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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-184418(P2020-184418A)
(43)【公開日】2020年11月12日
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/58 20060101AFI20201016BHJP
   H01R 4/48 20060101ALI20201016BHJP
【FI】
   H01R13/58
   H01R4/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-86646(P2019-86646)
(22)【出願日】2019年4月26日
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】石上 雅晃
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙介
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB02
5E021FB07
5E021FC02
5E021FC36
5E021GA05
5E021GB20
5E021HC09
(57)【要約】
【課題】本発明は、電気コネクタの端子の単線接続部に接続された単線の先端部が軸回りに回転することを抑制し、単線がハウジングから抜去されることを抑制することを目的とする。
【解決手段】本発明の電気コネクタ1は、ハウジング2と、単線Wが接続される端子3と、保持部材4とを備え、保持部材4は、単線Wをハウジング2の内部から外部へと導出する導出部44を有し、導出部44は、単線接続部32における単線Wの先端部W11の軸X方向に対して交差するように所定の延在方向へと屈曲して延びる単線Wを導出するように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単線が接続され、相手側コネクタに電気的に接続される電気コネクタであって、前記電気コネクタが、
ハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記単線が接続される端子と、
前記ハウジングの、前記単線が接続される側の端部に取り付けられ、前記単線を所定の延在方向に保持する保持部材とを備え、
前記端子は、
前記単線の先端部が挿入される挿入口を有する単線挿入部と、前記単線の先端部に電気的に接続される単線接続部と、前記相手側コネクタの相手側端子に電気的に接続される相手側端子接続部とを有し、
前記保持部材および/またはハウジングは、前記単線を前記ハウジングの内部から外部へと導出する導出部を有し、
前記導出部は、前記単線接続部における前記単線の先端部の軸方向に対して交差するように前記所定の延在方向へと屈曲して延びる単線を導出するように構成されている、
電気コネクタ。
【請求項2】
前記導出部は、
前記単線の先端部が前記先端部の軸回りに回転しないように、前記単線と当接する一対の壁部を有している、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記単線接続部は、前記単線の先端部を両側から挟み込む一対の接点バネ部を備えている、請求項1または2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記保持部材が、前記ハウジングの側面に設けられた被係合部と係合する係合部を有し、前記係合部は、前記導出部に隣接した位置に設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記保持部材が、前記単線の先端部の軸方向に対して垂直な方向に延びる押圧面を有している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記保持部材および/またはハウジングが、前記導出部において導出される単線の延在方向以外の第2の方向に前記単線が屈曲した場合に、前記単線を前記第2の方向に導出可能な第2導出部をさらに有している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記保持部材が、前記単線が前記単線の先端部の軸方向に沿って延びる場合に、前記単線を導出可能な第3導出部をさらに有している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電線同士を電気的に接続する際や、電線を基板に電気的に接続する際に、電気コネクタが用いられている。このような電気コネクタは、端子を有するハウジングと、端子に接続される電線を有している。電気コネクタに用いられる電線としては、単線および撚線が用いられている。これらのうち単線は、1本の導体と、導体を被覆する被覆とによって構成されている。単線の先端部においては、被覆が除去されて導体の外周が露出しており、単線の先端部の露出した導体は、たとえば、特許文献1に示されるように、一対の板バネ状の接続片の間に挟持されて、電気コネクタの端子と単線とが電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−11990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気コネクタに用いられる単線は、撚線とは異なり、相対的に太くて剛性の高い1本の導体で構成されている。したがって、たとえば、電気コネクタを相手側コネクタに組み付ける前後など、単線の軸回りに回転力が加わると、撚線のように軸回りに捻じれるのではなく、単線の被覆部分と、単線の端子に接続された部位とは共に軸回りに回転する。
【0005】
このように、単線の導体とハウジングの端子との間の接続部位において、導体の軸回りに回転力が加わると、端子に挟み込まれた導体は、ハウジングの端子に対して回転して、ハウジングから容易に引き抜かれてしまう。
【0006】
そこで、本発明はかかる問題点に鑑みて、電気コネクタの端子の単線接続部に接続された単線の先端部が軸回りに回転することを抑制し、単線がハウジングから抜去されることを抑制することができる、電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気コネクタは、単線が接続され、相手側コネクタに電気的に接続される電気コネクタであって、前記電気コネクタが、ハウジングと、前記ハウジングに設けられ、前記単線が接続される端子と、前記ハウジングの、前記単線が接続される側の端部に取り付けられ、前記単線を所定の延在方向に保持する保持部材とを備え、前記端子は、前記単線の先端部が挿入される挿入口を有する単線挿入部と、前記単線の先端部に電気的に接続される単線接続部と、前記相手側コネクタの相手側端子に電気的に接続される相手側端子接続部とを有し、前記保持部材および/またはハウジングは、前記単線を前記ハウジングの内部から外部へと導出する導出部を有し、前記導出部は、前記単線接続部における前記単線の先端部の軸方向に対して交差するように前記所定の延在方向へと屈曲して延びる単線を導出するように構成されている。
【0008】
また、前記導出部は、前記単線の先端部が前記先端部の軸回りに回転しないように、前記単線と当接する一対の壁部を有していることが好ましい。
【0009】
また、前記単線接続部は、前記単線の先端部を両側から挟み込む一対の接点バネ部を備えていることが好ましい。
【0010】
また、前記保持部材が、前記ハウジングの側面に設けられた被係合部と係合する係合部を有し、前記係合部は、前記導出部に隣接した位置に設けられていることが好ましい。
【0011】
また、前記保持部材が、前記単線の先端部の軸方向に対して垂直な方向に延びる押圧面を有していることが好ましい。
【0012】
また、前記保持部材および/またはハウジングが、前記導出部において導出される単線の延在方向以外の第2の方向に前記単線が屈曲した場合に、前記単線を前記第2の方向に導出可能な第2導出部をさらに有していることが好ましい。
【0013】
また、前記保持部材が、前記単線が前記単線の先端部の軸方向に沿って延びる場合に、前記単線を導出可能な第3導出部をさらに有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電気コネクタによれば、電気コネクタの端子の単線接続部に接続された単線の先端部が軸回りに回転することを抑制し、単線がハウジングから抜去されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態の電気コネクタおよび基板に接続された相手側コネクタを示す分解斜視図である。
図2図1の電気コネクタが相手側コネクタに接続された状態を示す斜視図である。
図3】電気コネクタに単線が接続された状態で、単線を縦断するように切断した断面図である。
図4図3と同様の断面で切断した斜視図である。
図5図4の断面を別の角度から見た斜視図である。
図6】単線が接続された状態を示す端子の部分断面図である。
図7】保持部材の斜視図である。
図8】保持部材を第1係合部側から見た側面図である。
図9】保持部材を第2係合部側から見た側面図である。
図10】第2導出部が設けられた電気コネクタの変形例を示す斜視図である。
図11】第2導出部が設けられた電気コネクタの変形例を示す断面図である。
図12】第3導出部が設けられた電気コネクタの変形例を示す斜視図である。
図13】第3導出部が設けられた電気コネクタの変形例を示す断面図である。
図14】ハウジングに導出部が設けられた電気コネクタの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の電気コネクタの実施形態を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の電気コネクタは、以下の実施形態に限定されない。
【0017】
図1および図2に示されるように、電気コネクタ1は、単線Wと相手側コネクタCとを電気的に接続する。本実施形態では、複数の単線Wが接続された電気コネクタ1を相手側コネクタCに嵌合することによって、電気コネクタ1が相手側コネクタCに電気的に接続される。なお、本明細書において単線Wとは、単一の(撚線ではない1本の)導体(芯線)W1と、導体W1の外周を被覆する被覆W2とを有する電線である。後述する電気コネクタ1の端子3に接続される部分となる単線Wの先端部W11は、図1に示されるように、被覆W2が取り除かれて導体W1が露出している。
【0018】
本実施形態では、電気コネクタ1は、図2に示されるように、相手側コネクタCを介して基板Bに接続されている。なお、電気コネクタ1および相手側コネクタCは、本実施形態では、基板接続用のコネクタとして示されているが、電気コネクタおよび相手側コネクタは、基板接続用のコネクタに限定されず、電線対電線コネクタなど、他の用途のコネクタであってもよい。また、本実施形態では、電気コネクタ1が雌コネクタであり、相手側コネクタが雄コネクタであるが、電気コネクタが雄コネクタであり、相手側コネクタが雌コネクタであってもよい。電気コネクタ1の詳細については後述するが、電気コネクタ1は、図1に示されるように、ハウジング2と、端子3と、保持部材4とを備えている。
【0019】
相手側コネクタCは、電気コネクタ1に接続されるコネクタである。本実施形態では、相手側コネクタCは、回路パターン(図示せず)が形成された基板Bに実装されている。電気コネクタ1は、相手側コネクタCに対して基板Bに対して略垂直な方向に嵌合接続される。なお、電気コネクタ1は、相手側コネクタCに対して基板Bに略平行な方向に嵌合接続されてもよい。また、相手側コネクタCは、基板Bに実装されていない電線を有するコネクタであってもよい。
【0020】
相手側コネクタCは、図1に示されるように、電気コネクタ1のハウジング2に接続される基部C1と、基部C1に設けられた複数の相手側端子C2とを備えている。
【0021】
基部C1は、相手側端子C2が設けられ、電気コネクタ1のハウジング2に接続される。基部C1は、たとえば、絶縁性を有する樹脂材料によって形成される。基部C1の形状や構造は特に限定されず、用いられるコネクタの用途に応じて適宜変更される。本実施形態では、基部C1は基板Bに実装され、複数の(4本の)相手側端子C2が基板Bに対して垂直に延びるように相手側端子C2を支持している。基部C1は、相手側端子C2が挿通される端子台C11と、端子台C11から基板Bに対して略垂直に延びる相手側係合片C12を有している。端子台C11は基板Bの表面に設けられた、略直方体状の部材である。相手側係合片C12は板状に形成され、後述するハウジング2のハウジング側係合片Eと係合する爪を自由端に有している。
【0022】
相手側端子C2は、電気コネクタ1の端子3に接続される端子である。電気コネクタ1の端子3と相手側端子C2とが接続されることによって、電気コネクタ1と相手側コネクタCとが電気的に接続される。相手側端子C2の形状や構造は、電気コネクタ1の端子3に接続されて、電気コネクタ1と相手側コネクタCとを電気的に接続することができれば、特に限定されず、電気コネクタ1の端子3の形状に応じて適宜変更することができる。本実施形態では、相手側端子C2は、導電性を有する材料によって形成されたピン状の端子である。相手側端子C2は、基板Bに対して略垂直に延び、端子台C11および基板Bを貫通して設けられている。相手側端子C2の一端は、電気コネクタ1の端子3に挿入され、他端は、基板Bを貫通して基板Bの裏面にはんだ付けによって接続されている。なお、本実施形態では、4本の相手側端子C2が設けられているが、相手側端子C2の数は限定されず、電気コネクタ1の端子3の数に応じて適宜変更される。
【0023】
電気コネクタ1のハウジング2は、相手側コネクタCに接続される。ハウジング2は、たとえば、絶縁性を有する樹脂材料によって形成される。ハウジング2は、図1図3図5に示されるように、端子3を収容する収容部21を有し、収容部21に設けられた端子3に単線Wが接続される。ハウジング2の収容部21は、単線Wを端子3に向かって挿入するための第1開口部211と、相手側コネクタCの相手側端子C2を端子3に向かって挿入するための第2開口部212(図3図5参照)とを有している。本実施形態では、第1開口部211と第2開口部212とは、電気コネクタ1の相手側コネクタCへの嵌合方向(図1における上下方向)で対向するように設けられている。
【0024】
ハウジング2の形状や構造は特に限定されず、電気コネクタ1が用いられる用途や実装される対象に応じて適宜変更される。本実施形態では、ハウジング2は、略直方体状に形成され、複数の(4つの)端子3を収容できるように構成されている。具体的には、複数の収容部21が列をなして設けられ、複数の収容部21は、隔壁22によって区画され、収容部21に収容される端子3が互いに対して隔離されている。ハウジング2は、互いに対向する第1の側面2aおよび第2の側面2bと、第1の側面2aおよび第2の側面2bとを互いに接続する、第3の側面2cおよび第4の側面2dとを有している。本実施形態では、第1の側面2aおよび第2の側面2bは、複数の収容部21が並ぶ方向に延びる面である。
【0025】
第1の側面2aは、相手側コネクタCの相手側係合片C12に係合するハウジング側係合片Eを有している。電気コネクタ1が相手側コネクタCに接続されたときに、ハウジング側係合片Eが相手側係合片C12と係合して、電気コネクタ1の離脱を防止する。ハウジング側係合片Eは、ハウジング2の嵌合方向で嵌合側(図3における下側)に爪を有しており、この爪が相手側係合片C12の爪と係合する。ハウジング側係合片Eは、板状に形成され、嵌合方向の中央部においてハウジング2の第1の側面2aに接続され、揺動可能に構成されている。これにより、ハウジング側係合片Eの嵌合方向で離脱側(図1における上側)の端部を第1の側面2aに向かって押圧することによって、ハウジング側係合片Eの爪と相手側係合片C12の爪との間の係合を解除して、電気コネクタ1を相手側コネクタCから取り外すことができる。
【0026】
また、第1の側面2aは、図1に示されるように、第1の側面2aの幅方向(複数の収容部21が並ぶ方向。以下、単にハウジング2の幅方向と呼ぶ)の両端において、相手側係合片C12の幅よりわずかに長い間隔で離間して配置された一対の案内部G1、G2を有している。電気コネクタ1を相手側コネクタCに接続する際に、一対の案内部G1、G2によって、相手側係合片C12が案内され、電気コネクタ1を相手側コネクタCに対して安定して移動させることができる。
【0027】
また、第1の側面2aは、図1および図5に示されるように、後述する保持部材4の係合部(第2係合部43)が係合する被係合部(第2被係合部)23を有している。被係合部23は、嵌合方向で嵌合側に向かうにつれて、第1の側面2aの表面からの高さが高くなるように傾斜したテーパー面と、被係合部23の嵌合方向で嵌合側の端部に位置し、第1の側面2aに対して略垂直に延びる垂直面とを有している。これにより、後述する保持部材4がハウジング2に対して嵌合したときに、保持部材4の離脱が抑制される。
【0028】
また、第1の側面2aに対向する第2の側面2bは、図3図5に示されるように、第2の側面2bの嵌合方向で離脱側の端部近傍に、第2の側面2bから突出する被係合部(第1被係合部)24を有している。被係合部24には、後述する保持部材4の係合部(第1係合部41)が係合し、保持部材4がハウジング2に対して嵌合したときに、保持部材4の離脱が抑制される。
【0029】
端子3は、ハウジング2に設けられ、単線Wおよび相手側端子C2が接続される。端子3は導電性材料から構成され、単線Wおよび相手側端子C2が接続されたときに電気的に接続される。端子3は、ハウジング2の収容部21に収容される。本実施形態では、端子3は、打ち抜き加工、切除加工等が施された1枚の金属板が折り曲げられることによって形成され、ハウジング2の収容部21に挿入されることによって取り付けられている。具体的には、端子3は、金属板が折り曲げられて略直方体状に形成され、嵌合方向に対して垂直な断面が略矩形の細長い収容部21に端子3が挿入されて固定される。端子3は、図3図5に示されるように、側面のうちの1つに板バネ状の係止片34を有している。係止片34は、ハウジング2の収容部21に挿入される際には内側に撓み、端子3が所定の位置に到達すると、ハウジング2の側面(第2の側面2b)に形成された開口部25の開口縁に設けられた係止部25aと係合し、端子3のハウジング2からの抜けを防止している。なお、端子3の形成方法や、ハウジング2への組付方法などは特に限定されない。
【0030】
端子3は、図3図6に示されるように、単線Wの先端部W11が挿入される挿入口31aを有する単線挿入部31と、単線Wの先端部W11に電気的に接続される単線接続部32と、相手側コネクタCの相手側端子C2に電気的に接続される相手側端子接続部33とを有している。
【0031】
単線挿入部31は、単線Wの先端部W11が挿入される部位である。単線挿入部31は、端子3の一方の端部3aに設けられ、ハウジング2の第1開口部211の近傍に位置している。単線挿入部31に形成された挿入口31aには、単線Wの先端部W11が挿入される。本実施形態では、挿入口31aは単線Wの径よりもわずかに大きな円形に形成され、単線Wの端子3への挿入時に単線Wの挿入方向に対して垂直な方向の移動を規制して、単線Wを挿入しやすくしている。なお、挿入口31aの形状や構造は、単線Wを単線接続部32に向かって挿入することができれば、特に限定されない。
【0032】
単線接続部32は、単線挿入部31に挿入された単線Wの先端部W11と電気的に接続される部位である。単線接続部32は、単線Wの先端部W11との接触を維持することができるように単線Wを挟み込むことが好ましい。単線接続部32は、単線Wを接続可能であれば図示する構造に限定されないが、本実施形態では、単線Wの先端部W11を両側から挟み込む一対の接点バネ部32a、32bを備えている。
【0033】
一対の接点バネ部32a、32bは単線Wを挟み込んで、単線Wと端子3とを電気的に接続する。一対の接点バネ部32a、32bは、端子3の側面から内側に向かって互いに近づくように傾斜して延びている。具体的には、一対の接点バネ部32a、32bは、単線Wの挿入方向に進むにつれて、接点バネ部32aおよび接点バネ部32bの間の間隔が短くなるように延びている。一対の接点バネ部32a、32bは、端子3の側面に対して内側に折り曲げられるように形成されており、板バネのように機能する。単線Wが挿入される前の状態で、接点バネ部32a、32bの先端の間隔は、単線Wの径よりも狭くなっており(図6の二点鎖線参照)、単線Wが挿入されることによって、接点バネ部32a、32bの先端の間隔が広くなるとともに、接点バネ部32a、32bの間に入った単線Wを挟持する(図6参照)。なお、本実施形態では、一対の接点バネ部32a、32bは、ハウジング2の幅方向に対向して設けられているが、ハウジング2の厚さ方向に対向していてもよい。また、端子3は、図6に示されるように、単線接続部32に挿入された単線Wの先端と当接して、単線Wの挿入深さを規制する当接部35を有している。これにより、接点バネ部32a、32bを押し広げて挿入された単線Wは、所定量挿入されたときに、当接部35に当接して停止し、単線Wの位置決めがされる。
【0034】
相手側端子接続部33は、相手側コネクタCの相手側端子C2が電気的に接続される部位である。相手側端子接続部33の形状および構造は、相手側端子C2と電気的に接続可能であれば、特に限定されない。本実施形態では、相手側端子接続部33は、端子3を構成する金属板が折り曲げられてバネ状に形成されたバネ部331を有している。具体的には、バネ部331は、端子3の他方の端部3bで折り曲げられて一方の端部3aに向かって傾斜して延びた後、さらに折り曲げられて形成されている。端子3の側面の内面と、バネ部331との間隔は、相手側端子C2の幅よりも狭くなっており、相手側端子C2が相手側端子接続部33に接続された際に、端子3の側面の内面と、バネ部331とによって相手側端子C2を挟み込むように構成されている。
【0035】
保持部材4は、ハウジング2の、単線Wが接続される側の端部に取り付けられ、単線Wが所定の延在方向に延びるように保持する。本実施形態では、単線Wは単線Wの先端部W11に対して折り曲げられて延びており、ハウジング2の外側に延びる単線Wが端子3の単線接続部32に接続された先端部W11と同軸上にならないように、単線Wを保持している。保持部材4の材料は特に限定されないが、たとえば、絶縁性を有する樹脂材料によって形成される。
【0036】
保持部材4は、端子3に接続された単線Wが折り曲げられた状態のときに、ハウジング2の単線Wが接続される側の端部(第1開口部211が設けられた端部)に取り付けられる。なお、単線Wは、端子3に接続された後に曲げられてもよいし、端子3に接続される前に曲げられていてもよい。保持部材4とハウジング2との間の取付方法は、単線Wが所定の延在方向に延びた状態で、保持部材4とハウジング2とを接続することができれば、特に限定されない。本実施形態では、保持部材4は、ハウジング2に係合することによって取り付けられている。具体的には、保持部材4は、図3図4図7および図8に示されるように、第1係合部41を有し、第1係合部41が、ハウジング2の第2の側面2bに設けられた第1被係合部24と係合することによって、保持部材4のハウジング2からの離脱を抑制している。保持部材4は、図3図5に示されるように、単線Wの先端部W11の軸X方向に対して垂直な方向に延びる基体42を有し、第1係合部41は、第1被係合部24と係合できるように基体42から単線Wの先端部W11の軸X方向に延びている。第1係合部41の形状や構造は特に限定されないが、本実施形態では、第1係合部41は先端に爪を有し、保持部材4がハウジング2に向かって単線Wの先端部W11の軸X方向に押し込まれることによって、第1係合部41の爪が第1被係合部24と係合する(図3参照)。第1係合部41は、本実施形態では、互いに略平行に複数設けられており、複数の第1係合部41の間に、折り曲げられた単線Wが所定の延在方向に延びている。
【0037】
また、保持部材4は、図5図7および図9に示されるように、第2係合部43を有している。第2係合部43は、ハウジング2の第1の側面2aに設けられた第2被係合部23と係合することによって、保持部材4のハウジング2からの離脱を抑制している。第2係合部43は、第2被係合部23と係合できるように基体42から単線Wの先端部W11の軸X方向に延びている。第2係合部43の形状や構造は特に限定されないが、本実施形態では、第2係合部43は、略U字状に形成された板バネ状の係合部である。保持部材4がハウジング2に向かって単線Wの先端部W11の軸X方向に押し込まれることによって、第2係合部43の先端部が第2被係合部23の傾斜面を乗り越えて、第2被係合部23の垂直面に、第2係合部43が係合する(図5参照)。
【0038】
本実施形態では、保持部材4は、図3図5および図9に示されるように、単線Wの先端部W11の軸方向に対して垂直な方向に延びる押圧面42aを有している。保持部材4が押圧面42aを有していることによって、保持部材4をハウジング2に嵌合する際に、保持部材4に力を加えやすく、容易に保持部材4をハウジング2に取り付けることができる。また、保持部材4がハウジング2に取り付けられた後、電気コネクタ1を相手側コネクタCに接続する際に、押圧面42aを押圧することによって、湾曲した単線Wに力が加わって曲がったりすることを防ぐことができる。押圧面42aは、全体が平坦に形成されていてもよいし、本実施形態のように、指などによって押圧する面積が確保されていれば部分的に肉抜きがされていてもよい。
【0039】
保持部材4は、本実施形態では、第1係合部41および第2係合部43の他に、保持部材4がハウジング2に取り付けられたときに、ハウジング2の第1の側面2a、第3の側面2cおよび第4の側面2dの三方の外面に対向して、ハウジング2の端部に被さるように設けられた側壁を有している(図7参照)。側壁は、本実施形態では、第1の側面2aに対向する第1側壁4aと、第3の側面2cに対向する第2側壁4bと、第4の側面2dに対向する第3側壁4cとを有している。第2側壁4bと第3側壁4cとは互いに対向し、第2側壁4bは、ハウジング2の第2の側面2bに係合するように、第3側壁4cに向かって突出した突出部P(図7参照)を有し、同様に第3側壁4cは、ハウジング2の第2の側面2bに係合するように、第2側壁4bに向かって突出した突出部を有している。上述したように、保持部材4の第1側壁4a、第2側壁4bおよび第3側壁4cが、ハウジング2の第1の側面2a、第3の側面2cおよび第4の側面2dの三方の外面に対向し、第2側壁4bおよび第3側壁4cから突出する突出部Pがハウジング2の第2の側面2bに係合する。これにより、より保持部材4をハウジング2に対して安定して取り付けることができる。なお、第1側壁4aの中央部には、第2係合部43が設けられている。
【0040】
保持部材4は、図3図5に示されるように、単線Wをハウジング2の内部から外部へと導出する導出部44を有している。導出部44は、単線接続部32における単線Wの先端部W11の軸X方向に対して交差するように所定の延在方向へと屈曲して延びる単線Wを導出するように構成されている。本実施形態では、単線Wの所定の延在方向は、単線Wの先端部W11に対して略直交する方向であるが、単線Wの延在方向が、先端部W11の延長線上になければよい。単線Wの先端部W11の軸Xと単線Wの導出部44を通る部分の軸X2(図3図5参照)とがなす角度は特に限定されないが、たとえば、80〜100度であることが好ましく、85〜95度であることがさらに好ましい。
【0041】
導出部44は、単線Wが先端部W11に対して屈曲して延びるように案内する部分である。本実施形態では、導出部44は、保持部材4の基体42の底面42bと、ハウジング2の第2の側面2bの上端面26によって、単線Wの先端部W11の軸X方向の寸法が画定されている。本実施形態では、詳細は後述するが、導出部44は、単線Wの先端部W11が先端部W11の軸X回りに回転しないように、単線Wと当接する一対の壁部44a、44bを有している。一対の壁部44a、44bは、単線Wの径に対応する距離でハウジング2の幅方向に沿って互いに離間して設けられている。本実施形態では、一対の壁部44a、44bは、隣接する一対の第1係合部41の互いに対向する側縁が一対の壁部44a、44bを構成している。なお、最も外側に設けられた単線Wは、第1係合部41の側縁と、第1係合部41の側縁に対向する基体42の側壁42c(図4および図8参照)とが一対の壁部44a、44bを構成している。なお、導出部44は、本実施形態では、ハウジング2の第2の側面2b側に開口しているが、導出部は、第1の側面2a側に開口していてもよいし、第3の側面2cまたは第4の側面2d側に開口していてもよいし、これらの一部または全ての側において開口していてもよい。
【0042】
つぎに、本実施形態の作用効果を説明する。
【0043】
本実施形態では、保持部材4が導出部44を有し、導出部44は、単線Wの先端部W11の軸X方向に対して交差するように所定の延在方向へと屈曲して延びる単線Wを導出するように構成されている。これにより、単線Wは、単線Wが電気コネクタ1に接続されたときに、単線Wの先端部W11の軸Xと、導出部44から導出される単線Wの導出部分の軸X2とが交差して取り付けられる。そのため、たとえば、ハウジング2の外部に導出された単線Wの導出部分に軸X2回りに回転力F(図3参照)が加わった場合であっても、単線Wの先端部W11には、単線Wの先端部W11の単線接続部32からの離脱の原因となる、単線Wの先端部W11の軸X回りに回転する力が作用しない。したがって、単線Wの先端部W11が単線接続部32から離脱することが抑制される。
【0044】
また、本実施形態では、導出部44は一対の壁部44a、44bを有し、導出部44を通る単線Wは、一対の壁部44a、44bと当接する。そのため、仮に単線Wの導出部44から導出された部分に、図5に示されるように、単線Wの先端部W11の軸X回りに回転するように単線Wを水平方向に揺動させる力F2が加わった場合であっても、単線Wと一対の壁部44a、44bが当接する。そのため、単線Wの揺動は、一対の壁部44a、44bと単線Wとが当接することによって、単線Wの先端部W11に回転力が伝達されることがない。よって、単線Wの先端部W11には、単線Wの単線接続部32からの離脱の原因となる、単線Wの先端部W11の軸X回りに回転する力が作用しない。したがって、単線Wの先端部W11が単線接続部32から離脱することが抑制される。
【0045】
また、本実施形態では、保持部材4の第1係合部41は、導出部44に隣接した位置に設けられている。第1係合部41が導出部44に隣接した位置に設けられていることによって、たとえば、単線Wに図3に矢印F3で示されるように、保持部材4がハウジング2から外れる方向に力F3が加わった場合であっても、単線Wから保持部材4に加わる力を第1係合部41と第1被係合部24との係合によって支持して、保持部材4がハウジング2から外れることを効率的に抑制することができる。
【0046】
つぎに、本実施形態の変形例について説明する。
【0047】
上記実施形態では、複数の単線Wが同じ方向に延びるように導出部44が設けられていたが、たとえば、図10および図11に示されるように、保持部材4が、導出部44において導出される単線Wの延在方向(図11の二点鎖線参照)以外の第2の方向に単線Wが屈曲した場合に、単線Wを第2の方向に導出可能な第2導出部45をさらに有していてもよい。なお、第2導出部45が設けられた側と反対側には、導出部44が設けられている。
【0048】
第2導出部45は、図10においては区画された矩形の貫通孔として示されている。この場合、保持部材4をハウジング2に組み付ける前に、単線Wを第2導出部45に通せばよい。なお、第2導出部45は、周囲が区画された貫通孔とせずに、導出部44と同様の構成としてもよい。
【0049】
また、保持部材4は、図12および図13に示されるように、単線Wが単線Wの先端部W11の軸X方向に沿って延びる場合に、単線Wを導出可能な第3導出部46をさらに有していてもよい。この場合、たとえば、電気コネクタ1に接続される単線Wの数が多くなると、単線Wを延在させる方向が様々な方向になる場合がある。そのような場合に、第3導出部46が設けられていることによって、単線Wの延在方向の選択性を高めることができる。
【0050】
また、図14の概略図に示されるように、導出部27が、ハウジング2に設けられていてもよい。たとえば、ハウジング2の第1開口部211が設けられた端部に、単線Wを収容可能な切欠部を形成することによって、導出部27とすることができる。ハウジング2に導出部27を形成した場合も、保持部材4に導出部44を形成した場合と同様の効果を得ることができる。なお、導出部27に加えて、第2導出部(図10および図11参照)をハウジング2に形成することもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 電気コネクタ
2 ハウジング
2a 第1の側面
2b 第2の側面
2c 第3の側面
2d 第4の側面
21 収容部
211 第1開口部
212 第2開口部
22 隔壁
23 第2被係合部
24 第1被係合部
25 開口部
25a 係止部
26 ハウジングの第2の側面の上端面
3 端子
3a 端子の一方の端部
3b 端子の他方の端部
31 単線挿入部
31a 挿入口
32 単線接続部
32a、32b 接点バネ部
33 相手側端子接続部
331 バネ部
34 係止片
35 当接部
4 保持部材
4a 第1側壁
4b 第2側壁
4c 第3側壁
41 第1係合部
42 基体
42a 押圧面
42b 基体の底面
42c 第1係合部の側縁に対向する基体の側壁
43 第2係合部
44 導出部
44a、44b 壁部
45 第2導出部
46 第3導出部
B 基板
C 相手側コネクタ
C1 基部
C11 端子台
C12 相手側係合片
C2 相手側端子
E ハウジング側係合片
G1、G2 案内部
P 突出部
W 単線
W1 導体
W11 単線の先端部
W2 被覆
X 単線の先端部の軸
X2 単線の導出部を通る部分の軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14