【解決手段】車両に搭載されるANCシステム500は、適応フィルタコントローラ520によって制御可能フィルタ518を適応制御することで耐雑音信号yl[n]を生成し、車内騒音を低減する。ここで、拡散コントローラ562は、この耐雑音信号から算出されるパラメータを閾値と比較し、制御可能フィルタの適応誤りや拡散を検出する。そして、拡散が検出された周波数に対して、制御可能フィルタの出力がゼロになるよう制御する。
前記制御可能フィルタの特質を修正することは、前記ANCシステム及び前記制御可能フィルタのうちの少なくとも1つを非活性化することを含む、請求項1に記載の方法。
前記制御可能フィルタの特質を修正することは、前記制御可能フィルタのフィルタ係数をゼロに再設定すること、及び前記制御可能フィルタが再適応することを可能にすることを含む、請求項1に記載の方法。
前記制御可能フィルタの特質を修正することは、前記制御可能フィルタのフィルタ係数をメモリに記憶されたフィルタ係数値のセットに再設定することを含む、請求項1に記載の方法。
前記少なくとも1つの制御可能フィルタの前記特質は、メモリに記憶されたフィルタ係数の異なるセットを使用して、前記少なくとも1つの制御可能フィルタの前記フィルタ係数を既知の状態に再設定することによって、前記拡散コントローラにより修正される、請求項13に記載のANCシステム。
前記少なくとも1つの制御可能フィルタの前記特質は、前記適応的フィルタコントローラの漏出値を増加させることによって、前記拡散コントローラにより修正される、請求項13に記載のANCシステム。
能動的雑音キャンセレーション(ANC)に対してプログラムされた非一時的コンピュータ可読媒体において具体化されたコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品は、
車両センサから、車室の内部サウンドスケープに影響を与える現在の車両動作状態を示すセンサ信号を受信し、
調節された閾値を取得するよう、前記センサ信号に基づいて、ANCシステムの拡散を検出するための名目上の閾値を調節し、
制御可能フィルタから出力された耐雑音信号及び前記車室に位置するマイクロフォンから出力されたエラー信号のうちの少なくとも1つを受信し、前記耐雑音信号は、スピーカから前記車室に放射されることになる耐雑音を示し、
前記耐雑音信号及び前記エラー信号のうちの少なくとも1つの分析に基づいて、パラメータを計算し、
前記パラメータが前記調節された閾値を上回ることに応答して、前記制御可能フィルタの適応的伝達特性を修正する、
ための命令を含む、前記コンピュータプログラム製品。
前記制御可能フィルタの適応的伝達特性を修正するための前記命令は、前記適応的伝達特性の変化率を低減させることを含む、請求項18に記載のコンピュータプログラム製品。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つ以上の例示的な実施形態では、能動的雑音キャンセレーション(ANC)システムにおける安定性を制御する方法が提供される。方法は、車両センサから、車室の内部サウンドスケープに影響を与える現在の車両動作状態を示すセンサ信号を受信することと、調節された閾値を取得するよう、センサ信号に基づいて、ANCシステムの拡散を検出するための名目上の閾値を調節することと、を含んでもよい。方法は更に、制御可能フィルタから出力された耐雑音信号を受信することを含んでもよく、耐雑音信号は、スピーカから車室に放射されることになる耐雑音を示す。方法は更に、耐雑音信号の少なくとも一部の分析に基づいて、パラメータを計算することと、パラメータが調節された閾値を上回ることに応答して、制御可能フィルタの特質を修正することと、を含んでもよい。
【0007】
実装態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含んでもよい。パラメータは、1つ以上の周波数における耐雑音信号の振幅であってもよい。名目上の閾値は、名目上の動作状態下でのANCシステムに対してプログラムされた予め定められた静的閾値であってもよい。車両センサから受信されたセンサ信号は、振動センサから受信された雑音信号を含んでもよい。車両センサから受信されたセンサ信号は、車両ネットワークバスから受信されたエンジントルク信号を含んでもよい。車両センサから受信されたセンサ信号は、車両速度、エンジン回転速度、及びアクセルペダル位置のうちの少なくとも1つを示してもよい。センサ信号に基づいて名目上の閾値を調節することは、センサ信号の短期間平均に基づいて、ルックアップテーブルから閾値調節値を取り出すことと、調節された閾値を取得するよう閾値調節値によって名目上の閾値を修正することと、を含んでもよい。
【0008】
制御可能フィルタの特質を修正することは、ANCシステム及び制御可能フィルタのうちの少なくとも1つを非活性化することを含んでもよい。制御可能フィルタの特質を修正することは、制御可能フィルタのフィルタ係数をゼロに再設定すること、及び制御可能フィルタが再適応することを可能にすることを含んでもよい。制御可能フィルタの特質を修正することは、制御可能フィルタのフィルタ係数をメモリに記憶されたフィルタ係数値のセットに再設定することを含んでもよい。その上、制御可能フィルタの特質を修正することは、適応的フィルタコントローラの漏出値を増加させることを含んでもよい。この目標を達成するために、方法は更に、パラメータが調節された閾値を下回るときに適応的フィルタコントローラの漏出値を低減させることを更に含んでもよい。
【0009】
1つ以上の追加の実施形態は、適応的伝達特性及びセンサから受信された雑音信号に基づいて、耐雑音信号を生成するように構成された少なくとも1つの制御可能フィルタを含むANCシステムに向けられてもよい。少なくとも1つの制御可能フィルタの適応的伝達特性は、フィルタ係数のセットによって特徴付けられてもよい。ANCシステムは更に、適応的フィルタコントローラ、及び少なくとも適応的フィルタコントローラと通信する拡散コントローラを含んでもよい。適応的フィルタコントローラは、雑音信号及び車両の機室に位置するマイクロフォンから受信されたエラー信号に基づいて、フィルタ係数のセットに適応するようにプログラムされた、プロセッサ及びメモリを含んでもよい。拡散コントローラは、車両センサから、機室の内部サウンドスケープに影響を与える現在の車両動作状態を示すセンサ信号を受信し、センサ信号に基づいて、ANCシステムの拡散を検出するための動的閾値を調節し、マイクロフォンからエラー信号を受信し、エラー信号の少なくとも一部の分析に基づいて、パラメータを計算し、パラメータが動的閾値を上回ることに応答して、少なくとも1つの制御可能フィルタの特質を修正する、ようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを含んでもよい。
【0010】
実装態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含んでもよい。パラメータは、1つ以上の周波数におけるエラー信号の振幅であってもよい。車両センサから受信されたセンサ信号は、雑音信号及びエンジントルク信号のうちの少なくとも1つを含んでもよい。少なくとも1つの制御可能フィルタの特質は、メモリに記憶されたフィルタ係数の異なるセットを使用して、少なくとも1つの制御可能フィルタのフィルタ係数を既知の状態に再設定することによって、拡散コントローラにより修正されてもよい。代わりに、少なくとも1つの制御可能フィルタの特質は、適応的フィルタコントローラの漏出値を増加させることによって、拡散コントローラにより修正されてもよい。
【0011】
1つ以上の追加の実施形態は、能動的雑音キャンセレーション(ANC)に対してプログラムされた非一時的コンピュータ可読媒体において具体化されたコンピュータプログラム製品に向けられてもよい。コンピュータプログラム製品は、車両センサから、車室の内部サウンドスケープに影響を与える現在の車両動作状態を示すセンサ信号を受信し、調節された閾値を取得するよう、センサ信号に基づいて、ANCシステムの拡散を検出するための名目上の閾値を調節し、制御可能フィルタから出力された耐雑音信号及び車室に位置するマイクロフォンから出力されたエラー信号のうちの少なくとも1つを受信し、耐雑音信号は、スピーカから車室に放射されることになる耐雑音を示す、ための命令を含んでもよい。コンピュータプログラム製品は更に、耐雑音信号及びエラー信号のうちの少なくとも1つの分析に基づいて、パラメータを計算し、パラメータが調節された閾値を上回ることに応答して、制御可能フィルタの適応的伝達特性を修正する、ための命令を含んでもよい。
【0012】
実装態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含んでもよい。コンピュータプログラム製品であって、制御可能フィルタの適応的伝達特性を修正するための命令は、制御可能フィルタの拡散された周波数を検出することと、制御可能フィルタの拡散された周波数をゼロに再設定すること、拡散された周波数におけるフィルタ係数を減衰させること、または拡散された周波数における適応的フィルタコントローラの漏出値を増加させることと、を含んでもよい。その上、制御可能フィルタの適応的伝達特性を修正するための命令は、適応的伝達特性の変化率を低減させることを含んでもよい。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
能動的雑音キャンセレーション(ANC)システムにおける安定性を制御する方法であって、
車両センサから、車室の内部サウンドスケープに影響を与える現在の車両動作状態を示すセンサ信号を受信することと、
調節された閾値を取得するよう、上記センサ信号に基づいて、ANCシステムの拡散を検出するための名目上の閾値を調節することと、
制御可能フィルタから出力された耐雑音信号を受信することであって、上記耐雑音信号は、スピーカから上記車室に放射されることになる耐雑音を示す、上記受信することと、
上記耐雑音信号の少なくとも一部の分析に基づいて、パラメータを計算することと、
上記パラメータが上記調節された閾値を上回ることに応答して、上記制御可能フィルタの特質を修正することと、
を含む、上記方法。
(項目2)
上記パラメータは、1つ以上の周波数における上記耐雑音信号の振幅である、上記項目に記載の方法。
(項目3)
上記名目上の閾値は、名目上の動作状態下での上記ANCシステムに対してプログラムされた予め定められた静的閾値である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目4)
車両センサから受信された上記センサ信号は、振動センサから受信された雑音信号を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
車両センサから受信された上記センサ信号は、エンジントルク信号を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
車両センサから受信された上記センサ信号は、車両速度、エンジン回転速度、及びアクセルペダル位置のうちの少なくとも1つを示す、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
上記センサ信号に基づいて上記名目上の閾値を調節することは、
上記センサ信号の短期間平均に基づいて、ルックアップテーブルから閾値調節値を取り出すことと、
上記調節された閾値を取得するよう上記閾値調節値によって上記名目上の閾値を修正することと、
を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
上記制御可能フィルタの特質を修正することは、上記ANCシステム及び上記制御可能フィルタのうちの少なくとも1つを非活性化することを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
上記制御可能フィルタの特質を修正することは、上記制御可能フィルタのフィルタ係数をゼロに再設定すること、及び上記制御可能フィルタが再適応することを可能にすることを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
上記制御可能フィルタの特質を修正することは、上記制御可能フィルタのフィルタ係数をメモリに記憶されたフィルタ係数値のセットに再設定することを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
上記制御可能フィルタの特質を修正することは、上記適応的フィルタコントローラの漏出値を増加させることを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
上記パラメータが上記調節された閾値を下回るときに上記適応的フィルタコントローラの上記漏出値を低減させることを更に含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
能動的雑音キャンセレーション(ANC)システムであって、
適応的伝達特性及びセンサから受信された雑音信号に基づいて、耐雑音信号を生成するように構成された少なくとも1つの制御可能フィルタであって、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの上記適応的伝達特性は、フィルタ係数のセットによって特徴付けられる、上記少なくとも1つの制御可能フィルタと、
上記雑音信号及び車両の機室に位置するマイクロフォンから受信されたエラー信号に基づいて、上記フィルタ係数のセットに適応するようにプログラムされた、プロセッサ及びメモリを含む適応的フィルタコントローラと、
少なくとも上記適応的フィルタコントローラと通信する拡散コントローラであって、上記拡散コントローラは、
車両センサから、上記機室の内部サウンドスケープに影響を与える現在の車両動作状態を示すセンサ信号を受信し、
上記センサ信号に基づいて、ANCシステムの拡散を検出するための動的閾値を調節し、
上記マイクロフォンから上記エラー信号を受信し、上記エラー信号の少なくとも一部の分析に基づいて、パラメータを計算し、
上記パラメータが上記動的閾値を上回ることに応答して、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの特質を修正する、
ようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを含む、上記拡散コントローラと、
を含む、上記ANCシステム。
(項目14)
上記パラメータは、1つ以上の周波数における上記エラー信号の振幅である、上記項目に記載のANCシステム。
(項目15)
車両センサから受信された上記センサ信号は、上記雑音信号及びエンジントルク信号のうちの少なくとも1つを含む、上記項目のいずれか一項に記載のANCシステム。
(項目16)
上記少なくとも1つの制御可能フィルタの上記特質は、メモリに記憶されたフィルタ係数の異なるセットを使用して、上記少なくとも1つの制御可能フィルタの上記フィルタ係数を既知の状態に再設定することによって、上記拡散コントローラにより修正される、上記項目のいずれか一項に記載のANCシステム。
(項目17)
上記少なくとも1つの制御可能フィルタの上記特質は、上記適応的フィルタコントローラの漏出値を増加させることによって、上記拡散コントローラにより修正される、上記項目のいずれか一項に記載のANCシステム。
(項目18)
能動的雑音キャンセレーション(ANC)に対してプログラムされた非一時的コンピュータ可読媒体において具体化されたコンピュータプログラム製品であって、上記コンピュータプログラム製品は、
車両センサから、車室の内部サウンドスケープに影響を与える現在の車両動作状態を示すセンサ信号を受信し、
調節された閾値を取得するよう、上記センサ信号に基づいて、ANCシステムの拡散を検出するための名目上の閾値を調節し、
制御可能フィルタから出力された耐雑音信号及び上記車室に位置するマイクロフォンから出力されたエラー信号のうちの少なくとも1つを受信し、上記耐雑音信号は、スピーカから上記車室に放射されることになる耐雑音を示し、
上記耐雑音信号及び上記エラー信号のうちの少なくとも1つの分析に基づいて、パラメータを計算し、
上記パラメータが上記調節された閾値を上回ることに応答して、上記制御可能フィルタの適応的伝達特性を修正する、
ための命令を含む、上記コンピュータプログラム製品。
(項目19)
上記制御可能フィルタの適応的伝達特性を修正するための上記命令は、
上記制御可能フィルタの拡散された周波数を検出することと、
上記制御可能フィルタの上記拡散された周波数をゼロに再設定すること、上記拡散された周波数におけるフィルタ係数を減衰させること、または上記拡散された周波数における適応的フィルタコントローラの漏出値を増加させることと、
を含む、上記項目に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目20)
上記制御可能フィルタの適応的伝達特性を修正するための上記命令は、上記適応的伝達特性の変化率を低減させることを含む、上記項目のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム製品。
(摘要)
能動的雑音キャンセレーション(ANC)システムは、動的に適応された閾値に基づいて、それらが適応するように1つ以上の制御可能フィルタの拡散を検出するための適応的フィルタ拡散検出器を含んでもよい。制御可能フィルタ拡散を検出すると、ANCシステムが非活性化されてもよく、または特定のスピーカがミュートされてもよい。代わりに、ANCシステムは、雑音キャンセリングシステムの適切な動作を戻すよう、拡散された制御可能フィルタを修正してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
必要に応じて、本発明の詳細な実施形態が本明細書に開示されるが、開示された実施形態は、様々な及び代替的な形態で具体化され得る本発明の単なる例であることを理解されたい。図は必ずしも縮尺通りではなく、一部の特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張または最小にされ得る。したがって、本明細書に開示される具体的な構造及び機能の詳細は、限定するものではなく、単に当業者が本発明を様々に使用するのに教示するための代表的な基準として解釈されたい。
【0015】
本明細書で説明されるコントローラまたはデバイスのうちのいずれか1つ以上は、様々なプログラミング言語及び/または技術を使用して作成されたコンピュータプログラムからコンパイルまたは解釈することができるコンピュータ実行可能命令を含む。概して、プロセッサ(マイクロプロセッサなど)は、例えば、メモリまたはコンピュータ可読媒体などから命令を受信し、命令を実行する。プロセシングユニットは、ソフトウェアプログラムの命令を実行することが可能な非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。コンピュータ可読記憶媒体は、電子記憶装置、磁気記憶装置、光学式記憶装置、電磁気記憶装置、半導体記憶装置、またはいずれかの適切なそれらの組み合わせであってもよいが、それらに限定されない。
【0016】
図1は、1つ以上の振動センサ108を有する車両102に対する道路雑音キャンセレーション(RNC)システム100を示す。振動センサは、車両のサスペンション、サブフレームと共に他のアクセル及びシャーシ構成要素の振動挙動を監視するよう車両102の全体を通じて配置される。RNCシステム100は、広帯域フィードフォワード及びフィードバック能動的雑音制御(ANC)フレームワーク、または1つ以上のマイクロフォン112を使用して振動センサ108からの信号の適応的フィルタリングによって耐雑音を生成するシステム104と統合されてもよい。耐雑音信号は次いで、1つ以上のスピーカ124を通じて再生されてもよい。S(z)は、単一のスピーカ124と単一のマイクロフォン112との間の伝達関数を表す。
図1は、簡易化することのみを目的に、単一の振動センサ108、マイクロフォン112、及びスピーカ124を示すが、典型的なRNCシステムは、複数の振動センサ108(例えば、10以上の)、マイクロフォン112(例えば、4〜6)、及びスピーカ124(例えば、4〜8)を使用することに留意されるべきである。
【0017】
振動センサ108は、加速度計、力計、地音機、線形可変差動変圧器、歪み計、及びロードセルを含んでもよいが、それらに限定されない。例えば、加速度計は、その出力信号振幅が加速度と比例するデバイスである。広範囲の加速度計がRNCシステムにおける使用のために利用可能である。それらは、1つ、2つ、及び3つの典型的には直交方向における振動に敏感な加速度計を含む。それらの多軸加速度計は典型的には、それらのX方向、Y方向、及びZ方向において検知された振動についての別個の電気出力(または、チャネル)を有する。したがって、単一軸及び多軸加速度計は、加速度の大きさ及び位相を検出する振動センサ108として使用されてもよく、方位、動き、及び振動を検知するためにも使用されてもよい。
【0018】
道路面150上で動いているホイール106から発生する雑音及び振動は、車両102のサスペンションデバイス110またはシャーシ構成要素に機械的に結合された振動センサ108のうちの1つ以上によって検知されてもよい。振動センサ108は、検出された道路誘発振動を表す振動信号である、雑音信号X(n)を出力してもよい。複数の振動センサが可能であり、それらの信号が別個に使用されてもよく、または当業者によって既知の様々な方式において組み合わされてもよいことに留意されるべきである。特定の実施形態では、ホイール106及び道路面150の相互作用から生じる雑音を示す雑音信号X(n)を出力するために、振動センサの代わりにマイクロフォン、音響エネルギーセンサ、音響強度センサ、または音響速力センサが使用されてもよい。雑音信号X(n)は、モデル化された伝達特性S’(z)によりフィルタリングされてもよく、モデル化された伝達特性S’(z)は、二次経路(すなわち、耐雑音スピーカ124とエラーマイクロフォン112との間の伝達関数)を二次経路フィルタ122によって推定する。
【0019】
ホイール106及び道路面150の相互作用から発生する道路雑音も、乗客室に機械的に及び/または音響的に伝達され、車両102の内部で1つ以上のマイクロフォン112によって受信される。1つ以上のマイクロフォン112は、例えば、
図1に示されるように、シート116のヘッドレスト114に位置してもよい。代わりに、1つ以上のマイクロフォン112は、車両102のヘッドライナ、または車両102の内部の占有者によって聞かれる音響雑音場を検知するいくつかの他の適切な位置に位置してもよい。道路面150及びホイール106の相互作用から発生する道路雑音は、伝達特性P(z)に従ってマイクロフォン112に伝達され、伝達特性P(z)は、一次経路(すなわち、実の雑音源とエラーマイクロフォンとの間の伝達関数)を表す。
【0020】
マイクロフォン112は、マイクロフォン112によって検出されるような車両102の機室に存在する雑音を表すエラー信号e(n)を出力してもよい。RNCシステム100では、制御可能フィルタ118の適応的伝達特性W(z)は、適応的フィルタコントローラ120によって制御されてもよく、適応的フィルタコントローラ120は、フィルタ122によってモデル化された伝達特性S’(z)によりフィルタリングされたエラー信号e(n)及び雑音信号X(n)に基づいて、既知の最小平均二乗(LMS)アルゴリズムに従って動作してもよい。制御可能フィルタ118は、Wフィルタと称されることが多い。LMS適応的フィルタコントローラ120は、エラー信号e(n)に基づいて、伝達特性W(z)フィルタ係数を更新するように構成された合計クロススペクトルを提供することができる。改善された雑音キャンセレーションをもたらすW(z)に適応し、または更新する処理は、収束することと称される。収束は、所与の入力信号についての適応の比率を統治するステップサイズによって制御される、エラー信号e(n)を最小化するWフィルタの作成を指す。ステップサイズは、制御可能Wフィルタ118の各更新に基づいて、Wフィルタ係数の大きさの変更を制限することによって、e(n)を最小化するようアルゴリズムがどの程度高速に収束するかを命令するスケール因子である。
【0021】
耐雑音信号Y(n)は、識別された伝達特性W(z)及び雑音信号、または雑音信号、X(n)の組み合わせに基づいて、制御可能フィルタ118及び適応的フィルタコントローラ120によって形成された適応的フィルタによって生成されてもよい。耐雑音信号Y(n)は理想的には、スピーカ124を通じて再生されるとき、耐雑音が占有者の耳及びマイクロフォン112の近くで生成されるような波形を有し、マイクロフォン112は、車室の占有者に聞き取れる道路雑音の位相及び大きさに対して実質的に、位相において反対であり、大きさにおいて同一である。スピーカ124からの耐雑音は、マイクロフォン112の近くの車室内で道路雑音と組み合わされてもよく、この位置において道路雑音誘発音圧レベル(SPL)の減少をもたらす。特定の実施形態では、RNCシステム100は、エラー信号e(n)を生成するよう、乗客室内で、音響エネルギーセンサ、音響強度センサ、または音響粒子速力もしくは加速度センサなどの他の音響センサからセンサ信号を受信してもよい。
【0022】
車両102が動作中である間、プロセッサ128は、車両102によって使用されることになるデータベース、またはマップ含有データ及び/もしくはパラメータを構築するよう、振動センサ108及びマイクロフォン112からデータを収集してもよく、任意選択でデータを処理してもよい。収集されたデータは、車両102による後の使用のために、記憶部130またはクラウドにローカルに記憶されてもよい。記憶部130にローカルに記憶することが有用であることがあるRNCシステム100に関連するデータのタイプの例は、加速度計もしくはマイクロフォンスペクトルまたは時間依存信号、スペクトル及び時間依存特質を含む他の加速度特性、事前適応Wフィルタ値、低、中、及び高トルク状態についての予測されるエラー信号及び耐雑音信号閾値、様々な舗道タイプ(例えば、平坦な、粗い、チップシールの、石畳の、エキスパンションジョイントなど)上の様々な速度における典型的なエラー信号及び耐雑音信号閾値、並びに動的な漏出増加値及び減少値などを含むが、それらに限定されない。加えて、プロセッサ128は、RNCシステム100に適用されることになるキーパラメータのセットを判定するよう、センサデータを分析してもよく、キーフィーチャを抽出してもよい。キーパラメータのセットは、パラメータが閾値を上回るときに選択されてもよい。1つ以上の実施形態では、プロセッサ128及び記憶部130は、適応的フィルタコントローラ120などの1つ以上のRNCシステムコントローラと統合されてもよい。
【0023】
前に説明されたように、典型的なRNCシステムは、車両の構造由来の振動挙動を検知し、耐雑音を生成するために、いくつかの振動センサ、マイクロフォン、及びスピーカを使用してもよい。振動センサは、複数の出力チャネルを有する多軸加速度計であってもよい。例えば、三軸加速度計は典型的には、それらのX方向、Y方向、及びZ方向において検知された振動についての別個の電気出力を有する。RNCシステムについての典型的な構成は、4個の三軸加速度計または6個の二軸加速度計からの加速度信号の6個のエラーマイクロフォン、6個のスピーカ、及び12個のチャネルを有してもよい。したがって、RNCシステムも、複数のS’(z)フィルタ(すなわち、二次経路フィルタ122)及び複数のW(z)フィルタ(すなわち、制御可能フィルタ118)を含む。
【0024】
図1に記述された簡易化されたRNCシステムの概略は、各スピーカ124と各マイクロフォン112との間の、S(z)によって表される1つの二次経路を示す。前に言及されたように、RNCシステムは典型的には、複数のスピーカ、マイクロフォン、及び振動センサを有する。したがって、6個のスピーカ、6個のマイクロフォンのRNCシステムは、合計で36個の二次経路(すなわち、6×6)を有する。対応して、6個スピーカ、6個のマイクロフォンのRNCシステムは同様に、各二次経路についての伝達関数を推定する、36個のS’(z)フィルタ(すなわち、記憶された二次経路フィルタ122)を有してもよい。
図1に示されるように、RNCシステムはまた、振動センサ(すなわち、加速度計)108及び各々のスピーカ124からの各雑音信号X(n)の間の1つのW(z)フィルタ(すなわち、制御可能フィルタ118)を有する。したがって、12個の加速度計信号、6個のスピーカRNCシステムは、72個のW(z)フィルタを有してもよい。加速度計信号、スピーカ、及びW(z)フィルタの数の間の関係が
図2に示される。
【0025】
図2は、加速度計208からのR加速度計信号[X
1(n)、X
2(n)、…X
R(n)]及びスピーカ224からのL耐雑音信号[Y
1(n)、Y
2(n)、…Y
L(n)]を含むような大きさにされたRNCシステム200の関連する部分を実証するサンプル概略図である。したがって、RNCシステム200は、加速度計信号の各々とスピーカの各々との間でR*L制御可能フィルタ(または、Wフィルタ)218を含んでもよい。例として、12個の加速度計出力(すなわち、R=12)を有するRNCシステムは、6個の二軸加速度計または4個の三軸加速度計を採用してもよい。したがって、同一の例では、耐雑音を再現するための6個のスピーカ(すなわち、L=6)を有する車両は、合計で72個のWフィルタを使用してもよい。Lスピーカの各々において、R Wフィルタ出力は、スピーカの耐雑音信号Y(n)を作成するよう合計される。Lスピーカの各々は、増幅器(図示せず)を含んでもよい。1つ以上の実施形態では、R WフィルタによってフィルタリングされたR加速度計信号は、電気耐雑音信号y(n)を作成するよう合計され、電気耐雑音信号y(n)は、スピーカに送信される増幅された耐雑音信号Y(n)を生成するために増幅器に供給される。
【0026】
図1に示されたANCシステム104も、エンジン運転指令キャンセレーション(EOC)システムを含んでもよい。上述したように、EOC技術は、車両の内部で聞き取れるエンジン雑音に対して位相において反対である音を生成するために、エンジン速度を表すRPM信号などの非音響信号を基準として使用する。共通のEOCシステムは、RPM信号を使用して耐雑音を生成して、取り消されることになるエンジン運転指令に対して周波数において同一のエンジン運転指令信号の生成をガイドし、それを適応的にフィルタリングして耐雑音信号を作成するために、狭帯域フィードフォワードANCフレームワークを利用する。耐雑音源から聴取位置またはエラーマイクロフォンに二次経路を介して伝送された後、耐雑音は理想的には、エンジン及び排気パイプによって生じ、エンジンから聴取位置に、及び排気パイプ出口から聴取位置に延在する一次経路によってフィルタリングされた組み合わされた音と、同一の振幅を有するが、反対の位相を有する。よって、エラーマイクロフォンが車室に存在する(すなわち、聴取位置にある可能性が最も高く、または聴取位置に近い可能性が最も高い)場所において、エンジン運転指令雑音及び耐雑音の重ね合わせは、理想的にはゼロになり、その結果、エラーマイクロフォンによって受信された音響エラー信号は、(理想的には取り消される)エンジン運転指令またはエンジン及び排気によって生じる運転指令以外の音のみを記録する。
【0027】
一般的に、非音響センサ、例えば、RPMセンサは、基準として使用される。RPMセンサは、例えば、スピニングスチールディスクに隣接して置かれたホール効果センサであってもよい。光学センサまたは誘導センサなどの他の検出原理が採用されてもよい。RPMセンサからの信号は、エンジン運転指令の各々に対応する任意の数の基準エンジン運転指令信号を生成するためのガイド信号として使用されてもよい。基準エンジン運転指令は、EOCシステムを形成する1つ以上の狭帯域適応的フィードフォワードLMSブロックによって生成された雑音キャンセリング信号についての主成分を形成する。
【0028】
図3は、RNCシステム300及びEOCシステム340の両方を含む、ANCシステム304の例を示す概略ブロック図である。RNCシステム100と同様に、RNCシステム300は、上記議論された要素108、112、118、120、122、及び124の動作とそれぞれ一貫して、要素308、312、318、320、322、及び324を含んでもよい。EOCシステム340は、RPMセンサ342を含んでもよく、RPMセンサ342は、エンジン回転速度を示すエンジンドライブシャフトまたは他の回転シャフトの回転を示すRPM信号344(例えば、矩形波信号)を提供することができる。いくつかの実施形態では、RPM信号344は、車両ネットワークバス(図示せず)から取得されてもよい。放射されたエンジン運転指令がドライブシャフトRPMに直接比例するにつれて、RPM信号344は、エンジン及び排気システムによって生じた周波数を示す。よって、RPMセンサ342からの信号は、車両についてのエンジン運転指令の各々に対応する基準エンジン運転指令信号を生成するために使用されてもよい。したがって、RPM信号344は、各RPMにおいて放射されたエンジン運転指令のリストを提供する、RPM対エンジン運転指令周波数のルックアップテーブル346と共に使用されてもよい。
【0029】
図4は、ルックアップテーブル346を生成するために使用することができる、例示的なEOCキャンセレーションチューニングテーブル400を示す。例示的なテーブル400は、所与のRPMについての各エンジン運転指令の周波数(サイクル/秒における)をリスト化する。図示例では、4個のエンジン運転指令が示される。LMSアルゴリズムは、RPMを入力として受け、このルックアップテーブル400に基づいて各運転指令についての正弦波を生成する。前に説明されたように、テーブル400についての関連するRPMは、ドライブシャフトRPMであってもよい。
【0030】
再度
図3を参照して、ルックアップテーブル346から取り出されるような、検知されたRPMにおける所与のエンジン運転指令の周波数は、周波数ジェネレータ348に供給されてもよく、それによって、所与の周波数における正弦波を生成する。この正弦波は、所与のエンジン運転指令についてのエンジン運転指令雑音を示す雑音信号X(n)を表す。RNCシステム300と同様に、周波数ジェネレータ348からのこの雑音信号X(n)は、対応する耐雑音信号Y(n)をラウドスピーカ324に提供する、適応的制御可能フィルタ318またはWフィルタに送信されてもよい。示されるように、この狭帯域の様々な成分について、EOCシステム340は、エラーマイクロフォン312、適応的フィルタコントローラ320、及び二次経路フィルタ322を含む、広帯域RNCシステム300と同一であってもよい。スピーカ324によってブロードキャストされた耐雑音信号Y(n)は、エラーマイクロフォン312に対して近接することができる、リスナの耳の位置において実のエンジン運転指令雑音に対して実質的に位相が異なるが、大きさにおいて同一である耐雑音を生成し、それによって、エンジン運転指令の音振幅を減少させる。エンジン運転指令雑音が狭帯域であることを理由に、エラーマイクロフォン信号e(n)は、LMSに基づく適応的フィルタコントローラ320に渡される前に、帯域通過フィルタ350、352によってフィルタリングされてもよい。実施形態では、周波数ジェネレータ348によって出力された雑音信号X(n)が同一の帯域通過フィルタパラメータを使用して帯域通過フィルタリングされるときにLMS適応的フィルタコントローラ320の適切な動作が達成される。
【0031】
複数のエンジン運転指令の振幅を同時に減少させるために、EOCシステム340は、RPM信号344に基づいて、各々のエンジン運転指令についての雑音信号X(n)を生成するための複数の周波数ジェネレータ348を含んでもよい。例として、
図3は、エンジン速度に基づいて、各エンジン運転指令についての一意な雑音信号(例えば、X
1(n)、X
2(n)など)を生成するための2つのそのような周波数ジェネレータを有する2つの運転指令EOCシステムを示す。2つのエンジン運転指令の周波数が異なることを理由に、帯域通過フィルタ350、352(BPF及びBPF2とそれぞれラベル付けされた)は、異なる高域及び低域通過フィルタ折点周波数を有する。周波数ジェネレータ及び対応する雑音キャンセレーション構成要素の数は、最終的に、車両の特定のエンジンについてのエンジン運転指令の数に基づいて変化する。2つの運転指令EOCシステム340がANCシステム304を形成するようRNCシステム300と組み合わされるので、3つの制御可能フィルタ318からの耐雑音信号Y(n)出力は、合計され、スピーカ信号S(n)としてスピーカ324に送信される。同様に、エラーマイクロフォン312からのエラー信号e(n)は、3つのLMS適応的フィルタコントローラ320に送信されてもよい。
【0032】
ANCシステムにおける不安定性または減少した雑音キャンセレーション性能につながることがある1つの主要な因子は、適応的WフィルタがフィードフォワードLMSシステムによる適応の間に拡散するときに発生する。適応的Wフィルタが適切に収束するとき、エラーマイクロフォンの位置における音圧レベルが最小化される。しかしながら、それらの適応的Wフィルタのうちの1つ以上が拡散するとき、雑音上昇をもたらす不安定性は、雑音キャンセレーションの代わりに発生することがある。したがって、ANCシステム性能及び安定性を維持するよう適応的フィルタの拡散を検出及び制御するシステム及び方法が採用されてもよい。
【0033】
ANCシステムは、乗用車の機室の周りに配置された1つ以上のマイクロフォンからデータを取得及び分析することによって、Wフィルタの適応誤りまたは拡散によって生じた不安定性または雑音上昇を検出することができる。しかしながら、車両の内部サウンドスケープは、大きく変化することがある。例えば、車室の内部サウンドスケープは、車両が低速度、低エンジントルクシナリオから高車両速度、高エンジントルクシナリオに加速するにつれて、非常に小音から非常に大音までの範囲に及ぶことがある。現在のANCシステムは、単一の機室内SPL閾値が全ての不安定性を検出することのみを可能にする。このアプローチは、車両内の内部雑音レベルが車両速度、エンジン出力トルク、及び道路面の粗さなどに依存することを理由に問題となることがある。よって、高車両速度及び高エンジントルクにおいて、例えば、マイクロフォンのSPL閾値は、システムが適切に動作しているときに大音量のエンジン雑音が存在することがあるので、相対的に高く設定されるべきである。しかしながら、低車両速度及び低エンジントルクにより、システムが適切に動作しているときに相対的に小音量のエンジン雑音が存在し、不安定性を即時に検出するために低SPL閾値を必要とする。
【0034】
現在のシステムのみが単一のSPL閾値のみを許可することを理由に、それは典型的には、高車両速度における適切なANC動作を可能にするよう非常に高レベルに設定される(すなわち、ANCアルゴリズムが高車両速度においてまたは粗い道路上で正しく非活性化しないため)。したがって、相対的に低トルクによる低及び中車両速度において、雑音上昇をもたらすWフィルタの適応誤りは、即時に検出されず、または全く検出されないことがある。むしろ、この低速度/低トルク動作状態の間の不安定性は、すなわち、雑音上昇が高SPL閾値を上回るのに振幅において高度に十分に増加するまで、検出するのに相対的に長期間を要することがある。一方、車両占有者は、相対的に長い期間(例えば、20秒以上)にわたって、高く不快なまでに増加する振幅という不安定性の影響を受ける。結果として、ANCの不安定性についての閾値検出器としての使用に対する単一の機室内SPL大きさの制限に依存することは、不適切であり得る。EOC/RNC雑音上昇、不安定性、または拡散の遅い(または、場合によってはない)検出を回避するために、動的に判定されたSPL閾値が採用されてもよい。
【0035】
簡潔に、マイクロフォンによって測定されるような機室内SPL値は、動的に判定されたSPL閾値と比較されてもよい。EOCについて、SPL閾値は、エンジントルクに比例した因子と乗算されてもよい。例えば、車両が高トルクドライビングシナリオにあるとき、相対的に高いSPL閾値は、名目上のSPL閾値を(高)トルク乗数と乗算することによって生成されてもよい。車両が低トルクドライビングシナリオにあるとき、低SPL閾値は、名目上のSPL閾値を(低)トルク乗数と乗算することによって生成されてもよい。このアルゴリズムのより良好な性能のために、エンジントルク信号の短時間平均、またはエンジントルクについての適当な代わりとしての役割を果たすことができる他の車両信号が必要とされることがある。RNCについて、不安定性の早期検出のために同一の動的な閾値設定が採用されてもよい。RNCのケースでは、加速度計などの振動センサから出力された雑音信号の短時間平均は、エンジントルク値を置き換えることができる。これは、内部雑音レベルが、高振幅加速度計出力を有する粗い道路上では相対的に高く、低振幅加速度計出力を有する平坦な道路に対しては相対的に低いことが理由である。SPL値がそれらの動的閾値を上回る場合、雑音上昇または不適当な雑音キャンセレーションなどの他の望ましくない挙動を防止するために、拡散緩和が採用されてもよい。拡散緩和は、例えば、ANCシステムをミュートすること、拡散されたWフィルタをゼロ状態または何らかの他の記憶された状態に再設定すること、及びWフィルタ漏出の一時的または永続的な増加などを含んでもよい。
【0036】
1つ以上の追加の実施形態により、マイクロフォンエラー信号e(n)によって判定されるような機室内SPLの代わりに、耐雑音信号Y(n)の動的な閾値設定を使用してANC不安定性検出が採用されてもよい。マイクロフォンエラー信号e(n)は、乗客室内の全ての雑音源を含んでもよい。エンジン雑音または道路雑音のみを検出するのではなく、エラーマイクロフォンも、対応するエラー信号e(n)に含まれる、風雑音、音楽、発話、及び乗客室内の他の干渉雑音を検出する。その上、純粋なRNCシステムにおけるエラー信号e(n)もエンジン雑音を含み、純粋なEOCシステムにおけるエラー信号e(n)も道路雑音を含む。ANCシステムによって生成された耐雑音信号Y(n)は、上記言及した干渉信号のいずれも含まず、EOCシステムからの耐雑音信号Y(n)の寄与は、それらのシステムが1つのANCシステムに組み込まれるときにRNCシステムからの耐雑音信号Y(n)の寄与とは別個に分析されてもよい。
【0037】
実施形態では、耐雑音信号Y(n)に適用されるEOC不安定性検出閾値は、エンジントルク信号の短時間平均のルックアップテーブルに記憶された値によって動的に修正されてもよい。これは、LMSに基づくEOCアルゴリズムによって生成された耐雑音のレベルが高エンジントルクに対して相対的に高く、低エンジントルクに対して相対的に低いことを理由とする。動的不安定性閾値を判定するために、エンジン雑音を近似させるガイド信号としてエンジントルクが使用されてもよく、エンジン速度、アクセルペダル位置、車両加速度、瞬間的な燃費、または燃料ポンプからの一様な統計のような他のガイド信号も同様に採用されてもよい。
【0038】
同様に、耐雑音信号Y(n)に適用されるRNC不安定性検出閾値は、振動センサから出力されるものなど、雑音信号X(n)の短時間平均のルックアップテーブルに記憶された値によって動的に修正されてもよい。これは、RNCアルゴリズムによって生成された耐雑音のレベルが粗い道路に対して相対的に高く、平坦な道路に対して相対的に低いことを理由とする。振動センサからの信号の代わりに粗い舗道タイプを示す他の信号が使用されてもよい。例えば、加速度計または他の振動センサからの処理された出力代わりに、現在進んでいる道路のGPS導出または前に記憶された粗さ推定値がルックアップテーブルについてのガイド信号として使用されてもよい。
【0039】
図5は、適応的Wフィルタの拡散を検出し、ANCシステム性能を最適化するために使用することができる主要なANCシステムパラメータの多くを示す車両に基づくANCシステム500の概略ブロック図である。説明を容易にするために、
図5に示されるANCシステム500は、RNCシステム100などのRNCシステムの構成要素及び機構と共に示される。しかしながら、ANCシステム500は、
図3と関連して示され、及び説明されたものなどのEOCシステムを含んでもよい。したがって、ANCシステム500は、追加のシステム構成要素を特色とする、
図1〜3と関連して説明されたものなど、RNC及び/またはEOCシステムの概略表現である。同様の慣例を使用して同様の構成要素が番号付けされてもよい。例えば、RNCシステム100と同様に、ANCシステム500は、上記議論された要素108、110、112、118、120、122、及び124の動作とそれぞれ一貫して、要素508、510、512、518、520、522、及び524を含んでもよい。
【0040】
示されるように、ANCシステム500は更に、制御可能フィルタ518と適応的フィルタコントローラ520との間の経路に沿って配置された拡散コントローラ562を含んでもよい。拡散コントローラ562は、制御可能フィルタ518の拡散を検出するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリ(図示せず)を含んでもよい。これは、時間領域または周波数領域のいずれかまたは両方において、マイクロフォン512からのエラー信号及び/または制御可能フィルタ518からの耐雑音信号からサンプルを分析することによる、コンピューティングパラメータを含んでもよい。この目標を達成するために、
図5は、時間領域と周波数領域との間で信号を変換するための高速フーリエ変換(FFT)ブロック564、566、及び逆高速フーリエ変換(IFFT)ブロック568を明確に示す。したがって、
図5における変数名は、
図1〜3に示された変数名とはわずかに変わっている。大文字の変数は、周波数領域における信号を表し、小文字の変数は、時間領域における信号を表す。文字「n」は、時間領域におけるサンプルを意味し、文字「k」は、周波数領域におけるビンを意味する。
図5における図は更に、R基準信号、Lスピーカ信号、及びMエラー信号を示す、複数の信号の存在を示す。以下の表は、
図5における様々な記号及び変数の詳細な説明を提供する。
【表1】
【0041】
図1と同様に、振動センサ508などの雑音入力からの雑音信号x
r[n]は、二次経路フィルタ522によって、前に説明されたような二次経路の記憶された推定値を使用して、モデル化された伝達特性
【数1】
により変換及びフィルタリングされてもよい。その上、制御可能フィルタ518(例えば、Wフィルタ)の適応的伝達特性w
r,l[n]は、適応的フィルタを提供するようLMS適応的フィルタコントローラ(または、単純にLMSコントローラ)520によって制御されてもよい。二次経路フィルタ522によってフィルタリングされるような雑音信号、及びマイクロフォン512からのエラー信号e
m[n]は、LMS適応的フィルタコントローラ520に入力される。LMSコントローラ520及び雑音信号x
r[n]によって適応された制御可能フィルタ518によって耐雑音信号y
l[n]が生成されてもよい。
【0042】
拡散コントローラ562は、マイクロフォン(複数可)512から時間領域エラー信号e
m[n]及び/または周波数領域エラー信号E
m[k,n]を受信してもよい。追加的または代替的に、拡散コントローラ562は、制御可能フィルタ(複数可)518によって生成された耐雑音信号(複数可)y
l[n]を受信してもよい。その上、拡散コントローラ562は、エラー信号または耐雑音信号を分析することによって1つ以上のパラメータを計算してもよい。パラメータは、1つ以上の周波数または周波数範囲におけるエラー信号及び/または耐雑音信号の振幅であってもよいが、他のパラメータが採用されてもよい。実施形態では、パラメータは、1つ以上の周波数範囲におけるエラー信号及び/または耐雑音信号の周波数依存振幅である。ANCシステムの不安定性(例えば、制御可能フィルタ518の拡散)を検出するためのパラメータが動的閾値と比較されてもよい。拡散が検出される場合、拡散コントローラ562は、少なくとも1つの制御可能フィルタ518の特性、または漏出などのLMSシステム520の適応パラメータを修正するよう適応的フィルタコントローラに指示する調節信号を適応的フィルタコントローラ520に再度送信してもよい。
【0043】
RNCシステムまたはEOCシステムのいずれかでは、拡散を検出することに対する応答は、例えば、前に記憶された調節されたWフィルタを使用して、Wフィルタ値の一部または全てに代わる拡散コントローラ562に対するものであってもよい。拡散コントローラ562による拡散の検出に対する他の応答は、制御可能フィルタ518の一部または全てをゼロから構成されたフィルタと置き換えることを含んでもよく、これは、制御可能フィルタを効果的に再設定する。拡散コントローラ562による他の拡散緩和測定値は、拡散された周波数を含む周波数における漏出を追加すること、拡散された周波数における係数をゼロにもしくはゼロに向かって再設定すること、Wフィルタ係数の一部もしくは全てを減衰させること、または後の拡散イベントのリスクを低下させるようステップサイズを減少させること(すなわち、制御可能フィルタ518のアダプタ伝達特性の変化率を低下させる)を含んでもよい。特定の実施形態では、拡散コントローラ562からの調節信号は、制御可能Wフィルタ518への上記説明された修正のいずれかにより、または制御可能Wフィルタ518への上記説明された修正のいずれもなくアンミュートする前に、ある期間の間に(「中断」と称される)ANCアルゴリズムをミュートしてもよい。
【0044】
拡散コントローラ562は、拡散された制御可能Wフィルタを検出するための専用コントローラであってもよく、またはLMSコントローラ520などのANCシステムにおける別のコントローラもしくはプロセッサと統合されてもよい。代わりに、拡散コントローラ562は、ANCシステム500における他の構成要素とは別個の車両102内の別のコントローラまたはプロセッサに統合されてもよい。
【0045】
図6は、本開示の1つ以上の実施形態による、拡散コントローラ562をより詳細に示すブロック図である。前に説明されたように、ANCシステム500の不安定性を検出するための閾値は、車室の変動する内部サウンドスケープを占めるよう動的であってもよい。したがって、拡散コントローラ562は更に、この動的不安定性閾値を修正または調節するように構成されてもよい。
図6に示される例では、ANCシステム500の不安定性は、マイクロフォン512からのエラー信号e
m[n]を使用して、動的不安定性閾値に対して機室内SPLを評価することによって検出されてもよい。しかしながら、拡散コントローラ562は同様に、前に説明されたように、耐雑音信号y
l[n]を使用して不安定性を検出してもよいことに留意されるべきである。
【0046】
拡散コントローラ562は、名目上の閾値TH
nomを記憶または受信してもよく、閾値TH
nomに対して、予め定められた名目上の車両動作状態下でエラー信号e
m[n]が比較されてもよい。拡散コントローラ562はまた、1つ以上の車両センサから、車室の内部サウンドスケープに影響を与えることがある現在の車両動作状態を示すセンサ信号610を受信してもよい。前に説明されたように、センサ信号610は、現在の道路状態に起因した内部雑音レベルを全体的に示すことができる、振動センサ508など、雑音入力からの雑音信号x
r[n]を含んでもよい。センサ信号610はまた、エンジントルク、エンジン回転速度、車両速度、及び加速度ペダル位置などのエンジン雑音を全体的に示す他の車両信号を含んでもよい。センサ信号610はまた、スピーカから再生されるいずれかの音楽または他の音声、及びその周波数依存振幅などの音声のいずれかの関連する特性を示す信号を含んでもよい。その上、車両信号は、コントローラエリアネットワーク(CAN)バスなどの車両ネットワークバス612から拡散コントローラ562によって受信されてもよい。
【0047】
拡散コントローラ562は更に、閾値調節テーブル614を含んでもよい。閾値調節テーブル614は、センサ信号610のうちの1つ以上に基づいて、名目上のSPL閾値TH
nomを動的に修正するために使用される閾値調節値を記憶したルックアップテーブルであってもよい。すなわち、閾値調節テーブル614から調節値ADJ_VALを取得するために、センサ信号610のうちの1つ以上が使用されてもよい。実施形態では、閾値調節テーブル614から調節値ADJ_VALを取得するために、センサ信号610のうちの1つ以上の短期間平均が使用されてもよい。調節値は、調節された閾値TH
adjを取得するよう名目上の閾値と組み合わされてもよい。示されるように、閾値調節値は、加算器616によって示されるような加算演算を通じて名目上の閾値を修正することができる。代わりに、名目上の閾値は、調節された閾値を取得するよう閾値調節値と乗算されてもよい。例えば、前に説明されたように、閾値調節値は、センサ信号610によって示される値(例えば、エンジントルク、加速度計出力など)に比例した因子であってもよい。
【0048】
拡散コントローラは更に、閾値検出器618を含んでもよい。閾値検出器618は、調節された閾値及びエラー信号(または、耐雑音信号)の両方を受信してもよい。閾値検出器618は更に、エラー信号(または、耐雑音信号)を調節された閾値と比較してもよい。特定の実施形態では、閾値検出器618は、エラー信号(または、耐雑音信号)の少なくとも一部の分析に基づいてパラメータを計算してもよい。ANCシステム500の不安定性、雑音上昇、または拡散は、エラー信号または対応するパラメータが調節された閾値を上回る場合に閾値検出器618によって検出されてもよい。不安定性が検出される場合、閾値検出器618は、調節信号を生成してもよく、調節信号は、前に説明されたように、拡散コントローラ562によって適応的フィルタコントローラ520に再度通信される。必然的に、調節信号は、調節された閾値を上回る、エラー信号または対応するパラメータに応答して、制御可能フィルタ518またはLMS適応的フィルタコントローラ520の特質を修正するための命令を含んでもよい。特定の実施形態では、調節信号は、単純に、拡散が検出された適応的フィルタコントローラ520に対する肯定的インジケータであってもよい。他の実施形態では、調節信号は、適応的フィルタコントローラ520によって採用されるべき応答戦略に関する特定の命令を含んでもよい。
【0049】
図7は、拡散コントローラ562についての代替的な実施形態のブロック図である。この実施形態では、拡散コントローラ562は、別個の経路に沿った拡散についてのエラー信号及び耐雑音信号の両方を分析してもよく、両方の着信信号の拡散分析の結果に基づいて結合調節値を計算してもよい。この実施形態では、拡散コントローラ562は、耐雑音信号及びエラー信号の両方についての名目上の閾値TH
nomを記憶または受信してもよい。例えば、エラー信号e
m[n]は、予め定められた名目上の車両動作状態下で、名目上の最小レベル閾値に対して比較されてもよい。同様に、耐雑音信号y
l[n]は、予め定められた名目上の車両動作状態下で、名目上の耐雑音閾値に対して比較されてもよい。前に説明されたように、拡散コントローラ562はまた、1つ以上の車両センサから、車室の内部サウンドスケープに影響を与えることがある現在の車両動作状態を示すセンサ信号610を受信してもよい。
図7に示されるように、センサ信号610は、エフォートカルキュレータ720によって受信されてもよい。エフォートカルキュレータ720は、車室の内部サウンドスケープに影響を与える現在の車両動作状態を示す全体的なエフォート値(effort)を計算する際に複数のセンサ信号を考慮してもよい。
図8は、エフォートカルキュレータ720をより詳細に示す例示的なブロック図である。示されるように、エフォートカルキュレータ720は、複数のエフォート対センサ信号ルックアップテーブル830を含んでもよい。現在の内部サウンドスケープ(例えば、エンジントルク、ペダル位置、加速度計出力など)を示すために使用されるセンサ信号610の各々は、対応するエフォート値成分(すなわち、eff1、eff2…effN)を取得するよう、関連するルックアップテーブル830にフィードされてもよい。エフォート値成分は、エフォートカルキュレータ720によって全体的なエフォート値を生成するよう組み合わされてもよい。
【0050】
図7を再度参照して、拡散コントローラ562は更に、各々の1つが耐雑音信号及びエラー信号に対するものである、閾値調節テーブル714のペアを含んでもよい。閾値調節テーブル714は、エフォート値に基づいて、名目上の閾値TH
nomを動的に修正するために使用される閾値調節値を記憶したルックアップテーブルであってもよい。別個の閾値調節テーブル714は、対応する調節値が所与のエフォート値に対して異なることがあることを理由に、名目上の耐雑音閾値及び名目上の最小レベル閾値の両方に対して提供されてもよい。調節値は、調節された閾値TH
adjを取得するよう、名目上の閾値と組み合わされてもよい。
図6と同様に、各閾値調節値は、各々の1つが耐雑音信号及びエラー信号に対するものである、調節された閾値のペアを取得するよう算術演算子716を通じてそれぞれの名目上の閾値を修正することができる。各調節された閾値は、対応する閾値検出器718によって受信されてもよい。第1の閾値検出器718は、調節された耐雑音閾値及び耐雑音信号(または、耐雑音信号)の両方を受信してもよく、第2の閾値検出器718は、調節された最小レベル閾値及びエラー信号の両方を受信してもよい。閾値検出器718は更に、耐雑音信号を調節された耐雑音閾値と、また、エラー信号を調節された最小レベル閾値とそれぞれ比較してもよい。特定の実施形態では、閾値検出器718は、耐雑音信号及びエラー信号のそれぞれの少なくとも一部の分析に基づいて、パラメータを計算してもよい。
【0051】
ANCシステム500の不安定性または拡散は、入力信号または対応するパラメータがそれらのそれぞれの調節された閾値を上回る場合に、閾値検出器718のいずれかまたは両方によって検出されてもよい。各々の閾値検出器718の出力は、調節カルキュレータ722によって受信されてもよい。調節カルキュレータ722は、前に説明されたように、結合調節出力を、適応的フィルタコントローラ520に通信された調節値として生成してもよい。Lスピーカ524の各々についての1つの耐雑音信号y
l[n]が存在し、Mマイクロフォン512の各々からの1つのエラー信号e
m[n]が存在することを理由に、R×L Wフィルタの全てに対して作用することなく、調節カルキュレータ722が雑音上昇を軽減することが可能である。実施形態では、1つの耐雑音信号の閾値を上回り雑音上昇を示す場合、次いで、この1つの耐雑音信号に組み合わされるR Wフィルタのみが作用することができる。これは、上昇を軽減することができるシステムへの最小の侵襲的変更である。
【0052】
雑音上昇を軽減するために、これらのR Wフィルタ以上になおも作用することが可能である。別の実施形態では、1つのエラー信号e
m[n]がその動的に調節された閾値を上回り、それによって、雑音上昇を示す場合、最も近接したスピーカのWフィルタのみが、上昇を軽減するために作用し得る。更なる別の実施形態では、1つのエラー信号e
m[n]がその動的に調節された閾値を上回り、それによって、雑音上昇を示す場合、このマイクロフォンへのこの最高の大きさの伝達関数S(z)を有するスピーカまたはスピーカ(複数可)のWフィルタのみが、上昇を軽減するために作用し得る。任意選択で、スピーカ信号、または雑音上昇のこの周波数範囲において最高の大きさの伝達関数S(z)を有する信号に寄与するWフィルタのみが作用し得る。代わりに、全てのスピーカが作用し得る。L耐雑音信号が存在することを理由に、L耐雑音信号y
l[n]の1つがその調節された閾値を上回るとき、耐雑音信号に寄与するWフィルタのうちの1つまたは複数に対して軽減をトリガすることができる。
【0053】
図9は、ANCシステム500における拡散されまたは適応誤りされた制御可能Wフィルタの影響を軽減する方法900を記述したフローチャートである。開示される方法の様々なステップは、単独で、またはANCシステムの他の構成要素と共に、のいずれかで、拡散コントローラ562によって実行されてもよい。
【0054】
ステップ910において、拡散コントローラ562は、車室の内部サウンドスケープに影響を与える現在の車両動作状態を示す1つ以上のセンサ信号を受信してもよい。例えば、センサ信号は、振動センサ508などの雑音入力からの雑音信号x
r[n]を含んでもよい。加えて、センサ信号は、エンジントルク、エンジン回転速度、車両速度、及びアクセルペダル位置などの他の車両動作パラメータを示す他の車両信号を含んでもよい。そのような追加のセンサデータは、例えば、車両のコントローラエリアネットワーク(CAN)バスから受信されてもよい。ステップ920において、拡散コントローラ562は更に、ANCシステムの拡散または雑音上昇を検出するための名目上の閾値を受信してもよい。例えば、拡散コントローラ562がエラー信号e
m[n]の分析に基づいてANCシステムの安定性を評価している場合、名目上の閾値は、予め定められた名目上の動作状態下での機室内SPL制限に対応する名目上の最小レベル閾値であってもよい。代わりに、拡散コントローラ562が耐雑音信号y
l[n]の分析に基づいてANCシステムの安定性を評価している場合、名目上の閾値は、予め定められた名目上の動作状態下での耐雑音SPL制限に対応する名目上の耐雑音閾値であってもよい。それらの名目上の閾値は、周波数の1つ以上の小帯域または大帯域に依存した周波数であってもよい。
【0055】
ステップ930において、拡散コントローラ562は、調節された閾値を取得するよう、センサ信号に基づいてANCシステムの拡散を検出するための名目上の閾値を調節してもよい。1つ以上の実施形態により、名目上の閾値を調節することは、センサ信号の短期間平均に基づいてルックアップテーブルから閾値調節値を取り出すこと、及び調節された閾値を取得するよう閾値調節値によって名目上の閾値を修正することを含んでもよい。閾値調節値によって名目上の閾値を修正することは、調節閾値を名目上の閾値に加算すること、または名目上の閾値を閾値調節値と乗算することを含んでもよい。
【0056】
ステップ940において、拡散コントローラ562は、ANCシステムの不安定性を検出するための入力信号を受信してもよく、入力信号の少なくとも一部に基づいて分析を計算してもよい。前に説明されたように、システムの不安定性を検出するための入力信号は、エラー信号e
m[n]または耐雑音信号y
l[n]を含んでもよい。入力信号から計算されたパラメータは、1つ以上の周波数における入力信号の振幅であってもよい。
【0057】
ステップ950において、入力信号、エラー信号または耐雑音信号のいずれかから計算されたパラメータは、対応する調節された閾値と直接比較されてもよい。パラメータが調節された閾値を上回る場合、拡散コントローラ562は、拡散または適応誤りが検出されたと結論付けてもよい。入力信号からのパラメータが閾値を上回らない場合、拡散コントローラ562は、拡散または適応誤りが検出されていないと結論付けてもよい。
【0058】
ステップ960を参照して、調節された閾値を上回り制御可能フィルタの拡散を示すとき、方法は、ステップ970に進んでもよい。ステップ970において、軽減策は、機室内雑音上昇を最小化し、またはWフィルタの拡散のANCの影響を低減するよう拡散された制御可能Wフィルタに適用されてもよい。しかしながら、拡散が検出されないとき、方法は、いずれかの軽減をスキップしてもよく、ステップ910に戻ってもよく、よって、処理を繰り返すことができる。
【0059】
ステップ970において、拡散緩和は、拡散または適応誤りされた時間領域Wフィルタまたは周波数領域Wフィルタのいずれかまたは両方に適用されてもよい。特定の実施形態では、対応策は、Wフィルタ全体または周波数領域Wフィルタについての特定の周波数のみに適用されてもよい。制御可能Wフィルタの全体(時間領域または周波数領域のいずれかにおける)に適用することができる軽減方法は、ANCシステムのメモリに記憶されたフィルタ係数値のセットにフィルタ係数を再適応または設定することを可能にするよう、1つ以上のWフィルタのフィルタ係数をゼロに再設定することを含んでもよい。メモリに記憶されたフィルタ係数値のセットは、拡散が検出されたときより前に経験のあるエンジニアによってチューニングされ、または制御可能フィルタから取得されたWフィルタなど、既知の良好な状態にあるWフィルタからのフィルタ係数値を含んでもよい。例えば、制御可能フィルタは、例えば、拡散の前に10秒または1分を有していたフィルタ係数を使用して再設定されてもよい。代わりに、制御可能Wフィルタは、ANCシステム500が電源投入されたときなど、初期状態に再設定されてもよい。別の軽減技術は、拡散が検出されたときにANCシステムを単純に非活性化またはミュートすることであってもよい。実施形態では、拡散が検出されたとき、拡散されたWフィルタのみが非活性化されてもよく、またはゼロに設定されてもよいが、適応はされ得ない。実施形態では、拡散が検出されたとき、全てのフィルタタップの振幅または全ての周波数領域フィルタ係数の大きさが減少し得る。実施形態では、全ての周波数における漏出の値は、拡散が検出されたときに拡散コントローラ562からの調節信号に応答して、適応的フィルタコントローラ520によって増加し得る。
【0060】
周波数領域アプローチのみを適用する対応策は、拡散された周波数におけるWフィルタ係数または拡散された周波数の近くのWフィルタ係数を減衰させること、及び拡散された周波数における漏出の値または拡散された周波数の近くの漏出の値を追加または増加させることを含んでもよい。周波数領域において適用される軽減についての実施形態では、拡散コントローラ562は、入力信号x
r[n]及びe
m[n]またはそれらの周波数領域の対応するものに対してノッチまたは帯域拒否フィルタを追加することによって、ステップ630において識別された不安定な、拡散された周波数を適応的にノッチアウトすることができる。これは、適応的フィルタコントローラ520がANCシステム500の後の動作において問題となる周波数範囲にあるWフィルタの大きさを増加させることを防止する。これは、任意選択で、上記概説されたWフィルタの再設定、またはそれらの不安定な、拡散された周波数もしくは全ての周波数における漏出の使用を伴うことができる。
【0061】
前に言及されたように、1つ以上の追加の実施形態では、耐雑音信号y
l[n]がその調節された閾値を上回るときなど、拡散が検出されたとき、LMS適応的フィルタコントローラ520において漏出の値が増加し得る。この漏出値は、耐雑音信号y
l[n]がその調節された閾値をなおも上回る限り、
図9に示された処理フローを通じた各々の繰り返しにより予め定められた量だけ継続的に増加し得る。耐雑音信号y
l[n]がその調節された閾値を上回らなくなると、耐雑音信号y
l[n]がその調節された閾値を上回らない限り、
図9に示された処理フローを通じた後続の繰り返しの間に予め定められた量だけ低減し得る。
【0062】
実施形態では、耐雑音信号y
l[n]がその調節された閾値を上回るとき、ANCシステム500における全てのWフィルタに対して漏出が増加することができる。別の実施形態では、特定のスピーカについての耐雑音信号y
l[n]がその調節された閾値を上回るとき、そのスピーカについての全てのWフィルタに対して漏出が増加する。LMSコントローラ520は、拡散コントローラ562から調節信号を受信したことに応答して、漏出値を増加または低減させるよう指示されてもよい。実施形態では、エラー信号e
m[n]がその調節された閾値を上回る場合に、漏出をランプアップする類似の処理をもたらすことができ、それに続いて、その調節された閾値を上回らないことが続く場合に漏出をランプダウンする。
【0063】
前に説明されたように、スピーカ512及び雑音入力(例えば、各々のエンジン運転指令または振動センサ)の各々の組み合わせについての1つの制御可能Wフィルタが存在する。したがって、12個の加速度計、6個のスピーカRNCシステムは、72個のWフィルタ(すなわち、12×6=72)を有し、5個のエンジン運転指令、6個のスピーカEOCシステムは、30個のWフィルタ(すなわち、5×6=30)を有する。
図9に示された方法9000は、必要とされる計算電力を減少させ、それによって、CPUサイクルを節約するために、Wフィルタのあらゆる新たなセットが計算された後に実行されてもよく、または少ない頻度で実行されてもよい。
【0064】
センサ出力電圧を調節値と乗算すること、またはセンサ出力電圧を調節値によって除算することは、閾値を調節値によって除算すること、または閾値を調節値と乗算することと同一の効果を有することができることに留意されたい。すなわち、代替的な実施形態では、検出閾値を調節するのではなく、信号y
l[n]及び/またはe
m[n]を調節することができる。
図9からわずかに修正されたフローがもたらされるが、検出閾値設定はなおも機能する。
【0065】
図1、3、及び5は、LMSに基づく適応的フィルタコントローラ120、320、及び520のそれぞれを示すが、最適な制御可能Wフィルタ118、318、及び518に適応または作成する他の方法及びデバイスが可能である。例えば、1つ以上の実施形態では、LMS適応的フィルタコントローラの代わりに、Wフィルタを作成及び最適化するために、ニューラルネットワークが採用されてもよい。他の実施形態では、LMS適応的フィルタコントローラの代わりに、最適なWフィルタを作成するために機械学習または人工知能が使用されてもよい。
【0066】
上記明細書では、特定の例示的な実施形態を参照して発明的主題が説明されてきた。しかしながら、特許請求の範囲に示されるような発明的主題の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更が行われてもよい。明細書及び図面は、限定的ではなく例示的であり、修正は、発明的主題の範囲内に含まれることが意図される。したがって、発明的主題の範囲は、単に説明される例によってではなく、特許請求の範囲及びそれらの法的同等物によって判定されるべきである。
【0067】
例えば、いずれかの方法または処理の請求項に記載されたステップは、いずれかの順序で実行されてもよく、請求項に存在する特定の順序に限定されない。信号雑音の影響を最小化するために、フィルタと共に方程式が実施されてもよい。加えて、いずれかの装置の請求項に記載された構成要素及び/または要素は、様々な順列において組み立てられてもよく、またはそうでない場合、動作可能に構成されてもよく、したがって、請求項に記載された特定の構成に限定されない。
【0068】
当業者は、時間領域または周波数領域のいずれかにおいて機能的に同等の処理ステップを開始することができることを理解する。したがって、図面、特に、
図1〜3において各々の信号処理ブロックについて明確に述べられていないが、信号処理は、時間領域、周波数領域、またはそれらの組み合わせのいずれかにおいて行われてもよい。その上、デジタル信号処理の典型的な観点において様々な処理ステップが説明されてきたが、本開示の範囲から逸脱することなく、アナログ信号処理を使用して、同等のステップが実行されてもよい。
【0069】
利点、有利な点、及び課題への解決策が特定の実施形態に関して上記説明されてきた。しかしながら、いずれかの利点、有利な点、課題への解決策、またはいずれかの特定の利点、有利な点、もしくは解決策を行わせることができ、もしくはより顕著にすることができるいずれかの要素は、いずれかまたは全ての請求項の重要な、必要とされる、または必須の特徴もしくは構成要素として解釈されないことになる。
【0070】
用語「備える(comprise)」、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、「含む(includes)」、またはそれらのいずれかの変形は、非排他的な包含を参考にすることを意図しており、その結果、要素のリストを含む処理、方法、品目、構成物、または装置は、記載されたそれらの要素のみでなく、明確にリスト化されておらず、またはそのような処理、方法、品目、構成物、もしくは装置に本来備わった他の要素をも含んでもよい。特に記載されていないものに加え、発明的主題の実施に使用される上記説明された構造、排列、適用、比率、要素、材料、または構成要素の他の組み合わせ及び/または修正は、その一般原理から逸脱することなく、変わってもよく、またはそうでない場合、特定の環境、製造仕様、設計パラメータ、もしくは他の動作要件に特に適応してもよい。