【課題を解決するための手段】
【0006】
1つ以上の例示的な実施形態では、アクティブノイズキャンセレーション(ANC)システムにおける安定性を制御するための方法が提供される。方法は、適応フィルタコントローラから、少なくとも1つの制御可能フィルタに対応するフィルタ係数を受け取ることを含んでよい。方法は、フィルタ係数の少なくとも一部分の分析に基づいてパラメータを計算すること、パラメータの閾値に対する比較に基づいて少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出すること、及び発散した少なくとも1つの制御可能フィルタの特性を修正することをさらに含んでよい。
【0007】
実施態様は、以下の特徴の1つ以上を含んでよい。制御可能フィルタは複数の係数を含む場合がある。パラメータは、少なくとも1つの制御可能フィルタの係数の少なくとも一部分の絶対値の和であってよい。パラメータは、少なくとも1つの制御可能フィルタの係数の少なくとも一部分の最大値であってよい。
【0008】
さらに、パラメータの閾値に対する比較に基づいて少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出することは、パラメータが閾値を超えるとき少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出することを含んでよい。閾値は、少なくとも1つの制御可能フィルタの1つ以上の先行する適応のフィルタ係数から計算されたパラメータの統計分析から計算された動的閾値であってよい。閾値は、利得係数で乗算した少なくとも1つの制御可能フィルタの複数の先行する適応から採取したパラメータの平均値であってよい。
【0009】
さらに、パラメータの閾値に対する比較に基づいて少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出することは、少なくとも1つの制御可能フィルタの現在の適応からのパラメータを、少なくとも1つの制御可能フィルタの1つ以上の以前の適応からの同じパラメータの平均値に対して比較すること、及び少なくとも1つの制御可能フィルタの現在の適応からのパラメータと、少なくとも1つの制御可能フィルタの1つ以上の以前の適応からの平均値との差が閾値を超えるとき、1つ以上の制御可能フィルタの発散を検出することを含んでよい。
【0010】
発散した少なくとも一つの制御可能フィルタの特性を修正することは、ANCシステムと、発散した少なくとも1つの制御可能フィルタとのうちの少なくとも1つの動作を停止することを含んでよい。代わりに、発散した少なくとも1つの制御可能フィルタの特性を修正することは、少なくとも1つの制御可能フィルタのフィルタ係数をゼロにリセットすることと、少なくとも1つの制御可能フィルタが再適応できるようにすることとを含む場合もあれば、発散した少なくとも1つの制御可能フィルタの特性を修正することは、少なくとも1つの制御可能フィルタのフィルタ係数を、ANCシステムのメモリに記憶されたフィルタ係数値のセットにリセットすることを含む場合もある。
【0011】
さらに、発散した少なくとも1つの制御可能フィルタの特性を修正することは、少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出することに応えて、適応フィルタコントローラの漏れ値を増加させることを含んでよい。適応フィルタコントローラの漏れ値は、少なくとも1つの制御可能フィルタの発散した周波数で増加してもよい。さらに、方法は、少なくとも1つの制御可能フィルタの最高振幅フィルタ係数が所定の閾値を下回ると、適応フィルタコントローラの漏れ値を減少させることをさらに含んでよい。
【0012】
1つ以上の追加の実施形態は、適応伝達特性及びセンサから受信するノイズ信号に基づいてアンチノイズ信号を生成するように構成された少なくとも1つの制御可能フィルタを含むANCシステムを対象にしてよい。少なくとも1つの制御可能フィルタの適応伝達特性は、フィルタ係数のセットにより特徴付けられてよい。ANCシステムは、適応フィルタコントローラ、及び少なくとも適応フィルタコントローラと通信する発散コントローラをさらに含んでよい。適応フィルタコントローラは、ノイズ信号と、車両の車室に位置するマイクから受信するエラー信号とに基づいてフィルタ係数のセットを適応させるようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを含んでよい。発散コントローラは、少なくとも1つの制御可能フィルタの適応伝達特性の現在の適応に対応するフィルタ係数のセットを受け取り、フィルタ係数のセットの少なくとも一部分の分析に基づいてパラメータを計算し、パラメータの閾値に対する比較に基づいて少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを含んでよい。
【0013】
実施態様は、以下の特徴の1つ以上を含んでよい。閾値は、ANCシステムのためにプログラムされた所定の静的な閾値であってよい。発散コントローラは、少なくとも1つの制御可能フィルタの現在の適応から計算されたパラメータと、少なくとも1つの制御可能フィルタの1つ以上の以前の適応からの同じパラメータの平均値との差が閾値を超えると、少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出するようにプログラムされてよい。発散コントローラは、少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出したことに応えて、適応フィルタコントローラの漏れ値を増加させるようにさらにプログラムされてよい。
【0014】
1つの以上の追加の実施形態は、アクティブノイズキャンセレーション(ANC)のためにプログラムされる非一過性のコンピュータ可読媒体で具体化されたコンピュータプログラム製品を対象としてよい。コンピュータプログラム製品は、適応フィルタコントローラから、少なくとも1つの制御可能フィルタの現在の適応に対応するフィルタ係数のセットを受け取ること、フィルタ係数の少なくとも一部分の分析に基づいてパラメータを計算すること、パラメータの閾値に対する比較に基づいて少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出すること、及び少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出することに応えて、現在の適応の間に少なくとも1つの制御可能フィルタの適応伝達特性を修正することのための命令を含んでよい。
【0015】
実施態様は、以下の特徴の1つ以上を含んでよい。少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出するための命令が、時間領域で、少なくとも1つの制御可能フィルタの発散した周波数を検出することを含んでよく、適応伝達特性を修正するための命令が、時間領域で、少なくとも1つの制御可能フィルタの発散した周波数をゼロにリセットすること、発散した周波数のフィルタ係数を減衰すること、または発散した周波数で適応フィルタコントローラの漏れ値を増加させることを含んでよいコンピュータプログラム製品が提供される。さらに、少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出するための命令は、周波数領域で、少なくとも1つの制御可能フィルタの発散した周波数を検出することを含んでよく、適応伝達特性を修正するための命令は、周波数領域で、マイクから受信したエラー信号及びメモリに記憶された少なくとも1つの制御可能フィルタの以前の適応からのフィルタ係数を使用し、発散した周波数をノッチアウトすること(notching out)を含んでよい。
例えば、本願は以下温項目を提供する。
(項目1)
アクティブノイズキャンセレーション(ANC)システムの安定性を制御する方法であって、
適応フィルタコントローラから、少なくとも1つの制御可能フィルタに対応するフィルタ係数を受け取ることと、
上記フィルタ係数の少なくとも一部分の分析に基づいてパラメータを計算することと、
上記パラメータの閾値に対する比較に基づいて、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出することと、
発散した上記少なくとも1つの制御可能フィルタの特性を修正することと、
を含む、上記方法。
(項目2)
上記制御可能フィルタが複数の係数を含み、上記パラメータが、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの上記係数の少なくとも一部分の絶対値の和である、上記項目に記載の方法。
(項目3)
上記制御可能フィルタが複数の係数を含み、上記パラメータが、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの上記係数の少なくとも一部分の最大値である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目4)
上記パラメータの閾値に対する比較に基づいて上記少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出することが、上記パラメータが上記閾値を超えるとき上記少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出することを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
上記閾値が、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの1つ以上の先行する適応のフィルタ係数から計算される上記パラメータの統計分析から計算される動的閾値である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
上記閾値が、利得係数で乗算された上記少なくとも1つの制御可能フィルタの複数の先行する適応から採取された上記パラメータの平均値である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
上記パラメータの閾値に対する比較に基づいて上記少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出することが、
上記少なくとも1つの制御可能フィルタの現在の適応からの上記パラメータを、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの1つ以上の以前の適応からの同じパラメータの平均値に対して比較することと、
上記少なくとも1つの制御可能フィルタの上記現在の適応からの上記パラメータと、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの上記1つ以上の以前の適応からの上記平均値との差が閾値を超えると、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出することと、
を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
発散した上記少なくとも1つの制御可能フィルタの特性を修正することが、上記ANCシステムと、発散した上記少なくとも1つの制御可能フィルタとのうちの少なくとも1つの動作を停止させることを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
発散した上記少なくとも1つの制御可能フィルタの特性を修正することが、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの上記フィルタ係数をゼロにリセットすることと、上記少なくとも1つの制御可能フィルタが再適応することを可能にすることとを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
発散した上記少なくとも1つの制御可能フィルタの特性を修正することが、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの上記フィルタ係数を、上記ANCシステムのメモリに記憶されたフィルタ係数値のセットにリセットすることを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
発散した上記少なくとも1つの制御可能フィルタの特性を修正することが、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出することに応えて、上記適応フィルタコントローラの漏れ値を増加させることを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
上記適応フィルタコントローラの上記漏れ値が、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの上記発散した周波数で増加する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
上記少なくとも1つの制御可能フィルタの最高振幅フィルタ係数が所定の閾値を下回ると、上記適応フィルタコントローラの上記漏れ値を減少させることをさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
アクティブノイズキャンセレーション(ANC)システムであって、
適応伝達特性と、センサから受信するノイズ信号とに基づいてアンチノイズ信号を生成するように構成される少なくとも1つの制御可能フィルタであって、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの上記適応伝達特性が、フィルタ係数のセットにより特徴付けられる、上記少なくとも1つの制御可能フィルタと、
プロセッサ及びメモリを含み、上記ノイズ信号と、車両の車室内に位置するマイクから受信するエラー信号とに基づいてフィルタ係数の上記セットを適応させるようにプログラムされた適応フィルタコントローラと、
少なくとも上記適応フィルタコントローラと通信する発散コントローラであって、
上記少なくとも1つの制御可能フィルタの上記適応伝達特性の現在の適応に対応するフィルタ係数の上記セットを受け取ることと、
フィルタ係数の上記セットの少なくとも一部分の分析に基づいてパラメータを計算することと、
上記パラメータの閾値に対する比較に基づいて上記少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出することと、
を行うようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを含む、上記発散コントローラと、
を備える、上記アクティブノイズキャンセレーション(ANC)システム。
(項目15)
上記閾値が、上記ANCシステムのためにプログラムされた所定の静的な閾値である、上記項目に記載のANCシステム。
(項目16)
上記発散コントローラが、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの上記現在の適応から計算された上記パラメータと、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの1つ以上の以前の適応からの同じパラメータの平均値との差が上記閾値を超えると、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出するようにプログラムされる、上記項目のいずれか一項に記載のANCシステム。
(項目17)
上記発散コントローラが、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出することに応えて、上記適応フィルタコントローラの漏れ値を増加させるようにさらにプログラムされる、上記項目のいずれか一項に記載のANCシステム。
(項目18)
アクティブノイズキャンセレーション(ANC)のためにプログラムされる非一過性のコンピュータ可読媒体で具体化され、命令を備えるコンピュータプログラム製品であって、上記命令は、
適応フィルタコントローラから、少なくとも1つの制御可能フィルタの現在の適応に対応するフィルタ係数のセットを受け取ることと、
上記フィルタ係数の少なくとも一部分の分析に基づいてパラメータを計算することと、
上記パラメータの閾値に対する比較に基づいて上記少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出することと、
上記少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出することに応えて、上記現在の適応の間に上記少なくとも1つの制御可能フィルタの適応伝達特性を修正することと、
を行わせる、上記コンピュータプログラム製品。
(項目19)
上記少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出する上記命令が、時間領域で、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの発散した周波数を検出することを含み、
上記適応伝達特性を修正する上記命令が、上記時間領域で、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの上記発散した周波数をゼロにリセットすること、上記発散した周波数で上記フィルタ係数を減衰させること、または上記発散した周波数で上記適応フィルタコントローラの漏れ値を増加させることを含む、
上記項目に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目20)
上記少なくとも1つの制御可能フィルタの発散を検出する上記命令が、周波数領域で、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの発散した周波数を検出することを含み、
上記適応伝達特性を修正する上記命令が、上記周波数領域で、マイクから受信されるエラー信号、及びメモリに記憶される上記少なくとも1つの制御可能フィルタの以前の適応からのフィルタ係数を使用し、上記発散した周波数をノッチアウトすることを含む、
上記項目のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム製品。
(摘要)
アクティブノイズキャンセレーション(ANC)システムは、様々な時間領域または周波数領域の振幅特性に基づいて、1つ以上の制御可能フィルタが適応すると、1つ以上の制御可能フィルタの発散を検出するための適応フィルタ発散検出器を含んでよい。制御可能フィルタの発散の検出時、ANCシステムが動作を停止される場合もあれば、特定のスピーカがミュートされる場合もある。代わりに、ANCシステムは、ノイズキャンセルシステムの適切な動作を復元するために発散した制御可能フィルタを修正してよい。これは、適応フィルタコントローラの漏れ値を調整することを含む場合がある。