際に手でつかむための刻みのある領域が備えられている。
【0019】
当該連結部は、特にスリーブ部として形成された、本体と、特に基本形状に関して環状の、当該保持クリップのための受入体とを含んでいてよく、これらは、好ましくはレーザー溶接のような材料結合によって、互いに接続可能であるか又は取り付けられた状態で互いに接続されている。当該保持クリップのように、当該連結部も又はその部品も、製造技術においてより簡単な仕様で、プラスチック製の射出成形品として形成されてよい。
【0020】
当該連結部内には、特にその本体内には、シールパッケージが配置されてよく、このシールパッケージは好ましくは二つのシールリングであり、特にエラストマー製Oリングであり、及びその間にはスペーサリングが含まれている。
【0021】
本発明によるコネクタの好ましい実施形態では、対になっている各スプリングアーム又は固定アームにおいては、当該保持クリップの差込ポジションにおいて及び保持ポジションにおいて、当該プラグの当該差込方向に面した当該連結部の表壁の側にある、特に当該スプリングアームの中央の領域に、ガイドピンが、連結部の相補的なガイドスリットにかみ合うために存在することが企図され得る。この、当該連結部のスリット・ガイド輪郭内に、特に当該受入体によって形成される保持クリップ収容部内に存在する、当該保持クリップのガイドピンは、当該保持クリップを、有利には取り付け運動手順中に、本発明によるコネクタ内で案内でき、及びプラグ差込軸周りで回らないようロックされ得る。
【0022】
当該プラグの差込方向に面した表壁は、手前側の表壁とも呼ばれ、及びこの表壁側あるスプリングアーム対は手前側の対と呼ばれ、それに対して当該プラグの差込方向とは反対側にある、当該保持クリップの当該受入体の表壁は、奥側の表壁と呼ばれ、及びこの表壁にあるスプリングアーム対は奥側の対と呼ばれる。
【0023】
本発明が使用され得る、冒頭に挙げられたシステムでは、特に加熱可能な流体管に、負荷条件が生じる高い要求が示される。この要求は、特により高い温度が生じる可能性があり、この温度はシステムの特定の箇所又は配管類に、例えば140°C〜180°Cの領域、それどころか短時間では最大200°Cになる場合がある。さらに、標準で5bar〜10bar、部分的には最大15barになる、高い絶対圧力が生じることを見込む必要がある。相殺する必要のある、圧力脈動が生じる可能性があり、また例えば寒さによる凍結や流体が再度解けることによる体積変動も考えられる。この場合、要求の大きさは、いわゆる管の耐氷圧性と言われている。本発明によるコネクタはこれらの要求に有利には耐えられる。
【0024】
その他の有利な、本発明による実施形態は、以下の図面の説明及び従属している従属請求項に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】規格化されているプラグの平面図を含む、本発明によるコネクタの遠近法による立体分解図である。
図2】本発明によるコネクタの保持クリップの好ましい一実施形態の、前面から見た遠近法による立体図である。
図3】本発明によるコネクタの保持クリップの好ましい一実施形態の、後面から見た遠近法による立体図である。
図4】本発明によるコネクタの、事前に取り付けられた状態の正面図である。
図5図4の寸法をいくらか縮小した、図4に示された本発明によるコネクタの側面図である。
図6】本発明によるコネクタの、図5のA−A面の横断面図である。
図7図8に示されたような差込時のプラグポジションを備えた本発明によるコネクタの別の横断面図である。
図8図4に類似しているが、プラグの差込時の、本発明によるコネクタの正面図である。
図8a】本発明によるコネクタの、図8のA−A面の縦断面図である。
図9】本発明によるコネクタの、取り付けられた状態の、図10のD−D面の横断面図である。
図10図9の寸法をいくらか縮小した、図9に示された本発明によるコネクタの側面図である。
図11】本発明によるコネクタの、図12のA−A面の横断面図である。
図12図11の寸法をいくらか縮小した、図11に示された本発明によるコネクタの側面図である。
図13】本発明によるコネクタの、取り付けられた状態の、第二のスプリングアーム対を通る横断面図である。
図14図4及び図8に類似しているが、取り付けられた状態の、本発明によるコネクタの正面図である。
図15】本発明によるコネクタの、取り付けられた状態の、正面から見た遠近法による立体図である。
図16】プラグのプッシュロックの別の変形例の説明のために中間的に取り付けられた状態の、本発明によるコネクタの下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面のさまざまな図において、同じ部品には常に同じ符号が受けられているため、基本的に以下では一度しか説明されない。しかし、見やすさを優先するために、図面の全ての図に全ての部品に符号がつけられているわけではない。
【0027】
以下の説明では、本発明が実施例に限定されず、その際記述された特徴の組み合わせの全て又は複数の特徴に限定されず、むしろ一つ/複数の実施例のそれぞれ個々の部分特徴も、それと関連して記述されている部分特徴も、他の全てから切り離されて本発明の意味において別の実施例の任意の特徴を組み合わせられることが要求される。
【0028】
図1には、パイプフィッティングとして形成されたプラグ、特にSAEJ2044おすコネクタを接続するための、本発明によるコネクタ1の有利な実施形態の分解図が示されている。このような種類のプラグSも、本発明によるコネクタ1と平行した状態で図1に示されている。
【0029】
当該プラグSは、差込部S1を有し、その円周には周りを巡る軸つばS2が残りの差込部S1(基本直径D1)に対して拡大された直径D2で配置されている。当該プラグSは、中空円筒形に形成されている。当該軸つばS2は、当該差込部S1をシール部S3とロッキング部S4に分離しており、その際シール部S3は、軸(縦軸X−X)方向に差込方向SRにおいて当該ロッキング部S4の前に配置されている。シール部S3とロッキング部S4は、当該規格で備えられた最小の違いを除いて、ほぼ直径が同じである(差込部S1の基本直径D1。この直径はS4の領域で、規格に従い、最低限で、より大きい)。当該プラグSの差し込み後に、当該シール部S3にはシールパッケージ11が、図1にも例示されたように、配設される。
【0030】
当該コネクタ1は、連結部2と、少なくとも部分的にバネ弾性を備えた保持クリップ3を含んでいる。
【0031】
当該連結部2は、特にスリーブ部として形成された本体4、及び特に当該基本形状に関して環状の、保持クリップ3の受入体5を備え、これらは、好ましくは、材料結合によって、例えばレーザー溶接によって、互いに接続可能である。当該受入体5には、このために接続部6が備えられている。当該本体4及び/又は当該受入体5は、有利には、プラスチック製で、既存の射出成形による成形部品として仕上げられていてよい。
【0032】
当該連結部2は、片側に特に図示されていない流体管が接続され得る。このために、当該本体4には接続部7が形成されている。これに続く媒体管は、特にホース又はパイプとして形成されていてよい。
【0033】
当該連結部2の当該本体4は、加熱を可能にするために、接続ピースとして、図示されている事例では角度のついた接続ピースとして形成されており、この接続ピースは流体管の継手接続のための接続部7及びヒーター部8を有し、その中には、図示していない電気式の加熱媒体が、当該連結部2を少なくとも部分的に取り囲んで配置され得る。当該電気式加熱媒体、特に熱導体は、この場合、連結部2の外側に配設され得、そのために外被には当該連結部2のヒーター部8の領域に案内要素9が、特に螺旋形状の案内要素9が配置されてるか又は形成されている。カップリングシステム全体では、もちろん非加熱管を使用してもよい。
【0034】
媒体管のための当該接続部7の反対側には、当該連結部2は当該プラグSを挿入するための受入開口部10を有している。
【0035】
コネクタをシールするために、当該連結部2内には、すなわちその本体4内には、シールパッケージ11が配置されている。当該シールパッケージ11は、好ましくは二つのOリング12と、その間にスペーサリング13を含んでいる。
【0036】
当該保持クリップ3(図2及び図3の分解図)は、連結部2に取り付け可能であり、取付方向Mに挿入後に、図4から図6に示された事前取付位置を取り、この位置は当該プラグSの差込ポジションを示している。当該プラグSを挿入することなしに、当該保持クリップ3は取付位置に送られ得ず、これらは図13から図15に示されている。
【0037】
特に図2及び図3の分解図に示されたように、当該保持クリップ3は好ましくは一体型で、特にプラスチック製の射出成形品であってよい。
【0038】
当該保持クリップ3は、ここでは特に基本形状に関して、当該コネクタ1の縦軸X−X方向に見てU字状に形成され、その際にU字の脚部の二つの対15a/15b、16a/16bは、互いに正反対に向かい合ったスプリングアーム15a、15b、16a、16bとして形成される。当該スプリングアーム15a、15b、16a、16bは、当該保持クリップ3のバネ弾性を備えた領域を形成する。当該U字の脚部は、ここでは半径方向のスリット17によって分離されている。「スリット17」とは、ここでは全体の、U字の内側を形成する、当該差込軸X−Xを取り囲む、当該スプリングアーム15a及び15b並びに当該スプリングアーム16a及び16bの間にある中間スペースと理解される。
【0039】
当該スプリングアーム15a、15b、16a、16bの当該対15a/15b、16a/16bは軸方向X−Xに相前後して配置されており、及び同様に互いにスリット18によって、しかし軸方向のスリット18によって、分離される。当該保持クリップ3は、ここでは該保持クリップを通る縦軸Y−Yに関して対称に形成されている。
【0040】
少なくとも部分的にバネ弾性を備えた保持クリップ3の、弾性のない領域を形成し得る当該U字の脚部の接続領域19を通って、当該スプリングアーム15a、15b、16a、16bと反対側には当該保持クリップ3のための操作面20が形成され、この操作面によって手動による連結部2への当該保持クリップ3の半径方向への押し込み(矢印M)が実施できる。
【0041】
当該プラグSの当該差込方向SRの当該軸方向X−Xにおける、当該固定アーム15a、15b、16a、16bの手前側の対15a/15bは、主に接続実現の主機能を果たすために働き、すなわち当該固定アーム15a、15bは半径方向にプラグSをロックするためにあり、他方で、当該プラグSの差込方向SRの軸方向X−Xにおける、奥側の対16a/16bが保持クリップ3をその保持ポジションにロックするという、本発明による重要な副機能を果たすために働く。このロックは、すでに言及したように、特に図13で具体的に説明される。
【0042】
特に図2に示されたように、手前側の対15a/15bの各当該スプリングアーム15a、15bでは、当該プラグSの差込方向SRに面した側で、特に少なくとも当該スプリングアーム15a、15bの中央の領域で、当該プラグの当該軸つばS2と協働するための傾斜面21a、21bが、当該プラグSの差込方向SRとは逆向きに広がっている。
【0043】
本発明により、この手前側の傾斜面21a、21bは、それぞれ半径方向内側に、当該差込軸X−Xの方向に向けられた、固定アーム15a、15b、16a、16bの第一の対15a/15bの角部14a、14bが、当該保持クリップ3の挿入方向Mから見て、図面にそれぞれ示されているように、差込軸X−Xの下方に配置されており、その際、角部14a、14bは、手前側の傾斜面21a、21bが当該プラグSの差込時に、差込方向SRにおいて当該プラグSの当該軸つばS2の前にある、当該プラグSのシール部S3によって広げられるように、互いに間隔を空けている(間隔Aは図4参照)ことが企図される。
【0044】
さらに、有利には、固定アーム15a、15bの第一の対15a/15bの角部14a、14bの、プラグSの差込方向SRの反対側に、それぞれ奥側の傾斜面22a、22bがあり、該傾斜面は当該プラグSの当該軸つばS2と協働するために当該プラグSの差込方向SRとは逆向きに窄まっていることが企図される。これにより、当該プラグSの引き抜き(差込方向SRとは逆方向)の際であっても当該固定アーム15a、15bは広がる。この奥側の傾斜面22a、22bは、簡単な方法で手前側の傾斜面21a、21bに対して相補的に、すなわち当該角部14a、14bが鏡像的に形成されるか又は、特に図8aで分かるように、縦軸X−Xに対してより急勾配の経路を示し得る。
【0045】
さらに、スプリングアーム15a、15bの手前側の対15a/15bのスプリングアーム15a、15bのそれぞれには、特に当該スプリングアーム15a、15bの中央の領域に、ガイドピン23a、23bが、当該連結部2の相補的なガイドスリット24a、24bにかみ合うために存在することが企図される。
【0046】
当該ガイドピン23a、23bの当該ガイドスリット24a、24bとの協働は、特に図4図14及び図15で明らかである。当該連結部2において、特に当該保持クリップ3のための受入体5において、当該保持クリップ3の当該手前側のスプリングアーム15a、15bに配置された相補的なガイドピン23a、23bがかみ合う際の制御輪郭としてふるまうガイドスリット24a、24bが、当該プラグSの差込方向SRに面した当該連結部2の表壁29に存在する。当該ガイドスリット24a、24bは、それぞれ二つの折れ角度K1、K2を備えた長穴である。その形状は様式化された稲妻形状によっても特徴付けられる。当該ガイドスリット24a、24bは、その二つの屈折点K1、K2によって、まず第一の部分で半径方向に外側に、次に第二の部分で半径方向に内側に、最後に第三の部分で再び半径方向に外側に伸びる。
【0047】
スプリングアーム16a、16bの奥側の対16a/16bの当該スプリングアーム16a、16bのそれぞれには、特に当該スプリングアーム15a、15b、16a、16bが互いに接続される接続領域19の両側又は接続領域19に、当該連結部2において割線のように配設された縦ガイドバー25a、25bが、縦ガイドバー25a、25bの間の中央に配置された相補的なガイド輪郭26と協働するために、当該プラグSの差込方向SRの反対側にある当該連結部2の表壁にあることが、特に図3、及び図6図7及び図11からも分かる。
【0048】
さらに図2図3図6図11及び図13からは、当該プラグS差込方向と反対側にある、スプリングアーム15a、15b、16a、16bの当該奥側の対16a/16bの当該スプリングアーム16a、16bのそれぞれには、当該自由端のそれぞれにカム27a、27bが、内側に、互いに、向かい合わされた先端、及び、特に平坦な、底面GFを有して形成されていることが明らかである。
【0049】
当該連結部2は、特に当該保持クリップ2のための受入体5によって、基本形状に関して中空円筒形であり、中空円筒の当該各表壁29、30には、保持クリップ3のために、それぞれ閉じられたハウジング又はケージが形成されている(図1及び図4〜15参照)。その際に、該ハウジングは、当該保持クリップ3を差し込むために、二つの互いに正反対に向かい合った側に円周の開口部31、32、特に差込開口部31(図においてはそれぞれ上部に示されている)及び出口開口部32(図においてはそれぞれ下部に示されている)を有している
【0050】
さらには、特に図1図6図11及び図13に示されているが、当該連結部2内には、特に当該連結部2の当該受入体5の当該出口開口部32の領域の中央に、固定アーム16a、16bの終端に配置されたカム27a、27bの平坦な底面を固定するの、それぞれ一つの反対輪郭34a、34bを備えたブロック要素33が備えられている(図6参照)。当該カム27a、27b及び当該反対輪郭34a、34bは、ここでは、すでに言及したように、当該保持クリップ3と当該連結部2の摩擦結合及び形状結合を形成できる場合に、図13に示したように、当該保持クリップ3の奥側のスプリングアーム16a、16bの解除可能なロック手段でもある。これにより、奥側のスプリングアーム16a、16bは、一つはロック手段として、及びもう一つはスペーサーとして、二つの副機能を備えている。
【0051】
当該本発明によるコネクタ1を取り付けるために、まず(このためには図1参照)当該シールパッケージ11を、次に当該受入体5を、当該連結部2の当該本体4に取り付ける。その後で、当該本体4及び当該受入体5が、例えばレーザー溶接によって、特に材料結合によって互いに接続される。
【0052】
その後、当該連結部2が当該保持クリップ3に入れられ(それぞれ図1及び図4の矢印M)、その結果図4から図6に示された、事前取り付けされた状態になる。当該保持クリップ3は、最初に当該プラグSの差込方向SRに対して横向きに、差込開口部31によって案内されるが、そのことは、最適に存在する(図示していない)、当該連結部2の当該受入体5にあるガイドスロープによって容易になり得る。当該保持クリップ3を取り付けるために、そのスプリングアーム対15a/15b、16a/16bが軸方向に互いに反対へ押されるが、それは当該スリット18により可能になる。当該保持クリップ3が当該連結部2内で引っかかって動かなくなったりずれて動かなくなったりすることは、ここでは有利には、当該縦ガイドバー25a、25bが両側の中央に配置されている、連結部2の相補的なガイド輪郭26に沿って滑る場合、防止できる。
【0053】
しかし当該保持クリップ3は、原理的にすでに、例えば溶接によって実施される、本体4と受入体5との接続の前に、取り付け得る。
【0054】
続いて、当該スプリングアーム対15a/15b、16a/16bが圧力から解放され、その結果当該手前側のスプリングアーム15a、15bの当該ガイドピン23a、23bが当該相補的なガイドスリット24a、24bにかみ合う(図4)。当該スプリングアーム15a、15bの当該ガイドピン23a、23bは、その際に当該ガイドスリット24a、24b内で終端側で上へ当たり、その結果当該保持クリップ3の戻り運動がブロックされる。当該保持クリップ3は個々では当該連結部2の円周より上に出ている。
【0055】
図4から図6で分かるように、当該保持クリップ3を、プラグS(プラグSは図4及び図6では断面図では示されていない)を差し込むことなくさらに取付方向Mへ当該連結部2内に押し込むという試行の際に、当該保持クリップ3は、半径方向の動きのための遊びは備えているが、ロックまで動くことはできない。なぜならその奥側のアーム16a、16bはその下端部が、当該ブロック要素33のそれぞれ反対輪郭34a、34bに載っているからである(図6の下に円で囲んで示されている)。ここでは、当該奥側のスプリングアーム16a、16bが、この間隔保持機能を果たしている。同時に、当該連結部2の当該ガイドスリット24a、24b内に案内された当該手前側のアーム15a、15bのピン23a、23bは、操作時に(矢印M)一段階側方へ最初の屈折点K1へ向けて動かされ(矢印L、図4)、それが当該保持クリップ3が放される際にリセット力を生じさせ、すなわち当該保持クリップ3がその事前取付位置に戻り、その際にその中心軸は、取付位置では同軸であった(図13)のとは異なり、当該連結部2(及び当該プラグS)の中心軸X−Xから偏心して伸びる。
【0056】
当該事前取付位置では、保持クリップ3はロック状態にはないが、手前側にかみ合いにより、そのピン23a、23bが当該連結部2の当該ガイドスリット24a、24bに手前側でかみ合うことで、及び当該縦ガイドバー25a、25bと中央に配置された、当該連結部2の相補的なガイド輪郭26が奥側で協働することで、失われることのない留め具として十分にロックする。
【0057】
図7及び図8及び図8aには、当該プラグSの差し込み手順時の出来事が図示されている。この場合、当該保持クリップ3は当該プラグSの当該シール部S3と、固定アーム15a、15bの当該第一の対15a/15bの当該手前側の傾斜面21a、21b当該の角部14a、14bとの相互作用(矢印N)によって広げられ、すなわち半径方向に広がり、及びさらに当該連結部2内に引き入れられ、そのことは当該ピン23a、23bの動き(矢印O、図8)でも説明されている。当該プラグSは、図7では当該シール部S3の領域が、図8では当該ロッキング部S4の領域が、図8aでは縦断面図が、示されている。これらの図は、「ロックされていない」状態を示しており、当該プラグSの当該軸つばS2が、当該保持クリップ3の軸方向のアーム対15a/15b、16a/16bの間に、すなわち軸方向のスリット18にある。
【0058】
当該プラグSをさらに差し込む際に、当該プラグSの当該軸つばS2が、ただし当該傾斜面21a、21bの上方で、当該保持クリップ3と接触する(矢印P、図9)。当該プラグSと当該コネクタ1との間の接続は、ここでは、当該プラグSがまだ当該保持クリップ3から再度引き出され得る場合は、差し込み手順後はまだ終了していない。
【0059】
図7から図10が主に取り付けの際の当該手前側の固定アーム15a、15bの役割に関するのに対して、図11から図13は特に、取り付けの際の奥側の固定アーム16a、16bの役割を説明している。図11の断面図は、ここでは、図7の取り付けられた状態を、別の視角から見たものである。当該保持クリップ2の当該奥側の固定アーム対16a/16bは、すでに構造について一部が上述されたように、二つの機能領域を備えている。この機能領域の一つは当該カム27a、27bにより形成されている。これは、プラグSが差し込まれていない状態で、すでに説明されたように、それぞれの底面GFに当該ブロック要素33に当たり(図6)及び取り付けられた状態ではロックとして、当該ブロック要素33、特にその反対輪郭34a、34bに、下側でかみ合う(図13)。
【0060】
当該奥側の固定アーム16a、16bの第二の、これまで言及されていない機能領域は、当該カム27a、27bの上方の中央領域にあり、及びそれぞれの、半径方向に内側に向けられた膨らみ部28a、28bにより形成されており、その先端は事前取付位置においては当該差込軸X−Xの上方にあり、事前取付位置にない場合は(図6により)当該保持クリップ3の差込方向M方向に圧力が加えられる。当該膨らみ28a、28bの先端は、当該プラグSの差込時に同じ当該軸つばS2と相互作用し、その結果当該奥側の固定アーム16a、16bも、当該保持クリップ3を広げることに寄与する(矢印Q、図11)。したがって当該保持クリップ3は、取り付け時に徐々に、まず当該プラグSの当該シール部S3によって、当該手前側の固定アーム15a、15bの当該角部14a、14bの当該手前側の傾斜面21a、21bで(図7及び図8)、次に当該プラグSの当該軸つばS2によって、当該奥側の固定アーム16a、16bの膨らみ28a、28bで(図11)、二重に広げられる。
【0061】
この取り付けを完了するため、これは「取り付け確認」の手順とも呼ばれ得るが、広げたあとに当該膨らみ28a、28bによって当該保持クリップ3がその挿入方向Mに、さらに当該連結部2内に滑り入れられ、最後に最終的な取付位置(図13及び図14図15も)に到達する。このことは、操作面20に手動で圧力をかけることで実現できる。当該コネクタ接続はこれで正しく機能できる。許容域に応じて、プラグSを完全に差し込む「だけ」では不十分である場合があり、その場合はやや過剰に差し込み、それによって当該プラグ1の当該軸つばS2が挿入方向Mに、その下にある手前側のアーム15a/15bを自由端で広げる。
【0062】
当該取付位置では、当該保持クリップ3が当該連結部2の円周15とほとんど突出部なしに面一になる。これにより、ロックされて取り付けられた状態が達成されたことが示される。さらに、ロックされて取り付けられた状態の達成は、当該スプリングアーム15a、15bの当該ガイドピン23a、23bが、当該ガイドスリット24a、24b内で第二の折れ角度K2の領域にあることによっても示され、このことは図14及び図15から見て取れる。当該手前側の固定アーム15a、15bの当該角部14a、14bは、図14によれば、当該プラグSの下側にあり、特にその軸つばS2の下側にある。
【0063】
当該保持クリップ3が取付方向Mへさらに押し込まれるのを防止するため、有利には、当該スプリングアーム15a、15b、16a、16bの自由端の当該保持クリップ3と反対側で、特に両側及び好ましくは全てのアーム15a、15b、16a、16bで、それぞれ一つのストッパー部35a、35bが形成され、このストッパー部が取り付けられた状態でその下側と、当該連結部2の当該差込開口部31の両側でその壁に当接する(矢印R、図15)ことが企図され得る。これによって当該保持クリップ3は、取り付けられた状態で、当該連結部2の受入体5に対して支持される。それぞれ第二の屈折点K2の下にある、当該連結部2の当該ガイドスリット24a、24bの部分は、これによって機能を失う。
【0064】
当該コネクタ接続1/Sを外すためには、当該保持クリップ3をまずいくらかその取付方向M(矢印S、図15)と反対に、つまりプラグS及びコネクタの中心軸X−Xに対して偏心に、又は半径方向にずらした位置で(図7から図10)、開いている、又は開かれたポジションで、当該プラグSが再度当該コネクタ1から取り外され得るようになる前に、当該連結部2から引き抜かれる。この引き抜き(矢印S)は、好ましくは手動で行われる。当該保持クリップ3は、そのために、有利には当該スプリングアーム15a、15b、16a、16bの自由端と反対側に、特に両側に、及び好ましくは全てのアーム15a、15b、16a、16bに、把持構造36a、36bが特に刻みのある輪郭と共に備えられている。この把持構造36a、36bは、好ましくは前述のストッパー部35a、35bにある。
【0065】
本発明は、示され及び記述された実施例に限定されず、本発明の意義において同じ機能の全ての実施形態を含む。実施例は全ての特徴は組み合わせに限定されることはなく、むしろそれぞれ個々の部分特徴も他の全ての部分特徴から離れて発明的な意義を持っていることも強調される。
【0066】
またさらなる技術的対策も、本発明の領域を逸脱することなく企図され得る。
【0067】
このようにして例えば図2及び図3では、手前側の傾斜面21a、21b及び奥側の傾斜面22a、22bによって又はおいて、くさび形面37a、37bが形成されている。これらは当該保持クリップ3の挿入方向Mの方を向いており、及びコネクタ部S3及びS4と協働し、その際当該保持クリップ3を半径方向に容易にスライドできるよう働く。
【0068】
さらに、当該手前側の傾斜面21a、21b及び奥側の傾斜面22a、22bは、面取りとして、当該角部14a、14bの領域だけでなく、さらに当該手前側の固定アーム15a、15bの自由端まで挿入でき、このことは同じく図2及び図3から見て取れる。またこれによっても有利には、当該プラグSの取り付け及び取り外しがしやすくなる。
【0069】
図16ではさらに詳細が示され、当該奥側の固定アーム対16a/16bを使用したロックに加えて可能な、連結部2内での当該プラグSのプッシュロックの別の変形例が示され、すなわち当該保持クリップ3の手前側の固定アーム15a、15bを使用していることが明らかである。当該プラグSが当該連結部2内に押し込まれると、当該プラグSの当該部S3、S2及びS4が連続して当該保持クリップ3の当該角部14a、14bに接触することは、すでに上記で明らかである。このことにより、当該保持クリップ3は、最初にわずかに差込方向Mに引き込まれ、及び固定アーム15a、15bの手前側の対が、半径方向に広がり、及び容易に差込方向SRに移動される。当該固定アーム15a、15bのこの動きによって、当該プッシュロックのために使用される、当該プラグSの差込方向SRに面した側にあるロックカム38a、38bが、当該連結部2の対応する溝39a、39bから操作される。ここで当該プラグSが再び当該差込方向SRに反して当該連結部2から引き抜かれると、当該プラグSの軸つばS2が、当該固定アーム対15a/15bを、当該角部14a、14bの当該奥側の傾斜面22a、22bによって広げる。これが可能な理由は、傾斜のある面22a、22bが当該角部14a、14bを越えて、プッシュロックのためのロックカム38a、38bまで広がっているからである。そうすることによって初めて、当該保持クリップ3がその最終的な取付位置にずらされた時に、当該ロックカム38a、38bが再び対応する溝39a、39bの中にある。そのあとで動作状態において流体によって圧力がシステムに加えられると、有利には当該ロックカム38a、38bがさらに強く溝39a、39b内に押し込まれる。
【0070】
さらには、本発明はこれまでも、請求項1に定義された特徴の組み合わせに限定されることなく、開示された全ての個別の特徴から特定の特徴をそれぞれ任意に組み合わせて定義することができる。すなわち、基本的に実際上、請求項1のどの個別特徴を省略することも、又は本願の別の箇所で開示された個別特徴の少なくとも一つと差し替えることも、可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図8a
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【外国語明細書】
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