特開2020-184431(P2020-184431A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2020184431-コネクタハウジング 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-184431(P2020-184431A)
(43)【公開日】2020年11月12日
(54)【発明の名称】コネクタハウジング
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/46 20060101AFI20201016BHJP
   H01R 13/504 20060101ALI20201016BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20201016BHJP
【FI】
   H01R13/46 301B
   H01R13/504
   B29C45/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-87049(P2019-87049)
(22)【出願日】2019年4月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(74)【代理人】
【識別番号】100109689
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 結
(72)【発明者】
【氏名】木村 毅
(72)【発明者】
【氏名】杉田 幸績
(72)【発明者】
【氏名】藤井 大五郎
【テーマコード(参考)】
4F206
5E087
【Fターム(参考)】
4F206AB17
4F206AH34
4F206JA07
4F206JB28
4F206JM04
4F206JN15
4F206JQ81
5E087EE02
5E087JJ01
5E087KK07
5E087MM05
5E087RR06
(57)【要約】
【課題】
高い剛性のハウジング本体と、弾性変形に適したラッチアームとを備えた、信頼性の高いコネクタハウジングを提供する。
【解決手段】
コネクタハウジング20は、ハウジング本体21とラッチアーム22とを有する。ラッチアーム22は、前端22aを固定端として片持ち梁形状に延びている。そして、ハウジング本体21に対し弾性変形して相手コネクタハウジング等の被ラッチ部材をラッチする。ハウジング本体21は剛性の高い材料で形成されている。一方、ラッチアーム22は、弾性変形しやすい柔らかな材料で形成されている。ハウジング本体21とラッチアーム22との境界部分あるいはその近傍には、ハウジング本体21の材料とラッチアーム22の材料が混合していて、その混合比率が連続的に変化している遷移領域が存在する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1材料で形成されたハウジング本体と、
前記ハウジング本体との間に境界部分を挟んで片持ち梁形状に延び、該ハウジング本体に対し弾性変形して被ラッチ部材をラッチする、前記第1材料よりも剛性の低い第2材料で形成されたラッチアームとを有し、
前記境界部分を含み前記ハウジング本体側および前記ラッチアーム側に広がった拡大境界領域内に前記第1材料と前記第2材料との混合比率が連続的に変化している遷移領域が存在することを特徴とするコネクタハウジング。
【請求項2】
前記第1材料は、ガラスが配合された材料であり、前記第2材料は、ガラスが配合されていない、あるいは該第1材料よりもガラス配合率が低い材料であることを特徴とする請求項1に記載のコネクタハウジング。
【請求項3】
前記ラッチアームが、当該コネクタハウジングと嵌合する相手ハウジングとラッチするラッチアームであることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタハウジング。
【請求項4】
前記第1材料と前記第2材料は、互いに色が異なる材料であることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のコネクタハウジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチアームを備えたコネクタハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば相手ハウジング等の被ラッチ部材に係止してその被ラッチ部材を抜け止めするラッチアームを備えたコネクタハウジングが広く採用されている(例えば、特許文献1参照)。このラッチアームは、ハウジング本体から片持ち梁形状に延び、その片持ち梁の中間部に被ラッチ部材に係止する構造を有する。
【0003】
また、特許文献2には、2色成形の技術を使って、硬質材料からなるハウジング本体と、その硬質材料とは別の軟質材料からなるヒンジとを備えたコネクタハウジングが開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、成形金型の複数のゲート(注入口)から異なる樹脂材料を注入する成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−137474号公報
【特許文献2】特開平2−186569号公報
【特許文献3】特開2017−177738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ハウジング本体は、容易には変形しないように高い剛性を必要とする。一方、ラッチアームは、相手ハウジング等の被ラッチ部材に係止するにあたり一旦弾性変形する必要がある。このラッチアームをハウジング本体と同じ材料で形成するとラッチアームの操作力が過大になる。
【0007】
ハウジング本体とラッチアームをそれぞれに適した別々の材料で形成する手段として、特許文献2に開示された2色成形の技術をロックアームに適用することが考えられる。しかしながら、2色成形は、成形工程を2度経るので、コスト高となる。また、2色成形ではハウジング本体とロックアームがそれらの接合部分で分離しやすく、信頼性に欠けるおそれがある。
【0008】
また、上掲の特許文献3には、コネクタハウジングについての開示は存在しない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、高い剛性のハウジング本体と、弾性変形に適したラッチアームとを備えた、信頼性の高いコネクタハウジングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明のコネクタハウジングは、
第1材料で形成されたハウジング本体と、
ハウジング本体との間に境界部分を挟んで片持ち梁形状に延び、ハウジング本体に対し弾性変形して被ラッチ部材をラッチする、第1材料よりも剛性の低い第2材料で形成されたラッチアームとを有し、
上記境界部分を含みハウジング本体側およびラッチアーム側に広がった拡大境界領域内に、第1材料と第2材料との混合比率が連続的に変化している遷移領域が存在することを特徴とする。
【0011】
ハウジング本体をハウジング本体の剛性を満たす第1材料で形成し、これとともに、ラッチアームを、その弾性変形に適した第2材料で形成する。ここまでは、2色成形で可能である。
【0012】
本発明の場合、さらに、第1材料と第2材料との混合比率が連続的に変化している遷移領域を有する。本発明の場合、この遷移領域の存在により、ハウジング本体とラッチアームが一体化され、高い信頼性をもってそれらの分離が防止される。
【0013】
ここで、本発明のコネクタハウジングにおいて、第1材料は、ガラスが配合された材料であり、第2材料は、ガラスが配合されていない、あるいは第1材料よりもガラス配合率が低い材料であることが好ましい。
【0014】
ガラスの混合により、混合比率が高いほど剛性を高め、混合比率が低いほど弾性変形に適した材料となる。
【0015】
本発明にいうラッチアームは、典型的には本発明のコネクタハウジングと嵌合する相手ハウジングとラッチするラッチアームである。
【0016】
ただし、本発明にいうラッチアームは、相手ハウジングとラッチするラッチアームには限られず、例えば、本発明のコネクタハウジングに挿入されるコンタクトに係止するラッチアーム(ハウジングランス)であってもよい。
【0017】
また、本発明のコネクタハウジングにおいて、第1材料と第2材料は、互いに色が異なる材料であることが好ましい。
【0018】
互いに色が異なると、正しく成形されていることの確認が容易である。
【発明の効果】
【0019】
以上の本発明によれば、高い剛性のハウジング本体と、弾性変形に適したラッチアームとを備えた、信頼性の高いコネクタハウジングを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】コネクタの斜視図である。
図2図1に示した矢印X−Xに沿う断面図である。
図3図1図2に示したコネクタを構成するコネクタハウジングの製造工程の概要を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
図1は、コネクタの斜視図である。
【0023】
また、図2は、図1に示した矢印X−Xに沿う断面図である。
【0024】
このコネクタ10は、コネクタハウジング20と、そのコネクタハウジング20に挿し込まれたコンタクト30(図2参照)とを備えている。
【0025】
コンタクト30にはケーブル40が接続されていて、そのケーブル40は、コネクタハウジング20の外部に延びている。なお、これらの図1図2では、ケーブル40は、コネクタハウジング20の近傍の部分のみ示されている。
【0026】
コネクタハウジング20は、ハウジング本体21とラッチアーム22を有する。このコネクタハウジング20は、本発明のコネクタハウジングの一例に相当する。
【0027】
ラッチアーム22は、その前端22aがハウジング本体21に繋がり、その前端22aを固定端として片持ち梁形状に後方に延びている。そして、このラッチアーム22は、固定端である前端22aと自由端である後端22bとの中間にラッチ突起22cを備えている。
【0028】
このコネクタ10には、不図示の相手コネクタが矢印Zの向きに嵌合する。その嵌合の途中で、ラッチ突起22cが相手コネクタのハウジングに押される。すると、このラッチアーム22は、図2に示す矢印Yの向きに弾性変形する。そして、完全嵌合の状態になると、ラッチ突起22cが相手コネクタによる押下から解放されて元の形状に戻る。これにより、相手コネクタが、このコネクタ10から容易には抜けないようにロックされた状態となる。
【0029】
ここで、ハウジング本体21は、樹脂材料にガラスを混入させることにより剛性を高めた材料が用いられている。一方、ラッチアーム22は、ハウジング本体21と同じ樹脂材料であって、ガラスが混入されていない材料が用いられている。あるいは、ラッチアーム22についても、剛性の調整のために、ハウジング本体21の混入比率よりも低い混入比率のガラスを混入させた材料を用いてもよい。また、このラッチアーム22には、ハウジング本体21とは一見して区別のつく色の顔料を混入させた材料が使用されていてもよい。なお、ラッチアーム22に顔料を混ぜるのではなく、ハウジング本体21の材料に顔料を混ぜてもよい。
【0030】
図3は、図1図2に示したコネクタを構成するコネクタハウジングの製造工程の概要を示した模式図である。
【0031】
ここには、コネクタハウジング20の製造用の金型(図示せず)のキャビティ70が示されている。このキャビティ70は、ハウジング本体21を成形するハウジング本体部71と、ラッチアーム22を成形するラッチアーム部72とを有する。そして、この金型は、ハウジング本体部71とラッチアーム部72とのそれぞれに繋がり、金型内に材料を注ぎ込む注入口71a,72aを有する。
【0032】
また、ここには、2つのシリンダ51,52が備えられている。一方のシリンダ51は、注入口71aに繋がっている。そして、シリンダ51内には、ハウジング本体21用の材料21Aが蓄えられている。また、もう一方のシリンダ52は、注入口72aに繋がっている。そして、そのシリンダ52内には、ラッチアーム22用の材料22Aが蓄えられている。
【0033】
そして、バルブ61,62を開放するタイミングを調整して、金型のキャビティ70内に材料21A,22Aを注ぎ込む。すると、キャビティ70のハウジング本体部71には、ハウジング本体21用の材料21Aが注ぎ込まれ、キャビティ70のラッチアーム部72には、ラッチアーム22用の材料22Aが注ぎ込まれる。すると、硬化する前の2種類の材料21A,22Aが混合された遷移領域Tが形成される。この遷移領域Tは、ハウジング本体部71側ほどハウジング本体21を構成している材料21Aの比率が高く、ラッチアーム部72側ほどラッチアーム22を構成している材料22Aの比率が高い領域となる。
【0034】
この遷移領域Tは、必ずしも、ハウジング本体21とラッチアーム22との境界部分Rと一致している必要はない。すなわち、その遷移領域Tは、境界部分Rを含みハウジング本体側およびラッチアーム側に広がった拡大境界領域E内に存在していればよい。この図3に示した例では、遷移領域Tは、ハウジング本体側に入り込んだ領域に形成されている。
【0035】
このようにして、ハウジング本体21は剛性が高い材料21Aで形成され、ラッチアーム22は、弾性変形に適した材料22Aで形成されたコネクタハウジング20が完成する。しかも、このコネクタハウジング20は、2色成形で形成したコネクタハウジングとは異なり、材料が連続的に変化している遷移領域Tが存在する。このため、ラッチアーム22がハウジング本体21から離れてしまうという事故が高い信頼性をもって防止される。
【0036】
ハウジング本体21とラッチアーム22は異なる色を有する。このため、遷移領域Tで材料がうまく混合されていることを容易に確認することができる。
【0037】
なお、ここでは、ガラスの混入の有無、あるいはガラスの混入の比率で剛性を調整した材料を使用することを例に挙げて説明した。ただし、これは一例であって、別々な混入物を混入させてもよい。あるいは、樹脂材料そのものを別々な樹脂材料としてもよい。
【0038】
また、ここでは、相手コネクタのハウジングとラッチするラッチアームを取り上げて説明した。ただし、本発明にいうラッチアームは、相手コネクタのハウジングとラッチするラッチアームには限定されない。例えば、本発明にいうラッチアームは、コネクタハウジング内に差し込まれたコンタクトに係止してコンタクトを抜け止めするラッチアーム(コンタクトランス23(図2参照))であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 コネクタ
20 コネクタハウジング
21 ハウジング本体
21A ハウジング本体用の材料
22 ラッチアーム
22a ラッチアームの前端
22b ラッチアームの後端
22c ラッチ突起
22A ラッチアーム用の材料
30 コンタクト
40 ケーブル
51,52 シリンダ
61,62 バルブ
70 金型のキャビティ
71 キャビティのハウジング本体部
71a 注入口
72 キャビティのラッチアーム部
72a 注入口
図1
図2
図3