特開2020-184558(P2020-184558A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-184558(P2020-184558A)
(43)【公開日】2020年11月12日
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20201016BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20201016BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20201016BHJP
【FI】
   H01F17/00 D
   H01F17/04 Z
   H01F17/04 F
   H01F27/29 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-86809(P2019-86809)
(22)【出願日】2019年4月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】宮宗 伸之
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070BA12
5E070CB02
5E070CB13
5E070CB17
5E070CB18
5E070EA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コイル導体と第1外部電極及び第2外部電極との間での短絡を更に広い領域で防止又は抑制でき、絶縁信頼性を更に向上させることができるコイル部品を提供する。
【解決手段】コイル部品1は、磁性体部及び磁性体部より高い絶縁性を有する絶縁材30を含む積層体と、第1外部電極21と、第2外部電極22と、積層体内に設けられたコイル導体と、を備える。コイル導体は、コイル軸Aに直交する平面方向に沿って延びると共にコイル軸Aの方向において互いに離間した複数の導体パターンC11〜C16を有する。複数の導体パターンC11〜C16は、第1外部電極21に接触する導体パターンC11と、第2外部電極22に接触する導体パターンC16とを含む。絶縁材30は、平面方向において、導体パターンC11と第2外部電極22との間及び導体パターンC16と第1外部電極21との間に設けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属磁性粒子を含む磁性体部と、前記磁性体部より高い絶縁性を有する絶縁材とを含む基体と、
前記基体の表面に設けられた第1外部電極と、
前記基体の表面に設けられた第2外部電極と、
前記基体内においてコイル軸の周りに巻回されたコイル導体と、
を備え、
前記コイル導体は、前記コイル軸に直交する平面方向に沿って延びると共に前記コイル軸の方向において互いに離間した複数の導体パターンを有し、
前記複数の導体パターンは、前記第1外部電極に接触する第1導体パターンと、前記第2外部電極に接触する第2導体パターンとを含み、
前記絶縁材は、前記平面方向において、前記第1導体パターンと前記第2外部電極との間、及び前記第2導体パターンと前記第1外部電極との間に設けられる、コイル部品。
【請求項2】
前記絶縁材は、前記平面方向において、前記複数の導体パターンと前記第1外部電極との間、及び前記複数の導体パターンと前記第2外部電極との間に設けられる、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記絶縁材は、前記平面方向において、前記磁性体部と前記第1外部電極との間、及び、前記磁性体部と前記第2外部電極との間に設けられる、請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記磁性体部は、前記コイル軸の方向において隣り合う前記導体パターン同士の間に挟まれた導体パターン間領域を有し、
前記絶縁材は、前記平面方向において、前記導体パターン間領域と前記第1外部電極との間、及び前記導体パターン間領域と前記第2外部電極との間に設けられる、請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記磁性体部は、前記コイル軸の方向において前記コイル導体の一方側に位置する第1カバー部と、前記コイル軸の方向において前記コイル導体の他方側に位置する第2カバー部と、を含み、
前記絶縁材は、前記平面方向において、前記第1カバー部と前記第1外部電極との間、前記第1カバー部と前記第2外部電極との間、前記第2カバー部と前記第1外部電極との間、及び前記第2カバー部と前記第2外部電極との間に設けられる、請求項3又は4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記絶縁材は、前記コイル軸の方向において、前記複数の導体パターン同士の間に設けられる、請求項1〜5の何れか一項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1外部電極は、前記第1導体パターンと接触する部分を除き、前記絶縁材の表面のみに形成され、
前記第2外部電極は、前記第2導体パターンと接触する部分を除き、前記絶縁材の表面のみに形成されている、請求項1〜6の何れか一項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記平面方向において、前記複数の導体パターンと前記絶縁材との間に前記磁性体部の一部が介在している、請求項1〜7の何れか一項に記載のコイル部品。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の積層コイル部品を含む、回路基板。
【請求項10】
請求項9に記載の回路基板を含む、電子部品。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フェライトなどの磁性材料によって形成された基体部と、当該基体部の表面に設けられた外部電極と、基体部に埋設され、複数の導体パターンを含むコイル導体と、を備えるコイル部品が知られている。コイル部品の一つの例として、インダクタが挙げられる。インダクタは、電子回路において用いられる受動素子である。インダクタは、例えば、電源ラインや信号ラインにおいて、ノイズを除去するために用いられる。このようなコイル部品は、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−092505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のコイル部品の基体部は、例えば、金属磁性粒子を含む材料によって形成される。この場合、金属磁性粒子を介した導体パターンと外部電極との意図しない短絡を抑制するために、金属磁性粒子の表面に当該金属磁性粒子を覆う絶縁膜が設けられる。しかしながら、金属磁性粒子自体は高い導電性を有するので、金属磁性粒子を覆う絶縁膜が破損すると短絡が発生してしまう。このように、コイル部品においては、絶縁の信頼性の更なる向上が求められている。
【0005】
本発明の目的の一つは、絶縁の信頼性の向上を図ることが可能なコイル部品を提供することである。本発明のこれ以外の目的は、明細書全体の記載を通じて明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係るコイル部品は、金属磁性粒子を含む磁性体部と、磁性体部より高い絶縁性を有する絶縁材とを含む基体と、基体の表面に設けられた第1外部電極と、基体の表面に設けられた第2外部電極と、基体内においてコイル軸の周りに巻回されたコイル導体と、を備える。当該コイル導体は、コイル軸に直交する平面方向に沿って延びると共にコイル軸の方向において互いに離間した複数の導体パターンを有し、複数の導体パターンは、第1外部電極に接触する第1導体パターンと、第2外部電極に接触する第2導体パターンとを含む。当該絶縁材は、平面方向において、第1導体パターンと第2外部電極との間、及び第2導体パターンと第1外部電極との間に設けられる。
【0007】
このコイル部品は、第1外部電極に接触する第1導体パターンと、第2外部電極に接触する第2導体パターンとを含み、平面方向において、第1導体パターンと第2外部電極との間、及び第2導体パターンと第1外部電極との間に、基体より高い絶縁性を有する絶縁材を有する。コイル導体と第2外部電極との間の電位差は、第1導体パターンと第2外部電極との間において最も大きくなり、コイル導体と第1外部電極との間の電位差は、第2導体パターンと第1外部電極との間において最も大きくなるので、第1導体パターンと第2外部電極との間、及び第2導体パターンと第1外部電極との間が最も短絡が発生しやすい領域である。上記のように磁性体部より高い絶縁性を有する絶縁材が第1導体パターンと第2外部電極との間、及び第2導体パターンと第1外部電極との間に設けられていることにより、絶縁の信頼性の向上を図ることが可能である。
【0008】
本発明の一実施形態において、コイル部品は、平面方向において、複数の導体パターンと第1外部電極との間、及び複数の導体パターンと第2外部電極との間に絶縁材を有してもよい。この構成によれば、第1導体パターン及び第2導体パターン以外の導体パターンと、第1外部電極及び第2外部電極との間にも絶縁材が設けられるので、コイル導体と第1外部電極及び第2外部電極との間での短絡をより広い領域で防止又は抑制できる。これにより、コイル部品の絶縁の信頼性を更に向上させることができる。
【0009】
本発明の一実施形態において、絶縁材は、平面方向において、磁性体部と第1外部電極との間、及び、磁性体部と第2外部電極との間に設けられてもよい。この構成によれば、コイル導体と第1外部電極及び第2外部電極との間での短絡を更に広い領域で防止又は抑制できるので、コイル部品の絶縁の信頼性を更に向上させることができる。
【0010】
本発明の一実施形態において、絶縁材は、コイル軸の方向において、複数の導体パターン同士の間に設けられてもよい。この構成によれば、隣り合う導体パターン同士が磁性体部を介して短絡することを防止又は抑制できるので、コイル部品の絶縁の信頼性を更に向上させることができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、磁性体部は、コイル軸の方向において隣り合う導体パターン同士の間に挟まれた導体パターン間領域を有し、絶縁材は、平面方向において、導体パターン間領域と第1外部電極との間、及び導体パターン間領域と第2外部電極との間に設けられてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態において、磁性体部は、コイル軸の方向においてコイル導体の一方側に位置する第1カバー部と、コイル軸の方向においてコイル導体の他方側に位置する第2カバー部と、を含み、絶縁材は、平面方向において、第1カバー部と第1外部電極との間、第1カバー部と第2外部電極との間、第2カバー部と第1外部電極との間、及び第2カバー部と第2外部電極との間に設けられてもよい。
【0013】
本発明の一実施形態において、第1外部電極は、第1導体パターンと接触する部分を除き、絶縁材の表面のみに形成され、第2外部電極は、第2導体パターンと接触する部分を除き、絶縁材の表面のみに形成されていてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態において、平面方向において、複数の導体パターンと絶縁材との間に基体が介在していてもよい。この構成によれば、絶縁材を設けることによる基材の体積の減少を低減できる。したがって、飽和磁束密度の低下を抑制しつつ、絶縁の信頼性の向上を図ることができる。
【0015】
本発明の一実施形態は、上記のコイル部品を備える回路基板に関する。
【0016】
本発明の一実施形態は、上記の回路基板を備える電子部品に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、絶縁の信頼性の向上を図ることが可能なコイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るコイル部品の斜視図である。
図2図1のコイル部品の分解斜視図である。
図3図1のI−I線に沿ったコイル部品の断面を模式的に示す図である。
図4図1のII−II線に沿ったコイル部品の断面を模式的に示す図である。
図5図1のコイル部品における絶縁材の配置を説明するための図である。
図6】本発明の他の実施形態例に係るコイル部品の断面を模式的に示す図である。
図7】本発明の他の実施形態における絶縁材の配置を説明するための図である。
図8】本発明の他の実施形態における絶縁材の配置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るコイル部品1の斜視図であり、図2は、図1に示したコイル部品1の分解斜視図である。図1及び図2には、コイル部品1の一例として、様々な回路で受動素子として用いられる積層インダクタが示されている。積層インダクタは、本発明を適用可能な積層コイル部品の一例である。本発明は、電源ラインに組み込まれるパワーインダクタ及びそれ以外の様々なコイル部品に適用することができる。
【0021】
図示の実施形態におけるコイル部品1は、金属磁性粒子を含む磁性体部及び当該磁性体部より高い絶縁性を有する絶縁材30を含む積層体(基体)10と、この積層体10に埋設された導体パターンC11〜C16と、当該導体パターン(第1導体パターン)C11の一端と電気的に接続された外部電極21と、当該導体パターン(第2導体パターン)C16の一端と電気的に接続された外部電極22と、を備える。磁性体部は、磁性材料から成る磁性体層が積層されることによって構成されている。複数の導体パターンC11〜C16は、コイル軸Aに直交する平面方向に沿って延びると共に、コイル軸Aの方向において互いに離間している。導体パターンC11〜C16の各々は、隣接する導体パターンと後述するビアV1〜V5を介して電気的に接続され、このようにして接続された導体パターンC11〜C16がコイル導体25を構成する。導体パターンC11は外部電極21と接続され、導体パターンC16は外部電極22と接続される。
【0022】
図示のように、本発明の一実施形態において、積層体10はおおむね直方体状に形成される。積層体10は、第1の主面10e、第2の主面10f、第1の端面10a、第2の端面10c、第1の側面10b、及び第2の側面10dを有する。積層体10は、これらの6つの面によってその外面が画定される。第1の主面10eと第2の主面10fとは互いに対向し、第1の端面10aと第2の端面10cとは互いに対向し、第1の側面10bと第2の側面10dとは互いに対向している。積層体10が直方体形状に形成される場合には、第1の主面10eと第2の主面10fとは平行であり、第1の端面10aと第2の端面10cとは平行であり、第1の側面10bと第2の側面10dとは平行である。
【0023】
図1の実施形態において、第1の主面10eは積層体10の上側にあるため、本明細書において第1の主面10eを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2の主面10fを「下面」と呼ぶことがある。コイル部品1は、第2の主面10fが回路基板(不図示)と対向するように配置されるので、本明細書において第2の主面10fを「実装面」と呼ぶこともある。また、コイル部品1の上下方向に言及する際には、図1の上下方向を基準とする。
【0024】
本明細書においては、文脈上別に理解される場合を除き、コイル部品1の「長さ」方向、「幅」方向、及び「厚さ」方向はそれぞれ、図1の「L軸」方向、「W軸」方向、及び「T軸」方向とする。L軸、W軸、及びT軸は互いに直交している。コイル軸Aは、T方向に沿って延びている。W方向及びL方向を含む面が延伸する方向が平面方向にあたる。
【0025】
本発明の一実施形態において、コイル部品1は、長さ寸法(L軸方向の寸法)が0.2〜6.0mm、幅寸法(W軸方向の寸法)が0.1〜4.5mm、厚さ寸法(T軸方向の寸法)が0.1〜4.0mmとなるように形成される。これらの寸法はあくまで例示であり、本発明を適用可能なコイル部品1は、本発明の趣旨に反しない限り、任意の寸法を取ることができる。一実施形態において、コイル部品1は、低背に形成される。例えば、コイル部品1は、その幅寸法が厚さ寸法よりも大きくなるように形成される。
【0026】
図2は、図1のコイル部品1の分解斜視図である。図2においては、図示の便宜上、外部電極21及び外部電極22を省略している。図示のように、積層体10の磁性体部は、本体部20、この本体部20の上面に設けられた上部カバー層18、この本体部20の下面に設けられた下部カバー層19を備える。本体部20は、積層された磁性体層11〜16を含む。この磁性体部においては、図2の上から下に向かって、上部カバー層18、磁性体層11、磁性体層12、磁性体層13、磁性体層14、磁性体層15、磁性体層16、磁性体層17、下部カバー層19の順に積層されている。
【0027】
上部カバー層18は、4枚の磁性体層18a〜18dを含む。この上部カバー層18においては、図2の下から上に向かって、磁性体層18a、磁性体層18b、磁性体層18c、磁性体層18dの順に積層されている。
【0028】
下部カバー層19は、4枚の磁性体層19a〜19dを含む。この下部カバー層19においては、図2の上から下に向かって、磁性体層19a、磁性体層19b、磁性体層19c、磁性体層19dの順に積層されている。
【0029】
後述するように、磁性体層11〜磁性体層16の各々には、対応する導体パターンC11〜C16が埋め込まれている。磁性体層11〜磁性体層16を積層する前の状態では、導体パターンC11〜C16の上面は、それぞれ磁性体層11〜16の上面から露出している。これらの導体パターンC11〜C16により、コイル導体25が構成される。このコイル導体25は、コイル軸Aを有する。各導体パターンC11〜C16は、コイル軸Aの周りに延伸するように形成される。図示の実施形態において、コイル軸Aは、T軸方向に延伸しており、磁性体層11〜磁性体層16の積層方向と一致する。
【0030】
本発明の他の実施形態においては、磁性体層11〜磁性体層16をL軸方向に積層してもよい。この場合、磁性体層11〜磁性体層16の表面に導体パターンC11〜C16を形成することにより、コイル軸Aは、磁性体層11〜磁性体層16の積層方向と同じL軸方向を向く。本発明の他の実施形態においては、磁性体層11〜磁性体層16をW軸方向に積層してもよい。この場合、磁性体層11〜磁性体層16の表面に導体パターンC11〜C16を形成することにより、コイル軸Aは、磁性体層11〜磁性体層16の積層方向と同じW軸方向を向く。
【0031】
磁性体層11〜磁性体層16、磁性体層18a〜磁性体層18d、及び磁性体層19a〜磁性体層19dに含まれる樹脂は、絶縁材料から形成される。一実施形態において、この絶縁材料は、絶縁性に優れた樹脂材料である。この樹脂材料として、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、又はアクリル樹脂を用いることができる。磁性体層11〜磁性体層16、磁性体層18a〜磁性体層18d、及び磁性体層19a〜磁性体層19dに含まれる樹脂は、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂であってもよい。この熱硬化性樹脂として、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)樹脂、フェノール(Phenolic)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、又はポリベンゾオキサゾール(PBO)樹脂を用いることができる。各絶磁性体層及び各シートに含まれる樹脂は、他の磁性体層及び他のシートに含まれる樹脂と同種であってもよく異種であってもよい。
【0032】
磁性体層11〜磁性体層16、磁性体層18a〜磁性体層18d、及び磁性体層19a〜磁性体層19dが樹脂材料から作製される場合には、これらの磁性体層は、フィラー粒子を含んでもよい。このフィラー粒子は、例えば、フェライト材料の粒子、軟磁性金属粒子、SiO2やAl2O3などの無機材料粒子、又はガラス系粒子である。本発明に適用可能なフェライト材料の粒子は、例えば、Ni−Znフェライトの粒子またはNi−Zn−Cuフェライトの粒子である。本発明に適用可能な軟磁性金属粒子は、酸化されていない金属部分において磁性が発現する材料であり、例えば、酸化されていない金属粒子や合金粒子を含む粒子である。本発明に適用可能な軟磁性金属粒子には、例えば、合金系のFe−Si−Cr、Fe−Si−Al、もしくはFe−Ni、非晶質のFe―Si−Cr−B−C、もしくはFe−Si−B−Cr、Fe、またはこれらの混合材料の粒子が含まれる。
【0033】
磁性体層11〜磁性体層16、磁性体層18a〜磁性体層18d、及び磁性体層19a〜磁性体層19dは、表面に絶縁被膜が形成された軟磁性金属粒子を多数結合させることによって形成されてもよい。この絶縁被膜は、例えば、軟磁性金属の表面が酸化することで形成される酸化被膜である。結合した多数の軟磁性金属粒子からなる磁性体層は、樹脂を含まなくともよい。本発明に適用可能な軟磁性金属粒子には、例えば、合金系のFe−Si−Cr、Fe−Si−Al、もしくはFe−Ni、非晶質のFe―Si−Cr−B−C、もしくはFe−Si−B−Cr、Fe、またはこれらの混合材料の粒子が含まれる。磁性体層11〜磁性体層16、磁性体層18a〜磁性体層18d、及び磁性体層19a〜磁性体層19dとして用いることができる、軟磁性金属粒子から成る構造物は、例えば、特開2013−153119号公報に開示されている。
【0034】
コイル部品1は、磁性体層11〜磁性体層16、磁性体層18a〜磁性体層18d、及び磁性体層19a〜磁性体層19d以外にも、必要に応じて、任意の数の磁性体層を含むことができる。磁性体層11〜磁性体層16、磁性体層18a〜磁性体層18d、及び磁性体層19a〜磁性体層19dの一部は、適宜省略することができる。
【0035】
磁性体層11〜磁性体層15の所定の位置には、ビアV1〜V5がそれぞれ形成される。ビアV1〜V5は、絶縁体層IS11〜IS16の所定の位置に、当該絶縁体層IS11〜IS16をT軸方向に貫く貫通孔を形成し、当該貫通孔に金属材料を埋め込むことにより形成される。
【0036】
導体パターンC11〜C16及びビアV1〜V5は、導電性に優れた金属を含むように形成され、例えば、Ag、Pd、Cu、Al、又はこれらの合金から形成される。
【0037】
本明細書で説明される具体的な材料は例示であり、本明細書で例示されない材料もコイル部品1の構成要素の材料として適宜用いることができる。
【0038】
一実施形態において、外部電極21は、積層体10の第1の端面10aに設けられ、外部電極22は、積層体10の第2の端面10cに設けられる。外部電極21及び外部電極22は、図示のように、積層体10の上面10e、下面10f、第1の側面10b、及び第2の側面10dまで延伸しても良い。この場合、外部電極21は、積層体10の第1の端面10aの全体と、上面10e、下面10f、第1の側面10b、及び第2の側面10dの各々の一部を覆うように設けられ、外部電極22は、積層体10の第2の端面10cの全体と、上面10e、下面10f、第1の側面10b、及び第2の側面10dの各々の一部を覆うように設けられる。外部電極21及び外部電極22の形状は特に限定されず、適宜変更可能である。例えば、外部電極21は、第1の端面10a及び下面10fの各々の一部を覆うL字形状であってもよいし、下面10fの一部を覆う板状であってもよい。同様に、外部電極22は、第2の端面10c及び下面10fの各々の一部を覆うL字形状であってもよいし、下面10fの一部を覆う板状であってもよい。
【0039】
次に、図3〜5を参照して、コイル部品1の絶縁材30について説明する。図3は、図1のI−I線に沿ったコイル部品の断面を模式的に示す図である。図3においては、後述の積層体10に含まれる各磁性体層を省略している。図4は、図1のII−II線に沿ったコイル部品の断面を模式的に示す図である。図5は、絶縁材の配置を説明するための図である。なお、図5においては、一例として磁性体層11及び導体パターンC11の上面図を示している。
【0040】
絶縁材30は、コイル軸Aに直交する平面方向のうちL軸方向において、複数の導体パターンC11〜C16の各々と外部電極21との間、及び、導体パターンC11〜C16の各々と外部電極22との間に設けられる。換言すると、絶縁材30は、外部電極21,22と導体パターンC11〜C16とが対向する領域の各々に設けられる。図示の実施形態では、絶縁材30は、外部電極21,22が互いに対向する方向(図示の実施形態ではL軸方向)に沿った方向における導体パターンC11〜C16と外部電極21,22との間に設けられており、W軸方向に沿った方向における導体パターンC11〜C16と外部電極21,22との間には設けられていない。
【0041】
絶縁材30は、積層体10の第1の端面10a又は第2の端面10cに沿って、第1の側面10bから第2の側面10dまで延伸している。絶縁材30は、導体パターンC11を外部電極21まで引き出すための貫通孔を有している。導体パターンC11は、この貫通孔内を外部電極21まで延伸しており、これにより外部電極21と電気的に接続されている。同様に、絶縁体30は、導体パターンC16を外部電極22まで引き出すための貫通孔を有している。導体パターンC16は、この貫通孔内を外部電極22まで延伸しており、これにより外部電極22と電気的に接続されている。外部電極21は、導体パターンC11と接触する部分を除き、絶縁材30の表面のみに形成されている。同様に、外部電極22は、導体パターンC16と接触する部分を除き、絶縁材30の表面のみに形成されている。
【0042】
図示の実施形態では、L軸方向における全ての導体パターンC11〜C16と外部電極21,22との間に絶縁材30が設けられているが、絶縁材30は、少なくとも平面方向における導体パターンC11と外部電極22との間、及び導体パターンC16と外部導体21との間に設けられていればよい。言い換えると、導体パターンC12〜C16と外部電極22との間、及び導体パターンC11〜C15と外部電極21との間には絶縁材30が設けられなくともよい。この場合、導体パターンC12〜C16と外部電極22との間、及び導体パターンC11〜C15と外部電極21との間には積層体10の一部が介在する。
【0043】
絶縁材30は、平面方向において、導体パターンC11〜C16に直接接していてもよいし、導体パターンC11〜C16と絶縁材30との間に磁性体部の一部が介在していてもよい。導体パターンC11〜C16と絶縁材30との間に積層体10の一部を介在させることにより、絶縁材30を設けることによる積層体10の体積の減少を低減できる。したがって、飽和磁束密度の低下を抑制しつつ、絶縁の信頼性の向上を図ることができる。
【0044】
絶縁材30は、磁性体部(すなわち、磁性体層11〜19d)よりも高い絶縁性を有している。絶縁材30を構成する材料としては、例えばガラス、ガラスにフィラー材を加えた材料、または熱酸化によって形成された酸化膜を有するFeを含む金属磁性材等が挙げられる。また、絶縁材30は、上記の材料の混合物によって構成されてもよい。絶縁材30を構成する材料の体積抵抗率は、例えば、106Ω・cm以上、107Ω・cm以上、108Ω・cm以上、又は109Ω・cm以上とされる。
【0045】
次に、コイル部品1の製造方法の一例を説明する。まず、上部カバー層18となる上部積層体、中間積層体、及び下部カバー層19となる下部積層体を形成する。上部積層体は、磁性体層18a〜18dとなる複数の磁性体シートを積層することによって形成される。同様に、下部積層体は、磁性体層19a〜19dとなる複数の磁性体シートを積層することによって形成される。磁性体シートは、例えば、プラスチック製のベースフィルムの表面にスラリーを塗布して乾燥させ、乾燥後のスラリーを所定のサイズに切断することで得られる。スラリーは、例えばフィラー粒子を含む樹脂材料に溶剤を加えて作製される。フィラー粒子が分散された樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エポキシ樹脂等の絶縁性に優れた樹脂材料が用いられ得る。
【0046】
中間積層体は、導体パターン、磁性体層、及び絶縁材を含む複数のシートを積層することによって形成される。それぞれのシートの作成に際しては、まず、ベースフィルム上にグリーンシートを形成する。このとき、当該グリーンシートを積層方向に貫通し、ビアが形成される貫通孔を形成する。次に、スクリーン印刷等によりグリーンシート上に、導体パターンを形成する。これにより、導体パーンを構成する金属材料が貫通孔内に埋め込まれ、ビアが形成される。次に、スクリーン印刷等により、導体パターンに対応した所定の箇所に絶縁材30を形成する。そして、導体パターン及び絶縁材30が形成されていない箇所に磁性体層を印刷する。各導体パターンC11〜C16を含むシートをそれぞれ形成した後、ベースフィルムを除去し、導体パターンC16を含むシートから導体パターンC11を含むシートまで順番に積層する。なお、導体パターンC16の下側には他の導体パターンがないので、導体パターン16を含むシートを作製する際には、ビアを形成するための貫通孔を設けなくてもよい。
【0047】
次に、上記のように作製された中間積層体を上下から上部積層体及び下部積層体で挟み込み、この上部積層体及び下部積層体を中間積層体に熱圧着して本体積層体を得る。次に、ダイシング機やレーザ加工機などの切断機を用いて当該本体積層体を所望のサイズに個片化することで、積層体10に相当するチップ積層体が得られる。次に、このチップ積層体を脱脂し、脱脂されたチップ積層体を加熱処理する。次に、加熱処理されたチップ積層体の両端部に導体ペーストを塗布することにより、外部電極21及び外部電極22を形成する。以上の工程により、コイル部品1が得られる。
【0048】
以上説明したように、コイル部品1は、コイル軸Aに直交する平面方向のうちL軸方向において、複数の導体パターンC11〜C16の各々と外部電極21との間、及び、導体パターンC11〜C16の各々と外部電極22との間に設けられた絶縁材30を有する。この絶縁材30は、磁性体部よりも高い絶縁性を有するので、導体パターンC11〜C16と外部電極21及び外部電極22との間における短絡の発生を防止又は抑制することができる。
【0049】
絶縁材30は、平面方向において、外部電極21に接触する導体パターンC11と外部電極22との間、及び外部電極22に接触する導体パターンC16と外部電極21との間にのみ設けられてもよい。コイル部品1においては、導体パターンC11と外部電極22との間の電位差、及び、導体パターンC16と外部電極21との間の電位差が最も大きくなるので、導体パターンC11と外部電極22との間、及び導体パターンC16と外部電極21との間において最も短絡が発生しやすい。上記のように磁性体部より高い絶縁性を有する絶縁材30が導体パターンC11と外部電極22との間、及び導体パターンC16と外部電極21との間に設けられていることにより、絶縁の信頼性の向上を図ることが可能である。また、上記のように、磁性体部を介した短絡が発生しやすい特定の位置のみに絶縁材30を設けることにより、積層体10の体積の減少による飽和磁束密度の低下を抑制することができる。
【0050】
また、絶縁材30は、平面方向において、導体パターンC11を含むいくつかの導体パターンと外部電極21との間、好ましくは全ての導体パターンC11〜16と外部電極21との間、及び導体パターンC16を含むいくつかの導体パターンと外部電極22との間、好ましくは導体パターンC11〜C16と外部電極22との間に設けられてもよい。これにより、導体パターンC11及び導体パターンC16以外の導体パターンC12〜C15のうちのいくつかの導体パターンもしくはすべての導体パターンC12〜C15と、外部電極21,22との間においても絶縁性が高められるので、絶縁の信頼性を更に向上させることができる。
【0051】
次に、図6を参照して、本発明の他の実施形態について説明する。図6は、本発明の他の実施形態によるコイル部品を図3の断面に相当する断面で切断した断面図を示す。図6に示される実施形態では、積層体10の磁性体部は、本体部20、この本体部20の上面に設けられた上部カバー部118、この本体部20の下面に設けられた下部カバー部119を備える。上部カバー部118及び下部カバー部119は、共に磁性体によって構成される。図6に示されるように、絶縁材30は、積層体10の第1の主面10eから第2の主面10fまで延在するように設けられていてもよい。換言すると、磁性体部は、コイル軸Aの方向において隣り合う導体パターン同士の間に挟まれた導体パターン間領域を有し、絶縁材30は、平面方向において、導体パターン間領域と外部電極21,22との間に設けられる。また、絶縁材30は、平面方向において、上部カバー部と外部電極21,22との間、及び下部カバー部と外部電極21,22との間にも設けられる。すなわち、図6に示される実施形態では、上部カバー層18は、上部カバー部118と、外部電極21,22が対向する方向(すなわちL軸方向)において当該上部カバー部118の両側に設けられた絶縁材30とによって構成される。同様に、下部カバー層19は、下部カバー部119と、L軸方向において当該下部カバー部119の両側に設けられた絶縁材30とによって構成される。当該実施形態によれば、コイル導体25と外部電極21,22との間において積層体10を介した短絡の発生を更に抑制することができる。
【0052】
次に、図7を参照して、本発明の他の実施形態について説明する。図7は、本発明の他の実施形態によるコイル部品における絶縁材の配置を説明するための図である。図7に示されている実施形態では、L軸方向に加え、W軸方向においても、導体パターンC11〜C16と外部電極21,22との間に絶縁材30が設けられている。これにより、外部電極21及び外部電極22のうち第1の側面10b及び第2の側面10dに沿って延伸する部分とコイル導体25との間の短絡を防止又は抑制することができる。
【0053】
次に、図8を参照して、本発明の他の実施形態について説明する。図8は、は、本発明の他の実施形態によるコイル部品における絶縁材の配置を説明するための図である。図8に示される実施形態では、絶縁材30は、コイル軸Aの方向(すなわちT軸方向)において、複数の導体パターンC11〜C16同士の間にも設けられている。図示の実施形態では、L軸方向において、絶縁材30の端部は、各導体パターンC11〜C16の端部よりもコイル軸A側に位置している。L軸方向における絶縁材30の端部位置と各導体パターンC11〜C16の端部位置とは略同一であってもよい。なお、導体パターンC16の下側には他の導体パターンがないので、導体パターンC16の直下には絶縁材30が設けられていなくてもよい。このように絶縁材30を配置することにより、隣り合う導体パターン同士が磁性体部を介して短絡することを防止又は抑制できるので、コイル部品1の絶縁の信頼性を更に向上させることができる。
【0054】
上記のように絶縁材30が配置されたコイル部品の作製方法について説明する。まず、上部カバー層18となる上部積層体、中間積層体、及び下部カバー層19となる下部積層体を形成する。上部積層体及び下部積層体の製造方法は、図3に示されるコイル部品の製造方法と同様である。
【0055】
中間積層体は、導体パターン、磁性体層、及び絶縁材を含む複数のシートを積層することによって形成される。それぞれのシートの作成に際しては、まず、ベースフィルム上に、スクリーン印刷等により絶縁材30を構成する材料を導体パーンに対応したパターンで印刷する。これにより、積層した際に導体パーン同士の間に位置することとなる絶縁材30の一部分が形成される。次に、スクリーン印刷等により、導体パターンを形成する。次に、再び絶縁材30を構成する材料を印刷し、平面方向において導体パターンと外部電極との間となる位置に絶縁材30を形成する。そして、導体パターン及び絶縁材30が形成されていない箇所に磁性体層を印刷する。各導体パターンC11〜C16を含むシートをそれぞれ形成した後、ベースフィルムを除去し、導体パターンC16を含むシートから導体パターンC11を含むシートまで順番に積層する。なお、最も下側に位置する導体パターンC16を含むシートを作製する際には、導体パターンC16の下側には他の導体パターンがないので、図3に示されるコイル部品の製造方法同様に、グリーンシートを用いて作製されてもよい。
【0056】
次に、上記のように作製された中間積層体を上下から上部積層体及び下部積層体で挟み込み、この上部積層体及び下部積層体を中間積層体に熱圧着して本体積層体を得る。次に、本体積層体を個片化した後、外部電極21,22を形成する。以上の工程により、図8に示されるコイル部品が得られる。また、この例以外の、例えばスラリービルド法など、様々な方法で作製することもできる。
【0057】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれ得る任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0058】
1…コイル部品、10…積層体(基体)、21…外部電極(第1外部電極)、22…外部電極(第2外部電極)、30…絶縁材、A…コイル軸、C11〜C16…導体パターン。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8