【解決手段】金属帯を筒状に巻回した大円巻鉄心52の端面を揃える端面整列装置90において、大円巻鉄心52の軸長方向の一端面を押さえる加圧部70を備え、加圧部70は、大円巻鉄心52の前記一端面と接する上側樹脂板72を有することを特徴とする。
前記第1樹脂板及び前記第2樹脂板は、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、6ナイロン、ポリエチレン、ポリカーボネート、又は、ポリアセタールからなることを特徴とする請求項2に記載の端面整列装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したように、コイルの巻枠に金属帯を巻移す工程においては、巻鉄心を回転させる際に金属帯が受ける遠心力の違いに起因して、斯かる工程の途中に巻回体の端面に不揃いが生じる問題が発生していた。また、斯かる巻回体の端面の不揃いの問題に対しては、作業者による手作業にて対応されており、生産性の低減と言う問題も発生する。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、迅速かつ効果的に金属帯の巻回体の端面を揃えることができる端面整列装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る端面整列装置は、金属帯を筒状に巻回した巻回体の端面を揃える端面整列装置において、前記巻回体の軸長方向の一端面を押さえる加圧部を備え、前記加圧部は、前記巻回体の前記一端面と接する第1樹脂板を有することを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、前記第1樹脂板が前記巻回体の軸長方向の前記一端面に接した状態で前記加圧部が前記巻回体の前記一端面を押して前記巻回体の端面を揃える。
【0009】
本発明に係る端面整列装置は、前記巻回体の軸長方向の他端面を支える支持台を備え、前記支持台は、前記巻回体の前記他端面と接する第2樹脂板を有することを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、前記第2樹脂板が前記巻回体の軸長方向の前記他端面と接した状態で前記支持台が前記巻回体の前記他端面を支える。
【0011】
本発明に係る端面整列装置は、前記加圧部は振動しながら前記巻回体の前記一端面を押すことを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、前記巻回体の前記一端面を押す際、前記加圧部は振動しながら前記巻回体の前記一端面を押す。
【0013】
本発明に係る端面整列装置は、前記加圧部は前記巻回体の前記一端面を叩くことを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、前記加圧部は、前記巻回体の前記一端面を叩いて前記巻回体の端面を揃える。
【0015】
本発明に係る端面整列装置は、前記第1樹脂板及び前記第2樹脂板は、硬度が188Hv未満であることを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、前記第1樹脂板及び前記第2樹脂板の硬度は188Hv未満であり、前記第1樹脂板又は前記第2樹脂板との摩擦の際、前記巻回体の前記一端面又は前記他端面が傷むことを防止する。
【0017】
本発明に係る端面整列装置は、前記第1樹脂板及び前記第2樹脂板は、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、6ナイロン、ポリエチレン、ポリカーボネート、又は、ポリアセタールからなることを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、前記第1樹脂板及び前記第2樹脂板は、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、6ナイロン、ポリエチレン、ポリカーボネート、又は、ポリアセタールのように、耐摩耗性及び摺動性に優れた樹脂からなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、迅速かつ効果的に金属帯の巻回体の端面を揃えることが可能な端面整列装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、帯状の金属帯を筒状に巻回した鉄心から金属帯をコイルボビンに巻移す巻き付け装置が、本発明の実施の形態に係る端面整列装置を有する場合を例として、図面に基づいて詳述する。
【0022】
図1は、本実施の形態に係る巻き付け装置100の要部を概略的に示す側面図である。巻き付け装置100は、端面整列装置90と、後述する円筒状の巻鉄心50(巻回体)を回転させる内側ローラ11及び外側ローラ12と、巻鉄心50の金属帯が巻き付けられるコイルボビン55とを含む。
【0023】
端面整列装置90は、巻鉄心50の軸長方向における上側端面(一端面)を押さえる加圧部70と、加圧部70を上下方向(
図1の矢印方向)に移動させる運転機構80と、巻鉄心50を支持する支持台10とを少なくとも備える。
【0024】
巻鉄心50は、帯状の金属帯が円筒状に巻回されてなり、支持台10は巻鉄心50の軸長方向における下側端面(他端面)を支える。換言すれば、巻鉄心50は軸長方向が上下方向になるように支持台10上に載置される。巻鉄心50の金属帯は、例えばケイ素鋼板からなる。本実施の形態に係る巻き付け装置100においては、巻鉄心50の金属帯をコイルボビン55に巻き付ける。以下、このような工程を巻き付け工程と言う。
【0025】
図2は、本実施の形態に係る巻き付け装置100の要部を概略的に示す斜視図である。説明の便宜上、
図2には加圧部70を二点鎖線にて示しており、支持台10上に巻鉄心50が載置された状態を示している。
【0026】
支持台10には、支持台10を厚み方向に貫通する貫通孔10aが形成されている。貫通孔10aは内側ローラ11より少し大きい直径を有しており、内側ローラ11が貫通孔10aを介して支持台10の上下に移動可能である。内側ローラ11及び貫通孔10aは上下方向において同軸的に配置される。
【0027】
支持台10は巻鉄心50の下側端面と接する下側樹脂板10b(第2樹脂板)を上部に有する。下側樹脂板10bは扁平な板状であり、少なくとも巻鉄心50よりも低い硬度の樹脂からなる。
【0028】
具体的には、一般に、ケイ素鋼板の硬度(ヴィカース硬度)が188−204Hvであることに鑑み、下側樹脂板10bは硬度が188Hv未満であれば良い。例えば、下側樹脂板10bの硬度は30Hv〜188Hv未満であることが望ましい。
これによって、巻き付け工程において、巻鉄心50が支持台10(下側樹脂板10b)と摩擦することによって巻鉄心50の下側端面が摩耗し又は折れることを未然に防止できる。
【0029】
更に、下側樹脂板10bは耐摩耗性及び摺動性に優れた樹脂からなる。具体的に、下側樹脂板10bは、例えば、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド樹脂(例えば、セプラ(登録商標))、6ナイロン(例えば、MCナイロン)、又は、ポリエチレン(例えば、超高分子量ポリエチレン)からなる。より好ましくは、費用対効果の面から、下側樹脂板10bは超高分子量ポリエチレンからなる。
なお、これに限定されるものでなく、下側樹脂板10bはポリカーボネート又はポリアセタールから形成しても良い。
【0030】
支持台10上には、上述したように、内側ローラ11及び外側ローラ12が配置されている。内側ローラ11及び外側ローラ12は略平行であり、何れも上下方向に延びる円柱状をなしている。
【0031】
内側ローラ11は、巻鉄心50の内径よりも小さい径を有しており、軸回りに回転する第一回転軸11aが内側ローラ11の径方向の中心に配置されている。内側ローラ11は、巻き付け工程の際、巻鉄心50の内側にて巻鉄心50の内壁と接する。なお、巻き付け工程の際、内側ローラ11及び巻鉄心50は上下方向において同軸的に配置される。即ち、貫通孔10a、第一回転軸11a、内側ローラ11及び巻鉄心50は同軸的に配置される。
【0032】
外側ローラ12は、内側ローラ11と等しい径を有しており、軸回りに回転する第二回転軸12aが外側ローラ12の径方向の中心に配置されている。外側ローラ12は、巻き付け工程の際、巻鉄心50の外側に配置され、巻鉄心50の外壁と接する。なお、図示しないが、外側ローラ12は、内側ローラ11に対して遠近する方向に移行可能に構成されている。
【0033】
内側ローラ11を挟んで、外側ローラ12と反対側には、コイルボビン55が設けられている。コイルボビン55は四角環状であり、内側に開口56が形成されている。コイルボビン55は軸方向が内側ローラ11の軸方向と略直交するように立設されている。
以下、コイルボビン55における四つの辺のうち、内側ローラ11(第一回転軸11a)の軸方向と略平行である二つの辺を脚55aと言う。二つの脚55aのうち、内側ローラ11に近い位置の脚55aに金属帯が巻き付けられる。また、コイルボビン55は、脚55aと直交する二つの辺のうち下側の辺が、支持台10に設けられた切り欠き部に収容されている。
【0034】
巻き付け工程の際、巻鉄心50が支持台10上に配置された場合、上述したように、内側ローラ11は巻鉄心50の内側に位置し、外側ローラ12及びコイルボビン55は巻鉄心50の外側に位置する。換言すれば、内側ローラ11及び外側ローラ12の間には巻鉄心50が介在し、内側ローラ11及びコイルボビン55(脚55a)の間には巻鉄心50が介在する。
【0035】
端面整列装置90は内側ローラ11よりも上側に設けられている。端面整列装置90の加圧部70は支持台10上に配置された巻鉄心50の上側端面を押さえ、巻き付け工程の際に上側端面を揃える。加圧部70よりも上側には運転機構80が設けられており、運転機構80によって加圧部70が上下方向に移動し、又は振動する。運転機構80は、例えば、空気圧を用いる。
【0036】
加圧部70は略矩形の板状をなしており、上下2枚の板材からなる。具体的に、加圧部70は巻鉄心50の上側端面と接する上側樹脂板72(第1樹脂板)を下部に有し、運転機構80からの力を上側樹脂板72に伝える媒体金属板71が上側樹脂板72の上に設けられている。媒体金属板71及び上側樹脂板72は同じ形状であり、何れも扁平な板状である。また、媒体金属板71及び上側樹脂板72には、コイルボビン55(脚55a)に対応する切り欠きが形成されている。
【0037】
上側樹脂板72は、下側樹脂板10bと同様、ケイ素鋼板の硬度が188−204Hvであることに鑑み、硬度が188Hv未満であれば良い。例えば、上側樹脂板72の硬度は30Hv〜188Hv未満であることが望ましい。これによって、巻鉄心50が加圧部70(上側樹脂板72)と摩擦することによって巻鉄心50の上側端面が摩耗し又は折れることを未然に防止できる。
【0038】
更に、上側樹脂板72は耐摩耗性及び摺動性に優れた樹脂からなる。具体的に、上側樹脂板72は、例えば、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド樹脂(例えば、セプラ(登録商標))、6ナイロン(例えば、MCナイロン)、又は、ポリエチレン(例えば、超高分子量ポリエチレン)からなる。より好ましくは、費用対効果の面から、上側樹脂板72は超高分子量ポリエチレンからなる。
なお、これに限定されるものでなく、上側樹脂板72はポリカーボネート又はポリアセタールから形成しても良い。
【0039】
図3及び
図4は、本実施の形態に係る巻き付け装置100における巻き付け工程を説明する説明図であり、
図5は、巻き付け工程後、脚55aに金属帯(巻鉄心50)が巻移された状態を示す説明図である。
図3及び
図4においては、説明の便宜上、本実施の形態に係る巻き付け装置100の要部を平面図にて示しており、加圧部70を二点鎖線にて示している。
【0040】
巻き付け装置100における金属帯の巻き付け工程は、巻鉄心50の金属帯をコイルボビン55に巻移す工程である。換言すれば、巻き付け工程では金属帯を巻移してコイルボビン55に再び巻鉄心50を形成する。
【0041】
金属帯の巻き付け工程においては、まず、内側ローラ11を巻鉄心50が取り囲むように、巻鉄心50を支持台10上に載置する。次いで、外側ローラ12を内側ローラ11側に接近させ、内側ローラ11及び外側ローラ12の間に巻鉄心50を挟む。そして、巻鉄心50の最外周金属帯51を延ばし、最外周金属帯51の端部51aをコイルボビン55の中央の開口56に挿入させる(
図3A参照)。
【0042】
図6は、
図3Aの状態における加圧部70の位置を説明する巻き付け装置100の側面図である。
図3Aの状態、即ち、巻き付け工程の開始の際、加圧部70は巻鉄心50の上側端面に略接する位置まで下降する。これは、巻き付け工程において、後述の如く巻鉄心50を回転させる際、半径(位置)の違いに起因して金属帯に与えられる遠心力が異なることによって、後述する大円巻鉄心52にて上下方向における金属帯の位置が不揃いになることを抑制する為である。
【0043】
上述したように、巻鉄心50の上側端面と接する上側樹脂板72は、金属帯より小さい硬度を有し、耐摩耗性及び摺動性に優れているので、金属帯との摩擦によって傷むことを抑制しつつ、金属帯にも損傷を与えず、上下方向における金属帯の位置が不揃いになることを抑制できる。
【0044】
支持台10の下側樹脂板10bも、金属帯より小さい硬度を有し、耐摩耗性及び摺動性に優れているので、金属帯との摩擦によって傷むことを抑制しつつ、金属帯にも損傷を与えず、巻き付け工程の際に巻鉄心50、即ち後述する大円巻鉄心52(巻回体)を支えることができる。
【0045】
そして、最外周金属帯51の端部51aを内側ローラ11及び外側ローラ12の間に挿入し、前記端部51aと、端部51aよりも内側に位置する巻鉄心50の内側金属帯とを、テープ60によって連結する(
図3B参照)。このとき、最外周金属帯51によって、巻鉄心50よりも大径の円(以下、大円巻鉄心52という)が形成される。次に、内側ローラ11を、巻鉄心50の巻回方向と逆向きに回転させて巻鉄心50の金属帯に遠心力を与えることにより、金属帯が巻鉄心50から順次解れていき、金属帯は大円巻鉄心52に沿って広がる。その結果、巻鉄心50を構成する金属帯の全てが大円巻鉄心52をなす(
図3C参照)。
【0046】
図7は、
図3Cの状態における加圧部70の位置を説明する巻き付け装置100の側面図である。
このように、金属帯の大円巻鉄心52が形成されると、運転機構80によって、加圧部70に下方向への力が加わる。即ち、運転機構80が加圧部70を大円巻鉄心52側に付勢し、加圧部70(上側樹脂板72)が大円巻鉄心52の上側端面を押す。この際、加圧部70は振動を行う。即ち、加圧部70は振動しながら大円巻鉄心52の上側端面を押す。
【0047】
これによって、即ち
図3A−
図3Cにて発生していた、上下方向における金属帯の位置の不揃い、即ち大円巻鉄心52の上側端面及び下側端面の不揃いを整えて上側端面及び下側端面を揃えることができる。本実施の形態に係る巻き付け装置100においては、加圧部70が大円巻鉄心52の上側端面を押す際、加圧部70は振動するので、より効果的に大円巻鉄心52の上側端面及び下側端面を揃えることができる。
【0048】
なお、本実施の形態に係る巻き付け装置100は、以上の記載に限定されるものではない。加圧部70が規則又は不規則な間隔にて大円巻鉄心52の上側端面を押すように構成しても良い。換言すれば、加圧部70が規則又は不規則な間隔にて大円巻鉄心52の上側端面を叩くように構成しても良い。
【0049】
次いで、テープ除去具1を大円巻鉄心52の外周面に接近させて、テープ除去具1によって、テープ60を大円巻鉄心52から除去する(
図4D参照)。テープ60の除去後、第一回転軸11a及び内側ローラ11を、支持台10の貫通孔10aを介して、大円巻鉄心52から抜き出す。この際、大円巻鉄心52は、自身の弾性復元力によって径方向に収縮し、コイルボビン55の脚55aに巻き付く。従って、コイルボビン55の脚55aに巻鉄心50が形成される(
図4E及び
図5参照)。
【0050】
以上においては、巻き付け工程において、巻鉄心50の金属帯の全てが大円巻鉄心52をなす場合(
図3C参照)、加圧部70が振動しながら大円巻鉄心52の上側端面を押して大円巻鉄心52の上側端面及び下側端面を揃えることについて説明したが、本実施の形態に係る巻き付け装置100はこれに限定されるものではない。
【0051】
例えば、大円巻鉄心52の外周面のテープ60を除去した場合(
図4D参照)、又はコイルボビン55の脚55aに巻鉄心50が形成された場合(
図4E参照)に、加圧部70が振動しながら大円巻鉄心52の上側端面を押すように構成しても良い。
【0052】
本実施の形態に係る巻き付け装置100においては、以上のように、端面整列装置90を用いて巻鉄心50の上側端面(及び下側端面)を揃えるので、作業者が手作業にて巻鉄心50(大円巻鉄心52)の上側端面を揃える場合に比べて生産性を高めることができる。
また、本実施の形態に係る巻き付け装置100においては、以上のように、加圧部70が振動しながら巻鉄心50の上側端面を押すので、より効果的に巻鉄心50の上側端面及び下側端面を揃えることができる。
【0053】
更に、本実施の形態に係る巻き付け装置100においては、以上のように、巻鉄心50の上側端面と接する上側樹脂板72が、金属帯より小さい硬度を有し、耐摩耗性及び摺動性に優れていることから、金属帯との摩擦によって上側樹脂板72が痛むことを抑制しつつ、金属帯に損傷を与えない。かつ、遠心力によって速やかに巻鉄心50から大円巻鉄心52に広がり、速やかに大円巻鉄心52から縮小してコイルボビン55に巻鉄心50が形成される。従って、生産性が一層高まる。
【0054】
なお、本実施の形態に係る巻き付け装置100においては、以上のように、巻鉄心50の下側端面と接する下側樹脂板10bも、金属帯より小さい硬度を有し、耐摩耗性及び摺動性に優れているから、金属帯との摩擦によって下側樹脂板10bが痛むことを抑制しつつ、金属帯に損傷を与えない。かつ、遠心力によって速やかに巻鉄心50から大円巻鉄心52に広がり、速やかに大円巻鉄心52から縮小してコイルボビン55に巻鉄心50が形成される。
前記第1樹脂板及び前記第2樹脂板は、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、6ナイロン、ポリエチレン、ポリカーボネート、又は、ポリアセタールからなることを特徴とする請求項2に記載の端面整列装置。