特開2020-185725(P2020-185725A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-185725(P2020-185725A)
(43)【公開日】2020年11月19日
(54)【発明の名称】タイヤモールド
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20201023BHJP
   B29C 33/10 20060101ALI20201023BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20201023BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20201023BHJP
【FI】
   B29C33/02
   B29C33/10
   B29C35/02
   B29L30:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-92049(P2019-92049)
(22)【出願日】2019年5月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 崇宏
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AH20
4F202AM32
4F202AR07
4F202AR20
4F202CA21
4F202CB01
4F202CU02
4F202CU07
4F203AA45
4F203AB03
4F203AH20
4F203AM32
4F203AR07
4F203AR20
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DL10
4F203DN26
(57)【要約】
【課題】 開閉弁の孔を閉止するタイミングを適切にすることができるタイヤモールドを提供する。
【解決手段】 タイヤモールドは、タイヤを成形するための成形室を構成する複数のモールドを備え、モールドは、成形室内の気体を排出するための複数の開閉弁を備え、開閉弁は、成形室内の気体が流入する孔を有する弁座と、孔を閉止する閉止位置と孔を開放する開放位置とに移動可能な弁体と、を備え、複数の開閉弁は、弁体が開放位置から閉止位置へ移動する距離が第1距離である第1開閉弁と、弁体が開放位置から閉止位置へ移動する距離が第1距離よりも大きい第2距離である第2開閉弁と、を含む。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを成形するための成形室を構成する複数のモールドを備え、
前記モールドは、前記成形室内の気体を排出するための複数の開閉弁を備え、
前記開閉弁は、前記成形室内の気体が流入する孔を有する弁座と、前記孔を閉止する閉止位置と前記孔を開放する開放位置とに移動可能な弁体と、を備え、
前記複数の開閉弁は、前記弁体が前記開放位置から前記閉止位置へ移動する距離が第1距離である第1開閉弁と、前記弁体が前記開放位置から前記閉止位置へ移動する距離が前記第1距離よりも大きい第2距離である第2開閉弁と、を含む、タイヤモールド。
【請求項2】
前記開閉弁は、前記弁体が前記閉止位置から前記開放位置へ向かうように、弾性力によって前記弁体に力を加えるコイルばねを備え、
前記第2開閉弁の、前記コイルばねのばね定数は、前記第1開閉弁の、前記コイルばねのばね定数よりも、大きい、請求項1に記載のタイヤモールド。
【請求項3】
前記弁体は、端部にフランジ部を備え、
前記フランジ部は、前記成形室を構成する成形面と、前記成形面に傾斜して連接し、前記弁座と接する傾斜面と、を備え、
前記第2開閉弁の、前記傾斜面が前記成形面に対する傾斜角度は、前記第1開閉弁の、前記傾斜面が前記成形面に対する傾斜角度よりも、小さい、請求項1又は2に記載のタイヤモールド。
【請求項4】
前記弁体は、端部にフランジ部を備え、
前記フランジ部は、前記成形室を構成する成形面と、前記成形面に傾斜して連接し、前記弁座と接する傾斜面と、を備え、
前記第2開閉弁の前記傾斜面のゴムに対する摩擦係数は、前記第1開閉弁の前記傾斜面のゴムに対する摩擦係数よりも、小さい、請求項1〜3の何れか1項に記載のタイヤモールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、タイヤモールドは、タイヤを成形するための成形室を構成する複数のモールドを備えている。モールドは、成形室内の気体を排出するための複数の開閉弁を備えている。開閉弁は、成形室内の気体が流入する孔を有する弁座と、孔を閉止する閉止位置と孔を開放する開放位置とに移動可能な弁体とを備えている(例えば、特許文献1)。
【0003】
まず、タイヤ成形初期においては、弁体が開放位置に位置することで、孔が開放され、成形室内の気体が成形室外に排出される。その後、タイヤ成形後期においては、ゴムが孔に近づくことによって、成形室内の空気圧が低下したり、ゴムが弁体に接したりする。これにより、弁体が閉止位置に移動するため、孔が閉止される。
【0004】
ところで、孔を閉止するタイミングが遅すぎる場合は、弁体と弁座との間にゴムが侵入し、弁体と弁座との間でゴムの噛みこみが発生する。また、孔を閉止するタイミングが早すぎる場合は、成形室内に気体溜まりが発生するため、成形されたタイヤにおいて、それに起因したゴム欠損が発生する。そして、孔を閉止する適正なタイミングは、開閉弁の位置によっても、異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−221545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、課題は、開閉弁の孔を閉止するタイミングを適切にすることができるタイヤモールドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
タイヤモールドは、タイヤを成形するための成形室を構成する複数のモールドを備え、前記モールドは、前記成形室内の気体を排出するための複数の開閉弁を備え、前記開閉弁は、前記成形室内の気体が流入する孔を有する弁座と、前記孔を閉止する閉止位置と前記孔を開放する開放位置とに移動可能な弁体と、を備え、前記複数の開閉弁は、前記弁体が前記開放位置から前記閉止位置へ移動する距離が第1距離である第1開閉弁と、前記弁体が前記開放位置から前記閉止位置へ移動する距離が前記第1距離よりも大きい第2距離である第2開閉弁と、を含む。
【0008】
また、タイヤモールドにおいては、前記開閉弁は、前記弁体が前記閉止位置から前記開放位置へ向かうように、弾性力によって前記弁体に力を加えるコイルばねを備え、前記第2開閉弁の、前記コイルばねのばね定数は、前記第1開閉弁の、前記コイルばねのばね定数よりも、大きい、という構成でもよい。
【0009】
また、タイヤモールドにおいては、前記弁体は、端部にフランジ部を備え、前記フランジ部は、前記成形室を構成する成形面と、前記成形面に傾斜して連接し、前記弁座と接する傾斜面と、を備え、前記第2開閉弁の、前記傾斜面が前記成形面に対する傾斜角度は、前記第1開閉弁の、前記傾斜面が前記成形面に対する傾斜角度よりも、小さい、という構成でもよい。
【0010】
また、タイヤモールドにおいては、前記弁体は、端部にフランジ部を備え、前記フランジ部は、前記成形室を構成する成形面と、前記成形面に傾斜して連接し、前記弁座と接する傾斜面と、を備え、前記第2開閉弁の前記傾斜面のゴムに対する摩擦係数は、前記第1開閉弁の前記傾斜面のゴムに対する摩擦係数よりも、小さい、という構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、タイヤモールドによって成形されるタイヤのタイヤ子午面における要部断面図である。
図2図2は、図1のII領域拡大図である。
図3図3は、一実施形態に係るタイヤモールドの要部断面図である。
図4図4は、図3のIV領域拡大図である。
図5図5は、図4のV領域拡大図(開閉弁が開状態を示す図)である。
図6図6は、図4のVI領域拡大図(開閉弁が開状態を示す図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、タイヤモールドにおける一実施形態について、図1図6を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0013】
まず、トレッドモールドの構成を説明するのに先立って、トレッドモールドで成形されるタイヤの構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0014】
図1に示すように、タイヤ10は、ビードを有する一対のビード部11と、各ビード部11からタイヤ径方向D2の外側に延びるサイドウォール部12と、一対のサイドウォール部12のタイヤ径方向D2の外端部に連接されるトレッド部13とを備えている。そして、トレッド部13は、タイヤ径方向D2の外側面に、路面に接するトレッド面を備えている。
【0015】
各図において、第1の方向D1は、タイヤ10の回転中心であるタイヤ回転軸と平行なタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ10の直径方向であるタイヤ径方向D2である。タイヤ周方向は、タイヤ回転軸周りの方向であり、タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ10のタイヤ幅方向D1の中心に位置する面であり、タイヤ子午面は、タイヤ回転軸を含む面で且つタイヤ赤道面S1と直交する面である。
【0016】
トレッド部13は、タイヤ周方向に延びる複数の主溝13aを備えている。なお、主溝13aの数は、特に限定されないが、図1においては、四つとしている。また、トレッド部13は、複数の主溝13aによって区画される複数の陸部13bを備えている。なお、陸部13bの個数は、特に限定されないが、図1においては、五つとしている。
【0017】
複数の陸部13bのうち、タイヤ幅方向D1で最も外側に配置される一対の陸部13b,13bは、ショルダー陸部13bという。また、複数の陸部13bのうち、一対のショルダー陸部13b,13bの間に配置される陸部13bは、ミドル陸部13bという。
【0018】
図2に示すように、タイヤ10は、主溝13aの底から突出する溝内凸部13cを備えている。例えば、溝内凸部13cは、主溝13aの内部に石が嵌まり込むことを防止するためのストーンエジェクタでもよく、摩耗するにしたがって露出することで摩耗度合が分かる(摩耗による使用限界を示す)トレッドウェアインジケータでもよく、特に限定されない。なお、溝内凸部13cは、陸部13bに設けられる陸溝(図示していない)の内部に、設けられていてもよい。
【0019】
次に、タイヤモールドについて、図3図6を参照しながら説明する。なお、タイヤモールドにおける方向D1,D2は、タイヤモールドで成形されるタイヤ10に対する方向(タイヤ幅方向D1、タイヤ径方向D2、タイヤ周方向)を使用する。
【0020】
図3に示すように、タイヤモールド1は、タイヤ10(図3図6においては、図示していない)を成形するための成形室1aを内部空間で構成する複数のモールド2,3を備えている。本実施形態においては、タイヤモールド1は、タイヤ加硫金型である。図3においては、未加硫のタイヤが、タイヤ軸を上下方向にして、複数のモールド2,3の内部の成形室1aにセットされる。即ち、図3においては、上下方向がタイヤ幅方向D1であり、左右方向がタイヤ径方向D2である。
【0021】
複数のモールド2,3は、タイヤ10のサイドウォール部12を成形するサイドモールド2と、タイヤ10のトレッド部13を成形する複数のトレッドモールド3とを備えている。サイドモールド2は、タイヤ幅方向D1で離れるように一対備えられ、トレッドモールド3は、タイヤ周方向に沿って環状に複数(図3においては、一つのみ図示している)並列されている。
【0022】
モールド2,3は、成形室1aにセットされたタイヤ10に接する成形面2a,3aを、内面に備えている。また、モールド2,3は、タイヤ成形時に成形室1a内、具体的には、タイヤ10と成形面2a,3aとの間の気体(例えば、エア)を排出するために、成形室1aの内外を連通するベントホール4aを複数備えている。
【0023】
図3においては、ベントホール4aは、それぞれのサイドモールド2に一つずつ図示され、トレッドモールド3に二つ図示されているが、ベントホール4aの個数は、特に限定されない。そして、真空ポンプ等の吸引装置(図示していない)が成形室1a内を吸引することにより、成形室1a内の気体は、ベントホール4aを通過して、成形室1a外に排出されている。
【0024】
トレッドモールド3は、タイヤ10の溝(主溝13a、陸溝、サイプ)を成形するために、内面に、プロファイルに対して凸状に形成される複数の成形突起3bを備えている。なお、図3においては、主溝13aに対応する成形突起3bのみが図示されている。また、図4に示すように、成形突起3bは、タイヤ10の溝内凸部13cを形成するために、凹状に形成される突起内凹部3cを備えている。
【0025】
モールド3は、ベントホール4aを有するモールド本体4と、成形室1a内の気体を排出するために、ベントホール4aを開閉する開閉弁5,6とを備えている。なお、モールド本体4の材質は、特に限定されないが、例えば、モールド本体4は、アルミ、鋼鉄、ステンレス鋼等の金属で形成されている、という構成でもよい。
【0026】
開閉弁5,6は、ベントホール4aの内端部に配置されている。また、モールド3の成形面3aは、モールド本体4と開閉弁5,6とにより、構成されている。なお、通常の位置(例えば、タイヤ10の陸部13bを成形する陸部成形用の凹部の位置)のベントホール4aには、第1開閉弁5が配置されている。それに対して、突起内凹部3cのベントホール4aには、第2開閉弁6が配置されている。
【0027】
図5及び図6に示すように、開閉弁5,6は、成形室1a内の気体が流入する孔7aを有する弁座7と、孔7aを閉止する閉止位置と孔7aを開放する開放位置とに移動可能な弁体8とを備えている。また、開閉弁5,6は、弁体8が閉止位置から開放位置へ向かうように、弁体8に力を加える加力部9を備えている。なお、弁座7及び弁体8の材質は、特に限定されないが、例えば、弁座7及び弁体8は、ステンレス鋼、鋼鉄等の金属で形成されている、という構成でもよい。
【0028】
弁座7は、ベントホール4aの内端部に固定されている。具体的には、弁座7は、ベントホール4a内に嵌め込められている。なお、弁座7は、モールド本体4と別体である、という構成に限られず、モールド本体4と一体である(即ち、モールド本体4の一部である)、という構成でもよい。弁座7は、筒状に形成されており、弁体8は、弁座7に内部に配置されている。具体的には、弁体8は、弁座7に対して可動となるように、弁座7の孔7aに挿入されている。
【0029】
弁体8は、弁座7の孔7aに挿入される本体部8aと、内端部に配置されるフランジ部8bと、外端部に配置され、弁体8が弁座7から抜けることを防止するために、弁座7の外端部に止められる抜止部8cとを備えている。加力部9は、弾性力によって弁体8に力を加えるコイルばね9aを備えている。そして、コイルばね9aは、弁体8の本体部8aに挿入され、弁座7の孔7aの内部に配置されている。
【0030】
弁座7は、端部に、成形室1a(即ち、モールド3の成形面3a)を構成する成形面7bと、成形面7bに傾斜して連接し、弁体8と接する座面7cとを備えている。成形面7bは、弁座7の内側の端面である。そして、成形面7bは、平面状に形成されており、座面7cは、曲面状に形成されている。例えば、成形面7bの外縁形は、直径が2mm〜4mmの円形とすることができる。なお、成形面7bは、曲面状に形成されていてもよい。
【0031】
弁体8のフランジ部8bは、成形室1a(即ち、モールド3の成形面3a)を構成する成形面8dと、成形面8dに傾斜して連接し、弁座7の座面7cと接する傾斜面8eとを備えている。成形面8dは、弁体8の内側の端面である。そして、成形面8dは、平面状に形成されており、傾斜面8eは、曲面状に形成されていている。なお、成形面8dは、曲面状に形成されていてもよい。
【0032】
図5及び図6に示す開閉弁5,6は、成形室1a内の気体を排出可能な開状態である。このとき、圧縮しているコイルばね9aが弁体8に力を加えることによって、弁体8は、弁座7の孔7aを開放する開放位置に位置している。具体的には、弁体8のフランジ部8bの一部が、弁座7の成形面7bから突出している。
【0033】
そして、弁体8の傾斜面8eが、弁座7の座面7cと離れて対面しているため、弁座7の座面7cと弁体8の傾斜面8eとの間に、隙間が形成されている。なお、弁体8が開放位置に位置する際に、弁体8の抜止部8cは、弁座7の外端部に止められている。即ち、弁体8の開放位置は、弁体8が弁座7から最も突出している位置である。
【0034】
タイヤ10を成形する工程が進むにつれて、ゴムが開閉弁5,6に近づく。そして、成形室1a内の空気圧が低下したり、ゴムが弁体8に接したりするため、弁体8は、加力部9からの力に反して、弁座7に対して移動する。これにより、弁体8の傾斜面8eが、弁座7の座面7cに近づく。
【0035】
その後、弁体8が弁座7の孔7aを閉止する閉止位置に位置する。これにより、弁体8の傾斜面8eが弁座7の座面7cに接するため、開閉弁5,6は、成形室1a内の気体を排出不能な閉状態となる。このとき、弁体8の成形面8dは、弁座7の成形面7bと面一となっている。なお、弁体8が閉止位置に位置する際に、弁体8の成形面8dと弁座7の成形面7bとは段差状となっていてもよい。
【0036】
ところで、突起内凹部3cにゴムが進入するタイミングは、陸部13bを成形する陸部成形用の凹部にゴムが進入するタイミングよりも、遅くなる。そこで、第1開閉弁5の弁体8が開放位置から閉止位置へ移動する距離(以下、「(弁体8の)ストローク」ともいう)は、第1距離W1であることに対して、第2開閉弁6の弁体8のストロークは、第1距離W1よりも大きい第2距離W2としている。
【0037】
これにより、第2開閉弁6の孔7aを閉止するタイミング、即ち、第2開閉弁6が閉状態となるタイミングは、遅くなる。これにより、突起内凹部3cに配置される第2開閉弁6が閉状態となるタイミングを、適正なタイミングとすることができる。なお、弁体8のストローク(第1及び第2距離)W1,W2は、特に限定されない。
【0038】
例えば、第2距離W2は、第1距離W1の120%〜300%とすることが好ましく、150%〜250%とすることがより好ましい。また、例えば、第1距離W1と第2距離W2との差は、0.1mm以上とすることが好ましく、0.3mm以上とすることがより好ましい。また、例えば、第1距離W1は、0.15mm〜0.25mmとし、第2距離W2は、0.3mm〜0.5mmとすることができる。
【0039】
しかも、第2開閉弁6のコイルばね9aのばね定数は、第1開閉弁5のコイルばね9aのばね定数よりも、大きくなっている。これにより、第2開閉弁6において、例えば、ゴムが弁体8に接して弁体8を押す際に、コイルばね9aによる抗力を大きくすることができる。したがって、第2開閉弁6の弁体8が開放位置から閉止位置へ移動する時間を、長くすることができるため、第2開閉弁6が閉状態となるタイミングをさらに遅くすることができる。
【0040】
なお、第2開閉弁6のコイルばね9aのばね定数が大きいことによって、第2開閉弁6が閉状態となるタイミングを遅くするために、第2開閉弁6の弁体8のストローク(第2距離)W2が大きくなり過ぎることを抑制することもできている。なお、コイルばね9aのばね定数は、特に限定されない。
【0041】
また、第2開閉弁6の弁体8のストローク(第2距離)W2が大きいため、第2開閉弁6の弁体8の、傾斜面8eが成形面8dに対する傾斜角度θ2は、第1開閉弁5の弁体8の、傾斜面8eが成形面8dに対する傾斜角度θ1よりも、小さくなっている。これにより、例えば、ゴムは、弁体8の成形面8dに到達した後に、傾斜面8e側に進み難くなる。
【0042】
したがって、弁体8の傾斜面8eと弁座7の座面7cとの隙間にゴムが侵入することを抑制することができる。その結果、弁体8の傾斜面8eと弁座7の座面7cとの間でゴムの噛みこみが発生することを抑制することができる。なお、弁体8の、傾斜面8eが成形面8dに対する傾斜角度θ1,θ2は、特に限定されない。
【0043】
さらに、第2開閉弁6における弁体8の傾斜面8eの、ゴムに対する摩擦係数は、第1開閉弁5における弁体8の傾斜面8eの、ゴムに対する摩擦係数よりも、小さくなっている。第2開閉弁6における弁体8の傾斜面8eの構成は、特に限定されないが、例えば、第2開閉弁6における弁体8の傾斜面8eは、ゴムに対する摩擦係数が小さい材質(例えば、フッ素樹脂)の被膜を備えていている、という構成でもよい。
【0044】
これにより、弁体8の傾斜面8eと弁座7の座面7cとの隙間にゴムが侵入した場合でも、弁体8が移動することに伴って、弁体8の傾斜面8eにゴムが引っ掛かることを抑制することができる。したがって、弁体8の傾斜面8eと弁座7の座面7cとの間でゴムの噛みこみが発生することを抑制することができる。なお、弁体8の傾斜面8eの、ゴムに対する摩擦係数は、特に限定されない。
【0045】
また、弁体8の傾斜面8eだけでなく、弁座7の座面7cも、ゴムに対する摩擦係数が小さい材質の被膜を備えていてもよい。即ち、第2開閉弁6における弁座7の座面7cの、ゴムに対する摩擦係数は、第1開閉弁5における弁座7の座面7cの、ゴムに対する摩擦係数よりも、小さくてもよい。なお、第2開閉弁6の弁座7及び弁体8は、表面全域に、ゴムに対する摩擦係数が小さい材質の被膜を備えている、という構成でもよい。
【0046】
以上より、本実施形態に係るタイヤモールド1は、タイヤ10を成形するための成形室1aを構成する複数のモールド2,3を備え、前記モールド2,3は、前記成形室1a内の気体を排出するための複数の開閉弁5,6を備え、前記開閉弁5,6は、前記成形室1a内の気体が流入する孔7aを有する弁座7と、前記孔7aを閉止する閉止位置と前記孔7aを開放する開放位置とに移動可能な弁体8と、を備え、前記複数の開閉弁5,6は、前記弁体8が前記開放位置から前記閉止位置へ移動する距離が第1距離W1である第1開閉弁5と、前記弁体8が前記開放位置から前記閉止位置へ移動する距離が前記第1距離W1よりも大きい第2距離W2である第2開閉弁6と、を含む。
【0047】
斯かる構成によれば、第1開閉弁5の弁体8が開放位置から閉止位置へ移動する距離は、第1距離W1であり、第2開閉弁6の弁体8が開放位置から閉止位置へ移動する距離は、第1距離W1よりも大きい第2距離W2である。これにより、第1開閉弁5と第2開閉弁6とがそれぞれ適切な位置に配置されることによって、開閉弁5,6の孔7aを閉止するタイミングを適切にすることができる。
【0048】
また、本実施形態に係るタイヤモールド1においては、前記開閉弁5,6は、前記弁体8が前記閉止位置から前記開放位置へ向かうように、弾性力によって前記弁体8に力を加えるコイルばね9aを備え、前記第2開閉弁6の、前記コイルばね9aのばね定数は、前記第1開閉弁5の、前記コイルばね9aのばね定数よりも、大きい、という構成である。
【0049】
斯かる構成によれば、第2開閉弁6のコイルばね9aのばね定数が、大きいため、第2開閉弁6の弁体8が開放位置から閉止位置へ移動する時間を、長くすることができる。これにより、開閉弁5,6の孔7aを閉止するタイミングを適切にすることができる。
【0050】
また、本実施形態に係るタイヤモールド1においては、前記弁体8は、端部にフランジ部8bを備え、前記フランジ部8bは、前記成形室1aを構成する成形面8dと、前記成形面8dに傾斜して連接し、前記弁座7と接する傾斜面8eと、を備え、前記第2開閉弁6の、前記傾斜面8eが前記成形面8dに対する傾斜角度θ2は、前記第1開閉弁5の、前記傾斜面8eが前記成形面8dに対する傾斜角度θ1よりも、小さい、という構成である。
【0051】
斯かる構成によれば、第2開閉弁6において、弁体8が開放位置に位置する際に、弁体8の傾斜面8eと弁座7との隙間が大きくなることに対して、弁体8の傾斜面8eが成形面8dに対する傾斜角度θ2は、小さくなっている。これにより、第2距離W2が大きくなりつつも、弁体8の傾斜面8eと弁座7との隙間にゴムが侵入することを抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態に係るタイヤモールド1においては、前記弁体8は、端部にフランジ部8bを備え、前記フランジ部8bは、前記成形室1aを構成する成形面8dと、前記成形面8dに傾斜して連接し、前記弁座7と接する傾斜面8eと、を備え、前記第2開閉弁6の前記傾斜面8eのゴムに対する摩擦係数は、前記第1開閉弁5の前記傾斜面8eのゴムに対する摩擦係数よりも、小さい、という構成である。
【0053】
斯かる構成によれば、第2開閉弁6において、弁体8が開放位置に位置する際に、弁体8の傾斜面8eと弁座7との隙間が大きくなることに対して、弁体8の傾斜面8eの、ゴムに対する摩擦係数は、小さくなっている。これにより、弁体8の傾斜面8eと弁座7との隙間にゴムが侵入した場合に、弁体8の移動に伴って、弁体8の傾斜面8eにゴムが引っ掛かることを抑制することができる。
【0054】
なお、タイヤモールド1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、タイヤモールド1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0055】
(1)上記実施形態に係るタイヤモールド1においては、モールド3は、弁体8のストロークが第1距離W1である第1開閉弁5と、弁体8のストロークが第2距離W2である第2開閉弁6とを備えている、という構成である。しかしながら、タイヤモールド1は、斯かる構成に限られない。
【0056】
例えば、モールド3は、弁体8のストロークが第1距離W1及び第2距離W2と異なる第3距離である第3開閉弁をさらに備えている、という構成でもよい。即ち、モールド2,3は、弁体8のストロークが異なる開閉弁を、二種類に限られず、三種類以上備えている、という構成でもよい。
【0057】
(2)また、上記実施形態に係るタイヤモールド1においては、トレッドモールド3は、第1開閉弁5及び第2開閉弁6を備えている、という構成である。しかしながら、タイヤモールド1は、斯かる構成に限られない。例えば、サイドモールド2は、第1開閉弁5及び第2開閉弁6を備えている、という構成でもよい。
【0058】
(3)また、上記実施形態に係るタイヤモールド1においては、加力部9は、弾性力によって弁体8に力を加えるコイルばね9aを備えている、という構成である。しかしながら、タイヤモールド1は、斯かる構成に限られない。例えば、加力部9は、弾性力によって弁体8に力を加える板ばね又はゴム等の弾性体を備えている、という構成でもよい。また、加力部9は、弾性力以外の力によって弁体8に力を加える、という構成でもよい。
【0059】
(4)また、上記実施形態に係るタイヤモールド1においては、第2開閉弁6のコイルばね9aのばね定数は、第1開閉弁5のコイルばね9aのばね定数よりも、大きい、という構成である。しかしながら、タイヤモールド1は、斯かる構成に限られない。例えば、第2開閉弁6のコイルばね9aのばね定数は、第1開閉弁5のコイルばね9aのばね定数と、同じ、という構成でもよく、第1開閉弁5のコイルばね9aのばね定数よりも、小さい、という構成でもよい。
【0060】
(5)また、上記実施形態に係るタイヤモールド1においては、第2開閉弁6の弁体8の、傾斜面8eが成形面8dに対する傾斜角度θ2は、第1開閉弁5の弁体8、傾斜面8eが成形面8dに対する傾斜角度θ1よりも、小さい、という構成である。しかしながら、タイヤモールド1は、斯かる構成に限られない。例えば、第2開閉弁6の当該傾斜角度θ2は、第1開閉弁5の当該傾斜角度θ1と、同じ、という構成でもよく、第1開閉弁5の当該傾斜角度θ1よりも、大きい、という構成でもよい。
【0061】
(6)また、上記実施形態に係るタイヤモールド1においては、第2開閉弁6の傾斜面8eのゴムに対する摩擦係数は、第1開閉弁5の傾斜面8eのゴムに対する摩擦係数よりも、小さい、という構成である。しかしながら、タイヤモールド1は、斯かる構成に限られない。例えば、第2開閉弁6の当該摩擦係数は、第1開閉弁5の当該摩擦係数と、同じ、という構成でもよく、第1開閉弁5の当該摩擦係数よりも、大きい、という構成でもよい。
【0062】
(7)また、上記実施形態に係るタイヤモールド1においては、第1開閉弁5は、陸部13bを成形する陸部成形用の凹部に配置され、第2開閉弁6は、突起内凹部3cに配置されている、という構成である。しかしながら、タイヤモールド1は、斯かる構成に限られない。即ち、第1開閉弁5及び第2開閉弁6の位置は、特に限定されない。また、例えば、モールド2,3の成形面2a,3aの領域において、開閉弁5,6の弁体8のストロークの平均が、異なっている、という構成でもよい。
【0063】
例えば、タイヤ10の形状に起因して、ショルダー陸部13bを成形するショルダー陸部成形用凹部にゴムが進入するタイミングは、ミドル陸部13bを成形するミドル陸部成形用凹部にゴムが進入するタイミングよりも、遅くなる。そこで、ショルダー陸部成形用凹部に配置される開閉弁の、弁体8のストロークの平均は、ミドル陸部成形用凹部に配置される開閉弁の、弁体8のストロークの平均よりも、大きい、という構成でもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…タイヤモールド、1a…成形室、2…サイドモールド、2a…成形面、3…トレッドモールド、3a…成形面、3b…成形突起、3c…突起内凹部、4…モールド本体、4a…ベントホール、5…第1開閉弁、6…第2開閉弁、7…弁座、7a…孔、7b…成形面、7c…座面、8…弁体、8a…本体部、8b…フランジ部、8c…抜止部、8d…成形面、8e…傾斜面、9…加力部、9a…コイルばね、10…タイヤ、11…ビード部、12…サイドウォール部、13…トレッド部、13a…主溝、13b…陸部、13c…溝内凸部、D1…タイヤ幅方向、D2…タイヤ径方向、S1…タイヤ赤道面
図1
図2
図3
図4
図5
図6