【解決手段】試料100を支持する支持台13と、X線源11と、X線検出器15と、その透過画像を第2検出領域にてX線検出器15が検出する、1又は複数のX線マーカと、X線源11、X線検出器15、及び1又は複数のX線マーカと、支持台13と、の相対的角度配置を異ならせるよう回転する、回転駆動系14と、X線検出器15が検出する試料の透過画像及び1又は複数のX線マーカの透過画像を取得する、透過画像取得部と、1又は複数のX線マーカの透過画像に基づいて試料の透過画像の位置ずれ補正を施し試料の補正透過画像を生成する、位置ずれ補正画像生成部と、位置ずれ補正画像生成部が生成する複数の補正透過画像に基づいてCT画像を再構成する、画像再構成部3と、を備える、X線CT装置。
【背景技術】
【0002】
従来、X線コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:以下、CTと記す)装置は、非破壊内部測定が可能であり、人体、実験用動物などの生物のみならず、無生物である製品一般の内部構造の検査に用いられる。
【0003】
X線CT装置はX線源(例えば、X線管)を備える。測定において複数の角度配置それぞれにおいて透過画像が撮影される。かかる測定において、X線源の位置の変動は、透過画像に変動を発生させ、再構成されるCT画像の画像品質を劣化させてしまう。
【0004】
X線源の位置の変動を抑制するために、X線源を測定前の準備段階で十分にエージングを実施しX線源を安定的な状態とすることが考えられる。しかしながら、かかる準備段階を設けることにより全体の測定時間が長くなるとの問題が生じる。また、X線源の寿命を早めてしまうという問題も生じる。
【0005】
特許文献1に、被写体を乗せて回転軸を中心に回転する回転テーブルと、上端が尖鋭な形状のマーカ(X線透過物)と、X線検出器と、を備える産業用X線CT装置が開示されている。マーカは、X線管装置と回転テーブルとの間に設けられ、必要に応じて上下動をすることが出来る。X線管装置のX線管に供給する管電圧及び管電流を変化させる度に、回転テーブルに被写体を載置していない状態とし、マーカの先端が回転テーブルの上に突出する位置にまでマーカを上昇させ、X線検出器上にマーカの先端を投影し、かかる投影位置を検出する。これにより、逆投影データの中心座標とX線検出器配列に投影された被写体回転中心軸座標の不一致を補正している。
【0006】
特許文献2に、主X線検出器7に加えてプロファイル検出器9を備えるX線CT装置1が開示されている。X線管球3とスリット5がさらに備えられており、スリット5には、X線管球3が出射するX線からプロファイル検出器9へ到達するX線ビームXPを通過させる間隙が設けられている。X線ビームXPの断面を正方形とし、プロファイル検出器9の検出面を2×2に配置される4個の素子で構成する。正方形のX線ビームXPの検出面における照射面積に比例して4個の素子が検出するX線強度の違いにより、X線管球3のX線源のミスアライメントを補正している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、寸法、形状等について模式的に表す場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0019】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るX線CT装置は、工業製品のCT画像を撮影するための3次元X線CT装置であり、試料を支持する支持台と、試料へX線を照射するX線源と、X線検出器と、X線源と支持台との間に配置される1又は複数のX線マーカと、フィルタと、回転駆動系と、X線検出器が検出する試料の透過画像及び1又は複数のX線マーカの透過画像を取得する透過画像取得部と、1又は複数のX線マーカの透過画像に基づいて試料の透過画像の位置ずれ補正を施し試料の補正透過画像を生成する位置ずれ補正画像生成部と、位置ずれ補正画像生成部が生成する複数の補正透過画像に基づいてCT画像を再構成する画像再構成部と、を備えている。ここで、1又は複数のX線マーカはフィルタと一体となって構成されているのが望ましい。
(3次元X線CT装置の構成)
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る3次元X線CT装置1の構造を示す模式図である。
図1に示す通り、当該実施形態に係る3次元X線CT装置1は、CT撮影部2と、画像リコンPC3と、入力部4と、表示部5を、備えている。CT撮影部2は、X線管11と、フィルタ12と、支持台13(試料ステージ)と、回転駆動系14と、2次元X線検出器15と、を備えている。支持台13は試料100を支持しており、回転駆動系14の上に搭載されている。試料100(の中心)を回転軸に回転駆動系14は試料100を支持する支持台13を回転させる。当該実施形態に係る3次元X線CT装置1の主な特徴はフィルタ12の構造にあるが、これについては後述する。
【0021】
当該実施形態では、試料100の複数の透過画像を撮影する間、X線管11、フィルタ12、及び2次元X線検出器15は固定されており、回転駆動系14が支持台13を回転させながら試料100の複数の透過画像を連続的に撮影する。X線管11、フィルタ12、及び2次元X線検出器15を含めて測定系とすると、回転駆動系14は、測定系と支持台13との相対的角度配置を異ならせるよう回転している。当該実施形態では、測定系が固定され回転駆動系14が支持台13を回転させているが、これに限定されることはなく、支持台13が固定され回転駆動系14が測定系を回転させてもよい。
【0022】
図2は、当該実施形態に係るフィルタ12の構成を示す図である。当該実施形態に係るフィルタ12は、照射X線フィルタ部12Aと、1又は複数(ここでは4個)のX線マーカ12Bと、を含む。すなわち、1又は複数のX線マーカ12Bはフィルタ(照射X線フィルタ部12A)と一体となって構成されている。照射X線フィルタ部12Aは、試料に照射するX線から低エネルギー成分を低減させるためのものであり、X線CT装置において通常に用いられるフィルタの機能を有している。X線マーカ12Bはピンホールであり、フィルタ12のうちX線マーカ12Bが形成される領域は、X線マーカ12Bが形成されない領域(照射X線フィルタ部12Aが形成される領域)より、X線透過率が高い。
【0023】
ここでは、フィルタ12は矩形状を有しており、矩形状の四隅の近傍にそれぞれX線マーカ12Bを配置している。なお、
図2に示す通り、フィルタ12の矩形状の平面をxy平面として、横方向をx軸方向と、縦方向をy軸方向と、それぞれ定義する。
【0024】
フィルタ12は、1枚のフィルタ板により構成されてもよく、その場合、X線マーカ12Bが形成される領域には、X線透過率が高い部材又はX線をカットしない部材で構成される。これに対して、X線マーカ12Bが形成されない領域(照射X線フィルタ部12Aが形成される領域)には、X線マーカ12Bが形成される領域に配置される部材のX線透過率より低い部材(通常のフィルタのために用いられる金属など)で構成される。なお、X線マーカ12Bが形成される領域には何ら部材が配置されない単なる穴(ピンホール)であってもよい。また、フィルタ12は、2枚のフィルタ板を貼り合わせて構成されてもよい。その場合、一方のフィルタ板は一様にX線をカットするフィルタの機能を有する部材で構成され、他方のフィルタ板は、X線マーカ12Bが形成される領域にはX線透過率が高い部材、X線をカットしない部材、又は何ら部材が配置されない単なる穴のいずれかで構成され、X線マーカ12Bが形成されない領域(照射X線フィルタ部12Aが形成される領域)には、X線マーカ12Bが形成される領域に配置される部材のX線透過率より低い部材で構成される。他方のフィルタ板のX線マーカ12Bが形成される領域に単なる穴が配置される場合は、X線マーカ12Bが形成されない領域には金属などX線の透過を低下させる部材(空気などの外環境よりX線透過率が高い部材)が配置されていればよい。2枚のフィルタ板を貼り合わせることにより、照射X線フィルタ部12Aが形成される領域は、所望のX線透過率(所望のX線透過特性)となっていればよい。なお、X線マーカ12Bそれぞれは、その位置を特定するのに適切な形状を有しているのが望ましい。例えば円形状が望ましいが、正方形など多角形であってもよい。
【0025】
図3は、当該実施形態に係るCT撮影部2の構成を示す図である。構成をより明確に理解できるよう、
図1と異なり
図3には、主要部品のみが示されている。X線管11では、電子線をターゲット(陽極)に照射してX線が発生し、発生したX線を所望の方向へ取り出している。X線管11は、実質的に点源11A(マイクロフォーカス)とみなすことが出来るビームソースを有しており、
図3には点源11Aとして示されている。
図3に示す通り、点源11Aより+z軸方向へ出射されるコーンビームのX線が示されている。点源11Aより出射されるX線は、フィルタ12を通過して試料100に照射され、試料100を透過するX線が2次元X線検出器15の検出面へ到達し、2次元X線検出器15が試料100のX線透過画像を検出する。
図3に示す通り、点源11Aとフィルタ12との距離をL
1と、フィルタ12と2次元X線検出器15との距離をL
2と、それぞれ定義する。また、点源11Aと試料100(の中心、すなわち回転軸)との距離をL
3と、試料100(の中心、すなわち回転軸)と2次元X線検出器15との距離をL
4と、それぞれ定義する。
【0026】
X線管11を駆動させて、電子線をターゲットに照射することを続けると、ターゲットは熱膨張をすることに起因して、点源11Aの位置が移動してしまう。
図3は、点源11Aが理想的な位置Aにある場合と、点源11Aが理想的な位置Aから移動して位置Bにある場合とを、示している。x軸方向の位置Bの位置Aからの変位はΔFであり、かかる変位ΔFのx成分はΔF
xであり、y成分はΔF
yである。
【0027】
点源11Aが位置Aにある場合に、点源11Aより出射されるX線のコーンビームは、試料100の中心を通過して2次元X線検出器15の検出面へ到達する。試料100の当該部分の透過画像の位置を位置PAとする。点源11Aが位置Aから位置BへΔF変位する場合に、試料100の当該部分の透過画像の位置を位置PBとする。
【0028】
図4A及び
図4Bは、当該実施形態に係る2次元X線検出器15の構成を示す図である。
図4Aは、点源11Aが位置Aにある場合の2次元X線検出器15の検出面の状態を模式的に示しており、
図4Bは、点源11Aが位置Bにある場合の2次元X線検出器15の検出面の状態を模式的に示している。
図4A及び
図4Bは2次元X線検出器15の検出面(xy平面)を示しており、
図2に示すフィルタ12のxy平面に対応している。
図4A及び
図4Bに示す通り、2次元X線検出器15は検出面を有し、かかる検出面は、CT画像化に用いる第1検出領域R1と、CT画像化には用いない第2検出領域R2と、を有する。ここでは、
図4Aに示す通り、第1検出領域R1に試料100の透過画像Tが含まれている。これに対して、例えば試料100の透過画像が第1検出領域R1と第2検出領域R2との境界を越えて、その一部の透過画像が第2検出領域R2に含まれる場合であっても、かかる一部の透過画像は、CT画像再構成には用いられるが、CT画像化されない。すなわち、第2検出領域R2はCT画像化には用いない検出領域である。第2検出領域R2に4個のX線マーカ12Bの透過画像P1,P2,P3,P4が含まれている。2次元X線検出器15が4個のX線マーカ12Bの透過画像P1,P2,P3,P4を検出しても、第2検出領域R2は試料100のCT画像化には用いない検出領域なので、透過画像P1,P2,P3,P4は、CT画像化には影響しない。2次元X線検出器15が、試料100の透過画像及び1又は複数のX線マーカ12Bの透過画像を検出する(透過画像検出ステップ)。
【0029】
点源11Aの位置の変動の検出は、1個のX線マーカ12Bによっても可能であるが、当該実施形態に係るフィルタ12は、4個のX線マーカ12Bを備えている。フィルタ12が複数のX線マーカ12Bを備えることにより、試料100の透過画像の一部が第2検出領域R2に含まれる場合であっても、複数のX線マーカ12Bの透過画像のうち少なくとも一部のX線マーカ12Bの透過画像が試料100の透過画像と重ならない可能性は上昇する。それゆえ、試料100の透過画像と重なっていない一部のX線マーカ12Bの透過画像を用いて、点源11Aの位置の変動を検出することが出来る。
【0030】
また、回転駆動系14が支持台13を回転させていて、一部の角度範囲において複数のX線マーカ12Bの透過画像すべてが試料100の透過画像と重なる場合であっても、フィルタ12が複数のX線マーカ12Bを備えることにより、複数のX線マーカ12Bの透過画像すべてが試料100の透過画像と重なる角度範囲を、フィルタ12に1のX線マーカ12Bのみが配置される場合と比べて狭くすることができる。かかる角度範囲にある点源11Aの位置の変動は、その角度範囲の両外側における角度位置(又は角度範囲)で検出される点源11Aの位置の変動より内挿することで推測することができる。
【0031】
図4Bに示す通り、点源11Aが位置Aから位置BへΔF移動すると、それに伴って、4個のX線マーカ12Bの透過画像はΔf移動する。ここで、そのx成分はΔf
xであり、y成分はΔf
yである。これに対して、試料100の透過画像Tは透過画像TDへ移動する。
【0032】
図5は、当該実施形態に係るCT撮影部2の有効視野を示す模式図である。
図5は、当該実施形態に係るCT撮影部2の構造を模式的に示したものであり、理解を容易くするために、点源11Aと2次元X線検出器15の検出面のみが示されている。回転駆動系14が支持台13を回転させることにより、支持台13に対する点源11Aと2次元X線検出器15の相対的な位置が異なるが、
図5は、支持台13に対して、互いに対向する位置にある2つの点源11Aを点源11Aa,11Abとして示している。例えば、点源11Aaの角度配置をθ=0とすると、点源11Abの角度配置はθ=180°である。2つの点源11Aそれぞれに対応する2つの2次元X線検出器15を2次元X線検出器15a,15bとして示している。また、点源11Aから発生するコーンビームのX線のうち、CT画像再構成に用いる透過画像に透過するコーンビームの立体角は小さいが、理解を容易くするために、y軸方向に対して誇張した記載となっている。
【0033】
CT画像再構成を施すためには、360°画像再構成の場合、360°すべての(実際には不連続であるが)角度配置にある点源11Aから発生するコーンビームのX線(の一部)が対象となる部分を透過している必要があり、そのために、360°すべての角度配置にある点源11Aから発生するコーンビームが2次元X線検出器15に到達される領域は限定される。かかる領域は有効視野領域(Field of View:FoV)と呼ばれており、
図5にFoVとして示されている。FoVは、図に示すような駒形状の回転体である。
図5には、かかる回転体の一部が破線の円で囲われており、右下に破線の円で囲われる領域が別途示されており、かかる回転体の回転断面が記載されている。かかる回転断面は、横辺a1及び縦辺a2である長方形と、該長方形の横辺a1を底辺として回転軸方向を縦辺a3とする直角三角形が該長方形の上下にそれぞれ配置される図形であり、かかる回転体は該図形を回転軸に対して回転させた回転体である。
【0034】
図6Aは、当該実施形態に係る複数のCT画像化領域Fを示す模式図である。CT画像再構成の計算を容易にする目的で、CT画像化する領域(以下、CT画像化領域Fと称する)は、FoVに含まれるとともに回転軸を共有する円柱領域をユーザが選択することにより決定される。
図6Aは、ユーザによって決定される3つのCT画像化領域F1,F2,F3を示しており、3つのCT画像化領域FはいずれもFoVに含まれており、FoVと回転軸を共有している。y軸方向に垂直なxy平面の面積を大きくしようとするとy軸方向の長さが短くなり、その例がCT画像化領域F1である。反対に、y軸方向の長さを長くしようとするとxy平面の面積が小さくなり、その例がCT画像化領域F3である。そして、その間となっているのが、CT画像化領域F2である。
【0035】
図6Bは、当該実施形態に係る2次元X線検出器15の構成を示す模式図である。
図6Aに示す3つのCT画像化領域Fを透過するX線が2次元X線検出器15の検出面に到達する検出領域をそれぞれ示しており、すなわち、第1検出領域R1である。CT画像化領域F1,F2,F3に対応する第1検出領域R1がそれぞれF1,F2,F3に対応するR1として示されている。CT画像化領域Fをどのように決定しても、FoVを透過するX線が検出面に到達する領域(図に、FoVに対応する領域と記載)に含まれている。あるCT画像化領域Fを決定すると、それに対応する第1検出領域R1が決定され、第2検出領域R2を2次元X線検出器15の検出面のうち第1検出領域R1以外の領域とするならば、かかるCT画像化領域Fに対して本発明を適用することができ、その場合、第2検出領域R2のいずれに透過画像が投影される位置に1又は複数のX線マーカ12Bをフィルタ12に配置することができる。
【0036】
CT画像化領域FはFoVに含まれる範囲でユーザが自由に決定することができる。よって、第2検出領域R2を、あらゆるCT画像化領域Fが設定されてもCT画像化には用いない領域とするのが望ましい。言い換えれば、有効視野領域(FoV)を透過するX線が検出面に到達する領域(FoVに対応する領域)以外であるのが望ましい。第2検出領域R2をかかる領域に限定することにより、ユーザがどのようにCT画像化領域Fを設定しても本発明を適用することができ、格別の効果を奏することとなる。
(画像リコンPC)
【0037】
図7は、当該実施形態に係る画像リコンPC3のブロック図である。画像リコンPC3は、CT撮影部2が撮影する複数の透過画像に基づいて3次元CT画像を再構成(リコン)するためのコンピュータであり、画像再構成部である。画像リコンPC3は、透過画像取得部21と、位置ずれ補正画像生成部22と、画像再構成部23と、記憶部24と、を備えている。画像リコンPC3は、以下に説明する各ステップを実行する手段をそれぞれ備えている。また、当該実施形態に係るプログラムは、コンピュータを、各手段として機能させるためのプログラムである。
【0038】
透過画像取得部21は、2次元X線検出器15が検出する試料100の透過画像及び1又は複数(ここでは、4個)のX線マーカ12Bの透過画像をCT撮影部2より取得する(透過画像取得ステップ)。記憶部24は、透過画像取得部21が取得する試料100の透過画像及び1又は複数のX線マーカ12Bの透過画像を記憶する。
【0039】
位置ずれ補正画像生成部22は、1又は複数のX線マーカ12Bの透過画像に基づいて、試料100の透過画像の位置ずれ補正を施し、試料100の補正透過画像を生成する(位置ずれ補正画像生成ステップ)。まず、1又は複数のX線マーカ12Bの透過画像の変位Δfより、点源11Aの変位ΔFを算出する。
図3に示すL1及びL2より第1拡大率MをM=(L
1+L
2)/L
1とする。点源11Aの変位ΔFのx成分ΔF
x及びy成分ΔF
yは、それぞれ下記に示す第(1)式及び第(2)式で表すことができる。
【0042】
次に、透過画像の位置ずれΔTを算出する。
図3に示すL
3及びL
4より第2拡大率mをm=(L
3+L
4)/L
3とする。位置ずれΔTのx成分ΔT
x及びy成分ΔT
yは、それぞれ下記に示す第(3)式及び第(4)式で表すことができる。
【0045】
透過画像の位置ずれΔTより、透過画像の位置ずれ補正ΔCを算出する。位置ずれ補正の補正量ΔCのx成分ΔCx及びy成分ΔCyは、それぞれ下記に示す第(5)式及び第(6)式で表すことができる。
【0046】
ΔC
x=C
0x−ΔT
x ・・・(5)
【0047】
ΔC
y=C
0y−ΔT
y ・・・(6)
【0048】
ここで、C
0x及びC
0yは、それぞれ点源11Aの位置Aにおけるx方向及びy方向の補正量である。第(5)式及び第(6)式を用いて、試料100の補正透過画像を生成する。
【0049】
記憶部24は、位置ずれ補正画像生成部22が生成する試料100の補正透過画像を記憶してもよい。CT撮影部2において、回転駆動系14は支持台13を回転させながら、2次元X線検出器15は試料100の透過画像及び1又は複数のX線マーカ12の透過画像を連続的に撮影する。例えば、角度配置θを、θ=0°から角度間隔Δθ=3°間隔で順に撮影すると、θ=3(n−1)(n=1,2,・・・120)となる角度配置において、CT撮影部2が透過画像(合計120枚)を撮影する。そして、透過画像取得部21は順に120回、試料100の透過画像及び1又は複数のX線マーカ12Bの透過画像を取得し、位置ずれ補正画像生成部22は順に120回、試料100の補正透過画像を生成する。
【0050】
画像再構成部23は、位置ずれ補正画像生成部22が生成する複数(例えば120枚)の補正透過画像に基づいて、CT画像を再構成する(画像再構成ステップ)。画像再構成部23は、GPU(Graphics Processing Unit)であり、グラフィクス処理を高速化するためのプロセッサである。画像再構成部23は、例えばFeldkamp法を用いて、複数の補正透過画像に再構成処理して3次元CT画像を生成し、記憶部24及び表示部5へ出力する。ここで、試料100がCT画像化領域Fより外側に広がっている場合は、生成される3次元CT画像は、試料100のうちCT画像化領域Fに含まれる部分に限定されることとなる。記憶部24は3次元CT画像を記憶し、表示部5は3次元CT画像を表示する。
【0051】
入力部4は、キーボードやマウスを有しており、利用者が入力部4に測定の設定事項などを入力する。表示部5は、ディスプレイを有しており、CT撮影測定の設定事項を表示するとともに、画像リコンPC3の画像再構成部23又は記憶部24より入力される3次元CT画像を表示する。
【0052】
図8Aは、当該実施形態に係る3次元X線CT装置1が生成するX線CT画像の一例を示す図である。点源11Aの位置の変動による補正が施されており、鮮明なX1線CT画像が得られている。
図8Bは、従来技術にかかる3次元X線CT装置が生成するX線CT画像の一例を示す図である。X線源の位置の変動による補正が施されておらず、試料の透過画像にX線源の位置の変動によるブレが発生しており、生成されるX線CT画像に鮮明さが欠けている。
【0053】
当該実施形態に係る3次元X線CT装置1は、複数(ここでは4個)のX線マーカ12Bを備えることにより、試料100がCT画像化領域Fの外側へ広がっていて、複数のX線マーカ12Bのうち一部のX線マーカ12Bの透過画像と試料100の透過画像とが重なってしまった場合であっても、重なっていない他のX線マーカ12Bの透過画像を用いて、点源11Aの位置の変動を検知することができるという格別の効果を奏する。前述の通り、ある角度範囲において、複数のX線マーカ12Bの透過画像すべてが試料100の透過画像と重なってしまう場合であっても、3次元X線CT装置1が複数のX線マーカ12Bを備えることにより、かかる角度範囲を狭くすることができており、かかる角度範囲においてもより精度高く点源11Aの位置の変動を推測することができるという著名な効果をさらに奏することとなる。
【0054】
なお、2次元X線検出器15の検出面で精度よく点源11Aの位置の変動を検出するとの観点から、当該実施形態に係る1又は複数のX線マーカ12Bは点源11Aの近傍に配置されるのが望ましく、同じく点源11Aの近傍に配置されるフィルタ12と一体となって構成されているのが望ましい。しかし、これに限定されることはなく、1又は複数のX線マーカはフィルタと別体として構成されてもよいことは言うまでもない。
【0055】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るX線CT装置1は、フィルタ12の構造が第1の実施形態と異なっているが、それ以外のは同じ構成を有している。
図9は、当該実施形態に係るフィルタ12の構成を示す図である。第1の実施形態と異なり、当該実施形態に係る複数のX線マーカ12Bは、フィルタ12の四隅それぞれに配置される4個の金属片である。X線マーカ12BのX線透過率が照射X線フィルタ部12AのX線透過率より低いことにより、2次元X線検出器15が検出するX線マーカ12Bの透過画像により、点源11Aの位置の変動を検出することができる。X線マーカ12Bが金属片となる当該実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0056】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係るX線CT装置1は、フィルタ12の構造が第1及び第2の実施形態と異なっているが、それ以外のは同じ構成を有している。第1及び第2の実施形態と異なり、当該実施形態に係る複数のX線マーカ12Bは、フィルタ12の四隅それぞれに配置される4個の金属球である。X線マーカ12BのX線透過率が照射X線フィルタ部12AのX線透過率より低いことにより、2次元X線検出器15が検出するX線マーカ12Bの透過画像により、点源11Aの位置の変動を検出することができる。当該実施形態においても、第1及び第2の実施形態と同様の効果を奏する。
【0057】
[第4の実施形態]
第1乃至第3の実施形態に係るX線CT装置は、X線源がコーンビームのX線を出射する3次元X線CT装置1としたが、これに限定されることはなく、ノンヘリカル型やヘリカル型の2次元X線CT装置であってもよい。本発明の第4の実施形態に係るX線CT装置は、ノンヘリカル型やヘリカル型の2次元X線CT装置である。
【0058】
図10は、当該実施形態に係るX線検出器の構成を示す図である。当該実施形態に係るX線検出器は1次元X線検出器である。1次元X線検出器であっても、
図10に示す通り、CT画像化に用いる第1検出領域R1に加えて、CT画像化には用いない第2検出領域R2を1次元検出器が有することはあり得る。かかる場合に、第2検出領域R2においてX線マーカの透過画像を検出することにより、X線源の位置の変動を検出し補正することができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態に係るX線CT装置及びCT画像再構成方法について説明した。本発明に係るX線CT装置及びCT画像再構成方法は、上記実施形態に限定されることなく、広く適用することができる。上記実施形態では、X線マーカは、ピンホール、金属片、金属球からなる群より選択される1つであるが、これに限定されることなく、X線透過率を異ならせるものから適切に選択さればよい。
【0060】
上記実施形態に係るX線CT装置では、例えば
図3に示す通り、試料100から距離L4にX線検出器が配置されている。かかる配置において、1又は複数のX線マーカの透過画像がX線検出器の第2検出領域R2にて検出される。しかしながら、X線検出器を移動させて(距離L
4の値を変えて)、X線検出器を配置する場合は、1又は複数のX線マーカの透過画像がX線検出器の第2検出領域R2の外部へ移動してしまうことが考えられる。かかる場合は、かかる場合において、1又は複数のX線マーカの透過画像がX線検出器の第2検出領域R2に到達するよう、適切なフィルタを配置すればよい。
【0061】
本発明に係る3次元X線CT装置は、工業製品のCT画像を撮影する装置であるとしたが、これに限定されることはなく、小動物や人体のCT画像を撮影する装置であってもよい。また、本発明に係る2次元X線CT装置も、それぞれの目的に応じて対象物のCT画像を撮影する装置であってもよい。