【解決手段】本発明による方法は、航空機空気を航空機空気汚染物質分析装置に通過させるステップと、微細多孔質媒体により空気汚染物質を捕捉するステップと、航空機空気汚染物質収集器への航空機空気の通過を中断するステップと、微細多孔質媒体を加熱するステップと、重量測定センサに、脱着された空気汚染物質を受容するステップと、(f)重量測定センサにより生成された比例共振周波数応答を測定するステップと、(g)コンピュータ可読媒体に格納され、空気汚染物質の濃度を計算することと、空気汚染物質の種類を決定することと、を含む空気汚染物質認識プログラムを実行するステップと、(h)決定した空気汚染物質の濃度及び空気汚染物質の種類を出力するステップとを含む。
別の航空機空気を前記航空機空気汚染物質収集器に通過させる前に、前記ステップ(d)における前記微細多孔質媒体の加熱直前に、前記ステップ(e)及び(f)において前記比例共振周波数応答を参照する前記重量測定センサを自己ゼロ化するステップをさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
前記ステップ(f)が、約1秒〜約4秒間にわたって、約10〜約100回/秒の測定率で前記比例共振周波数応答を測定することを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
前記ステップ(a)が、約10秒〜約60秒間にわたって、約500〜約2000標準立方センチメートル/分の制御流量で航空機空気を前記航空機空気汚染物質収集器に通過させることを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
前記ステップ(d)において前記微細多孔質媒体を加熱する前に、少なくとも約0.2秒間にわたって、前記ステップ(c)における前記航空機空気汚染物質収集器への航空機空気の通過を中断することを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
前記表示装置が、インジケータを備え、前記ステップ(h)が、前記インジケータの点灯によって前記決定した空気汚染物質の種類を表示することを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
前記重量測定センサが、薄膜共振器(TFR)、弾性表面波(SAW)共振器、厚みすべりモード(TSM)共振器(水晶振動子マイクロバランス(QCM)共振器)、弾性プレートモード(APM)共振器、たわみ板波(FPW)共振器、バルク弾性波(BAW)共振器、圧電バイモルフ共振器アレイセンサ、及び音叉センサから選択される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
前記重量測定センサが、2つの活性層を備えた圧電バイモルフ共振器アレイを備え、前記活性層が、空気汚染物質の塊が当該活性層の少なくとも一方に対して追加又は当該活性層の少なくとも一方から除去された場合に屈曲し、前記圧電バイモルフ共振器アレイが、前記活性層の屈曲により比例共振周波数応答を生成して空気汚染物質の種類を分類する、請求項16に記載の方法。
前記重量測定センサが、薄膜共振器(TFR)、弾性表面波(SAW)共振器、厚みすべりモード(TSM)共振器(水晶振動子マイクロバランス(QCM)共振器)、弾性プレートモード(APM)共振器、たわみ板波(FPW)共振器、バルク弾性波(BAW)共振器、圧電バイモルフ共振器アレイ共振器、及び音叉共振器から選択される、請求項20〜22のいずれか一項に記載の航空機空気汚染物質分析装置。
前記重量測定センサが、共振下で屈曲する2つの活性層を備えた圧電バイモルフ共振器アレイであり、空気汚染物質の塊の追加又は除去によって共振周波数の比例変化を生じる、圧電バイモルフ共振器アレイを備えた、請求項23に記載の航空機空気汚染物質分析装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0019]本発明の一実施形態によれば、航空機空気汚染物質を決定して種類により分類する方法であって、(a)航空機空気を(i)微細多孔質流通チャネルを備え、化学選択的被膜を有する微細多孔質媒体と、(ii)捕捉された空気汚染物質を蒸発させる温度まで加熱可能な薄膜抵抗性加熱器であり、微細多孔質媒体と接触した、薄膜抵抗性加熱器と、を備えた少なくとも1つの航空機空気汚染物質収集器を備えた航空機空気汚染物質分析装置に通過させるステップと、(b)微細多孔質媒体により空気汚染物質を捕捉するステップと、(c)少なくとも1つの航空機空気汚染物質収集器への航空機空気の通過を中断するステップと、(d)捕捉した空気汚染物質を蒸発させて脱着させるのに十分な温度まで微細多孔質媒体を加熱するステップと、(e)空気汚染物質の塊が重量測定センサに追加又は重量測定センサから除去された場合に比例共振周波数応答を生成するように構成された重量測定センサにおいて、脱着された空気汚染物質を受容するステップと、(f)空気汚染物質が重量測定センサに追加又は重量測定センサから除去された場合に重量測定センサにより生成された比例共振周波数応答を測定するステップと、(g)コンピュータ可読媒体に格納され、空気汚染物質の濃度を計算することと、空気汚染物質の種類を決定することと、を含む空気汚染物質認識プログラムを実行するステップと、(h)決定した空気汚染物質の濃度及び空気汚染物質の種類を出力するステップと、を含む、方法が提供される。
【0009】
[0020]本発明の別の実施形態において、この方法は、(a)航空機空気を(i)微細多孔質流通チャネルを備え、化学選択的被膜を有する微細多孔質媒体と、(ii)捕捉された空気汚染物質を蒸発させる温度まで加熱可能な薄膜抵抗性加熱器であり、微細多孔質媒体と接触した、薄膜抵抗性加熱器と、をそれぞれ備えた2つ以上の航空機空気汚染物質収集器を備えた航空機空気汚染物質分析装置に通過させるステップと、(b)各微細多孔質媒体により空気汚染物質を捕捉するステップと、(c)2つ以上の航空機空気汚染物質収集器への航空機空気の通過を中断するステップと、(d)捕捉した空気汚染物質を蒸発させて脱着させるのに十分な温度まで各微細多孔質媒体を加熱するステップと、(e)空気汚染物質の塊が重量測定センサに追加又は重量測定センサから除去された場合に比例共振周波数応答を生成するようにそれぞれ構成された各重量測定センサにおいて、2つ以上の航空機空気汚染物質収集器それぞれから脱着された空気汚染物質を受容するステップと、(f)空気汚染物質が重量測定センサに追加又は重量測定センサから除去された場合に各重量測定センサにより生成された比例共振周波数応答を測定するステップと、(g)コンピュータ可読媒体に格納され、空気汚染物質の濃度を計算することと、空気汚染物質の種類を決定することと、を含む空気汚染物質認識プログラムを実行するステップと、(h)決定した空気汚染物質の濃度及び空気汚染物質の種類を出力するステップと、を含む。
【0010】
[0021]別の実施形態においては、(a)少なくとも1つの航空機空気汚染物質収集器であり、(i)微細多孔質流通チャネル及び化学選択的被膜を備えた微細多孔質媒体であり、制御期間にわたって加熱されている間、機能を維持するとともに捕捉された空気汚染物質を脱着させる、微細多孔質媒体と、(ii)捕捉された空気汚染物質を蒸発させる温度まで加熱可能な薄膜抵抗性加熱器であり、微細多孔質媒体と接触した、薄膜抵抗性加熱器と、を備えた、少なくとも1つの航空機空気汚染物質収集器と、(b)上面及び下面を有する第1の基板であり、少なくとも1つの航空機空気汚染物質収集器が関連付けられ、微細多孔質媒体及び薄膜抵抗性加熱器が熱的に絶縁された、第1の基板と、(c)空気汚染物質の塊が重量測定センサに追加又は重量測定センサから除去された場合に、比例共振周波数応答を生成するように構成された重量測定センサと、(d)上面及び下面を有する第2の基板であり、重量測定センサが上面と関連付けられ、重量測定センサが、一定距離だけ航空機空気汚染物質収集器から分離され、重量測定センサが、加熱された微細多孔質媒体から脱着された空気汚染物質を受容するように構成された、第2の基板と、(e)上面及び下面を有する支持部であり、上面及び下面を通過する少なくとも1つの航空機空気入口ポートを備え、第2の基板の下面が当該支持部の上面と関連付けられた、支持部と、(f)空気汚染物質が重量測定センサに追加又は重量測定センサから除去された場合に重量測定センサにより生成された比例共振周波数応答を測定するように構成された共振周波数測定装置と、(g)空気汚染物質認識プログラム及び校正データを有するコンピュータ可読媒体と、(h)空気汚染物質を種類により分類するように構成されたモジュールと、重量測定センサにより生成された比例共振周波数応答の大きさとの比較に校正データを用いて、空気汚染物質の濃度を計算するようにプログラムされたモジュールと、を含む空気汚染物質認識プログラムを実行するように構成されたプロセッサと、(i)微細多孔質媒体の加熱前後に、少なくとも1つの航空機空気入口ポート及び少なくとも1つの航空機空気汚染物質収集器を通る航空機空気の流れを生成するように構成されたポンプと、を備えた航空機空気汚染物質分析装置が提供される。
【0011】
[0022]さらに別の実施形態においては、(a)2つ以上の航空機空気汚染物質収集器であり、(i)微細多孔質流通チャネル及び化学選択的被膜を備えた微細多孔質媒体であり、制御期間にわたって加熱されている間、機能を維持するとともに捕捉された空気汚染物質を脱着させる、微細多孔質媒体と、(ii)捕捉された空気汚染物質を蒸発させる温度まで加熱可能な薄膜抵抗性加熱器であり、微細多孔質媒体と接触した、薄膜抵抗性加熱器と、をそれぞれ別個に備えた、2つ以上の航空機空気汚染物質収集器と、(b)上面及び下面を有する第1の基板であり、別個の第1の基板に各航空機空気汚染物質収集器が関連付けられ、微細多孔質媒体及び薄膜抵抗性加熱器が熱的に絶縁された、第1の基板と、(c)各航空機空気汚染物質収集器の近くで、空気汚染物質の塊が重量測定センサに追加又は重量測定センサから除去された場合に、比例共振周波数応答を生成するようにそれぞれ構成された重量測定センサと、(d)上面及び下面を有する第2の基板であり、各重量測定センサが別個の第2の基板の上面と関連付けられ、各重量測定センサが、一定距離だけ各航空機空気汚染物質収集器から分離され、各重量測定センサが、加熱された各微細多孔質媒体から脱着された空気汚染物質を受容するように構成された、第2の基板と、(e)上面及び下面を有する支持部であり、上面及び下面を通過する少なくとも1つの航空機空気入口ポートを備え、各第2の基板の下面が当該支持部の上面と関連付けられた、支持部と、(f)空気汚染物質が重量測定センサに追加又は重量測定センサから除去された場合に重量測定センサにより生成された比例共振周波数応答を測定するように構成された共振周波数測定装置と、(g)空気汚染物質認識プログラム及び校正データを有するコンピュータ可読媒体と、(h)空気汚染物質を種類により分類するように構成されたモジュールと、重量測定センサにより生成された比例共振周波数応答の大きさとの比較に校正データを用いて、空気汚染物質の濃度を計算するようにプログラムされたモジュールと、を含む空気汚染物質認識プログラムを実行するように構成されたプロセッサと、(i)微細多孔質媒体の加熱前後に、少なくとも1つの航空機空気入口ポート及び2つ以上の航空機空気汚染物質収集器を通る航空機空気の流れを生成するように構成されたポンプと、を備えた航空機空気汚染物質分析装置が提供される。
【0012】
[0023]有利には、本発明に係る航空機空気汚染物質分析装置の実施形態は、「使い捨て」ではなく、例えば、付着に耐性を示し、少なくとも1つの汚染物質濃度を繰り返し測定して少なくとも1つの汚染物質の種類を決定するのに使用可能である。
【0013】
[0024]別の利点として、特に2つ以上の航空機空気汚染物質収集器が利用される場合は、特性(例えば、蒸気圧力及び/又は密度)の類似する異なる流体をより正確に分類することができる。
【0014】
[0025]通常の一実施形態においては、大容量キャビンの汚染物質濃度がECS(環境制御システム)の通気口から現れるレベルに上昇する前に遅延が生じることになるため、航空機空気汚染物質分析装置をECSの通気口又は導管に位置付けることができる。ただし、例えばコックピット、キャビン、頭上の荷物室、収納棚、ギャレーエリア、航空電子機器室、補助電源ユニット等、分析装置には多様な場所が適している。或いは、分析装置を1つの場所に設置し、例えばパイプ類、管類、及び/又は導管等の多様な空気移動装置を介して、空気を別の場所から分析装置に案内することができる。
【0015】
[0026]上記の代替又は追加として、例えば抽気管又はその近傍等に航空機空気汚染物質分析装置を位置付け可能であり、エンジンからの加圧空気がECSに送られる。抽気管又はその近傍の航空機空気汚染物質分析装置の利点として、各エンジンからの抽気のサンプリングにより、欠陥エンジンの通知及び識別が可能であり、汚染された抽気の欠陥エンジンからECSへの供給を乗員が停止可能である。これに対して、航空機空気汚染物質分析装置がキャビンに位置付けられていると、キャビンからのサンプリングであれECS通気口又はECS導管からのサンプリングであれ、汚染物質源が存在することは通知されるものの、汚染源となっているエンジン又はAPU(補助電源ユニット)については通知されない。
【0016】
[0027]本発明に係る航空機空気汚染物質を決定して種類により分類する方法の好適な一実施形態によれば、重量測定センサの応答を繰り返し測定しつつ、航空機空気汚染物質収集器の微細多孔質媒体(例えば、微細多孔質膜)を加熱して、収集汚染物質を蒸発させることにより、蒸発した汚染物質が重量測定センサに移動して測定されるようにする。測定率は、重量測定センサの応答の分解に十分であり、微細多孔質媒体から放出された汚染物質を吸着した後に脱着する際のセンサの周波数対時間カーブの形状である。
【0017】
[0028]分析装置は、重量測定センサの応答を正確に分解するのに十分な測定率で周波数を測定する測定回路を具備しており、通常は、重量測定センサごとに約10〜約100回/秒の測定である。測定は、分析装置の他の機能、特に、微細多孔質媒体を加熱する機能と同期する。測定は通常、最大周波数変化及び重量測定センサの応答の回復率を分解するのに十分な継続時間にわたり、例えば通常は、約1秒〜約4秒の長さの継続時間である。
【0018】
[0029]所定の期間(例えば、約10〜約60秒)にわたる所定率での十分な量のサンプル(例えば、約500〜約2000標準立方センチメートル/分(sccm))が分析装置を流れることにより、センサの周波数対時間カーブの形状を分解するのに測定ノイズレベルを十分に上回る応答の大きさが実現され、通常は、約4:1以上の信号対雑音比である。
【0019】
[0030]異なる汚染物質の移動、吸着、及び脱着の動態によって、応答形状が異なる。例示として、参照しやすいように4つの異なる化合物(例えば、ニトロメタン 過酸化アセトン、二硝酸エチレングリコール、及び2,3−ジメチル−2,3−ジニトロブタン)が単一のグラフに重ね合わされるとすれば、これらの化合物のセンサ周波数対時間応答の形状は、蒸気圧力が低い(重い)化合物よりも蒸気圧力が高い(軽い)化合物の方が膜から高速に放出されることを示す。例えば、過酸化アセトン、二硝酸エチレングリコール、及び2,3−ジメチル−2,3−ジニトロブタンよりも前に、ニトロメタンが放出される。
【0020】
[0031]各航空機空気汚染物質収集器において微細多孔質媒体を通る流れは、微細多孔質媒体が加熱される前にゼロ又はほぼゼロ(例えば、約5sccm以下)となるように停止されるものとする。例えば通常は、流れは加熱の少なくとも0.2秒前に停止されるものとする。周波数を繰り返し測定しつつ、約0.1秒で少なくとも約400℃まで昇温させる電圧ステップを印加することにより、微細多孔質媒体を加熱するのが好ましい。通常、微細多孔質媒体は、少なくとも約1秒間、好ましくは少なくとも約2秒間(例えば、最大約10秒間以上)にわたって、少なくとも約200℃、より一般的には少なくとも約400℃、いくつかの実施形態においては約550℃まで加熱されることにより、次の測定が「再出発」として開始となり得るように少なくとも1つの汚染物質を蒸発(脱着)させる。重量測定センサのドリフトを取り除く(「セルフゼロ(self−zero)」)ため、センサの応答は、微細多孔質媒体の加熱直前のセンサの周波数を参照とする。
【0021】
[0032]微細多孔質媒体が加熱されていない場合、分析装置は、固定温度(例えば、約30℃〜約70℃の範囲の固定温度)に維持されるのが好ましい。
【0022】
[0033]パターン認識アルゴリズムを用いて、各汚染物質をその一意の応答、センサの周波数対時間カーブの形状により認識することで、少なくとも1つの汚染物質を分類可能である。これは、汚染物質の材料特性の影響を受けるものであり、蒸気圧力、熱容量、凝縮熱、蒸発熱、吸着及び脱着の動態、並びに拡散率のいずれかのうちの1つ又は複数が挙げられるが、これらに限定されない。汚染物質固有の応答形状による少なくとも1つの汚染物質の分類には、多様なアルゴリズムを使用可能である。好適なアルゴリズムとしては、例えばニューラルネット、主成分分析、サポートベクターマシンに基づく分類、線形判別分析、及び決定ツリー分析が挙げられる。
【0023】
[0034]所定の校正ファイル(例えば、少なくとも1つの応答の大きさの関数として少なくとも1つの汚染物質濃度の値を与えるカーブ又はルックアップテーブル)に対して少なくとも1つの応答の大きさを比較することにより、少なくとも1つの汚染物質の濃度を計算することができる。
【0024】
[0035]重量測定センサ(単一のセンサ又はセンサアレイを含み得る)は、センサに対して追加又は除去された塊に対する正確な比例周波数応答を生成する。好ましくはこの応答は、少量の移動汚染物質(検体)により過減衰されないように、広いダイナミックレンジにわたって提供される。重量測定センサは、増幅発振回路の一部として動作することにより、その共振を維持する。
【0025】
[0036]以下、本発明の各構成要素をより詳しく説明するが、同様の構成要素は同様の参照番号を有する。
【0026】
[0037]
図1A〜
図1Cは、航空機空気汚染物質分析装置の例示的な実施形態を示している。以下により詳しく論じる通り、
図1Bに示す例示的な実施形態は、
図1Aに類似するものの、2つの航空機空気汚染物質収集器、2つの重量測定センサ、及び2つの付加的な航空機空気入口ポートを含み、
図1Cに示す例示的な実施形態は、
図1Bに類似するものの、単一の空気入口ポート及びマニホールド空気入口ポートを具備する入口マニホールドを含む。
【0027】
[0038]
図1A〜
図1Cに示す例示的な実施形態において、航空機空気汚染物質分析装置200は、第1の基板1011(
図3A及び
図3Dに示す)並びに微細多孔質流通チャネル及び化学選択的被膜150を備えた微細多孔質媒体100(例えば、微細多孔質膜100A)と、薄膜抵抗性加熱器175と、を備えた基部10を備えた航空機空気汚染物質収集器1(又は、第1の航空機空気汚染物質収集器1)を備える。また、図示の航空機空気汚染物質収集器は、重量測定センサ3(又は、第1の重量測定センサ3)及びポンプのほか、以下により詳しく論じるような他の構成要素を備える。
【0028】
[0039]また、
図1B及び
図1Cに示す例示的な実施形態は、第2の航空機空気汚染物質収集器1’及び第2の重量測定センサ3’を含む。
【0029】
[0040]航空機空気汚染物質収集器を示す
図3A〜
図3Dを参考として用いて(第1の航空機空気汚染物質収集器1及び第2の航空機空気汚染物質収集器1’が同じ構成要素を有することから、
図1B及び
図1Cは、例えば10’、1011’、100’等、第2の航空機空気汚染物質収集器(並びに、航空機空気汚染物質分析装置200及び以下により詳しく論じる第2の重量測定センサ)の構成要素に「’」を付して載せている)、第1の航空機空気汚染物質収集器1は、第1の基板上層101A及び第1の基板下層101Bを有する第1の基板主層101を備えた第1の基板1011を備えた基部10(
図3D)と、第1の基板上の多孔質媒体100(例えば、微細多孔質媒体100A)と、を備える。多孔質媒体は、上面111及び下面112を有する(
図3C及び
図3D)とともに、(多孔質媒体の上面及び下面を通る)微細多孔質流通チャネル115及び化学選択的被膜150(
図3A、
図3B、及び
図3Dに示す)を備えており、制御期間にわたって加熱されている間、機能を維持するとともに捕捉された空気汚染物質を脱着させる。また、捕捉された空気汚染物質を蒸発させる温度まで加熱可能な薄膜抵抗性加熱器175を備えており、当該加熱器は、多孔質媒体の上面(中及び/又は上)と接触している。層101A及び101B、多孔質媒体100、加熱器175、(加熱器175と連通したワイヤボンド(図示せず)と連通可能な)配線620、並びに(配線の少なくとも一部を覆って、例えば低抵抗をもたらすとともに、ワイヤボンドによる確実な電気コンタクトの構成及びワイヤボンドから加熱器への加熱器電流のより効率的な移動を可能にする)任意選択的なパッケージ層699が、例えば付加プロセスによって第1の基板主層101と関連付けられ(例えば、第1の基板主層101に搭載又は組み付けされる)、例えば除去プロセスによって、チャネル115及びテザー190(後述)のほか、多孔質媒体100の下側の空洞が作製される(
図3Dに示す)。
【0030】
[0041]
図3A〜
図3Dは、第1の基板上層101A及び第1の基板下層101Bを有する第1の基板主層101を備えた第1の基板101’を示しているが、当業者であれば、多孔質媒体100を構成する他のプロセスに層101A及び/又は101Bを必要としない場合があることが認識されるはずである。
【0031】
[0042]通常、化学選択的被膜150は、膜の全表面(例えば、上面、下面、流通チャネル、
図3Bに示さないチャネル/細孔中の被膜)のほか、加熱器及び電気配線の上部を覆うが、パッケージ層699は覆わない。
【0032】
[0043]多孔質膜及び加熱器は、基部10及び第1の基板1011から熱的に絶縁されているのが好ましい。例えば、多孔質部材は、(例えば、
図3A、
図3B、及び
図3Dに示すように、多孔質部材を基板に接続するテザー190により)101、101A、及び101Bから熱的に絶縁されて、多孔質部材の縁部における伝熱損失を抑えるとともに、低電力での高速且つ均一な加熱を可能にする。一実施形態においては、第1の基板にチャネル195がエッチングされて、テザーを規定する(例えば、テザーは、チャネルがエッチングされた後に残る第1の基板の部分である)。流通チャネル115(直径は通常、約50マイクロメートル以下)に対して、チャネル195は通常、細長く、テザーを規定する。
【0033】
[0044]
図3B及び
図3Dに示す実施形態において、薄膜抵抗性加熱器175は、多孔質膜の上面111中又は上面111上に配置される(多孔質膜の流通チャネル115を囲む)とともに、テザー上に配置されている。
【0034】
[0045]例えば
図3Dに示すいくつかの実施形態において、多孔質部材の上面111には、加熱器(及び、電流が流れるその他任意の構造(例えば、電気配線))の直下に絶縁層120(例えば、SiO
2)を含むことにより、多孔質膜における電流の短絡を防止する。
【0035】
[0046]
図1B及び
図1Cに示す分析装置200の実施形態は、
図1A及び
図3A〜
図3Dに記載のものと同じ構成要素を有する付加的な航空機空気汚染物質収集器を含む(これは、以下により詳しく論じる通り、付加的な重量測定センサの説明にも当てはまる)。参照しやすいように、付加的な航空機空気汚染物質収集器には、参照番号1’を付し、第1の基板101’並びに微細多孔質流通チャネル及び化学選択的被膜150’を備えた微細多孔質媒体100’(例えば、微細多孔質膜100A’)と、薄膜抵抗性加熱器175’と、を備えた基部10’を備える。上述の通り、微細多孔質媒体及び加熱器は、基部及び第1の基板から熱的に絶縁されているのが好ましい。
【0036】
[0047]これら図示の実施形態において、航空機空気汚染物質収集器1、1’は、上面311A及び下面311Bを有する第1の支持部311(通常は、プリント配線板(PCB))と関連付けられている(例えば、第1の支持部311に搭載されている)。
【0037】
[0048]分析装置200は、各収集器の近くに配置され、空気汚染物質の塊が重量測定センサ3に追加又は重量測定センサ3から除去された場合に比例共振周波数応答を生成して、空気汚染物質の量を計るとともに空気汚染物質を種類により分類する重量測定センサ3(又は、第1の重量測定センサ3)と、上面201A及び下面201Bを有する第2の基板201と、を具備する。重量測定センサ3は、第2の基板の上面と関連付けられ(例えば、除去プロセス及び付加プロセスによって上面に搭載又は組み付けられ)、汚染物質収集器から一定距離だけ分離されるとともに、微細多孔質媒体が加熱された場合に当該微細多孔質媒体から脱着された空気汚染物質を受容するように構成されている。
【0038】
[0049]上述の通り、
図1B及び
図1Cに示す実施形態は、
図1Aに記載のものと同じ構成要素を有する付加的な(又は、第2の)重量測定センサを含むため、参照しやすいように、第2の重量測定センサの構成要素は、例えば3’、201’等、「’」を付して載せている。
【0039】
[0050]また、
図1A〜
図1Cに示す分析装置(一部の構成要素は、
図1A、
図1B、又は
図1Cにおいてのみ表示する)の実施形態は、上面312A及び下面312Bを備えた第2の支持部312を具備しており、この第2の支持部は、少なくとも1つの航空機空気入口ポート500を備える(
図1Aは、空気汚染物質収集器1を通過する空気流路1000を与える2つの空気入口ポート500A、500Bを示している)。
図1Bは、3つの空気入口ポート500A’(空気汚染物質収集器1’を通過する空気流路1000’を与える)、500B(空気汚染物質収集器1を通過する空気流路1000を与える)、及び500C(第1及び第2の航空機空気汚染物質収集器1、1’を通る空気流路1000’’を介した空気の流れを可能にする)を示している。
図1Cは、支持部の上面及び下面を通過する(第1及び第2の航空機空気汚染物質収集器1、1’を通る空気流路1000’’を介した空気の流れを可能にする)1つの空気入口ポート500Cを示しており、第2の基板の下面は、第2の支持部の上面と関連付けられている(例えば、上面に搭載されている)。本発明の実施形態は、空気入口ポートを含む任意選択的な入口マニホールドを具備することができ、
図1Cは、マニホールド空気入口ポート500Dを具備する任意選択的な入口マニホールド510を示している。通常、第2の支持部は、PCBを備える。
【0040】
[0051]重量測定センサと微細多孔質媒体との分離は、一定に保たれ、通常は約0.1mm〜約2mm、好ましくは約0.2mm〜約0.4mmの距離であるものとする。例えば、
図1A〜
図1Cは、センサと微細多孔質媒体との間隔を維持する第1の支持部311と第2の支持部312との間のスペーサ315を示している。スペーサの長さは、収集器及び重量測定センサの対向面間の分離が約0.2mm〜約0.4mmとなるようにするのが好ましい。
【0041】
[0052]また、
図1A〜
図1Cに示す実施形態は、電源又は電源への接続部、電力調整器、並びに発振器及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を備え、共振器アレイにより生成された比例共振周波数応答を測定することにより、少なくとも1つの空気汚染物質の種類の分類を可能にするように構成された共振周波数測定装置610Aを備えた測定回路610を含む電子機器600と、空気汚染物質認識プログラムを有するコンピュータ可読媒体と、振動率を測定して少なくとも1つの空気汚染物質の種類を分類するように構成されるとともに、少なくとも1つの共振器アレイにより生成された比例共振周波数応答の大きさとの校正テーブルによる比較によって、少なくとも1つの空気汚染物質濃度の計算及び少なくとも1つの空気汚染物質の種類の決定を行うようにプログラムされたモジュールを含む空気汚染物質認識プログラムを実行するように構成されたプロセッサと、を具備する。プロセッサにより実行される空気汚染物質認識プログラムは、必要に応じて、持続性コンピュータ可読媒体に格納され、プロセッサは、少なくとも1つの決定された空気汚染物質の種類の値を表示(出力)する。例えば、プロセッサとともに動作可能に配置された表示装置(携帯型装置等)を用いたGUIを通じて、少なくとも1つの値を表示可能である。この代替又は追加として、例えば、少なくとも1つの値の点灯式表示装置による表示又は音声伝達が可能である。
【0042】
[0053]電子機器は、当技術分野において既知の多様な構成を有し得る。
図1A〜
図1Cに示す実施形態において、電子機器は、ケーブル601、601’、コネクタ605、605’、第1の支持部311に組み込まれた電気配線620、620’(したがって、不可視)、ワイヤボンド625、625’、及び収集器10に組み付けられた配線630、630’(したがって、不可視)を介して、電力を必要に応じて各加熱器175、175’に供給するとともに、ケーブル690を介して、電力を必要に応じてポンプ433(後述)に供給する。また、重量測定センサに関する電子機器は、例えば電気配線640、640’、ワイヤボンド645、645’、第2の支持部312に組み込まれた電気配線650、650’(したがって、不可視)、660、670(
図5に示す)、コネクタ655、及びケーブル651、651’を含み得る。
【0043】
[0054]付加的な収集器及び重量測定センサを含む実施形態において、各重量測定センサは通常、それぞれの発振回路、電気配線、及びワイヤボンドを有することになる。また、別個のケーブル及びコネクタを有していてもよいし、信号がマルチワイヤケーブル及びコネクタに導入されるようになっていてもよい。通常は、1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)によって、複数の重量測定センサの共振周波数を計数可能である。すべての収集器が並列に配線され、同じ電子機器の電源回路により加熱されることも可能であるし、或いは、別個の回路による電力供給及び独立した加熱によって、例えば異なる温度又は継続時間にすることも可能である。
【0044】
[0055]共振周波数は、必要に応じて、例えば位相ロックループ又はデジタルシグナルプロセッサ(DSP)チップを用いた周波数掃引の実行により掃引スペクトルから共振周波数を識別することによって測定可能である。
【0045】
[0056]或いは、必要に応じて、重量測定センサにより生成された比例共振周波数応答を測定するように、レーザ及び光検出器を備えた共振周波数測定装置を構成可能である。
【0046】
[0057]また、図示の実施形態は、少なくとも1つの微細多孔質媒体の加熱前後に、少なくとも1つの航空機空気入口ポート及び少なくとも1つの空気汚染物質収集器を通る航空機空気のサンプル流を生成するように構成されたポンプ433を含むが、本発明の実施形態に係る、多様なポンプが使用に適している。
図1A〜
図1Cに示すように、ポンプ433は、1つ若しくは複数の微細多孔質媒体並びに1つ若しくは複数のセンサの下流に位置決めされるのが好ましく、任意選択的な気密カバー434及び/若しくは任意選択的な入口マニホールド510、第2の支持部312、第1の支持部311、並びにスペーサ315がサンプルを隔離することにより、その汚染又は希釈を回避するとともに、ポンプにより生成された流れがすべて少なくとも1つの微細多孔質媒体を流れるようにする。ポンプは、サンプルを汚染しないように、少なくとも1つの重量測定センサ及び少なくとも1つの微細多孔質媒体の後段に位置決めされる。少なくとも1つの重量測定センサは、サンプル流が各センサ表面に向かって流れないように構成された状態で、少なくとも1つの微細多孔質媒体の上流に位置決めされることにより、少なくとも1つのセンサの少なくとも1つの表面上への汚染物質及び不要な物質(塵埃、エアロゾル、及び/又は微粒子等)の移動を最小限に抑える。
【0047】
[0058]2つ以上の航空機空気汚染物質収集器及び対応する重量測定センサ(収集器−センサセットを提供する)を含む実施形態においては、各収集器−センサセットが少なくとも1つの他のセットと同じ環境条件(例えば、温度、圧力、相対湿度)に維持される。各セットを異なる時間又は異なる条件下で測定することによる応答パターン中の「ノイズ」の低減によって、検出性能が向上するためである。収集器−センサセットはすべて、ごく近接して配置されるのが好ましい。
【0048】
[0059]各収集器−センサセットは、ノイズレベルを上回る応答を与えて良好な精度をもたらすように、少なくとも1つのその他のセットと同様の感度を有するものとする。
【0049】
[0060]本発明の実施形態においては、多様な重量測定センサ3、3’が使用に適しており、例えば薄膜共振器(TFR)、弾性表面波(SAW)共振器、厚みすべりモード(TSM)共振器(水晶振動子マイクロバランス(QCM)共振器)、弾性プレートモード(APM)共振器、たわみ板波(FPW)共振器、バルク弾性波(BAW)共振器、圧電バイモルフ共振器アレイセンサ、及び音叉センサが挙げられる。
【0050】
[0061]一実施形態において、センサは、官能性SiO
2ナノ粒子(例えば、トリエチオキシシランで官能化)で被覆可能である官能性SiO
2ナノ粒子を生成する好適なトリエチオキシシランとしては、例えば3−[2−(3−トリエトキシシリルプロポキシ)エトキシ]スルホラン(95%)、フェネチルトリメトキシシラン(tech−95)、3−メチオキシプロピルトリメトキシシラン、N−(アセチルグリクル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(メタノール中5%)、及びドデカフルオロデカ−9−エン−1−イルトリメトキシシラン(95%)が挙げられる。いくつかの実施形態において、官能性SiO
2ナノ粒子は、センサの表面に堆積可能な自己組織化単分子層を構成する。
【0051】
[0062]一実施形態において、重量測定センサは、共振下で屈曲する2つの活性層を備え、空気汚染物質の塊の追加又は除去によって共振周波数の比例変化を生じる圧電バイモルフ共振器アレイを備える。このような重量測定センサの一例は、米国特許第6,953,977号に開示されている。
【0052】
[0063]
図2に示す一実施形態において、重量測定センサ3は、第1の電極3A及び第2の電極3Bを具備しており(一体的に共振器又は重量測定センサアレイを構成する)、センサの表面上の第1の電極を介して、センサの運動が電気信号に変換される。信号は、例えばセンサ(例えば、重量測定センサアレイ)上の電気配線640、ワイヤボンド645、重量測定センサが搭載された第2の支持部(例えば、PCB)312上の電気配線650、コネクタ655、及びケーブル651を介して電子機器600に導入される。この信号が増幅されてセンサ表面の第2の電極に戻されることで、センサを共振駆動可能である。重量測定センサは、(第1のバランスキャパシタ電極5A及び第2のバランスキャパシタ電極(測定電極)5Bを備えた)任意選択的なバランスキャパシタ5をさらに備えることができ、共振器に隣り合って含まれることで、寄生容量及び抵抗の寄与を電気信号から減少させる。バランスキャパシタは、重量測定センサと同様又は同一の構成材料及び寸法を有するが、移動不可能に構成されている(例えば、基板上には、バランスキャパシタが移動できる空間が存在しない)。バランスキャパシタは、例えば専用電気配線660を通じて第1のバランスキャパシタ電極5Aに至る180°位相シフト信号により駆動可能である。第2のバランスキャパシタ電極(測定電極)5Bから変換された信号は、電子機器600(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)及び振動率を計数するファームウェア)に(例えば、配線640を介して)導入される際に、センサの第1の電極3Aにより変換された信号と(例えば、配線670を介して)組み合わされ得る。
【0053】
[0064]当技術分野において認識される通り、様々な重量測定センサの比例周波数応答の測定には、多様な種類の電子機器が適している。
【0054】
[0065]本発明の実施形態に従って使用する微細多孔質媒体(例えば、微細多孔質膜)には、多様な材料が適している。微細多孔質膜のほか、好適な微細多孔質媒体としては、繊維材料、セラミック、印刷構造、及び微細加工構造が挙げられる。微細多孔質媒体は、支持することも可能であるし、支持しないことも可能である。通常、微細多孔質媒体が微細多孔質膜である実施形態において、この膜は、少なくとも約20マイクロメートル〜約500マイクロメートルの範囲の厚さ、より一般的には、約50マイクロメートル〜約200マイクロメートルの範囲の厚さを有するものの、いくつかの用途においては、これより薄くすることも可能であるし、厚くすることも可能である。
【0055】
[0066]微細多孔質媒体(例えば、微細多孔質膜)は、多孔質又は穿孔質であり、例えば約5マイクロメートル〜約50マイクロメートル、通常は、10マイクロメートル〜約30マイクロメートルのサイズ及び/又は直径の好適な規則性及び/又は不規則性流通チャネル及び/又は細孔を提供するものの、いくつかの用途においては、これより小さくすることも可能であるし、大きくすることも可能である。この膜は、上下面及び流通チャネル及び/若しくは細孔の内側と関連付けられた(例えば、固定及び/若しくは共有結合された)化学選択的被膜並びに/又は膜のバルク中の化学選択的粒子を含む。
【0056】
[0067]本発明の実施形態における使用では、例えば多孔質シリカ、活性炭、金属有機構造体(MOF)、ゼオライト−イミダゾレート構造体(ZIF)、チタニア(TiO
2)粒子、及びゼオライト(疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライトを含む)等、多様な化学選択的被膜が適している。好適なゼオライト被膜としては、Z100(疎水性ゼオライト)、Z110(疎水性ゼオライト)、Z300(低疎水性ゼオライト)、及びZ810(親水性ゼオライト)(Zeochem LLC、Louisville、KY)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
[0068]好適な加熱器(薄膜抵抗性加熱器が好ましい)は、当技術分野において知られている。例示的な加熱器としては、例えば約550℃まで劣化なく微細多孔質媒体を抵抗加熱可能な白金(Pt)及びタンタル−白金(TaPt)高温適合性薄膜抵抗性加熱器が挙げられる。この加熱器は、例えば堆積、リソグラフィ、及び溶解プロセスの組み合わせによって、基板上の適所に作製されるのが好ましい。
【0058】
[0069]第1及び第2の支持部、収集器ダイ、及び基板としての使用には、多様な材料が適するが、当技術分野においては、好適な材料が知られており、マイクロエレクトロニクス製造プロセスを用いて容易に製造可能である。例えば、シリコン等の材料から製造可能である。通常、これらの材料は微細加工可能であり、必要に応じて配線、電極、及び相互接続等の電気的構造を含むことで必要な場合電力を供給可能とするような微細加工並びに/又は懸架板、テザー、膜等の機械的構造及び流通チャネル等の流体的構造を含むような微細加工を可能にするのが望ましい。
【0059】
[0070]以下の実施例は、本発明をさらに説明するものであるが、当然のことながら、何らその範囲を制限するものとは解釈されないものとする。
【0060】
[0071]以下の実施例は、様々な収集器及び収集器の組み合わせ(多孔質シリカで被覆された膜をある収集器が備え、疎水性ゼオライト被膜(Z300(Zeochem LLC、Louisville、KY))で被覆された膜をある収集器が備え、別の疎水性ゼオライト被膜(Z110(Zeochem LLC、Louisville、KY))で被覆された膜をある収集器が備える)の使用によって、汚染物質をどのように識別及び区別可能であるかを明らかにし、パターン認識アルゴリズムによる「応答スペクトル」及び「応答特性」の規定及び使用によって、汚染物質を識別可能である。
【0061】
[0072]これらの実施例においては、2つの収集器及び各収集器の下の一対の同じ重量測定センサとともに、
図1Bに大略示すように航空機空気汚染物質分析装置をセットアップし、共振器及びバランスキャパシタを具備する各重量測定センサは、
図2に大略示すようにセットアップする。
【0062】
[0073]重量測定センサはそれぞれ、質量負荷のダイナミックレンジが広く、質量負荷の応答が線形の微細加工(MEMS)圧電バイモルフSiC−AlN共振器アレイである。共振器はそれぞれ、質量負荷の感度が高い共振モードを与える小さな連結板を有し、表面に薄膜電極が堆積されることで、電気的駆動により共振をもたらすとともに、運動を電気信号に戻して読み出し可能にする。センサは、共振器と信号をやり取りする金属配線を含む。共振周波数は、約1MHz〜30MHzの範囲内である。
【0063】
[0074]バランスキャパシタは、重量測定センサと同一であるが、移動不可能に構成されている。
【0064】
[0075]各収集器は、直径が約25マイクロメートルの流通チャネルを有し、被膜が上流、下流、及び流通チャネルの表面にある被覆微細多孔質シリコン膜を具備する(1つの膜が多孔質シリカ被膜を有し、その他の2つが上述のような異なる疎水性ゼオライト被膜を有する)。
【0065】
[0076]加熱器は、当技術分野において既知のプロセス(例えば、堆積、リソグラフィ、及び溶解プロセスの組み合わせ)により基板に組み込まれ、膜に直接堆積されたタンタル−白金(TaPt)高温適合性薄膜抵抗性加熱器である。
【0066】
実施例1
[0077]本実施例においては、一対の重量測定センサによって、多孔質シリカで被覆された膜を含む収集器からの脱着を測定し、他の一対のセンサによって、疎水性ゼオライト被膜(Z300(Zeochem LLC、Louisville、KY))で被覆された膜を含む収集器からの脱着を測定する。
【0067】
[0078]最初に、汚染物質なしで周波数シフト対時間を決定する(例えば、校正時に正常な実験室空気を使用するか、滅菌フィルタを通過した空気を使用するか、又は最初は空気を収集器に通過させない)。例えば、共振周波数は、4秒間にわたって0.01秒ごとに測定する。共振周波数は、加熱電力が収集器に適用された場合に、0.5秒で低下し始める。共振器に移動した熱によって、その共振周波数が低下する。これは、「熱応答」とも称し、汚染物質がない場合の応答スペクトルを示す。応答スペクトルは、汚染物質(除氷流体)が存在する場合にも決定するが、その両応答スペクトルを
図4に示す。
【0068】
[0079]
図5に示すように、最初の応答スペクトル(汚染物質なし)を2番目の応答スペクトル(汚染物質あり)から減算することによって、汚染物質のみの存在による周波数シフトが明らかとなるが、これは「熱的減算応答」を示す。
【0069】
[0080]「熱的減算応答」からは、様々な特徴を計算することができる。そのような特徴の4つの例として、以下が挙げられる。
【0070】
[0081]a)最大周波数シフト(MFS):応答中に見られる最大周波数シフト
[0082]b)ピーク前合算(SB):MFS前のカーブ下側の面積
[0083]c)ピーク後合算(SB):MFS後のカーブ下側の面積
[0084]d)セグメント#5(S5):MFS後の37番目から46番目までの周波数測定結果の平均
[0085]これら4つの特徴を
図6に示す。
【0071】
実施例2
[0086]本実施例は、パターン認識アルゴリズムによる実施例1に記載の特徴MFSの使用によって汚染物質をどのように識別可能であるかを明らかにする。
【0072】
[0087]実施例1に記載の重量測定センサを備えた航空機空気汚染物質分析装置を使用して、タービンエンジンオイル(AEROSHELL 560(Shell))、油圧流体(Exxon HYJET(Exxon))、及び除氷流体を分析装置に順次試した場合の周波数シフト対時間を決定する。
【0073】
[0088]結果を
図7に示すが、応答(平均MFS)は、オイル及び油圧流体で類似しており、除氷流体で異なる。
【0074】
[0089]
図8に示すように、特徴MFSの使用は、除氷流体を油圧流体及びタービンエンジンオイルから区別可能であることを示している。油圧流体及びタービンエンジンオイルの場合、Z300被覆収集器の隣の重量測定センサからのMFS特徴に対する多孔質シリカ被覆収集器の隣の重量測定センサからのMFS特徴の比は、0〜約2の範囲であるが、除氷流体の場合の比は、約12〜約23の範囲である。
【0075】
実施例3
[0090]本実施例は、パターン認識アルゴリズムによる実施例1に記載の特徴SB/SAの使用によって汚染物質をどのように識別可能であるかを明らかにする。
【0076】
[0091]実施例1に記載の重量測定センサを備えた航空機空気汚染物質分析装置を使用して、タービンエンジンオイル(AEROSHELL 560(Shell))、油圧流体(Exxon HYJET(Exxon))、及び除氷流体を分析装置に順次試した場合の周波数シフト対時間を決定する。
【0077】
[0092]
図9A及び
図9Bに示すように(
図9Bは、比の平均を示している)、特徴SB/SAの使用は、比が油圧流体で高く、除氷流体で中間に近く、タービンエンジンオイルで低いことを示している。
【0078】
実施例4
[0093]本実施例は、パターン認識アルゴリズムによる実施例1に記載の特徴S5の使用によって汚染物質をどのように識別可能であるかを明らかにする。
【0079】
[0094]疎水性ゼオライト被膜Z300(Zeochem LLC、Louisville、KY)で被覆された膜を含む収集器からの脱着を一対の重量測定センサが測定し、別の疎水性ゼオライト被膜Z110(Zeochem LLC、Louisville、KY))で被覆された膜を含む収集器からの脱着をもう一対の重量測定センサが測定する二対の重量測定センサを備えた航空機空気汚染物質分析装置を使用して、タービンエンジンオイル(AEROSHELL 560(Shell))及び油圧流体の周波数シフト対時間を決定する。
【0080】
[0095]
図10に示すように、特徴S5の使用は、タービンエンジンオイルからの油圧流体(値が約1.2を上回る)の区別に役立ち、油圧流体のデータが低い(円で囲んだ値が約0.9〜約1.05の範囲)ことを示している。
【0081】
実施例5
[0096]本実施例は、パターン認識アルゴリズムによる実施例1に記載の特徴MFSの使用によって汚染物質をどのように識別可能であるかを明らかにする。
【0082】
[0097]親水性ゼオライト被膜Z810(Zeochem LLC、Louisville、KY)で被覆された膜を含む収集器からの脱着を一方の重量測定センサが測定し、疎水性ゼオライト被膜Z110(Zeochem LLC、Louisville、KY))を有する膜を含む収集器からの脱着を他方の重量測定センサが測定する2つの重量測定センサを備えた航空機空気汚染物質分析装置を使用して、タービンエンジンオイル(AEROSHELL 560(Shell))及び油圧流体の周波数シフト対時間を決定する。
【0083】
[0098]
図11A及び
図11Bに示すように、MFSの使用は、タービンエンジンオイル及び油圧流体からの除氷流体の区別に役立つ。
図11Bにおいては、除氷流体のデータが低く(円で囲んだ値が約0.2)、タービンエンジンオイル及び油圧流体の値は、約0.65〜約0.85の範囲内である。
【0084】
[0099]本明細書に引用の公開公報、特許出願公報、及び特許公報を含むすべての参考文献は、それぞれが援用を個別且つ具体的に指示され、そのすべてが本明細書に参照により援用され示されたのと同じ程度まで参照により本明細書に援用する。
【0085】
[0100]本発明の説明の文脈(特に、以下の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」、「an」、「the」、及び「少なくとも1つ(at least one)」、並びに類似の指示対象の使用は、文脈上の別段の指示又は明らかな矛盾がない限り、単数形及び複数形の両者を含むものと解釈されるものとする。少なくとも1つの項目の一覧が後続する用語「少なくとも1つ(at least one)」の使用(例えば、「A及びBのうちの少なくとも1つ(at least one of A and B)」)は、文脈上の別段の指示又は明らかな矛盾がない限り、一覧の項目から選択される1つの項目(A若しくはB)又は一覧の項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味するものと解釈されるものとする。また、用語「備える(comprising)」、「有する(having)」、「具備する(including)」、及び「含む(containing)」は、別段の指定のない限り、オープンエンドな用語(すなわち、「〜を含むが、これらに限定されない(including,but not limited to)」を意味する)として解釈されるものとする。本明細書における値の範囲の記述は、本明細書における別段の指示のない限り、当該範囲内の各別個の値を個々に参照する簡潔な方法として機能することを意図したに過ぎず、各別個の値は、本明細書において個々に列挙されるかの如く、本明細書に援用する。本明細書に記載のすべての方法は、文脈上の別段の指示又は明らかな矛盾がない限り、任意の好適な順序で実行可能である。本明細書に提示のありとあらゆる例又は例示的な表現(例えば、「〜等(such as)」)の使用は、本発明をより明確化することのみを意図しており、別段の要求のない限り、本発明の範囲に何ら制約を課すものではない。本明細書の表現は、本発明の実施に必須の如何なる非請求要素を示すとも解釈されないものとする。
【0086】
[0101]本明細書においては、本発明者らが把握している本発明を実行するための最良の形態を含めて、本発明の好適な実施形態を説明している。上記説明を読めば、これら好適な実施形態の変形例が当業者には明らかとなり得る。本発明者らは、このような変形例を熟練技術者が必要に応じて採用することを予想しており、本明細書の具体的な記述とは別に本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、準拠法が許可する添付の特許請求の範囲に列挙の主題のすべての改良物及び同等物を含む。さらに、文脈上の別段の指示又は明らかな矛盾がない限り、上述の要素は、その考え得るすべての変形例において、任意の組み合わせが本発明に包含される。