【解決手段】 実施形態の磁気記録装置は、初期過程で前記ディスクの記録信号品質を測定して保存し、データ記録前に前記記録信号品質を検査し、検査で得られた記録信号品質が保存された初期過程での記録信号品質と比較して基準を満たしているか判定し、判定結果に基づいて、基準を満たすように光照射素子の光照射パワーを調整し、調整結果に基づいてリードオフセット量を決定し、決定されたリードオフセット量に基づいてリードヘッドの位置をシフトするように制御する。
前記位置制御処理は、前記検査処理で複数のライトオフセット量で記録信号品質を検査し、信号品質が最良となるライトオフセット量に決定することを特徴とする請求項1記載の磁気記録装置。
前記位置制御処理は、前記光照射パワーを調整したときの磁気ライト幅と前記保存処理で保存された磁気ライト幅との差分の半分の値に前記リードヘッドの位置をシフトするように制御する請求項6記載の磁気記録装置。
前記位置制御処理は、前記検査処理で複数のリードオフセット量で記録信号品質を検査し、信号品質が最良となるリードオフセット量に決定することを特徴とする請求項6記載の磁気記録装置。
第1トラックおよび前記第1トラックと部分的に重なる第2トラックとを含む複数のトラック群からなる複数のバンドと、前記バンドの間に設けられるガードバンドとを有するディスクと、
前記ディスクを加熱する光を照射する光照射素子と、前記ディスクの前記光照射素子が照射した前記光で加熱した範囲にデータを書き込むライトヘッドと、前記ディスクの前記トラック群内のトラックからデータを読み込むリードヘッドとを備える磁気ヘッドと、
前記ライトヘッド及びリードヘッドの位置を制御するコントローラと
を具備し、
前記コントローラは、
初期過程で前記ディスクの記録信号品質を測定して保存する保存処理と、
データ記録前に前記記録信号品質を検査する検査処理と、
前記検査処理で得られた前記記録信号品質が前記保存処理で保存された初期過程での記録信号品質と比較して基準を満たしているか判定する判定処理と、
前記判定処理の判定結果に基づいて、前記基準を満たすように前記光照射素子の光照射パワーを調整する調整処理と、
前記調整処理の調整結果に基づいてライトオフセット量を決定し、決定されたライトオフセット量に基づいて前記ライトヘッドの位置を制御する位置制御処理と
を備え、
前記ガードバンドの幅が初期状態のガードバンドの幅よりも小さく、かつ、前記バンド内の最後に記録されるトラックの磁気ライト幅が初期状態のバンド内の最後に記録されるトラックの初期磁気ライト幅よりも大きいことを満たす磁気記録装置。
第1トラックおよび前記第1トラックと部分的に重なる第2トラックとを含む複数のトラック群からなる複数のバンドと、前記バンドの間に設けられるガードバンドとを有するディスクと、
前記ディスクを加熱する光を照射する光照射素子と、前記ディスクの前記光照射素子が照射した前記光で加熱した範囲にデータを書き込むライトヘッドと、前記ディスクの前記トラック群内のトラックからデータを読み込むリードヘッドとを備える磁気ヘッドと、
前記ライトヘッド及びリードヘッドの位置を制御するコントローラと
を具備し、
前記コントローラは、
初期過程で前記ディスクの記録信号品質を測定して保存する保存処理と、
データ記録前に前記記録信号品質を検査する検査処理と、
前記検査処理で得られた前記記録信号品質が前記保存処理で保存された初期過程での記録信号品質と比較して基準を満たしているか判定する判定処理と、
前記判定処理の判定結果に基づいて、前記基準を満たすように前記光照射素子の光照射パワーを調整する調整処理と、
前記調整処理の調整結果に基づいてリードオフセット量を決定し、決定されたリードオフセット量に基づいて前記リードヘッドの位置を制御する位置制御処理と
を備え、
前記ガードバンドの幅が初期状態のガードバンドの幅よりも小さく、かつ、前記バンド内の最後に記録されるトラックの磁気ライト幅が初期状態のバンド内の最後に記録されるトラックの初期磁気ライト幅よりも大きいことを満たす磁気記録装置。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る磁気記録装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る磁気記録装置の磁気ヘッドおよび磁気ディスクを拡大して示す側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る磁気記録装置の磁気ヘッドの構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る磁気記録装置の磁気ヘッドの記録ヘッド部分及び磁気ディスクの構成を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る磁気記録装置の実施例1の初期情報保存処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態に係る磁気記録装置の実施例1の検査処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態に係る磁気記録装置の実施例1、比較例1、比較例2のレーザーパワーと磁気ライト幅との関係を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る磁気記録装置の実施例1、比較例1、比較例2のレーザーパワーとビットエラーレートとの関係を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る磁気記録装置の実施例1、比較例1、比較例2のトラックとライトヘッドの位置との関係を示す模式図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る磁気記録装置の実施例1、比較例1、比較例2のトラックとリードヘッドの位置との関係を示す模式図である。
【
図11】
図11は、実施形態の説明に用いる比較例3のレーザーパワーと磁気ライト幅との関係を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態の説明に用いる比較例3のレーザーパワーとビットエラーレートとの関係を示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態の説明に用いる比較例3のトラックとライトヘッド、リードヘッドとの位置関係を示す模式図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る磁気記録装置の実施例2の検査処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、実施形態に係る磁気記録装置の実施例3の検査処理の流れを示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、実施形態に係る磁気記録装置の実施例3、比較例4、比較例5のレーザーパワーと磁気ライト幅との関係を示す図である。
【
図17】
図17は、実施形態に係る磁気記録装置の実施例3、比較例4、比較例5のレーザーパワーとビットエラーレートとの関係を示す図である。
【
図18】
図18は、実施形態に係る磁気記録装置の実施例3、比較例4、比較例5のトラックとライトヘッドとの位置関係を示す模式図である。
【
図19】
図19は、実施形態に係る磁気記録装置の実施例3、比較例4、比較例5のトラックとリードヘッドとの位置関係を示す模式図である。
【
図20】
図20は、実施形態に係る磁気記録装置の実施例4の検査処理の流れを示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、実施形態に係る磁気記録装置の実施例5のトラックとリードヘッドとの位置関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態につき図面を参照して説明する。
(実施形態)
図1は、本実施形態に係る磁気記録装置1の構成を示すブロック図である。
磁気記録装置1は、後述するヘッドディスクアセンブリ(head-disk assembly:HDA)と、ドライバIC20と、ヘッドアンプ集積回路(以下、ヘッドアンプIC)30と、揮発性メモリ70と、不揮発性メモリ80と、バッファメモリ(バッファ)90と、1チップの集積回路からなるシステムコントローラ130とを備える。また、磁気記録装置1は、ホストシステム(ホスト)100と接続され得る。
【0010】
HDAは、磁気ディスク(以下、ディスク)10と、スピンドルモータ(SPM)12と、磁気ヘッド(以下、ヘッド)15を搭載しているアーム13と、ボイスコイルモータ(VCM)14とを有する。ディスク10は、スピンドルモータ12により回転する。アーム13及びVCM14は、アクチュエータを構成している。アクチュエータは、VCM14の駆動により、アーム13に搭載されているヘッド15をディスク10上の所定の位置まで移動制御する。ディスク10およびヘッド15は、2つ以上の数が設けられてもよい。
【0011】
ディスク10は、データ領域に、瓦記録領域(SMR領域)11aと、メディアキャッシュ(media cache)領域11bと、が割り当てられている。瓦記録領域11aは、ホスト100からライト要求されたユーザデータ等が記録される。メディアキャッシュ領域11bは、瓦記録領域11aのキャッシュとして利用され得る。
【0012】
瓦記録領域11aは、隣接するトラック(以下、単に、隣接トラック)の一部に重なるように次のトラックのデータがライトされ、メディアキャッシュ領域11bよりトラック密度の高い記録領域である。瓦記録領域11aは、隣接トラックに一部分が重ね書きされる少なくとも1つのトラック(第1トラック)と、最後に重ね書きするトラック(第2トラック)とをそれぞれ含む複数のトラック群(以下、バンド領域BAnと称す)を備えている。第2トラックは、第1トラックよりもトラック幅が広い。バンド領域BAnは、ディスク10の1周分のトラック群で構成されている。以下で、データの書き込み時のヘッド15の軌跡(トラック)をライトトラックと称し、瓦記録により、隣接ライトトラックが重ね書きされた領域を除いた残りのライトトラックの領域をリードトラックと称する。瓦記録方式の第1トラックにおいて、ライトトラックの幅の中心位置(以下、トラックセンタ)と、リードトラックのトラックセンタとは、通常、一致しない。なお、ライトトラック及びリードトラックを単にトラックと称する場合もある。
【0013】
図2及び
図3を参照して、ヘッド15について説明する。
図2は、本実施形態に係る磁気記録装置のヘッド15および磁気ディスク10を拡大して示す側面図であり、
図3は、本実施形態に係るヘッド15の断面図である。
図2には、ディスク10の回転方向Aを示している。
【0014】
ヘッド15は、スライダ251を備える。スライダ251は、アーム13に取付けられたジンバル201に固定されている。
ヘッド15は、それぞれスライダ251に設けられたライトヘッド15W、リードヘッド15R、光発生素子(例えば、レーザダイオード)250、導波路255、及び近接場光照射素子(プラズモン・ジェネレータ、ニアフィールド・トランデューサ)256を備えている。
【0015】
リードヘッド15Rは、ディスク10上のデータトラックに記録されているデータをリードする。ライトヘッド15Wは、ディスク10上にデータをライトする。ライトヘッド15Wは、ディスク10の表面に対して垂直方向の磁界を発生させる。
光発生素子250は、(レーザ)光源であり、スライダ251の上部、あるいは、ジンバル201に設けられている。光発生素子250は、導波路255に光を供給する。なお、光発生素子250は、スライダ251、又はジンバル201以外の場所に設けられていてもよい。例えば、光発生素子250は、アーム13及びヘッド15の外部に設けられていてもよい。導波路255は、光発生素子250が発生する光を近接場光照射素子256に伝播する。
【0016】
近接場光照射素子256は、ディスク10に対向するスライダ251の下端部に設けられている。近接場光照射素子256は、データの書き込みを実行する際に、導波路255を介して伝播されたレーザ光から近接場光を発生し、ディスク10に近接場光を照射する。照射された近接場光は、ディスク10の記録層を加熱し、ディスク10の記録層の保磁力を低下させる。近接場光照射素子256は、金属部材を含む。なお、近接場光照射素子256の代わりに、光発生素子250から伝播する光を、ディスク10に集光するレンズが、備えられていてもよい。
【0017】
このように、近接場光照射素子256から発生する近接場光をディスク10に照射することにより、磁気記録装置1は、高保磁力媒体であるディスク10に高密度な磁気記録をすることができる。
また、近接場光照射素子256は、近接場光の照射範囲(又は、スポット範囲や、熱分布幅と称する場合もある)により、ライトヘッド15Wにより書き込まれる記録幅(あるいはトラック幅)を規定する。すなわち、記録幅は、近接場光の照射範囲の幅に対応する。例えば、近接場光照射素子256は、近接場光の照射範囲をライトヘッド15Wの幅よりも小さい幅で照射することで、ライトトラックのトラック幅(以下、単に、ライトトラック幅)を規定する。
【0018】
例えば、近接場光を照射する際に生じる熱等の要因により、近接場光照射素子の形状が変化した場合、近接場光の照射範囲が変動し、これに伴って、ライトヘッド15Wによるライトトラックのトラック幅が変化する。更に、ライトヘッド15Wによるライトトラックのトラック幅が変化することで、所定のバンド領域の幅(以下、単に、バンド幅)が変化する。
【0019】
図4は、上記ヘッド15のライトヘッド部分と垂直記録媒体である磁気ディスク10の横断面図である。
磁気ディスク10は、基板101上にディスク面に対して垂直方向に大きな異方性をもつ垂直記録層102と、その垂直記録層102の配向性を向上させるために垂直記録層102の下層部に配置された結晶配向層103と、加熱領域の広がりを抑制するために結晶配向層103の下層部に配置されたヒートシンク層104と、垂直記録層102の上部に配置された保護膜105を有する記録媒体である。
【0020】
ヘッド15は、記録用のライトヘッド15Wと再生用のリードヘッド15Rが分離された分離型磁気ヘッドである。ライトヘッド15Wは、ディスク面に対して垂直方向磁界を発生させる高透磁率材料からなる主磁極151と、主磁極151と磁気的に接合され、主磁極151に磁束を流すトレーリングヨーク152と、主磁極151のリーディング側に配置され、主磁極151の直下の磁路を効率的に閉じるために設けられたリターンシールド磁極153と、主磁極151に磁束を流すためにトレーリングヨーク152及びリターンシールド磁極153を含む磁路に巻きつくように配置されたコイル154と、主磁極151のリーディング側に配置され、磁気ディスク10の記録層102を加熱する近接場光を発生させる近接場光照射素子256と、近接場光発生用の光を伝播させるための導波路255とを備える。
【0021】
上記近接場光照射素子256は、Au、Pd、Pt、Rh若しくはIr、若しくはこれらのうちのいくつかの組合せからなる合金からなることが好ましい。主磁極151と近接場光照射素子256は絶縁層(図示せず)を介して接合される。この絶縁層は、SiO2、Al2O3等からなる酸化物であることが好ましい。
【0022】
(実施例1)
上記構成による瓦記録方式の磁気記録装置1において、実施例1の処理内容を説明する。
図5は実施例1の初期情報保存処理の流れを示すフローチャート、実施例1の検査処理の流れを示すフローチャートである。
磁気記録装置1は、製造過程で、最適なレーザーパワー、線記録密度、トラック密度に設定される。その際に、検査エリアにおいて、
図5に示す初期情報保存処理に従い、初期磁気ライト幅と初期ビットエラーレートを測定してそれぞれの記憶部(例えば不揮発性メモリ80に用意する)に保存する。検査エリアは磁気ディスク10のユーザデータエリアとは別のエリアまたはユーザデータエリアのバンドの一部でも良い。バンドは複数のトラック群からなる。瓦記録方式はこのバンドと呼ばれる単位で書き換えが行われる。
【0023】
図5において、磁気記録装置1はレーザーパワーを初期値に設定し(ステップS11)、検査エリアのトラック1に磁気ライト幅測定用の検査パターンを記録する(ステップS12)。レーザーパワーの初期値は製造過程で設定される。次に、記録トラックから磁気ライト幅を測定し(ステップS13)、測定値を初期磁気ライト幅として磁気ライト幅記憶部に保存する(ステップS14)。検査エリアのトラック1にビットエラーレート測定用の検査パターンを記録した後、隣接するトラック2に別のパターンを記録する(ステップS15)。瓦記録方式のためにトラック2はトラック1に部分的に重なるように重ね書きされる。重ね書きされたトラック1のビットエラーレートを測定し(ステップS16)、測定値を初期ビットエラーレートとしてビットエラーレート記憶部に保存する(ステップS17)。
【0024】
次に、磁気記録装置1は、保存データをユーザデータエリアへ記録する前に、
図6に示す検査処理を行う。
図6において、磁気記録装置1は、レーザーパワーを検査用の設定値(通常は初期値)に設定し(ステップS21)、検査エリアのトラック1に磁気ライト幅測定用の検査パターンを記録する(ステップS22)。次に、記録トラックから磁気ライト幅を測定し(ステップS23)、測定値を検査磁気ライト幅として、磁気ライト幅記憶部に保存した初期磁気ライト幅との差分の半分の値をΔライトオフセット値として決定する(ステップS24)。次に、ライトヘッドの位置を、検査エリアのトラック1にステップS24で決定されたΔライトオフセット値の分だけシフトするように制御し、ビットエラーレート測定用の検査パターンを記録した後、隣接するトラック2も同様にΔライトオフセット値の分だけライトヘッドの位置をシフトするように制御し、別の検査パターンを記録する(ステップS24)。瓦記録方式のために、トラック2はトラック1に部分的に重なるように重ね書きされる。重ね書きされたトラック1のビットエラーレートを測定し(ステップS26)、測定値を検査ビットエラーレートとし、この検査ビットエラーレートが所定のビットエラーレート(エラーレート記憶部に保存した初期ビットエラーレートでもよい)以下か判定を行う(ステップS27)。判定でNOの場合は、レーザーパワーを変更(設定値N+1:Nは自然数)して(208)、ステップS27でYESと判定されるまでステップS22〜S28の処理を繰り返す。判定でYESの場合は、保存データを記録するユーザデータエリアに対して、ライトヘッドの位置をΔライトオフセット値の分だけシフトするように制御して、データの記録を行う(ステップS29)。
【0025】
実施例1の効果を確認するにあたり、
図5に示した初期値保存処理フローに従って初期磁気ライト幅、初期ビットエラーレートを保存したのち、近接場光照射素子の経時変化を再現するため、加速条件として、高温環境下100℃、レーザーパワー30mWで1000時間印加し続けた。この経時変化は、具体的には近接場光照射素子を構成する材料の原子のマイグレーションによる素子の収縮である。
【0026】
その後、実施例1において、
図6に示した検査処理フローに従って検査パターンの記録を行った。ここで、比較例1として、
図6の検査処理フローにおいて、ステップS27の判定を行わず、ステップS29の動作を行う、つまり、レーザーパワーの設定は設定値1(初期レーザーパワー)から変更されないものとする。また、比較例2として、
図6の検査処理フローにおいて、ステップS29の動作時に、ライトヘッドの位置をΔライトオフセット値の分だけシフトする制御を行わない、つまりライトヘッドの位置を変更しないで記録するものとする。
【0027】
図7は、レーザーパワーに対する磁気ライト幅の測定値である。
図7は、
図5のステップS13および
図6のステップS23で測定され、ステップS13で測定された結果を初期状態として黒丸プロットで示し、ステップS23で測定された結果を白丸プロットで示す。
【0028】
図8は、レーザーパワーに対するビットエラーレートの測定値である。
図8は、
図5のステップS16および
図6のステップS26で測定され、ステップS16で測定された結果を初期状態として黒丸プロットで示し、ステップS26で測定された結果を白丸プロットで示す。
【0029】
図7、
図8で示されるように、近接場光照射素子の経時変化が起きる前後では、レーザーパワーに対する磁気ライト幅とビットエラーレートとの関係が変わってしまい、ビットエラーレートを所定のビットエラーレート以下になるまでレーザーパワーを増強した場合、磁気ライト幅は初期磁気ライト幅よりも広がってしまう。
【0030】
例えば、初期レーザーパワーを22.8mWとした場合、実施例1、比較例1、比較例2のレーザーパワーはそれぞれ26.8mW、22.8mW、26.8mWであった。
図8で示されるように、実施例1と比較例2の検査ビットエラーレートは初期ビットエラーレートと同等なのに対し、比較例1では検査ビットエラーレートが初期ビットエラーレートに対して大きく劣化している。このレーザーパワー設定値のまま保存エリアに記録を行うと、比較例1は正常にデータを記録できない問題が生じる。正常にデータを記録するためには、BPIを下げる必要があり、製造過程のBPIと変わってしまう。
【0031】
図9は保存エリアに記録されたトラックの状態とライトヘッドとの位置関係を示す模式図であり、(a)はトラックN−1、(b)はトラックN、(c)はトラックN+1で重ね書きを行った様子を示している。破線は記録時のライトヘッドの位置である。
図9において、実施例1と比較例1は、Δライトオフセット値の分だけライトヘッドの位置をシフトするように制御してデータの記録を行い、比較例2は初期状態と同じライトヘッドの位置でデータの記録を行った場合である。
【0032】
図10は保存エリアに記録されたトラックの状態とリードヘッドとの位置関係を示す模式図であり、(a)はトラックN−1、(b)はトラックN、(c)はトラックN+1で重ね書きを行った様子を示している。破線は再生時のリードヘッドの位置である。リードヘッドの位置の変更は行わないため、実施例1と比較例1はリードセンター位置に重ね書きで残ったトラックのセンターにおおよそ位置する。一方で、
図7に示すように、比較例2の磁気ライト幅は初期磁気ライト幅よりも広がっているため、ライトヘッドの位置の変更を行わない比較例2では、リードヘッドの位置と重ね書きで残ったトラックのセンターが大きくずれてしまい、正常にデータを再生できない問題が生じる。
【0033】
比較例3として、通常記録方式で
図5の初期情報保存処理と
図6の検査処理を行った場合を示す。通常記録方式のため、
図5のステップS15と
図6のステップS25の動作はトラック1のみで良く、トラック2には記録しない。また、ステップS24のΔライトオフセット値の決定と、ステップS29の動作時のΔライトオフセット値の分のシフト制御は行わない。
【0034】
図11は、レーザーパワーに対する磁気ライト幅の測定値である。
図11では、
図5のステップS13および
図6のステップS23で測定され、ステップS13で測定された結果を初期状態として黒丸プロットで示し、ステップS23で測定された結果を白丸プロットで示す。
【0035】
図12は、レーザーパワーに対するビットエラーレートの測定値である。
図12では、
図5のステップS16および
図6のステップS26で測定され、ステップS16で測定された結果を初期状態として黒丸プロットで示し、ステップS26で測定された結果を白丸プロットで示す。
【0036】
図11、
図12で示されるように、近接場光発行素子の経時変化が起きる前後では、レーザーパワーに対する磁気ライト幅とビットエラーレートとの関係が変わってしまい、ビットエラーレートを初期ビットエラーレート以下になるまでレーザーパワーを増強した場合、磁気ライト幅は初期磁気ライト幅によりも広がってしまう。
【0037】
図13は保存エリアに記録されたトラックの状態とライトヘッド、リードヘッドとの位置関係を示す模式図であり、通常記録方式のため、トラックNを記録後、トラックN−1、トラックN+1の順に記録された状態を示す。破線は記録時のライトヘッドと再生時のリードヘッドの位置である。
図13で示されるように、磁気ライト幅が広がってしまうため、トラックNに記録されたデータはトラックN−1、トラックN+1からの影響を受けて、劣化あるいは消去され、再生できなくなるリスクがある。通常記録方式ではトラックに複数回記録されるため、この劣化・消去のリスクはさらに大きくなる。これを避けるためには、磁気ライト幅の広がりに応じてトラックピッチを広げて記録する必要があるが、製造過程で設定されたTPIと変わってしまう。磁気ライト幅を狭くするため、レーザーパワーを下げると、トラックNのビットエラーレートが悪化するため、正常にデータを記録できない問題が生じる。正常にデータを記録する場合は、BPIを下げる必要があり、製造過程のBPIと変わってしまう。
【0038】
以上のことから瓦記録方式において、データ記録前に検査エリアにて信号品質の確認を行い、レーザーパワーとライトオフセット値を調整した上でデータの記録を行うようにしているので、実施例1の動作を行うことで、設定されたBPI/TPIフォーマットを変えることなく長期信頼性が保つことが可能となる。
【0039】
(実施例2)
図14は、本実施形態の実施例2であり、保存データをユーザデータエリアへ記録する前に行う検査処理のフローチャートである。磁気記録装置1は、検査エリアにおいて、検査レーザーパワーを設定値1(初期レーザーパワー)に設定し(ステップS31)、Δライトオフセット値をstart値に設定する(ステップS32)。ここで、Δライトオフセット値がend値以下か判定を行う(ステップS33)。この判定でNOの場合は、検査レーザーパワーを変更して(ステップS34)、ステップS32に戻り、Δライトオフセット値がend値以下になるまで検査レーザーパワー変更する処理を繰り返す。
【0040】
ステップS33の判定でYESとなった場合は、その時点でΔライトオフセット値として決定する(ステップS35)。続いて、検査エリアのトラック1にΔライトオフセット分だけライトヘッドの位置をシフトするように制御し、ビットエラーレート測定用の検査パターンを記録した後、隣接するトラック2も同様にΔライトオフセット分だけライトヘッドの位置をシフトするように制御し、別の検査パターンを記録する(ステップS36)。瓦書き記録方式のために、トラック2はトラック1に部分的に重なるように重ね書きされる。重ね書きされたトラック1のビットエラーレートを測定し(ステップS37)、検査ビットエラーレートとして、エラーレート記憶部に保存した所定(初期ビットエラーレート)以下か判定を行う(ステップS37)。この判定でNOの場合は、Δライトオフセット値を+step値分加えて(ステップS39)ステップS33に戻り、ステップS38でYESと判定されるまでステップS33〜S37を繰り返す。ステップS38の判定でYESの場合は、Δライトオフセット分のライトヘッドの位置をシフトするように制御し、保存データを記録するユーザデータエリアに取得した記録を行う(ステップS310)。
【0041】
上記実施例2の検査処理によっても、実施例1と同様に、瓦記録方式において、データ記録前に検査エリアにて信号品質の確認を行い、レーザーパワーとライトオフセット値を調整した上でデータの記録を行うようにしているので、近接場光照射素子の経時変化が起きた場合でも、設定されたBPI/TPIフォーマットを変えることなく長期信頼性が保つことが可能となる。
【0042】
(実施例3)
図15は、本実施形態の第3の実施例であり、保存データをユーザデータエリアへ記録する前に行う検査処理のフローチャートである。磁気記録装置1は、検査エリアにおいて、検査レーザーパワーを設定値1(初期レーザーパワー)に設定し(ステップS41)、検査エリアのトラック1に磁気ライト幅測定用の検査パターンを記録する(ステップS42)。次に磁気ライト幅を測定し(ステップS43)、その測定結果を検査磁気ライト幅とし、検査磁気ライト幅と磁気ライト幅記憶部に保存した初期磁気ライト幅との差分の半分の値をΔリードオフセット値として決定する(ステップS44)。検査エリアのトラック1に、ビットエラーレート測定用の検査パターンを記録した後、隣接するトラック2に別の検査パターンを記録する(ステップS45)。このとき、瓦記録方式のために、トラック2はトラック1に部分的に重なるように重ね書きされる。Δリードオフセット分だけリードヘッドの位置をシフトするように制御し、重ね書きされたトラック1のビットエラーレートを測定し(ステップS46)、その測定結果を検査ビットエラーレートとする。検査ビットエラーレートが、エラーレート記憶部に保存した初期ビットエラーレート以下か判定を行う(ステップS47)。この判定でNOの場合は、検査レーザーパワーを変更して(ステップS48)、ステップS47でYESと判定されるまでステップS42〜S47の処理を繰り返す。ステップS47の判定でYESの場合は、保存データを記録するユーザデータエリアに取得したデータの記録を行う(ステップS49)。再生時にはΔリードオフセット分のリードヘッドの位置をシフトするように制御し、ユーザデータエリアから記録データを再生する。
【0043】
実施例3の効果を確認するにあたり、
図5に示したフローに従って初期磁気ライト幅、初期ビットエラーレートを保存したのち、近接場光照射素子の経時変化を再現するため、加速条件として高温環境下100℃、レーザーパワー30mWで1000時間印加し続けた。この経時変化は具体的には近接場光素子を構成する材料の原子のマイグレーションによる素子の収縮である。その後、実施例3では、
図15のフローに従って再生を行った。ここで、比較例4として、
図12のフローにおいて、ステップS47の判定を行わずにステップS49の記録動作後、再生動作を行う。つまり、レーザーパワーの設定は初期レーザーパワーから変更されない。また、比較例5では、
図15において、ステップS49で記録したデータを再生する際に、Δリードオフセット値を制御しない場合とした。
【0044】
図16はレーザーパワーに対する磁気ライト幅の測定値である。
図16は、
図5のステップS13および
図15のステップS43で測定され、ステップS13で測定された結果を初期状態として黒丸プロットで示し、ステップS43で測定された結果を白丸プロットで示す。
【0045】
図17はレーザーパワーに対するビットエラーレートの測定値である。
図17は、
図5のステップS106および
図15のステップS46で測定され、ステップS16で測定された結果を初期状態として黒丸プロットで示し、ステップS46で測定された結果を白丸プロットで示す。
【0046】
図16、
図17で示されるように、近接場光照射素子の経時変化が起きる前後では、レーザーパワーに対するビットエラーレートと磁気ライト幅の関係が変わってしまい、ビットエラーレートを所定(通常は初期)ビットエラーレート以下になるまでレーザーパワーを印加した場合、磁気ライト幅は所定の磁気ライト幅よりも広がってしまう。
【0047】
ここで、初期レーザーパワーを22.8mWとした場合、実施例3、比較例4、比較例5のレーザーパワーはそれぞれ26.8mW、22.8mW、26.8mWであった。
図17で示されるように、実施例3と比較例5の検査ビットエラーレートは初期ビットエラーレートと同等なのに対し、比較例4では検査ビットエラーレートが初期ビットエラーレートに対して大きく劣化している。このレーザーパワー設定値のまま保存エリアに記録を行うと、比較例4は正常にデータを記録できない問題が生じる。正常にデータを記録する場合は、BPIを下げる必要があり、製造過程のBPIと変わってしまう。
【0048】
図18は、保存エリアに記録されたトラックの状態の模式図であり、(a)は実施例3、(b)は比較例4、(c)は比較例5で、それぞれトラックN−1、トラックN、トラックN+1と重ね書きを行った様子を示している。破線は記録時のライトヘッドの位置である。
図19は、保存エリアに記録されたトラックの状態の模式図であり、(a)は実施例3、(b)は比較例4、(c)は比較例5で、それぞれトラックN−1、トラックN、トラックN+1と重ね書きを行った様子を示している。破線は再生時のリードヘッドの位置である。リードヘッドの位置の変更を行うため、実施例3と比較例4はリードセンター位置に重ね書きで残ったトラックのセンターにおおよそ位置する。一方で、
図19に示すように、比較例5の磁気ライト幅は初期磁気ライト幅よりも広がっているため、リードヘッドの位置の変更を行わない比較例5では、リードヘッドの位置と重ね書きで残ったトラックのセンターが大きくずれてしまい、正常にデータを再生できない問題が生じる。
【0049】
これに対して、上記実施例3によれば、瓦記録方式において、データ再生前に検査エリアにて信号品質の確認を行い、レーザーパワーとライトオフセット値を調整した上でデータの再生を行うようにしているので、近接場光照射素子の経時変化が起きた場合でも、設定されたBPI/TPIフォーマットを変えることなく長期信頼性が保つことが可能となる。
【0050】
(実施例4)
図20は、本実施形態の第4の実施例であり、ユーザデータエリアへの記録前に行う検査処理のフローチャートを示している。磁気記録装置1は、検査エリアにおいて検査レーザーパワーを設定値1(初期レーザーパワー)に設定し(ステップS51)、Δリードオフセット値をStart値に設定する(ステップS52)。ここで、Δリードオフセット値がend値以下か判定を行う(ステップS53)。ステップS53の判定でNOの場合は、YESと判定されるまで検査レーザーパワーを変更する(ステップS54)。ステップS53の判定でYESの場合は、Δリードオフセット値として決定し(ステップS55)、検査エリアのトラック1にビットエラーレート測定用の検査パターンを記録した後、隣接するトラック2に別の検査パターンを記録する(ステップS56)。瓦記録方式のためにトラック2はトラック1に部分的に重なるように重ね書きされる。
【0051】
次に、Δリードオフセット分リードヘッドの位置を制御し、重ね書きされたトラック1のビットエラーレートを測定し(ステップS57)、検査ビットエラーレートとする。検査ビットエラーレートが所定エラーレート(例えばエラーレート記憶部に保存した初期ビットエラーレート)以下か判定を行う(ステップS58)。この判定でNOの場合はΔリードオフセット値を+step値分加えて(ステップS59)、ステップS58でYESと判定されるまでステップS53からステップS58の処理を繰り返す。ステップS58でYESの場合は、保存データを記録するユーザデータエリアに取得したデータの記録を行う(ステップS510)。再生時にはΔリードオフセット分のリードヘッドの位置をシフトするように制御し、ユーザデータエリアから記録データを再生する。
【0052】
上記実施例4によっても、瓦記録方式において、データ再生前に検査エリアにて信号品質の確認を行い、レーザーパワーとライトオフセット値を調整した上でデータの再生を行うようにしているので、近接場光照射素子の経時変化が起きた場合でも、設定されたBPI/TPIフォーマットを変えることなく長期信頼性が保つことが可能となる。
【0053】
(実施例5)
図21は、本実施形態の第5の実施例であり、(a)は複数のトラック群からなるバンドとバンドの間に設けたマージン幅であるガードバンド幅を初期状態のガードバンド幅をAとした場合を示しており、(b)はレーザーパワーを変更した実施例5のガードバンド幅をBとして示している。バンド内で最後に記録されるトラックは重ね書きされない。このため、レーザーパワーを変更した実施例5のバンド内の最後に記録されるトラックの磁気ライト幅が、初期状態のバンド内の最後に記録されるトラックの初期磁気ライト幅よりも大きい場合は、レーザーパワーを変更した実施例5のガードバンド幅Bは初期ガードバンド幅Aよりも小さい関係にある。
【0054】
実施例5では、上記のように、ガードバンド幅Bが所定ガードバンド幅よりも大きい場合は記録を許可し、小さい場合はバンド内の最後のトラックは記録を禁止するとよい。この所定ガードバンド幅は、装置の温度や振動環境等に基づいて設定されるとよい。
【0055】
なお、上記実施形態において、リードヘッドの位置制御を、ビットエラーレートに代わって、初期再生出力値と検査時の再生出力値との比較判定によって行うようにしてもよい。
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。