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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-186215(P2020-186215A)
(43)【公開日】2020年11月19日
(54)【発明の名称】更年期症状改善用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20201023BHJP
   A61K 36/45 20060101ALI20201023BHJP
   A61P 5/30 20060101ALI20201023BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20201023BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20201023BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20201023BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20201023BHJP
   A61P 9/08 20060101ALI20201023BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20201023BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20201023BHJP
【FI】
   A61K36/185
   A61K36/45
   A61P5/30
   A61P17/14
   A61P9/10 101
   A61P3/04
   A61P3/06
   A61P9/08
   A61P1/16
   A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-93226(P2019-93226)
(22)【出願日】2019年5月16日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成31年3月31日、https://www.mdpi.com/1420−3049/24/7/1259/pdf 平成31年4月1日、https://www.mdpi.com/1420−3049/24/7/1272/pdf
(71)【出願人】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】堀江 香代
(72)【発明者】
【氏名】七島 直樹
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD52
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4C088AB44
4C088AB66
4C088AC04
4C088BA07
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA07
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA39
4C088ZA45
4C088ZA70
4C088ZA75
4C088ZA92
4C088ZC11
4C088ZC33
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、更年期にある雌性個体に特有の症状を、最大でも更年期ではない雌性個体と同程度になるまでに改善する作用を有する物質を有効成分として含有する組成物及び該物質を使用した方法を提供することにある。
【解決手段】
上記目的は、カシス及びブルーベリー並びにそれらの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含有し、かつ、コラーゲン、エラスチン及びヒアルロン酸の減少による皮膚劣化以外の更年期症状を改善する作用を有する、更年期症状改善用組成物などにより解決される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カシス及びブルーベリー並びにそれらの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含有し、かつ、コラーゲン、エラスチン及びヒアルロン酸の減少による皮膚劣化以外の更年期症状を改善する作用を有する、更年期症状改善用組成物。
【請求項2】
前記更年期症状は、薄毛、血管硬化、体重増加及び脂肪増加からなる群から選ばれる少なくとも1種の更年期症状である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記有効成分は、カシス及びカシス抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、経口用の組成物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
カシス及びブルーベリー並びにそれらの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含有する、増毛用組成物、血管拡張用組成物、血管硬化改善用組成物、体重増加抑制用組成物、脂肪増加抑制用組成物又は抗肝炎用組成物。
【請求項6】
前記組成物は、成人女性に摂取されるための組成物である、請求項5に記載の組成物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、更年期症状を改善するための更年期症状改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カシスは、クロスグリ、クロフサスグリ、ブラックカラントなどとも呼ばれ、ニュージーランドなどの冷涼な地域に繁殖し、日本においては青森県での生産量が最大の果樹植物である。
【0003】
2015年には農林水産省により「あおもりカシス」が地理的表示保護制度の第1号として認定されている。カシスにはビタミン、ミネラル類、アントシアニンが豊富に含まれており、目のクマ予防、眼精疲労軽減などに効果があることが知られている(非特許文献1を参照)。
【0004】
植物中にはエストロゲン活性を持つ分子が存在し、フィトエストロゲン(植物性エストロゲン)と総称される。フィトエストロゲンは、いわゆる植物性女性ホルモンであり、大豆に含まれるイソフラボン、ブドウに含まれるレスベラトロールなどが、フィトエストロゲンの一種として知られている(非特許文献2及び非特許文献3を参照)。
【0005】
本発明者らによって、カシスに含まれるアントシアニンは、エストロゲン受容体(ER)α及びERβを介したエストロゲン活性を有し、フィトエストロゲンの一種であることが明らかになっている(非特許文献4及び非特許文献5を参照)。また、本発明者らは、カシス抽出物を卵巣除去ラットに摂取させることにより、コラーゲン、エラスチン及びヒアルロン酸の量が増えたことを報告している(非特許文献6を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Gopalan, A. et al., Food Funct 2012, 3, 795-809.
【非特許文献2】Limer, J. L., et al, Breast Cancer Research, 2004, 6(3), 119-127.
【非特許文献3】Mahmoud, A. M., et al., Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology, 2014, 140, 116-132.
【非特許文献4】Nanashima, N. et al., Mol Nutr Food Res 2015, 59, 2419-2431.
【非特許文献5】Nanashima, N. et al., Molecules 2018, 23, 74
【非特許文献6】Nanashima, N. et al., Nutrients, 2018, 10, 495
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献4〜6によれば、カシスに含まれるアントシアニンはフィトエストロゲンとして機能することがわかる。
【0008】
しかし、本発明者らが調べたところによれば、カシス抽出物を摂取した卵巣除去ラットにおける皮膚のコラーゲン量は、偽手術ラットにおける量よりも多く増加した。これは、カシス抽出物が有するコラーゲン増加作用は、エストロゲンの分泌が低下した雌性個体だけではなく、健常な雌性個体においても生じ得ることを示唆する。したがって、カシス抽出物が有するコラーゲン増加作用は、カシス抽出物に含まれるフィトエストロゲン(アントシアニン)以外の成分によってもたらされる可能性があることが否定できない。
【0009】
また、カシス抽出物が、更年期にある雌性個体に特有の症状を、最大でも更年期ではない雌性個体と同程度になるまでに改善することについて、今まで知られていない。
【0010】
そこで、本発明は、更年期にある雌性個体に特有の症状を、最大でも更年期ではない雌性個体と同程度になるまでに改善する作用を有する物質を有効成分として含有する組成物を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を積み重ねたところ、驚くべきことに、カシス抽出物を摂取することにより、更年期にある雌性個体においてみられる薄毛、体重増加、腹腔内脂肪増加などの症状を、更年期ではない雌性個体と同程度になるまでに改善する作用を有することを見出した。
【0012】
また、カシス抽出物は、血管内皮細胞の一酸化窒素(NO)生産量を17β−エストラジオールと同程度になるまで改善し、さらに卵巣除去ラットの血管組織における内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現量を偽手術ラットと同程度になるまでに改善した。このように、本発明者らは、カシス抽出物は、NOやeNOSを介した血管拡張作用及び血管硬化改善作用を有することを見出した。
【0013】
さらに、本発明者らは、メタボローム解析によって、カシス抽出物はアントシアニンだけではなく、β−エストラジオール及び17α−エストラジオールを含むことを見出した。また、驚くべきことに、ブルーベリー果実粉末にも、カシス抽出物と同程度のβ−エストラジオール及び17α−エストラジオールが含まれていることがわかった。このことはブルーベリー果実粉末が、カシス抽出物と同様の更年期症状改善作用を有することを示す。そして、これらの知見は全て、本発明者らによって初めて見出されたことである。
【0014】
このような知見を基にして、本発明者らは、有効成分として、カシス、ブルーベリー及び/又はこれらの抽出物を含有する、更年期症状を改善するための組成物を創作することに成功した。本発明は、かかる知見や成功例に基づいて完成された発明である。
【0015】
したがって、本発明の一態様によれば、以下[1]〜[9]の組成物及び方法が提供される。
[1]カシス及びブルーベリー並びにそれらの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含有し、かつ、コラーゲン、エラスチン及びヒアルロン酸の減少による皮膚劣化以外の更年期症状を改善する作用を有する、更年期症状改善用組成物。
[2]前記更年期症状は、薄毛、血管硬化、体重増加及び脂肪増加からなる群から選ばれる少なくとも1種の更年期症状である、[1]に記載の組成物。
[3]前記有効成分は、カシス及びカシス抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分である、[1]〜[2]のいずれか1項に記載の組成物。
[4]前記組成物は、経口用の組成物である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の組成物。
[5]カシス及びブルーベリー並びにそれらの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含有する、増毛用組成物、血管拡張用組成物、血管硬化改善用組成物、体重増加抑制用組成物、脂肪増加抑制用組成物又は抗肝炎用組成物。
[6]前記組成物は、成人女性に摂取されるための組成物である、[5]に記載の組成物。
[7][1]〜[6]のいずれか1項に記載の組成物を、更年期症状の雌性個体に投与することにより、該雌性個体の更年期症状を改善する工程を含む、更年期症状の改善方法。
[8][1]〜[6]のいずれか1項に記載の組成物を、成人女性に投与することにより、該成人女性に対して増毛する方法、血管を拡張する方法、血管を柔軟化する方法、体重を減少する方法、脂肪を減少する方法又は肝炎を減少する方法。
[9][1]〜[6]のいずれか1項に記載の組成物を製造するための、カシス及びブルーベリー並びにそれらの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分の使用。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様の組成物によれば、カシス、ブルーベリー及びこれらの抽出物などを有効成分として摂取することにより、薄毛、血管硬化、体重増加及び脂肪増加といった更年期症状を、更年期ではない雌性個体と同程度に改善することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施例に記載されているとおりの、BCE及びブルーベリー果実粉末のメタボローム解析の結果を示す図である。
図2図2は、実施例に記載されているとおりの、リアルタイムPCRによりKRT19遺伝子の発現量を測定した結果を示す図である。
図3図3は、実施例に記載されているとおりの、ラットの皮膚組織中の毛包をH−E染色した結果(A〜C;スケールバーは20μm)及び毛包1個あたりの毛の本数を計測して得られた結果(D)を示す図である。
図4図4は、実施例に記載されているとおりの、抗Ki67抗体を用いた免疫染色の結果(A〜D;スケールバーは100μm)及びKi67陽性細胞率の測定結果(E)を示す図である。
図5図5は、実施例に記載されているとおりの、抗KRT19抗体を用いた蛍光免疫染色の結果(スケールバーは100μm)を示す図である。
図6図6は、実施例に記載されているとおりの、KRT15及びCD34のそれぞれの抗体を用いた蛍光免疫染色の結果(スケールバーは100μm)を示す図である。
図7図7は、実施例に記載されているとおりの、各群のラットの3ヵ月間の飼育前後の体重の変化を示す図である。
図8図8は、実施例に記載されているとおりの、各群のラットの3ヵ月間の飼育前後の腹腔内脂肪の重量の変化を示す図である。
図9図9は、実施例に記載されているとおりの、各群のラットの3ヵ月間の飼育前後の肝臓の重量の変化を示す図である。
図10図10は、実施例に記載されているとおりの、3ヵ月間の飼育後の腹腔内脂肪組織をH−E染色して得られた写真図を示す図である。
図11図11は、実施例に記載されているとおりの、腹腔内脂肪組織における脂肪細胞の直径の測定結果を示す図である。
図12図12は、実施例に記載されているとおりの、肝臓細胞におけるTNFαの発現量をリアルタイムPCRで解析した結果を示す図である。
図13図13は、実施例に記載されているとおりの、肝臓細胞におけるIL−6の発現量をリアルタイムPCRで解析した結果を示す図である。
図14図14は、実施例に記載されているとおりの、RT−qPCR分析の結果を示す図である。AはHUVECにおける、及びBはEA.hy926細胞におけるeNOSのmRNA発現レベルを示す。Cは、100nM フルベストラントの存在下でのEA.hy926細胞における結果を示す。データは、少なくとも3回の独立した実験の平均±SEMとして示されている。未処理コントロール細胞に対して*p<0.05、**p<0.01。C3Gはシアニジン−3−グルコシドを示し、C3Rはシアニジン−3−ルチノシドを示し、D3Gはデルフィニジン−3−グルコシドを示し、D3Rはデルフィニジン−3−ルチノシドを示す。
図15図15は、実施例に記載されているとおりの、100nMのフルベストラントの非存在下(A)及び存在下(B)における、NOの測定結果を示す図である。データは少なくとも3回の独立した実験の平均±SEMとして示す。未処理のコントロール細胞に対して*p<0.05、**p<0.01。
図16図16は、実施例に記載されているとおりの、更年期モデルラットの血管内皮細胞を免疫組織化学的染色した結果を示す図である。Aは低倍率(×200)でのeNOSタンパク質発現の画像を示す。Bは、Aに示される四角で囲った部分の画像の400倍の画像を示す。Cは、一次抗体で処理していない組織を陰性コントロールとして使用した画像を示す。Dは、eNOSの染色強度のスコア付けをした結果を平均スコア±SEMとして示す。*p<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の詳細について説明するが、本発明の技術的範囲は本項目の事項によってのみに限定されるものではなく、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0019】
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている憶測や推論は、本発明者らのこれまでの知見や経験によってなされたものであることから、本発明の技術的範囲はこのような憶測や推論のみによって拘泥されるものではない。
【0020】
「組成物」は、通常用いられている意味のものとして特に限定されないが、例えば、2種以上の物質が組み合わさってなる物であり、具体的には、有効成分と別の物質とが組み合わさってなるもの、有効成分の2種以上が組み合わさってなるものなどが挙げられ、より具体的には、有効成分の1種以上と固形担体又は溶媒の1種以上とが組み合わさってなる固形組成物及び液性組成物などが挙げられる。
【0021】
整数値の桁数と有効数字の桁数とは一致する。例えば、1の有効数字は1桁であり、10の有効数字は2桁である。また、小数値は小数点以降の桁数と有効数字の桁数とは一致する。例えば、0.1の有効数字は1桁であり、0.10の有効数字は2桁である。
【0022】
「及び/又は」は、列記した複数の関連項目のいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ若しくは全ての組み合わせを意味する。
【0023】
「含有量」は、濃度と同義であり、組成物の全体量に対する成分の量の割合を意味する。ただし、成分の含有量の総量は、100%を超えることはない。
【0024】
数値範囲の「〜」は、その前後の数値を含む範囲であり、例えば、「0質量%〜100質量%」は、0質量%以上であり、かつ、100質量%以下である範囲を意味する。
【0025】
「更年期」は、女性の加齢に伴う生殖期から非生殖期への移行期をいい、具体的には閉経の前後5年の合計10年間をいう。更年期にある女性は、卵巣機能の低下若しくは老化によって、女性ホルモンであるエストロゲンが減少し、生理的機能及び性機能が減少又は消失する。
【0026】
「更年期症状」は、更年期にある女性にみられる症状である。更年期症状として、顔面紅潮、のぼせ(ホットフラッシュ)、頻脈、発汗、頭痛、肩こりなどの血管性の症状;易疲労感、動悸、筋肉痛、関節痛、腰痛、足腰の冷え、頻尿、尿失禁、目眩、視力減退、皮膚劣化、薄毛、体重増加、脂肪増加、中性脂肪増加、肝炎などの身体性の症状;視力減退;記憶力減退、うつ症状、集中力減退などの精神性の症状などが挙げられる。
【0027】
「症状改善作用」は、通常用いられている意味のものとして特に限定されないが、例えば、症状が出ている状態を症状が出ていない状態へ向かう作用に加えて、症状が出ている状態を悪化させない作用、症状が出ていない状態を維持する作用、症状が出ていない状態から症状が出ている状態へ向かうことを妨げる作用などが含まれる。具体的には、「症状改善作用」には、症状の発生の防止及び遅延並びに発生の危険性の低下;症状の好転;症状の悪化の防止及び遅延;症状をもたらす機能の維持並びに悪化の防止及び遅延などが包含される。症状の「改善」は、症状の緩和、抑制、阻害、回復、治療及び予防を包含する。
【0028】
本発明の一態様の組成物は、カシス、カシス抽出物、ブルーベリー、ブルーベリー抽出物又はこれらの2種、3種若しくは4種である有効成分を少なくとも含有する。本発明の一態様の組成物は、これらの有効成分を含有することにより、更年期症状改善作用を有する。
【0029】
カシスは、学名がRibes nigrum又はRibes nigrum L.であり、クロスグリ、クロフサスグリ、ブラックカラント(Blackcurrant)などとも呼ばれる、温帯性の落葉低木果樹の果実である。カシスの果実は、ゼリー、ジャム、アイスクリーム、コーディアル、リキュールなどに利用されている。カシスは、果実を含めば、カシスの葉、茎、根、花などの他の部位が混入したものであってもよい。
【0030】
カシスは、採取したままの状態のもの(生実)でもよいが、カシスの搾汁残渣にはアントシアニンに加えて、β−エストラジオール及び17α−エストラジオールが多く含まれていることから、採取した後に搾汁処理や乾燥処理などの加工処理に供した加工処理物であることが好ましい。また、カシスを採取した後、加工処理までに時間を要する場合、カシスの変質を防ぐために低温貯蔵などの当業者が通常用いる貯蔵手段により貯蔵することが好ましい。
【0031】
搾汁処理の方法は、通常用いられている植物果実を用いて搾汁液と搾汁残渣とを分けるための方法であれば特に限定されないが、例えば、カシスを搾汁機、ジューサーなどの機械的搾汁手段を用いて搾汁し、必要に応じて、篩別、ろ過などの手段によって粗固形分を回収することにより搾汁残渣を得る方法などが挙げられる。搾汁残渣は、乾燥処理に供することが好ましい。
【0032】
乾燥処理の方法は、通常用いられている植物果実を乾燥するための方法であれば特に限定されず、例えば、カシスの乾燥後の質量(乾燥質量)が、乾燥前の質量(湿質量)に対して80%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは10%以下になるように乾燥する処理などが挙げられる。乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥、風乾などの当業者に公知の任意の方法により行われ得るが、カシスに含まれる成分が変質又は分解しないようにするためには、凍結乾燥が好ましい。
【0033】
カシス抽出物は、通常用いられているカシス又はカシス加工処理物(以下、カシス等とよぶ。)を抽出処理に供することにより得られる。抽出処理の方法は、通常用いられている植物果実に含まれる所望の成分を抽出するための方法であれば特に限定されず、例えば、カシス等と、カシスに含まれるβ−エストラジオール及び17α−エストラジオールに対して可溶性である溶媒とを接触させることにより抽出液を得ることを含む方法などが挙げられる。
【0034】
抽出溶媒として、β−エストラジオール及び17α−エストラジオールに対して可溶性である溶媒は、例えば、水、有機溶媒及び水と有機溶媒との混合溶媒などが挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどの低級アルコール;酢酸エチル、酢酸メチルなどの低級エステル;ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、アセトン、ヘキサン、グリセリン、プロピレングリコールなどが挙げられるが、好ましくは水と有機溶媒との混合溶媒であり、より好ましくは水とエタノールとの混合溶媒である。抽出条件は、カシス等におけるβ−エストラジオール及び17α−エストラジオールが抽出溶媒に溶解するのに適した条件であれば特に限定されず、カシス等の状態や使用量に応じて、抽出溶媒の種類や使用量は適宜設定できる。
【0035】
抽出処理の後に固液分離処理を行うことで、抽出液と原料のカシス等の残渣とを分離することができる。固液分離手段は特に限定されないが、例えば、ろ過、遠心分離などの公知の固液分離手段を利用することができる。
【0036】
抽出液は、必要に応じて濃縮処理及び/又は乾燥処理に供してもよい。濃縮処理の方法は、液体を減容化する通常知られている方法であれば特に限定されず、例えば、抽出液を、常温又は加温下で、必要に応じて減圧して、濃縮液を得ることを含む方法などが挙げられる。濃縮の程度は特に限定されないが、例えば、1/2〜1/10以下になるまで減容化すればよい。濃縮液は、凍結乾燥、熱風乾燥、噴霧乾燥などの乾燥処理、好ましくは凍結乾燥処理に供することが好ましい。さらに、濃縮液の乾燥物は、粉砕処理に供することが好ましい。粉砕処理の方法は特に限定されないが、例えば、クラッシャー、ブレンダー、ミキサー、ミルなどを用いる方法などを挙げることができる。
【0037】
以下に、カシスを原料として、β−エストラジオール及び17α−エストラジオールを含有するカシス抽出物を製造する具体的方法を説明するが、カシス抽出物の製造方法としては以下のものに限定されない。
【0038】
カシスの果実の搾汁残渣を凍結乾燥して搾汁残渣乾燥物を得て、次いで得られた搾汁残渣乾燥物を含水エタノールを用いた抽出処理に供して抽出液を得て、次いで得られた抽出液をフィルターを用いたろ過処理、濃縮処理、凍結乾燥処理、粉砕処理及び混合処理に順次供して、カシス抽出物を得る。カシス抽出物を篩過することにより、特定の粒子サイズを有する、例えば、80メッシュのカシス抽出物が得られる。
【0039】
ブルーベリーは、通常ブルーベリーとして知られている、ツツジ科スノキ属(Vaccinium)の落葉低木果樹の果実であれば特に限定されない。ブルーベリーは、果実を含めば、ブルーベリーの葉、茎、根、花などの他の部位が混入したものであってもよい。
【0040】
ブルーベリーは、採取したままの状態のもの(生実)でも、採取した後に搾汁処理や乾燥処理などの加工処理に供した加工処理物でもどちらでもよい。ブルーベリーを乾燥処理に供する場合は、乾燥処理の方法は凍結乾燥であることが好ましい。ブルーベリーを採取した後、加工処理までに時間を要する場合、ブルーベリーの変質を防ぐために低温貯蔵などの当業者が通常用いる貯蔵手段により貯蔵することが好ましい。
【0041】
ブルーベリー抽出物は、上記したカシス抽出物の記載を適宜参照できる。
【0042】
カシス抽出物及びブルーベリー抽出物は、上記した製造方法によって得られたものでも、市販されたものでも、どちらでもよい。例えば、カシス抽出物は、「CaNZaC−35」(光洋商会社)として市販されている。
【0043】
本発明の一態様の組成物が有する更年期症状改善作用は、更年期症状の少なくともいずれか1種の症状を改善する作用であれば特に限定されない。ただし、本発明の一態様の組成物が有する更年期症状改善作用は、コラーゲン、エラスチン及びヒアルロン酸の減少による皮膚劣化を改善する作用を除外するが、コラーゲン、エラスチン及びヒアルロン酸の減少とは異なる原因による皮膚劣化を改善する作用を包含する。
【0044】
本発明の一態様の組成物が有する更年期症状改善作用は、薄毛、血管硬化、体重増加及び脂肪増加又はこれらの2種、3種若しくは4種の症状を改善する作用であることが好ましい。本発明の一態様の組成物が有する更年期症状改善作用の程度は、更年期である雌性個体に対して、本発明の一態様の組成物を使用しない場合と比べて改善する程度であればよいが、好ましくは更年期ではない雌性個体と同程度になるまでに改善する程度である。
【0045】
更年期症状改善作用は、後述する実施例に記載のある更年期モデル動物と偽手術動物とを用いて比較する方法によって、確認及び評価することができる。例えば、更年期モデル動物は、偽手術動物と比べると、毛包あたりの毛の数が減少し、皮膚組織におけるeNOS発現レベル及びNO合成量が減少し、体重が増加し、腹腔内脂肪が増加し、及び/又は脂肪細胞の直径が大きくなる。
【0046】
本発明の一態様の組成物を摂取することにより、更年期モデル動物における毛包あたりの毛の数の減少が改善すれば、好ましくは偽手術動物における毛包あたりの毛の数と同程度になるまで改善すれば、本発明の一態様の組成物は、薄毛である更年期症状を改善する作用があるといえる。
【0047】
本発明の一態様の組成物を摂取することにより、更年期モデル動物における血管組織におけるeNOS発現レベル及び/又はNO合成量の減少が改善すれば、好ましくは偽手術動物における血管組織におけるeNOS発現レベル及び/又はNO合成量と同程度になるまで改善すれば、本発明の一態様の組成物は、血管硬化である更年期症状を改善する作用があるといえる。
【0048】
本発明の一態様の組成物を摂取することにより、更年期モデル動物における体重増加が改善すれば、好ましくは偽手術動物における体重増加と同程度になるまで改善すれば、本発明の一態様の組成物は、体重増加である更年期症状を改善する作用があるといえる。
【0049】
本発明の一態様の組成物を摂取することにより、更年期モデル動物における腹腔内脂肪が増加し、及び/又は脂肪細胞の直径が大きくなることが改善すれば、好ましくは偽手術動物における腹腔内脂肪増加及び/又は脂肪細胞の直径と同程度になるまで改善すれば、本発明の一態様の組成物は、脂肪増加である更年期症状を改善する作用があるといえる。
【0050】
本発明の一態様の組成物を摂取することにより、更年期モデル動物における肝炎関連遺伝子の発現レベルの増加が改善すれば、好ましくは偽手術動物における肝炎関連遺伝子の発現レベルと同程度になるまで改善すれば、本発明の一態様の組成物は、肝臓への脂肪の蓄積の結果として生じ得る肝炎を改善する作用があるといえる。
【0051】
本発明の一態様の組成物は、更年期症状改善作用を有することによって、育毛効果、抗血管疾患効果、抗肥満効果などの様々な効果を奏することが期待されるものであることから、育毛用組成物、抗血管疾患用組成物、抗高血圧用組成物、血管抵抗低下用組成物、抗肥満用組成物、QOL(Quality of life)改善用組成物、好ましくは成人女性用の上記組成物といった態様をとり得る。例えば、本発明の一態様の組成物は、肥満気味の成人女性の体重、腹部の脂肪(内臓脂肪及び/又は皮下脂肪)、BMI(Body Mass Index)及び/又はウエスト周囲径を減らすことを助けるための組成物であり得る。
【0052】
有効成分であるカシス及びブルーベリーは、長期にわたりヒトに摂取されてきた実績があり安全性が高いことから、本発明の一態様の組成物は、実用性が高く、そのままで、又は加工することにより、種々の用途に適用可能である。
【0053】
本発明の一態様の組成物は、その摂取方法について特に限定されず、例えば、経口的又は非経口的に適用され得る。非経口的な適用としては、皮内、皮下、静脈内、筋肉内投与などによる注射及び注入;経皮;鼻、咽頭などの粘膜からの吸入などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一態様の組成物は、簡便かつ長期的に摂取するためには経口用の組成物であることが好ましい。
【0054】
本発明の一態様の組成物の摂取個体は特に限定されず、例えば、動物、中でも哺乳類が挙げられ、哺乳類としてはヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジなどが挙げられ、これらの中でもヒトであることが好ましい。摂取個体は、更年期にある雌性個体であれば健常な雌性個体であってもよいが、更年期症状を有する雌性個体であることが好ましい。
【0055】
本発明の一態様の組成物は、通常用いられる形態であれば特に限定されず、例えば、固形状、液状、ゲル状、懸濁液状、クリーム状、シート状、スティック状、粉状、粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、ペースト状、カプセル状、カプレット状などの各形態を採り得る。
【0056】
本発明の一態様の組成物は、更年期症状改善作用を有する限り、有効成分と他の成分とを組み合わせて含有し得る。すなわち、本発明の一態様の組成物は、本発明の目的を達成し得る限り、有効成分に加えて、他の成分として種々のものを含有し得る。
【0057】
他の成分としては、例えば、糖質甘味料、安定化剤、乳化剤、澱粉、澱粉加工物、澱粉分解物、食塩、着香料、着色料、酸味料、風味原料、栄養素、果汁、卵などの動植物性食材、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、香油、保存剤、緩衝剤、光沢剤などの通常の食品加工や医薬品加工に使用される添加物などを挙げることができる。他の成分の使用量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されず、適宜設定され得る。
【0058】
賦形剤としては、例えば、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、馬鈴薯デンプン、デキストリン、トウモロコシデンプン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、結晶セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末などを挙げることができる。結合剤としては、例えば、デンプン、トラガントゴム、ゼラチン、シロップ、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースなどを挙げることができる。崩壊剤としては、例えば、デンプン、寒天、ゼラチン末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、炭酸カルシウム、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースなどを挙げることができる。滑沢剤としては、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウムなどを挙げることができる。着色剤としては、飲食品や経口用医薬品に添加することが許容されているものなどを使用することができ、特に限定されない。
【0059】
錠剤や顆粒剤とする場合には、所望により、白糖、ゼラチン、精製セラック、グリセリン、ソルビトール、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、フタル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレート、メタアクリル酸重合体などを用いてコーティングしてもよく、複数層でコーティングすることもできる。さらに顆粒剤や粉剤をエチルセルロースやゼラチンのようなカプセルに詰めてカプセル剤とすることもできる。
【0060】
本発明の一態様の組成物における有効成分の含有量は、更年期症状改善作用が認められる量であれば特に限定されないが、経口用組成物としては、例えば、1回の摂取量として、0.1mg〜10,000mg、好ましくは1mg〜1,000mg、より好ましくは10mg〜500mg、さらに好ましくは20mg〜100mgになるような量であり;組成物の全体量に対して、0.1質量%〜99.9質量%、好ましくは0.5質量%〜99質量%、より好ましくは1質量%〜90質量%、さらに好ましくは5質量%〜90質量%、なおさらに好ましくは10質量%〜90質量%である。
【0061】
本発明の一態様の組成物の摂取量は特に限定されず、摂取個体の年齢、体格、症状などの摂取個体の特性;摂取方法;適用部位などに合わせて適宜設定することができる。本発明の一態様の組成物の摂取量は、例えば、ヒト等価用量から換算すると、一般成人女性(体重:50kg)に対して、約0.1g〜約10g/日であり、好ましくは1g〜5g/日である。
【0062】
本発明の一態様の組成物の摂取回数は特に限定されないが、例えば、1日1回〜3回であり、摂取個体の更年期症状の程度、1回当たりの摂取量に応じて適宜回数を増減することができる。本発明の一態様の組成物の摂取期間は、一定期間、すなわち3日以上、好ましくは1週間以上、より好ましくは1ヵ月以上、さらに好ましくは3ヵ月以上、なおさらに好ましくは6ヶ月以上にわたって継続的に投与する。本発明の一態様の組成物の摂取は、毎日行うことが好ましいが、期間中継続的に摂取する限り、毎日摂取しなくてもよい。
【0063】
本発明の一態様の組成物は、該組成物を単独で、又は該組成物を配合する飲食品用組成物や医薬品用組成物などの形態をとり得る。したがって、本発明の具体的な一態様は、有効成分を含有する、又は本発明の一態様の組成物を含有する、飲食品用組成物、医薬品用組成物、医薬部外品用組成物、化粧品用組成物、動物飼料用組成物などである。本発明の一態様の組成物は、経口摂取が可能な内外美容(インナーコスメ)用組成物としても有用である。
【0064】
本発明の一態様の組成物が飲食品用組成物である場合は、あらゆる飲食品の形態をとり得るが、例えば、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、ゼリー、ペーストなどの剤状食品;果汁飲料、野菜ジュース、果物野菜ジュース、茶飲料、コーヒー飲料、スポーツドリンク、清涼飲料、健康飲料などの飲料;ヨーグルトやチーズなどの乳製品;スープ、麺、プリン、ジャムなどの加工飲食品;チューインガム、キャンディー、錠菓、グミゼリー、チョコレート、ビスケット、スナックなどの菓子;アイスクリーム、シャーベット、氷菓などの冷菓;せんべいなどの米菓;羊羹その他の大豆を原料とする菓子などに添加して一般的な飲食品の形態とすることができる。
【0065】
飲食品用組成物の具体的な一態様は、例えば、生体に対して一定の機能性を有する飲食品である機能性飲食品である。機能性飲食品は、例えば、特定保健用飲食品、機能性表示飲食品、栄養機能飲食品、保健機能飲食品、特別用途飲食品、栄養補助飲食品、健康補助飲食品、サプリメント、美容飲食品などのいわゆる健康飲食品に加えて、乳児用飲食品、妊産婦用飲食品、高齢者用飲食品などの特定者用飲食品を包含する。さらに機能性飲食品は、コーデックス(FAO/WHO合同食品規格委員会)の食品規格に基づく健康強調表示(Health claim)が適用される健康飲食品を包含する。
【0066】
飲食品用組成物の包装形態は特に限定されず、適用される形態などに応じて適宜選択できるが、例えば、コーティング紙、PETやPTPなどのプラスチック、アルミなどの金属、ガラスなどを素材とするパック、瓶、缶、パウチ、1層又は積層(ラミネート)のフィルム袋などが挙げられる。
【0067】
本発明の一態様の組成物が医薬品用組成物である場合は、あらゆる医薬品の形態をとり得るが、例えば、経口製剤、注射剤(筋肉、皮下、皮内)、点鼻製剤などが例示される。医薬品用組成物は、本発明の目的を達成し得る限り、有効成分に加えて、更年期症状改善作用を有する他の生理活性物質を配合してもよい。また、本発明の一態様の医薬品用組成物は、他の生理活性物質を有効成分として含有する他の医薬品と併用してもよい。
【0068】
本発明の一態様の組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、有効成分と、任意に他の成分とを混合して、所望の剤形に成形する方法などが挙げられる。
【0069】
本発明の一態様の組成物の使用方法は特に限定されないが、例えば、本発明の一態様の組成物が経口用組成物である場合は、経口用組成物をそのまま、若しくは水などとともに、又は水などで希釈するなどして、飲食することにより経口摂取することができる。使用個体の好みなどに応じて、本発明の一態様の組成物と他の固体物や液状物とを混ぜて経口摂取してもよい。本発明の一態様の組成物を口腔崩壊剤形とした場合は、水なしで経口摂取することができる。
【0070】
本発明の別の一態様は、本発明の一態様の組成物又は該組成物における有効成分を利用する方法である。本発明の一態様の方法は、本発明の一態様の組成物を、更年期症状の雌性個体に投与することにより、該雌性個体の更年期症状を改善する工程を含む、更年期症状の改善方法である。投与方法や雌性個体の更年期症状の改善効果の確認方法などは、上記項目を適宜参照できる。
【0071】
本発明の別の一態様の方法は、本発明の一態様の組成物を、成人女性に投与することにより、該成人女性に対して増毛する方法、血管を拡張する方法、血管を柔軟化する方法、体重増加を抑制する方法、脂肪増加を抑制する方法又は肝炎のリスクを低減する方法である。本発明の別の一態様の方法は、本発明の一態様の組成物を製造するための、カシス及びブルーベリー並びにそれらの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分の使用である。
【0072】
本発明の一態様の方法は、本発明の課題を解決し得る限り、上記した工程の前段若しくは後段又は工程中に、種々の工程や操作を加入することができる。
【0073】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例】
【0074】
[例1 カシス抽出物及びブルーベリー果実粉末が有する更年期モデルに対する薄毛改善作用の評価]
(1−1)カシス抽出物及びブルーベリー果実粉末
カシス抽出物(BCE)として、市販のBCE粉末である「CaNZac−35」(光洋商会社)を用いた。BCEには、ポリフェノールが37.6g/100g−BCE、アントシアニンが38.0g/100g−BCEで含まれていた。また、BCEには、アントシアニンC3G(5.6質量%)、C3R(32.0質量%)、D3G(16.8質量%)及びD3R(45.3質量%)が含まれていた。
【0075】
ブルーベリー果実粉末として、ブルーベリーの果実を凍結乾燥処理に供し、次いで粉砕処理に供して得られたものを用いた。
【0076】
BCE及びブルーベリー果実粉末のメタボローム解析の結果を図1に示す。図1に示すとおり、BCE及びブルーベリー果実粉末にはβ−エストラジオール及び17α−エストラジオールが含まれていることがわかった。
【0077】
(1−2)ヒト毛乳頭細胞
ヒト毛乳頭細胞(Hair follicle dermal papilla cells;HFDPC)はプロモセル社から購入した。HFDPCは、毛乳頭細胞増殖用培地(プロモセル社)を用いて維持した。細胞培養は、5%COを含む加湿インキュベーター内で37℃にて実施した。
【0078】
(1−3)マイクロアレイ及びIPAによる遺伝子解析
培地には毛乳頭細胞基本培地(フェノールレッド不含;PromoCell社)を使用した。1μg/ml BCEを含有する被験培地及び毛乳頭細胞基本培地のみであるコントロール培地を用いて、HFDPCを24時間培養した後に細胞を回収し、次いで回収した細胞をPBSで2度洗浄した。洗浄後の細胞から「RNeasy mini kit」(キアゲン社)を用いて全RNAを抽出した。
【0079】
RNAの標識化及びハイブリダイゼーションは、アジレント・ワンカラー・マイクロアレイに基づく遺伝子発現解析の手順に従って実施した。具体的には、100ngの全RNAを直線的に増幅し、次いでCy3−dCTPを用いて標識した。得られた標識化cRNAを、「RNeasy mini kit」を使用して精製した。標識化及び断片化したcRNAを、「SurePrint G3 Human GE マイクロアレイ」(8×60K Ver.3.0;アジレントテクノロジー社)にハイブリダイズした。マイクロアレイデータセットは、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geoのアクセッション番号 GSE121730で利用可能である。
【0080】
また、BCEを含有する被験培地を用いることにより、2.0倍より大きい発現上昇を示した遺伝子については、IPA(Ingenuity Pathway Analysis)ソフトウェア(Ver.36601845)を用いてパスウェイ解析を行った。zスコアアルゴリズムを偽陽性結果の可能性を減じるために利用した。2.0以上のzスコアは、転写産物の発現が有意に増加したことを示し、−2.0以下のzスコアは発現が有意に低下したことを示した。
【0081】
以上のようにして、BCEによるヒト毛乳頭細胞における遺伝子発現の変動を網羅的に探索した。
【0082】
(1−4)リアルタイムPCRによる遺伝子解析
マイクロアレイで変動が大きかった毛乳頭幹細胞マーカーであるkeratin 19(KRT19)の発現量を調べるために、ヒト毛乳頭細胞から抽出したRNAを用いて、「TB Green Premix Ex Taq II(登録商標) Tli RNaseH Plus」(TaKaRa社)によりリアルタイムPCRを行った。
【0083】
(1−5)卵巣除去ラットを用いた薄毛改善作用の評価
更年期モデル動物として12週齢の卵巣除去ラット(「OVX female Sprague−Dawley」;クレアジャパン社)を用い、偽手術動物として12週齢のShamラット(「Sprague−Dawley」;クレアジャパン社)を用いた。卵巣除去ラット6匹を2群に分け、一方の3匹には「AIN−93M」(クレアジャパン社)のみからなる普通餌を摂取させ(「OVX control」群)、他方の3匹には3質量% BCEを含有する「AIN−93M」である被験餌を摂取させた(「OVX BCE」群)。また、手術行為による影響を排除するために、麻酔及び皮膚切開のみを行い、卵巣を除去していない偽手術ラットの3匹に、普通餌を摂取させた(「Sham」群)。各群のラットは餌及び水を自由に摂取できるようにした。
【0084】
上記した各群のラットを3ヵ月間飼育した後、常法に従って皮膚組織を採取し、10%ホルマリン中性緩衝液中で固定し、パラフィン包埋による組織ブロックの作成を行ったパラフィン包埋組織を、連続した厚さ3μmの切片に切り出し、スライドガラス上に置いて組織切片を作製して、各種評価を行った。組織切片はヘマトキシリン−エオシン染色(H−E染色)を行い、毛包1個あたりの毛の本数をカウントし、各群の計測値の平均±標準誤差(SEM)を算出し、OVX control群に対してTukey−Kramer法による検定を実施した(p<0.05)。
【0085】
また、毛包の細胞増殖効果の検証として、細胞増殖マーカーであるKi67の発現量を調べるために、皮膚組織切片を抗Ki67抗体を用いて免疫染色を行った。また、毛包の全細胞数及びki67陽性細胞を顕微鏡下で計測し、全細胞数あたりの陽性細胞の割合を算出し、上記と同様にして検定を行った。また、抗cytokeratin19(KRT19)抗体、抗cytokeratin15(KRT15)抗体及び抗CD34抗体を用いた蛍光免疫染色法によって各タンパク質の発現を調べた。
【0086】
(1−6)評価結果
マイクロアレイ及びIPAによって解析して予測した、BCEを通じて発現が変動した遺伝子の上流因子を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1に示す因子は、BCEによってヒト毛乳頭細胞の遺伝子発現の変化をもたらし得る因子である。zスコアが2.0以上又は−2.0以下であることにより有意差があることを示している。表1に示すとおり、β−エストラジオールのzスコアが最も大きいことから、β−エストラジオールの下流遺伝子に着目することとした。
【0089】
β−エストラジオールの下流遺伝子のうち、コントロール培地を用いた場合に対して、BCEを含有する被験培地を用いることにより、発現量が上昇した遺伝子を表2に示す。表2に示すとおり、BCEを含有する被験培地を用いることにより、17種類の遺伝子の発現量が上昇した。
【0090】
【表2】
【0091】
マイクロアレイ解析の結果から、最も発現量が上昇した遺伝子であるKRT19について、リアルタイムPCRにより発現量を測定した結果を図2に示す。図2はコントロール培地を用いた場合のKRT19の発現量を1としたときのBCEを含有する被験培地を用いた場合の相対発現量を表している。図2に示すとおり、KRT19の発現量は、BCEを含有する被験培地を用いた場合には、コントロール培地を用いた場合と比較して15倍程度上昇した。
【0092】
ラットの皮膚組織中の毛包をH−E染色した結果(A〜C;スケールバーは20μm)及び毛包1個あたりの毛の本数を計測して得られた結果(D)を図3に示す。OVX control群と比較すると、OVX BCE群及びSham群で有意差が認められ、毛の本数が平均して約0.5本増加した。また、OVX BCE群の毛の本数は、Sham群と同程度であり、両者の間で有意差は認められなかった。
【0093】
抗Ki67抗体を用いた免疫染色の結果(A〜D;スケールバーは100μm)及び毛包の全細胞数あたりのKi67陽性細胞率の測定結果(E)を図4に示す。図4が示すとおり、OVX control群と比較してOVX BCE群及びSham群において発色の強度が増しており、さらにKi67陽性細胞率が有意に増加したことから、Ki67の発現量の上昇が確認できた。
【0094】
抗KRT19抗体を用いた蛍光免疫染色の結果(スケールバーは100μm)を図5に示す。さらに、KRT19と同じように幹細胞マーカーであるKRT15及びCD34のそれぞれの抗体を用いた蛍光免疫染色の結果(スケールバーは100μm)を図6に示す。KRT19だけではなく、KRT15及びCD34についても、OVX control群と比較してOVX BCE群及びSham群において蛍光強度の上昇が確認された。
【0095】
KRT19、KRT15、CD34及びKi67の発現量の上昇から、BCEは毛乳頭幹細胞の維持及び毛乳頭細胞の増殖などに関係していることにより、更年期モデルに対して薄毛改善作用を有することがわかった。また、BCEと同じように、β−エストラジオール及び17α−エストラジオールを含有するブルーベリー果実粉末についても、更年期モデルに対して薄毛改善作用を有することがわかった。
【0096】
[例2 カシス抽出物及びブルーベリー果実粉末が有する更年期モデルに対する体重増加抑制作用及び脂肪増加抑制作用の評価]
(2−1)卵巣除去ラットを用いた体重増加抑制作用及び血中中性脂肪上昇抑制作用の評価
11週齢の卵巣除去ラット及びShamラットを用いた以外は、上記(1−5)と同様に各ラットを群分けし、それぞれの餌を用いて3ヵ月間飼育した。各群のラットについて、飼育前後の体重を測定した。
【0097】
飼育後のラットについて、採血した後に解剖して、腹腔内脂肪組織及び肝臓の重量をそれぞれ測定した。
【0098】
腹腔内脂肪組織を用いて、上記(1−5)と同様にして3μmの厚さの組織切片を作製して、各種評価を行った。組織切片をH−E染色して、各群のラットの腹腔内脂肪組織のH−E染色標本の画像上の5つの脂肪細胞の直径を測定した。各群の測定値の平均を算出し、OVX control群に対してTukey−Kramer法による検定を実施した(p<0.05)。
【0099】
(2−2)リアルタイムPCRによる遺伝子解析
肝炎関連遺伝子の発現解析を行うために、肝臓から抽出したmRNAを用いて上記(1−4)と同様にしてリアルタイムPCRを行った。肝炎関連遺伝子としてはTNFα及びIL−6を対象とした。
【0100】
(2−3)評価結果
3ヵ月間の飼育前後の体重の変化を図7に示す。餌の摂取前では体重に個体差は無かった。しかし、3ヵ月間の餌の摂取後では、OVX control群に対して、OVX BCE群及びSham群の体重は統計的に有意に減少した(p<0.05)。また、OVX BCE群の体重は、Sham群と大差がなかった。
【0101】
3ヵ月間の飼育後の腹腔内脂肪及び肝臓の重量の結果をそれぞれ図8及び図9に示す。OVX BCE群及びSham群は、OVX control群と比較して統計的有意に腹腔内脂肪の減少がみられた。しかし、これらの群間において、肝臓の重量には有意な変動は認められなかった。また、OVX BCE群の腹腔内脂肪の重量は、Sham群よりも若干大きかった。
【0102】
3ヵ月間の飼育後の腹腔内脂肪組織をH−E染色して得られた写真図を図10に示す。また、腹腔内脂肪組織における脂肪細胞の直径の測定結果を図11に示す。これらの図が示すとおり、OVX BCE群及びSham群は、OVX control群と比較して統計的有意に脂肪細胞の直径を減少させた。また、OVX BCE群の脂肪細胞の直径は、Sham群よりも若干大きかった。
【0103】
肝炎関連遺伝子であるTNFα及びIL−6について、肝臓細胞における発現量をリアルタイムPCRで解析した結果を、それぞれ図12及び図13に示す。OVX BCE群及びSham群は、OVX control群と比較して統計的有意に肝炎関連遺伝子の発現量の上昇を抑制した。しかし、OVX BCE群の肝炎関連遺伝子の発現量上昇抑制効果は、Sham群よりも若干小さかった。
【0104】
以上の結果から、BCEは更年期モデルに対して体重増加抑制作用、脂肪増加抑制作用、脂肪細胞拡大抑制作用及び肝炎抑制作用を有することがわかった。また、BCEと同じように、β−エストラジオール及び17α−エストラジオールを含有するブルーベリー果実粉末についても、更年期モデルに対してこれらの作用を有することがわかった。
【0105】
[例3 カシス抽出物及びブルーベリー果実粉末が有する更年期モデルに対する血管硬化作用の評価]
(3−1)マイクロアレイ及びIPAによる遺伝子解析
細胞として、ヒト血管内皮細胞であるHUVEC(プロモセル社)を使用した以外は、上記(1−3)と同様にしてマイクロアレイ分析を実施した。また、1.5倍以上の発現上昇を示した遺伝子を対象とした以外は、上記(1−3)と同様にしてIPAソフトウェアを用いて分析した。
【0106】
(3−2)RT−qPCR
内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS) mRNA発現を、RT−qPCR分析により評価した。HUVECと同じくヒト血管内皮細胞であるEA.hy926細胞(ATCC)を用いた。HUVEC及びEA.hy926細胞を12ウェル培養プレートに播種し、コンフルエントになるまで培養した。培地を交換し、次いで細胞をアントシアニン(10μM)、BCE(0.5又は1.0μg/mL)又は17β−エストラジオール(E2)(10nM)の存在下又は非存在下で24時間処理した。フルベストラントの実験系では、100nM フルベストラントの存在下又は非存在下で24時間インキュベートした後、処理した後の細胞をさらにアントシアニン及びBCEで24時間インキュベートした。PBSで2回洗浄した後「RNeasy mini kit」を用いて全RNAを抽出した。
【0107】
「PrimeScript(登録商標)RT Master Mix」(タカラ社)を用いてcDNAを全RNA(200ng)から逆転写した。特異的mRNAのレベルは、「SYBR(登録商標)Premix ExTaq(商標)II」(タカラバイオ社)を用いてqPCRにより定量した。転写物レベルをグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)のレベルを用いた標準化を行った。PCR条件及びプライマーは、本発明者らの文献(Molecules 2019,24(7),1259)に記載のものを用いた。PCR特異性は融解曲線分析により確認した。全ての試料は3サンプルで分析し、相対遺伝子発現を2−ΔΔCt法により計算した。
【0108】
(3−3)一酸化窒素(NO)測定
EA.hy926細胞を12ウェル培養プレートに播種し、コンフルエントになるまで培養した。培地を交換し、次いで細胞を100nM フルベストラントの存在下又は非存在下で24時間インキュベートした後アントシアニン(10μM)、BCE(0.5又は1.0μg/mL)若しくはE2(10nM)の存在下又は非存在下で細胞をさらに5日間インキュベートした後、培地を回収し、SpeedVac濃縮装置(「SPD1010」;サーモフィッシャーサイエンティフィック社)で濃縮した。
【0109】
「QuantiChrom(商標)一酸化窒素アッセイキット」(フナコシ社)を用いてNOの放出量を定量した。具体的には、培養培地をZnSO及びNaOHで脱タンパク質処理し、続いてキットからワーキング試薬を添加し、次いで60℃で10分間インキュベートした。試料を96ウェルプレートに移し、次いで吸光度(OD)をマイクロプレートリーダー(「Benchmark」;バイオ−ラッド社)を用いて570nmの波長で測定した。データは標準試料を用いて作成した標準曲線に基づいて濃度に変換した。
【0110】
(3−4)卵巣除去ラットを用いたeNOSタンパク質の免疫組織化学染色
上記(1−5)と同様に各ラットを群分けし、それぞれの餌を用いて3ヵ月間飼育し、次いで腹腔動脈組織を摘出し、組織切片を作製した。
【0111】
組織切片について、検体中の内在性ペルオキシダーゼを、ペルオキシダーゼ除去溶液(ダコ・サイトメーションA/S社)を用いて室温で5分間反応させ、次いで血清フリータンパク質ブロック試薬(「Protein Block Serum−Free」;ダコ・サイトメーションA/S社)を用いてインキュベートした後に、抗eNOS抗体(予め希釈したもの;アブカム社)を一次抗体として適用した。
【0112】
室温で90分間インキュベートし、次いで洗浄した後、組織切片を「EnVision(商標)/HRPウサギ/マウス二次抗体」(ダコ・サイトメーションA/S社)を用いて室温で30分間、次いで色素原3,3’−ジアミノベンジジンと一緒にインキュベートした。マイヤーズ・ヘマトキシリン(和光純薬社)を用いて核を対比染色した。一次抗体で処理しなかった組織切片を陰性コントロールとして使用した。組織試料の染色強度を半定量的に測定した(0:なし、1:弱い、2:中程度、3:強い)。
【0113】
(3−5)統計分析
測定結果は、少なくとも3回の独立した実験の平均±標準誤差(SEM)として表した。統計分析は、「ベルカーブ(BellCurve)エクセル バージョン2.13 ソフトウェア」(社会情報サービス社)を使用して実施し、スチールポストホックテスト;p<0.05を有するクラスカル−ウォリス分析は統計的有意性を示すとした。
【0114】
(3−6)評価結果
マイクロアレイ及びIPAにより、BCEを通じて発現が変動した、血管系に関連する遺伝子の上流因子を表3に示す。
【0115】
【表3】
【0116】
ERαのz−スコアは2.7であり、HUVECにおけるBCEのフィトエストロゲン作用にはERαが関係していることがわかった。
【0117】
ラロキシフェンは2.3のz−スコアを示し、ラロキシフェンの遺伝子の下流はBCEによって上方制御された。ラロキシフェンは、閉経後骨粗鬆症の予防に臨床的に有効な組織選択的ERモジュレーター(SERM)である。ラロキシフェンはエストロゲンと同様の挙動をすることが知られており、ヒト内皮細胞においてeNOS酵素活性のER依存性の増強によってNO産生を誘導することが示されている。
【0118】
NOのz−スコアは2.1であったので、エストラジオール及びNOによって調節される遺伝子セットに関連する発現変化を別途評価したところ、BCEがNO合成に関連する経路に関与する遺伝子の発現レベルを有意に変化させた。
【0119】
eNOSの発現におけるアントシアニン及びBCEの作用を評価するために、RT−qPCR分析を実施した。結果を図14に示す。
【0120】
図14A及び図14Bが示すとおり、eNOS mRNAレベルはBCE処理又はアントシアニン処理したHUVEC及びEA.hy926細胞において有意な増加を認めた。eNOS mRNA発現は、0.5及び1.0μg/mL BCEの両方で、用量非依存的に増加した。eNOS mRNA発現レベルはBCEの濃度の間で有意差はなく、さらにBCEの最適濃度は細胞腫で異なることが示された。BCEに含まれるアントシアニンは、eNOS mRNA発現レベルを有意に増加させたが、4種のアントシアニンの間に有意差はなかった。
【0121】
図14Cが示すとおり、フルベストラント処理細胞では、eNOS mRNA発現レベルは減少したが、コントロールレベルと比較して有意差はなかった。フルベストラントは合成ERアンタゴニストである。したがって、BCEがERを介して媒介されるフィトエストロゲン活性を発揮し、eNOS発現に影響を与えると推測される。
【0122】
次に、BCE又はアントシアニンがEA.hy926細胞においてNO合成を惹起することについて、NOを測定することにより評価した。結果を図15に示す。図15Aが示すとおり、NOレベルは、コントロール細胞よりもBCE又はアントシアニンで処理した細胞で有意に高かった。しかし、BCE濃度の間及び4種類のアントシアニンの間に有意差はなかった。
【0123】
図15Bが示すとおり、フルベストラント処理細胞では、NO合成レベルは減少したが、コントロールレベルとは有意差がなかった。これらの結果はeNOS mRNA発現と一致しており、これはBCE及びアントシアニンがeNOS発現を介してNO合成を制御し得ることを示す。
【0124】
表4に示すとおり、BCE(2.0μg/mL)と接触したHUVECの全転写マイクロアレイ分析の結果より、NO関連遺伝子であるVEGFA、HSP90AB1、PIK3CA及びAKT1の発現が亢進した。VEGFA遺伝子の発現は1.7倍増加したが、他のVEGF遺伝子の発現は実質的に変化しなかった。ただし、VEGFC発現は1.2倍増加したが、VEGFB発現はコントロールレベルと大差なかった。
【0125】
【表4】
【0126】
BCEは、チロシン及びPI3Kキナーゼが関与する機構を介して、VEGF発現を調節し、それによってNO放出を促進し得る。マイクロアレイに基づくPIK3CA(1.4倍)及びAKT1(1.1倍)の遺伝子発現のレベルは有意に増加しなかった(表4を参照)。
【0127】
さらに、BCE処理したOVXラットから血管内皮細胞の免疫組織化学的染色によって、PI3K及びホスホAktタンパク質の発現を調べた。しかし、どちらのタンパク質も明確には検出されなかった。これらの結果から、BCEがフィトエストロゲン活性を介するだけではなく、他の経路を介しても内皮細胞におけるNO合成を誘発し得ることがわかった。
【0128】
in vivoでのeNOSタンパク質発現に対するBCEの作用を検証するために、更年期モデルラットの血管内皮細胞を免疫組織化学的染色に供することにより、食餌性BCEがeNOSタンパク質の発現を増加させるかどうかを評価した。結果を図16に示す。
【0129】
図16に示すとおり、eNOSタンパク質発現は、質重量3% BCEを投与したOVX BCE群及びSham群において、OVX Control群よりも統計的に有意に高かった。しかし、OVX BCE群の発現量は、Sham群よりも小さかった。したがって、BCEの食餌摂取がOVXラットの血管内のeNOSタンパク質レベルを改善することを示した。
【0130】
以上の結果より、BCEは、フィトエストロゲン活性により、ヒト内皮細胞におけるeNOS mRNA発現及びNO産生を強く増加させることがわかった。さらに、食餌性BCEは、更年期モデルにおけるeNOSタンパク質発現を増加させた。これらの結果より、BCEは、閉経後の雌性個体にみられる、血管硬化といった血管症状に対して、有益な健康的効果を有し得ることがわかった。また、BCEと同じように、β−エストラジオール及び17α−エストラジオールを含有するブルーベリー果実粉末についても、更年期モデルに対してこれらの作用を有することが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の一態様の組成物は、薄毛、血管硬化、体重増加及び脂肪増加といった更年期症状を罹患した雌性個体に対して利用可能である。
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