【課題】集束性に優れ、且つ耐熱性に優れた熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とする複合材料に、優れた外観、強度、耐黄変性を与えることができる繊維用集束剤、及びその集束剤を使用した繊維束、繊維製品、樹脂組成物及び成形体の提供。
【解決手段】活性水素基を2〜8個有する活性水素基含有有機化合物(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させてなるウレタン樹脂(A)を含有し、昇温開始温度が30℃で昇温速度が5℃/分の条件において空気中で加熱した場合におけるウレタン樹脂(A)の95%加熱減量温度(T
活性水素基を2〜8個有する活性水素基含有有機化合物(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させてなるウレタン樹脂(A)を含有し、昇温開始温度が30℃で昇温速度が5℃/分の条件において空気中で加熱した場合における前記ウレタン樹脂(A)の95%加熱減量温度(T95)が250〜430℃である繊維用集束剤(X)。
前記ウレタン樹脂(A)が有するウレタン基濃度(C1)とウレア基濃度(C2)の合計の濃度(C)がウレタン樹脂(A)の重量に基づいて1.6〜6.0mmol/gである請求項1に記載の繊維用集束剤。
前記ウレタン樹脂(A)が有するウレタン基濃度(C1)がウレタン樹脂(A)の重量に基づいて1.0〜6.0mmol/gである請求項1又は2に記載の繊維用集束剤。
前記活性水素基含有有機化合物(a)が、ポリオール(a1)及びポリアミン(a2)からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維用集束剤。
前記活性水素基含有有機化合物(a)として、カルボキシル基、スルホン酸基及びスルファミン酸基からなる群より選ばれる1種以上のアニオン性基を有するポリオール(a13)を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維用集束剤。
前記ポリオール(a1)として数平均分子量が400以上の高分子ポリオール(a11)を含み、前記高分子ポリオール(a11)がポリカーボネートジオール(a112)及び/又はポリテトラメチレングリコール(a1114)を含む請求項4又は5に記載の繊維用集束剤。
前記ポリイソシアネート(b)が脂肪族ポリイソシアネート(b1)及び/又は脂環式ポリイソシアネート(b2)を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の繊維用集束剤。
炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維及びスラッグ繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維が、請求項1〜9のいずれか1項に記載の繊維用集束剤で処理された繊維束。
前記熱可塑性樹脂(E)が、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂及びポリフェニレンスルフィド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項12に記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の繊維用集束剤(X)は、活性水素基を2〜8個有する活性水素基含有有機化合物(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させてなるウレタン樹脂(A)を含有する。そして、このウレタン樹脂(A)を昇温開始温度が30℃で昇温速度が5℃/分の条件において空気中で加熱した場合における95%加熱減量温度(T
95)は250〜430℃である
【0009】
本発明のウレタン樹脂(A)は活性水素基を2〜8個有する活性水素基含有有機化合物(a)とポリイソシアネート(b)を反応させて得られる。
【0010】
活性水素基を2〜8個有する活性水素基含有有機化合物(a)としては、ポリオール(a1)及びポリアミン(a2)などが挙げられる。
【0011】
ポリオール(a1)としては数平均分子量(以下においてMnと略記することがある)が400以上の高分子ポリオール(a11)、アニオン性基(カルボキシル基、スルホ基及びスルファミン酸基)を有さない炭素数2〜20の多価アルコール(a12)、カルボキシル基、スルホ基及びスルファミン酸基からなる群より選ばれる1種以上のアニオン性基を有するポリオール(a13)等が挙げられる。本発明において、活性水素基含有有機化合物(a)が、アニオン性基を有するポリオール(a13)を含有することが好ましい。
数平均分子量が400以上の高分子ポリオール(a11)としては、数平均分子量が400以上の各種ポリオールが挙げられ、ポリエーテルポリオール(a111)、ポリカーボネートジオール(a112)、及びポリエステルポリオール(a113)などが挙げられる。
【0012】
ポリエーテルポリオール(a111)としては、例えばポリオキシアルキレンポリオール(a1111)[ポリエチレングリコール等]、ポリオキシプロピレンポリオール(a1112)[ポリプロピレングリコール等]、ポリオキシエチレン/プロピレンポリオール(a1113)及びポリテトラメチレンエーテルグリコール(a1114)等が挙げられる。
これらのうち、集束性の観点から、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(a1114)が好ましい。
【0013】
ポリエーテルポリオール(a111)の市販品としては、PTMG1000[Mn=1000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、三菱化学(株)製]、PTMG2000[Mn=2000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、三菱化学(株)製]、PTMG3000[Mn=3000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、三菱化学(株)製]、PTGL2000[Mn=2000の変性ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、保土谷化学工業(株)製]、PTGL3000[Mn=3000の変性ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、保土谷化学工業(株)製];サンニックスPP−2000[Mn=2000のポリプロピレングリコール、三洋化成工業(株)製]及びサンニックスジオールGP−3000[Mn=3000のポリプロピレンエーテルトリオール、三洋化成工業(株)製]等が挙げられる。
【0014】
ポリカーボネートジオール(a112)としては、多価アルコールと低分子カーボネート化合物(例えば、アルキル基の炭素数1〜6のジアルキルカーボネート、炭素数2〜6のアルキレン基を有するアルキレンカーボネート及び炭素数6〜9のアリール基を有するジアリールカーボネート)とから、脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0015】
ポリカーボネートジオール(a112)の市販品としては、デュラノール T6002[1,6−ヘキサンジオールを用いたMn=2000のポリカーボネートジオール、旭化成ケミカルズ(株)製]、ETERNACOLL UH−300[1,6−ヘキサンジオールを用いたMn=3000のポリカーボネートジオール、宇部興産(株)製]、ETERNACOLL UM−90(1/3)[1,4−シクロヘキサンジメタノール/1,6−ヘキサンジオール=1/3(モル比)を用いたMn=900のポリカーボネートジオール、宇部興産(株)製]、デュラノール G4672[1,4−ブタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=70/30(モル比)を用いたMn=2000のポリカーボネートジオール、旭化成ケミカルズ(株)製]、デュラノール T5652[1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=50/50(モル比)を用いたMn=2000のポリカーボネートジオール、旭化成ケミカルズ(株)製]、クラレポリオール C−2090[3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=90/10(モル比)を用いたMn=2000のポリカーボネートジオール、クラレ(株)製]、クラレポリオール C−2050[3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=50/50(モル比)を用いたMn=2000のポリカーボネートジオール、クラレ(株)製]、クラレポリオール C−2015N[2−メチル−1,8−オクタンジオール/1,9−ノナンジオール=85/15(モル比)を用いたMn=2000のポリカーボネートジオール、クラレ(株)製]、クラレポリオール C−2065N[2−メチル−1,8−オクタンジオール/1,9−ノナンジオール=65/15(モル比)を用いたMn=2000のポリカーボネートジオール、クラレ(株)製]、及びETERNACOLL UC−100[1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いたMn=1000のポリカーボネートジオール、宇部興産(株)製]等が挙げられる。
【0016】
ポリエステルポリオール(a113)としては、縮合型ポリエステルポリオール及びポリラクトンポリオール等が挙げられる。
【0017】
縮合型ポリエステルポリオールは、炭素数2〜20の多価アルコールと炭素数2〜10の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体との脱水縮合により得られるポリエステルポリオールである。
【0018】
縮合型ポリエステルポリオールにおける炭素数2〜20の多価アルコールとしては、後述の(a12)等が挙げられ、好ましくは2価アルコールであり、例えば、炭素数2〜8の脂肪族2価アルコール[直鎖ジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール等)及び分岐アルキル鎖を有するジオール(1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,2−、1,3−又は2,3−ブタンジオール等)等];炭素数6〜10の脂環基含有2価アルコール[1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等];炭素数8〜20の芳香環含有2価アルコール[m−又はp−キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン];ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールS及びビスフェノールF等)のAO付加物、ジヒドロキシナフタレンのAO付加物及びビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート等]等が挙げられる。
【0019】
縮合型ポリエステルポリオールにおける炭素数2〜10の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸及びフマル酸及びマレイン酸等)、脂環式ジカルボン酸(ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸等)、3価又はそれ以上のポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、これらの無水物(無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸及び無水トリメリット酸等)、これらの酸ハロゲン化物(アジピン酸ジクロライド等)、これらの低分子量アルキルエステル(コハク酸ジメチル及びフタル酸ジメチル等)並びこれらの混合物が挙げられる。これらの内で好ましいのは脂肪族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体である。
【0020】
縮合型ポリエステルポリオールの具体例としては、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートジオール、ポリヘキサメチレンテレフタレートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリジエチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール、ポリ(3−メチルペンチレンアジペート)ジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール、ポリブチレンセバケートジオール及びポリネオペンチルテレフタレートジオール等が挙げられる。
【0021】
縮合型ポリエステルポリオールの市販品としては、サンエスター2610[Mn=1000のポリエチレンアジペートジオール、三洋化成工業(株)製]、サンエスター4620[Mn=2000のポリテトラメチレンアジペートジオール]、サンエスター2620[Mn=2000のポリエチレンアジペートジオール、三洋化成工業(株)製]、クラレポリオールP−2010[Mn=2000のポリ−3−メチル−1,5−ペンタンアジペートジオール]、クラレポリオールP−3010[Mn=3000のポリ−3−メチル−1,5−ペンタンアジペートジオール]及びクラレポリオールP−6010[Mn=6000のポリ−3−メチル−1,5−ペンタンアジペートジオール]等が挙げられる。
【0022】
ポリラクトンポリオールとしては、炭素数2〜20の多価アルコール(後述の(a12)等)を開始剤としてラクトンモノマーを開環重合したもの等が挙げられる。ラクトンモノマーとしては、炭素数4〜12のラクトン(例えばγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン及びε−カプロラクトン等)等が挙げられる。
ポリラクトンポリオールの具体例としては、例えばポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール及びポリカプロラクトントリオール等が挙げられる。
【0023】
ポリオール(a1)としては、集束性の観点から、数平均分子量が400以上の高分子ポリオール(a11)を含んでいることが好ましい。
高分子ポリオール(a11)としては、乳化性及び成形体の強度の観点から、ポリエーテルポリオール(a111)及びポリカーボネートジオール(a112)が好ましく、さらに好ましくはポリカーボネートジオール(a112)及びポリテトラメチレングリコール(a1114)である。
ポリエーテルポリオール(a111)及びポリカーボネートジオール(a112)の使用量は、乳化性及び成形体の強度の観点から、ウレタン樹脂(A)の原料中の高分子ポリオール(a11)の重量を基準として、40重量%以上が好ましく、さらに好ましくは100重量%である。
【0024】
ポリオール(a1)としての炭素数2〜20の多価アルコール(a12)としては、炭素数2〜12の直鎖ジオール[エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコール等の直鎖アルコール];
分岐を有する炭素数3〜12の脂肪族ジオール[1,2−プロピレングリコール、1,2−、1,3−又は2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,7−ヘプタンジオール、3−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,8−オクタンジオール及び4−メチルオクタンジオール等の分岐アルコール等];
炭素数6〜20の脂環式ジオール[1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘプタンジオール、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジオキサン、2,7−ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等];
炭素数8〜20の芳香環含有ジオール[m−又はp−キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン及びビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等];
炭素数3〜20のトリオール[脂肪族トリオール(グリセリン及びトリメチロールプロパン等)等];炭素数5〜20の4〜8価アルコール[脂肪族ポリオール(ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン及びジペンタエリスリトール等);
糖類(ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体)];等が挙げられる。
【0025】
これらの炭素数2〜20の多価アルコール(a12)のうち、ウレタン樹脂(A)の柔軟性及び機械物性の観点から好ましいのは、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール及び2−メチル−1,8−オクタンジオールであり、さらに好ましいのは、1,4−ブタンジオール及び1,5−ペンタンジオールである。
【0026】
アニオン性基を有するポリオール(a13)としては、カルボキシル基、スルホ基及びスルファミン酸基からなる群より選ばれる1種以上のアニオン性基を有するポリオールが挙げられ、アニオン性基としてカルボキシル基を有し、活性水素基として水酸基を有する炭素数が2〜10の化合物(a131)、アニオン性基としてスルホ基を有し、活性水素基として水酸基を有する炭素数が2〜16の化合物(a132)、及びアニオン性基としてスルファミン酸基を有し、活性水素基として水酸基を有する炭素数が2〜10の化合物(a133)等が挙げられる。
【0027】
親水性のアニオン性基を有するポリオール(a13)のうち、アニオン性基としてカルボキシル基を有し、活性水素基として水酸基を有する炭素数が2〜10の化合物(a131)としては、例えばジアルキロールアルカン酸(例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸及び2,2−ジメチロールオクタン酸)、酒石酸及びアミノ酸(グリシン、アラニン、バリン等)等並びにこれらの化合物を中和剤で中和した塩が挙げられる。
【0028】
アニオン性基としてスルホ基を有し、活性水素基として水酸基を有する炭素数が2〜16の化合物(a132)としては、例えば3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸及びスルホイソフタル酸ジ(エチレングリコール)エステル等並びにこれらの化合物を中和剤で中和した塩が挙げられる。
【0029】
アニオン性基としてスルファミン酸基を有し、活性水素基として水酸基を有する炭素数が2〜10の化合物(a133)としては、例えばN,N−ビス(2−ヒドロキシルエチル)スルファミン酸等並びにこれらの化合物を中和剤で中和した塩が挙げられる。
(a13)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
アニオン性基を有するポリオール(a13)の塩に用いられる中和剤(d)としては、例えばアンモニア、炭素数1〜20のアミン化合物又はアルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等)が挙げられる。
炭素数1〜20のアミン化合物としては、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン及びモノエタノールアミン等の1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びメチルプロパノールアミン等の2級アミン並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルモノエタノールアミン及びトリエタノールアミン等の3級アミンが挙げられる。
【0031】
(a13)の塩に用いられる中和剤としては、生成するウレタン樹脂(A)の水性分散体の乾燥性の観点から、25℃における蒸気圧が高い化合物が好適である。このような観点から、(a13)の塩に用いられる中和剤(d)としては、アンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン及びジメチルエチルアミンが好ましい。
アニオン性基を有するポリオール(a13)のうち、ウレタン樹脂(A)の水性分散体の分散安定性の観点から好ましいのは、2,2−ジメチロールプロピオン酸及び2,2−ジメチロールブタン酸並びにこれらの塩類であり、更に好ましいのは2,2−ジメチロールプロピオン酸及び2,2−ジメチロールブタン酸のアンモニア又は炭素数1〜20のアミン化合物による中和塩である。
【0032】
本発明における活性水素基を2〜8個有する活性水素基含有有機化合物(a)としてのポリアミン(a2)としては、脂肪族ポリアミン(a21)、脂環式ポリアミン(a22)、複素環式ポリアミン(a23)及び芳香族ポリアミン(a24)が挙げられる。
【0033】
脂肪族ポリアミン(a21)としては、炭素数[以下、Cと略記することがある]2〜6のアルキレンジアミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン);C2〜6のポリアルキレン(C2〜C6)ポリアミン[例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン];これらのアルキル(C1〜4)置換体〔例えば、ジアルキル(C1〜3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メチルイミノビスプロピルアミン〕;脂環または複素環含有脂肪族ポリアミン〔例えば、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン〕;芳香環含有脂肪族アミン(C8〜15)(例えば、キシリレンジアミン、テトラクロル−p−キシリレンジアミン)が挙げられる。
【0034】
脂環式ポリアミン(a22)としては、例えば、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、及び4,4’−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)が挙げられる。
複素環式ポリアミン(a23)としては、例えば、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン、及び1,4ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンが挙げられる。
【0035】
芳香族ポリアミン(a24)としては、例えば、1,2−、1,3−および1,4−フェニレンジアミン、2,4’−および4,4’−ジフェニルメタンジアミン、クルードジフェニルメタンジアミン(ポリフェニルポリメチレンポリアミン)、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、チオジアニリン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン、2,6−ジアミノピリジン、m−アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリアミン、ナフチレンジアミン;2,4−および2,6−トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジメチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,4−ジエチル−2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジブチル−2,5−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノメシチレン、1,3,5−トリエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリイソプロピル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノナフタレン、2,6−ジメチル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジイソプロピル−1,5−ジアミノナフタレン;4,4’−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン、及び1−メチル−2−メチルアミノ−4−アミノベンゼンが挙げられる。
【0036】
上記ポリアミン(a2)のうち、強度および外観の観点から、好ましいのは脂肪族ポリアミン(a21)であり、さらに好ましいのはアルキレンジアミンであり、特に好ましいのはエチレンジアミンである。
【0037】
中和剤は、ウレタン化反応前、ウレタン化反応中、ウレタン化反応後、水分散工程前、水分散工程中又は水分散後のいずれの時期に添加してもよいが、ウレタン樹脂の安定性及び水性分散体の安定性の観点から、水分散工程前又は水分散工程中に添加することが好ましい。また、脱溶剤時に揮発した中和剤を脱溶剤後に追添加しても良く、追添加する中和剤種は上記記載のものから自由に選択することができる。
【0038】
強度及び外観の観点から、活性水素基含有有機化合物(a)(活性水素基含有有機化合物(a)としてアニオン性基を有するポリオール(a13)を含む場合、(a13)は中和前)の数平均分子量は、40〜1,500が好ましく、さらに好ましくは100〜1,300である。なお、活性水素基含有有機化合物(a)のMnはゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記条件で測定することが出来る。
<Mnの測定方法>
Mnは、以下の条件のGPCにより測定する。
機種:Alliance(日本ウォーターズ(株)製液体クロマトグラフ)
カラム:Guardcolumn Super H−L
+TSK gel Super H4000
+TSK gel Super H3000
+TSK gel Super H2000(いずれも東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
検出器:RI(Refractive Index)
溶離液:テトラヒドロフラン
溶離液流量:0.6ml/分
試料濃度:0.25重量%
注入量:10μl
標準物質:ポリスチレン(東ソー(株)製;TSK STANDARD POLYSTYRENE)
【0039】
本発明のウレタン樹脂(A)を得るための原料のポリイソシアネート(b)としては、脂肪族ポリイソシアネート(b1)、脂環式ポリイソシアネート(b2)、芳香族ポリイソシアネート(b3)、芳香脂肪族ポリイソシアネート(b4)及びこれらのポリイソシアネートの変性物(b5)等が挙げられる。ポリイソシアネート(b)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0040】
脂肪族ポリイソシアネート(b1)としては、例えばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート及び2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートが挙げられる。
【0041】
脂環式ポリイソシアネート(b2)としては、例えばイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、水添MDIと略記)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0042】
芳香族ポリイソシアネート(b3)としては、例えば1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(以下、トリレンジイソシアネートをTDIと略記)、粗製TDI、4,4’−又は2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、ジフェニルメタンジイソシアネートをMDIと略記)、粗製MDI、ポリアリールポリイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート及びm−又はp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートが挙げられる。
【0043】
芳香脂肪族ポリイソシアネート(b4)としては、例えばm−又はp−キシリレンジイソシアネート及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0044】
(b1)〜(b4)のポリイソシアネートの変性物(b5)としては、前記ポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロハネート基、ウレア基、ビウレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物等;遊離イソシアネート基含有量が8〜33重量%、好ましくは10〜30重量%、さらに好ましくは12〜29重量%のもの)、例えば変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI及びトリヒドロカルビルホスフェート変性MDI等)、ウレタン変性TDI、ビウレット変性HDI、イソシアヌレート変性HDI及びイソシアヌレート変性IPDI等のポリイソシアネートの変性物が挙げられる。
【0045】
耐黄変性の観点からポリイソシアネート(b)として脂肪族ポリイソシアネート(b1)、脂環式ポリイソシアネート(b2)及びこれらの併用が好ましい
【0046】
本発明のウレタン樹脂(A)を昇温開始温度が30℃で昇温速度が5℃/分の条件において空気中で加熱した場合において、ウレタン樹脂(A)の昇温前の重量に対して、その重量の95%が加熱により減少した温度である95%加熱減量温度(T
95)は250〜430℃である。
T
95が250℃未満のウレタン樹脂では集束性が不十分となる傾向があり、T
95が430℃を超えるウレタン樹脂では強度及び外観が不十分となる傾向がある。好ましくはT
95が255〜415℃であり、さらに好ましくは260〜400℃である。
なお、95%加熱減量温度(T
95)はウレタン樹脂(A)が有するウレタン基濃度(C1)を低くする、または(a)を耐熱性の高い組成(例えば、ポリカーボネートジオール、ポリテトラメチレングリコール)とすることによって高くすることができ、(C1)を高くする、または(a)を耐熱性の低い組成(例えば、ポリオキシエチレングリコール)とすることによって低くすることができる。
【0047】
また、本発明のウレタン樹脂(A)を昇温開始温度が30℃で昇温速度が5℃/分の条件において空気中で加熱した場合において、ウレタン樹脂(A)の昇温前の重量に対して、その重量の10%が加熱により減少した温度である10%加熱減量温度(T
10)は150〜300℃が好ましい。T
10が150℃以上であると集束性が良好となる傾向があり、T
10が300℃以下であると強度及び外観が良好となる傾向がある。さらに好ましくはT
10が155〜290℃である。
なお、10%加熱減量温度(T
10)はウレタン樹脂(A)が有するウレタン基濃度(C1)を低くする、または(a)を耐熱性の高い組成(例えば、ポリカーボネートジオール、ポリテトラメチレングリコール)とすることによってことによって高くすることができ、(C1)を高くする、または(a)を耐熱性の低い組成(例えば、ポリオキシエチレングリコール)とすることによって低くすることができる。
【0048】
なお、これらの95%熱減量温度(T
95)と10%熱減量温度(T
10)は以下の方法で測定して決まる。
【0049】
<10%熱減量温度(T
10)と95%熱減量温度(T
95)の測定方法>
示差熱熱重量同時測定装置(例えば株式会社日立ハイテクサイエンス製「TG/DTA6200」)を用いて以下条件で測定し、重量減量率が10%の時の温度を10%熱減量温度(T
10)、重量減量率が95%の時の温度を95%熱減量温度(T
95)とする。
なお、熱減量温度を測定するためのウレタン樹脂(A)のサンプルがウレタン樹脂(A)の水性分散体である場合は、これを130℃で45分乾燥して水及び有機溶媒を揮発させてウレタン樹脂(A)の固形物を得た後、5〜10mgのサンプルをアルミニウムパンに量りとり、熱減量温度を評価する。測定容器にはφ5mm×高さ2.5mmのアルミニウムパンを用いる。
測定条件としては空気を200ml/分の流量で流し、昇温開始温度は30℃、昇温速度5℃/分とする。
【0050】
本発明において、ウレタン樹脂(A)が有するウレタン基濃度(C1)は、ウレタン樹脂(A)の重量に基づいて1.0〜6.0mmol/gであることが好ましい。ウレタン基濃度(C1)が1.0mmol/g以上であると強度が良好である傾向があり、6.0mmol/g以下であると繊維束の取扱性が良好である傾向がある。
さらに好ましくは1.2〜5.5mmol/gであり、特に好ましくは1.4〜5.0mmol/gである。
【0051】
ウレタン樹脂(A)が有するウレタン基濃度(C1)とウレア基濃度(C2)の合計の濃度(C)がウレタン樹脂(A)の重量に基づいて1.6〜6.0mmol/gであることが好ましい。1.6mmol/g以上であると外観及び強度が良好となる傾向があり、6.0mmol/g以下であると繊維束の取扱性が良好となる傾向がある。さらに好ましくは1.8〜5.8mol/gである。
【0052】
なお、ウレタン樹脂(A)が有するウレタン基濃度(C1)及びウレア基濃度(C2)は、原料の仕込み量から算出することができる。また、以下の方法で測定することができる。
【0053】
<ウレタン基含量及びウレア基含量>
ウレタン樹脂のウレタン基含量及びウレア基含量は、窒素分析計[ANTEK7000(アンテック社製)]によって定量される窒素原子含量と
1H−NMRによって定量されるウレタン基とウレア基の比率から算出する。
1H−NMR測定については、「NMRによるポリウレタン樹脂の構造研究:武田研究所報34(2)、224−323(1975)」に記載の方法で行う。
すなわち
1H−NMRを測定して、脂肪族イソシアネートを使用した場合、化学シフト6ppm付近のウレア基由来の水素の積分量と化学シフト7ppm付近のウレタン基由来の水素の積分量の比率からウレア基とウレタン基の重量比を測定し、該重量比と上記のN原子含量からウレタン基及びウレア基濃度を算出する。
芳香族イソシアネートを使用した場合、化学シフト8ppm付近のウレア基由来の水素の積分量と化学シフト9ppm付近のウレタン基由来の水素の積分量の比率からウレア基とウレタン基の重量比を算出し、この重量比と上記の窒素原子含量からウレア基濃度を算出する。
【0054】
ウレタン樹脂(A)のMnは、集束性の観点から、好ましくは2000〜80000であり、更に好ましくは3000〜60000、特に好ましくは4000〜50000である。
【0055】
活性水素基含有有機化合物(a)及びポリイソシアネート(b)の量を適宜調整することにより、ウレタン樹脂(A)のMnを所望の範囲にすることができる。
Mnはゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが出来る。
GPC測定において、測定に用いられる溶剤に対するウレタン樹脂(A)の溶解度が90% 未満の場合はGPCの測定精度が低下する。その場合、分子量の正確な測定が困難
なため、当該ポリウレタン樹脂の分子量は無限大とする。
【0056】
なお、本発明において、Mnは下記測定条件で測定された値である。
<Mn測定方法>
DMF中に固形分が0.0125重量%となるように加えて、常温で1時間撹拌溶解後、0.3μmの孔径のフィルターでろ過して、得られたろ液に含まれている成分のMnを、DMFを溶媒として、また、ポリスチレンを分子量標準として用いて、GPCにより測定する。
<GPC測定条件>
装置:「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:「Guardcolumn α」+「TSKgel α−M」[いずれも東ソー(株)製]
試料溶液:0.0125重量%のジメチルホルムアミド溶液
溶離液:ジメチルホルムアミド
溶液注入量:100μL
流量:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)[東ソー(株)製]
【0057】
本発明のウレタン樹脂(A)は活性水素基を2〜8個有する活性水素基含有有機化合物(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させて製造されるウレタン樹脂であり、その具体的な製造方法は限定されない。
繊維用集束剤として使用する際に、ウレタン樹脂(A)は水性媒体に分散された分散体であることが好ましいため、例えば、以下の[1]及び[2]の方法が挙げられる。
【0058】
[1]高分子ポリオール(a11)及びアニオン性基を有するポリオール(a13)を含有する活性水素基含有有機化合物(a)(鎖伸長剤を含む)並びに必要により反応停止剤(e)を含有するポリオール成分とポリイソシアネート(b)とを、有機溶剤(S)の存在下又は非存在下で一段又は多段で反応させてウレタン樹脂(A)を製造し、必要により(a13)により導入されたアニオン性基部分を中和剤(d)により塩として、水性媒体に分散させた後に、必要により有機溶剤(S)を留去してウレタン樹脂(A)の水性分散体とする方法。
【0059】
[2]高分子ポリオール(a11)及びアニオン性基を有するポリオール(a13)を含有する活性水素基含有有機化合物(a)(鎖伸長剤を含む)を含有するポリオール成分とポリイソシアネート(b)とを、有機溶剤(S)の存在下又は非存在下で一段又は多段で末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、次いで必要により前記プレポリマー中の(a13)により導入されたアニオン性基を中和剤(d)により塩として水性媒体に分散させて、鎖伸長剤及び必要により反応停止剤(分子量調整剤(e))とイソシアネート基が実質的に無くなるまで反応させた後に、必要により有機溶剤(S)を留去してウレタン樹脂(A)の水性分散体とする方法。
【0060】
[1]におけるウレタン樹脂(A)を製造する際の反応温度、及び[2]におけるウレタンプレポリマーを製造する際の反応温度は、副反応抑制の観点から、60〜120℃が好ましく、更に好ましくは60〜110℃であり、最も好ましくは60〜100℃である。製造時間は、使用する設備により適宜選択することができるが、一般的に1分〜100時間が好ましく、更に好ましくは3分〜30時間であり、特に好ましくは5分〜20時間である。
【0061】
有機溶剤(S)は、イソシアネート基と実質的に非反応性の溶剤が選ばれ、例えばケトン系溶剤(例えばアセトン及びメチルエチルケトン)、エステル系溶剤[例えば酢酸エチル及びニ塩基酸エステル(DBE)]、エーテル系溶剤(例えばテトラヒドロフラン)、アミド系溶剤(例えばN,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチルピロリドン)、及び芳香族炭化水素系溶剤(例えばトルエン)等が挙げられる。これらの有機溶媒(S)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、本発明における水性媒体とは、水又は水と前記有機溶媒(S)との混合物を意味する。
【0062】
有機溶剤(S)として好ましいのは、沸点が100℃未満の有機溶剤であり、例えばアセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
沸点が100℃未満の有機溶剤を使用することにより、水性媒体から有機溶剤のみを完全に除去しやすくなり、水性分散体中に残存して、乾燥時に有機溶剤が発生することを抑制しやすくなる。また、有機溶剤が繊維束に残存しにくくなり、集束性が経時で変化することを抑制しやすくなる。
【0063】
ウレタン樹脂(A)の水性分散体における有機溶媒(S)の含有量は、乳化安定性の観点からは、水性分散体の重量に基づいて、1重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは0.8重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。
【0064】
分子量調整剤(e)としては、炭素数1〜8のモノアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、セロソルブ類及びカルビトール類等)、炭素数1〜10のモノ又はジアルキルアミン類(メチルアミン、エチルアミン、n−ブチルアミン、ジブチルアミン及びn−オクチルアミン等のモノ又はジアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン等のモノ又はジアルカノールアミン等)が挙げられる。
【0065】
鎖伸長剤としては、水、活性水素基含有有機化合物(a)のとして列挙した化合物のうち、炭素数2〜10のジアミン類(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、トルエンジアミン及びピペラジン等)、炭素数2〜10のポリアルキレンポリアミン類(ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミン等)、ヒドラジン又はその誘導体(二塩基酸ジヒドラジド例えばアジピン酸ジヒドラジド等)、炭素数2〜30のポリエポキシ化合物(1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等)及び炭素数2〜10のアミノアルコール類(エタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール及びトリエタノールアミン等)等が挙げられる。
【0066】
上記[1]及び[2]の方法におけるウレタン化反応では、反応を促進させるため、必要により公知のウレタン化触媒を使用することができる。ウレタン化触媒の添加量は、ウレタン樹脂(A)の重量に基づき、好ましくは0.001〜3重量%、更に好ましくは0.005〜2重量%、特に好ましくは0.01〜1重量%である。
【0067】
本発明の繊維用集束剤(X)はウレタン樹脂(A)を含有する。
ウレタン樹脂(A)の含有量は、成形体強度の観点から、(X)が含有する固形分の重量を基準として、50重量%以上が好ましく、さらに好ましくは90重量%以上である。
ここで、固形分とは、試料1gを130℃45分間循風乾燥機で加熱乾燥した後の残渣である。
【0068】
本発明の繊維用集束剤は、ウレタン樹脂(A)以外にも、界面活性剤(F)及びその他の添加剤等を含有していても良い。
【0069】
界面活性剤(F)としては、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤等の公知の界面活性剤(特開2006−124877号公報、及び、国際公開第2003/37964号記載のもの等)等が挙げられる。
界面活性剤(F)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、界面活性剤(F)としては、具体的には下記の化合物が挙げられる。
アルキルフェノールのアルキレンオキサイド(以下、「アルキレンオキサイド」を「AO」と略記することがある)付加物(Mn500〜5,000)、アリールアルキルフェノール{スチレン化フェノール(炭素数14〜62)、スチレン化クミルフェノール及びスチレン化クレゾール(炭素数15〜61)等}のAO付加物(Mn500〜5,000)、アルキルフェノール(炭素数10〜20)のAO付加物(Mn500〜5,000)の硫酸エステル塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩及びアルカノールアミン塩等)、アリールアルキルフェノール{スチレン化フェノール(炭素数14〜62)、スチレン化クミルフェノール及びスチレン化クレゾール(炭素数15〜61)等}のAO付加物(Mn500〜5,000)の硫酸エステル塩等が挙げられる。
なお、界面活性剤(F)において、AO付加とは、エチレンオキサイド(以下、「エチレンオキサイド」を「EO」と略記することがある)単独付加、並びに、プロピレンオキサイド(以下、「プロピレンオキサイド」を「PO」と略記することがある)及びブチレンオキサイド(以下、「ブチレンオキサイド」を「BO」と略記することがある)の少なくとも一方とEOを付加した物等が挙げられる。PO及びBOの少なくとも一方を含む場合、ランダム付加物、ブロック付加物及びこれらの混合付加物が含まれる。
界面活性剤(F)のMnの測定方法は、上記活性水素基含有有機化合物(a)のMnの測定方法と同様である。
【0070】
界面活性剤(F)のうち、アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤が好ましく、更に好ましくはMn3,000以下であり融点25℃未満のアルキルフェノールのAO付加物、Mn3,000以下であり融点25℃未満のアリールアルキルフェノールのAO付加物、Mn3,000以下であり融点25℃未満のアルキルフェノールのAO付加物の硫酸エステル塩、Mn3,000以下であり融点25℃未満のアリールアルキルフェノールのAO付加物の硫酸エステル塩及びこれらの混合物、特に好ましくはMn3,000以下であり融点25℃未満のアリールアルキルフェノールのAO(EO及びPO)付加物及びMn3,000以下であり融点25℃未満のアリールアルキルフェノールのAO(EO及びPO)付加物の硫酸エステル塩及びこれらの混合物である。
【0071】
その他の添加剤としては、平滑剤、防腐剤及び酸化防止剤等が挙げられる。
平滑剤としては、ワックス(ポリエチレン、ポリプロピレン、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン、変性ポリエチレン及び変性ポリプロピレン等)、高級脂肪酸(脂肪酸の炭素数6〜30)アルキル(アルキルの炭素数1〜24)エステル(メチルステアレート、エチルステアレート、プロピルステアレート、ブチルステアレート、オクチルステアレート及びステアリルステアレート等)、高級脂肪酸(脂肪酸の炭素数6〜30)(ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸等)、天然油脂(ヤシ油、牛脂、オリーブ油及びナタネ油等)及び流動パラフィン等が挙げられる。
防腐剤としては、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、第4級アンモニウム塩及びイミダゾール等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等)、チオジプロピオネート(ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート等)及びホスファイト(トリフェニルホスファイト等)等が挙げられる。
【0072】
本発明の繊維用集束剤は、繊維の集束性に優れ、高耐熱性の熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とする複合材料(成形体)に優れた外観、強度及び耐黄変性を与えることができるので、耐熱性の必要な用途(例えば、エンジン、自動車部材、エレクトロニクス、機械産業等)に極めて有用である。
【0073】
本発明の繊維用集束剤を適用できる繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維及びスラッグ繊維等の公知の繊維(国際公開第2003/47830号に記載のもの等)等が挙げられ、成形体強度の観点から、好ましいのは炭素繊維である。これらの繊維は2種以上を併用してもよい。
【0074】
本発明の繊維束は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維及びスラッグ繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維が、上記の繊維用集束剤で処理された繊維束である。
本発明の繊維束は、3,000〜3万本程度の繊維が束ねられていることが好ましい。
【0075】
繊維の処理方法としては、スプレー法又は浸漬法等が挙げられる。
本発明の繊維束において、ウレタン樹脂(A)の繊維への付着量(重量%)は、繊維の重量に基づいて、0.05〜5重量%が好ましく、更に好ましくは0.2〜2.5重量%である。この範囲であると、成形体強度が更に優れる。
【0076】
本発明の繊維製品は、前記の繊維束を含有する繊維製品であり、好ましくは前記の繊維束及びマトリックス樹脂(後述の熱可塑性樹脂(E)等)を含有する。この繊維製品としては、織物、編み物、不織布(フェルト、マット及びペーパー等)、チョップドファイバー及びミルドファイバー等が含まれる。
【0077】
繊維製品は、例えば、熱溶融(好ましい溶融温度:60〜350℃)した後述の熱可塑性樹脂(E)、又は溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン及び酢酸エチル等)で希釈した熱可塑性樹脂(E)を、繊維束に含浸させて得られるプリプレグ(後述の樹脂組成物(Y))を固化することで製造できる。溶剤を使用した場合、プリプレグを乾燥させて溶剤を除去することが好ましい。
【0078】
本発明の樹脂組成物(Y)は、前記の繊維束又は前記の繊維製品を強化繊維とし、熱可塑性樹脂(E)をマトリックスとしてなる樹脂組成物である。
このマトリックスとなる熱可塑性樹脂(E)としては、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、及びポリフェニレンスルフィド等の熱可塑樹脂が挙げられる。
さらに、本願発明の課題のように耐熱性に優れた熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として使用した際に強度を特に発揮するため、熱可塑性樹脂(E)としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂及びポリフェニレンスルフィド樹脂であることが好ましい。
【0079】
本発明の樹脂組成物(Y)において、熱可塑性樹脂(E)と繊維束との重量比(熱可塑性樹脂(E)/繊維束)は、成形体強度等の観点から、好ましくは10/90〜90/10であり、更に好ましくは20/80〜70/30であり、特に好ましくは30/70〜60/40である。
【0080】
本発明の成形体(Z)(繊維強化複合材料又は複合材料とも記載する)は、前記の樹脂組成物(Y)を成形することによって得られる。例えば、樹脂組成物(Y)を加熱成形し、常温で固化することで成形体とすることができる。
加熱成形の方法は特に限定されず、フィラメントワインディング成形法(回転するマンドレルに張力をかけながら巻き付け、加熱成形する方法)、プレス成形法(プリプレグシートを積層して加熱成形する方法)、オートクレーブ法(プリプレグシートを型に圧力をかけ押しつけて加熱成形する方法)及びチョップドファイバー又はミルドファイバーをマトリックス樹脂と混合して射出成形する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0082】
製造例1
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置にMnが3000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール(a11−2)[宇部興産(株)製「ETERNACOLL UH−300」]131.6部、Mnが2000のポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール(a11−1)[旭化成ケミカルズ(株)製「デュラノールG4672」]87.7部、2,2−ジメチロールプロピオン酸(a13−1)12.1部、イソホロンジイソシアネート(b−1)67.2部及びアセトン100.0部を仕込み、80℃で10時間攪拌してウレタン化反応を行い、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を製造した。
次いで得られたウレタンプレポリマーに中和剤としてのトリエチルアミン(d−1)9.1部及び希釈溶剤としてのアセトン15.0部を加えて均一化した後、水689.9部を200rpmで撹拌しながら加え、ウレタンプレポリマーを水に分散させた。
得られた分散体を50℃に加熱して4時間攪拌してウレタンプレポリマーの水による伸長反応を行い、更に減圧下60℃に加熱してアセトンを留去した。その後、得られた分散体を室温に冷却した後、水で希釈して固形分濃度を30.0重量%に調製することでウレタン樹脂(A−1)の水性分散体を得た。
【0083】
製造例2
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置にポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール(a11−1)173.3部、2,2−ジメチロールプロピオン酸(a13−1)22.0部、1,4−ブタンジオール(a12−2)2.9部、イソホロンジイソシアネート(b−1)96.1部及びアセトン100.0部を仕込み、80℃で10時間攪拌してウレタン化反応を行い、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を製造した。
次いで得られたウレタンプレポリマーに中和剤としてのトリエチルアミン(d−1)11.6部及び希釈溶剤としてのアセトン15.0部を加えて均一化した後、鎖伸長剤としてのエチレンジアミン(a2−1)0.3部、ジエチレントリアミン(a2−2)5.5部及び水689.9部を200rpmで撹拌しながら加え、ウレタンプレポリマーを水に分散させた。
得られた分散体を50℃に加熱して4時間攪拌して水による伸長反応を行い、更に減圧下60℃に加熱してアセトンを留去した。その後、得られた分散体を室温に冷却した後、水で希釈して固形分濃度を30.0重量%に調製することでウレタン樹脂(A−2)の水性分散体を得た。
【0084】
製造例3
製造例2において、(a11−1)を163.8部に、(a13−1)を22.1部に、(a12−2)を2.0部に、(b−1)の代わりに水添MDI(b−2)107.5部に、トリエチルアミン(d−1)を10.0部に、(a2−1)を4.8部に、(a2−2)を使わない以外は製造例2と同様にしてウレタン樹脂(A−3)の水性分散体を得た。
【0085】
製造例4
製造例2において、(a11−1)を187.2部に、(a12−2)を4.3部に、(b−1)の代わりにTDI(b−3)81.1部に、(a2−1)を5.5部に、(a2−2)は使わない以外は製造例2と同様にしてウレタン樹脂(A−4)の水性分散体を得た。
【0086】
製造例5
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置にポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール(a11−1)59.3部、2,2−ジメチロールプロピオン酸(a13−1)20.8部、1,6−ヘキサンジオール(a12−1)34.7部、イソホロンジイソシアネート(b−1)163.1部及びアセトン100.0部を仕込み、80℃で10時間攪拌してウレタン化反応を行い、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を製造した。
次いで得られたウレタンプレポリマーに中和剤としてのトリエチルアミン(d−1)15.6部及び希釈溶剤としてのアセトン15.0部を加えて均一化した後、分子量調整剤としてのn−ブチルアミン(e−1)22.3部及び水684.4部を200rpmで撹拌しながら加え、ウレタンプレポリマーを水に分散させた。
得られた分散体を50℃に加熱して4時間攪拌して水による伸長反応を行い、更に減圧下60℃に加熱してアセトンを留去した。その後、得られた分散体を室温に冷却した後、水で希釈して固形分濃度を30.0重量%に調製することでウレタン樹脂(A−5)の水性分散体を得た。
【0087】
製造例6
製造例5において、(a11−1)を169.6部に、(a13−1)を21.5部に、(a12−1)の代わりに(a12−2)2.9部に、(b−1)を94.1部に、トリエチルアミン(d−1)を11.3部に、n−ブチルアミン(e−1)を12.1部に変えた以外は製造例5と同様にしてウレタン樹脂(A−6)の水性分散体を得た。
【0088】
製造例7
製造例5において、(a11−1)の代わりにMnが1000のポリテトラメチレングリコール(a11−3)[三菱化学(株)製「PTMG1000」]11.8部に、2,2−ジメチロールプロピオン酸(a13−1)を35.2部に、(a12−1)の代わりに1,4−ブタンジオール(a12−2)42.1部に、(b−1)を206.4部に、トリエチルアミン(d−1)を5.3部に、n−ブチルアミン(e−1)を4.8部に変えた以外は製造例5と同様にしてウレタン樹脂(A−7)の水性分散体を得た。
【0089】
製造例8
製造例1において、(a11−1)および(a11−2)の代わりに(a12−2)11.8部に、2,2−ジメチロールプロピオン酸(a13−1)を80.2部に、(a13−1)を10.1部に、(b−1)を209.6部に、トリエチルアミン(d−1)を8.0部に変えた以外は製造例1と同様にしてウレタン樹脂(A−8)の水性分散体を得た。
【0090】
比較製造例1
製造例5において、(a11−1)の代わりにMnが4000のポリテトラメチレングリコール(a11−4)[三菱化学(株)製「PTMG4000」]245.2部に、(a13−1)を10.7部に、(a12−1)の代わりに1,4−ブタンジオール(a12−2)0.1部に、(b−1)を41.0部に、トリエチルアミン(d−1)を8.0部に、n−ブチルアミン(e−1)を3.1部に変えた以外は製造例5と同様にして比較例のためのウレタン樹脂(A’−1)の水性分散体を得た。
【0091】
比較製造例2
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置に1,6−ヘキサンジオール(a12−1)139.1部、イソホロンジイソシアネート(b−1)130.9部及びアセトン100.0部を仕込み、80℃で10時間攪拌してウレタン化反応しウレタン樹脂のアセトン溶液を製造した。次いで得られてウレタン樹脂に界面活性剤(F−1)30.0部仕込み撹拌し均一にした後、水700部を200rpmで撹拌しながら加え水に分散させた。更に減圧下60℃に加熱してアセトンを留去し、得られた分散体を室温に冷却した後、水で希釈して固形分濃度を30.0重量%に調製することでウレタン樹脂(A’−2)の水性分散体を得た。
【0092】
上記製造例1〜8及び比較製造例1〜2で得られたウレタン樹脂(A−1)〜(A−8)と(A’−1)及び(A’−2)の水性分散体中のウレタン樹脂のウレタン基濃度及びウレア基濃度を仕込み量から算出し、95%加熱減量温度(T
95)、及び10%加熱減量温度(T
10)を前述の方法で測定した。
その結果は表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
なお、表1における各原料の組成は以下の通りである。
(a11−1):デュラノールG4672[旭化成ケミカルズ(株)製、Mn=2000のポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール]
(a11−2):ETERNACOLL UH−300[宇部興産(株)製、Mn=3000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール]
(a11−3):PTMG1000[三菱化学(株)製、Mn=1000のポリテトラメチレングリコール]
(a11−4):PTMG4000[三菱化学(株)製、Mn=4000のポリテトラメチレングリコール]
(a12−1):1,6−ヘキサンジオール
(a12−2):1,4−ブタンジオール
(a13−1):2,2−ジメチロールプロピオン酸
(a2−1):エチレンジアミン
(a2−2):ジエチレントリアミン (b−1):IPDI
(b−2):水添MDI
(b−3):TDI
(d−1):トリエチルアミン
(e−1):n−ブチルアミン
(F−1):スチレン化フェノールのプロピレンオキサイドエチレンオキサイド付加物「Soprophor 796/P」[ソルベイ日華(株)製]
【0095】
実施例1〜8、比較例1〜2
上記製造例1〜8及び比較製造例1〜2で得られたウレタン樹脂(A−1)〜(A−8)と(A’−1)〜(A’−2)の水性分散体をそのまま繊維用集束剤(X−1)〜(X−8)と(X’−1)〜(X’−2)として用い、下記の評価方法で炭素繊維束の集束性、成形体の成形体の外観、曲げ強度及び耐黄変性を評価した。
結果を表2に示す。
【0096】
<炭素繊維束の評価用試験片の作成と集束性の評価>
(1)ウレタン樹脂の濃度が1.5重量%となるように繊維用集束剤(X)をさらに水で希釈した水溶液に、未処理炭素繊維(繊度800tex、フィラメント数12,000本)を浸漬して集束剤を繊維に含浸させ、180℃で3分間熱風乾燥させて炭素繊維束を作製した。
(2)得られた炭素繊維束の集束性を、JIS L1096−2010 8.21.1
A法(45°カンチレバー法)に準じて評価した。
数値(cm)が大きいほど集束性に優れることを意味する。
この処理条件で得られた炭素繊維束をカンチレバーで評価した集束性の値は、一般に13cm以上が好ましい。
【0097】
<成形体の作成>
(1)固形分濃度が1.5重量%となるように繊維用集束剤(X)を、さらに水で希釈した水溶液に、未処理炭素繊維(繊度800tex、フィラメント数12,000本)を浸漬して集束剤を繊維に含浸させ、180℃で3分間熱風乾燥させて、未処理炭素繊維の重量を基準として固形分が1.5重量%付着した炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束を長さ6mmに切断して短繊維束を作製した。
(2)得られた短繊維束10重量部に、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)90重量部を加え、V型ブレンダ―でドライブレンドした。
(3)このドライブレンド物をベント付き2軸押出機にて400℃、回転数70rpm、滞留時間5分で混練して、各樹脂組成物(Y)を得て、ストランド状に押出し、ペレタイザーで切断し樹脂組成物の樹脂ペレットを得た。
(4)得られた樹脂ペレットを日精樹脂工業製射出成型機「PS40EASE」を用い、シリンダー温度:400℃、金型温度:150℃で評価用試験片を成形した。
【0098】
<成形体の外観>
上記で得られた成形体について、20倍のマイクロスコープで観察して、以下の評価基準で、外観を評価した。
<評価基準>
◎:ホイドが全くない
〇:ボイドがほとんどない
×:ボイドが目立つ
【0099】
<成形体の曲げ強度>
上記で得られた評価用試験片を用いて、JIS K 7171に準じて、成形体の曲げ強度を測定した。
【0100】
<成形体の耐黄変性>
(1)固形分濃度が1.5重量%となるように繊維用集束剤(X)を、さらに水で希釈した水溶液に、未処理ガラス繊維(繊度67.5tex、フィラメント数800本)を浸漬して集束剤を含浸させ、180℃で3分間熱風乾燥させて未処理ガラス繊維の重量を基準として固形分が1.5重量%付着したガラス繊維束を得た。得られたガラス繊維束を長さ6mmに切断して短繊維束を作製した。
(2)得られた短繊維束10重量部に、ポリカーボネート樹脂(PC)90重量部を加え、V型ブレンダ―でドライブレンドした。
(3)このドライブレンド物をベント付き2軸押出機にて330℃、回転数70rpm、滞留時間5分で混練して、各樹脂組成物(Y)を得て、ストランド状に押出し、ペレタイザーで切断し繊維強化樹脂ペレットを得た。
(4)得られた樹脂ペレットを日精樹脂工業製射出成型機「PS40EASE」を用い、シリンダー温度:330℃、金型温度:80℃で評価用試験片(50×50×2mm)を成形した。
(5)試験片(50×50×2mm)を63℃の条件で、紫外線ロングライフフェードメーター(FAL−55H、スガ試験機(株)製)にて紫外線を200時間ダイレクト照射し、分光測色計(CM−70d、コニカミノルタ(株)製)を使用し、色差(ΔY)を測定し以下の評価基準で、耐黄変性を評価した。
<評価基準>
◎:色差(ΔY)が5未満
〇:5以上10未満
△:10以上〜20未満
×:20以上
【0101】
【表2】
【0102】
表2の結果から明らかなように、95%加熱減量温度(T
95)が250〜430℃の本発明の繊維用集束剤(X−1)〜(X−8)を用いた繊維束は集束性に優れ、その成形体の外観は良好で、優れた強度、耐黄変性を与えることがわかる。特にポリイソシアネート(b)として脂肪族イソシアネートを用いると耐黄変性は特に優れることがわかる。
一方、95%加熱減量温度(T
95)が430℃を超える繊維用集束剤(X’−1)を用いた成形体の外観は平滑でなく、特に炭素繊維とマトリックス樹脂の間にボイドが多く、さらに曲げ強度も不足する。また、95%加熱減量温度(T
95)が250℃未満である繊維用集束剤(X’−2)を用いた場合、95%加熱減量温度(T
95)が290℃又は250℃である実施例7又は8と比較すると、成形体の外観、強度及び耐黄変性は同程度であるものの、集束性が極めて劣ることがわかる。