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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-184103(P2020-184103A)
(43)【公開日】2020年11月12日
(54)【発明の名称】信号制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/07 20060101AFI20201016BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20201016BHJP
   G04G 5/00 20130101ALI20201016BHJP
【FI】
   G08G1/07 C
   G08G1/09 D
   G04G5/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-86577(P2019-86577)
(22)【出願日】2019年4月26日
(71)【出願人】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】白畑 匡秀
【テーマコード(参考)】
2F002
5H181
【Fターム(参考)】
2F002AF01
2F002FA16
5H181AA01
5H181AA21
5H181BB04
5H181JJ02
5H181JJ12
5H181JJ17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】内部時刻の修正精度を高めつつ、時刻修正処理の負荷の軽減を図ることができる信号制御装置を提供する。
【解決手段】信号制御装置10は、内部時計311と、信号生成部312と、取得部32と、時刻管理部313とを具備する。内部時計は、内部時刻を計時する。信号生成部は、内部時刻に基づいて信号灯器を制御するための制御信号を生成する。取得部は、時刻情報及びその同期信号を取得する。時刻管理部は、時刻情報を取得したときに、同期信号に基づいて時刻情報の起点となる基準時刻を検出する時刻検出処理と、時刻情報及び基準時刻に基づいて内部時刻を修正する時刻修正処理とを異なるタスクで実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部時刻を計時する内部時計と、
前記内部時刻に基づいて信号灯器を制御するための制御信号を生成する信号生成部と、
時刻情報及びその同期信号を取得する取得部と、
前記時刻情報を取得したときに、前記同期信号に基づいて前記時刻情報の起点となる基準時刻を検出する時刻検出処理と、前記時刻情報及び前記基準時刻に基づいて前記内部時刻を修正する時刻修正処理とを異なるタスクで実行する時刻管理部と
を具備する信号制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の信号制御装置であって、
前記時刻管理部は、ミリ秒単位である第1の周期で前記同期信号をサンプリングすることで前記基準時刻を検出し、前記第1の周期よりも長い第2の周期で前記内部時刻を修正する
信号制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の信号制御装置であって、
前記第1の周期は、1ミリ秒であり、
前記第2の周期は、10ミリ秒である
信号制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の信号制御装置であって、
現在時刻に関連する情報を含む電波を受信し、前記取得部へ前記時刻情報を送信する通信端末をさらに具備する
信号制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部時計を備えた信号制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交通信号機などの交通設備の制御を行うために、複数の交通制御機器の間で交通データの送受信を行う交通制御システムが知られている。例えば、交通制御システムは、交通管制センターに設置された中央装置と、信号灯器を制御する信号制御装置と、交通データを取得する車両感知器や光ビーコン等の端末装置などを含む。
【0003】
中央装置は、端末装置で取得された交通データを基に車両の有無を判断し、信号制御パラメータを決定して、信号制御装置へ送信する。信号制御装置は、受信した信号制御パラメータに基づき、信号灯器の階梯制御を実行する。一般的な信号制御装置は、信号灯器の階梯制御は、時刻に同期しない。時刻に同期しない信号制御装置は、通信回線を用いて、中央装置の時刻を信号制御装置に送信し、修正する機能を持つ。時刻に同期した制御を実施する信号制御装置は、通信回線を使用して、交通管制センターに設置されるタイムサーバに一定時間間隔でアクセスし、内蔵する内部時計の時刻(以下、内部時刻ともいう)を修正する機能をもつ。
【0004】
一方、GPS(Global Positioning System)アンテナにて受信した電波に基づいて時刻情報を取得し、当該時刻情報を基に内部時刻を修正する機能を備えたスタンドアローン型の信号制御装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−296879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スタンドアローン型の信号制御装置は、GPS信号を受信する受信部から時刻情報とともに送信される同期信号を検出して、内部時刻を修正する。したがって、同期信号の検出精度が低いと時刻情報との誤差が大きくなる。この場合、次階梯の歩進タイミング及び次サイクルのサイクル開始タイミングがずれてしまうという問題がある。中央装置と接続する交通信号装置においても通信回線を用いて内部時計の修正を行うが、内部時計は歩進タイミングと同期していないため、スタンドアローン型の信号制御装置と同じ問題を持つ。
【0007】
特に近年、プローブデータを利用して安全運転支援やエコドライブ支援に役立つ交通パラメータを提供する運転支援システム(ITS:Intelligent Transport System)の開発が進められている。このシステムでは、路線に設置された信号機の灯色情報を路側アンテナから車載器へ送信し、交通状況や運転シーンに応じた適正な速度や情報をドライバへ提供することを可能とする。しかし、次階梯の歩進タイミング及びサイクル開始タイミングにずれが生じると、車載器に送信される灯色情報が実際の灯色情報と異なってしまい、時々刻々と変化する灯色情報を適切なタイミングで安定に提供することが困難となる。
【0008】
したがって、同期信号の検出精度を高めるに、同期信号のサンプリング周波数を高くする必要がある。一方、同期信号を検出する一連の手順で内部時刻の修正処理を実行する処理を行うと、システムの負荷が非常に高くなるという問題がある。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、内部時刻の修正精度を高めつつ、時刻修正処理の負荷の軽減を図ることができる信号制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態に係る信号制御装置は、内部時計と、信号生成部と、取得部と、時刻管理部とを具備する。
前記内部時計は、内部時刻を計時する。
前記信号生成部は、前記内部時刻に基づいて信号灯器を制御するための制御信号を生成する。
前記取得部は、時刻情報及びその同期信号を取得する。
前記時刻管理部は、前記時刻情報を取得したときに、前記同期信号に基づいて前記時刻情報の起点となる基準時刻を検出する時刻検出処理と、前記時刻情報及び前記基準時刻に基づいて前記内部時刻を修正する時刻修正処理とを異なるタスクで実行する。
【0011】
上記信号制御装置においては、同期信号を検出する処理と内部時刻を修正する処理とを異なるタスクで実行するように構成される。これにより、同期信号の検出処理と内部時刻の修正処理とを1つのタスクで処理する場合と比較して、内部時刻の修正精度を高めつつ、時刻修正処理の負荷の軽減を図ることができる。
【0012】
典型的には、前記時刻管理部は、ミリ秒単位である第1の周期で前記同期信号をサンプリングすることで前記基準時刻を検出し、前記第1の周期よりも長い第2の周期で前記内部時刻を修正するように構成される。
【0013】
前記第1の周期は、1ミリ秒であってもよいし、前記第2の周期は、10ミリ秒であってもよい。
【0014】
前記信号制御装置は、現在時刻に関連する情報を含む電波を受信し前記取得部へ前記時刻情報を送信する通信端末をさらに具備してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の信号制御装置によれば、内部時刻の修正精度を高めつつ、時刻修正処理の負荷の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】交通制御システムの概略構成図である。
図2】上記交通制御システムが適用される道路交差点の模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る信号制御装置の構成を示すブロック図である。
図4】時刻情報及び同期信号との関係を示す概略図である。
図5】基準時刻の検出方法の一例を示す説明図である。
図6】上記信号制御装置の時刻検出部において実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7】上記信号制御装置の時刻修正部において実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8】上記時刻検出部の構成の変形例を示す模式図である。
図9図8の時刻検出部の作用の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
[交通制御システム]
図1は、本発明の一実施形態に係る交通制御システム100の概略構成図、図2は交通制御システム100が適用される道路交差点の模式図である。本実施形態では、一例として、ITS機能を有する交通制御システムを例に挙げて説明する。
【0019】
本実施形態の交通制御システム100は、信号制御装置10と、路側アンテナ20と、交通管制センター50とを備える。
【0020】
信号制御装置10は、図2に示すように、東西方向(図中左右方向)および南北方向(図中上下方向)に延びる道路R1,R2に設置された車両用灯器1V,2Vと、各道路の横断歩道に設置された歩行者用灯器1P,2Pと、を含む複数の信号灯器を制御する。
【0021】
信号制御装置10は、商用電源を電力源に用いて、予め設定された点灯時間(現示秒数)及び周期で各信号灯器の発光(青、黄、赤)を制御する。信号制御装置10は、典型的には、信号機Sの支柱に取り付けられた制御ボックス(図示略)に設置され、各灯器1V,2V,1P,2Pにそれぞれ有線で電気的に接続される。以下、個別に説明する場合を除き、各灯器1V,2V,1P,2Pを信号灯器1とも総称する。
【0022】
信号制御装置10は、交通管制センター50及び路側アンテナ20と通信可能に構成される。
【0023】
路側アンテナ20は、信号機Sが設置される道路(あるいは路線)R1,R2を走行する車両Vと通信可能に構成され、車両用灯器1V,2Vに関する灯色情報を車両Vへ送信することが可能に構成される。車両Vには図示せずとも、路側アンテナ20から送信される灯色情報を受信可能な車載器のほか、当該灯色情報に基づいて運転者へ車両用灯器1V,2Vに関連する情報を提示するデバイス(ディスプレイ、スピーカなど)が設置される。
【0024】
灯色情報は、車両Vの進行方向前方に位置する信号機の灯色に関連する情報であって、典型的には、送信時の時刻情報、車両Vの通過時における信号機の灯色及びその次階梯までの残時間(残秒数)を含む。これにより、走行する車両Vに対しては、信号通過支援や赤信号減速支援等の運転支援情報を提供することが可能となる。また、車両Vが自動運転車両の場合、車両自身に当該灯色情報を利用して自律的に制動制御を判断させることを可能とする。
【0025】
路側アンテナ20は、信号制御装置10とは独立して設置される場合に限られず、信号制御装置10の内部に設置されてもよい。つまり、信号制御装置10は、自ら灯色情報を送信する送信機能を有してもよい。
【0026】
[信号制御装置]
続いて、信号制御装置10の詳細について説明する。図3は、信号制御装置10の構成を示すブロック図である。
【0027】
信号制御装置10は、主制御ユニット11と、伝送部12と、灯器開閉器13とを備える。
【0028】
主制御ユニット11は、信号灯器1の動作を制御する。伝送部12は、路側アンテナ20および管制センター50と無線又は有線で通信可能な通信モジュールである。伝送部12は、管制センター50より、信号灯器1を制御するための制御設定情報を取得する。灯器開閉器13は、主制御ユニット11の指示に基づき、信号灯器1の点灯あるいは消灯を制御する切替回路を有する。
【0029】
主制御ユニット11は、制御部31と、取得部32と、タイマー33と、メモリ34と、バックアップ時計(ハードウェア時計)35とを有する。
【0030】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)を含むコンピュータであり、主制御ユニット11の動作を統括的に制御する。制御部31は、内部時計(ソフトウェア時計)311と、信号生成部312と、時刻管理部313と、タイマー管理部316とを有する。
【0031】
内部時計311は、タイマー33からの出力に基づいて、少なくともミリ秒単位の内部時刻を計時する。信号生成部312は、内部時刻に基づいて信号灯器1(灯器開閉器13)を制御するための制御信号を生成する。時刻管理部313は、後述するように、取得部32で取得した時刻情報に基づき、内部時計311及びバックアップ時計35を校正する。タイマー管理部316は、タイマー33の出力に基づき、時刻管理部313において実行される後述の各種処理の動作タイミングを管理する。
【0032】
取得部32は、通信端末40から現在時刻に関する時刻情報を取得する受信回路で構成される。通信端末40は、GPS衛星60から送信される電波(GPS信号)を受信可能なアンテナを含む端末装置である。通信端末40は、受信電波から時刻情報を生成し、その起点を検出するための同期信号とともに取得部32へ出力する時刻修正ユニットを内蔵する。
【0033】
時刻修正ユニットは、例えば、電波時計などを含んでもよい。時刻修正ユニットから取得部32への時刻情報の送信には、外部からのノイズに対応するため、平衡デジタルインターフェース回路の電気的特性をもつRS422等のインターフェースが使用される。
【0034】
なお、時刻情報及び同期信号は、通信端末40から送信されるGPS信号を基に、取得部32において生成されるように構成されてもよい。また、通信端末40は、信号制御装置10とは独立した機器で構成されてもよいし、信号制御装置10に内蔵されていてもよい。
【0035】
メモリ34は、制御部31において実行される各種処理のプログラムを記憶する不揮発性の半導体メモリ等で構成される。メモリ34は、伝送部12を介して取得した各信号灯器1の制御設定情報や、取得部32を介して取得した時刻情報、灯色出力履歴などを記憶する。制御設定情報とは、典型的には、信号灯器1の信号機定数をいう。信号機定数には、階梯表、サイクル、スプリット、オフセット、時限表、感応秒数などが含まれる。
【0036】
タイマー33は、水晶発振器や、当該水晶発振器の発振回数をカウントして内部時計311における計時機能に必要なクロックを出力するカウンター回路等を内蔵する。ハードウェア時計35は、バックアップ用の時計であって、水晶発振器やカウンター回路、補助バッテリなどを内蔵する。ハードウェア時計35は、信号処理装置10に内蔵される場合に限られず、外部機器として信号処理装置10に外付けされてもよい。
【0037】
[時刻管理部]
続いて、時刻管理部313の詳細について説明する。
【0038】
時刻管理部313は、時刻検出部314と時刻修正部315とを有し、同期信号の検出処理と内部時刻の修正処理とを異なるタスクで実行する。
【0039】
(時刻検出処理)
時刻検出部314は、取得部32が通信端末40から時刻情報を受信したときに、時刻情報とともに送信される同期信号を基に、時刻情報の起点となる基準時刻を検出する処理を実行する。本実施形態において時刻検出部314は、所定の周波数で同期信号をサンプリングすることで、基準時刻を検出する。
【0040】
図4は、時刻情報及び同期信号との関係を示す概略図である。図4に示すように、時刻情報T1は、現在時刻を表すシリアル信号であって、1秒ごとに送信される。同期信号T2は、正秒に同期して立ち上がるパルス波(パルス信号)であり、そのデューティ比は、例えば、20%である。時刻検出部314は、同期信号T2の立ち上がり時刻を検出し、その時刻を時刻情報T1の起点となる基準時刻としてメモリ34へ格納する。
【0041】
図5は、基準時刻の検出方法の一例を示す説明図である。図6は、時刻検出部314において実行される基準時刻の検出処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0042】
時刻検出部314は、時刻修正実施タイミングに該当するか否かを判定し、時刻修正実施タイミングに該当するときは修正時刻受信許可フラグを1(ON)に設定する(ステップ101,102)。
【0043】
時刻修正実施タイミングは任意に設定でき、例えば、信号制御装置10の起動時や、信号制御装置10の起動時から所定時間(例えば30分)経過したとき、予め設定された時刻に達したとき、管制センター50から時刻修正指示を受信したとき、などが挙げられる。
【0044】
修正時刻受信許可フラグが1になると、時刻検出部314は、取得部32が通信端末40から時刻情報T1を受信したか否かを判定し、受信したときはその時刻情報T1に含まれる時刻を修正時刻としてメモリ34へ保存する(ステップ103,104)。続いて、時刻検出部314は、同期信号サンプリング許可フラグを1(ON)に設定し、同期信号T2のサンプリング処理を実行する(ステップ105)。
【0045】
同期信号のサンプリング処理は、図5に示すように、時刻情報T1を受信してから同期信号T2が有意(Hレベル)の状態になるまで、所定のサンプリング周期(第1の周期)で同期信号T2をサンプリングする。本実施形態では、1ミリ秒間隔の動作タイミングで同期信号T2をサンプリングし、同期信号T2が有意であると判定した時刻(図5の例では時刻t5)をもって同期信号を検出したことを表す「ON」判定を実行する(ステップ106においてYes)。
【0046】
なお、同期信号の検出方法として、同期信号の有意レベルを所定回数連続して検出したときに初めて「ON」判定する技術を採用することで、同期信号に重畳したノイズに起因する誤検出を防ぐことができる。しかしこの方法では、上記所定回数が多いほど同期信号の検出誤差が大きくなる。これに対して本実施形態では、平衡デジタルインターフェース回路の電気的特性をもつRS422等のインターフェースを介して時刻情報及び同期信号を取得することで、当該インターフェースで同期信号に重畳したノイズを減殺させる。これにより、同期信号の検出判定が1回のみの場合でも、誤検出なく安定に同期信号を検出することができる。
【0047】
同期信号の「ON」判定を実行したとき、時刻検出部314は、時刻修正要求フラグをONにし、後述する時刻修正部315における時刻修正処理が10ミリ秒後に起動するように、時刻修正処理の動作基準タイマーをリセットする(ステップ107)。
【0048】
その後、時刻検出部314は、同期信号サンプリング許可フラグ及び修正時刻受信許可フラグをそれぞれ0(OFF)にし、時刻検出処理を終了する(ステップ108,109)。その後、時刻修正実施タイミングが到来したとき、再び上述の処理を実行する。
【0049】
(時刻修正処理)
時刻修正部315は、内部時計311の内部時刻を修正する処理を実行する。図7は、時刻修正部315において実行される内部時刻の修正処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0050】
時刻修正部315において実行される時刻修正処理は、上述の時刻検出処理とは別のタスクであり、時刻修正処理の実行の有無に関係なく、予め設定された動作タイミングで実行される。本実施形態において時刻修正部315は、時刻検出部314における同期信号T2のサンプリング周期(第1の周期、1ミリ秒)よりも長い動作タイミング(第2の周期、10ミリ秒)で以下の時刻修正処理を実行する。
【0051】
時刻修正部315は、動作基準タイマーが動作タイミングに到達したか否かを判定する(ステップ201)。動作基準タイマーが動作タイミングに到達したとき、時刻修正部315は、時刻修正要求フラグがONであるか否かを判定する(ステップ202)。時刻修正要求フラグは、上述の時刻検出処理における同期信号T2の検出が完了していればONであり(ステップ107)、検出が完了していなければ(ステップ202においてNo)、内部時刻を10ミリ秒加算して処理を終了する。このとき、内部時刻のミリ秒単位はそのまま維持される。
【0052】
一方、時刻修正要求フラグがONの場合(ステップ202においてYes)、時刻修正部315は、上記ステップ104においてメモリ34に格納された修正時刻に基づいて、内部時計311を校正する。時刻修正部315は、メモリ34から修正時刻を読み出し、その修正時刻に動作基準タイマーの動作タイミングである10ミリ秒を加算した時刻に内部時刻を修正する(ステップ204)。これにより、ミリ秒単位で内部時計311の計時時刻が修正される。時刻修正部315はさらに、バックアップ時計35の時刻を内部時刻と同時刻に修正する(ステップ205)。
【0053】
内部時計311及びバックアップ時計35の時刻を修正後、時刻修正部315は、時刻修正実施履歴をメモリ34に保存する(ステップ206)。なお、当該処理は、時刻修正処理の中で行われる場合に限られず、別のタスクにおいて異なる動作タイミングで実行されてもよい。この処理により、メモリ34に保存された各信号灯器1の制御設定情報の時刻情報が更新される。
【0054】
(作用効果)
以上のように本実施形態の信号制御装置10においては、同期信号を検出する処理と内部時刻を修正する処理とを異なるタスクで実行するように構成される。これにより、同期信号の検出処理と内部時刻の修正処理とを1つのタスクで処理する場合と比較して、内部時刻の修正精度を高めつつ、時刻修正処理の負荷の軽減を図ることができる。
【0055】
すなわち、本実施形態では、同期信号の検出処理を1ミリ秒単位で実行し、内部時刻の修正処理を10ミリ秒単位で実行する。同期信号の検出動作周期は短いほど、時刻検出をより高精度に行うことができ、検出誤差を1ミリ秒以下に抑えることができる。
【0056】
一方、時刻検出動作と同一のタイミングで内部時刻の修正を行う場合、システムの処理負荷が著しく高くなり、信号制御装置10の他の処理に影響を与えるおそれがある。これに対して本実施形態においては、時刻検出動作と内部時刻の修正動作とを異なるタスクに分割し、内部時刻修正の動作タイミングを時刻検出の動作タイミングよりも長くすることで、内部時刻の修正精度を高めつつ、システムの処理負荷の軽減を図るようにしている。
【0057】
特に本実施形態によれば、時刻検出の動作タイミングを時刻情報の受信後、同期信号の有意レベルを検出するまでの限られた検出期間に制限できるため(図5参照)、システム負荷の軽減にさらに貢献することができる。
【0058】
本実施形態の信号制御装置10によれば、内部時刻の現在時刻からの誤差を1ミリ秒以下に抑えることができるため、各信号灯器1の点灯タイミングを高精度に制御することができる。これにより、次階梯の歩進タイミング及びサイクル開始タイミングにずれが生じるのを抑えることができる。また、隣接する他の信号機との間における信号灯器の点灯及び消灯タイミングを高精度に同期させることができるため、同期ずれに起因する交通渋滞の発生を効果的に防ぐことができる。また、メモリ34に保存される灯色出力履歴の時刻精度が高まるため、後から参照した場合でも、いつどんな灯色が出ていたかが把握しやすくなる。
【0059】
さらに、内部時刻の誤差を小さくできるため、路側アンテナ20を介して車両Vへ送信される灯色情報の時刻パラメータの精度が高まり、信頼性の高い運転支援システムを確保することができる。これにより、交通状況や運転シーンに応じた適正な速度や情報をドライバへ提供することが可能となる。また、自動運転車両にとっては高精度な制動制御が可能となる。
【0060】
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0061】
例えば以上の実施形態では、同期信号の検出動作タイミングを1ミリ秒としたが、これに限られず、数ミリ秒であってもよいし、サブミリ秒であってもよい。同様に、内部時刻の修正動作タイミングは10ミリ秒に限られず、数十ミリ秒であってもよい。つまり、システムの負荷や能力に応じて、時刻検出及び時刻修正のタイミングを適宜設定することができる。
【0062】
また、以上の実施形態では、時刻検出部314が同期信号の検出動作を同期信号のサンプリング処理で行うように構成されたが、ハードウェアを用いた割り込み処理で同期信号を検出するように構成されてもよい。この場合、図8及び図9に模式的に示すように、時刻検出部314は、割込みコントローラを備え、時刻情報T1の受信時に割込み処理を許可し、同期信号T2の立ち上がりがハードウェアで検出された時刻に、時刻修正処理の動作基準タイマーをリセットする(ステップ107)ように構成されてもよい。このような構成においても同期信号を1ミリ秒以下の誤差で検出することができる。
【0063】
さらに以上の実施形態では、GPS信号を用いた時刻同期を例に挙げて説明したが、これに限られず、例えば、標準電波送信所から送信される電波(電波時計)を取得して、内部時刻を修正することも可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…信号灯器
10…信号制御装置
11…主制御ユニット
31…制御部
32…取得部
33…タイマー
34…メモリ
35…バックアップ時計
40…通信端末
311…内部時計
312…信号生成部
313…時刻管理部
314…時刻検出部
315…時刻修正部
316…タイマー管理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9