【解決手段】本発明は、レンズ(12)を直線移動させるためのレンズ駆動装置(10)であって、送りねじ(16a)が形成された回転軸(16)と、この回転軸を回転可能に支持するラジアル滑り軸受(38)けと、このラジアル滑り軸受けを支持する軸受け支持機構(40)と、回転軸を回転駆動する駆動用モータ(18)と、送りねじに螺合され、回転軸が回転駆動されると、回転軸の軸線方向に移動されるキャリッジ(12a)と、を有し、ラジアル滑り軸受けは、その外周面の少なくとも一部が球面(38a)から構成され、軸受け支持機構は、ラジアル滑り軸受けの球面と当接する支持面(45a)を備えており、ラジアル滑り軸受けを、球面の中心点(C)を中心に回動可能に支持することを特徴としている。
上記軸受け支持機構は、上記球面を両側から挟む上記支持面としての支持球面を夫々備えた2つの支持部材と、上記支持球面が上記球面に押しつけられるように、上記支持部材を付勢する球面付勢部材と、を備える請求項1記載のレンズ駆動装置。
さらに、上記駆動用モータ及び上記軸受け支持機構を保持するフレーム部材を有し、上記軸受け支持機構は外周面を備え、この外周面は上記ラジアル滑り軸受けの周囲に位置し、上記フレーム部材は、上記軸受け支持機構を保持するように、上記軸受け支持機構の外周面を受け入れる保持内壁面を備え、
上記軸受け支持機構の外周面と、上記フレーム部材の保持内壁面は所定の距離離れた状態で固定されている請求項1又は2に記載のレンズ駆動装置。
上記軸受け支持機構の外周面と上記フレーム部材の保持内壁面の間には、接着剤が充填され、上記軸受け支持機構が上記フレーム部材に固定されている請求項3記載のレンズ駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<カメラの構成>
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるレンズ駆動装置、及びそれを備えたレンズユニット、カメラを説明する。
図1は、本発明の実施形態によるカメラの概略断面図である。
図2は、本発明の実施形態によるレンズ駆動装置の断面図である。
図3は、本発明の実施形態によるレンズ駆動装置に備えられた駆動用モータを拡大して示す断面図である。
図4は、本発明の実施形態によるレンズ駆動装置に備えられた軸受け支持機構を拡大して示す断面図である。
図5は、本発明の実施形態によるレンズ駆動装置の回転軸の端部を拡大して示す図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の実施形態によるカメラ1は、レンズユニット2と、このレンズユニット2が取り付けられたカメラボディ4と、を有する。レンズユニット2は、レンズ鏡筒6と、このレンズ鏡筒6の中に配置された複数のレンズ8と、レンズ駆動装置10と、が内蔵されている。レンズ駆動装置10は、レンズユニット2の光軸A方向にキャリッジ12aを移動可能に構成されており、これにより、キャリッジ12aに取り付けられたフォーカシングレンズ12が直線移動されるようになっている。
【0015】
一方、カメラボディ4には撮像素子14が内蔵されている。レンズユニット2に入射した光は、レンズ鏡筒6内の各レンズ8及びフォーカシングレンズ12によって、撮像素子14上に合焦される。オートフォーカス設定時には、カメラボディ4から送られる制御信号に基づいてレンズ駆動装置10が作動され、ピント調整が実行される。マニュアルフォーカス設定時には、レンズユニット2に設けられたフォーカスリング6aの操作に基づいてレンズ駆動装置10が作動され、ピント調整が実行される。
【0016】
<レンズ駆動装置の全体構成>
次に、
図2乃至
図5を参照して、本発明の実施形態によるレンズ駆動装置10の構成を説明する。
図2に示すように、レンズ駆動装置10は、回転軸16と、この回転軸16を駆動する駆動用モータ18と、回転軸16の先端を回転可能に支持する軸受け部20と、駆動用モータ18と軸受け部20を連結するフレーム部材22と、を有する。なお、本明細書においては、レンズ駆動装置10の、駆動用モータ18が配置されている側(
図2における右側)を「モータ側」又は「基端側」と呼び、その反対側(
図2における左側)を「先端側」と呼ぶ。
【0017】
回転軸16は、リードスクリューとして機能するシャフトであり、その外周面の一部には雄ねじ山が形成されており、これが送りねじ16aを構成している。回転軸16の一方の端部には駆動用モータ18が取り付けられ、駆動用モータ18は、回転軸16を回転可能に支持すると共に、回転軸16を回転駆動するように構成されている。回転軸16の他方の端部は、軸受け部20によって回転可能に支持されている。従って、回転軸16は、送りねじ16aの両側で回転可能に支持されている。また、送りねじ16aの雄ねじ山には、キャリッジ12aに形成された雌ねじが螺合されており、回転軸16を回転させることにより、キャリッジ12aが光軸Aと平行に、回転軸16の軸線方向に直線移動される。
【0018】
フレーム部材22は、細長い薄板から形成されたベースプレート22aと、このベースプレート22aの先端部に取り付けられた軸受け支持部材22bと、を有する。ベースプレート22aのモータ側は、ほぼ直角に折り曲げられており、この曲げられた部分に駆動用モータ18が取り付けられている。また、駆動用モータ18の反対側の、ベースプレート22aの端部には、軸受け支持部材22bが取り付けられ、軸受け部20の一部を構成している。
【0019】
<駆動用モータの構成>
次に、
図3を参照して、レンズ駆動装置10に備えられた駆動用モータ18の構成を説明する。
図3に示すように、駆動用モータ18は、モータケース24と、このモータケース24に取り付けられたステータコア26と、このステータコア26に取り付けられたコイル28と、回転軸16に取り付けられたマグネット30と、を有する。また、駆動用モータ18の、先端側の端部には、モータ側ラジアル滑り軸受け32が設けられており、回転軸16を回転可能に支持している。
【0020】
モータケース24は、ステータコア26及びモータ側ラジアル滑り軸受け32を支持するように形成された強化樹脂製の部材であり、ベースプレート22aの折り曲げられた部分に固定されている。モータ側ラジアル滑り軸受け32は、これらのベースプレート22aの折り曲げ部分及びモータケース24を貫通して延び、回転軸16を回転可能に支持している。なお、本実施形態においては、モータ側ラジアル滑り軸受け32として、焼結含油軸受けが使用されている。
【0021】
また、モータケース24の、基端側の端部には、スラスト受け凹部24aが形成されている。このスラスト受け凹部24aの中には、第1弾性部材であるモータ側のゴムダンパ34と、摺動部材であるモータ側のスラスト受け36が保持されている。
【0022】
ステータコア26は、円板部26aと、この円板部26aの周囲から延びる6本の脚部26b(
図3には2本のみ図示)を有するスチール製の部材である。円板部26aは、回転軸16に直交する方向に向けられた円板状の部分であり、この中心を貫通するようにモータ側ラジアル滑り軸受け32が取り付けられている。6本の脚部26bは、円板部26aの周囲から延びる細長い板状の部分であり、円板部26aの周囲に等間隔に設けられている。また、各脚部26bは、円板部26aに対してほぼ直角に曲げられ、回転軸16の端部を取り囲むように、基端側に向けて回転軸16とほぼ平行に延びている。なお、本実施形態においては、ステータコア26に6本の脚部26bが設けられているが、脚部の数は、これに限定されるものではない。
【0023】
コイル28は、ステータコア26の各脚部26bの基端部に夫々導線を巻くことにより形成されている。これらのコイル28に電流を流すことにより、ステータコア26の各脚部26bが磁化され、マグネット30との間に駆動力が発生する。
【0024】
マグネット30は、ほぼ円筒形に形成された永久磁石であり、回転軸16の端部に固定され、回転軸16はマグネット30内側を貫通して延びている。マグネット30は、その円周に沿ってS極とN極が交互に形成されており、マグネット30の周囲に配置されているステータコア26の各脚部26bが順次磁化されることにより、マグネット30に回転力が発生する。
【0025】
モータケース24のスラスト受け凹部24aは、マグネット30を貫通して延びる回転軸16の端面に対向するように設けられており、スラスト受け凹部24aの中にはモータ側のゴムダンパ34とスラスト受け36が配置されている。ゴムダンパ34は、スラスト受け凹部24a内に配置されたシリコーンゴム製のブロックであり、弾性圧縮されることにより、その弾性回復力で回転軸16を先端側に向けて第1の方向(
図3においては左方向)に付勢している。スラスト受け36は、スラスト受け凹部24aに、ゴムダンパ34を覆うように配置されたPEEK樹脂製の円形の薄板であり、回転軸16の端面と、ゴムダンパ34の間に配置されている。従って、スラスト受け36はゴムダンパ34の弾性回復力によって回転軸16の端面に押しつけられ、ゴムダンパ34は、スラスト受け36を介して回転軸16の端面をスラスト方向に付勢する。
【0026】
なお、モータ側のゴムダンパ34として、シリコーンゴムの他、ウレタンゴムやニトリルゴム等の樹脂材料又はゴム材料の弾性部材を使用することができる。また、モータ側のスラスト受け36として、PEEK樹脂の他、ポリスライダー等を使用することができる。
【0027】
<軸受け部の構成>
次に、
図4を参照して、本実施形態のレンズ駆動装置10の軸受け部20の構成を説明する。
図4に示すように、軸受け部20は、駆動用モータ18の反対側で、回転軸16の先端を回転可能に支持するように構成されている。軸受け部20は、軸受け支持部材22bと、先端側のラジアル滑り軸受け38と、このラジアル滑り軸受け38を支持する軸受け支持機構40と、から構成されている。
【0028】
軸受け支持部材22bはフレーム部材22の一部を構成しており、駆動用モータ18の反対側の端部で、ベースプレート22aに固定されている。軸受け支持部材22bは概ね円筒形の部材であり、その内側の保持内壁面22cの中に軸受け支持機構40が受け入れられている。
【0029】
ラジアル滑り軸受け38は、回転軸16の先端側の端部を回転可能に支持する滑り軸受けであり、回転軸16の先端部は、ラジアル滑り軸受け38の中心を貫通して延びている。また、ラジアル滑り軸受け38の外周面は、中心点C(所定の中心点)を中心とする球面38aから構成されている。この球面38aの中心点Cは、回転軸16の中心軸線上に位置する。なお、本実施形態においては、ラジアル滑り軸受け38として、焼結含油軸受けが使用されており、回転軸16の外周面とラジアル滑り軸受け38の内周面の間のクリアランスは約5μm〜約15μmに設定することが好ましい。また、上述した、モータ側ラジアル滑り軸受け32と回転軸16の外周面との間のクリアランスについても同様である。
【0030】
軸受け支持機構40は、ハウジング42と、このハウジング42の内側に収容された支持部材である一対の軸受け抑え44、45と、軸受け抑えを付勢する板バネであるウェーブワッシャー46と、第2弾性部材である先端側のゴムダンパ48と、摺動部材であるスラスト受け50から構成されている。
【0031】
ハウジング42は、円形断面のキャップ状の部材であり、内部に軸受け支持機構40の各部品を収容している。ハウジング42の外周面42aは、軸受け支持部材22bの保持内壁面22cの内側に受け入れられ、固定されている。なお、ハウジング42の外周面42aは軸受け支持機構40の外周面を構成し、軸受け支持部材22bの保持内壁面22cは、フレーム部材22の保持内壁面を構成している。
【0032】
さらに、ハウジング42の外周面42aと軸受け支持部材22bの保持内壁面22cの間には所定の隙間が設けられている。後述するように、この隙間には、所定の調整を行った後、接着剤58が充填され、軸受け支持機構40がフレーム部材22に固定される。即ち、外周面42aと保持内壁面22cは、所定距離だけ離れて固定されている。なお、保持内壁面22cの内径と、外周面42aの外径の差は約30μm乃至約200μmに設定することが好ましく、本実施形態においては、約50μm(マイクロメートル)に設定されている。
【0033】
ハウジング42の内側には、円形断面の段付きの凹部が形成されており、奥側に位置する小径凹部42bには、ゴムダンパ48、及びスラスト受け50が配置され、手前側に位置する大径凹部42cには、軸受け抑え44、45が配置されている。
【0034】
ゴムダンパ48は、シリコーンゴム製のブロックであり、弾性圧縮されることにより、その弾性回復力で回転軸16を基端側に向けて、第1の方向とは反対の第2の方向(
図4においては右方向)に付勢している。スラスト受け50は、ハウジング42の小径凹部42bに、ゴムダンパ48を覆うように配置されたPEEK樹脂製の円形の薄板であり、回転軸16の先端側の端面と、ゴムダンパ48の間に配置されている。従って、スラスト受け50はゴムダンパ48の弾性力によって回転軸16の端面に押しつけられ、ゴムダンパ48は、スラスト受け50を介して回転軸16の端面をスラスト方向に付勢する。
【0035】
なお、先端側のゴムダンパ48として、シリコーンゴムの他、ウレタンゴムやニトリルゴム等の樹脂材料又はゴム材料の弾性部材を使用することができる。また、先端側のスラスト受け50として、PEEK樹脂の他、ポリスライダー等を使用することができる。
【0036】
上述したように、回転軸16の基端側の端面は、ゴムダンパ34及びスラスト受け36によって先端側に向けて付勢され(
図3)、回転軸16の先端側の端面は、ゴムダンパ48及びスラスト受け50によって基端側に向けて付勢されている(
図4)。このため、回転軸16は、スラスト方向にガタ無く支持されている。加えて、回転軸16の各端面は、PEEK樹脂製のスラスト受け36、50を介して付勢されているため、回転軸16と各スラスト受けの間の摺動抵抗が小さく、駆動用モータ18が発生するトルクのロスを抑制することができる。
【0037】
さらに、
図5に示すように、回転軸16の両側の端面は(
図5には片側のみ図示)、球面から構成された球面形状16bにされており、回転軸16は、その中心軸線付近で、非常に小さな接触面積で各スラスト受けと接触する。これにより、回転軸16と各スラスト受け36、50との間の接触に基づいて発生する回転抵抗を更に小さくすることができる。また、球面形状16bの曲率半径は、回転軸16の半径よりも大きく形成されているが、変形例として、球面形状の曲率半径を小さく形成することもできる。
【0038】
図6は、変形例による回転軸の端部を拡大して示す図である。
図6に示すように、変形例による回転軸116は、その球面形状116bの曲率半径が回転軸116の半径とほぼ等しく形成されている。これにより、本変形例による回転軸116の端面は、概ね半球面から構成される。回転軸端部の球面形状の曲率半径は、各スラスト受けの材質、各ゴムダンパによる付勢力の大きさ、回転軸の材質等に基づいて、回転抵抗が小さく、耐摩耗性が高くなるように適宜設定することができる。
【0039】
次に、
図4を再び参照して、先端側のラジアル滑り軸受け38の支持構造を説明する。
図4に示すように、ラジアル滑り軸受け38は、ハウジング42の大径凹部42cの中で、一対の軸受け抑え44、45によって挟まれることにより、支持されている。
【0040】
軸受け抑え44、45は、概ね円環状の部材であり、ラジアル滑り軸受け38の両側に、ラジアル滑り軸受け38を挟むように配置されている。これら軸受け抑え44、45の外径は、ハウジング42の大径凹部42cの内径と略同一であり、軸受け抑え44、45は、ガタ無く大径凹部42cの中に受け入れられている。
【0041】
また、上述したように、ラジアル滑り軸受け38の外周には球面38aが形成されている。一方、各軸受け抑え44、45の内周には、球面38aと当接する支持面が設けられており、ラジアル滑り軸受け38を球面38aの中心点Cを中心に回動可能に支持している。即ち、軸受け抑え44、45には、球面38aと合致した形状の支持球面44a、45aが夫々形成されており、ラジアル滑り軸受け38は、これらの支持球面44a、45aによって両側から挟まれて支持される。これにより、ラジアル滑り軸受け38によって支持されている回転軸16は、中心点Cを支点として傾くことが許容され、レンズ駆動装置10を構成する各部材の形状誤差、組み立て誤差等を吸収することができる。
【0042】
さらに、ハウジング42の大径凹部42cと小径凹部42bの間の段部には、球面付勢部材であるウェーブワッシャー46が配置されている。ウェーブワッシャー46は、ドーナツ型の薄い金属板を波形に湾曲させることにより形成されている。このウェーブワッシャー46は、圧縮力を加えることにより、波形が弾性変形して、厚さが薄くなるように構成されている。
【0043】
軸受け支持機構40の組み立てに際しては、まず、ハウジング42の小径凹部42bの中に、ゴムダンパ48、スラスト受け50を順に配置する。次いで、ハウジング42の大径凹部42cの中に、奥側から順に、ウェーブワッシャー46、軸受け抑え44、ラジアル滑り軸受け38、軸受け抑え45を配置する。この状態で、ハウジング42の中に押し込むように、軸受け抑え45を所定の力で押圧すると、ウェーブワッシャー46が弾性変形される。さらに、ウェーブワッシャー46が所定量弾性変形された状態で、ハウジング42と軸受け抑え45の接触部に接着剤52を塗布し、硬化させる。なお、本実施形態においては、接着剤52として、紫外線の照射、又は空気を遮断することによって硬化する紫外線硬化・嫌気性硬化接着剤が使用されている。しかしながら、接着剤52として、必要な接着力を有する任意の接着剤を使用することができる。
【0044】
接着剤52が硬化した状態では、軸受け抑え44は、ウェーブワッシャー46の弾性回復力によってラジアル滑り軸受け38に向けて付勢される。この付勢力により、軸受け抑え44の支持球面44a及び軸受け抑え45の支持球面45aは、ラジアル滑り軸受け38の球面38aに押しつけられる。即ち、ラジアル滑り軸受け38の球面38aは、支持球面44a、45aによって両側から挟まれ、ラジアル滑り軸受け38は、軸受け抑え44、45によってガタ無く、回動可能に支持される。
【0045】
<軸受け支持機構の位置調整方法>
次に、
図7を参照して、軸受け支持機構の取り付け位置調整方法を説明する。
図7は、軸受け支持機構40の取り付け位置調整方法を概略的に示す図である。
【0046】
上述したように、軸受け支持機構40を構成するハウジング42の外周面42aと、フレーム部材22を構成する軸受け支持部材22bの保持内壁面22cの間には、所定の隙間が設けられている(
図4)。従って、軸受け支持機構40のハウジング42を、フレーム部材22の保持内壁面22cに挿入した状態では、これらの間にガタが存在する。軸受け支持機構の取り付け位置調整においては、
図7に示すように、この状態まで組み立てられたレンズ駆動装置10を、駆動用モータ18を下側にして、調整台54に縦方向に取り付ける。
【0047】
次に、軸受け支持機構40のハウジング42に押圧ロッド56を上方から押しつけ、所定の力でハウジング42を下方に押し下げる。これにより、モータケース24のスラスト受け凹部24aに収容されたゴムダンパ34(
図3)、及びハウジング42の小径凹部42bに収容されたゴムダンパ48(
図4)が所定量弾性変形される。これに伴い、回転軸16には、両端からスラスト方向に所定の付勢力が加えられる。
【0048】
この状態で、駆動用モータ18のコイル28に電流を流し、回転軸16を一定の回転数で回転させる。次いで、回転軸16を回転させながら調整台54を水平方向に微少距離移動させると共に、駆動用モータ18のコイル28に流れる電流を計測する。なお、調整台54は、
図7に矢印で示す方向の他、図の紙面に垂直な方向にも移動させる。このような調整台54の移動に伴い、軸受け支持部材22bに受け入れられているハウジング42は、保持内壁面22cの中で僅かに移動される。また、調整台54の移動に伴い、ラジアル滑り軸受け38によって支持されている回転軸16も、球面38aの中心点Cを支点として僅かに傾斜される。
【0049】
このように、調整台54を水平面内で二次元的に移動させながら駆動用モータ18のコイル28に流れる電流を計測し、電流が最少となる位置に調整台54を固定する。即ち、ハウジング42が保持内壁面22cの中の適正な位置に位置決めされた状態では、回転軸16の回転抵抗が最小になるため、所定速度で駆動用モータ18を駆動するために必要な電流が最少となる。このように、レンズ駆動装置10の各部品が適正位置に位置決めされた状態で、ハウジング42と保持内壁面22cの間の隙間に接着剤58を充填し、硬化させる。なお、本実施形態においては、接着剤58として、紫外線の照射、又は空気を遮断することによって硬化する紫外線硬化・嫌気性硬化接着剤が使用されている。しかしながら、接着剤58として、必要な接着力を有する任意の接着剤を使用することができる。これにより、軸受け支持機構40の位置調整、及びフレーム部材22への取り付けが完了する。
【0050】
<本発明の実施形態の効果>
本発明の実施形態のレンズ駆動装置10によれば、ラジアル滑り軸受け38を支持する軸受け支持機構40が球面38aと当接する支持面を備え、ラジアル滑り軸受け38を球面38aの中心点Cを中心に回動可能に支持するので、球面38aの中心点Cを支点とする回転軸16の傾斜が許容される(
図4)。このため、回転軸16の外周面とラジアル滑り軸受け38の内周面の間のクリアランスを小さく設定した場合でも、回転軸16の回転抵抗が大きく増大することはない。この結果、回転軸16の外周面とラジアル滑り軸受け38の内周面の間のクリアランスを小さく設定することが可能となり、回転軸16の振れを抑制して、高速、高精度でレンズを移動させることが可能となる。
【0051】
また、本実施形態のレンズ駆動装置10によれば、球面付勢部材であるウェーブワッシャー46が、支持球面45aが球面38aに押しつけられるように支持部材である軸受け抑え44を付勢するので、ラジアル滑り軸受け38の球面38aと、軸受け抑え44、45の支持球面44a、45aとの間のガタを実質的に除去することが可能になり、回転軸16の振れをさらに抑制することができる。
【0052】
さらに、本実施形態のレンズ駆動装置10によれば、軸受け支持機構40の外周面42aとフレーム部材22の保持内壁面22cは所定の距離離れた状態で固定されているので、軸受け支持機構40はフレーム部材22に対し、回転軸16の径方向に移動することが許容される。この軸受け支持機構40とフレーム部材22の間の相対移動により、各部品の形状誤差や、組付誤差を吸収することができ、回転軸16の回転抵抗が少ない状態で両者を固定することが可能になる。これにより、回転軸16の外周面とラジアル滑り軸受け38の内周面の間のクリアランスを小さく設定した場合でも、回転軸16の回転抵抗が大きく増大することがなく、回転軸16の振れを抑制して、高速、高精度でフォーカシングレンズ12を移動させることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態のレンズ駆動装置10によれば、軸受け支持機構40の外周面42aとフレーム部材22の保持内壁面22cの間に接着剤58が充填され、両者が固定されているので、軸受け支持機構40が、回転軸16の回転抵抗が小さくなる位置に調整された状態で、軸受け支持機構40を容易にフレーム部材22に固定することができる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、レンズ駆動装置はフォーカシングレンズを直線移動させるために使用されていたが、本実施形態のレンズ駆動装置は、フォーカシングレンズ以外の任意のレンズの移動に適用することができる。また、上述した実施形態においては、撮像素子を備えたディジタルスチルカメラに本発明が適用されていたが、ビデオカメラや、フィルムカメラに本発明を適用することもできる。また、上述した実施形態においては、回転軸の両側の端面が夫々スラスト方向に付勢されていたが、回転軸の途中に段部を設け、この段部にスラスト方向の付勢力を加えることもできる。