【実施例】
【0010】
図1に示すように、実施例に係るベントダクト10は、車両外側および車両の車室側に通じて空気が流通可能な通気路14が設けられたダクト本体12と、通気路14を開閉する開閉弁16とを備えている。ベントダクト10は、例えばリアバンパーの内側に、通気路14が開口するように設置される。ベントダクト10は、上縁部をダクト本体12に固定した開閉弁16が通気路14に吊り下がり、可撓性を有する開閉弁16が、通気路14の車室側に向けた内向きと通気路14の車両外側に向けた外向きとに開閉可能に構成される。ここで、開閉弁16は、自重による内向きの変位がダクト本体12で規制されて、通気路14を塞ぐ閉じ姿勢になると共に、閉じ姿勢から外向きへ変位することで通気路14を開放するよう構成される。
【0011】
ベントダクト10は、自重で閉じ姿勢となった開閉弁16によって、通気路14を塞いで車両外側からの埃や水などの異物の侵入を防止する。また、ベントダクト10は、ドアを閉じたときなどの車室内外の気圧差により開閉弁16が外向きへ開くことで、車室内から車両外側へ向けた空気の流通を許容する。なお、以下の説明では、ベントダクト10において、通気路14における車両外側に通じる側を前側といい、通気路14における車室側に通じる側を後側という。また、前後に揺動する開閉弁16の開閉方向と直交する水平方向が、ベントダクト10の横方向になる。
【0012】
ダクト本体12は、ポリプロピレン(PP)などの熱可塑性樹脂を材料とする硬質の樹脂成形品である。
図1〜
図3に示すように、実施例のダクト本体12は、横長略矩形状の開口を有する筒形に形成されている。ダクト本体12は、通気路14の上側を区画する上壁部18と、この上壁部18と通気路14を挟んで対向し、通気路14の下側を区画する下壁部20と、互いに通気路14を左右に挟んで対向し、通気路14の横側を区画する一対の横壁部22,22とにより外郭が構成されている。ダクト本体12は、上下および左右の壁部18,20,22,22において通気路14の前側開口を画成する前端が、前後方向の同じ位置に揃っている。また、上壁部18の後端は、下壁部20の後端よりわずかに後側に位置すると共に、上下の壁部18,20の後端は、前後位置が横方向にそれぞれ揃っている。更に、左右の横壁部22,22は、後端が上壁部18から下壁部20側に向かうにつれて前側へ傾いている。ダクト本体12には、上壁部18と下壁部20との間に延在して通気路14を左右に区切る板状の区画壁部24が、横方向に離間して複数形成されている(
図3参照)。区画壁部24は、後端が上壁部18の後端から下壁部20の後端を結んで形成され、前端が上壁部18の後端から下壁部20の前端に向けて傾斜するように形成されている(
図4(b)および
図5参照)。すなわち、区画壁部24は、前端が上から下に向かうにつれて前側へ変位するように傾いている。
【0013】
ダクト本体12には、上壁部18の受け面、横壁部22の受け面、区画壁部24の前端の受け面および下壁部20の受け面が連なって、上から下側に向かうにつれて前側へ傾斜する開閉弁16の受け面が形成される。ダクト本体12は、前記受け面によって、開閉弁16を上から下に向かうにつれて前側へ傾斜する閉じ姿勢で支持すると共に、閉じ姿勢を越えた後側への揺動を規制している。
【0014】
図1〜
図3に示すように、ダクト本体12には、該ダクト本体12の外郭をなす各壁部18,20,22,22の前端から通気路14と反対側へ延出する板状のフランジ部26が全周に亘って形成されている。フランジ部26は、通気路14を画成する壁部18,20,22から外方へ延出するように形成される。ベントダクト10は、車体を構成するパネルP(
図8参照)に開設された取付開口Paにダクト本体12の外郭をなす壁部18,20,22,22を挿入すると共に、フランジ部26をパネルPにおける取付開口Paの開口縁に重ねた状態でパネルPに取り付けられる。
【0015】
図7に示すように、フランジ部26には、ベントダクト10をパネルPに取り付けた際に該パネルPに相対する後面に、シール部28が設けられている。シール部28は、オレフィン系エラストマー(TPO)やスチレン系エラストマー等のエラストマー、エチレン−プロピレン−ジエンゴム等のゴム系材料など、可撓性を有し、弾性変形可能な材料で構成されている。シール部28は、フランジ部26の後面に接合した接合部分からパネルPへの当接部分が舌片状に延びるように形成されている。シール部28は、パネルPへの当接部分が可撓性を有している。シール部28は、フランジ部26の全周に亘って延在している。シール部28は、ダクト本体12の全周を囲むように配置されている(
図3参照)。そして、シール部28は、ベントダクト10をパネルPに取り付けた際に、パネルPにおける取付開口Paの開口縁に弾力的に当たって、フランジ部26とパネルPとの間を封止するようになっている(
図7参照)。
【0016】
図3〜
図5および
図7に示すように、上壁部18および下壁部20には、ベントダクト10をパネルPに取り付けるための係止部30が設けられている。係止部30は、上壁部18および下壁部20において横方向に離間して複数設けられている。実施例では、2つの係止部30が左右に離間して配置されている。係止部30は、壁部18,20の外面から通気路14と反対側へ突出した後に前方へ屈曲する鉤形状に形成されている。係止部30の先端は、ベントダクト10をパネルPに取り付けた際に、取付開口Paの開口縁裏側に重なるようになっている(
図7参照)。
【0017】
図4、
図5および
図7に示すように、ベントダクト10は、合成樹脂の成形品であるダクト本体12の係止部30に一体的に形成された板バネ部32を備えている。板バネ部32は、ダクト本体12の型成形時に、板厚方向へ弾性変形可能な程度に薄く成形された板状片である。板バネ部32は、係止部30におけるパネルPの裏側に面する先端外縁に亘って設けられている。板バネ部32は、係止部30に繋がる根元部分に、板バネ部32の板厚よりも薄肉化されたインテグラルヒンジ34を備えている。板バネ部32は、係止部30との間に設けられたインテグラルヒンジ34で成形時の姿勢(成形姿勢、
図5の二点鎖線)から使用時の姿勢(折り返し姿勢、
図5の実線)に折り返し可能になっている。板バネ部32は、成形姿勢においてダクト本体12の上壁部18(下壁部20)の外面から離れる方向へ延びる型成形に有利な形状で成形される。板バネ部32は、折り返し姿勢においてパネルPの裏側に弾力的に当たるように配置可能に構成されている(
図7参照)。
図5の拡大図に示すように、板バネ部32には、折り返し姿勢でパネルPの裏側に当たる面に凹凸からなる滑り止め部33が設けられている。
【0018】
図4、
図5および
図7に示すように、ダクト本体12には、板バネ部32をインテグラルヒンジ34で折り返した折り返し姿勢で保持する保持部36が設けられている。保持部36は、ダクト本体12における上壁部18(下壁部20)の外面と、係止部30における該外面に対向する部分との間に設けられている。
図6に示すように、保持部36は、係止部30における横方向の一縁に寄せて設けられている。また、保持部36は、係止部30の底側に寄せて形成されており、ダクト本体12の外面に近づくような係止部30の先端の弾性変形を妨げないようにしてある。保持部36は、ダクト本体12と係止部30との間に亘って延びる板部分に形成された溝状部分である。保持部36は、外向きにあいた開口と比べて底部分が広くなっている。保持部36は、折り返し姿勢にした板バネ部32を受け入れて、板バネ部32の先端に肉厚に形成された掛止部32aを底部分に引っ掛けて保持可能になっている。
【0019】
ベントダクト10は、板バネ部32をインテグラルヒンジ34でダクト本体12側へ折り返して、先端の掛止部32aを保持部36に嵌め込んで折り返し姿勢にする。これにより、板バネ部32は、係止部30の先端に重なるように配置される。ベントダクト10は、係止部30をダクト本体12側に弾性変形させつつ、取付開口Paからダクト本体12を挿入することで、パネルPに取り付ける。
図7に示すように、パネルPに設置したベントダクト10は、シール部28がパネルPの表側に当たると共に、板バネ部32がパネルPの裏側に当たり、弾性復帰した係止部30の先端がパネルPの裏側に重なるように配置される。
【0020】
図8に示すように、ベントダクト10は、パネルPに取り付けた際に、パネルPの裏側に弾力的に当たる板バネ部32によって、外側へ向けて押すような付勢力が作用するので、パネルPにガタつきなく設置することができる。また、ベントダクト10は、板バネ部32による付勢によってシール部28をパネルPに密着させることができ、水漏れを好適に防止できる。仮にシール部28が劣化してシール部28の反発力が弱くなった場合であっても、外側へ向けて押すように作用する板バネ部32によってパネルPとシール部28とを封止し続けることができる。従って、ベントダクト10によれば、長期間使用しても、パネルPに対してガタつくことを防止できると共に、シール部28による封止状態を維持して水漏れを防止できる。
【0021】
ベントダクト10は、保持部36がダクト本体12の外面と係止部30との間に設けられているので、板バネ部32をダクト本体12の外面に向けて折り返すことになる。そのため、取付開口Paにダクト本体12および係止部30を挿入する際に、板バネ部32が邪魔にならないようにすることができる。そして、ベントダクト10は、折り返し姿勢でパネルPに当たる面に凹凸からなる滑り止め部33が板バネ部32に設けてあることで、パネルPに対してガタつくことを防止できる。
【0022】
(変更例)
前述した実施例に限らず、例えば以下のように変更してもよい。
(1)板バネ部に設けた滑り止め部を省略してもよい。
(2)ベントダクトの形状は、実施例の形状に限らない。例えば、ダクト本体は、左右の横壁部の間および/または区画壁部の間に、仕切壁部を設け、通気路を上下に区切るよう構成してもよい。この場合に、下側の通気路の上側を画成する仕切壁部の後縁に開閉弁の上縁部を取り付けるようにしてもよい。このように、上下に区画された通気路のそれぞれを、上下に配置した複数の開閉弁で塞ぐ構成にも採用し得る。また、ベントダクトは、左右に並べて配置した複数の開閉弁により通気路を塞ぐように構成してもよい。実施例では、ダクト本体が横長矩形形状の開口を有する筒形に形成されているが、縦長矩形形状や正方形などの開口を有する筒形であってもよい。