【解決手段】本発明による空気汚染物質収集装置は、(A)(a)微細多孔質流通チャネル及び化学選択的被膜を備え、上面及び下面を有し、制御期間にわたって加熱されている間、機能を維持するとともに捕捉された空気汚染物質を脱着させる多孔質部材と、(b)捕捉された空気汚染物質を蒸発させる温度まで加熱可能な薄膜抵抗性加熱器であり、前記多孔質部材の前記上面と接触した、薄膜抵抗性加熱器とを備えた、空気汚染物質収集器と、(B)(c)前記多孔質部材及び前記薄膜抵抗性加熱器が関連付けられた第1の基板であり、前記多孔質部材及び前記薄膜抵抗性加熱器が当該空気汚染物質収集基部から熱的に絶縁された、第1の基板を備えた、空気汚染物質収集基部と、を具備している。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0014]本発明の一実施形態は、航空機空気汚染物質分析装置において使用する空気汚染物質収集装置であって、(A)空気汚染物質収集器であり、(a)微細多孔質流通チャネル及び化学選択的被膜を備え、上面及び下面を有し、制御期間にわたって加熱されている間、機能を維持するとともに捕捉された空気汚染物質を脱着させる多孔質部材と、(b)捕捉された空気汚染物質を蒸発させる温度まで加熱可能な薄膜抵抗性加熱器であり、多孔質部材の上面と接触した、薄膜抵抗性加熱器と、を備えた、空気汚染物質収集器と、(B)空気汚染物質収集基部であり、(c)多孔質部材及び薄膜抵抗性加熱器が関連付けられた第1の基板であり、多孔質部材及び薄膜抵抗性加熱器が当該空気汚染物質収集基部から熱的に絶縁された、第1の基板を備えた、空気汚染物質収集基部と、を備えた、空気汚染物質収集装置を提供する。
【0007】
[0015]好適な一実施形態において、多孔質部材は、微細多孔質膜と、当該膜の上面に直接堆積された薄膜抵抗性加熱器とを備える。
【0008】
[0016]装置の一実施形態において、第1の基板は、多孔質部材を当該第1の基板に接続するテザー(通常は、複数のテザー)を提供するチャネルを有する。
【0009】
[0017]別の実施形態においては、空気汚染物質を補足し、捕捉した空気汚染物質を脱着させる方法であって、空気汚染物質収集装置の一実施形態に空気を通過させるステップと、多孔質部材により空気汚染物質を捕捉するステップと、捕捉した空気汚染物質を蒸発させて脱着させるのに十分な温度まで多孔質部材を加熱するステップと、を含む、方法が提供される。
【0010】
[0018]この方法の実施形態によれば、空気汚染物質は、エアロゾル、微粒子、並びに/又は(1つ若しくは複数の)蒸気を含む。
【0011】
[0019]加熱は、ホットスポットの局在も過加熱もなく、多孔質部材の表面全体で均一であるのが好都合である。
【0012】
[0020]他の利点として、空気汚染物質収集装置は、「使い捨て」ではなく、例えば、付着に耐性を示し、航空機空気汚染物質分析装置において、少なくとも1つの汚染物質の濃度を測定して少なくとも1つの汚染物質の種類を決定するのに繰り返し使用可能である。
【0013】
[0021]別の利点として、特に2つ以上の航空機空気汚染物質収集装置が利用される場合は、特性(例えば、蒸気圧力及び/又は密度)の類似する異なる流体をより正確に分類することができる。
【0014】
[0022]通常の一実施形態においては、大容量キャビンの汚染物質濃度がECS(環境制御システム)の通気口から現れるレベルに上昇する前に遅延が生じることになるため、装置をECSの通気口又は導管に位置付けることができる。ただし、例えばコックピット、キャビン、頭上の荷物室、収納棚、ギャレーエリア、航空電子機器室、補助電源ユニット等、装置には多様な場所が適している。或いは、装置を1つの場所に設置し、例えばパイプ類、管類、及び/又は導管等の多様な空気移動装置を介して、空気を別の場所から分析装置に案内することができる。
【0015】
[0023]上記の代替又は追加として、例えば抽気管又はその近傍等に装置を位置付け可能であり、エンジンからの加圧空気がECSに送られる。抽気管又はその近傍の装置の利点として、各エンジンからの抽気のサンプリングにより、欠陥エンジンの通知及び識別が可能であり、汚染された抽気の欠陥エンジンからECSへの供給を乗員が停止可能である。これに対して、装置がキャビンに位置付けられていると、キャビンからのサンプリングであれECS通気口又はECS導管からのサンプリングであれ、汚染物質源が存在することは通知されるものの、汚染源となっているエンジン又はAPU(補助電源ユニット)については通知されない。
【0016】
[0024]通常、空気汚染物質収集装置を具備する航空機空気分析装置の一実施形態は、(a)少なくとも1つの航空機空気汚染物質収集装置であり、(i)化学選択的被膜を有する多孔質部材と、(ii)薄膜抵抗性加熱器と、を備えた、少なくとも1つの航空機空気汚染物質収集装置と、(b)上面及び下面を有する第1の基板であり、少なくとも1つの汚染物質収集器が関連付けられ、多孔質部材及び薄膜抵抗性加熱器が熱的に絶縁された、第1の基板を備えた空気汚染物質収集基部と、(c)空気汚染物質の塊が重量測定センサに追加又は重量測定センサから除去された場合に、比例共振周波数応答を生成するように構成された重量測定センサと、(d)上面及び下面を有する第2の基板であり、重量測定センサが上面と関連付けられ、重量測定センサが、一定距離だけ汚染物質収集器から分離され、重量測定センサが、加熱された多孔質部材から脱着された空気汚染物質を受容するように構成された、第2の基板と、(e)上面及び下面を有する支持部であり、上面及び下面を通過する少なくとも1つの航空機空気入口ポートを備え、第2の基板の下面が当該支持部の上面と関連付けられた、支持部と、(f)空気汚染物質が重量測定センサに追加又は重量測定センサから除去された場合に重量測定センサにより生成された比例共振周波数応答を測定するように構成された共振周波数測定装置と、(g)空気汚染物質認識プログラム及び校正データを有するコンピュータ可読媒体と、(h)空気汚染物質を種類により分類するように構成されたモジュールと、重量測定センサにより生成された比例共振周波数応答の大きさとの比較に校正データを用いて、空気汚染物質の濃度を計算するようにプログラムされたモジュールと、を含む空気汚染物質認識プログラムを実行するように構成されたプロセッサと、(i)多孔質部材の加熱前後に、少なくとも1つの航空機空気入口ポート及び少なくとも1つの空気汚染物質収集装置を通る航空機空気の流れを生成するように構成されたポンプと、を備える。
【0017】
[0025]航空機空気汚染物質分析装置は、重量測定センサの応答を正確に分解するのに十分な測定率で周波数を測定する測定回路を具備しており、通常は、重量測定センサごとに約10〜約100回/秒の測定である。測定は、分析装置の他の機能、特に、微細多孔質媒体を加熱する機能と同期する。測定は通常、最大周波数変化及び重量測定センサの応答の回復率を分解するのに十分な継続時間にわたり、例えば通常は、約1秒〜約4秒の長さの継続時間である。
【0018】
[0026]所定の期間(例えば、約10〜約60秒)にわたる所定率での十分な量のサンプル(例えば、約500〜約2000標準立方センチメートル/分(sccm))が分析装置を流れることにより、センサの周波数対時間カーブの形状を分解するのに測定ノイズレベルを十分に上回る応答の大きさが実現され、通常は、約4:1以上の信号対雑音比である。
【0019】
[0027]異なる汚染物質の移動、吸着、及び脱着の動態によって、異なる汚染物質ごとに応答形状が異なる。例示として、参照しやすいように4つの異なる化合物(例えば、ニトロメタン 過酸化アセトン、二硝酸エチレングリコール、及び2,3−ジメチル−2,3−ジニトロブタン)が単一のグラフに重ね合わされるとすれば、これらの化合物のセンサ周波数対時間応答の形状は、蒸気圧力が低い(重い)化合物よりも蒸気圧力が高い(軽い)化合物の方が膜から高速に放出されることを示す。例えば、過酸化アセトン、二硝酸エチレングリコール、及び2,3−ジメチル−2,3−ジニトロブタンよりも前に、ニトロメタンが放出される。
【0020】
[0028]ポンプにより生成された多孔質部材(例えば、微細多孔質媒体、より好ましくは微細多孔質膜)を通るサンプル流路に沿った流れは、多孔質部材が加熱される前にゼロ又はほぼゼロ(例えば、約5sccm以下)となるように停止されるものとする。例えば通常は、流れは加熱の少なくとも0.2秒前に停止されるものとする。
【0021】
[0029]周波数を繰り返し測定しつつ、約0.1秒で少なくとも約400℃まで昇温させる電圧ステップを印加することにより、多孔質部材を加熱するのが好ましい。通常、多孔質部材は、少なくとも約1秒間、好ましくは少なくとも約2秒間(例えば、最大約10秒間以上)にわたって、少なくとも約200℃、より一般的には少なくとも約400℃、いくつかの実施形態においては約550℃まで加熱されることにより、次の測定が「再出発」として開始となり得るように少なくとも1つの汚染物質を蒸発(脱着)させる。重量測定センサのドリフトを取り除く(「セルフゼロ(self−zero)」)ため、センサの応答は、多孔質部材の加熱直前のセンサの周波数を参照とする。
【0022】
[0030]多孔質部材が加熱されていない場合、分析装置は、固定温度(例えば、約30℃〜約70℃の範囲の固定温度)に維持されるのが好ましい。
【0023】
[0031]パターン認識アルゴリズムを用いて、各汚染物質をその一意の応答、センサの周波数対時間カーブの形状により認識することで、少なくとも1つの汚染物質を分類可能である。これは、汚染物質の材料特性の影響を受けるものであり、蒸気圧力、熱容量、凝縮熱、蒸発熱、吸着及び脱着の動態、並びに拡散率のいずれかのうちの1つ又は複数が挙げられるが、これらに限定されない。汚染物質固有の応答形状による少なくとも1つの汚染物質の分類には、多様なアルゴリズムを使用可能である。好適なアルゴリズムとしては、例えばニューラルネット、主成分分析、サポートベクターマシンに基づく分類、線形判別分析、及び決定ツリー分析が挙げられる。
【0024】
[0032]所定の校正ファイル(例えば、少なくとも1つの応答の大きさの関数として少なくとも1つの汚染物質濃度の値を与えるカーブ又はルックアップテーブル)に対して少なくとも1つの応答の大きさを比較することにより、少なくとも1つの汚染物質の濃度を計算することができる。
【0025】
[0033]重量測定センサ(単一のセンサ又はセンサアレイを含み得る)は、センサに対して追加又は除去された塊に対する正確な比例周波数応答を生成する。好ましくはこの応答は、少量の移動汚染物質(検体)により過減衰されないように、広いダイナミックレンジにわたって提供される。重量測定センサは、増幅発振回路の一部として動作することにより、その共振を維持する。
【0026】
[0034]以下、本発明の各構成要素をより詳しく説明するが、同様の構成要素は同様の参照番号を有する。
【0027】
[0035]
図1、
図2A、
図2B、及び
図3に示す例示的な実施形態において、航空機空気汚染物質収集装置700は、第1の基板上層101A及び第1の基板下層101Bを有する第1の基板主層101を備えた第1の基板1011を備えた基部10(
図3)と、第1の基板上の多孔質部材100(例えば、微細多孔質膜100A)と、を備える。多孔質部材は、上面111及び下面112を有する(
図2B及び
図3)とともに、(多孔質部材の上面及び下面を通る)微細多孔質流通チャネル115及び化学選択的被膜150(
図1、
図2A、及び
図3に示す)を備えており、制御期間にわたって加熱されている間、機能を維持するとともに捕捉された空気汚染物質を脱着させる。また、捕捉された空気汚染物質を蒸発させる温度まで加熱可能な薄膜抵抗性加熱器175を備えており、当該加熱器は、多孔質部材の上面(中及び/又は上)と接触している。層101A及び101B、多孔質部材100、加熱器175、配線(後述)、並びに任意選択的なパッケージ層(同じく後述)が、例えば付加プロセスによって第1の基板主層101と関連付けられ(例えば、第1の基板主層101に搭載又は組み付けられる)、例えば除去プロセスによって、チャネル115及びテザー190(後述)のほか、多孔質部材100の下側の空洞が作製される(
図3に示す)。
【0028】
[0036]
図1、
図2A、
図2B、及び
図3は、第1の基板上層101A及び第1の基板下層101Bを有する第1の基板主層101を備えた第1の基板101’を示しているが、当業者であれば、多孔質部材100を構成する他のプロセスに層101A及び/又は101Bを必要としない場合があることが認識されるはずである。
【0029】
[0037]
図1、
図2A、及び
図3に示すように、航空機空気汚染物質収集装置700の一実施形態は通常、(以下により詳しく論じる通り)電子機器の一部として、少なくとも1つの電気配線を具備する。例えば、
図1、
図2A、及び
図3は、加熱器175と連通するワイヤボンド(図示せず)と連通可能な電気配線620を示している。また、任意選択で、
図1、
図2A、及び
図3に示すように、航空機空気汚染物質収集装置700の一実施形態は、例えば低抵抗をもたらすとともに、ワイヤボンドによる確実な電気コンタクトの構成及びワイヤボンドから加熱器への加熱器電流のより効率的な移動を可能にする配線の少なくとも一部を覆うパッケージ層699を含んでいてもよい。いくつかの用途においては、パッケージ層が金で構成され、電気配線が白金等の高温金属で構成され、高温でも電気的且つ機械的に安定を維持する。
【0030】
[0038]通常、化学選択的被膜150は、部材の全表面(例えば、上面、下面、流通チャネル、
図2Aに示さないチャネル/細孔中の被膜)のほか、加熱器及び電気配線の上部を覆うが、パッケージ層699は覆わない。
【0031】
[0039]多孔質部材及び加熱器は、基部10及び第1の基板1011から熱的に絶縁されているのが好ましい。例えば、多孔質部材は、(例えば、
図1、
図2A、及び
図3に示すように、多孔質部材を基板に接続するテザー190により)101、101A、及び101Bから熱的に絶縁されて、多孔質部材の縁部における伝熱損失を抑えるとともに、低電力での高速且つ均一な加熱を可能にする。一実施形態においては、第1の基板にチャネル195がエッチングされて、テザーを規定する(例えば、テザーは、チャネルがエッチングされた後に残る第1の基板の部分である)。流通チャネル115(直径は通常、約50マイクロメートル以下)に対して、チャネル195は通常、細長く、テザーを規定する。
【0032】
[0040]
図2A及び
図3に示す実施形態において、薄膜抵抗性加熱器175は、多孔質部材の上面111中又は上面111上に配置される(多孔質部材の流通チャネル115を囲む)とともに、テザー上に配置されている。
【0033】
[0041]例えば
図3に示すいくつかの実施形態において、多孔質部材の上面111には、加熱器(及び、電流が流れるその他任意の構造(例えば、電気配線))の直下に絶縁層120(例えば、SiO
2)を含むことにより、多孔質部材における電流の短絡を防止する。
【0034】
[0042]
図4は、第1の基板1011及び微細多孔質媒体100を備えた基部10と、薄膜抵抗性加熱器175とを備え、サンプル流路1000を提供する少なくとも1つの航空機空気汚染物質収集装置700(
図1〜
図3も参照)を備えた航空機空気汚染物質分析装置200の一実施形態を示している。この図示の実施形態において、航空機空気汚染物質収集装置700は、上面311A及び下面311Bを有する第1の支持部311(通常は、プリント配線板)と関連付けられている(例えば、第1の支持部311に搭載されている)。流路に沿った流れは、ポンプ433により生成される。
【0035】
[0043]分析装置200は、第1の流路に沿って収集装置の近くに配置され、空気汚染物質の塊が重量測定センサ3に追加又は重量測定センサ3から除去された場合に比例共振周波数応答を生成して、空気汚染物質の量を計るとともに空気汚染物質を種類により分類する重量測定センサ3と、上面201A及び下面201Bを有する第2の基板201と、を具備する。重量測定センサ3は、第2の基板の上面と関連付けられ(例えば、除去プロセス及び付加プロセスによって上面に搭載又は組み付けられ)、汚染物質収集装置から一定距離だけ分離されるとともに、微細多孔質媒体が加熱された場合に当該微細多孔質媒体から脱着された空気汚染物質を受容するように構成されている。
【0036】
[0044]また、
図4に示す分析装置の実施形態は、上面312A及び下面312Bを備えた第2の支持部312を具備しており、この第2の支持部は、その上面及び下面を通過する少なくとも1つの航空機空気入口ポート500(
図4は、空気入口ポート500A及び500Bを示す)を備え、第2の基板の下面が第2の支持部の上面と関連付けられている(例えば、上面に搭載されている)。通常、第2の支持部は、プリント配線板を備える。任意選択で、分析装置の一実施形態は、少なくとも1つの空気入口ポートを具備する空気入口マニホールドを含み得る。
【0037】
[0045]重量測定センサと多孔質部材との分離は、一定に保たれ、通常は約0.1mm〜約2mm、好ましくは約0.2mm〜約0.4mmの距離であるものとする。例えば、
図4は、センサと多孔質部材との間隔を維持する第1の支持部311と第2の支持部312との間のスペーサ315を示している。スペーサの長さは、収集装置及び重量測定センサの対向面間の分離が約0.2mm〜約0.4mmとなるようにするのが好ましい。
【0038】
[0046]また、
図4に示す実施形態は、電源又は電源への接続部、電力調整器、並びに発振器及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を備え、共振器アレイにより生成された比例共振周波数応答を測定することにより、少なくとも1つの空気汚染物質の種類の分類を可能にするように構成された共振周波数測定装置610Aを備えた測定回路610を含む電子機器600と、空気汚染物質認識プログラムを有するコンピュータ可読媒体と、振動率を測定して少なくとも1つの空気汚染物質の種類を分類するように構成されるとともに、少なくとも1つの共振器アレイにより生成された比例共振周波数応答の大きさとの校正テーブルによる比較によって、少なくとも1つの空気汚染物質濃度の計算及び少なくとも1つの空気汚染物質の種類の決定を行うようにプログラムされたモジュールを含む空気汚染物質認識プログラムを実行するように構成されたプロセッサと、を具備する。プロセッサにより実行される空気汚染物質認識プログラムは、必要に応じて、持続性コンピュータ可読媒体に格納され、プロセッサは、少なくとも1つの決定された空気汚染物質の種類の値を表示(出力)する。例えば、プロセッサとともに動作可能に配置された表示装置(携帯型装置等)を用いたGUIを通じて、少なくとも1つの値を表示可能である。この代替又は追加として、例えば、少なくとも1つの値の点灯式表示装置による表示又は音声伝達が可能である。
【0039】
[0047]電子機器は、当技術分野において既知の多様な構成を有し得る。図示の実施形態において、電子機器は、ケーブル601、コネクタ605、第1の支持部311に組み込まれた電気配線620(したがって、不可視)、ワイヤボンド625、及び収集器10に組み付けられた配線630(したがって、不可視)を介して、電力を必要に応じて加熱器175に供給するとともに、ケーブル691を介して、電力を必要に応じてポンプ433(後述)に供給する。また、
図4に関して後述する通り、重量測定センサに関する電子機器は、例えば電気配線640、ワイヤボンド645、第2の支持部312に組み込まれた電気配線650(したがって、不可視)、660、670(
図5に示す)、コネクタ655、及びケーブル651を含み得る。
【0040】
[0048]付加的な収集器及び重量測定センサを含む実施形態において、各重量測定センサは通常、それぞれの発振回路、電気配線、及びワイヤボンドを有することになる。また、別個のケーブル及びコネクタを有していてもよいし、信号がマルチワイヤケーブル及びコネクタに導入されるようになっていてもよい。通常は、1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)によって、複数の重量測定センサの共振周波数を計数可能である。すべての収集器が並列に配線され、同じ電子機器の電源回路により加熱されることも可能であるし、或いは、別個の回路による電力供給及び独立した加熱によって、例えば異なる温度又は継続時間にすることも可能である。
【0041】
[0049]共振周波数は、必要に応じて、例えば位相ロックループ又はデジタルシグナルプロセッサ(DSP)チップを用いた周波数掃引の実行により掃引スペクトルから共振周波数を識別することによって測定可能である。
【0042】
[0050]或いは、必要に応じて、重量測定センサにより生成された比例共振周波数応答を測定するように、レーザ及び光検出器を備えた共振周波数測定装置を構成可能である。
【0043】
[0051]また、航空機空気汚染物質分析装置の図示の実施形態は、多孔質部材の加熱前後に、航空機空気入口ポート及び空気汚染物質収集器を通るサンプル流路1000に沿った航空機空気のサンプル流を生成するように構成されたポンプ433を具備する。
【0044】
[0052]航空機空気汚染物質分析装置の実施形態に係る、多様なポンプが使用に適している。
図4に示すように、ポンプ433は、多孔質部材及び重量測定センサの下流に位置決めされるのが好ましく、任意選択的な気密カバー434(及び/若しくは、任意選択的な入口マニホールド(図示せず))、第2の支持部312、第1の支持部311、並びにスペーサ315がサンプルを隔離することにより、その汚染又は希釈を回避するとともに、ポンプにより生成された流れがすべて100を流れるようにする。ポンプは、サンプルを汚染しないように、重量測定センサ及び多孔質部材の後段に位置決めされる。重量測定センサは、サンプル流がセンサ表面に向かって流れないように構成された状態で、多孔質部材の上流に位置決めされることにより、センサの表面上への汚染物質及び不要な物質(塵埃、エアロゾル、及び/又は微粒子等)の移動を最小限に抑える。
【0045】
[0053]2つ以上の航空機空気汚染物質収集装置及び対応する重量測定センサ(収集器−センサセットを提供する)を含む実施形態においては、各収集器−センサセットが少なくとも1つの他のセットと同じ環境条件(例えば、温度、圧力、相対湿度)に維持される。各セットを異なる時間又は異なる条件下で測定することによる応答パターン中の「ノイズ」の低減によって、検出性能が向上するためである。収集器−センサセットはすべて、ごく近接して配置されるのが好ましい。
【0046】
[0054]各収集器−センサセットは、ノイズレベルを上回る応答を与えて良好な精度をもたらすように、少なくとも1つのその他のセットと同様の感度を有するものとする。
【0047】
[0055]本発明の実施形態においては、多様な重量測定センサが使用に適しており、例えば薄膜共振器(TFR)、弾性表面波(SAW)共振器、厚みすべりモード(TSM)共振器(水晶振動子マイクロバランス(QCM)共振器)、弾性プレートモード(APM)共振器、たわみ板波(FPW)共振器、バルク弾性波(BAW)共振器、圧電バイモルフ共振器アレイセンサ、及び音叉センサが挙げられる。
【0048】
[0056]一実施形態において、センサは、官能性SiO
2ナノ粒子(例えば、トリエチオキシシランで官能化)で被覆可能である官能性SiO
2ナノ粒子を生成する好適なトリエチオキシシランとしては、例えば3−[2−(3−トリエトキシシリルプロポキシ)エトキシ]スルホラン(95%)、フェネチルトリメトキシシラン(tech−95)、3−メチオキシプロピルトリメトキシシラン、N−(アセチルグリクル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(メタノール中5%)、及びドデカフルオロデカ−9−エン−1−イルトリメトキシシラン(95%)が挙げられる。いくつかの実施形態において、官能性SiO
2ナノ粒子は、センサの表面に堆積可能な自己組織化単分子層を構成する。
【0049】
[0057]一実施形態において、重量測定センサは、共振下で屈曲する2つの活性層を備え、空気汚染物質の塊の追加又は除去によって共振周波数の比例変化を生じる圧電バイモルフ共振器アレイを備える。このような重量測定センサの一例は、米国特許第6,953,977号に開示されている。
【0050】
[0058]
図5に示す一実施形態において、重量測定センサ3は、第1の電極3A及び第2の電極3Bを具備しており(一体的に共振器を構成する)、センサの表面上の第1の電極を介して、センサの運動が電気信号に変換され、この信号が増幅されてセンサ表面の第2の電極に戻されることで、センサを共振駆動可能である。重量測定センサは、第1のバランスキャパシタ電極5A及び第2のバランスキャパシタ電極(測定電極)5Bを備えた任意選択的なバランスキャパシタ5をさらに備えることができ、共振器に隣り合って含まれることで、寄生容量及び抵抗の寄与を電気信号から減少させる。バランスキャパシタは、重量測定センサと同様又は同一の構成材料及び寸法を有するが、移動不可能に構成されている(例えば、基板上には、バランスキャパシタが移動できる空間が存在しない)。バランスキャパシタは、例えば専用電気配線を通じて第1のバランスキャパシタ電極に至る180°位相シフト信号により駆動可能である。第2のバランスキャパシタ電極(測定電極)から変換された信号は、電子機器(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)及び振動率を計数するファームウェア)に導入される際に、センサの第1の電極により変換された信号と組み合わされる。
【0051】
[0059]当技術分野において認識される通り、様々な重量測定センサの比例周波数応答の測定には、多様な種類の電子機器が適している。
【0052】
[0060]本発明の実施形態に従って使用する微細多孔質媒体(例えば、微細多孔質膜)等の多孔質部材100には、多様な材料が適している。微細多孔質膜のほか、好適な微細多孔質媒体としては、繊維材料、セラミック、印刷構造、及び微細加工構造が挙げられる。多孔質部材は、支持することも可能であるし、支持しないことも可能である。通常、微細多孔質媒体が微細多孔質膜である実施形態において、この膜は、少なくとも約20マイクロメートル〜約500マイクロメートルの範囲の厚さ、より一般的には、約50マイクロメートル〜約200マイクロメートルの範囲の厚さを有するものの、いくつかの用途においては、これより薄くすることも可能であるし、厚くすることも可能である。
【0053】
[0061]多孔質部材100(例えば、微細多孔質膜等の微細多孔質媒体)は、多孔質又は穿孔質であり、例えば約5マイクロメートル〜約50マイクロメートル、通常は、10マイクロメートル〜約30マイクロメートルのサイズ及び/又は直径の好適な規則性及び/又は不規則性流通チャネル及び/又は細孔を提供するものの、いくつかの用途においては、これより小さくすることも可能であるし、大きくすることも可能である。この膜は、上下面及び流通チャネル及び/若しくは細孔の内側と関連付けられた(例えば、固定及び/若しくは共有結合された)疎水性ゼオライト被膜並びに/又は膜のバルク中の疎水性ゼオライト粒子を含む。
【0054】
[0062]本発明の実施形態における使用では、例えば多孔質シリカ、活性炭、金属有機構造体(MOF)、ゼオライト−イミダゾレート構造体(ZIF)、チタニア(TiO
2)粒子、及びゼオライト(疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライトを含む)等、多様な化学選択的被膜が適している。好適なゼオライト被膜としては、Z100(疎水性ゼオライト)、Z110(疎水性ゼオライト)、Z300(低疎水性ゼオライト)、及びZ810(親水性ゼオライト)(Zeochem LLC、Louisville、KY)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
[0063]好適な加熱器175(薄膜抵抗性加熱器が好ましい)は、当技術分野において知られている。例示的な加熱器としては、例えば約550℃まで劣化なく微細多孔質媒体を抵抗加熱可能な白金(Pt)及びタンタル−白金(TaPt)高温適合性薄膜抵抗性加熱器が挙げられる。この加熱器は、例えば堆積、リソグラフィ、及び溶解プロセスの組み合わせによって、基板上の適所に作製されるのが好ましい。
【0056】
[0064]第1及び第2の支持部、基部、及び基板としての使用には、多様な材料が適するが、当技術分野においては、好適な材料が知られており、マイクロエレクトロニクス製造プロセスを用いて容易に製造可能である。例えば、シリコン等の材料から製造可能である。通常、これらの材料は微細加工可能であり、必要に応じて配線、電極、及び相互接続等の電気的構造を含むことで必要な場合電力を供給可能とするような微細加工並びに/又は懸架板、テザー、膜等の機械的構造及び流通チャネル等の流体的構造を含むような微細加工を可能にするのが望ましい。
【0057】
[0065]以下の実施例は、本発明をさらに説明するものであるが、当然のことながら、何らその範囲を制限するものとは解釈されないものとする。
【0058】
実施例1
[0066]本実施例は、連結された多孔質部材の全体にわたって加熱が大略均一であることを明らかにする。
【0059】
[0067]
図1、
図2A、及び
図3に大略示すように空気汚染物質収集装置を用意するが、チャネルはエッチングにより生成済みである。
【0060】
[0068]多孔質部材は、直径が約25マイクロメートルの流通チャネルがエッチングされ、上流、下流、及び流通チャネルの表面を被覆する疎水性ゼオライト粉末(Z300(Zeochem LLC、Louisville、KY))をさらに有する微細多孔質シリコン膜である。
【0061】
[0069]加熱器は、基板に組み込まれ、膜に直接堆積されたタンタル−白金(TaPt)高温適合性薄膜抵抗性加熱器である。
【0062】
[0070]加熱器は、14ボルトが供給されて可視白熱光を生成するが、膜の表面全体にわたって加熱が均一であり、また、テザーにおいてホットスポットの局在も過加熱もないことを示している。
【0063】
実施例2
[0071]本実施例においては、
図4に大略示すように航空機空気汚染物質分析装置を構成し、疎水性ゼオライト被膜(Z300(Zeochem LLC、Louisville、KY))で被覆された膜を備えた一対の重量測定センサによって、収集器からの脱着を測定する。
【0064】
[0072]最初に、汚染物質なしで周波数シフト対時間を決定する(例えば、校正時に正常な実験室空気を使用するか、滅菌フィルタを通過した空気を使用するか、又は最初は空気を収集器に通過させない)。例えば、共振周波数は、4秒間にわたって0.01秒ごとに測定する。共振周波数は、加熱電力が収集器に適用された場合に、0.5秒で低下し始める。共振器に移動した熱によって、その共振周波数が低下する。これは、「熱応答」とも称し、汚染物質がない場合の応答スペクトルを示す。応答スペクトルは、汚染物質(除氷流体)が存在する場合にも決定するが、その両応答スペクトルを
図6に示す。
【0065】
[0073]
図7に示すように、最初の応答スペクトル(汚染物質なし)を2番目の応答スペクトル(汚染物質あり)から減算することによって、汚染物質のみの存在による周波数シフトが明らかとなるが、これは「熱的減算応答」を示す。
【0066】
[0074]「熱的減算応答」からは、様々な特徴を計算することができる。そのような特徴の4つの例として、以下が挙げられる。
【0067】
[0075]a)最大周波数シフト(MFS):応答中に見られる最大周波数シフト
[0076]b)ピーク前合算(SB):MFS前のカーブ下側の面積
[0077]c)ピーク後合算(SB):MFS後のカーブ下側の面積
[0078]d)セグメント#5(S5):MFS後の37番目から46番目までの周波数測定結果の平均
[0079]これら4つの特徴を
図8に示す。
【0068】
実施例3
[0080]本実施例は、パターン認識アルゴリズムによる実施例2に記載の特徴MFSの使用によって汚染物質をどのように識別可能であるかを明らかにする。
【0069】
[0081]実施例1に記載の重量測定センサを備えた航空機空気汚染物質分析装置を使用して、タービンエンジンオイル(AEROSHELL 560(Shell))、油圧流体(Exxon HYJET(Exxon))、及び除氷流体を分析装置に順次試した場合の周波数シフト対時間を決定する。
【0070】
[0082]結果を
図9に示すが、応答(平均MFS)は、オイル及び油圧流体で類似しており、除氷流体で異なる。
【0071】
[0083]
図10に示すように、特徴MFSの使用は、除氷流体を油圧流体及びタービンエンジンオイルから区別可能であることを示している。油圧流体及びタービンエンジンオイルの場合、Z300被覆収集器の隣の重量測定センサからのMFS特徴に対する多孔質シリカ被覆収集器の隣の重量測定センサからのMFS特徴の比は、0〜約2の範囲であるが、除氷流体の場合の比は、約12〜約23の範囲である。
【0072】
[0084]本明細書に引用の公開公報、特許出願公報、及び特許公報を含むすべての参考文献は、それぞれが援用を個別且つ具体的に指示され、そのすべてが本明細書に参照により援用され示されたのと同じ程度まで参照により本明細書に援用する。
【0073】
[0085]本発明の説明の文脈(特に、以下の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」、「an」、「the」、及び「少なくとも1つ(at least one)」、並びに類似の指示対象の使用は、文脈上の別段の指示又は明らかな矛盾がない限り、単数形及び複数形の両者を含むものと解釈されるものとする。少なくとも1つの項目の一覧が後続する用語「少なくとも1つ(at least one)」の使用(例えば、「A及びBのうちの少なくとも1つ(at least one of A and B)」)は、文脈上の別段の指示又は明らかな矛盾がない限り、一覧の項目から選択される1つの項目(A若しくはB)又は一覧の項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味するものと解釈されるものとする。また、用語「備える(comprising)」、「有する(having)」、「具備する(including)」、及び「含む(containing)」は、別段の指定のない限り、オープンエンドな用語(すなわち、「〜を含むが、これらに限定されない(including,but not limited to)」を意味する)として解釈されるものとする。本明細書における値の範囲の記述は、本明細書における別段の指示のない限り、当該範囲内の各別個の値を個々に参照する簡潔な方法として機能することを意図したに過ぎず、各別個の値は、本明細書において個々に列挙されるかの如く、本明細書に援用する。本明細書に記載のすべての方法は、文脈上の別段の指示又は明らかな矛盾がない限り、任意の好適な順序で実行可能である。本明細書に提示のありとあらゆる例又は例示的な表現(例えば、「〜等(such as)」)の使用は、本発明をより明確化することのみを意図しており、別段の要求のない限り、本発明の範囲に何ら制約を課すものではない。本明細書の表現は、本発明の実施に必須の如何なる非請求要素を示すとも解釈されないものとする。
【0074】
[0086]本明細書においては、本発明者らが把握している本発明を実行するための最良の形態を含めて、本発明の好適な実施形態を説明している。上記説明を読めば、これら好適な実施形態の変形例が当業者には明らかとなり得る。本発明者らは、このような変形例を熟練技術者が必要に応じて採用することを予想しており、本明細書の具体的な記述とは別に本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、準拠法が許可する添付の特許請求の範囲に列挙の主題のすべての改良物及び同等物を含む。さらに、文脈上の別段の指示又は明らかな矛盾がない限り、上述の要素は、その考え得るすべての変形例において、任意の組み合わせが本発明に包含される。