【課題】塗布時の皮膜の均一性及び顔料分散性に優れ、乾燥による皮膜の収斂が起こりにくく、それに由来するごわつきが生じにくく、ツヤ感及び発色性も高い化粧料を提供する。
【解決手段】数平均分子量500以上5,000以下でありかつ酸基を有さないポリオール(a)と、分子内に酸基及び2個以上の酸基を除く活性水素基を有する化合物(b)と、数平均分子量500未満でありかつ酸基を有さないポリオール(c)と、イソシアネート(d)とを構成単量体として含み、酸基及びアミノ基含有化合物で中和された酸基の合計含有量が0.09〜0.90mmol/gであるウレタン樹脂(U)が水性媒体(e)中に分散されている化粧料用ウレタン樹脂水性分散体である。
前記ウレタン樹脂(U)に含まれる酸基とアミノ基含有化合物で中和された酸基の合計含有量を基準としたアミノ基含有化合物で中和された酸基の含有率で表される中和率が60%以上100%以下である請求項1又は2に記載の化粧料用ウレタン樹脂水性分散体。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のウレタン樹脂(U)は、数平均分子量500以上5,000以下でありかつ酸基を有さないポリオール(a)と、分子内に酸基及び2個以上の酸基を除く活性水素基を有する化合物(b)と、数平均分子量500未満でありかつ酸基を有さないポリオール(c)と、イソシアネート(d)とを構成単量体として含む。
【0010】
本発明の(a)は、数平均分子量500以上5,000以下でありかつ酸基を有さないポリオールであり、数平均分子量500以上5,000以下でありかつ酸基を有さないポリエーテルポリオール(a1)及び数平均分子量500以上5,000以下でありかつ酸基を有さないポリエステルポリオール(a2)等が挙げられる。
【0011】
前記(a)の数平均分子量(Mn)は、500以上5,000以下であり、不溶性の粗大粒子を抑制する観点から1000以上3000以下であることが好ましい。
なお、本発明の数平均分子量の測定方法は例えば以下である。
【0012】
<数平均分子量(Mn)の測定方法>
前記数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、例えば以下の条件で測定することができる。
装置:「Waters Alliance 2695」[Waters社製]
カラム:「Guardcolumn Super H−L」、「TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000(いずれも東ソー株式会社製)を各1本連結したもの」
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10μl
流量:0.6ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリエチレングリコール
【0013】
数平均分子量500以上5,000以下でありかつ酸基を有さないポリエーテルポリオール(a1)としては、数平均分子量500以上5,000以下でありかつ酸基を有さない脂肪族ポリエーテルポリオール及び数平均分子量500以上5,000以下でありかつ酸基を有さない芳香族環含有ポリエーテルポリオールが挙げられる。
これらのうち1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0014】
数平均分子量500以上5,000以下でありかつ酸基を有さない脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリオキシエチレンポリオール[ポリエチレングリコール(以下、PEGと略記)等]、ポリオキシプロピレンポリオール[ポリプロピレングリコール等]、ポリオキシエチレン/プロピレンポリオール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0015】
数平均分子量500以上5,000以下でありかつ酸基を有さない脂肪族ポリエーテルポリオールの市販品としては、PTMG1000[Mn=1,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、三菱化学(株)製]、PTMG2000[Mn=2,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、三菱化学(株)製]、PTMG3000[Mn=3,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、三菱化学(株)製]、PTGL3000[Mn=3,000の変性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、保土谷化学工業(株)製]、サンニックスPP−2000[Mn=2,000のポリプロピレンエーテルグリコール]、サンニックスGP−3000[Mn=3,000のポリプロピレングリセリルエーテル、三洋化成工業(株)製]等が挙げられる。
【0016】
数平均分子量500以上5,000以下でありかつ酸基を有さない芳香族環含有ポリエーテルポリオールとしては、例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下、EOと略記)付加物[ビスフェノールAのEO2モル付加物、ビスフェノールAのEO4モル付加物、ビスフェノールAのEO6モル付加物、ビスフェノールAのEO8モル付加物、ビスフェノールAのEO10モル付加物及びビスフェノールAのEO20モル付加物等]及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下、POと略記)付加物[ビスフェノールAのPO2モル付加物、ビスフェノールAのPO3モル付加物、ビスフェノールAのPO5モル付加物等]等のビスフェノール骨格を有するポリオール並びにレゾルシンのEO又はPO付加物等が挙げられる。
【0017】
数平均分子量500以上5,000以下でありかつ酸基を有さないポリエステルポリオール(a2)としては、化学式量又はMnが300未満の低分子ポリオールと炭素数2〜10の多価カルボン酸又はそのエステル形成誘導体とのポリエステルポリオール(a21)、ポリラクトンポリオール(a22)、低分子ポリオールと低分子カーボネート化合物とを脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートポリオール(a23)及びヒマシ油ポリオール(a24)等が挙げられる。
前記低分子ポリオールとして好ましいものは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール及びこれらの混合物である。
【0018】
化学式量又はMnが300未満の低分子ポリオールと炭素数2〜10の多価カルボン酸又はそのエステル形成誘導体とのポリエステルポリオール(a21)としては、例えばポリネオペンチレンアジペートジオール及びポリブチレンアジペートジオールが挙げられる。
【0019】
ポリラクトンポリオール(a22)は、上記低分子ポリオールへのラクトンの重付加物であり、ラクトンとしては、炭素数4〜12のラクトン(例えばγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン及びε−カプロラクトン)等が挙げられる。
【0020】
ポリラクトンポリオールの具体例としては、例えばポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール及びポリカプロラクトントリオール等が挙げられる。
【0021】
低分子ポリオールと低分子カーボネート化合物とを脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートポリオール(a23)の低分子カーボネート化合物は、例えばアルキル基の炭素数1〜6のジアルキルカーボネート、炭素数2〜6のアルキレン基を有するアルキレンカーボネート及び炭素数6〜9のアリール基を有するジアリールカーボネート等が挙げられる。
【0022】
前述ポリカーボネートポリオール(a23)の具体例としては、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール及びポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール(例えば1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールをジアルキルカーボネートと脱アルコール反応させながら縮合させて得られるジオール)等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールの市販品としては、ニッポラン980R[Mn=2,000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール、日本ポリウレタン工業(株)製]、ニッポラン981[Mn=1,000のポリヘキサメチレンカーボネートポリオール、東ソー(株)製]、クラレポリオールC−3090[Mn=3,000のポリ(3−メチル−5−ペンタンジオール/ヘキサメチレン)カーボネートジオール]、エタナコールUH−200[Mn=2,000のポリヘキサメチレンカーボネートポリオール、宇部興産(株)製]、デュラノールG4672[Mn=2,000のポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール、旭化成ケミカルズ(株)製]及びT5652[Mn=2,000のポリ(ペンタメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール、旭化成ケミカルズ(株)製]等が挙げられる。
【0023】
ヒマシ油ポリオール(a24)には、ヒマシ油、及びポリオール又はAOで変性された変性ヒマシ油が含まれる。変性ヒマシ油はヒマシ油とポリオールとのエステル交換及び/又はAO付加により製造できる。
ヒマシ油ポリオールとしては、ヒマシ油、トリメチロールプロパン変性ヒマシ油、ペンタエリスリトール変性ヒマシ油及びヒマシ油のEO(4〜30モル)付加物等が挙げられる。
【0024】
本発明の(a)のうち、得られる皮膜の均一性及び顔料分散性の観点から、好ましくは数平均分子量500以上5,000以下でありかつ酸基を有さない脂肪族ポリエーテルポリオール及び低分子ポリオールと低分子カーボネート化合物とを脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートポリオール(a23)であり、更に好ましくはポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリカーボネートジオール及びビスフェノールAのPO付加物である。
【0025】
本発明の(b)は、分子内に酸基及び2個以上の酸基を除く活性水素基を有する化合物である。
【0026】
ここで本発明における酸基とは、例えばカルボキシル基、スルホ基、リン酸基及びスルホベタイン型基(スルホ基とスルホ基と隣り合わない位置にある4級アンモニウム基とを有する原子団からなる基を意味する)などであり、これらの酸基は(b)中に存在するものである。酸基としては、得られる皮膜の均一性及び顔料分散性の観点からスルホ基及びカルボキシル基が好ましく、カルボキシル基が更に好ましい。
【0027】
酸基としてカルボキシル基を有し、かつ2個以上の活性水素基を有する化合物(b1)としては、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシルカルボン酸、1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、リジン及びアルギニンなどのジアミノカルボン酸等を挙げることができる。
【0028】
酸基としてスルホ基を有し、かつ2個以上の活性水素基を有する化合物(b2)としては、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸及び2,4−ジアミノ−5−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0029】
酸基としてリン酸基を有し、かつ2個以上の活性水素基を有する化合物(b3)としては、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピルフェニルホスフェート等が挙げられる。
【0030】
酸基としてスルホベタイン型基を有し、かつ2個以上の活性水素基を有する化合物(b4)としては、例えば、N−メチルジエタノールアミンなどの3級アミンと1,3−プロパンスルトンとの反応によって得られるスルホベタイン化合物等を挙げることができる。
【0031】
前記(b)としては、粗大粒子低減の観点から、好ましくは上記(b1)及び(b2)であり、更に好ましくは(b1)であり、特に好ましくは2,2−ジメチロールプロピオン酸及び2,2−ジメチロールブタン酸である。
【0032】
前記(b)が有する酸基は、前記ウレタン樹脂(U)中においてアミノ基含有化合物を加えることにより、酸基及び中和された酸基の合計含有量を基準とした中和された酸基の含有率で表される中和率が60%以上100%以下であることが好ましく、65%以上195%以下が更に好ましい。
アミノ基含有化合物としては、炭素数1〜20のアミン化合物が好ましく、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン及びモノエタノールアミン等の1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びメチルプロパノールアミン等の2級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルモノエタノールアミン及びトリエタノールアミン等のアミノ基含有化合物が挙げられ、なかでもトリエチルアミン及びジメチルエタノールアミンが好ましい。
前記(b)が有する酸基の中和は、後述するウレタン樹脂水性分散体の製造方法において記載の中和剤(i)としてアミノ基含有化合物を用いることで行うことができ、中和率の計算は述するウレタン樹脂水性分散体の製造方法において記載の方法で行うことが出来る。
【0033】
本発明の(c)は、数平均分子量500未満でありかつ酸基を有さないポリオールであり、具体的には、2価アルコール、3価アルコール及び4価以上のアルコールが挙げられる。
皮膜の収斂防止の観点から、好ましくは2価アルコール及び3価アルコールであり、更に好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、N−メチルジエタノールアミン及びトリメチロールプロパンである。
前記(c)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0034】
(a)の含有量は、(a)と(b)と(c)の合計重量[(a)+(b)+(c)]に基づいて、好ましくは60〜97重量%であり、更に好ましくは70〜95重量%であり、最も好ましくは78〜92重量%である。
(b)の含有量は、(a)と(b)と(c)の合計重量[(a)+(b)+(c)]に基づいて、好ましくは2〜20重量%であり、更に好ましくは3〜15重量%であり、最も好ましくは5〜12重量%である。
(c)の含有量は、(a)と(b)と(c)の合計重量[(a)+(b)+(c)]に基づいて、好ましくは1〜20重量%であり、更に好ましくは2〜15重量%であり、最も好ましくは3〜10重量%である。
【0035】
本発明のイソシアネート(d)は、炭素数8〜26の芳香族ポリイソシアネート(d1)、炭素数4〜22の脂肪族ポリイソシアネート(d2)及び炭素数8〜18の脂環式ポリイソシアネート(d3)等が挙げられる。
前記(d)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
炭素数8〜26の芳香族ポリイソシアネート(d1)としては、例えば1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、粗製TDI、4,4’−又は2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、ジフェニルメタンジイソシアネートをMDIと略記)、粗製MDI、ポリアリールポリイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート及びm−又はp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートが挙げられる。
【0037】
炭素数4〜22の脂肪族ポリイソシアネート(d2)としては、例えばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート及び2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートが挙げられる。
【0038】
炭素数8〜18の脂環式ポリイソシアネート(d3)としては、例えばイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、水添MDIと略記)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0039】
前記(d)のうち、皮膜の収斂防止の観点から、好ましくは前記(d3)であり、更に好ましくは水添MDI及びIPDIである。
【0040】
(d)の含有量は、(a)と(b)と(c)の合計重量[(a)+(b)+(c)]に基づいて、好ましくは10〜150重量%であり、更に好ましくは20〜120重量%であり、更に好ましくは30〜115重量%であり、特に好ましくは30〜100重量%である。
【0041】
本発明の化粧料用ウレタン樹脂水性分散体を製造する方法としては、例えば、数平均分子量500以上5,000以下でありかつ酸基を有さないポリオール(a)、分子内に酸基及び2個以上の酸基を除く活性水素基を有する化合物(b)、数平均分子量500未満でありかつ酸基を有さないポリオール(c)及びイソシアネート(d)並びに必要により鎖伸長剤(h)及び反応停止剤(g)を、有機溶媒の存在下又は非存在下で一段又は多段で、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(P)を形成し、次いで必要により該プレポリマーにおける前記(b)により導入された酸基部分を下記の中和剤(i)を用いて中和し、塩として、水性媒体(e)、分散剤(f)、鎖伸長剤(h)及び/又は反応停止剤(g)の存在下又は非存在下で水性媒体に分散して、イソシアネート基が実質的に無くなるまで反応[(h)による鎖伸長、及び必要により前記(g)による反応停止]させ、水性媒体(e)に水と溶媒との混合物を使用した場合は加熱減圧で溶媒を除去することによりウレタン樹脂(U)及びウレタン樹脂水性分散体を得る方法が挙げられる。
【0042】
本発明における(U)のウレタン基濃度は、前記(U)の皮膜の収斂防止の観点から、(U)の重量を基準として、好ましくは1.0〜4.5mmol/gであり、更に好ましくは1.3〜4.0mmol/gであり、最も好ましくは1.5〜3.5mmol/gである。
【0043】
前記(U)のウレタン基濃度は、窒素分析計[ANTEK7000(アンテック社製)]によって定量される窒素原子含有量と
1H−NMRによって定量されるウレタン基とウレア基の比率から算出する。
1H−NMR測定については、「NMRによるポリウレタン樹脂の構造研究:武田研究所報34(2)、224−323(1975)」に記載の方法で行う。即ち
1H−NMRを測定して、脂肪族を使用した場合、化学シフト6ppm付近のウレア基由来の水素の積分量と化学シフト7ppm付近のウレタン基由来の水素の積分量の比率からウレア基とウレタン基の重量比を測定し、当該重量比と上記の窒素原子含有量からウレタン基濃度を算出する。芳香族イソシアネートを使用した場合、化学シフト8ppm付近のウレア基由来の水素の積分量と化学シフト9ppm付近のウレタン基由来の水素の積分量の比率からウレア基とウレタン基の重量比を算出し、当該重量比と上記の窒素原子含量からウレタン基濃度を算出する。
【0044】
本発明における前記(U)の酸基及び中和された酸基の合計含有量は、皮膜の収斂防止及び顔料分散性の観点から、好ましくは0.09〜0.90mmol/g/gであり、更に好ましくは0.14〜0.76mol/gであり、最も好ましくは0.19〜0.62mmol/gである。
【0045】
ウレタン樹脂(U)中の酸基及び中和された酸基の含有量を0.09〜0.90mmol/gの範囲とするには、例えば、(b)として2,2−ジメチロールブタン酸を使用した場合には、(b)の重量割合を、(a)、(b)、(c)及び(d)の合計重量に対して、1.3〜13.3重量%程度となるようにして、ウレタン樹脂(U)を合成すればよい。
【0046】
本発明における(U)が架橋構造を有さず有機溶媒に可溶で数平均分子量(Mn)が測定可能な場合、前記(U)のMnは皮膜の均一性及び顔料分散性の観点から、好ましくは10,000〜1,000,000であり、更に好ましくは20,000〜800,000であり、最も好ましくは25,000〜70,000である。
【0047】
本発明における(U)に含まれる酸基を中和するために用いることができる中和剤(i)としては、例えばアンモニア、炭素数1〜20のアミン化合物及びアルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等)が挙げられる。
炭素数1〜20のアミン化合物としては、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン及びモノエタノールアミン等の1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びメチルプロパノールアミン等の2級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルモノエタノールアミン及びトリエタノールアミン等のアミノ基含有化合物が挙げられる。
生成するウレタン樹脂水分散体の乾燥性及び得られる皮膜の均一性の観点から、25℃における蒸気圧が高い化合物が好適である。このような観点から、好ましくはアンモニア、トリエチルアミン及びジメチルエタノールアミン、更に好ましくはトリエチルアミン及びジメチルエタノールアミンが挙げられる。
【0048】
前記中和剤(i)は、ウレタン化反応前、ウレタン化反応中、ウレタン化反応後、水性媒体分散工程前、水性媒体分散工程中又は水性媒体分散後のいずれの時期に添加しても良いが、ウレタン樹脂の安定性及び水性分散体の安定性の観点から、水性媒体分散工程前又は水性媒体分散工程中に添加することが好ましい。
【0049】
水性媒体(e)は、水又は水と以下に記載の溶媒との混合物を意味する。
水と混合させる溶媒としては、イソシアネート基と実質的に非反応性の溶媒から選ばれ、例えばケトン(例えばアセトン及びメチルエチルケトン)、エステル[例えば酢酸エチル、ニ塩基酸エステル(DBE)]、エーテル(例えばテトラヒドロフラン)、アミド化合物(例えばN,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチルピロリドン)及び芳香族炭化水素(例えばトルエン)等が挙げられる。
これらの溶媒は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0050】
水と混合させる溶媒として好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル及びテトラヒドロフラン等である。
沸点が100℃以上の水と混合させる溶媒を使用すると、水性媒体(e)から水と混合させる溶媒のみを完全に除去することが困難となるため、溶媒が化粧料用ウレタン樹脂水性分散体中に残存し、溶媒由来の臭気が気になるという問題がある。さらに、有機溶媒が皮膜中に残存しやすくなり、皮膜の収斂が生じてしまう。
【0051】
前記水性媒体(e)の含有量は化粧料の安全性の観点から、化粧料用ウレタン樹脂水性分散体の重量に基づいて、好ましくは5重量%以下であり、更に好ましくは3重量%以下であり、特に好ましくは1重量%以下である。
【0052】
分散剤(f)としては、公知の非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びその他の乳化分散剤が挙げられる。
前記(f)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0053】
反応停止剤(g)としては、炭素数1〜20のモノアルコール(メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、デカノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコール等)、炭素数1〜20のモノアミン(モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン及びモノオクチルアミン等のモノ又はジアルキルアミン並びにモノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン等のモノ又はジアルカノールアミン、等)が挙げられる。
反応停止剤(g)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0054】
鎖伸長剤(h)としては、水、炭素数2〜36の脂肪族ポリアミン[エチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジヘキシレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチエレンヘキサミン及びヘキサエチレンヘプタミン等のポリ(n=2〜6)アルキレン(炭素数2〜6)ポリ(n=3〜7)アミン等]、炭素数6〜20の脂環式ポリアミン(1,3−又は1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−又は2,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等)、炭素数6〜20の芳香族ポリアミン(1,3−又は1,4−フェニレンジアミン、2,4−又は2,6−トリレンジアミン、4,4’−又は2,4’−メチレンビスアニリン等)、炭素数3〜20の複素環式ポリアミン(2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、ピペラジン及びN−アミノエチルピペラジン等)、ヒドラジン又はその誘導体(二塩基酸ジヒドラジド例えばアジピン酸ジヒドラジド等)及び炭素数2〜20のアミノアルコール類(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール及びトリエタノールアミン)等が挙げられる。
(h)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0055】
<化粧料用ウレタン樹脂水性分散体の各種粒子径の測定方法>
化粧料用ウレタン樹脂水性分散体におけるウレタン樹脂(U)の光散乱測定法による体積平均粒子径(Dv)は、好ましくは10〜350nmであり、更に好ましくは20〜250nmであり、最も好ましくは70〜200nmであり、特に好ましくは70〜140nmである。
(Dv)が10nm以上であると化粧料用ウレタン樹脂水性分散体の粘度が適正となり、ハンドリング性が良好である。また、350nm以下であると分散安定性が良好である。
(Dv)は前記(U)に含まれる酸基の含有量、中和された酸基の含有量、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(P)の分子量及び水性媒体分散工程前の(U)に対する有機溶媒の量で適宜調整が可能である。
前記化粧料用ウレタン樹脂水性分散体を0.01g計量し、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、商品名:LA−950V2)を使用して、循環流量2、撹拌速度2の条件での体積基準の粒子径分布を測定し、体積平均粒子径(粒度累積分布の50%に相当する粒子径の値)を求めた。
[測定条件]測定温度:25±1℃溶媒:イオン交換水
【0056】
<化粧料用ウレタン樹脂水性分散体の固形分濃度>
化粧料用ウレタン樹脂水性分散体の固形分濃度(揮発性成分以外の成分の重量割合)は、前記(U)のハンドリング性の観点から、好ましくは20〜65重量%、更に好ましくは25〜55重量%であり、最も好ましくは30〜45重量%である。
固形分濃度は、水性分散体約1gをペトリ皿上にうすく伸ばし、精秤した後、循環式定温乾燥機を用いて130℃で、45分間加熱した後の重量を精秤し、加熱前の重量に対する加熱後の残存重量の割合(百分率)を計算することにより得ることができる。
【0057】
<化粧料用ウレタン樹脂水性分散体の粘度>
化粧料用ウレタン樹脂水性分散体の25℃での粘度は、ハンドリング性の観点から、好ましくは5000mPa・s以下、更に好ましくは1000mPa・s以下、最も好ましくは600mPa・s以下である。
粘度はBL型粘度計を用いて測定することができる。
【0058】
<化粧料用ウレタン樹脂水性分散体のpH>
化粧料用ウレタン樹脂水性分散体の25℃でのpHは、水性分散体の分散安定性の観点から、好ましくは6〜12、更に好ましくは7〜10である。
pHは、pH Meter M−12[堀場製作所(株)製]を用いて測定することができる。
【0059】
<化粧料(Y)>
本発明の化粧料用ウレタン樹脂水性分散体は、皮膚化粧料用及び毛髪用化粧料の皮膜形成樹脂として使用することができる。
本発明の化粧料は、前述化粧料用ウレタン樹脂水性分散体の他に、粉体(M)を含有する。
【0060】
<粉体(M)>
粉体(M)としては、例えば、顔料、紫外線防御剤等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
前記顔料としては、化粧料に用いられる公知の有機又は無機の顔料を使用することができる。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン被覆雲母、着色酸化チタン被覆雲母、酸化チタン・シリカ・酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆タルク、酸化鉄被覆シリカ末、酸化チタン被覆シリカ末、酸化チタン被覆ガラス末、酸化鉄・シリカ被覆アルミ末、酸化チタン被覆アルミナ、酸化鉄・シリカ被覆酸化鉄、酸化チタン被覆合成マイカ、酸化鉄・酸化チタン被覆合成マイカ等のパール顔料、酸化鉄(ベンガラ)、黄酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック、酸化チタン、群青、紺青、タルク、セリサイト、カオリン、マイカ、シリカ、亜鉛華、ベントナイト、硫酸バリウム、ヒドロキシアパタイト及び窒化ホウ素等を挙げることができる。
また、有機顔料としては、例えば、赤色104号、赤色201号、赤色202号、赤色226号、赤色230号、黄色4号、黄色5号、黄色401号、青色1号、青色404号、ナイロンパウダー、ポリエステルパウダー、アクリルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、シリコーンパウダー、シルク、セルロース積層フィルム末、Nε−ラウロイル−L−リジン及び天然色素等を挙げることができる。
【0062】
前記紫外線防御剤としては、化粧料に用いられる公知の有機又は無機の紫外線防御剤を使用することができ、例えば、微粒子酸化チタン、酸化亜鉛、トリアジン系化合物(例えば、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、トリスビフェニルトリアジン等)等を挙げることができる。本発明において微粒子酸化チタン及び酸化亜鉛は、その表面がシリカ、アルミナ等の無機化合物、またはポリアクリル酸ナトリウム、脂肪酸金属石鹸、シリコーン等の有機化合物により被覆されていることが好ましい。
【0063】
粉体(M)の形状としては、特に限定されず、例えば、球状、板状、鱗片状、針状等を挙げることができる。また、粉体(M)の構成は特に限定されず、単層の構成であってもよいし、多層(複層)の構成であってもよい。更に、粉体(M)は、中実粒子、中空粒子、多孔粒子等のいずれであってもよい。粉体(M)の平均一次粒子径(動的光散乱(DLS)法による)は、例えば0.1〜1000nm程度、好ましくは1〜800nm、特に好ましくは10〜500nmである。
【0064】
本発明の化粧料には、上記成分の他、目的に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、油相成分(L)、水、保湿剤、水溶性増粘剤、植物抽出エキス類、発酵抽出エキス類、色素、界面活性剤、収れん剤、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、パール剤、スクラブ剤、美白有効成分、血行促進成剤、養毛剤及び香料等を1種又は2以上配合することができる。
【0065】
油相成分(L)としては、上記ウレタン樹脂水性分散体と親和性が高いものを使用することが好ましく、シリコーン油、高極性オイル、低極性オイル、高級脂肪酸及び油溶性増粘剤等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
前記シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン(50000cs未満)、メチルフェニルポリシロキサン、環状ジメチコン、ステアロキシシリコーン等の高級アルコキシ変成シリコーン、アルキル変成シリコーン及び高級脂肪酸エステル変性シリコーン等を挙げることができる。
【0067】
前記高極性オイルとしては、例えば、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、オクタン酸セチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソステアリル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸・ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸イソステアリル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸グリセリル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、12−ヒドロキシステアリン酸イソプロピル、12−ヒドロキシステアリン酸オクチル、2−エチルヘキサン酸セチル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、オレイン酸フィトステリル、コハク酸2−エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸オクチルドデシル、乳酸イソステアリル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、トリイソパルミチン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸・モノイソオクチル酸グリセリル、テトラロジン酸ペンタエリスリット、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べへニル)、ラウロイルサルコシンイソプロピル、ミリストイルメチル−β−アラニン(フィトステリル/デシルテトラデシル)、ジオクチルドデカン酸グリセリル、ラウリルアルコール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、へプチルウンデカノール、オクチルドデカノール及びデシルテトラデカノール等を挙げることができる。
【0068】
前記低極性オイルとしては、例えば、オリーブ油、ホホバ油、アボカド油、ヒマワリ油、ラベンダー油、マカデミアナッツ油、流動パラフィン、流動ポリイソブチレン、スクワラン、アマニ油、アーモンド油、ミツロウ、カルナバワックス、キャンデリラロウ、牛脂、牛脚脂、牛骨脂、硬化牛脂、小麦胚芽油、ゴマ油、米胚芽油、米糠油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、菜種油、馬脂、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ミンク油、綿実油、ヤシ油、硬化ヤシ油、落花生油、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、オリーブスクワラン、スクワレン、セレシン、パラフィンワックス、ワセリン及びα−オレフィンオリゴマー等を挙げることができる。
【0069】
前記高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸等を挙げることができる。
【0070】
前記油溶性増粘剤としては、例えば、12−ヒドロキシステアリン酸等の長鎖ヒドロキシ脂肪酸類;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸アルミニウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩;水添(スチレン/イソプレン)コポリマー、水添ポリイソブテン、パルミチン酸デキストリン、(パルミチン酸/ヘキシルデカン酸)デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ステアリン酸イヌリン、イソステアリン酸デキストリン等の高分子化合物;シリル化シリカ等の表面親油化微粒子;各種親水性ポリマーと界面活性剤との会合体等を挙げることができる。
【0071】
前記水としては、一般に化粧料に使用することができる水であれば特に制限はないが、精製水を用いるのが好ましい。
【0072】
保湿剤としては、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,3−プロパンジオール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール及び1,2−ペンタンジオール等が挙げられる。
【0073】
前記水溶性増粘剤としては水溶性高分子化合物や多糖類誘導体(例えば、アラビアガム、アルギニン・カルボマー、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、合成ケイ酸ナトリウム、ジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、シクロデキストリン、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒアルロン酸誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース等)及び塩化ナトリウム等を挙げることができる。水溶性増粘剤は水溶液の状態で使用しても良い。
【0074】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、高級アルキルカルボン酸塩、カルボキシメチル化物の塩、硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン、スルホン酸塩およびリン酸エステル塩などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型およびアミン塩型などが挙げられる。両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤、硫酸エステル塩型両性界面活性剤およびスルホン酸塩型両性界面活性剤などが挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、アルキレンオキシド付加型非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンセチルアルコール、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンソルビトール等)、多価アルコール(炭素数3〜20)型非イオン界面活性剤(例えばモノステアリン酸オキシエチレンソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン及びポリリシノレイン酸ポリグリセリル等)等が挙げられる。
【0075】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル(パラベン)、ソルビン酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、第四級アンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等)、クロロキシジン、ペンチレングリコール、フェノキシエタノール及びエチルヘキシルグリセリン等が挙げられる。
【0076】
酸化防止剤としては、カロチノイド、アスコルビン酸及びその塩、ステアリン酸アスコルビル、トコフェノール、酢酸トコフェノール、トコフェロール、p−t−ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、フィチン酸、フェルラ酸、チオタウリン、ヒポタウリン、亜硫酸塩、エリソルビン酸及びその塩、クロロゲン酸、エピカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、アピゲニン、カンフェロール、ミリセチン及びケルセチン等が挙げられる。
【0077】
キレート剤としては、エチレンジアミン4酢酸(エデト酸)、エチレンジアミン4酢酸塩(ナトリウム塩(エデト酸ナトリウム:日本薬局方、EDTA−2Naなど)、カリウム塩など)、フィチン酸、グルコン酸、ポリリン酸及びメタリン酸等が挙げられる。
【0078】
本発明の化粧料は、上記成分を公知の方法に従って、加熱、混合、撹拌等行うことにより製造することができる。
本発明の化粧料には、例えば、口紅、リップグロス、油性ファンデーション、ケーキ型ファンデーション、乳化型ファンデーション、チーク、マスカラ、アイライナー及びアイシャドウ等が含まれる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例を以て本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下、部は重量部を意味する。
【0080】
<化粧料用ウレタン樹脂水性分散体の製造(実施例1〜4、7及び8)、(比較例1、2)>
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置に、表1の記載に従って各種ウレタン樹脂用原料を仕込んで85℃で10時間撹拌してウレタン化反応を行い、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を製造した。得られたアセトン溶液を30℃に冷却して表1に記載の中和剤、イオン交換水を表1に記載のように仕込んだ。得られたウレタンプレポリマーのアセトン溶液を30℃で撹拌しながら中和剤を加え、30分間均一化した後、イオン交換水を200rpmで撹拌しながら加え溶液を分散させた。減圧下に65℃でアセトンを留去し、化粧料用ウレタン樹脂水分散体(X−1)〜(X−4)、(X−7)及び(X−8)、比較化粧料用ウレタン樹脂水性分散体(X’−1)〜(X’−2)を得た。得られた化粧料用ウレタン樹脂水分散体及び比較化粧料用ウレタン樹脂水性分散体の固形分濃度、粘度、数平均分子量、ウレタン樹脂の酸基及び中和された酸基の合計含有量、ウレタン樹脂の体積平均粒子径及びウレタン樹脂のウレタン基濃度を表1に示す。
【0081】
<化粧料用ウレタン樹脂水性分散体の製造(実施例5、6、9〜10)>
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置に、表1の記載に従って各種ウレタン樹脂用原料を仕込んで85℃で10時間撹拌してウレタン化反応を行い、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を製造した。得られたアセトン溶液を30℃に冷却して表1に記載の中和剤、伸長アミン、イオン交換水を表1に記載のように仕込んだ。得られたウレタンプレポリマーのアセトン溶液を30℃で撹拌しながら中和剤を加え、30分間均一化した後、イオン交換水を200rpmで撹拌しながら加え溶液を分散させた。得られた分散液に伸長アミンを加えて、減圧下に65℃でアセトンを留去し、ウレタン樹脂水分散体(X−5)、(X−6)、(X−9)〜(X−10)を得た。得られた化粧料用ウレタン樹脂水分散体及び比較化粧料用ウレタン樹脂水性分散体の固形分濃度、粘度、数平均分子量、ウレタン樹脂の体積平均粒子径、ウレタン樹脂の酸基及び中和された酸基の合計含有量及びウレタン樹脂のウレタン基濃度を表1に示す。
【0082】
<化粧料用ウレタン樹脂水性分散体の製造(実施例11)>
実施例1において、アセトンをメチルエチルケトンに変更した以外は実施例1と同様にして、ウレタン樹脂水分散体(X−11)を得た。得られた化粧料用ウレタン樹脂水分散体及び比較化粧料用ウレタン樹脂水性分散体の固形分濃度、粘度、数平均分子量、ウレタン樹脂の体積平均粒子径、ウレタン樹脂の酸基及び中和された酸基の合計含有量及びウレタン樹脂のウレタン基濃度を表1に示す。
【0083】
なお、表1において商品名で表した原料の組成は以下の通りである。
・サンニックスPP−2000:Mn=2,000のポリプロピレンエーテルグリコール[三洋化成工業(株)製]
・PTMG1000:Mn=1,000のポリオキシテトラメチレングリコール[三菱化学(株)製]
・PTMG2000:Mn=2,000のポリオキシテトラメチレングリコール[三菱化学(株)製]
・PTMG3000:Mn=3,000のポリオキシテトラメチレングリコール[三菱化学(株)製]
・デュラノールG4672:Mn=2,000のポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール[旭化成ケミカルズ(株)製]
・エタナコールUH−200:Mn=2,000のポリヘキサメチレンカーボネートポリオール[宇部興産(株)製]
・ニッポラン981:Mn=1,000のポリヘキサメチレンカーボネートポリオール[東ソー(株)製]
・サンエスター5620:Mn=2000のポリネオペンチレンアジペートジオール[三洋化成工業(株)製]
・ニューポールBP−3P:ビスフェノールA1モル部に対してPO3モル部が付加したビスフェノールAのPO付加物[三洋化成工業(株)製]
【0084】
【表1】
【0085】
<化粧料(Y)(アイライナー)の調整方法>
撹拌機を備えた容器に水とカーボンブラックの分散物(WD−CB:大東化成製)とを加えて撹拌し、表2に記載の配合組成に従って、精製水、フェノキシエタノール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール及び上記方法により作成したウレタン樹脂水性分散体を配合し、室温で10分間更に撹拌することで、化粧料(Y−1)〜(Y−11)及び比較化粧料(Y’−1)〜(Y’−2)を得た。得られた化粧料及び比較化粧料の、皮膜の均一性、にじみ性、光沢度及び発色性を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
<化粧料(Y)(マスカラ)の調整方法>
表3に記載の配合組成に従って、撹拌機を備えた容器に表3に記載のA成分を加え撹拌した。そこへあらかじめ85℃で温調したH成分を加え、更に撹拌した。5分間撹拌した後、K成分を添加して撹拌した。その後脱泡することにより化粧料(Y−12)〜(Y−15)、比較用化粧料(Y’−3)〜(Y’−4)を得た。得られた化粧料及び比較化粧料の、皮膜の均一性及び発色性を表3に示す。
【0088】
【表3】
【0089】
<化粧料組成物(Y)(乳化型ファンデーション)の調整方法>
表4に記載の配合組成に従って、撹拌機を備えた容器にあらかじめ40℃で温調した1)成分を加え撹拌した。そこへ2)成分を徐々に添加し撹拌した。5分間撹拌した後、3)成分を徐々に添加して撹拌して乳化した。さらに5分間撹拌した後、4)成分を徐々に添加し撹拌した。その後脱泡することにより化粧料(Y−16)〜(Y−19)、比較用化粧料(Y’−5)〜(Y’−6)を得た。得られた化粧料及び比較化粧料の、皮膜の均一性及び発色性を表4に示す。
【0090】
【表4】
【0091】
<化粧料の皮膜の均一性の評価方法(アイライナー及び乳化型ファンデーションの場合)>
化粧料がアイライナーの場合は、アイライナーを化粧筆につけて肌に約10cmの線を引き、10分乾燥させた後の皮膜の収斂による厚みのムラを、以下の基準で官能評価した。
化粧料が乳化型ファンデーションの場合は、乳化型ファンデーションを指につけて肌に塗布し、10分乾燥させた後の皮膜の収斂による厚みムラを、以下の基準で官能評価した。
表中の評価結果は、専門評価者5人が下記の5段階で官能評価し、5人の合計得点が25点〜21点の場合を「5」、20点〜16点の場合を「4」、15点〜11点の場合を「3」、10点〜6点の場合を「2」、5点〜1点の場合を「1」とした。
(評価基準)
5点;厚みムラが見られず、均一な皮膜が得られた。
4点;厚みムラがわずかに見られた。
3点;厚みムラがやや目立った。
2点;厚みムラが目立った。
1点;厚みムラがかなり目立った。
【0092】
<化粧料の塗布時のダマのできにくさの評価方法(マスカラの場合)>
化粧料を模造睫毛に、各睫毛に対してマスカラブラシを使用して3×10ストローク塗布し、マスカラブラシは10ストロークのセット毎に塗布後浸漬した。ダマのできにくさを、以下の基準で官能評価した。
表中の評価結果は、専門評価者5人が下記の5段階で官能評価し、5人の合計得点が25点〜21点の場合を「5」、20点〜16点の場合を「4」、15点〜11点の場合を「3」、10点〜6点の場合を「2」、5点〜1点の場合を「1」とした。
(評価基準)
5点;ダマが見られず、均一な皮膜が得られた。
4点;ダマがわずかに見られた。
3点;ダマがやや目立った。
2点;ダマが目立った。
1点;ダマがかなり目立った。
【0093】
<化粧料のにじみ性の評価方法(アイライナーの場合)>
パネラー3人の手の甲上に、5mm×2cmの幅で前記化粧料を塗布し、1分間後に皮膜ににじみが生じているかを目視で確認した。
以下の評価基準により、にじみ性の評価を行った。パネラー3人の合計得点が1〜3点の場合を「×」、4〜5点の場合を「△」、6〜7点の場合を「○」、8〜9点の場合を「◎」とした。
3点・・・皮膜と肌の境目がはっきりとしていて、にじみが生じていなかった。
2点・・・皮膜と肌の境目に僅かににじみが生じていた。
1点・・・皮膜と肌の境目ににじみが生じていた。
【0094】
<化粧料の光沢度(ツヤ感)評価方法(アイライナーの場合)>
PETフィルム上に、上記化粧料を乾燥膜厚20μmになるように塗工し、24時間乾燥後の皮膜試料をByKスペクトロ−ガイドスフィアグロス光沢計を用いて、白色マット吸収体背景上で、入射光20°の条件で各3回測定した。この装置は、ある特定の入射光において、試料の鏡面反射の強度を測定する。反射光の強度は、材料及び照明角度に左右される。非鉄材料(有機塗膜、プラスチック等)については、反射光の強度は、照明角度とともに増加する。色の濃さに応じて材料を貫通する入射光の残りは、部分的に吸収されるか又は散乱される。反射率計測定結果は、入射光の量に基づくものではなく、規定された屈折率の研磨された黒色ガラス標準に基づくものである。測定値は内部標準に対して正規化され、100からの値とされる。この較正標準については、測定値は、100グロス単位に設定される(較正)。測定値が100に近づくほど、試料はより光沢がある。測定単位は、グロス単位(GU)である。
3回測定した光沢値の平均を、LenetaブランドのリファレンスコントラストカードForm 1A Penopac上で評価した。
【0095】
<化粧料の発色性評価方法(アイライナー、マスカラ、乳化型ファンデーションの場合)>
パネラー3人の手の甲上に、5mm×2cmの幅で前記化粧料を塗布し、1分間後に発色性を目視で確認した。以下の評価基準により、発色性の評価を行った。パネラー3人の合計得点が1〜3点の場合を「×」、4〜5点の場合を「△」、6〜7点の場合を「○」、8〜9点の場合を「◎」とした。
3点・・・色ムラが生じていなかった。
2点・・・色ムラが僅かに生じていた。
1点・・・色ムラが生じていた。