【解決手段】銅合金を母材として帯状に長く延び、長手方向の一端側に第一相手接続体2との接続のための第一接続部31A−1:Rを、他端側に第二相手接続体との接続のための第二接続部31A−2:Pとを有し、第一接続部と第二接続部との間を信号伝送のための伝送部31A−3:Qとする端子において、帯状をなす母材MOの表面のうち、少なくとも母材の板厚方向で対向する二表面に下地として銅めっき層Cuが形成され、少なくとも上記第一接続部における上記二表面のうち少なくとも一方の表面での銅めっき層の上にニッケルめっき層Niが設けられている。
銅合金を母材として帯状に長く延び、長手方向の一端側に第一相手接続体との接続のための第一接続部を、他端側に第二相手接続体との接続のための第二接続部とを有し、第一接続部と第二接続部との間を信号伝送のための伝送部とする端子において、
帯状をなす母材の表面のうち、少なくとも母材の板厚方向で対向する二表面に下地として銅めっき層が形成され、少なくとも上記第一接続部における上記二表面のうち少なくとも一方の表面での銅めっき層の上にニッケルめっき層が設けられていることを特徴とする端子。
第一接続部は第一相手接続体と接触接続する接触部をなし、第一相手接続体との接触表面側で、ニッケルめっき層の上に外層として金めっき層が施されていることとする請求項1に記載の端子。
銅合金を母材として帯状に長く延び、長手方向の一端側に第一相手接続体との接続のための第一接続部を、他端側に第二相手接続体との接続のための第二接続部とを有し、第一接続部と第二接続部との間を信号伝送のための伝送部とする端子の製造方法において、
帯状をなす母材の表面のうち、少なくとも母材の板厚方向で対向する二表面に下地として銅めっき層を形成して銅めっき板を得る銅めっき工程と、上記銅めっき板の二表面のうち少なくとも一方の表面での銅めっき層の上にニッケルめっき層を形成してニッケルめっき板を得るニッケルめっき工程と、ニッケルめっき板を端子形状にプレス打抜きする打抜き工程とを経ることを特徴とする端子の製造方法。
ニッケルめっき工程後で打抜き工程前に、ニッケルめっき層の上に外層として金めっき層を形成する金めっき工程をさらに有することとする請求項7に記載の端子の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の実施形態で示されている例を含め、ピン状の端子はその端子幅に比し、きわめて長い場合が多い。かかる端子は、その長さ範囲のうちの限られた一部で相手接続体と接触接続される接触部を形成し、また他の限られた一部で回路基板との半田実装がなされる実装部を形成している。特許文献1では、上記端子の長さ範囲のうちどの部分に、表層として錫めっきを施すのか記載はないが、おそらく、全長にわたり接触接続および半田実装性を確保するために錫めっきが施されていると理解できる。
【0007】
しかしながら、特許文献1で銅めっきによる下地の上に表層として錫めっきが施されている場合、銅と錫の両方で良導電性が確保できるが、銅、錫ともに硬度が低く、表層の硬度が低いまま錫めっきが露呈しており、どの部分で外力を受けても損傷しやすい。特に相手接続体に接触接続する接触部は相手接続体からの大きな接圧を受けるので、その損傷の傾向は大となる。次に、ニッケル下地の上に表層として錫めっきを施した場合、ニッケル下地により下地における硬度を確保できる。高速信号伝送の場合、表層のめっきの種類がインサーションロスに大きく影響を及ぼし、磁性を有するニッケルめっきでは、8〜10GHzレベルまでの周波数で特にインサーションロスが大きくなる。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑み、端子全長にわたり良導電性を確保するとともに、表層に硬度を確保できる端子及びこれを有するコネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、端子及びこれを有するコネクタ、さらには端子の製造方法に関し、次の第一ないし第三発明により、上述の課題が解決される。
【0010】
<第一発明>(端子)
本発明に係る端子は、銅合金を母材として帯状に長く延び、長手方向の一端側に第一相手接続体との接続のための第一接続部を、他端側に第二相手接続体との接続のための第二接続部とを有し、第一接続部と第二接続部との間を信号伝送のための伝送部としている。
【0011】
かかる端子において、本発明では、帯状をなす母材の表面のうち、少なくとも母材の板厚方向で対向する二表面に下地として銅めっき層が形成され、少なくとも上記第一接続部における上記二表面のうち少なくとも一方の表面での銅めっき層の上にニッケルめっき層が設けられていることを特徴としている。
【0012】
このような構成の本発明の端子では、少なくとも母材の板厚方向で対向する二表面に下地として良導電性の銅めっきが施されており、この二表面は他の残りの二表面より面積が大きいので、端子全体として良導電性が該二表面で確保される。また、高速信号は、表面(表皮)を流れる際、或る程度の深さの層内を流れるので、銅めっきがその深さの範囲に施されていれば、銅めっきが下地であっても、良導電性が確保される。さらに本発明では、下地の層の上にはニッケルめっき層が設けられているので端子、特に第一相手接続体との間で接圧を生ずる第一接続部での硬度が確保され、端子の損傷防止につながる。
【0013】
本発明において、銅めっき層が母材の周面に下地として形成され、ニッケルめっき層が該銅めっき層上での周面に設けられているようにすることもできる。端子の全周に銅めっき下地を施し、その上にニッケルめっき層を形成することで端子の良導電性、表面硬度がさらに向上する。
【0014】
本発明において、第一接続部は第一相手接続体と接触接続する接触部をなし、第一相手接続体との接触表面側で、ニッケルめっき層の上に外層として金めっき層が施されているようにすることができる。第一接続部を接触部とする場合、接触部におけるニッケルめっき層の上に金めっき層を形成することで、第一相手接続体との接触良導電性を向上させる。その際、第一、第二相手接続体と接触しない伝送部には金めっきは必須でない。
【0015】
本発明において、第二接続部は第二相手接続体に対し半田実装される実装部をなし、周面に外層として金めっき層または錫めっき層が施されているようにすることができる。第二接続部を実装部とする場合、実装部におけるニッケルめっき層もしくは銅めっき層の上に金めっき層または錫めっき層を形成することで半田濡れ性、良導電性を向上させる。その際、半田されない伝送部には金めっき層または錫めっき層は必須でない。
【0016】
<第二発明>(コネクタ)
本発明では、第一発明の端子が電気絶縁材製の保持体で保持され、該保持体がハウジングで保持されていることでコネクタを形成する。
【0017】
本発明では、端子が複数の保持体で保持されているようにすることもできる。
【0018】
<第三発明>(端子の製造方法)
本発明に係る端子の製造方法が対象とする端子は、銅合金を母材として帯状に長く延び、長手方向の一端側に第一相手接続体との接続のための第一接続部を、他端側に第二相手接続体との接続のための第二接続部とを有し、第一接続部と第二接続部との間を信号伝送のための伝送部としている。
【0019】
かかる端子の製造方法において、本発明では、帯状をなす母材の表面のうち、少なくとも母材の板厚方向で対向する二表面に下地として銅めっき層を形成して銅めっき板を得る銅めっき工程と、上記銅めっき板の二表面のうち少なくとも一方の表面での銅めっき層の上にニッケルめっき層を形成してニッケルめっき板を得るニッケルめっき工程と、ニッケルめっき板を端子形状にプレス打抜きする打抜き工程とを経ることを特徴としている。
【0020】
このような本発明によれば、素板が母材の端子形状に打抜かれる前の平坦な素板の状態で、上記二表面に銅めっき層の上にニッケルめっきを施した後に、端子形状にプレスを打抜けば良いので、めっき工程での素板の扱いがきわめて容易となる。
【0021】
本発明において、ニッケルめっき工程後で打抜き工程前に、ニッケルめっき層の上に外層として金めっき層を形成する金めっき工程をさらに有するようにすることができる。第一相手接続体と接触する第一接続部そして第二相手接続体と接触する第二接続部では、接触良導電性そして場合によって半田濡れ性をも向上させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以上のように、端子、コネクタに関しては、帯状をなす銅合金の端子の母材の表面のうち、少なくとも板厚方向で対向する二表面に下地として銅めっき層が形成され、少なくとも上記第一接続部における二表面のうち少なくとも一方の表面での銅めっき層の上にニッケルめっき層が設けられていることとしたので、高速信号を伝送する場合、端子の表面のうち表面積が大きい上記二表面でニッケルめっき層の下に銅めっき層が形成されることとなり、高速信号といえど表面から或る程度の深さの層を流れるので、その深さ内に上記銅めっき層が位置することで十分に良導電性を確保し、しかもその上にはニッケルめっき層が施されているので、端子の硬度が高く、耐食性も良く端子の損傷及び腐食を防止し保護を図ることができる。また、端子の製造方法に関しては、素板が母材の端子形状に打抜かれる前の平坦な素板の状態で、上記二表面に銅めっき層の上にニッケルめっきを施した後に、端子形状にプレスを打抜けば良いので、めっき工程での素板の扱いがきわめて容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る後述の端子を用いた雄型電気コネクタ1(以下、「雄コネクタ1」という)及び該雄コネクタ1に対する相手コネクタの雌型電気コネクタ2(以下、「雌コネクタ2」という)を対応する回路基板P1,P2にそれぞれ取付けた状態で斜上方から見た斜視図であり、両コネクタ1,2の嵌合前の状態の外観を示している。
【0026】
雄コネクタ1及び雌コネクタ2は、それぞれ対応する回路基板P1,P2に半田接続により実装される回路基板用電気コネクタであり、互いに嵌合接続することにより電気コネクタ組立体を構成する。また、雄コネクタ1は、雌コネクタ2と挿抜方向である前後方向Xと、回路基板P1の実装面に対して直角な上下方向Zとが直角をなす、いわゆるライトアングル電気コネクタである。また、本実施形態では、雄コネクタ1及び雌コネクタ2のそれぞれについて、前後方向X及び上下方向Zの両方向に対して直角な方向を「コネクタ幅方向Y」という。
【0027】
雄コネクタ1は、前後方向Xで雌コネクタ2が嵌合接続されるようになっており、電気絶縁材料で略直方体外形に作られたハウジング10と、該ハウジング10に収容される四種の第一ないし第四幅広ブレード20A,20B,20C,20D(
図2に図示)及び四種の第一ないし第四幅狭ブレード60A,60B,60C,60D(
図2では60Aのみが表れている)と、ハウジング10を回路基板P1へ固定取付けするための取付部材100とを有している。第一幅広ブレード20Aと第一幅狭ブレード60Aの両者は、コネクタ幅方向に配列された後述の端子の数の差により幅広、幅狭となっていて、端子そのものは両者に差はない。他の第二ないし第四幅広ブレード20B,20C,20D、第二ないし第四幅狭ブレード60B,60C,60Dについても同様である。
【0028】
本実施形態では、形状の異なる四種の第一ないし第四幅広ブレード20A,20B,20C,20Dは、各ブレードをハウジング10から抽出して示す
図2に見られるように、ブレードの板厚方向で略逆L字形状の断面を有しており、第一ないし第四幅広ブレード20A,20B,20C,20Dの順で上下方向Zそして前後方向Xで大きくなっている。一組の第一ないし第四幅広ブレード20A,20B,20C,20Dは、ハウジング10におけるコネクタ幅方向Yでの右側の領域にて、該幅広ブレード20A,20B,20C,20Dの順で間隔をもって平行に位置するように該ハウジング10によって配列保持されている。第一ないし第四幅広ブレード20A,20B,20C,20Dのそれぞれは、後述するように、コネクタ幅方向Yを端子配列方向として配列された第一ないし第四雄端子30A,30B、30C,30Dを有している。該第一雄端子30Aは、第一絶縁基板40A(前後方向Xに延びる横基板40A−1と上下方向Zに延びる縦基板40A−2)により保持され、同様に、第二ないし第四雄端子30A〜30Dは、それぞれ、第二ないし第四絶縁基板により保持されている。第一ないし第四雄端子30A〜30Dは、その長手方向での中間位置で直角に屈曲されていて前後方向Xに延びる前部が横基板40A−1により支持され、上下方向Zに延びる後部が縦基板40A−2により支持されている。
【0029】
次に、上記第一ないし第四幅広ブレード20A〜20Dに対しコネクタ幅方向Yで隣接して位置する第一ないし第四幅狭ブレード60A〜60Dは、コネクタ幅方向Yで配列された第一ないし第四雄端子の数が第一ないし第四幅広ブレード20A〜20Dよりも少なく、その分ブレードとしてのコネクタ幅方向Yでの寸法が小さいというだけで、基本的には第一ないし第四幅広ブレード20A〜20Dと同じであり、これ以上の説明は省略する。
【0030】
上記第一ないし第四幅広ブレード20A〜20Dと第一ないし第四幅狭ブレード60A〜60Dは次に述べるハウジング10内の空間に収容される。
【0031】
ハウジング10は、
図1及び
図2に見られるように、上壁11と底壁12そして両者をコネクタ幅方向Yで端部となる側端で連結する側壁13とを有し、底壁12の下面、すなわちハウジング10の底面は回路基板P1への取付面を形成している。上壁11と底壁12は、前後方向Xで側壁13よりも前方(雌コネクタ2へ向く方向)に突出している。また、上壁11、底壁12及び側壁13で囲まれる空間内には、後述する上段隔壁18A,中段隔壁18B,下段隔壁18C(必要に応じて「隔壁18A,18B,18C」と総称する)が上方から順に形成されている。上記上壁11と底壁12は、上段隔壁18A及び下段隔壁18Cの前端よりも前後方向Xで前方に突出しており、この突出している範囲で上壁11と底壁12との間で、雌コネクタ2との嵌合接続のための空間としての嵌合部をなしている。該嵌合部は、コネクタ幅方向Yにて後述の縦方向の隔壁をなす中間壁10Eよりも一方の側で幅広ブレード20A〜20Dと対応する領域(雄側幅広嵌合域)と、他方の側で幅狭ブレード60A〜60Dと対応する領域(雄側幅狭嵌合域)とに二分されている。
【0032】
上記嵌合部における雄側幅広嵌合域では、上壁11と中段隔壁18Bとの間の空間内で、上記横基板40A−1で支持された第一幅広ブレード20Aの前端側(雌コネクタ2側)部分が上部に位置し、第二幅広ブレード20Bの前端側部分が下部に位置している。その結果、嵌合部の空間内では、第一幅広ブレード20Aの前端側部分の上面に第一雄端子30Aの第一雄接触部31A−1が露呈しており、第二幅広ブレード20Bの前端側部分の上面に第二雄端子30Bの第二雄接触部31B−1が露呈している。
【0033】
また、中段隔壁18Bと底壁12との間の空間では、上記中段隔壁18Bに対し、上記第一幅広ブレード20Aの前端側部分と対称に第四幅広ブレード20Dの前端側部分が、そして上記第二幅広ブレード20Bの前端部分と対称に第三幅広ブレード20Cの前端側部分が位置するようにそれぞれ設けられている。
【0034】
第一ないし第四幅広ブレード20A〜20Dの後端側部分は、前端側部分に対し直角な方向となる上下方向Zに延びる脚部状をなし上記縦基板(例えば、第一幅広ブレード20Aでは縦基板40A−2)で支持されている。
図2に見られるように、ハウジング10の後端側から順次第一ないし第四幅広ブレード20A〜20Dの後端側部分が位置しており、それらの下端からは回路基板P1へ半田接続される第一ないし第四雄端子30A〜30Dの雄接続部31A−2〜31D−2が突出して設けられている。
【0035】
雄端子30A〜30Dは、雄接触部と雄接続部との間の部分が信号伝送のための雄伝送部として形成される。例えば、第一雄端子30Aでは、
図4(A),(B)に見られるように、上記第一雄接触部31A−1と第一雄接続部31A−2との間の部分が信号伝送のための第一雄伝送部31A−3として形成されている。
【0036】
雄側幅狭嵌合域における第一幅狭ブレード60A〜60Dは、上記雄側幅広嵌合域における第一ないし第四幅広ブレード20A〜20Dと同様に設けられているが、第一幅広ブレード20A〜20Dよりも端子数が少なくその分だけ幅狭となっているだけなので、説明は省略する。
【0037】
かかる雄コネクタ1において、本発明は、上記第一ないし第四雄端子30A〜30Dそのものに特徴があり、雄コネクタ1の端子以外の部分については、これ以上の説明は省略する。さらに、上記雌コネクタ2は、本発明とは係りがないので上記雄コネクタ1の相手方となる関係での最小限の説明に留める。また、上記第一ないし第四雄端子30A〜30Dは、単に長さが異なるのみで、基本的構成は同じであるので、第一雄端子30Aを例として、後に詳述する。
【0038】
次に、
図1及び
図2に基づいて、上述の雄コネクタ1の相手方たる雌コネクタ2の構成を説明する。該雌コネクタ2は、前後方向Xで上記雄コネクタ1に嵌合接続されるようになっている。該雌コネクタ2は、雄コネクタ1の嵌合部への嵌入に適合した直方体形外形のハウジング110と、該ハウジング110に配列保持される複数の相手端子としての雌端子120と、該ハウジング110に保持され、回路基板P2への該ハウジング110の取付けのための取付部材130とを有している。上記雌端子120は、ハウジング110に設けられた後述の四段の端子保持壁111A〜111Dにて保持されている。
【0039】
ハウジング110は、
図1及び
図2に見られるように、上下方向Zに対して直角な板面をもちコネクタ幅方向Yに延びる四段の端子保持壁111A〜111Dと、該コネクタ幅方向Yに対して直角な板面をもち上下方向Zに延びて上記四段の端子保持壁111A〜111Dのコネクタ幅方向端部同士を連結する二つの側壁112と、該側壁112に対して平行をなしコネクタ幅方向Yの中間位置で上下方向Zに延びて上記四段の端子保持壁111A〜111Dを上下方向Zで連結する中間壁113とを有している。
【0040】
かくして、中間壁113により、雄コネクタ1に対応して、中間壁113の一方の側に雌側幅広嵌合域をそして他方の側に雌側幅狭嵌合域を形成する。雌側幅広嵌合域と雌側幅狭嵌合域のそれぞれでは、端子保持壁111Aと111Bの間へ雄コネクタ1の上段隔壁18Aが、端子保持壁111Bと111Cの間へ中段隔壁18Bが、端子保持壁111Cと111Dとの間へ下段隔壁18Cがそれぞれ嵌入する。その結果、雌側幅広嵌合域では、上段隔壁18Aの上面に支持されている第一幅広ブレード20Aの雄端子30Aが端子保持壁111Aの下面に保持されている第一雌端子と接触し、第二幅広ブレード20Bの第二雄端子30Bが端子保持壁111Bの下面に保持されている第二雌端子と接触し、第三幅広ブレード20Cの第三雄端子30Cが端子保持壁111Cの上面に保持されている第三雌端子と接触し、第四幅広ブレード20Dの第四雄端子30Dが端子保持壁111Dの上面に保持されている第四雌端子と接触する。
【0041】
雄コネクタ1の雄端子30A〜30Dがそれらの雄接触部31A−1〜31D−1の範囲が前後方向Xで直状をなしているのに対し、雌コネクタ2における第一ないし第四雌端子は上記前後方向Xに延びるとともに局部的に上下方向Zで山型状に屈曲して第一ないし第四雌接触部を有しており、該第一ないし第四雌接触部が上下方向で第一ないし第四雄接触部31A−1〜31D−1にそれぞれ弾性力をもって接触する。雌側幅狭嵌合域においても、上記雌側幅広嵌合域と同様に、雄コネクタ1の第一ないし第四雄端子30A〜30Dが雌コネクタ2の第一ないし第四雌端子と接触する。
【0042】
本実施形態では、本発明は雄コネクタ1の雄端子に適用されており、雌コネクタ2には適用されていないので、雌コネクタ2についての説明は、以上に留める。
【0043】
本実施形態では、上述したように、雄コネクタ1の第一ないし第四雄端子30A〜30Dに本発明が適用されている。第一ないし第四雄端子30A〜30Dは、その長さが異なるものの、基本形状は同じである。本発明は端子表面におけるめっき層の形成に関するので、ここでは、第一幅広ブレード20Aに保持された第一雄端子30Aについてのみ説明に留め、第二ないし第四幅広ブレード20Dそして第一ないし第四幅狭ブレード60A〜60Dにおける第二ないし第四雄端子30B〜30Dについての説明は省略する。
【0044】
第一雄端子30Aを支持する第一幅広ブレード20Aは、第一絶縁基板40Aを形成し互に直角に位置する横基板40A−1と縦基板40A−2とで支持し、該横基板40A−1と縦基板40A−2との間の露呈端子部分Lを直角に屈曲することで
図4(A)のごとくのL字状のブレードを形成し、
図1のハウジング10への組込みに適合させている。露呈端子部分Lでの屈曲前には、
図3(A)に見られるように、第一絶縁基板40Aの横基板40A−1と縦基板40A−2とは同一面に位置し、第一雄端子30Aも前後方向Xで一直線状に延びキャリアCにより支持されている。そして、この一直線状に延びている第一雄端子30Aを、上記露呈端子部分Lで屈曲し、キャリアCを切り離すことで
図4(A)に示されるL字状の第一幅広ブレード20Aを得る。
【0045】
第一雄端子30Aは、横基板40A−1と縦基板40A−2を省略した状態で、
図3(B)及び
図4(B)に見られるように、一端側に第一雄接触部31A−1、他端側に第一雄接続部31A−2そしてそれらの間に第一雄伝送部31A−3が形成されている。
【0046】
次に、
図3(B)及び
図4(B)に示される第一雄端子30Aの第一雄接続部31A−2における位置P、第一雄伝送部31A−3における位置Q、第一雄接触部31A−1における位置Rでの拡大断面図である
図5にもとづき、各位置P,Q,Rでのめっきの状況を、具体例を示しつつ説明する。
【0047】
図5において、めっき層の目的を考慮した本発明におけるめっきパターン(A)〜(C)(
図5(A)〜(C)に図示)を、従来のパターン(D)(
図5(D)に図示)と比較して示している。上述したように、位置Pは第一雄接続部31A−2、位置Qは第一雄伝送部31A−3、位置Rは第一雄接触部31A−1にあり、(A)は製造上好ましいパターン、(B)は信号伝送機能上好ましいパターン、(C)は端子の耐腐食性上好ましいパターンである。したがって、以下三つの位置P,Q,Rにおける三つのパターン(A)〜(C)の計9つのパターンについて、従来のパターン(D)と比較しつつ説明する。
【0048】
図5についての説明では、第一雄接続部31A−2、第一雄伝送部31A−3、第一雄接触部31A−1を、従来技術との比較上簡単化するために、単に接続部P、伝送部Q、接触部Rとして説明する。
【0049】
先ず、従来技術におけるめっき層のパターン(D)を
図5に基いて説明する。従来、端子の母材(銅合金)MOの上に、端子全長(接続部Pから接触部Rまで)にわたり全周にニッケルめっき層Niを下地として形成し、伝送部Qについてはニッケルめっき層Niを外層として、通常のパターンで1〜5μmの厚みに形成し、接続部Pについては良導電性である金めっき層Auを全周に施し、接触部Rについては相手端子との接触面となる一面(図では上面)で、上記ニッケルめっき層Niの上に金めっき層Auを施していた。したがって、端子長の大部分をなす伝送部Qでは、表層はニッケルめっき層であり、高速信号の際の良導電性を確保できない。
【0050】
図5(A)に示される本発明の実施形態のパターン(A)では、母材MOについて、少なくともその板厚方向で対向する二面(
図5(A)では上下の二面)に端子全長にわたり、すなわち、接続部P,伝送部Q、接触部Rについて、下地として銅めっき層Cuを形成している。上記二面は、母材の板厚方向に直角な面であり、端子の周面のうちの多くを含めており、上記板厚方向とは、
図3(A),(B)における上下方向に相当する。
【0051】
上記銅めっき層Cuの上には、上記二面のうち、上面にニッケルめっき層Niを施し、伝送部Qではこのニッケルめっき層Niを表層とし、接続部Pでは全周にわたり金めっき層Auを施して表層とし、接触部Rでは上面のニッケルめっき層Niの上に金めっき層Auを施して表層とする。このようにすることで、ニッケルめっき層Niで、端子長全体において端子の硬度が確保され、ニッケルめっき層Niの直下層としての銅めっき層Cuで良導電性が確保される。高速信号では、端子の表層で集中的に信号が伝送されるものの、その伝送は或る程度の層厚内でなされるので、上記ニッケルめっき層Niをこの層厚内以下の厚さとすれば、信号は銅めっき層Cuで良好に伝送される。接続部Pでは、金めっき層Auが全周に施されているので、半田濡れ性ひいては半田接続性が良好であり、接触部Rでは相手端子との接触面となる上面に金めっき層Auが施されているので、相手端子との接触導電性が良好となる。
【0052】
次に、高速信号伝送をさらに向上させるには、パターン(B)に見られるように、端子の全周に下地としての銅めっき層Cuを施すことが好ましい。
図5(B)に見られるごとく、パターン(B)では銅めっき層は、端子の両側端面をも含め、全周に銅めっき層Cuが施されている点で、パターン(A)とは相違する。この点以外は、接続部P、伝送部Q、接触部Rにおいても、パターン(A)と同じである。銅めっき層Cuが全周に施されているので、パターン(A)に比し、狭い範囲ではあるが端子側端面でも良導電性が確保されている。
【0053】
次に、耐腐食性向上を考慮した
図5(C)のパターン(C)では、上述のパターン(B)における全周の銅めっき層Cuの上に、全周にわたりニッケルめっき層Niを施した点がパターン(B)に比し相違している。ニッケルめっき層Niは、0.8μm以下、好ましくは0.5μmの厚さで施されており、上述のごとく硬度を確保することに加え、耐腐食性を向上する。ニッケルめっき層Niの直下層の銅めっき層Cuで良導性が確保されることはパターン(A)の場合と同じである。
【0054】
次に、このような本実施形態の端子について、パターン(A),(C)を例に挙げ、従来のパターン(D)と比較しつつ、高速信号に対するインサーションロスの様子を
図6にもとづき説明する。
【0055】
図6は、横軸に信号の周波数(Frequency)(GHz)、縦軸に信号のインサーションロスS(dB)をとっており、本実施形態のパターン(A),(C)と従来のパターン(D)とについて、インサーションロスの様子を示している。任意の周波数において、インサーションロスSがゼロの横軸から各パターンのグラフの線までの縦方向レベル差が任意の周波数におけるインサーションロスである。この
図6からは、先ず、図示の周波数範囲において、本実施形態のパターン(A),(C)の方が従来のパターン(D)よりもインサーションロスが小さいことが判る。次に、インサーションロスは周波数が高いほど大きくなるが、パターン(A),(C)では、周波数の増大に対しインサーションロスは直線的に大きくなるのに対し、パターン(D)では、特に、8〜10GHzまでの周波数範囲で、直線的ではなく、直線に対し大きく下方へ没入弯曲した曲線で、極度にインサーションロスが大きくなっていることが判る。すなわち、パターン(A),(C)は、図示の周波数範囲でパターン(D)よりもインサーションロスが小さく、特に8〜10GHzまでの周波数範囲でインサーションロスの観点で優れていることが判る。
【0056】
本実施形態のパターン(A),(B)では、
図5において端子の接続部Pの左右端面で、銅めっき層Cuの上に金めっき層Auが形成されているが、両めっき層Cu,Auの間にニッケルのストライクめっき層を形成してもよい。スライクめっき層は、本実施形態の各めっき層に比し、きわめて薄く、0.1μm厚以下(一般的には0.05μm以下)で施されるので、信号の伝送特性には何ら影響を及ぼさず、銅めっきによる金めっき液の劣化を防止する効果がある。
【0057】
次に、本発明の端子のめっき手順にもとづき端子の製造方法について説明する。本発明として製造上好ましく、製法を最も簡単化できるのは、パターン(A)であり、このパターン(A)の場合を
図7にもとづいて説明する。
【0058】
まず、端子の母材の原材料となる素板、例えば
図7(I)に見られるロール素板(原板)M1を展開して平坦な素板とし、銅めっき工程で該素板の板厚方向で対向する表裏二表面に下地として銅めっき層Cuを施して銅めっき板を得る。次に、上記銅めっき板の表層二表面のうち一方の面で上記銅めっき層Cuの上にニッケルめっき層Niをニッケルめっき工程で施し
図7(II)のニッケルめっき板M2を得る。
【0059】
しかる後、上記ニッケルめっき板M2を、
図3(A)に示されるブレード(例えば、第一幅広ブレード20A)の絶縁基板(例えば、第一絶縁基板40A)で保持される前の端子形状をもちキャリアCに支持されている形に打抜工程でプレス等により打ち抜き、
図7(III)に見られるキャリアC付端子群M3を得る。しかる後に、必要に応じ、
図7(IV)に見られるごとく接触部と実装部に金めっきを施してプレス後めっき端子群M4とし、このプレス後めっき端子群M4をキャリアC付きの状態で、絶縁基板(例えば、第一絶縁基板40Aの横基板40A−1と縦基板40A−2とで保持して
図3(A)の状態の屈曲前ブレードM5を得てから(
図7(V)参照)、横基板40A−1と縦基板40A−2との間における露呈端子部分Lの位置で屈曲した後、キャリアCを切り離して、
図4(A)に示される最終的なブレードM6(
図7(VI)参照)(例えば、
図4(A)におけるブレード20A)を得、このブレードM6をハウジング10へ組み込む。
【0060】
また、パターン(A)にて、接続部に全周にわたりそして接触部の一面に金めっきを施す場合、上記接続部では金めっき全周に施すので、金めっき工程は打抜き工程後に行なう。
【0061】
以上は、全ブレードの端子について同様に行われ、全ブレードがハウジング10で組み込まれ、雄コネクタ1を完成させる。