【解決手段】接着フィルムの製造方法は、膜形成樹脂と、ラジカル重合性化合物と、光重合開始剤とを含有するバインダー中に第1のゴム粒子が分散された第1の樹脂層を形成する工程と、バインダー中に第2のゴム粒子が分散された第2の樹脂層を形成する工程と、第1の樹脂層と第2の樹脂層とを貼り合わせる工程とを有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.接着フィルム
2.接着フィルムの製造方法
3.接続体の製造方法
4.実施例
【0014】
<1.接着フィルム>
本実施の形態に係る接着フィルムは、膜形成樹脂と、ラジカル重合性化合物と、光重合開始剤とを含有するバインダー中に第1のゴム粒子が分散された第1の樹脂層と、バインダー中に第2のゴム粒子が分散された第2の樹脂層とを備える。ここで、第1の樹脂層及び第2の樹脂層が同じバインダーで形成されることにより、単層フィルムとして扱うことができる。
【0015】
また、第1のゴム粒子と膜形成樹脂とを1:1の重量比で配合した場合において、粘弾性測定装置を用いて引張モードで周波数10Hz、昇温速度3℃/minの条件で測定した20℃における貯蔵弾性率の下限は、1000MPa以上、好ましくは1050MPa以上であり、20℃における貯蔵弾性率の上限は、1200MPa以下、好ましくは1150MPa以下である。また、第2のゴム粒子と膜形成樹脂とを1:1の重量比で配合した場合において、粘弾性測定装置を用いて引張モードで周波数10Hz、昇温速度3℃/minの条件で測定した20℃における貯蔵弾性率の下限は、750MPa以上、好ましくは800MPa以上であり、20℃における貯蔵弾性率の上限は、950MPa以下、好ましくは900MPaある。これにより、応力を緩和してバインダーの収縮を抑制し、高い接着強度を得ることができる。なお、本明細書において、上記条件で測定した貯蔵弾性率を、「第1のゴム粒子の20℃における貯蔵弾性率」、「第2のゴム粒子の20℃における貯蔵弾性率」などと省略記載することもある。
【0016】
第1の樹脂層における第1のゴム粒子の含有量は、バインダー90質量部に対して10質量部以上30質量部以下であり、第2の樹脂層における第2のゴム粒子の含有量は、バインダー90質量部に対して10質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
【0017】
第1の樹脂層における膜形成樹脂の含有量は、バインダー90質量部に対して30質量部以上60質量部以下であり、第2の樹脂層における膜形成樹脂の含有量は、バインダー90質量部に対して30質量部以上60質量部以下であることが好ましい。
【0018】
接着フィルムは、2層構造であってもよいし、3層以上の構造であってもよい。接着フィルムの層全体の合計の平均厚さは、目的に応じて適宜選択することができ、例えば5〜30μmとすることができる。接着フィルムの1層あたりの平均厚さの下限は、3μm以上とすることが好ましく、5μm以上とすることがより好ましい。また、接着フィルムの1層あたりの平均厚さの上限は、厚くなりすぎると収縮を抑制する効果が出現させ難くなるため、25μm以下とすることが好ましく、20μm以下とすることがより好ましい。各層の厚みは、同じであっても、異なっていてもよく、適宜調整することができる。接着フィルムを押圧の影響を受ける電子部品の端子(電極)間接続に用いる場合には、各層の厚さが上記1層あたりの平均厚さの要件を満たすことが好ましく、合計が5〜30μmとなることがより好ましい。
【0019】
第1のゴム粒子及び第2のゴム粒子の平均粒径の下限は、好ましくは10nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上であり、平均粒径の上限は、好ましくは3000nm以下、より好ましくは1000nm以下、さらに好ましくは500nm以下である。接着フィルムの押圧時や硬化後の応力を緩和することができる。
【0020】
ゴム粒子の平均粒径は、次の方法で測定した値とすることができる。まず、任意に選択したゴム粒子の一次粒子を走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所社製、製品名:S−800)で観察(倍率:5000倍)し、その最大径及び最小径を測定する。この最大径及び最小径の積の平方根をその粒子の一次粒径とする。そして、任意に選択したゴム粒子50個について上記のようにして一次粒径を測定し、その平均値を平均粒径とする。
【0021】
以下、本実施の形態の接着フィルムとして、バインダー中に導電粒子を分散させた異方性導電フィルムを例に挙げて説明する。異方性導電フィルムは、光硬化型の異方性導電フィルムが好適に用いられ、光ラジカル系であってもよいし、光カチオン系であってもよい。また、光ラジカル系と、光カチオン系を併用したものであってもよい。
【0022】
図1は、異方性導電フィルムの一例を示す断面図である。
図1に示すように、異方性導電フィルム10は、導電粒子13と第1のゴム粒子とを含有する導電粒子含有層11と、第2のゴム粒子を含有する絶縁性樹脂層12とを有する。第1のゴム粒子の20℃における貯蔵弾性率は、第2のゴム粒子の20℃における貯蔵弾性率よりも大きく、その差の下限は、好ましくは100MPa以上、より好ましくは200MPa以上であり、差の上限は、好ましくは400MPa以下、より好ましくは300MPa以下である。このような構成とすることにより、絶縁性樹脂層側から加熱ツールで押圧したときに、導電粒子含有層の変形量が小さくなるため、基板と電子部品との接続不良をより効果的に抑制できる。
【0023】
以下、本実施の形態の一例として、光ラジカル系の異方性導電フィルムについて、導電粒子含有層、絶縁性樹脂層の順序で説明する。
【0024】
[導電粒子含有層]
導電粒子含有層は、例えば、膜形成樹脂(ポリマー)と、反応性樹脂としてのラジカル重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤とを含有するバインダー中に、導電粒子及び第1のゴム粒子が分散されて構成される。
【0025】
膜形成樹脂は、フィルム形成性を良好にするために用いられるものであり、例えば、ビスフェノールS型フェノキシ樹脂、フルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネートなどが挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、フィルム形成状態、接続信頼性等の観点からビスフェノールS型フェノキシ樹脂が好適に用いられる。フェノキシ樹脂は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンより合成されるポリヒドロキシポリエーテルである。市場で入手可能なフェノキシ樹脂の具体例としては、新日鐵住金化学(株)の商品名「FA290」などが挙げられる。
【0026】
膜形成樹脂の含有量の下限は、バインダー90質量部に対して好ましくは30質量部以上、より好ましくは35質量部以上であり、膜形成樹脂の含有量の上限は、バインダー90質量部に対して好ましくは60質量部以下、より好ましくは55質量部以下である。膜形成樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の膜形成樹脂を併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0027】
ラジカル重合性化合物は、活性ラジカルによって重合する官能基を有する物質であり、(メタ)アクリレート、マレイミド化合物などが挙げられる。また、光ラジカル重合性化合物は、モノマー、又はオリゴマーのいずれの状態で用いることもでき、モノマーとオリゴマーとを併用してもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリル酸エステル(アクリレート)とメタクリル酸エステル(メタクリレート)とを包含する意味である。
【0028】
(メタ)アクリレートとしては、エポキシアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエーテルアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマーなどの光重合性オリゴマー;トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロベンテニロキシエチルアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの光重合性単官能又は多官能アクリレートモノマーなどが挙げられる。
【0029】
ラジカル重合性化合物の含有量の下限は、バインダー90質量部に対して好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、ラジカル重合性化合物の含有量の上限は、バインダー90質量部に対して好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。ラジカル重合性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上のラジカル重合性化合物を併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0030】
光ラジカル重合開始剤は、公知の光ラジカル重合開始剤の中から適宜選択して使用することができる。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤等が挙げられ、特にオキシムエステル系光重合開始剤が好ましい。
【0031】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE819)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(IRGACURE369)、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(IRGACURE379)、1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](IRGACURE OXE01)、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン(IRGACURE184)、α−ヒドロキシ−α,α´−ジメチルアセトフェノン(DAROCUR1173)、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(IRGACURE651)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(DAROCUR2959)、2−ヒドロキシ−1−{4−[2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル]−ベンジル}フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(IRGACURE127、以上BASF社製)等が挙げられる。
【0032】
導電粒子含有層中の光ラジカル重合開始剤の含有量は、例えば0.1〜10wt%とすることができる。光ラジカル重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の光ラジカル重合開始剤を併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0033】
導電粒子としては、異方性導電フィルムにおいて使用されている公知の導電粒子を用いることができる。例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金等の各種金属や金属合金の粒子、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラス、セラミック、プラスチック等の粒子の表面に金属をコートしたもの、これらの粒子の表面に更に絶縁薄膜をコートしたもの等が挙げられ、これらの中から2種以上を混在させてもよい。樹脂粒子の表面に金属をコートしたものである場合、樹脂粒子としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等の粒子を用いることができる。導電粒子の表面は、公知の手法で絶縁処理をしたものを使用してもよい。
【0034】
導電粒子の平均粒径としては、通常1〜30μm、好ましくは2〜20μm、より好ましくは2.5〜15μmである。また、バインダー樹脂中の導電性粒子の平均粒子密度は、接続信頼性及び絶縁信頼性の観点から、好ましくは100〜100000個/mm
2、より好ましくは500〜80000個/mm
2である。この個数密度はフィルム平面視で光学顕微鏡を用いて観察して求めることができる。一例として、粒子個数がN=200以上であればよい。また観察領域は、1辺が50μm以上の200μm
2以上の領域を、合計2mm
2以上になるように設定することができる。
【0035】
また、導電粒子は、絶縁性樹脂中に分散されていてもよく、フィルム平面視において個々に独立していてもよく、また任意に配置されて存在していてもよい。導電性粒子が配置される場合、異方性接続される電極のサイズやレイアウトに応じて、個数密度や導電粒子間距離などを設定することができる。このため、捕捉向上、ショート抑制などに効果があり、歩留まりの向上などコスト削減効果も見込まれる。
【0036】
導電粒子含有層中の導電粒子の含有量は、接続体の導通抵抗を良好にする観点から、例えば2〜50wt%が好ましく、3〜30wt%がより好ましい。導電粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の導電粒子を併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。また、導電粒子含有層中の導電粒子の平均粒子密度も、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0037】
第1のゴム粒子は、実装後にバインダー樹脂に発生する応力を弾性変形することにより吸収し、基板の反りを抑制する目的で用いられる。第1のゴム粒子としては、例えば、ブタジエンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。特に、第1のゴム粒子としては、基板の反りを抑制する観点から、核材(コア層)としてゴム系の粒子を用い、核材の表面に樹脂(例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂等)をグラフト重合して表面層(シェル層)を形成した、コアシェル構造の粒子を用いることが好ましい。
【0038】
第1のゴム粒子の平均粒子径は、基板と電子部品との接続性を十分に確保する観点から、導電粒子の平均粒子径よりも小さいことが好ましい。第1のゴム粒子の平均粒径の上限は、基板の反りを抑制する観点から、500nm以下であり、300nm以下がより好ましく、200nm以下がさらに好ましい。また、第1のゴム粒子の平均粒径の下限値は、例えば50nm以上とすることができる。
【0039】
第1のゴム粒子の20℃における貯蔵弾性率の下限は、1000MPa以上、好ましくは1050MPa以上であり、20℃における貯蔵弾性率の上限は、1200MPa以下、好ましくは1150MPa以下である。
【0040】
第1のゴム粒子の含有量の下限は、バインダー90質量部に対して好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上であり、第1のゴム粒子の含有量の下限は、バインダー90質量部に対して好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下である。第1のゴム粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の第1のゴム粒子を併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0041】
導電粒子含有層は、上述した成分以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、シランカップリング剤などを用いることができる。シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、チオール系シランカップリング剤、アミン系シランカップリング剤などを用いることができる。
【0042】
[絶縁性樹脂層]
絶縁性樹脂層は、例えば、膜形成樹脂(ポリマー)と、反応性樹脂としてのラジカル重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤とを含有するバインダー中に、第2のゴム粒子が分散されて構成される。第2のゴム粒子の含有量の下限は、バインダー90質量部に対して好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上であり、第2のゴム粒子の含有量の下限は、バインダー90質量部に対して好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下である。
【0043】
第2のゴム粒子の20℃における貯蔵弾性率は、導電粒子含有層中の第1のゴム粒子の20℃における貯蔵弾性率よりも小さい。第2のゴム粒子の20℃における貯蔵弾性率の下限は、750MPa以上、好ましくは800MPa以上であり、第2のゴム粒子の20℃における貯蔵弾性率の上限は、950MPa以下、好ましくは900MPaある。その他の絶縁性樹脂層を構成する成分の好ましい条件は、上述した導電粒子含有層と同様である。
【0044】
以上に説明した異方性導電フィルムによれば、内部応力を低減することができるため、基板の反りを抑制し、基板と電子部品との接続不良を抑制し、基板と電子部品との接合強度を良好にすることができる。なお、異方性導電フィルムといった導電粒子を含有した接着フィルムを例に説明したが、本技術において、導電粒子は、必ずしも含有する必要はない。
【0045】
<2.接着フィルムの製造方法>
本実施の形態に係る接続体の製造方法は、膜形成樹脂と、重合性化合物と、光重合開始剤とを含有するバインダー中に第1のゴム粒子が分散された第1の樹脂層を形成する工程と、バインダー中に第2のゴム粒子が分散された第2の樹脂層を形成する工程と、第1の樹脂層と第2の樹脂層とを貼り合わせる工程とを有する。
【0046】
第1の樹脂層及び第2の樹脂層は、それぞれ前述した導電粒子含有層及び絶縁性樹脂層とすることができる。第1の樹脂層及び第2の樹脂層が同じバインダーで形成されることにより、単層フィルムとして扱うことができる。また、第1のゴム粒子及び第2のゴム粒子の20℃における貯蔵弾性率を前述の範囲とすることにより、応力を緩和してバインダーの収縮を抑制し、高い接着強度を得ることができる。
【0047】
<3.接続体の製造方法>
本実施の形態に係る接続体の製造方法は、上述した接着フィルムを用いて、第1の電子部品の第1の端子と、第2の電子部品の第2の端子とを接続する。より具体的には、異方性導電フィルムを基板の端子上に配置する工程と、異方性導電フィルム上に電子部品を配置し、電子部品をツールにより押圧し、光を照射し、異方性導電フィルムを硬化させる工程とを有する。なお、接続体の製造方法は、電子部品に限らず、2つの部品間の接続にも適用することができる。
【0048】
以下、一例として、上述した導電粒子含有層11と絶縁性樹脂層12とを有する光硬化型の異方性導電フィルム10を用いた接続体の製造方法について説明する。
【0049】
まず、
図2に示すように、異方性導電フィルム10の導電粒子含有層11側を、第1の電子部品20の端子列20a上に配置する。第1の電子部品20としては、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)パネル、有機EL(OLED)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用途、タッチパネル用途などの透明基板、プリント配線板(PWB)などが挙げられる。プリント配線板の材質は、特に限定されず、例えば、FR−4基材などのガラスエポキシでもよく、熱可塑性樹脂などのプラスチック、セラミックなども用いることができる。また、透明基板は、透明性の高いものであれば特に限定はなく、ガラス基板、プラスチック基板などが挙げられる。
【0050】
次に、
図3及び
図4に示すように、異方性導電フィルム10の絶縁性樹脂層12上に第2の電子部品22を配置し、第2の電子部品22を熱圧着ツールにより押圧して光を照射し、異方性導電フィルムを硬化させる。これにより、熱圧着ツールの熱により異方性導電フィルム10を構成する樹脂が溶融し、熱圧着ツールにより第2の電子部品22が十分に押し込まれ、導電粒子13が端子間に挟持された状態で樹脂が硬化するため、優れた導通性を得ることができる。
【0051】
熱圧着ツールによる加熱は、好ましくは160℃以下の温度、より好ましくは140℃以下の温度、さらに好ましくは120℃以下の温度で押圧させる。このような低い温度で加圧することにより、第1の電子部品20及び第2の電子部品22への熱の影響を抑制することができる。また、熱圧着ツールによる押圧の圧力は、例えば、0.1MPa〜100MPaが好ましい。加熱及び押圧の時間は、例えば、0.5〜120秒間とすることができる。
【0052】
また、圧着ツールと第2の電子部品22との間には緩衝材を使用してもよい。緩衝材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)、ポリイミド、ガラスクロス、シリコンラバーなどを用いることができる。
【0053】
光照射は、第1の電子部品20側から行ってもよいし、第2の電子部品22側から行ってもよい。また、光照射は、熱圧着ツールの横側から行ってもよい。また、光照射は、照度を一定としてもよく、段階的又は連続的に照度を上昇又は下降させてもよい。光照射される光としては、紫外線(UV:ultraviolet)、可視光線(visible light)、赤外線(IR:infrared)などの波長帯域から異方性導電フィルムの硬化システムに応じて選択することができる。これらの中でも、光照射器より照射される光は、エネルギーが高い紫外線を含むことが好ましい。
【0054】
紫外線は、10nm〜400nmの波長であり、波長が短い紫外線は、エネルギーが大きい反面、樹脂内部まで到達し難い性質があり、一方、波長が長い紫外線は、エネルギーはやや小さいものの比較的樹脂内部まで浸透し易い性質がある。また、波長が200nm以下になると酸素を分解するのに消費されたり、酸素に吸収されたりし易い。このため、光照射器から照射される光は、波長が200nm以上の近紫外線を含むことが好ましい。近紫外線を含む光を照射する光源としては、例えば、波長248nm、313nm、334nm、365nm、405nm、436nmを高出力する高圧水銀ランプなどが挙げられる。
【0055】
第2の電子部品22は、第1の電子部品20の端子列20aに対向する端子列22aを備える。第2の電子部品22は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第2の電子部品22としては、例えば、IC(Integrated Circuit)、フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)、テープキャリアパッケージ(TCP)基板、ICをFPCに実装したCOF(Chip On Film)などが挙げられる。
【0056】
以上のような接続体の製造方法によれば、第1のゴム粒子及び第2のゴム粒子の20℃における貯蔵弾性率を前述の範囲とした異方性導電フィルムを用いることにより、押圧時の導電粒子含有層の変形量を小さくし、内部応力を低減させることができるため、基板の反りを抑制し、導通抵抗及び接合強度が良好な接続体を得ることができる。
【0057】
なお、上記実施の形態では、第2の電子部品22を熱圧着ツールにより押圧し、光を照射し、異方性導電フィルムを硬化させることとしたが、押圧と光照射の順番や光照射の連続性は、特に限定されるものではない。例えば、電子部品を加熱ツールにより押圧する前に予め異方性導電フィルムを硬化させてもよい。すなわち、先に光を照射して異方性導電フィルムを硬化させ、第2の電子部品22を熱圧着ツールにより押圧してもよい。また、熱圧着ツールによる押圧と同時に光照射を行ってもよく、光照射を仮圧着と本圧着とで分けて行ってもよい。
【実施例】
【0058】
<4.実施例>
以下、本技術の実施例について説明する。本実施例では、導電粒子を含有する第1の樹脂層と、第2の樹脂層とを貼り合わせ、異方性導電フィルムを作製した。なお、本技術は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
本実施例では以下の化合物を用いた。
フェノキシ樹脂:FA290(新日鐵住金化学(株))
2官能エポキシ化合物:840−S(DIC(株))
光カチオン重合開始剤:IRGACURE 290(BASFジャパン(株))
導電粒子:平均粒径3.2μm
粒子A:コアシェル構造架橋ゴム粒子(平均粒子径100nm、20℃における貯蔵弾性率1102MPa)
粒子B:アクリル系ゴム粒子(平均粒子径70nm、20℃における貯蔵弾性率1373MPa)
粒子C:アクリル系ゴム粒子(平均粒子径300nm、20℃における貯蔵弾性率860MPa)
粒子D:アクリル系ゴム粒子(平均粒子径600nm、20℃における貯蔵弾性率646MPa)
粒子E:メタクリルシラン処理シリカ粒子(平均粒子径10nm、20℃における貯蔵弾性率3384MPa)
【0060】
粒子の20℃における貯蔵弾性率は、次の方法で測定した。まず、重量比が1:1となるようにフェノキシ樹脂(FA290(新日鐵住金化学(株))と粒子とを分散させ、バーコータでフィルム化した。そして、得られたフィルムを粘弾性測定装置(エー・アンド・デイ社製)を用いて引張モード(周波数10Hz、昇温3℃/分)で貯蔵弾性率(E’)を測定した際の20℃における貯蔵弾性率を「ゴム粒子の20℃における貯蔵弾性率」とした。
【0061】
<実施例1−3、比較例1−6>
[異方性導電フィルムの作製]
フェノキシ樹脂60質量部、2官能エポキシ化合物30質量部、光カチオン重合開始剤2質量部、面密度が60000個/mm
2となる量の導電粒子及び下記表に記載のゴム粒子を混合した。混合後の配合物を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが6μmとなるように塗布し、70℃で5分間乾燥させ、第1の樹脂層である導電粒子含有層を得た。
【0062】
フェノキシ樹脂20質量部、2官能エポキシ化合物30質量部、光カチオン重合開始剤2質量部及び下記表に記載のゴム粒子を均一に混合した。混合後の配合物を剥離処理したPET上に乾燥後の平均厚みが14μmとなるように塗布し、70℃で5分間乾燥させ第2の樹脂層である絶縁性樹脂層を得た。
【0063】
ロールラミネータを用いて、導電粒子含有層と絶縁性樹脂層とをラミネートし、2層構造の異方性導電フィルムを得た。
【0064】
[接続体の作製]
評価素子として、以下の条件の評価用ICを用いた。
外形;1.8mm×20mm
バンプ高さ;15μm
【0065】
評価用ICが接続される評価基材として、厚さ0.5mmのITOコーティングガラスを用いた。
【0066】
異方性導電フィルムの導電粒子含有層側が評価基材に接するように、異方性導電フィルムを評価基材に載置した。異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層上に、評価用ICを載置した後、熱加圧及び紫外線照射を行うことにより異方性導電フィルムを硬化させ、接続体を得た。
【0067】
熱加圧は、評価用IC側から、加熱押圧ヘッドにより圧着条件100℃、80MPa、5秒間で行った。なお、加熱押圧ヘッドの温度は、熱加圧開始から5秒後に100℃に到達するように設定した。熱加圧は、熱圧着ヘッドと評価用ICとの間に、緩衝材として厚み50μmのテフロン(登録商標)シートを介して行った。
【0068】
紫外線照射は、評価基材側から紫外線照射器(ZUV−C30H:オムロン株式会社製)を用いて行った。紫外線照射は、熱加圧開始から1秒間後に開始し、4秒間行った(積算光量800mJ/cm
2)。
【0069】
[接続体の導通抵抗値]
接続体サンプルについて、初期の接続抵抗値(Ω)及び信頼性試験後の接続抵抗値(Ω)を測定した。接続抵抗値の測定は、評価用ICのバンプと接続された評価基材の配線にデジタルマルチメータを接続し、4端子法で電流2mAを流したときの抵抗値を測定した。初期の接続抵抗値が2Ω以下であり、信頼性試験後の接続抵抗値が10Ω以下であったものをOKと評価し、それ以外をNGと評価した。信頼性試験の条件は、温度85℃、相対湿度85%、500時間とした。
【0070】
[接続体のダイシェア強度]
各接続体サンプルについて、ボンドテスター(シリーズ4000、ノードソン・アドバンテスト・テクノロジー社製)を用いて、ツールスピード0.2mm/秒の条件で、評価用ICのダイシェア強度を測定した。
【0071】
[判定]
接続体の初期の接続抵抗値が2Ω以下、信頼性試験後の接続抵抗値が10Ω以下、及び、接続体のダイシェア強度が30MPa以上であったものをOKと評価し、それ以外をNGと評価した。
【0072】
【表1】
【0073】
表1に示す結果から、粒子と膜形成樹脂とを1:1の重量比で配合した場合の20℃における貯蔵弾性率が1000MPa以上1200MPa以下である第1のゴム粒子と、粒子と膜形成樹脂とを1:1の重量比で配合した場合の20℃における貯蔵弾性率が750MPa以上950MPa以下である第2のゴム粒子とを配合することにより、基板と電子部品との接続不良を抑制し、基板と電子部品との接着強度が良好になることが分かった。これは、押圧時の導電粒子含有層の変形量を小さくし、内部応力を低減させることができたためであると考えられる。