特開2020-185914(P2020-185914A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2020185914-ベントダクト 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-185914(P2020-185914A)
(43)【公開日】2020年11月19日
(54)【発明の名称】ベントダクト
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/26 20060101AFI20201023BHJP
【FI】
   B60H1/26 671B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-92273(P2019-92273)
(22)【出願日】2019年5月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】杉江 信二
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA22
3L211DA17
3L211DA96
(57)【要約】
【課題】水漏れを防止する。
【解決手段】ベントダクト10は、パネルPの取付開口Paに挿入して配置されるダクト本体12と、ダクト本体12に設けられ、パネルPの表側に重なるように配置されるフランジ部26と、フランジ部26から張り出してパネルPの表側に当たるように配置されるシール部28とを備えている。また、ベントダクト10は、ダクト本体12から張り出すように形成され、先端がパネルPの裏側に重なるように配置される係止部30と、係止部30に一体的に形成され、インテグラルヒンジ34で折り返してパネルPの裏側に弾力的に当たるように配置可能に構成された板バネ部32と、板バネ部32を折り返し姿勢で保持する保持部36とを備えている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を構成するパネルに形成された取付開口に取り付けられるベントダクトであって、
前記取付開口に挿入して配置されるダクト本体と、
前記ダクト本体に設けられ、前記パネルにおける前記取付開口の開口縁表側に重なるように配置されるフランジ部と、
前記フランジ部から張り出して前記パネルにおける前記取付開口の開口縁表側に当たるように配置され、可撓性を有するシール部と、
前記ダクト本体から張り出すように形成され、先端が前記パネルにおける前記取付開口の開口縁裏側に重なるように配置される係止部と、
合成樹脂の成形品である前記ダクト本体の前記係止部に一体的に形成され、前記係止部との間に設けられたインテグラルヒンジで折り返して前記パネルの裏側に弾力的に当たるように配置可能に構成された板バネ部と、
前記ダクト本体に設けられ、前記板バネ部を前記インテグラルヒンジで折り返した折り返し姿勢で保持する保持部と、を備えている
ことを特徴とするベントダクト。
【請求項2】
前記保持部は、前記ダクト本体の外面と前記係止部との間に設けられている請求項1記載のベントダクト。
【請求項3】
前記板バネ部には、前記折り返し姿勢で前記パネルに当たる面に、凹凸からなる滑り止め部が設けられている請求項1または2記載のベントダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、開閉弁により通気路を開閉するベントダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、車室内の空気を換気するための排気口として、クォーターベントダクトと呼ばれるダクトが設けられている(例えば特許文献1参照)。クォーターベントダクトは、通気路を有する筒状のダクト本体と、ゴムなどの可撓性を有する材料で形成されて、通気路を開閉可能な開閉弁とを備えている。クォーターベントダクトは、ダクト本体を車体に形成された孔に嵌め合わせて、ダクト本体のフランジ部に設けられたシール部を車体に押し当てることで、シール部によって車体との間を封止するようになっている。開閉弁は、ダクト本体において通気路の上側を画成する上壁部に接合されて通気路に垂れ下がっており、車両内外の気圧差により、通気路を塞ぐ閉じ姿勢から車両外向きへのみ開くようになっている。そして、クォーターベントダクトは、開閉弁が車両外向きへ開放することで車室内からの空気の排出を許容する一方で、自重で閉じ姿勢となる開閉弁により車両外側から埃や水などが車室側へ入り込むのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−199856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シール部は、例えばオレフィン系エラストマーなどの弾力性を有する材料で形成されている。このようなベントダクトは、長期間使用しているとシール部が劣化して、水漏れの発生などの問題が生じることがある。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、長期間に亘って水漏れを防止し得るベントダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係るベントダクトは、
車体を構成するパネルに形成された取付開口に取り付けられるベントダクトであって、
前記取付開口に挿入して配置されるダクト本体と、
前記ダクト本体に設けられ、前記パネルにおける前記取付開口の開口縁表側に重なるように配置されるフランジ部と、
前記フランジ部から張り出して前記パネルにおける前記取付開口の開口縁表側に当たるように配置され、可撓性を有するシール部と、
前記ダクト本体から張り出すように形成され、先端が前記パネルにおける前記取付開口の開口縁裏側に重なるように配置される係止部と、
合成樹脂の成形品である前記ダクト本体の前記係止部に一体的に形成され、前記係止部との間に設けられたインテグラルヒンジで折り返して前記パネルの裏側に弾力的に当たるように配置可能に構成された板バネ部と、
前記ダクト本体に設けられ、前記板バネ部を前記インテグラルヒンジで折り返した折り返し姿勢で保持する保持部と、を備えていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るベントダクトによれば、長期間に亘って水漏れを防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係るベントダクトを示す概略斜視図である。
図2】実施例のベントダクトを示す正面図である。
図3】実施例のベントダクトを示す背面図である。
図4】(a)は実施例のベントダクトを示す側面図であり、(b)は図2のA−A線断面図である。
図5図2のB−B線断面図である。
図6】実施例の係止部を示す正面図である。
図7】実施例のベントダクトの車体への取り付け状態を示す断面図である。
図8】車体へ取り付けたときの板バネ部を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係るベントダクトにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例】
【0010】
図1に示すように、実施例に係るベントダクト10は、車両外側および車両の車室側に通じて空気が流通可能な通気路14が設けられたダクト本体12と、通気路14を開閉する開閉弁16とを備えている。ベントダクト10は、例えばリアバンパーの内側に、通気路14が開口するように設置される。ベントダクト10は、上縁部をダクト本体12に固定した開閉弁16が通気路14に吊り下がり、可撓性を有する開閉弁16が、通気路14の車室側に向けた内向きと通気路14の車両外側に向けた外向きとに開閉可能に構成される。ここで、開閉弁16は、自重による内向きの変位がダクト本体12で規制されて、通気路14を塞ぐ閉じ姿勢になると共に、閉じ姿勢から外向きへ変位することで通気路14を開放するよう構成される。
【0011】
ベントダクト10は、自重で閉じ姿勢となった開閉弁16によって、通気路14を塞いで車両外側からの埃や水などの異物の侵入を防止する。また、ベントダクト10は、ドアを閉じたときなどの車室内外の気圧差により開閉弁16が外向きへ開くことで、車室内から車両外側へ向けた空気の流通を許容する。なお、以下の説明では、ベントダクト10において、通気路14における車両外側に通じる側を前側といい、通気路14における車室側に通じる側を後側という。また、前後に揺動する開閉弁16の開閉方向と直交する水平方向が、ベントダクト10の横方向になる。
【0012】
ダクト本体12は、ポリプロピレン(PP)などの熱可塑性樹脂を材料とする硬質の樹脂成形品である。図1図3に示すように、実施例のダクト本体12は、横長略矩形状の開口を有する筒形に形成されている。ダクト本体12は、通気路14の上側を区画する上壁部18と、この上壁部18と通気路14を挟んで対向し、通気路14の下側を区画する下壁部20と、互いに通気路14を左右に挟んで対向し、通気路14の横側を区画する一対の横壁部22,22とにより外郭が構成されている。ダクト本体12は、上下および左右の壁部18,20,22,22において通気路14の前側開口を画成する前端が、前後方向の同じ位置に揃っている。また、上壁部18の後端は、下壁部20の後端よりわずかに後側に位置すると共に、上下の壁部18,20の後端は、前後位置が横方向にそれぞれ揃っている。更に、左右の横壁部22,22は、後端が上壁部18から下壁部20側に向かうにつれて前側へ傾いている。ダクト本体12には、上壁部18と下壁部20との間に延在して通気路14を左右に区切る板状の区画壁部24が、横方向に離間して複数形成されている(図3参照)。区画壁部24は、後端が上壁部18の後端から下壁部20の後端を結んで形成され、前端が上壁部18の後端から下壁部20の前端に向けて傾斜するように形成されている(図4(b)および図5参照)。すなわち、区画壁部24は、前端が上から下に向かうにつれて前側へ変位するように傾いている。
【0013】
ダクト本体12には、上壁部18の受け面、横壁部22の受け面、区画壁部24の前端の受け面および下壁部20の受け面が連なって、上から下側に向かうにつれて前側へ傾斜する開閉弁16の受け面が形成される。ダクト本体12は、前記受け面によって、開閉弁16を上から下に向かうにつれて前側へ傾斜する閉じ姿勢で支持すると共に、閉じ姿勢を越えた後側への揺動を規制している。
【0014】
図1図3に示すように、ダクト本体12には、該ダクト本体12の外郭をなす各壁部18,20,22,22の前端から通気路14と反対側へ延出する板状のフランジ部26が全周に亘って形成されている。フランジ部26は、通気路14を画成する壁部18,20,22から外方へ延出するように形成される。ベントダクト10は、車体を構成するパネルP(図8参照)に開設された取付開口Paにダクト本体12の外郭をなす壁部18,20,22,22を挿入すると共に、フランジ部26をパネルPにおける取付開口Paの開口縁に重ねた状態でパネルPに取り付けられる。
【0015】
図7に示すように、フランジ部26には、ベントダクト10をパネルPに取り付けた際に該パネルPに相対する後面に、シール部28が設けられている。シール部28は、オレフィン系エラストマー(TPO)やスチレン系エラストマー等のエラストマー、エチレン−プロピレン−ジエンゴム等のゴム系材料など、可撓性を有し、弾性変形可能な材料で構成されている。シール部28は、フランジ部26の後面に接合した接合部分からパネルPへの当接部分が舌片状に延びるように形成されている。シール部28は、パネルPへの当接部分が可撓性を有している。シール部28は、フランジ部26の全周に亘って延在している。シール部28は、ダクト本体12の全周を囲むように配置されている(図3参照)。そして、シール部28は、ベントダクト10をパネルPに取り付けた際に、パネルPにおける取付開口Paの開口縁に弾力的に当たって、フランジ部26とパネルPとの間を封止するようになっている(図7参照)。
【0016】
図3図5および図7に示すように、上壁部18および下壁部20には、ベントダクト10をパネルPに取り付けるための係止部30が設けられている。係止部30は、上壁部18および下壁部20において横方向に離間して複数設けられている。実施例では、2つの係止部30が左右に離間して配置されている。係止部30は、壁部18,20の外面から通気路14と反対側へ突出した後に前方へ屈曲する鉤形状に形成されている。係止部30の先端は、ベントダクト10をパネルPに取り付けた際に、取付開口Paの開口縁裏側に重なるようになっている(図7参照)。
【0017】
図4図5および図7に示すように、ベントダクト10は、合成樹脂の成形品であるダクト本体12の係止部30に一体的に形成された板バネ部32を備えている。板バネ部32は、ダクト本体12の型成形時に、板厚方向へ弾性変形可能な程度に薄く成形された板状片である。板バネ部32は、係止部30におけるパネルPの裏側に面する先端外縁に亘って設けられている。板バネ部32は、係止部30に繋がる根元部分に、板バネ部32の板厚よりも薄肉化されたインテグラルヒンジ34を備えている。板バネ部32は、係止部30との間に設けられたインテグラルヒンジ34で成形時の姿勢(成形姿勢、図5の二点鎖線)から使用時の姿勢(折り返し姿勢、図5の実線)に折り返し可能になっている。板バネ部32は、成形姿勢においてダクト本体12の上壁部18(下壁部20)の外面から離れる方向へ延びる型成形に有利な形状で成形される。板バネ部32は、折り返し姿勢においてパネルPの裏側に弾力的に当たるように配置可能に構成されている(図7参照)。図5の拡大図に示すように、板バネ部32には、折り返し姿勢でパネルPの裏側に当たる面に凹凸からなる滑り止め部33が設けられている。
【0018】
図4図5および図7に示すように、ダクト本体12には、板バネ部32をインテグラルヒンジ34で折り返した折り返し姿勢で保持する保持部36が設けられている。保持部36は、ダクト本体12における上壁部18(下壁部20)の外面と、係止部30における該外面に対向する部分との間に設けられている。図6に示すように、保持部36は、係止部30における横方向の一縁に寄せて設けられている。また、保持部36は、係止部30の底側に寄せて形成されており、ダクト本体12の外面に近づくような係止部30の先端の弾性変形を妨げないようにしてある。保持部36は、ダクト本体12と係止部30との間に亘って延びる板部分に形成された溝状部分である。保持部36は、外向きにあいた開口と比べて底部分が広くなっている。保持部36は、折り返し姿勢にした板バネ部32を受け入れて、板バネ部32の先端に肉厚に形成された掛止部32aを底部分に引っ掛けて保持可能になっている。
【0019】
ベントダクト10は、板バネ部32をインテグラルヒンジ34でダクト本体12側へ折り返して、先端の掛止部32aを保持部36に嵌め込んで折り返し姿勢にする。これにより、板バネ部32は、係止部30の先端に重なるように配置される。ベントダクト10は、係止部30をダクト本体12側に弾性変形させつつ、取付開口Paからダクト本体12を挿入することで、パネルPに取り付ける。図7に示すように、パネルPに設置したベントダクト10は、シール部28がパネルPの表側に当たると共に、板バネ部32がパネルPの裏側に当たり、弾性復帰した係止部30の先端がパネルPの裏側に重なるように配置される。
【0020】
図8に示すように、ベントダクト10は、パネルPに取り付けた際に、パネルPの裏側に弾力的に当たる板バネ部32によって、外側へ向けて押すような付勢力が作用するので、パネルPにガタつきなく設置することができる。また、ベントダクト10は、板バネ部32による付勢によってシール部28をパネルPに密着させることができ、水漏れを好適に防止できる。仮にシール部28が劣化してシール部28の反発力が弱くなった場合であっても、外側へ向けて押すように作用する板バネ部32によってパネルPとシール部28とを封止し続けることができる。従って、ベントダクト10によれば、長期間使用しても、パネルPに対してガタつくことを防止できると共に、シール部28による封止状態を維持して水漏れを防止できる。
【0021】
ベントダクト10は、保持部36がダクト本体12の外面と係止部30との間に設けられているので、板バネ部32をダクト本体12の外面に向けて折り返すことになる。そのため、取付開口Paにダクト本体12および係止部30を挿入する際に、板バネ部32が邪魔にならないようにすることができる。そして、ベントダクト10は、折り返し姿勢でパネルPに当たる面に凹凸からなる滑り止め部33が板バネ部32に設けてあることで、パネルPに対してガタつくことを防止できる。
【0022】
(変更例)
前述した実施例に限らず、例えば以下のように変更してもよい。
(1)板バネ部に設けた滑り止め部を省略してもよい。
(2)ベントダクトの形状は、実施例の形状に限らない。例えば、ダクト本体は、左右の横壁部の間および/または区画壁部の間に、仕切壁部を設け、通気路を上下に区切るよう構成してもよい。この場合に、下側の通気路の上側を画成する仕切壁部の後縁に開閉弁の上縁部を取り付けるようにしてもよい。このように、上下に区画された通気路のそれぞれを、上下に配置した複数の開閉弁で塞ぐ構成にも採用し得る。また、ベントダクトは、左右に並べて配置した複数の開閉弁により通気路を塞ぐように構成してもよい。実施例では、ダクト本体が横長矩形形状の開口を有する筒形に形成されているが、縦長矩形形状や正方形などの開口を有する筒形であってもよい。
【符号の説明】
【0023】
10 ベントダクト,12 ダクト本体,26 フランジ部,28 シール部,
30 係止部,32 板バネ部,33 滑り止め部,34 インテグラルヒンジ,
36 保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8