(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-187085(P2020-187085A)
(43)【公開日】2020年11月19日
(54)【発明の名称】磁気センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20201023BHJP
G01R 33/09 20060101ALI20201023BHJP
H01L 43/02 20060101ALI20201023BHJP
H01L 43/08 20060101ALI20201023BHJP
【FI】
G01R33/02 V
G01R33/09
H01L43/02 Z
H01L43/08 B
H01L43/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-93488(P2019-93488)
(22)【出願日】2019年5月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】亀野 誠
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 郁人
(72)【発明者】
【氏名】笠島 多聞
【テーマコード(参考)】
2G017
5F092
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017AB08
2G017AC07
2G017AD55
2G017BA08
5F092AA01
5F092AA05
5F092AA11
5F092AA14
5F092AB01
5F092AC06
5F092BB01
5F092BB55
5F092BC42
5F092BC43
5F092EA04
5F092FA08
(57)【要約】
【課題】高温プロセスが必要なMEMS構造を用いることなく、磁路を機械的に変位させることによって1/fノイズを低減することが可能な磁気センサを提供する。
【解決手段】本発明による磁気センサは、外部磁性体21,22との間の磁気ギャップG1によって形成される磁路上に設けられた感磁素子Rを含むセンサチップ10と、圧電体層32とバイパス磁性体層31を有する機械的駆動部30とを備える。機械的駆動部30は、外部磁性体22に固定された固定領域30Aと、外部磁性体22に固定されていない変位領域30Bとを有し、変位領域30Bは、磁気ギャップG1と重なりを有している本発明によれば、MEMS構造とは異なり、機械的駆動部を第2の外部磁性体に固定した構造を有していることから、感磁素子を形成した後に高温プロセスを行う必要がない。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の外部磁性体と、
前記第1の外部磁性体と前記第2の外部磁性体との間の第1の磁気ギャップによって形成される磁路上に設けられた感磁素子を含むセンサチップと、
前記第2の外部磁性体に固定され、圧電体層とバイパス磁性体層を有する機械的駆動部と、を備え、
前記機械的駆動部は、前記第2の外部磁性体に固定された固定領域と、前記第2の外部磁性体に固定されていない変位領域とを有し、
前記変位領域は、前記第1の磁気ギャップと重なりを有していることを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】
前記センサチップは、第1及び第2の磁性体層をさらに含み、
前記感磁素子は、前記第1の磁性体層と前記第2の磁性体層との間の第2の磁気ギャップによって形成される磁路上に設けられ、
前記第1の外部磁性体は前記第1の磁性体層と重なり、
前記第2の外部磁性体は前記第2の磁性体層と重なることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記第1及び2の外部磁性体は、前記感磁素子の感磁方向を長手方向とし、
前記機械的駆動部の前記感磁方向における長さは、前記第2の外部磁性体の前記感磁方向における長さよりも長いことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記機械的駆動部は、前記バイパス磁性体層を構成する金属箔の表面に前記圧電体層が形成された構造を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気センサに関し、特に、磁路を機械的に変位させることによって1/fノイズを低減した磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、感磁素子を用いた磁気センサは様々な分野で利用されているが、極めて微弱な磁界を検出するためには、S/N比の高い磁気センサが必要となる。ここで、磁気センサのS/N比を低下させる要因として、1/fノイズが挙げられる。1/fノイズは、測定対象となる磁界の周波数成分が低いほど顕著となることから、例えば1kHz以下といった低周波領域の磁界を高感度に検出するためには、1/fノイズを低減させることが重要となる。
【0003】
磁気センサにおいて1/fノイズを低減させる方法としては、非特許文献1〜3に記載されているように、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いて磁路を機械的に変位させることによって、測定対象となる磁界を振幅変調する方法が提案されている。
【0004】
例えば非特許文献1には、
図12に示すように、磁路1と磁路2の間の磁気ギャップにGMR素子4を配置するとともに、MEMS構造を有する可変磁路3によってGMR素子4を覆い、可変磁路3を上下に駆動することによってGMR素子4を通過する磁束の割合を変化させる方法が提案されている。これによれば、可変磁路3を高速に駆動することにより、測定対象となる磁界が振幅変調されることから、1/fノイズを低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Hybrid Integration of Magnetoresistive Sensors with MEMS as a Strategy to Detect Ultra-Low Magnetic Fields, Micromachines 2016, 7, 88
【非特許文献2】Hybrid GMR Sensor Detecting 950 pT/sqrt(Hz) at 1 Hz and Room Temperature, Sensors 2018, 18, 790
【非特許文献3】FABRICATION OF MICROMECHANICALLY-MODULATED MGO MAGNETIC TUNNEL JUNCTION SENSORS, Gerardo Jaramillo, Mei Lin Chan, Andre Guedes, David A. Horsley
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1〜3に記載されたMEMS構造は形状が複雑であることから、必要なプロセス数が多い、製造コストが高い、歩留まりが低い、リードタイムが長いという問題があった。しかも、非特許文献1〜3に記載されたMEMS構造を得るためには、ウェーハ上にMR素子などの感磁素子を形成した後、スパッタリングやミリングなどの高温プロセスを行う必要があることから、高温プロセスによって感磁素子の特性が劣化するという問題があった。
【0007】
したがって、本発明は、MEMS構造を用いることなく、磁路を機械的に変位させることによって1/fノイズを低減することが可能な磁気センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による磁気センサは、第1及び第2の外部磁性体と、第1の外部磁性体と第2の外部磁性体との間の第1の磁気ギャップによって形成される磁路上に設けられた感磁素子を含むセンサチップと、第2の外部磁性体に固定され、圧電体層とバイパス磁性体層を有する機械的駆動部とを備え、機械的駆動部は、第2の外部磁性体に固定された固定領域と、第2の外部磁性体に固定されていない変位領域とを有し、変位領域は、第1の磁気ギャップと重なりを有していることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、機械的駆動部を第2の外部磁性体に固定した構造を有している。このため、MEMS構造を用いた場合とは異なり、必要なプロセス数を少なくすることができ、製造コストを下げることができ、歩留まりを高めることができ、リードタイムを短縮することが可能となる。しかも、感磁素子を形成した後に高温プロセスを行う必要がないことから、高温プロセスによる感磁素子の特性劣化を防止しつつ、1/fノイズを低減することが可能となる。しかも、機械的駆動部は後付け部品であることから、センサチップと機械的駆動部を別個に作製することができ、形状・構造などの仕様変更も容易である。さらに、機械的駆動部をセンサチップではなく外部磁性体に固定していることから、より大型の機械的駆動部を用いることができ、これにより感磁素子の出力信号をより大きく変調することが可能となる。
【0010】
本発明において、センサチップは第1及び第2の磁性体層をさらに含み、感磁素子は、第1の磁性体層と第2の磁性体層との間の第2の磁気ギャップによって形成される磁路上に設けられ、第1の外部磁性体は第1の磁性体層と重なり、第2の外部磁性体は第2の磁性体層と重なるものであっても構わない。これによれば、感磁素子に磁束をより集中させることができるため、より高い検出感度を得ることが可能となる。
【0011】
本発明において、第1及び2の外部磁性体は、感磁素子の感磁方向を長手方向とし、機械的駆動部の感磁方向における長さは、第2の外部磁性体の感磁方向における長さよりも長くても構わない。これによれば、機械的駆動部の変位領域をより大きく変位させることが可能となる。
【0012】
本発明において、機械的駆動部は、バイパス磁性体層を構成する金属箔の表面に圧電体層が形成された構造を有するものであっても構わない。これによれば、高い変調周波数を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明によれば、MEMS構造を用いた場合とは異なり、必要なプロセス数を少なくすることができ、製造コストを下げることができ、歩留まりを高めることができ、リードタイムを短縮することが可能となる。しかも、高温プロセスも不要となる。これにより、MEMS構造を用いることなく、磁路を機械的に変位させることによって1/fノイズを低減することが可能な磁気センサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態による磁気センサの外観を示す略斜視図である。
【
図2】
図2は、磁気センサから機械的駆動部30を取り外した状態を示す略斜視図である。
【
図3】
図3は、磁気センサから第1及び第2の外部磁性体21,22を取り外した状態を示す略斜視図である。
【
図4】
図4は、センサチップ10から磁性体層M1,M2を除去した状態を示す略斜視図である。
【
図5】
図5は、センサチップ10の主要部のxz断面図である。
【
図6】
図6は、機械的駆動部30の構造を説明するための略断面図である。
【
図7】
図7は、機械的駆動部30と外部磁性体21,22及び感磁素子Rとの位置関係を説明するための略平面図である。
【
図8】
図8は、機械的駆動部30が変位した状態を説明するための略斜視図である。
【
図9】
図9は、変形例による磁気センサの外観を示す略斜視図である。
【
図10】
図10は、機械的駆動部30の構造を説明するための略断面図である。
【
図11】
図11は、電極層33,34に電圧を印加した状態における機械的駆動部30の形状を示す略斜視図である。
【
図12】
図12は、MEMS構造を有する従来の磁気センサの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の好ましい実施形態による磁気センサの外観を示す略斜視図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態による磁気センサは、xz面を主面とする回路基板6と、回路基板6の主面上に載置されたセンサチップ10、並びに、第1及び第2の外部磁性体21,22と、第2の外部磁性体22に固定された機械的駆動部30とを備えている。
図2には、機械的駆動部30を取り外した状態が示されており、第1の外部磁性体21のx方向における先端部と第2の外部磁性体22のx方向における先端部は、第1の磁気ギャップG1を形成している。また、第1及び第2の外部磁性体21,22を取り外した状態である
図3に示すように、センサチップ10はxy面を構成する素子形成面11を有している。
図3に示すように、素子形成面11上には感磁素子R、磁性体層M1,M2、端子電極T11〜T14が形成されている。
【0018】
外部磁性体21,22は、センサチップ10に磁束を集める役割を果たし、いずれもフェライトなどの高透磁率材料によって構成される。外部磁性体21,22は、いずれもx方向を長手方向とする板状体である。センサチップ10とは別部材であり、センサチップ10とともに回路基板6に固定されている。また、外部磁性体21,22の先端部分は、端子電極T11〜T14と干渉しないよう、切り欠きが設けられている。外部磁性体21,22うち、外部磁性体21は磁性体層M1の一部を覆っており、外部磁性体22は磁性体層M2の一部を覆っている。そして、外部磁性体22のxy面に機械的駆動部30が固定されている。機械的駆動部30のx方向における長さは、外部磁性体22のx方向における長さよりも長く、これにより、外部磁性体21,22の先端部分によって構成される磁気ギャップG1及び外部磁性体21の一部は、機械的駆動部30で覆われている。感磁素子Rは、平面視で磁性体層M1,M2によって形成される第2の磁気ギャップG2と重なる位置に設けられている。かかる構成により、x方向の磁界が選択的に集磁され、集磁された磁界が感磁素子Rに印加されることになる。
【0019】
図4は、センサチップ10から磁性体層M1,M2を除去した状態を示す略斜視図である。
【0020】
図4に示すように、感磁素子Rは、素子形成面11上においてy方向に延在し、その一端が配線L1を介して端子電極T11に接続され、他端が配線L2を介して端子電極T12に接続されている。感磁素子Rは、磁束の向きによって電気抵抗が変化する素子であれば特に限定されず、例えばMR素子などを用いることができる。感磁素子Rの固定磁化方向はx方向である。端子電極T13,T14は、図示しない補償コイルに接続される。補償コイルは、感磁素子Rに印加される磁界を打ち消すことによって、いわゆるクローズドループ制御を行うために用いられる。
【0021】
図5は、センサチップ10の主要部のxz断面図である。
【0022】
図5に示すように、センサチップ10の素子形成面11には、感磁素子Rが形成されている。感磁素子Rは絶縁層12で覆われており、絶縁層12の表面には、パーマロイなどからなる磁性体層M1,M2が形成されている。そして、平面視で(z方向から見て)、感磁素子Rは磁性体層M1と磁性体層M2の間に位置する。これにより、磁気ギャップG2を通過する磁界が感磁素子Rに印加される。
【0023】
但し、本発明において、感磁素子Rが平面視で磁性体層M1,M2間に位置することは必須でなく、磁性体層M1,M2からなる磁気ギャップG2によって形成される磁路上に感磁素子Rが配置されていれば足りる。また、磁気ギャップG2の幅と感磁素子Rの幅の関係についても特に限定されない。
図5に示す例では、磁気ギャップG2のx方向における幅Gxが感磁素子Rのx方向における幅Rxよりも狭く、これにより、z方向から見て磁性体層M1,M2と感磁素子Rが重なりOVを有している。
【0024】
図6は、機械的駆動部30の構造を説明するための略断面図である。
【0025】
図6に示すように、機械的駆動部30は、バイパス磁性体層31と圧電構造体Pが積層された構造を有している。
図6に示す例では、バイパス磁性体層31の一部分にのみ圧電構造体Pが積層されているが、バイパス磁性体層31の全体が圧電構造体Pで覆われていても構わない。圧電構造体Pは、PZTなどの圧電材料からなる圧電体層32と、その両面に形成された電極層33,34からなる。バイパス磁性体層31は、パーマロイなどの高透磁率材料からなる金属箔である。PZTなどからなる圧電体層32については、スパッタリング法によって形成された薄膜であることが好ましいが、単層もしくは多層のバルク材でも構わない。このように、バイパス磁性体層31を金属箔とし、圧電体層32を薄膜とすれば、全体の厚さを薄くすることができる。
【0026】
図7は、機械的駆動部30と外部磁性体21,22及び感磁素子Rとの位置関係を説明するための略平面図である。
【0027】
図7に示すように、機械的駆動部30はx方向を長手方向とし、外部磁性体21,22と重なるように配置される。そして、機械的駆動部30のうち、固定領域30Aは接着剤40によって外部磁性体22に固定される。機械的駆動部30のうち、固定領域30A以外の領域、つまり外部磁性体22に固定されていない領域は、変位領域30Bである。
図7に示すように、機械的駆動部30の変位領域30Bは、磁気ギャップG1及び外部磁性体21と重なっている。
【0028】
そして、機械的駆動部30に駆動電圧を印加していない状態においては、機械的駆動部30はz方向に変位しておらず、バイパス磁性体層31と外部磁性体21は接しているか、或いは、非常に近接した状態に保たれる。このため、この状態で外部磁性体21,22を介して取り込まれた磁界のうち、一部は磁性体層M1,M2を介して感磁素子Rに印加されるものの、大部分は、機械的駆動部30に含まれるバイパス磁性体層31をバイパスする。つまり、磁気ギャップG1が磁気的に短絡された状態となる。バイパス磁性体層31によってバイパスされた磁界成分は、感磁素子Rには印加されないため、磁気センサの検出感度は低くなる。
【0029】
一方、機械的駆動部30に駆動電圧を印加すると圧電体層32が収縮するため、
図8に示すように、バイパス磁性体層31と外部磁性体21が離れるよう、z方向に変位する。つまり、変位領域30Bが反るよう変位する。その結果、変位領域30Bに含まれるバイパス磁性体層31は、磁気ギャップG1によって形成される磁路からの距離が離れることから、外部磁性体21,22を介して取り込まれた磁界の大部分が感磁素子Rに印加され、バイパス磁性体層31を経由する磁界は僅かとなる。このため、磁気センサの検出感度は高くなる。
【0030】
したがって、機械的駆動部30に所定の周波数を有する駆動電圧を印加すれば、駆動電圧の周波数をサンプリング周波数として、感磁素子Rの出力信号が振幅変調される。そして、振幅変調された出力信号を復調することにより、1/fノイズが低減された測定結果を得ることが可能となる。一例として、測定対象となる磁界の周波数成分が0.1Hz〜1kHzといった低周波帯である場合、1/fノイズによってS/N比が低下するため、測定対象となる磁界が特に微弱である場合には測定困難となる。しかしながら、本実施形態による磁気センサを用いれば、出力信号を任意のサンプリング周波数にて振幅変調できることから、例えばサンプリング周波数を数kHzに設定することにより、1/fノイズの影響をほとんど除去することが可能となる。
【0031】
サンプリング周波数を高めるためには、機械的駆動部30をより高速に駆動する必要があるが、上述の通り、バイパス磁性体層31を金属箔とし、圧電体層32を薄膜とすれば、全体の厚さが薄くなり軽量化されることから、機械的駆動部30を数kHz以上の周波数で駆動することが可能となる。但し、圧電体層32が薄膜である必要はなく、バルク状であっても構わない。また、バイパス磁性体層31と圧電構造体Pの間に、シリコンなどからなるバネ体を介在させても構わない。
【0032】
しかも、機械的駆動部30は、接着剤40を用いて外部磁性体22に後付けされる別部品であることから、MEMS構造を用いた場合とは異なり、必要なプロセス数を少なくすることができ、製造コストを下げることができ、歩留まりを高めることができ、リードタイムを短縮することが可能となる。しかも、MEMS構造を形成する場合のように、感磁素子Rを形成した後に高温プロセスを行う必要がなく、常温での作業が可能である。このため、高温プロセスによる感磁素子Rの特性劣化も生じない。また、機械的駆動部30が別部品であることから、センサチップ10とは別に設計可能である。このため、本実施形態による磁気センサは、設計変更なども容易である。また、本実施形態においては、機械的駆動部30をセンサチップ10ではなく外部磁性体22に固定していることから、バイパス磁性体層31によってより多くの磁束をバイパスさせることが可能となる。
【0033】
図9は、変形例による磁気センサの外観を示す略斜視図である。
【0034】
図9に示す磁気センサは、機械的駆動部30が外部磁性体22のxz面に固定されている。また、外部磁性体21,22のセンサチップ10側における先端は、センサチップ10に近づくにつれてz方向における厚みが薄くなる形状を有している。その他の構成は、
図1に示した磁気センサと同じである。変形例による磁気センサにおいて使用する機械的駆動部30は、
図10に示すように、バイパス磁性体層31の約半分の領域にのみ圧電構造体Pが積層された構造を有している。
【0035】
図11は、電極層33,34に電圧を印加した状態における機械的駆動部30の形状を示す略斜視図である。
図11に示すように、電極層33,34に電圧を印加すると、圧電体層32が収縮するため、バイパス磁性体層31が厚み方向に変形する。したがって、機械的駆動部30の変位領域30Bによって磁気ギャップG1を覆えば、上述した実施形態による磁気センサと同様、感磁素子Rの出力信号を変調することが可能となる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0037】
例えば、上記実施形態では、接着剤40を用いて機械的駆動部30を外部磁性体22に固定しているが、機械的駆動部30の固定方法がこれに限定されるものではなく、ハンダなど接着性を有する他の部材を用いて固定しても構わない。
【符号の説明】
【0038】
1,2 磁路
3 可変磁路
4 GMR素子
6 回路基板
10 センサチップ
11 素子形成面
12 絶縁層
21,22 外部磁性体
30 機械的駆動部
30A 固定領域
30B 変位領域
31 バイパス磁性体層
32 圧電体層
33,34 電極層
40 接着剤
G1 第1の磁気ギャップ
G2 第2の磁気ギャップ
L1,L2 配線
M1,M2 磁性体層
P 圧電構造体
R 感磁素子
T11〜T14 端子電極