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特開2020-185764温度変色媒体、電子機器、および表示システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-185764(P2020-185764A)
(43)【公開日】2020年11月19日
(54)【発明の名称】温度変色媒体、電子機器、および表示システム
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/28 20060101AFI20201023BHJP
   B41M 5/40 20060101ALI20201023BHJP
   B43L 1/00 20060101ALN20201023BHJP
   G09F 19/00 20060101ALN20201023BHJP
【FI】
   B41M5/28 280
   B41M5/40 213
   B43L1/00 Z
   G09F19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-93522(P2019-93522)
(22)【出願日】2019年5月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】石原 孝幸
【テーマコード(参考)】
2H026
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026AA09
2H026BB02
2H026BB21
2H026DD03
2H026DD53
(57)【要約】
【課題】画像の表示を繰り返し使用することができる媒体、特に温度の変化によって変色する媒体を提供する。また、本実施の他の形態は、当該媒体を備える電子機器および表示システムを提供する。
【解決手段】温度の変化によって変色する感温インクが含浸または塗布された媒体であって、前記媒体は、含浸または塗布された領域の全体が第1色彩(第1色相、第1明度、および第1彩度)を有する第1状態と、含浸または塗布された領域の少なくとも一部が第2色彩(第2色相、第2明度、および第2彩度)を有する第2状態と、を有し、前記第1色彩は、前記第2色彩と異なり、前記第1状態から前記第2状態へ可逆変化する温度変色媒体を用いる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度の変化によって変色する感温インクが含浸または塗布された媒体であって、
前記媒体は、
含浸または塗布された領域の全体が第1色彩を有する第1状態と、
含浸または塗布された領域の少なくとも一部が第2色彩を有する第2状態と、
を有し、
前記第1色彩は、前記第2色彩と異なり、
前記第1状態から前記第2状態へ可逆変化する温度変色媒体。
【請求項2】
前記媒体は、さらに、含浸または塗布された領域の少なくとも一部が第3色彩を有する第3状態と、を有し、
前記第3色彩は、前記第1色彩および前記第2色彩と異なり、
前記第2状態から前記第3状態へ可逆変化する請求項1に記載の温度変色媒体。
【請求項3】
前記媒体は、2種以上の前記感温インクが含浸または塗布されている請求項1または2に記載の温度変色媒体。
【請求項4】
前記媒体は、紙、布、木材、金属、ガラス、プラスチック、及び樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の温度変色媒体。
【請求項5】
前記第2状態において、前記媒体内に立体像が形成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の温度変色媒体。
【請求項6】
温度の変化によって変色する感温インクが含浸または塗布された媒体と、
前記媒体を加熱または冷却して前記感温インクの発色状態を変更する発色変更機構と、
を備え、
前記感温インクの発色状態は、
含浸または塗布された領域の全体が第1色彩を有する第1状態と、
含浸または塗布された領域の少なくとも一部が第2色彩を有する第2状態と、
を有し、
前記第1色彩は、前記第2色彩と異なり、
前記発色変更機構により、前記第1状態から前記第2状態へ可逆変化する電子機器。
【請求項7】
さらに、前記発色変更機構を制御する制御装置を備える請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
さらに、前記感温インクの発色状態の情報を記憶する記憶装置を備え、
前記情報を基に前記感温インクの発色状態を変更する請求項6または7に記載の電子機器。
【請求項9】
前記感温インクの発色状態は、さらに、少なくとも一部が第3色彩を有する第3状態と、を有し、
前記第3色彩は、前記第1色彩および前記第2色彩と異なり、
前記発色変更機構により、前記第2状態から前記第3状態へ可逆変化する請求項6〜8のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項10】
前記媒体は、複数種の前記感温インクが含浸または塗布されている請求項6〜9のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項11】
前記媒体は、紙、布、木材、金属、ガラス、プラスチック、及び樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含む請求項6〜10のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項12】
前記発色変更機構は、ペルチェ素子を含む請求項6〜11のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項13】
前記発色変更機構は、レーザー照射装置を含む請求項6〜12のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項14】
前記発色変更機構は、気体を噴射して温度を低下させる冷却機構を含む請求項6〜13のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項15】
請求項6〜14のいずれか1項に記載の電子機器を備える掲示ボート。
【請求項16】
請求項6〜14のいずれか1項に記載の電子機器を備えるロール式切り替え表示装置。
【請求項17】
温度の変化によって変色する感温インクが含浸または塗布された媒体と、
前記媒体を加熱または冷却して前記感温インクの発色状態を変更する発色変更機構を有する発色変更装置と、
前記発色変更機構を制御する制御装置と、
を備え、
前記感温インクの発色状態は、
含浸または塗布された領域の全体が第1色彩を有する第1状態と、
含浸または塗布された領域の少なくとも一部が第2色彩を有する第2状態と、
を有し、
前記第1色彩は、前記第2色彩と異なり、
前記発色変更装置により、前記第1状態から前記第2状態へ可逆変化する表示システム。
【請求項18】
さらに、前記感温インクの発色状態の情報を記憶する記憶装置を備え、
前記情報を基に前記感温インクの発色状態を変更する請求項17に記載の表示システム。
【請求項19】
前記制御装置は、前記第1状態と前記第2状態を比較して色彩情報の差分を利用して発色変更機構を制御する請求項17または18に記載の表示システム。
【請求項20】
前記感温インクの発色状態は、さらに、少なくとも一部が第3色彩を有する第3状態と、を有し、
前記第3色彩は、前記第1色彩および前記第2色彩と異なり、
前記発色変更装置より、前記第2状態から前記第3状態へ可逆変化する請求項17〜19のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項21】
前記媒体は、複数種の前記感温インクが含浸または塗布されている請求項17〜20のいずれか1項に記載の表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施の形態は、温度変色媒体、電子機器、および表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の観点から、各種分野ではペーパーレス化の流れがあり、用紙などの媒体に印刷に係るコストを可能な限り削減することが求められている。しかしながら、ペーパーレス化を行うことのメリットを理解しているにもかかわらず、用紙で取引先に資料を提出する必要がある、用紙ならメモ書きができるがペーパーレス化するとかえって業務効率が悪くなる、などの印刷物を求める要請がかなり多く残っている。
【0003】
ペーパーレス化をせずに、コストを可能な限り削減する方法として、例えば、ユーザーが画像をカラー画像として印刷する前に、コスト情報をユーザーに提示し、自覚させる技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−211702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような技術では、ユーザーが自覚してコストの削減に努めることはできるがカラーで印刷する必要があるものにおいてはコストの削減には至らない。また、用紙などの媒体に印刷するため、媒体自体も役目を終えたら再び使用することなく廃棄されており、このような現状は、媒体のコストの観点、および環境問題の観点から好ましくない。
【0006】
本実施の形態は、文字や画像の表示を繰り返し使用することができる媒体、特に温度の変化によって変色する媒体を提供する。また、本実施の他の形態は、当該媒体を備える電子機器および表示システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態の一態様は、温度の変化によって変色する感温インクが含浸または塗布された媒体であって、前記媒体は、含浸または塗布された領域の全体が第1色彩を有する第1状態と、含浸または塗布された領域の少なくとも一部が第2色彩を有する第2状態と、を有し、前記第1色彩は、前記第2色彩と異なり、前記第1状態から前記第2状態へ可逆変化する温度変色媒体である。
【0008】
また、本実施の形態の他の一態様は、温度の変化によって変色する感温インクが含浸または塗布された媒体と、前記媒体を加熱または冷却して前記感温インクの発色状態を変更する発色変更機構と、を備え、前記感温インクの発色状態は、含浸または塗布された領域の全体が第1色彩を有する第1状態と、含浸または塗布された領域の少なくとも一部が第2色彩を有する第2状態と、を有し、前記第1色彩は、前記第2色彩と異なり、前記発色変更機構により、前記第1状態から前記第2状態へ可逆変化する電子機器である。
【0009】
また、本実施の形態の他の一態様は、上記の電子機器を備える掲示ボードやロール式切り替え表示装置などの表示装置である。
【0010】
また、本実施の形態の他の一態様は、温度の変化によって変色する感温インクが含浸または塗布された媒体と、前記媒体を加熱または冷却して前記感温インクの発色状態を変更する発色変更機構を有する発色変更装置と、前記発色変更機構を制御する制御装置と、を備え、前記感温インクの発色状態は、含浸または塗布された領域の全体が第1色彩を有する第1状態と、含浸または塗布された領域の少なくとも一部が第2色彩を有する第2状態と、を有し、前記第1色彩は、前記第2色彩と異なり、前記発色変更装置により、前記第1状態から前記第2状態へ可逆変化する表示システムである。
【発明の効果】
【0011】
本実施の形態によれば、文字や画像の表示を繰り返し使用することができる媒体、特に温度の変化によって変色する媒体を提供することができる。また、本実施の他の形態は、当該媒体を備える電子機器および表示システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施の形態の一態様の温度変色媒体の一例を示す図である。
図2図2は、本実施の形態の一態様の温度変色媒体を備える電子機器の一例を示す図である。
図3図3は、本実施の形態の一態様の温度変色媒体を備える電子機器の一例を示す図である。
図4図4は、本実施の形態の一態様の温度変色媒体を備える電子機器の一例を示す図である。
図5図5は、本実施の形態の一態様の温度変色媒体を備える電子機器の一例を示す図である。
図6図6は、本実施の形態の一態様の温度変色媒体を備える電子機器の一例を示す図である。
図7図7は、本実施の形態の一態様の温度変色媒体を備える電子機器の一例を示す図である。
図8図8は、本実施の形態の一態様の温度変色媒体を備える電子機器の一例を示す図である。
図9図9は、本実施の形態の一態様の温度変色媒体をカラーフィルターとして用いた表示素子の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して、本実施の形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
また、以下に示す実施の形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置などを特定するものではない。本実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
本実施の形態に係る温度の変化によって変色する媒体(温度変色媒体ともいう)について説明する。本実施の形態に係る温度変色媒体は、温度の変化によって変色するインク(感温インクともいう)を用いている。感温インクには、発色成分、発色をアシストする成分、および変色温度調整成分が含まれており、これらの成分の結合または解離によってインクが変色(発色および消色を含む)する。
【0016】
感温インクの色彩は、赤色、マゼンタ、橙色、黄色、緑色、青色、シアン、紫色、黒色、などがあり、これらを組み合わせ、調整することで白色を含むあらゆる色彩を得ることができる。感温インクは、たとえば、−30〜+60℃の範囲内で変色し、可逆的に変色を繰り返することができる。たとえば、感温インクを温めると、有色が無色に変化したり、無色が有色に変化したり、有色が異なる有色に変化したりするインクがある。また、上記とは逆に、感温インクを冷やすと、有色が無色に変化したり、無色が有色に変化したり、有色が異なる有色に変化したりするインクもある。
【0017】
上記のような感温インクを用いた温度変色媒体の製造方法と温度変色媒体の色彩の変化について図1を用いて説明する。
【0018】
まず、感温インクを用いた温度変色媒体の製造方法を説明する。図1(a)に示すように、媒体2に感温インク4を含浸または塗布する。感温インク4を媒体2に含浸または塗布することで図1(b)に示すように、温度変色媒体5を得ることができる。なお、本明細書等において、「感温インクが含浸または塗布された(温度変色)媒体」という表現は、「感温インクが含まれる(温度変色)媒体」を含む。
【0019】
感温インク4の含浸または塗布の方法は、特に限定されず、たとえば、スプレーする方法が挙げられる。なお、含浸または塗布する感温インク4は、1種または2種以上用いることができる。たとえば、モノクロ表示の場合は1種の感温インク4のみを用いて表示することができ、カラー表示の場合は2種以上の感温インク4を用いて表示することができる。
【0020】
次に、温度変色媒体の色彩の変化を説明する。図1(c)に示すように、温度変色媒体5は、含浸または塗布された領域の全体が第1色相、第1明度、および第1彩度である第1色彩6を有する第1状態である。たとえば、第1状態において、感温インク4が無色の場合、温度変色媒体5に媒体2の色彩が現れる。第1状態において、感温インク4が有色の場合、温度変色媒体5に当該感温インク4の色彩が現れる。また、第1状態において、温度変色媒体5に含まれる感温インク4の部分が薄く、媒体2がガラスなどの透明なものに光が透過する場合、有色の箇所に光が透過し、温度変色媒体5に有色透明の色彩が現れる。なお、媒体2が透明なものでない場合は、温度変色媒体5に媒体2の色彩と当該有色透明の色彩が組み合わさった色彩が現れる。
【0021】
次に、図1(d)に示すように、温度変色媒体5は、第1色彩6を有する第1状態から含浸または塗布された領域の少なくとも一部が第2色相、第2明度、および第2彩度である第2色彩8を有する第2状態となる。なお、第1色彩6と第2色彩8は互いに異なる。つまり、第1色相と第2色相、第1明度と第2明度、および第1彩度と第2彩度のうち少なくとも1つの要素が異なっている。第1状態から第2状態への変化は、加熱機構または冷却機構により少なくとも一部が加熱または冷却されることで温度変色媒体5に含まれる感温インク4が変色することにより生じる。
【0022】
たとえば、第1状態から第2状態への変化させる部分を用いて、文字、画像などを表示することができる。また、第1状態から第2状態へ変化させる部分は平面に限定されず、立体面でもよい。さらに、第1状態から第2状態へ変化させて媒体内に立体像を形成してもよい。
【0023】
また、温度変色媒体5は、さらに、含浸または塗布された領域の少なくとも一部が第3色相、第3明度、および第3彩度である第3色彩を有する第3状態となってもよく、また、これ以上の変色を伴ってもよい。なお、第3色彩は、第1色彩6と第2色彩8は互いに異なる。
【0024】
温度変色媒体5に含まれる感温インク4は可逆的に変色を繰り返す(可逆変化する)ことができるため、たとえば、温度変色媒体5として印刷用紙を用いる場合、印刷用紙を部分的に加熱または冷却することで文字、画像などを印刷することができ、当該印刷物が不要になったら全体を加熱または冷却することで白紙にすることが可能であり、印刷用紙を再利用することができる。
【0025】
また、温度の変化によって変色しないインク(非感温インクともいう)を併用してもよい。たとえば、会議資料用の用紙としてヘッダーにconfidentialなどの文字を予め入れておくなど用途に合わせて適宜、非感温インクを用いてもよい。
【0026】
媒体2は、感温インク4が含浸または塗布するものであれば、特に限定されず、たとえば、紙、布、木材、金属、ガラス、プラスチック、及び樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0027】
上述した温度変色媒体を備えた電子機器について説明する。当該電子機器は、温度変色媒体と、当該温度変色媒体を加熱または冷却して当該温度変色媒体に含まれる感温インクの発色状態を変更する発色変更機構と、を備える。
【0028】
発色変更機構としては、たとえば、加熱機構や冷却機構が挙げられる。加熱機構は、たとえば、抵抗体、ペルチェ素子、レーザー照射装置、加熱ペン(ペン先が加熱されたペン)などが挙げられ、これらを使用して温度変色媒体を全体的または部分的に加熱することができる。加熱機構は、たとえば、ペルチェ素子、ガス(冷媒)噴出装置、冷却ペン(ペン先が冷却されたペン)などが挙げられ、これらを使用して温度変色媒体を全体的または部分的に冷却することができる。なお、ガス(冷媒)としては、たとえば、プロパン、プロピレン、ブタン、イソブタン、二酸化炭素、アンモニア、テトラフルオロエタン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボンなどが挙げられる。
【0029】
また、当該電子機器は、さらに発色変更機構を制御する制御装置を備えてもよい。
【0030】
たとえば、制御装置からの命令にしたがって、ガス(冷媒)噴出装置のガスバルブの開閉(開閉の反復回数、反復周期、開く時間の長さなど)を制御することで、ガス(冷媒)の噴出状態を可変設定することができる。また、制御装置からの命令にしたがって、レーザー照射装置のレーザーの条件(照射強度、照射時間、照射位置など)を制御することで、レーザー照射状態を可変設定することができる。さらに、制御装置からの命令にしたがって、ペルチェ素子に流れる電流の向きや量を制御することで、ペルチェ素子の金属の発熱(加熱)状態または吸熱(冷却)状態を可変設定することができる。
【0031】
また、当該電子機器は、さらに感温インクの発色状態の情報などを記憶する記憶装置を備えてもよい。
【0032】
たとえば、現時点での感温インクの発色状態(現画像)の情報を記憶装置に記憶しておくことで、一度、現時点とは異なる感温インクの発色状態(他画像)になった後に記憶装置から情報を取得して感温インクの発色状態を変更し、再度、現画像を表示することができる。
【0033】
また、現時点での感温インクの発色状態(現画像)の情報を記憶装置に記憶しておき、次に発色させる感温インクの発色状態(次画像)の情報と現画像の情報を制御装置が比較して色彩情報の差分を利用して発色変更機構を制御することで効率よく次画像を表示することもできる。
【0034】
さらに、なんらかの原因で感温インクが発色されない場合、その情報をユーザーに伝える手段を当該電子機器に備えていてもよい。たとえば、その情報を文字で媒体に表示する手段などが挙げられる。
【0035】
当該電子機器が備える温度変色媒体は、感温インクを含んでおり、当該感温インクは可逆的に変色を繰り返することができるため、たとえば、温度変色媒体として印刷用紙を用いる場合、印刷用紙を部分的に加熱または冷却することで文字、画像などを印刷することができ、当該印刷物が不要になったら全体を加熱または冷却することで白紙にすることが可能であり、印刷用紙を再利用することができる。
【0036】
ここで、実施の形態の一態様の電子機器を備える各種表示装置を具体的に示す。
【0037】
本実施の形態の電子機器を備えるプリンターの印刷について図2を用いて説明する。感温インクが含浸または塗布された温度変色媒体10である印刷用紙にプリントヘッド16に設けられた加熱機構12および冷却機構14を備える発色変更機構を有する発色変更装置を用いて文字や画像を表示(印刷)することができる。なお、文字や画像を表示(印刷)する際は、加熱機構12および冷却機構14が図中の矢印の方向に繰り返し動作し、印刷用紙を加熱・冷却することで所望の感温インクの発色状態を維持するようにする。
【0038】
たとえば、加熱すると透明から黒色に変色する感温インクを用いて温度変色媒体となる白地の印刷用紙に文字を表示(印刷)することができる。また、加熱すると透明からシアン、透明からマゼンタ、透明から黄色に変色する3種の感温インクを用いて温度変色媒体となる白地の印刷用紙にカラー画像を表示(印刷)することができる。また、これに限定されず、冷却すると発色する感温インクを用いて温度変色媒体となる白地の印刷用紙に文字やカラー画像を表示(印刷)してもよいし、加熱すると発色する感温インクと冷却すると発色する感温インクを調整して温度変色媒体となる白地の印刷用紙に文字やカラー画像を表示(印刷)してもよい。
【0039】
印刷用紙を部分的に加熱または冷却することで文字、画像などを印刷することができ、当該印刷物が不要になったら全体を加熱または冷却することで白紙にすることが可能であり、印刷用紙を再利用することができる。また、文字やカラー画像を表示(印刷)は、加熱機構および冷却機構により行われるため、従来のプリンターのようなトナー・インクカートリッジの交換が不要である。このため、本実施の形態の電子機器を備えるプリンターは、コストの観点、および環境問題の観点から好ましい。
【0040】
また、本実施の形態の電子機器を備えるホワイトボートや黒板のような掲示ボードについて図3を用いて説明する。感温インクが含浸または塗布された温度変色媒体10である掲示ボードに加熱ペンなどの加熱機構12を用いて文字や画像を表示することができる。また、温度変色媒体10である掲示ボードに冷却機構14を図中の矢印の方向に動作することで加熱された箇所(文字や画像が表示されている箇所)を冷却することで文字や画像を消す(非表示)することができる。なお、加熱ペンなどの加熱機構12を複数種用意し、複数種の色彩を表示することもできる。また、これに限定されず、加熱機構12と冷却機構14を入れ替えて、冷却ペンなどの冷却機構14を用いて文字や画像を表示するような構成にしてもよい。
【0041】
また、本実施の形態の電子機器を備えるロール式切り替え表示装置について図4を用いて説明する。感温インクが含浸または塗布された温度変色媒体10にプリントヘッド16に設けられた加熱機構12および冷却機構14を備える発色変更機構を有する発色変更装置を用いて文字や画像を表示(印刷)することができる。なお、発色変更装置は1か所に限られず、2か所以上設けられていてもよい。たとえば、文字や画像を表示(印刷)しながら、不要になった文字や画像を消す(非表示)することができる。
【0042】
また、加熱機構および冷却機構を備える発色変更機構を有する発色変更装置および温度変色媒体を備える構成の一例を図5に示す。当該構成は、ペルチェ素子を含む冷却板などの冷却機構24上に、発熱体がマトリクス状に印刷された加熱機構22が配置されており、加熱機構22および冷却機構24上に感温インク20が塗布されている。なお、ここでは、感温インク20自体が温度変色媒体である。
【0043】
また、加熱機構および冷却機構を備える発色変更機構を有する発色変更装置および温度変色媒体を備える構成の他の一例を図6に示す。当該構成は、ガラス板21上に感温インク20が塗布されている。なお、ここでは、感温インク20自体が温度変色媒体である。感温インク20が塗布されたガラス板21の下側(感温インク20が塗布されていない面側)に加熱機構12および冷却機構14を備える発色変更機構を有する発色変更装置がある。
【0044】
上記のような構成を備える機器の一例としては、たとえば、カラーライトが挙げられる。図5においてペルチェ素子を含む冷却板にITO(Indium Tin Oxide)、酸化スズ、酸化亜鉛などの透明導電膜を用いた場合、または図6においてガラス板21を用いた場合、感温インクが塗布されていない面側から光を照射し、感温インクの発色状態を変更することでライトの部品などを交換することなく、あらゆる色彩の光を照射することができる。
【0045】
図7は、ペルチェ素子34上に感温インク30が塗布されている図である。前述したようにペルチェ素子34は、流れる電流の向きや量を制御することでペルチェ素子の金属の発熱(加熱)状態または吸熱(冷却)状態を可変設定することができるため、加熱機構と冷却機構を別々に用意する必要がないため好ましい。また、感温インク30はペルチェ素子の金属に直接塗布してもよいし、金属上に感温インクを含む温度変色媒体を設けてもよい。
【0046】
また、立体的なオブジェの作製に実施の形態の一態様を用いることもできる。図8に示す温度変色媒体40が例えば、透明な樹脂に加熱することで発色する感温インクが含まれている場合、加熱機構42aおよび加熱機構42bであるレーザー照射装置を用いて、温度変色媒体40に対してレーザーを2方向から照射することでレーザーが交差する点Aが加熱される。このように方法によって、温度変色媒体40である透明の樹脂の内部に文字や画像を表示することができ、また、平面に限られず、立体面を表示することもできる。さらに、温度変色媒体40である透明の樹脂の内部に立体像を形成することもできる。
【0047】
上記のような構成は、たとえば、スノードームの内側のオブジェ、ハーバリウムのようなオブジェ等の立体的なものに応用することができる。
【0048】
また、本実施の形態の電子機器を備える表示装置の一例について図9を用いて説明する。図9は、本実施の形態の一態様の温度変色媒体をカラーフィルターとして用いた表示素子の断面模式図である。表示素子は、基板56と、カラーフィルター(B)51bと、カラーフィルター(G)50gと、カラーフィルター(R)50rと、陽極57と、発光層58と、陰極59と、を備える。カラーフィルター(B)50b、カラーフィルター(G)50g、およびカラーフィルター(R)50rは、温度変色媒体からなる。また、表示素子は、カラーフィルター(B)51b、カラーフィルター(G)50g、およびカラーフィルター(R)50rは、加熱機構(図示ぜず)および冷却機構(図示ぜず)により発色状態が変更される。
【0049】
たとえば、発光層58からの光が、青色に発色しているカラーフィルター(B)51b、緑色に発色しているカラーフィルター(G)50g、および赤色に発色しているカラーフィルター(R)50rを介して青色、緑色、および赤色に変化し、これらが合わさって白色を表示することができる。また、カラーフィルター(B)51b、カラーフィルター(G)50g、およびカラーフィルター(R)50rがすべて黒色になるように制御することで発光層58からの光を遮断することで黒色を表示することができる。
【0050】
また、上述したような表示に関する表示システムを構築することもできる。当該表示システムは、少なくとも温度の変化によって変色する感温インクが含浸または塗布された媒体と、前記媒体を加熱または冷却して前記感温インクの発色状態を変更する発色変更機構を有する発色変更装置と、前記発色変更機構を制御する制御装置と、を備え、上記で説明したような媒体の可逆変化をするものであればよい。
【0051】
[アプリケーション]
実施の形態の一態様の温度変色媒体は、例えば、プリンター、黒板、ホワイトボート、ライト、ロール式切り替え表示装置、テレビ、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、デジタルサイネージ等の表示装置、オブジェ等の様々な用途において用いることができる。実施の形態の一態様の温度変色媒体を備えることで文字や画像の表示を繰り返し使用することができ、コストおよび環境問題に配慮した媒体、上記媒体を備えた電子機器・製品を提供することができる。
【0052】
[その他の実施の形態]
上記のように、いくつかの実施の形態について記載したが、開示の一部をなす論述及び図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。このように、本実施の形態は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本実施の形態の温度変色媒体、電子機器、及び表示システムは、日常生活で用いる広告等の紙媒体の表示、黒板、ホワイトボート、液晶の代替え、電飾ディスプレイ、温度計等の各種の分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
2…媒体、4…感温インク、5…温度変色媒体、6…第1色彩、8…第2色彩、10…温度変色媒体、12…加熱機構、14…冷却機構、16…プリントヘッド、20…感温インク、21…ガラス板、22…加熱機構、24…冷却機構、30…感温インク、34…ペルチェ素子、40…温度変色媒体、42a…加熱機構、42b…加熱機構、50b…カラーフィルター(B)、50g…カラーフィルター(G)、50r…カラーフィルター(R)、56…基板、57…陽極、58…発光層、59…陰極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9