【解決手段】実装基板110に向かう側の面である下基部32Dと、平坦な主面を有する上基部31Dと、実装基板110への実装に使用される複数の実装端子50と、を備える電子部品100の形状を評価する電子部品評価方法を、実装端子50の位置に関する端子位置情報により、実装端子50の少なくとも三つと接する面である基準平面を作成する基準平面作成工程と、基準平面を基準にして、電子部品の下面及び上面の少なくとも一方の高さに関する高さ情報を検出する高さ情報検出工程と、により実行する。
実装基板に向かう側の面である下面と、平坦な主面を有する上面と、前記実装基板への実装に使用される複数の実装端子と、を備える電子部品の形状を評価する電子部品評価方法であって、
前記実装端子の位置に関する端子位置情報により、前記実装端子の少なくとも三つと接する面である基準平面を作成する基準平面作成工程と、
前記基準平面を基準にして、前記電子部品の前記上面及び前記下面の少なくとも一方の高さに関する高さ情報を検出する高さ情報検出工程と、を含む、電子部品評価方法。
前記評価工程は、一つの前記電子部品の前記下面において測定された前記高さ情報のうちの最大値と最小値との差分値により前記上面または前記下面の傾きの大きさを評価する、請求項4に記載の電子部品評価方法。
前記評価工程は、一つの前記電子部品の前記下面の少なくとも二点において測定された前記高さ情報と、前記二点同士の位置関係により前記上面または前記下面の傾きの方向を評価する、請求項4に記載の電子部品評価方法。
実装基板に向かう側の面である下面と、平坦な主面を有する上面と、前記実装基板への実装に使用される複数の実装端子と、を備える電子部品の形状を評価する電子部品評価装置であって、
前記実装端子の位置に関する端子位置情報により、前記実装端子の少なくとも三つと接する面である基準平面を作成する基準平面作成部と、
前記基準平面を基準にして、前記電子部品の前記上面及び前記下面の少なくとも一方の高さに関する高さ情報を検出する高さ情報検出部と、を備える、電子部品評価装置。
実装基板に向かう側の面である下面と、平坦な主面を有する上面と、前記実装基板への実装に使用される複数の実装端子と、を備える電子部品の形状を評価する電子部品評価プログラムであって、
コンピュータに、
前記実装端子の位置に関する端子位置情報により、前記実装端子の少なくとも三つと接する面である基準平面を作成する基準平面作成機能と、
前記基準平面を基準にして、前記電子部品の前記上面及び前記下面の少なくとも一方の高さに関する高さ情報を検出する高さ情報検出機能と、を実現させる、電子部品評価プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、本実施形態の図面は、本発明の構成や機構及び動作を説明するための模式的な図であり、その寸法形状や縦横比等を正確に示すものとは限らない。さらに、本実施形態においては、
図1に示したx,y,z座標軸のz方向を「上」と記し、z軸のz方向と反対の図示しない−z方向を「下」と記す。−z方向は、電子部品が実装される実装基板に向かう方向である。したがって、
図1でいう上や下の語句は、実装された電子部品の上下に一致する。
【0013】
[概要]
本発明の一実施形態の電子部品評価方法は、実装基板に向かう側の面である下面と、平坦な主面を有する上面と、実装基板への実装に使用される複数の実装端子と、を備える電子部品の形状を評価する電子部品評価方法である。また、本実施形態の電子部品評価方法は、実装端子の位置に関する端子位置情報により、実装端子の少なくとも一部と接する面である基準平面を作成する基準平面作成工程と、基準平面を基準にして、電子部品の上面及び下面の少なくとも一方の高さに関する高さ情報を検出する高さ情報検出工程と、を含んでいる。
【0014】
ここで、電子部品とは、電子回路を構成する複数の部品を封止してパッケージ化した素子本体に、素子本体を実装基板に機械的、電気的に接続するための端子が設けられたものをいう。電子部品と機械的、電気的に接続することを実装といい、実装基板は、電子部品と機械的、電気的に接続される基板をいう。実装端子は、電子部品を実装基板に実装することに使用される端子であって、例えば巻き線の端部引き出し線の絡げ部となる端子等は除かれる。
高さに関する高さ情報は、基準平面から電子部品の上面または下面までの長さや、この長さに関する情報をいう。高さ情報は、上面または下面の複数の点で測定された高さの差分によって表される傾きの大きさ、さらには傾きの高低の方向であってもよい。
【0015】
本実施形態の電子部品の評価方法で評価される電子部品の形状は、例えば、電子部品の高さの他、上面及び下面の傾きの方向や大きさをいう。実装端子の位置に関する端子位置情報は、実装端子の高さや、実装端子の高さと位置との組み合わせをいう。さらに、実装端子の少なくとも三つと接する面である基準平面は、少なくとも三つの実装端子上の測定点と接する面をいい、このような基準平面は、電子部品を実装した場合の仮想的な実装面である。基準平面を作成するとは、このような平面を表す演算式、あるいは平面に含まれる点を表すデータの集合を作成することによって行われる。なお、「接する」の語句は、実装端子上の点が基準平面上にあることをいい、基準平面よりも上または下にあることを除く。
【0016】
[電子部品]
図1は、本実施形態の説明に用いる電子部品100の斜視図である。
図2は電子部品100の正面図、
図3は電子部品100の上面図、
図4は電子部品100の下面図である。
図4中に示す測定点p1から測定点p8、測定点q1から測定点q4は、後述する3Dカメラ2による高さ測定の対象となる測定点である。
本実施形態の電子部品100は、外周にコイル20が巻回される巻回部(図示せず)を有するボビン10と、ボビン10を挟むように上下に配設されるフェライトによるE型の第1コア部材31及び第2コア部材32と、コイル20の巻線端部(図示せず)が接続されて実装基板110に実装される複数の実装端子50と、複数の実装端子50が並列して保持される絶縁材料による端子保持部60とで構成されている。
【0017】
第1コア部材31は、外脚部31B、外脚部31C及び外脚部31Bと外脚部31Cとを接続する板状の上基部31Dを備えている。第2コア部材32は、外脚部32B、外脚部32C及び外脚部32Bと外脚部32Cとを接続する板状の下基部32D(
図4)を備えている。上基部31Dは、本実施形態の上面である。下基部32Dは上面に対する平坦な主面を有する下面である。
【0018】
第1コア部材31及び第2コア部材32は、図中上下方向からボビン10及びベース部材80、81を挟み込むようにして組み合わされている。ベース部材80、81は、絶縁性を有する樹脂材料により一体成形されている。実装端子50は、押さえ部65によって実装基板110に対して押えられ、実装基板に形成されたプリント配線51と電気的に接続される。
なお、
図1から
図4において、ベース部材81は、ベース部材80よりも
図1中のx方向に長くなっている。
【0019】
ボビン10は、インダクタやトランスに利用される巻回部縦置きタイプのものであり、円筒状の図示しない巻回部と、巻回部の図中上端部に配された外縁が円形状の鍔部13Aとを備えている。巻回部の外周には複数種類の1次巻線及び2次巻線で構成されるコイル20が巻回される。また、巻回部の図中下端部のベース部材80は外縁が矩形状の平板であり、巻回部の下側の鍔部を兼ねている。上基部31Dには幅細部33が形成されていて、鍔部13Aは幅細部33と係り合い、第1コア部材31、第2コア部材32にコイル20を嵌め合わせ、ボビン10を第1コア部材31、第2コア部材32に組みつけている。
【0020】
[電子部品評価装置]
図5は、本実施形態の電子部品評価装置4を含む電子部品評価システム1を示す図である。
図6は、
図5中の3Dカメラ2を説明するための図である。
図5に示す電子部品評価装置4は、
図1から
図4に示す電子部品100の形状を評価する電子部品評価装置である。このような電子部品評価システム1は、三次元カメラ(以下、3Dカメラと記す)2及び出力装置5と共に電子部品評価システム1を構成している。
【0021】
電子部品評価装置4は、
図5に示すように、入力部41、情報変換部42、基準平面作成部46、基準平面判定部47、高さ情報検出部である高さ検出部48及び良・不良判定部49を有している。高さ検出部48は、基準平面を基準にして、電子部品100の下基部32D及び上基部31Dの主面(以下、単に「上基部31D」と記す)の少なくとも一方の高さに関する情報を検出する。
図6に示すように、3Dカメラ2は、基台62と天板61とを有するテーブル上に置かれた電子部品100を天板61の上方から撮像する。天板61は、例えば一方向に移動可能に構成されていてもよく、移動方向に配置された複数の電子部品100を順次撮像、検査するようにしてもよい。このような構成により、本実施形態は、電子部品100の検査を流れ作業により短時間で実行することができる。天板61の高さは昇降ネジ63によって変更可能である。このため、3Dカメラ2は、電子部品100の高さによらず電子部品100の測定点に焦点を合わせることが可能になる。
【0022】
[3Dカメラ]
電子部品100は、上基部31Dが天板61に接するように置かれ、下基部32Dが上方の3Dカメラ2の側に向かっている。3Dカメラ2は、電子部品100に対して斜めに縞状のライン光を投光する光源25、投光されたライン光を下基部32D上に集光する投光レンズユニット26、下基部32D上で反射されたライン光を集光し、ハーフミラー23に導く集光レンズユニット24、ハーフミラー23に導かれた光により結像する相補型のMOS(metal oxide semiconductor)センサ(Complementary MOS:CMOSセンサ)21a、21b及びハーフミラー23とCMOSセンサ21a、21bとの間で光を平行光にする結像レンズ22a、22bを備えている。3Dカメラ2が二つのCMOSセンサ21a、21bを備えるのは、一方で電子部品100全体が撮像できる低倍率の画像を生成し、他方で電子部品100の部分が観察できる高倍率の画像を生成するためである。本実施形態では、CMOSセンサ21aの側で高倍率画像を撮像するものとする。
また、このようなシステムは、3Dカメラ2を二つ備えて二方向から電子部品100を撮像し、画像において影になる部分が生じないようにしてもよい。
【0023】
上記構成により、CMOSセンサ21a、21b上で結像された画像は、撮像データとして入力部41を介して電子部品評価装置4の情報変換部42に出力される。ただし、本実施形態の3Dカメラ2は、このように画像データを出力する構成に限定されるものではない。例えば、3Dカメラ2は、撮像データ中の測定点の座標を求める図示しない測距部を備え、測距部によって測定された位置情報を電子部品評価装置4に出力するものであってもよい。
【0024】
また、本実施形態は、TOF(Time Of Flight)方式によって3Dカメラ2から実装端子50の測定点p1から測定点p8、下基部32Dの測定点q1から測定点q4までの距離を測定するものとする。このような3Dカメラ2においては、図示しない測距部が、光源25が電子部品100にライン光を投光してからその反射光がCMOSセンサ21a、21bに撮像(受光)されるまでの時間を所定の数の画素ごとに検出する。本実施形態では、3Dカメラ2は縞状にライン光を投光し、各ライン光に対応する時間をライン光に対応付けて記録するものとする。
【0025】
検出された時間は、入力部41を介して情報変換部42に入力されている。ただし、本実施形態は、ライン光の投光から反射光の受光までの時間を電子部品評価装置4に入力する構成に限定されず、図示しない測距部が時間を距離に変換し、電子部品評価装置4に出力するようにしてもよい。
なお、TOF方式では、ライン光を高速のパルス光とし、投射光に対する反射光の位相遅れを計測するようにしてもよい。ただし、本実施形態は、TOF方式を使って高さ情報を得ることに限定されず、撮像データから高さを得るものであれば、三角測距方式等の他の方法によって高さ情報を求めるものであってもよい。
【0026】
(情報変換部)
入力部41は、上記のようにして測定された測定点p1から測定点p8及び測定点q1から測定点q4の高さ情報を3Dカメラ2から入力する。情報変換部42は、例えば、撮像データから実装端子50の各々エッジを検出し、検出されたエッジから実装端子50の外郭を検出する。そして、外郭の予め定められた位置を撮影した画素から予め定められた距離及び方向に移動した位置にある画素によって撮像された実装端子50上の点が測定点p1から測定点p8であると判断するようにしてもよい。なお、本実施形態は、
図4に示すように、測定点p1から測定点p8をいずれも実装端子50の中心点としているが、このような構成に限定されるものでなく、測定点p1から測定点p8を実装端子50の端部あるいは最も高さの高いまたは低い点としてもよい。
【0027】
情報変換部42は、同様に、撮像データから下基部32Dのエッジを検出し、検出されたエッジから第1コア部材31の外郭を検出する。そして、外郭の予め定められた位置を撮影した画素から予め定められた距離及び方向に移動した位置にある画素によって撮像された下基部32D上の点が測定点q1から測定点q4であると判断するようにしてもよい。測定点q1から測定点q4は、
図4に示す箇所に限定されず、下基部32Dの任意の点であってもよいが、下基部32Dの傾きを検出するためには下基部32Dにおける縁部分であることが好ましい。
【0028】
そして、情報変換部42は、測定点となる画素の方向及び3Dカメラ2から画素までの距離により測定点の座標を算出する。また、情報変換部42は、縞状のライン光のうち、測定点に投光されたライン光の投光から受光までの時間差によって生じる位相差を算出して電子部品100の表面からCMOSセンサ21aまでの距離hを算出する。距離hは、本実施形態の下面位置情報に相当する。なお、情報変換部42は、測定点q1から測定点q4に関する演算処理において、ベース部材80及びベース部材81の裏面(ボビン10と一体化している部分)をマスクするようにしてもよい。なお、マスクするとは、ベース部材80及びベース部材81の裏面を演算の処理の対象外として、下基部32Dの表面のみを演算の対象とすることをいう。
【0029】
(基準平面作成部)
基準平面作成部46は、3Dカメラ2によって撮像された撮像データから、実装端子50の位置情報(端子位置情報)を取得して基準平面を作成する。本実施形態の基準平面作成部46は、実装端子50上の測定点p1から測定点p8のうちの少なくとも三つの点(選択測定点)の位置情報(二次元座標及び高さ)により仮想的な基準平面を作成する。三つの選択測定点は、それぞれ三つの実装端子50上の位置であれば任意の点でよく、例えば、実装端子50上の中心やエッジとすることができる。また、三つの実装端子50上の選択測定点は、それぞれが実装端子50において同じ位置にあるものであってもよいし、実装端子50において最も高い位置にある点、または最も低い位置にある点等、異なる点であってもよい。
【0030】
(基準平面判定部)
基準平面判定部47は、基準平面作成部46によって作成された複数の基準平面が基準平面であるか、または無効平面であるかを判定する。ここで、基準平面は、本実施形態において電子部品100が適正に実装された実装基板の面を模擬したものである。基準平面は一つではない場合もあり、電子部品100の置かれる方向や置かれた状態の重心の位置等によって複数存在し得る。無効平面は、全ての基準平面から基準平面と判定された基準平面を除いたものである。
【0031】
基準平面判定部47は、基準平面作成部46によって作成された複数の基準平面のそれぞれから選択測定点を有する実装端子50を除く他の実装端子50の測定点までの高さ情報を計算する。その結果、一つの基準平面について、この基準平面よりも測定点が電子部品100から遠い位置にある場合、つまり実装端子50がその基準平面よりも
図1に示す−z方向に突出する(以下、「下方にある」と記す)という演算結果を得た場合、基準平面判定部47は、この基準平面を無効平面であると判定する。無効平面であると判定された基準平面は、基準平面から排除される。
このような処理は、測定点p1から測定点p8が基準平面よりも下方にあるとすると、電子部品100の端子が実装された際に端子が実装面に埋まることになるからである。本実施形態は、
図1(a)に示したように実装基板に面接触する実装端子50に適用されるので、実装端子50が実装面に埋まることは起こり得ないとして基準平面が無効平面であると判定している。
言い換えれば、実際の実装においては、端子を実装面に埋め込むことは不可能であるので、測定点p1から測定点p8のいずれかが基準平面よりも下方にあるとの演算結果が得られた基準平面は実際の実装面と相違する。実状に則した実装面を求めるため、このような結果を得た基準平面は基準平面から排除される。
【0032】
本実施形態では、以降、測定点p1から測定点p8が基準平面よりも下方にあることを高さ情報が示す場合、この測定点に対応する実装端子50が基準平面よりも低いとも記す。また、反対に、本実施形態では、測定点が基準平面よりも上方にあることを高さ情報が示す場合、測定点に対応する実装端子50が基準平面よりも高いとも記す。実装端子50が基準平面よりも高い場合、実装端子50は電子部品100と実装面との間で「浮いた」状態になっている。
なお、上記の説明は、
図1に示すx,y,z座標軸の−z方向を下としている。本実施形態では電子部品100の下基部32Dの側を上に向けて高さを測定しているから、測定時には実装端子50が基準平面よりも高い位置になる場合、この基準平面が無効であると判定される。
【0033】
また、本実施形態は、基準平面判定部47の演算に係る負荷を軽減するため、基準平面の作成に先立ってプレ処理を実行してもよい。プレ処理とは、測定対象の電子部品100において規定される位置と、電子部品100の設計上規定される位置との関係により、予め無効、有効の判定の対象となる基準平面を選択する処理である。具体的には、例えば、測定点p1から測定点p8のうちの三つを選択して仮想的な三角形を作成する。そして、作成された三角形に電子部品100の設計上の重心点が含まれるか否か判定する。三角形に重心点が含まれない場合、このような三角形は設計上の位置情報との相違が大きいとして無効と判定される。プレ処理によれば、基準平面判定部47の判定の対象となる基準平面の数を少なくし、基準平面判定部47の処理に係る負荷を軽減することができる。
【0034】
(高さ検出部)
高さ検出部48は、情報変換部42によって生成された下基部32Dの複数の測定点q1から測定点q4の位置に関する下面位置情報を取得する。そして、下面位置情報から、基準平面を基準にした下基部32Dの高さを示す高さ情報検出する。高さ情報の検出は、例えば、測定において上方に向かう下基部32Dの測定点q1等とCMOSセンサ21aとの距離h1から基準平面とCMOSセンサ21aとの距離h2を減算することによって行うことができる。また、本実施形態では、上基部31Dの実装時の基準平面を基準にした高さを、下基部32Dの高さに第1コア部材31、第2コア部材32の設計上の高さの合計を足し合わせたものとしてもよい。
また、本実施形態は、後述するように、下基部32Dの高さを測定点q1から測定点q4のうちの少なくとも二つについて測定し、二つの測定点の高さの差分を下基部32Dの傾きとすることができる。このとき、本実施形態では、上基部31Dも下基部32Dと同様の傾きをもつものとする。
【0035】
つまり、電子部品100において、第1コア部材31、第2コア部材32及びボビン10は形状のばらつきが充分少なく、また、組み付け精度も高いことが知られている。このため、本実施形態は、電子部品100の基準面平面を基準にした下基部32Dの高さが、上基部31Dの高さを検査に充分な程度に反映しているとみなす。
【0036】
(良・不良判定部)
良・不良判定部49は、高さ情報により、電子部品100の形状に関する要素を評価する。本実施形態では、良・不良判定部49が一つの電子部品100において測定された高さ情報のうちの最大値と最小値との差分値により電子部品100の上基部31Dまたは下基部32D傾きの大きさを評価する。例えば、本実施形態は、基準平面との差分値が最大になる測定点(例えば測定点q1とする)の高さ(最大値)と最小になる測定点(例えば測定点q4とする)の高さ(最小値)との差分値を算出することによって上基部31Dの傾きの大きさを求めることができる。
また、良・不良判定部49は、電子部品の傾きが予め予め定められている許容範囲以上である場合、この電子部品100を不良品と判定する。また、良・不良判定部49は、差分値が予め予め定められている許容範囲内にある場合、この電子部品100を良品と判定する。ただし、本実施形態は、このような構成に限定されるものでなく、例えば、基準平面を基準にした測定点q1から測定点q4の高さの平均値により電子部品100の良・不良を判定するようにしてもよい。また、例えば、基準平面を基準にした測定点q1から測定点q4のうちの最大値または最小値により電子部品100の良・不良を判定するようにしてもよい。
なお、本実施形態は、充分なマージンを持って電子部品100の良・不良を判定するため、一つの電子部品100について複数の基準平面が得られた場合、複数の基準平面の各々を基準にして測定点q1から測定点q4の高さを全て測定する。そして、測定された高さのうちの最小値と最大値との差分値により電子部品100の良・不良を判定する。
このようにすれば、電子部品100がとり得る傾きの程度が最も大きい場合を基準にして電子部品100の良否を判定することができるので、検査の信頼性を高めることができる。
【0037】
さらに、良・不良判定部49は、測定点q1から測定点q4の少なくとも二つの測定点の高さ情報と、測定点同士の位置関係により下基部32Dまたは上基部31Dの傾きの方向を評価することができる。具体的には、例えば測定点q1と他の測定点q2との高さの相違δ1が算出された場合、良・不良判定部49は、下基部32Dにおいて測定点q1と測定点q2とを結ぶ直線方向に傾きδ1が生じていると判定する。また、例えば測定点q2と他の測定点q3との高さの相違δ2が算出された場合、良・不良判定部49は、下基部32Dにおいて測定点q2と測定点q3とを結ぶ直線方向に傾きδ2が生じていると判定する。このようにすれば、本実施形態は、電子部品100の下基部32Dの傾きを方向ごとに算出することができる。また、本実施形態は、上基部31Dにも下基部32Dの同じ方向に同様の傾きが発生しているものとみなすようにしてもよい。
【0038】
以上説明した電子部品評価装置4は、上記の入力部41、情報変換部42、基準平面作成部46、基準平面判定部47、高さ検出部48及び良・不良判定部49の機能全般を制御するCPU(Central Processing Unit)、CPUの制御に使用されるデータやプログラムを記憶する、あるいはCPUのワークメモリとして使用されるメモリ装置等のハードウェア装置と、ハードウェア装置を動作させるソフトウェアと、を有している。ハードウェア装置は、電子部品評価装置4の機能に専用のものであってもよいし、汎用的なパーソナルコンピュータ(Personal Computer:PC)を構成するものであってもよい。
【0039】
電子部品評価装置4に汎用的なPCを用いる場合、情報変換部42、基準平面作成部46、基準平面判定部47、高さ検出部48及び良・不良判定部49は、電子部品100の形状を評価する電子部品評価プログラムによって実現される。このようなプログラムは、コンピュータに、実装端子50の位置に関する端子位置情報により、実装端子50の少なくとも三つと接する面である基準平面を作成する基準平面作成機能(基準平面作成部46)と、基準平面を基準にして、電子部品の上面及び下面の少なくとも一方の高さに関する高さ情報を検出する高さ検出機能(基準平面判定部47、高さ検出部48)と、を実現させる。
【0040】
出力装置5は、良・不良判定部によって判定された結果が出力される装置である。このような出力装置5は、例えば、評価対象となる電子部品100の測定面(3Dカメラ2の撮像データ)や、良(OK)、不良(NG)、再測定(ER)の判定結果を表示するデスプレィ画面を備えている。また、出力装置5は、電子部品評価装置4のオン、オフ、さらには電子部品100の撮像から良、不良の判定までを操作する操作パネルを備えている。
さらに、本実施形態は、電子部品100の高さに関する情報から電子部品100の形状を評価する過程において取得されたデータを利用して、電子部品100の上基部31D、下基部32D傾き以外の項目を評価することも可能である。傾き以外の評価項目としては、例えば、実装端子50の高さ、屈曲部分の角度及び実装端子50間の距離等が考えられる。さらに、出力装置5は、このような評価項目についても予め定められている設計値と比較して、良、不良を判定するようにしてもよい。
【0041】
[電子部品評価方法]
次に、以上説明した電子部品評価システム1によって行われる電子部品評価方法を説明する。
図7は、本実施形態の電子部品100の評価方法を説明するためのフローチャートである。
図7のフローチャートは、実装端子50の位置に関する端子位置情報により、実装端子50の少なくとも三つと接する面である基準平面を作成する基準平面作成工程(ステップS602)と、基準平面を基準にして、電子部品100の上基部31Dと下基部32Dとの間の長さである高さを検出する高さ検出工程(ステップS601、S602、S603、S604、S605)を含んでいる。このような処理は、電子部品評価装置4において電子部品評価プログラムによって実行される。
【0042】
具体的には、ステップS601において、入力部41が3Dカメラ2から撮像データと共に投光から受光までの時間データを入力する。情報変換部42は撮像データからn個の端子、ここでは8個の実装端子50の測定点p1から測定点p8の時間データを取得し、時間データを下面位置情報に変換する。また、情報変換部42は、測定点q1から測定点q4の時間データを取得し、時間データを下面位置情報に変換する(ステップS602)。
このとき、3Dカメラ2は測定点p1から測定点p8と測定点q1から測定点q4とを同時に撮像することが好ましい。ただし、本実施形態は、測定点p1から測定点p8と測定点q1から測定点q4とを別に撮像して各の画像から位置情報を取得するようにしてもよい。
【0043】
次に、基準平面作成部46は、測定点p1から測定点p8のうちの三つの選択測定点により基準平面を作成する。本実施形態では、
8C
3の組み合わせにより56個の基準平面が作成される(ステップS602)。
【0044】
次に、基準平面判定部47は、作成された56個の基準平面を基準にして8つの実装端子50の高さを計算する(ステップS603)。そして、計算した高さにより、実装時に実装端子50の少なくとも一つよりも上方にある基準平面を無効な基準平面であると判定する。一方、基準平面判定部47は、実装時に実装端子50に接する、または実装端子50よりも下方にある基準平面を有効な基準平面であると判定する(ステップS604)。高さ検出部48は、一つの電子部品100について有効な基準平面を基準にして測定点q1から測定点q4の高さを全て算出する。そして、算出された高さのうちの最小値と最大値との差分値を算出する。
【0045】
次に、良・不良判定部49は、算出された差分値が許容範囲を超える場合に電子部品100を不良品(NG)と判定する。また、差分値が許容範囲内に収まる場合に電子部品100を良品(OK)と判定する(ステップS606)。良・不良判定部49は、電子部品100の良品、不良品の判定結果を出力装置5に出力して表示させる(ステップS607)。
【0046】
本発明者らは、以上説明した本実施形態の電子部品の評価方法によって一つの電子部品において測定された測定点の高さの最大値と最小値との差分を測定した。最大値と最小値の値は、一つの電子部品について複数の基準平面が存在する場合、全ての基準平面を基準にした測定点の高さのうちの最大値と最小値である。そして、本発明者らは、本実施形態の電子部品の評価方法によって高さを測定した電子部品の高さの最大値と最小値とを、表面形状計測システムTMS−100TopMap Metro.Lab(製品名:ポリテックジャパン(株)製)を使って測定した。本実施形態の電子部品の評価方法の測定値と表面形状計測システムTMS−100の測定値及びその傾向は凡そ一致しており、両者の誤差は1/1000mm台であった。
【0047】
以上のことから、本実施形態の電子部品評価方法及び電子部品評価装置は、既存の計測器と同等の測定精度を得ることが分かる。また、TMSは、専用の載置台に測定対象物をセットして計測を行うので、対象物を工程から抜き出して計測器にセットすることが必要になる。このような計測器による計測は、時間や設備の観点から製造された電子部品の全数を計測することには不向きである。
一方、本実施は、電子部品をカメラで撮像した撮像データから測定点の高さの測定ができるため、電子部品に接触することなく電子部品の高さを測定することができる。また、本実施形態は、電子部品の搬送路上にカメラを設けることによって実現することができる。このため、本実施形態の電子部品評価方法及び電子部品評価装置は、測定に係る設備が小さく、しかも短時間で測定ができるので、電子部品の全数を検査することができる。しかも本実施形態の電子部品評価方法及び電子部品評価装置は、電子部品に接触することなく測定ができるので、測定時に電子部品の上面または下面の傾きが変化することがなく電子部品の高さを正確に測定することができる。
さらに、本実施形態の電子部品評価方法及び電子部品評価装置は、電子部品が実装された際の傾きを検出することができるので、実装後に接続不良となる電子部品を実装に先んじて検出し、実装基板に複数の電子部品を搭載した回路が不良品となることを防ぐことができる。
【0048】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)実装基板に向かう側の面である下面と、平坦な主面を有する上面と、前記実装基板への実装に使用される複数の実装端子と、を備える電子部品の形状を評価する電子部品評価方法であって、前記実装端子の位置に関する端子位置情報により、前記実装端子の少なくとも三つと接する面である基準平面を作成する基準平面作成工程と、前記基準平面を基準にして、前記電子部品の前記上面及び前記下面の少なくとも一方の高さに関する高さ情報を検出する高さ情報検出工程と、を含む、電子部品評価方法。
(2)前記高さ検出工程は、前記電子部品を前記下面の側から撮像した撮像データから、前記下面の複数の箇所の位置に関する下面位置情報を取得する下面位置情報取得工程を含み、前記下面位置情報を、基準平面を基準にして変換し、前記高さ情報を検出する、(1)の電子部品評価方法。
(3)前記基準平面作成工程は、前記撮像データから、前記端子位置情報を取得して前記基準平面を作成する、(2)の電子部品評価方法。
(4)前記高さ情報により、前記電子部品の形状に関する要素を評価する評価工程をさらに含む、(1)から(3)のいずれか一つの電子部品評価方法。
(5)前記評価工程は、一つの前記電子部品の前記下面において測定された前記高さ情報のうちの最大値と最小値との差分値により前記上面または前記下面の傾きの大きさを評価する、(4)の電子部品評価方法。
(6)前記評価工程は、一つの前記電子部品の前記下面の少なくとも二点において測定された前記高さ情報と、前記二点同士の位置関係により前記上面または前記下面の傾きの方向を評価する、(4)の電子部品評価方法。
(7)実装基板に向かう側の面である下面と、平坦な主面を有する上面と、前記実装基板への実装に使用される複数の実装端子と、を備える電子部品の形状を評価する電子部品評価装置であって、前記実装端子の位置に関する端子位置情報により、前記実装端子の少なくとも三つと接する面である基準平面を作成する基準平面作成部と、前記基準平面を基準にして、前記電子部品の前記上面及び前記下面の少なくとも一方の高さに関する高さ情報を検出する高さ情報検出部と、を備える、電子部品評価装置。
(8)実装基板に向かう側の面である下面と、平坦な主面を有する上面と、前記実装基板への実装に使用される複数の実装端子と、を備える電子部品の形状を評価する電子部品評価プログラムであって、コンピュータに、前記実装端子の位置に関する端子位置情報により、前記実装端子の少なくとも三つと接する面である基準平面を作成する基準平面作成機能と、前記基準平面を基準にして、前記電子部品の前記上面及び前記下面の少なくとも一方の高さに関する高さ情報を検出する高さ情報検出機能と、を実現させる、電子部品評価プログラム。
のフローチャートは、実装端子50の位置に関する端子位置情報により、実装端子50の少なくとも三つと接する面である基準平面を作成する基準平面作成工程(ステップS602)と、基準平面を基準にして、電子部品100の上基部31D
を検出する高さ検出工程(ステップS601、S602、S603、S604、S605)を含んでいる。このような処理は、電子部品評価装置4において電子部品評価プログラムによって実行される。