【解決手段】積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、外部電極と、を具備する。上記セラミック素体は、第1軸方向を向いた側面と、上記第1軸と直交する第2軸方向に積層され、上記側面上に位置する端部を含む複数の内部電極と、を有する積層体と、13μm以下の厚さを有し、上記積層体の上記側面を被覆するサイドマージン部と、を有する。上記外部電極は、上記セラミック素体を上記第1軸及び上記第2軸と直交する第3軸方向から被覆する。上記サイドマージン部は、上記積層体の上記側面に隣接し、ガラス成分を含有する第1領域を構成する第1内層部と、上記第1内層部の外側に位置する第1外層部と、上記第1外層部の上記第2軸方向の両端部に位置し、上記第1領域よりもガラス成分の濃度が低い第2領域を構成する一対の稜部と、を含む。
第1軸方向を向いた側面と、前記第1軸と直交する第2軸方向に積層され、前記側面上に位置する端部を含む複数の内部電極と、を有する積層体と、13μm以下の厚さを有し、前記積層体の前記側面を被覆するサイドマージン部と、を有するセラミック素体と、
前記セラミック素体を前記第1軸及び前記第2軸と直交する第3軸方向から被覆する外部電極と、
を具備し、
前記サイドマージン部は、前記積層体の前記側面に隣接し、ガラス成分を含有する第1領域を構成する第1内層部と、前記第1内層部の外側に位置する第1外層部と、前記第1外層部の前記第2軸方向の端部に位置し、前記第1領域よりもガラス成分の濃度が低い第2領域を構成する稜部と、を含む
積層セラミック電子部品。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0016】
<積層セラミックコンデンサ10の構成>
[全体構成]
図1〜3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。
図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。
図2は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のA−A'線に沿った断面図である。
図3は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のB−B'線に沿った断面図である。
【0017】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を備える。セラミック素体11は、X軸方向に対向する一対の端面と、Y軸方向に対向する一対の側面と、Z軸方向に対向する一対の主面と、を有する6面体として構成される。
【0018】
各外部電極14,15は、セラミック素体11の両端面を覆い、セラミック素体11を挟んでX軸方向に対向している。外部電極14,15は、セラミック素体11の各端面から主面及び側面に延出している。これにより、外部電極14,15では、X−Z平面に平行な断面、及びX−Y平面に平行な断面がいずれもU字状となっている。
【0019】
なお、外部電極14,15の形状は、
図1に示すものに限定されない。例えば、外部電極14,15は、セラミック素体11の両端面から一方の主面のみに延び、X−Z平面に平行な断面がL字状となっていてもよい。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、Z軸方向に沿った厚さを小さく抑えることができる。
【0020】
外部電極14,15は、電気の良導体により形成されている。外部電極14,15を形成する電気の良導体としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0021】
セラミック素体11は、誘電体セラミックスで形成され、積層体16と、サイドマージン部17と、を有する。積層体16は、Y軸方向に対向する一対の側面Sを有する。また、積層体16は、セラミック素体11の端面の一部を構成する一対の端面と、セラミック素体11の主面の一部を構成する一対の主面と、を有する。
【0022】
積層体16は、X−Y平面に沿って延びるシート状の複数のセラミック層20がZ軸方向に積層された構成を有する。積層体16は、容量を形成する機能を有する機能部として構成される容量形成部18と、容量形成部18をZ軸方向上下から被覆する一対のカバー部19と、を有する。一対のカバー部19は、積層体16の一対の主面を構成している。
【0023】
容量形成部18は、X−Y平面に沿って延びるシート状であり、Z軸方向に沿って積層された第1及び第2内部電極12,13を有する。内部電極12,13は、複数のセラミック層20の間に、Z軸方向に沿って交互に配置されている。つまり、相互に隣接する内部電極12,13は、セラミック層20を挟んでZ軸方向に対向している。
【0024】
第1内部電極12は、第1外部電極14に覆われた端面に引き出されている。この一方で、第2内部電極13は第2外部電極15に覆われた端面に引き出されている。これにより、第1内部電極12は第1外部電極14のみに接続され、第2内部電極13は第2外部電極15のみに接続されている。
【0025】
内部電極12,13は、容量形成部18のY軸方向の全幅にわたって形成されている。つまり、内部電極12,13のY軸方向の両端部はそれぞれ、積層体16の一対の側面S上に位置する。これにより、セラミック素体11における内部電極12,13のY軸方向の両端部の位置はそれぞれ、Y軸方向に0.5μmの範囲内に揃っている。
【0026】
一対のサイドマージン部17は、内部電極12,13の両端部が露出する積層体16の一対の側面Sをそれぞれ被覆している。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、サイドマージン部17に被覆された積層体16の一対の側面S上における内部電極12,13間の絶縁性を確保することができる。
【0027】
積層セラミックコンデンサ10では、容量の形成に寄与しないサイドマージン部17のY軸方向の寸法である厚さを小さく形成する。これにより、積層セラミックコンデンサ10の大容量化及び小型化に有利になる。具体的に、積層セラミックコンデンサ10では、サイドマージン部17が13μm以下の厚さを有する。
【0028】
このような構成により、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間の複数のセラミック層20に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0029】
セラミック素体11では、内部電極12,13間の各セラミック層20の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO
3)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0030】
なお、セラミック層20は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)、チタン酸カルシウム(CaTiO
3)、チタン酸マグネシウム(MgTiO
3)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO
3)、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O
3)、ジルコン酸バリウム(BaZrO
3)、酸化チタン(TiO
2)などの組成系で構成してもよい。
【0031】
内部電極12,13は、電気の良導体により形成されている。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、典型的にはニッケル(Ni)が挙げられ、この他にも銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0032】
[セラミック素体11の詳細構成]
(概略説明)
セラミック素体11は、相互に異なる微細組織を有する第1領域及び第2領域を有する。具体的に、第1領域は、ガラス成分を含有し、結晶粒の境界部である結晶粒界にガラス相が析出した微細組織を有する。第2領域は、第1領域よりもガラス成分の濃度が低く、結晶粒界にガラス相が実質的に析出していない微細組織を有する。
【0033】
第1領域に含まれるガラス成分としては、セラミック素体11の焼成時に液相を形成する低融点の成分であればよく、例えば、ケイ素やホウ素などが含まれる。第1領域では、焼成時にガラス成分で構成される液相が結晶粒から吐き出されることにより、ガラス相が結晶粒界に偏析した微細組織となる。
【0034】
第1領域では、比誘電率が低いガラス相の存在によって、大容量が得られにくい。この一方で、第2領域では、ガラス相の影響による容量の低下が発生しないため、大容量が得られやすい。このため、積層セラミックコンデンサ10では、容量形成部18を構成する複数のセラミック層20が第2領域を構成することが好ましい。
【0035】
また、結晶粒界にガラス相が析出した第1領域では、焼成時における液相の生成によって、高い焼結性が得られる。この一方で、第1領域では、ガラス相の機械的強度が低いため、結晶粒界において脆性破壊が発生しやすい。つまり、第1領域では、結晶粒界においてクラックが発生しやすく、発生したクラックが結晶粒界に沿って進展しやすい。
【0036】
これに対し、結晶粒界にガラス相が実質的に析出していない第2領域では、結晶粒界の機械的強度が高いため、結晶粒界においてクラックが発生しにくく、またクラックが結晶粒界に沿って進展しにくい。この一方で、第2領域では、セラミック素体11の焼成時に液相が実質的に生成されないため、高い焼結性が得られにくい。
【0037】
セラミック素体11では、容量形成部18の周囲が適切に保護され、かつ高い耐衝撃性を実現可能なように、第1領域及び第2領域の配置が決定される。以下、セラミック素体11における第1領域及び第2領域の配置の一例として、
図3に示す構成例1、
図4に示す構成例2、及び
図5に示す構成例3について説明する。
【0038】
(構成例1)
図3に示すセラミック素体11の構成例1では、各サイドマージン部17が第1内層部17aと第1外層部17bとを有する。第1内層部17aは、積層体16の側面Sに隣接し、積層体16の側面Sに対する接着面を構成する。第1外層部17bは、第1内層部17aのY軸方向外側に位置し、セラミック素体11の側面を構成する。
【0039】
各第1外層部17bは、Z軸方向の両端部においてX軸方向に沿って延在する一対の稜部17cを含む。稜部17cは、外向きに突出した形状を有する上に、X軸方向中央領域において外部電極14,15に被覆されずに外部に露出している。このため、セラミック素体11は、稜部17cにおいて特に外部からの強い衝撃を受けやすい。
【0040】
各図面では、第1領域を密のドットパターンで示し、第2領域を粗のドットパターンで示している。
図3に示すように、構成例1に係るサイドマージン部17では、稜部17cのみが第2領域を構成し、第1内層部17a、及び第1外層部17bの稜部17c以外の部分が第1領域を構成する。また、構成例1に係るカバー部19は、第1領域を構成する。
【0041】
第1領域を構成する第1内層部17a及びカバー部19では、高い焼結性が得られる。このため、セラミック素体11では、第1内層部17a及びカバー部19の容量形成部18に対する高い接着性を確保することができる。したがって、セラミック素体11では、容量形成部18の周囲が適切に保護され、耐湿性などの性能が保たれやすくなる。
【0042】
また、第2領域を構成する稜部17cでは、結晶粒界の機械的強度が高いため、外部からの衝撃を受けても、結晶粒界においてクラックが発生しにくく、またクラックが結晶粒界に沿って進展しにくい。このため、構成例1に係るセラミック素体11では、サイドマージン部17が薄い構成においても、稜部17cの表面から内部電極12,13に到達するクラックの発生を抑制することができる。
【0043】
(構成例2)
図4に示すセラミック素体11の構成例2では、サイドマージン部17の第1外層部17bの構成が構成例1とは異なり、その他の構成が構成例1と共通する。具体的に、構成例2に係るサイドマージン部17では、第1外層部17bにおける稜部17cを含めた全体が第2領域として構成される。
【0044】
構成例2に係るセラミック素体11では、側面を構成する第1外層部17bの全体において結晶粒界の機械的強度が高くなる。このため、構成例2に係るセラミック素体11では、サイドマージン部17が薄い構成においても、第2領域で構成される側面から内部電極12,13に到達するクラックの発生を抑制することができる。
【0045】
(構成例3)
図5に示すセラミック素体11の構成例3では、カバー部19の構成が構成例2とは異なり、その他の構成が構成例2と共通する。構成例3に係るカバー部19は、容量形成部18に隣接する第2内層部19aと、第2内層部19aのZ軸方向外側に位置し、セラミック素体11の主面を構成する第2外層部19bと、を有する。
【0046】
構成例3に係るカバー部19では、第2内層部19aが第1領域を構成し、第2外層部19bが第2領域を構成する。構成例3に係るセラミック素体11では、主面を構成する第2外層部19bにおいて結晶粒界の機械的強度が高くなるため、主面から内部電極12,13に到達するクラックの発生を抑制することができる。
【0047】
<積層セラミックコンデンサ10の製造方法>
[製造方法1]
(概略説明)
図6は、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の製造方法1を示すフローチャートである。
図7〜14は積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法1について、
図6に沿って、
図7〜14を適宜参照しながら説明する。
【0048】
(ステップS01:セラミックシート準備)
ステップS01では、容量形成部18を形成するための第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102と、カバー部19を形成するための第3セラミックシート103と、を準備する。セラミックシート101,102,103は、誘電体セラミックスを主成分とする未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。
【0049】
セラミックシート101,102,103は、例えば、ロールコーターやドクターブレードなどを用いてシート状に成形される。セラミックシート101,102の厚さは、焼成後の容量形成部18におけるセラミック層の厚さに応じて調整される。第3セラミックシート103の厚さは適宜調整可能である。
【0050】
また、第1領域を構成するカバー部19を形成する第3セラミックシート103には、ガラス成分が添加される。この一方で、第2領域を構成する容量形成部18のセラミック層20を形成する第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102には、ガラス成分が添加されない。
【0051】
図7は、セラミックシート101,102,103の平面図である。この段階では、セラミックシート101,102,103が、個片化されていない大判のシートとして構成される。
図7には、各積層セラミックコンデンサ10ごとに個片化する際の切断線Lx,Lyが示されている。切断線LxはX軸に平行であり、切断線LyはY軸に平行である。
【0052】
図7に示すように、第1セラミックシート101には第1内部電極12に対応する未焼成の第1内部電極112が形成され、第2セラミックシート102には第2内部電極13に対応する未焼成の第2内部電極113が形成されている。なお、カバー部19に対応する第3セラミックシート103には内部電極が形成されていない。
【0053】
内部電極112,113は、任意の導電性ペーストをセラミックシート101,102に塗布することによって形成することができる。導電性ペーストの塗布方法は、公知の技術から任意に選択可能である。例えば、導電性ペーストの塗布には、スクリーン印刷法やグラビア印刷法を用いることができる。
【0054】
内部電極112,113には、切断線Lyに沿ったX軸方向の隙間が、切断線Ly1本置きに形成されている。第1内部電極112の隙間と第2内部電極113の隙間とはX軸方向に互い違いに配置されている。つまり、第1内部電極112の隙間を通る切断線Lyと第2内部電極113の隙間を通る切断線Lyとが交互に並んでいる。
【0055】
更に、ステップS01では、上記と同様の要領で、サイドマージン部17を形成するための第4セラミックシート104a及び第5セラミックシート104b(
図12〜14参照)も準備する。第4セラミックシート104aにはガラス成分が添加され、第5セラミックシート104bにはガラス成分が添加されない。
【0056】
(ステップS02:積層)
ステップS02では、ステップS01で準備したセラミックシート101,102,103を、
図8に示すように積層することにより積層シート105を作製する。積層シート105では、容量形成部18に対応する第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102がZ軸方向に交互に積層されている。
【0057】
また、積層シート105では、交互に積層されたセラミックシート101,102のZ軸方向上下面にカバー部19に対応する第3セラミックシート103が積層される。セラミックシート101,102,103の積層数は、積層セラミックコンデンサ10の構成に応じて決定可能である。
【0058】
積層シート105は、セラミックシート101,102,103を圧着することにより一体化される。セラミックシート101,102,103の圧着には、例えば、静水圧加圧や一軸加圧などを用いることが好ましい。これにより、積層シート105を高密度化することが可能である。
【0059】
(ステップS03:切断)
ステップS03では、ステップS02で得られた積層シート105を、切断線Lx,Lyに沿って切断することにより、未焼成の積層体116を作製する。積層体116は、焼成後の積層体16に対応する。積層シート104の切断には、例えば、押し切り刃や回転刃などを用いることができる。
【0060】
図9は、ステップS03後の積層シート105の平面図である。積層シート104は、発泡剥離シートなどの粘着シートCによって保持された状態で、切断線Lx,Lyに沿って切断されている。このように、積層シート105が切り分けられることにより、積層体116が得られる。
【0061】
図10は、ステップS03で得られる未焼成の積層体116の斜視図である。積層体116には、未焼成の容量形成部118及びカバー部119が形成されている。また、積層体116では、切断面である側面Sに内部電極112,113が露出し、内部電極112,113のY軸方向の端部が側面S上において揃っている。
【0062】
(ステップS04:サイドマージン部形成)
ステップS04では、ステップS03で得られた積層体116の両側面Sに未焼成のサイドマージン部117を設ける。これにより、
図11に示す未焼成のセラミック素体111が得られる。サイドマージン部117の形成には、ステップS01で準備したセラミックシート104a,104bを用いる。
【0063】
ステップS04では、サイドマージン部17において、第1領域を構成する部分を第4セラミックシート104aで形成し、第2領域を構成する部分を第5セラミックシート104bで形成する。
図12〜14は、
図3〜5に示す構成例1〜3に対応するステップS04を示す断面図である。
【0064】
構成1では、
図12(A)に示すように、積層体116の側面Sに第1内層部17aに対応する第4セラミックシート104aを貼り付け、その上に、第1外層部17bにおける稜部17c以外の部分に対応する第4セラミックシート104aと、稜部17cに対応する第5セラミックシート104bと、を貼り付ける。
【0065】
これにより、
図12(B)に示す構成例1に係る未焼成のセラミック素体111が得られる。構成例1に係る未焼成のセラミック素体11では、未焼成の積層体116の側面Sを被覆する、第1内層部117a、第1外層部117b、及び稜部117cを含む未焼成のサイドマージン部117が形成されている。
【0066】
構成例2では、
図13(A)に示すように、積層体116の側面Sに第1内層部17aに対応する第4セラミックシート104aを貼り付け、その上に、稜部17cを含む第1外層部17bに対応する第5セラミックシート104bを貼り付ける。これにより、
図13(B)に示す構成例2に係る未焼成のセラミック素体111が得られる。
【0067】
構成例3では、
図14(A)に示すように、カバー部119を形成する第3セラミックシート103として、第2内層部119aに対応するガラス成分が添加されたセラミックシート103aと、第2外層部119bに対応するガラス成分が添加されていないセラミックシート103bと、を用いる。
【0068】
そして、積層体116の側面Sに第1内層部17aに対応する第4セラミックシート104aを貼り付け、その上に、稜部17cを含む第1外層部17bに対応する第5セラミックシート104bを貼り付ける。これにより、
図14(B)に示す構成例3に係る未焼成のセラミック素体111が得られる。
【0069】
(ステップS05:焼成)
ステップS05では、ステップS04で得られた
図11に示すセラミック素体111を焼成することにより、
図1〜3に示す積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11を作製する。つまり、ステップS05によって、積層体116が積層体16になり、サイドマージン部117がサイドマージン部17になる。
【0070】
ステップS05における焼成温度は、セラミック素体111の焼結温度に基づいて決定することができる。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO
3)系材料を用いる場合には、焼成温度は1000〜1300℃程度とすることができる。また、焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0071】
焼成時のセラミック素体111では、焼結温度が低い内部電極112,113が配置された容量形成部118において焼結が促進される。これに対し、構成例1〜3のいずれでも、焼成時のセラミック素体111では、ガラス成分の液相が生成されるサイドマージン部117の第1内層部117aにおいても焼結が促進される。
【0072】
このため、焼成時のセラミック素体111では、いずれも高い焼結性を有する容量形成部118とサイドマージン部117の第1内層部117aとの間で焼結挙動のミスマッチが生じにくい。したがって、積層セラミックコンデンサ10では、サイドマージン部17の容量形成部18に対する高い接着性を確保することができる。
【0073】
また、同様に、構成例1〜3のいずれでも、焼成時のセラミック素体111では、カバー部119における少なくとも容量形成部118と隣接する部分が、ガラス成分の液相の生成によって焼結が促進される。このため、積層セラミックコンデンサ10では、カバー部19の容量形成部18に対する高い接着性を確保することができる。
【0074】
(ステップS06:外部電極形成)
ステップS06では、ステップS05で得られたセラミック素体11のX軸方向両端部に外部電極14,15を形成することにより、
図1〜3に示す積層セラミックコンデンサ10が完成する。ステップS06における外部電極14,15の形成方法は、公知の方法から任意に選択可能である。
【0075】
[製造方法2]
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の製造方法2では、ステップS04及びステップS05の構成が製造方法1とは異なり、その他のステップの構成が製造方法1と共通である。製造方法2では、サイドマージン部117の形成に、第4セラミックシート104aのみを用い、第5セラミックシート104bを用いない。
【0076】
図15は、製造方法2のステップS04を示す断面図である。
図15(A)に示すように、積層体116の側面Sに第4セラミックシート104aを貼り付ける。なお、第4セラミックシート104aは1枚のみであっても複数枚を積層してもよい。これにより、
図15(B)に示す未焼成のセラミック素体111が得られる。
【0077】
製造方法2では、ステップS05におけるセラミック素体111の焼成を還元雰囲気にて行う。焼成時のセラミック素体111では、還元性ガスと接触する表層部において焼結が促進される。このため、焼成時のセラミック素体111では、表層部における結晶成長に伴って、表層部に液相として存在するガラス成分が内側に吐き出される。
【0078】
製造方法2のステップS05では、焼成条件によってセラミック素体111の表層部における焼結性に分布を持たせることができる。例えば、雰囲気を強い還元性とすることによって、Y軸及びZ軸に沿った2方向から還元性ガスと接触する稜部117cの焼結性を選択的に向上させることができる。
【0079】
このため、例えば、雰囲気の還元性が強く、焼成時間が短い焼成条件を採用することによって、セラミック素体11の表層部における稜部17cのみガラス成分の濃度を低下させることができる。これにより、稜部17cのみが第2領域となり、
図3に示す構成例1に係るセラミック素体11が得られる。
【0080】
また、これとは反対に、雰囲気の還元性が弱く、焼成時間が長い焼成条件を採用することによって、セラミック素体11の表層部の全領域のガラス成分の濃度を低下させることができる。これにより、
図16に示す表層部の全体がガラス成分の濃度が低い第2領域を構成するセラミック素体11が得られる。
【0081】
図16に示す積層セラミックコンデンサ10では、セラミック素体11の外面における外部電極14,15で被覆されていない全領域が第2領域で構成される。このため、セラミック素体11の全体において外面から内部電極12,13に到達するクラックの発生を抑制可能な積層セラミックコンデンサ10が得られる。
【0082】
<実施例及び比較例>
上記実施形態の実施例及び比較例1,2として、サイドマージン部以外の構成が共通の積層セラミックコンデンサのサンプルを2000個ずつ作製した。実施例1に係るサンプルは、
図3に示す構成例1と同様の構成を有する。比較例1,2に係るサンプルは、サイドマージン部の構成が
図3に示す構成例1とは異なる構成を有する。
【0083】
具体的に、比較例1に係るサンプルでは、サイドマージン部の全体が第1領域を構成し、つまりサイドマージン部の全体にわたって結晶粒界にガラス相が析出している。比較例2に係るサンプルでは、サイドマージン部の全体が第2領域を構成し、つまりサイドマージン部の全体にわたって結晶粒界にガラス相が実質的に析出していない。
【0084】
実施例及び比較例1,2における各1000個のサンプルについて耐湿性試験を行った。耐湿性試験では、各サンプルを温度85℃、湿度85%で、4Vの電圧を印加した状態で1000時間保持した。そして、耐湿性試験後の電気抵抗値が1MΩ未満のサンプルを絶縁不良による故障が発生しているものと判断した。
【0085】
この結果、実施例及び比較例1に係るサンプルではいずれも、故障が発生していなかった。この一方で、比較例2に係るサンプルのうち3つについて、故障が発生した。この結果から、積層体の側面に隣接する第1内層領域を第1領域で構成することによって、耐湿性が向上することが確認された。
【0086】
次に、実施例及び比較例1,2における各1000個のサンプルについて耐衝撃試験を行った。耐衝撃試験では、各サンプルを30cmの高さから机上に落下させた。そして、落下後のサンプルの外観検査を行い、クラックの発生が見られたサンプルを耐衝撃性不足による不良が発生しているものと判断した。
【0087】
この結果、実施例及び比較例2に係るサンプルではいずれも、故障が発生していなかった。この一方で、比較例1に係るサンプルの2つについて、故障が発生した。この結果から、サイドマージン部の稜部を第2領域で構成することによって、耐衝撃性が向上することが確認された。
【0088】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0089】
例えば、本発明は、積層セラミックコンデンサのみならず、複数の内部電極が積層された機能部を有する積層セラミック電子部品全般に適用可能である。本発明を適用可能な積層セラミック電子部品としては、積層セラミックコンデンサ以外に、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。