【解決手段】(a)ターゲティング部分と;(b)特定のアミノ酸配列または特定のアミノ酸配列と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分と;(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子とを含む構築物、或いは、その構築物と任意で薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的組成物、或いは、特定のアミノ酸配列または特定のアミノ酸配列と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列を含むキット。
細胞質へ送達されるべき分子が、治療用部分、検出可能な部分、核酸分子、好ましくはsiRNA、キャリア分子、好ましくはナノ粒子、リポソーム、およびウイルスベクターからなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか一項記載の構築物。
治療用部分が、細胞毒性部分、抗体、抗体フラグメント、薬物、化学療法剤、小分子、酵素、ホルモン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、RNAi、放射性核種、ホウ素化合物、光活性剤、抗血管新生剤、およびアポトーシス促進剤からなる群より選択される、請求項6記載の構築物。
細胞毒性部分が、RNase Aファミリーメンバー、リシン、アブリン、アルファ毒素、サポリン、DNase I、ブドウ球菌(Staphylococcal)エンテロトキシン-A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素、およびシュードモナス内毒素からなる群より選択される、請求項7記載の構築物。
ターゲティング部分、1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分、および細胞の細胞質へ送達されるべき分子が、共有結合で化学的に結合されている、請求項1〜10のいずれか一項記載の構築物。
請求項1〜12のいずれか一項記載の構築物、請求項13記載の核酸分子、請求項14記載のベクター、または請求項15記載の宿主細胞、および任意で、薬学的に許容されるキャリアを含む、薬学的組成物。
癌、心血管疾患、ウイルス感染症、免疫機能不全、自己免疫疾患、神経学的障害、遺伝性代謝障害、または遺伝子障害の治療における使用のための、請求項16記載の薬学的組成物。
請求項1もしくは請求項10において特徴付けされる膜融合部分、請求項1〜12のいずれか一項記載の融合タンパク質、請求項13記載の核酸分子、請求項14記載のベクター、または請求項15記載の宿主細胞を含む、キット。
治療用部分、検出可能な部分、核酸分子、好ましくはsiRNA、キャリア分子、好ましくはナノ粒子、リポソーム、およびウイルスベクターの、細胞の細胞質への送達における使用のための、請求項1または請求項10において特徴付けされる膜融合部分の使用。
【発明の概要】
【0012】
上記の技術的問題は、特許請求の範囲において特徴付けされる態様の提供によって解決される。ゆえに、本発明は、
(a)ターゲティング部分;
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子
を含む構築物を提供する。
【0013】
驚くべきことに、本発明は、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する配列
が、ウイルス配列を欠く構築物と比較して最高95倍の、ヒト化抗EGFR scFvおよびランピルナーゼを含む免疫RNaseの特異的細胞毒性の有意な向上につながり、一方でオフターゲット効果(非特異的細胞毒性)は回避されることを実証する。
【0014】
(i)それぞれのウイルス配列が、仮にも「エンドソーム脱出」を仲介する能力を発揮し、一方で同時に、オフターゲット効果、すなわち非特異的細胞毒性が回避されるかどうかを予測することはできないため、そのウイルスタンパク質の天然状況由来の特定配列を単離し、かつ構築物の状況においてそれを人為的に遂行することは予測不可能であるため、これはとくに驚くべきことである。
【0015】
それにもかかわらず、上述のように、細胞の細胞質への分子の送達のための向上した手段および方法を提供し、それによって、細胞質へ送達されるべき分子の効率を増加させるという技術的問題は解決され、かつ本発明は、(a)ターゲティング部分;(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子、を含む構築物を提供する。
【0016】
本発明の構築物は、好ましくは、3つの主要なモジュール、すなわちターゲティング部分;(b)1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子(すなわち、「積み荷」)を含む。それにもかかわらず、構築物は、また、これら3つのモジュールのうちの1つを欠き得ることも想定される。ゆえに、さらに下記で説明するように、ターゲティング部分それ自体が「積み荷」、すなわち細胞の細胞質へ送達されるべき分子に当たることが考えられるため、構築物は、また、細胞の細胞質へ送達されるべき分子を欠き得る。したがって、そのような場合、構築物は、単に2つの主要なモジュール、すなわちターゲティング部分;および(b)1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分を含む。
【0017】
構築物の1つのモジュール、すなわち「ターゲティング部分」は、付着した分子を所与の細胞タイプへ特異的に送達し得、かつ好ましくは、その細胞タイプと関連付けされる所与のマーカー、好ましくは抗原と関連付けし得る分子に関する。ゆえに、「ターゲティング部分」は、その標的、すなわちある特定の標的細胞とともに特異的に見出される、細胞の表面上の所与の(マーカー)構造を特異的に検出し得かつ結合し得る。ターゲティング部分の性質は、その細胞質へ「積み荷」が送達されるべき所望の細胞に依存するため、本発明は「ターゲティング部分」に関して限定されるわけではない。それゆえ、さらに下記で、ターゲティング部分に関する単なる非限定的な例が与えられる。当業者であれば、所与の細胞に特異的である「ターゲティング部分」(または対応する抗原)を承知している。細胞に特異的であるとは、ある特定のターゲティング部分(または対応する抗原)が、所与の(標的)細胞上に独占的にまたは少なくとも圧倒的に存在し、一方でそれは他の細胞上に存在しないことを意味する。
【0018】
構築物の第2のモジュール、すなわち膜融合配列からなる膜融合部分は、膜横断およびエンドソーム脱出を促し、したがってエンドソームから細胞の細胞質への所与の分子の放出を仲介する部分または配列である。
【0019】
構築物の第3のモジュール、すなわち「積み荷」または細胞の細胞質へ送達されるべき分子は、例えば細胞の細胞質に天然には所在しない/存在しない任意の所望の分子であり得る。ゆえに、任意の考えられる「積み荷」が、この分子をある特定の細胞の細胞質へ向かわせることが望ましい限り、用いられ得る。それゆえ、本発明はある特定の「積み荷」に限定されるわけではなく、したがって、単なる非限定的な例がさらに下記で提供される。
【0020】
構築物は、融合タンパク質、すなわち少なくとも2種の遺伝子配列を結び付けることによって作製されたハイブリッド遺伝子の発現によって形成されるタンパク質の形態で存在し得る。典型的には、さらに下記でより詳細に説明するように、これは、既存の遺伝子とインフレームで発現ベクター内にcDNAをクローニングすることによって実現される。したがって、構築物は、融合タンパク質、すなわち一方のモジュールのアミノ末端と別の分子のカルボキシル末端との間のペプチド結合を介して2種またはそれを上回る種類のポリペプチドをつなげることによって形成されるキメラ分子であり得る。このようにして、上記の少なくとも2つのモジュール、好ましくは3つすべてのモジュールは、該少なくとも2つのモジュール、好ましくは3つのモジュールがタンパク質性の性質であるという条件で、融合タンパク質の形態で一緒につながれる。いったんインフレームでクローニングされると、次いで融合タンパク質は、該融合タンパク質をコードする対応する核酸配列によって組換えによって発現される。
【0021】
あるいは、少なくとも2つのモジュール、好ましくは3つすべてのモジュールは、また、化学的コンジュゲートによって共有結合的に結合され得る。ゆえに、構築物のモジュールは、共有結合で化学的に結合され得る。
【0022】
2つのモジュールは融合タンパク質の形態であり、一方で第3のモジュールは、共有結合で化学的に結合されることも考えられる。とくに、「積み荷」が非タンパク質性の性質である場合、それは、共有結合を介して、モジュール(a)およびモジュール(b)に化学的に結合される。
【0023】
コンジュゲート内の3つのモジュールの編成は、とくに限定されるわけではない。したがって、膜融合部分/膜融合配列(b)は、ターゲティング部分(a)と細胞質へ送達されるべき分子(すなわち、「積み荷」)(c)との間に位置付けされ得る。しかしながら、本発明の膜融合部分/膜融合配列の他の配置が可能である。ゆえに、膜融合部分/膜融合配列は、いずれかの末端に(すなわち、融合タンパク質の場合、N末またはC末の末端に)も置かれ得る。ゆえに、構築物は、(b)-(c)-(a)または(b)-(a)-(c)または(c)-(a)-(b)または(c)-(b)-(a)の編成を有し得る。したがって、それぞれモジュール(c)、(a)、および(b)は、他のモジュール(b)と(a)、(b)と(c)、(c)と(b)、および(c)と(a)との間にそれぞれ位置付けされ得る。それにもかかわらず、好ましくは、膜融合部分/膜融合配列は、ターゲティング部分(a)と細胞の細胞質に送達されるべき分子(c)との間に位置付けされ、したがって、構築物は、(a)-(b)-(c)または(c)-(b)-(a)の編成を有し得る。
【0024】
構築物は、また、ターゲティング部分を欠き得る。ゆえに、そのような構築物において、膜融合部分/膜融合配列は、細胞の細胞質へ送達されるべき分子に直接融合され得る(または、共有結合で化学的に結合され得る)。膜融合部分/膜融合配列の位置は、いずれかの末端にあり得る。
【0025】
上述のように、ターゲティング部分それ自体が、同時に、細胞の細胞質へ送達されるべき分子であり得るため、構築物は、また、「積み荷」、すなわち細胞の細胞質へ送達されるべき分子を欠き得る。ゆえに、そのような構築物において、膜融合部分/膜融合配列は、ターゲティング部分に直接融合され得る(または共有結合で化学的に結合され得る)。そのような場合、ターゲティング部分は、好ましくは、さらに下記で規定されるフラグメントに結合する抗体または抗原である。膜融合部分/膜融合配列の位置は、いずれかの末端にあり得る。
【0026】
本発明の構築物の主要なモジュールは、デングウイルス糖タンパク質Eに由来しかつアミノ酸配列
を含む、1つまたは複数の膜融合配列からなるターゲティング部分である。
【0027】
「1つまたは複数の」とは、ターゲティング部分が、本発明の1つの膜融合配列を持ち得ることを意味する。ターゲティング部分は、また、本発明の2つ、3つ、または4つの膜融合配列を持ち得る。あるいは、ターゲティング部分は、また、本発明の5つまたはさらにそれを上回る数の膜融合配列を持ち得る。
【0028】
デングウイルス糖タンパク質E血清型2の全長配列は、当技術分野において公知でありかつSEQ ID NO:21に示される配列を有する。添付の実施例では、デングウイルス糖タンパク質E血清型2のアミノ酸96〜114由来の配列
が用いられているものの、本発明の膜融合配列は、デングウイルス糖タンパク質E血清型2の糖タンパク質Eのアミノ酸98〜113のコア領域、すなわちアミノ酸配列
を少なくとも含む。なお、好ましくは、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する膜融合配列は、アミノ酸配列
を含む。
【0029】
しかしながら、本発明において用いられる膜融合配列は、上記の特異的配列にとくに限定されるわけではないが、SEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、または挿入を示す配列を含む膜融合配列でもあり得る。あるいは、膜融合配列は、SEQ ID NO:3と比較して1〜8個の置換、欠失、または挿入を示す配列を含む配列でもあり得る。膜融合配列は、SEQ ID NO:1(またはSEQ ID NO:3)と比較して1〜7個の置換、欠失、または挿入を示す配列を含む配列でもあり得る。膜融合配列は、SEQ ID NO:1(またはSEQ ID NO:3)と比較して1〜6個の置換、欠失、または挿入を示す配列を含む配列でもあり得る。膜融合配列は、SEQ ID NO:1(またはSEQ ID NO:3)と比較して1〜5個の置換、欠失、または挿入を示す配列を含む配列でもあり得る。膜融合配列は、SEQ ID NO:1(またはSEQ ID NO:3)と比較して1〜4個の置換、欠失、または挿入を示す配列を含む配列でもあり得る。膜融合配列は、SEQ ID NO:1(またはSEQ ID NO:3)と比較して1〜3個の置換、欠失、または挿入を示す配列を含む配列でもあり得る。膜融合配列は、SEQ ID NO:1(またはSEQ ID NO:3)と比較して1〜2個の置換、欠失、または挿入を示す配列を含む配列でもあり得る。最も好ましくは、膜融合配列は、SEQ ID NO:1(またはSEQ ID NO:3)と比較して1個の置換、欠失、または挿入を示す配列を含む配列でもあり得る。
【0030】
好ましくは、SEQ ID NO:1(またはSEQ ID NO:3)と比較した上記のアミノ酸置換、欠失、または挿入の箇所は、他のフラビウイルス(Flaviviridae)ファミリーメンバーのデングウイルス糖タンパク質E配列の対応する配列と比較して、SEQ ID NO:1(またはSEQ ID NO:3)の配列においてあまり保存されていない箇所で行われる。本発明の配列は、フラビウイルスファミリーのメンバーの間で高度に保存されていることが知られる。
【0031】
ある特定のアミノ酸箇所があまり保存されておらず、それゆえ好ましくは、上記で概説される改変に供するかどうかを判定するために、当業者であれば、当技術分野において周知の手段および方法、例えば手作業によるまたは当業者に公知のコンピュータープログラムを用いることによるアラインメントを用いることができる。そのようなアラインメントは、例えばLipman-Pearson法(Science 227 (1985), 1435)またはCLUSTALアルゴリズムなどの公知のコンピューターアルゴリズムを用いることによって、例えば当業者に公知の手段および方法で行われ得る。そのようなアラインメントでは、最大の相同性を、アミノ酸配列内に存在する保存されたアミノ酸残基に割り当てることが好ましい。好ましくは、ClustalW2をアミノ酸配列の比較に用いる。ペアワイズ比較/アラインメントの場合、以下の設定が好ましくは選定される:タンパク質重み行列(Protein weight matrix):BLOSUM 62;ギャップ開始(gap open):10;ギャップ伸長(gap extension):0.1。多重比較/アラインメントの場合、以下の設定が好ましくは選定される:タンパク質重み行列:BLOSUM 62;ギャップ開始:10;ギャップ伸長:0.2;ギャップ距離(gap distance):5;末端ギャップなし。
【0032】
「同一である」(すなわち、フラビウイルスファミリーのメンバーの間で「保存されている」)ことが判明したそうした箇所は、好ましくは置換、欠失、または挿入に供されない。本発明に従って、2つまたはそれを上回る数の核酸またはアミノ酸配列の文脈における「同一である」または「同一性パーセント」という用語は、同じであるか、またはSEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:3と同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを指定のパーセンテージで有する、2つまたはそれを上回る数の配列または部分配列(subsequence)を指す。好ましくは、記載される同一性は、少なくとも約19個のアミノ酸(すなわち、上述のデングウイルス糖タンパク質E血清型2のアミノ酸96〜114
である領域にわたって、または少なくとも約16個のアミノ酸(すなわち、上述のデングウイルス糖タンパク質E血清型2の糖タンパク質Eのアミノ酸98〜113のコア領域、すなわちアミノ酸配列
である領域にわたって存在する。当業者であれば、当技術分野において公知であるように、例えば、CLUSTALWコンピュータープログラム(Thompson Nucl. Acids Res. 2 (1994), 4673-4680)またはFASTDB(Brutlag Comp. App. Biosci. 6 (1990), 237-245)に基づくものなどのアルゴリズムを用いて、配列の間/中での同一性パーセントを判定する方法を知っているであろう。
【0033】
FASTDBアルゴリズムは、典型的に、その算出において、配列における内部のマッチしない欠失または付加、すなわちギャップを考慮しないが、これを手作業で補正して、同一性%の過大評価を回避することができる。しかしながら、CLUSTALWは、その同一性算出において、配列ギャップを考慮に入れない。BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズム(Altschul, (1997) Nucl. Acids Res. 25:3389-3402;Altschul (1993) J. Mol. Evol. 36:290-300;Altschul (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410)も当業者にとって利用可能である。核酸配列のためのBLASTNプログラムは、11というワード長(W)、10という期待値(E)、M=5、N=4、および両鎖の比較をデフォルトとして用いる。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、3というワード長(W)および10という期待値(E)をデフォルトとして用いる。BLOSUM 62スコア行列(Henikoff (1989) PNAS 89:10915)は、50というアラインメント(B)、10という期待値(E)、M=5、N=4、および両鎖の比較を用いる。
【0034】
好ましくは、上記の最高1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換は、SEQ ID NO:1および3の配列を参照して保存的アミノ酸置換である。
【0035】
これらの「保存的アミノ酸置換」とは、類似した特徴(例えば、電荷、側鎖のサイズ、疎水性/親水性、主鎖立体構造、および柔軟性のなさなど)を有する他のアミノ酸でのタンパク質内のアミノ酸の置換を指し、そのため、タンパク質の生物学的活性を変更することなく、高頻度に変化がもたらされ得る。当業者であれば、一般的に、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換は、生物学的活性を実質的に変更しないことを認識している(例えば、Watson Molecular Biology of the Gene, The Benjamin/Cummings Pub. Co. 4th Ed. (1987), 224を参照されたい)。加えて、構造的または機能的に類似したアミノ酸の置換は、生物学的活性を混乱させる可能性が低い。本発明の状況において、本発明の膜融合配列は、本明細書において開示される特異的アミノ酸配列、例えばSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:3と比較した場合に最高0(変化なし)、1、2、3、4、5、6、7、または8個の保存的アミノ酸置換を含む配列を有するポリペプチド鎖を含む。
【0036】
そのような例示的な置換は、好ましくは、以下のように表1に明示されるものに従って作製される。
(表1)例示的な保存的アミノ酸置換
【0037】
SEQ ID NO:1(またはSEQ ID NO:3)と比較して、上記の置換、欠失、または挿入のうちの1つまたは複数を有する膜融合配列は、SEQ ID NO:1(またはSEQ ID NO:3)と同程度の能力(膜融合特性の点において)、好ましくはSEQ ID NO:1(またはSEQ ID NO:3)よりも高い能力を有する膜融合配列をもたらし得る。SEQ ID NO:1(またはSEQ ID NO:3)と比較した所与の改変された膜融合配列の特性/能力は、当技術分野において公知のかつ添付の実施例において概説される方法により、当業者によって容易に判定され得る。ゆえに、SEQ ID NO:1(またはSEQ ID NO:3)と比較した所与の改変された膜融合配列の(膜融合)特性/能力は、「エンドソーム脱出」を仲介し得る能力を有するある特定のそれぞれの配列の活性(すなわち、膜融合配列による、膜横断およびエンドソーム脱出、したがってエンドソームから細胞の細胞質への所与の分子の放出の仲介を促進する)に関し、一方で同時に、オフターゲット効果、すなわち非特異的細胞毒性は回避される/低下する。「エンドソーム脱出」および「非特異的細胞毒性」は、例えば添付の実施例において記載されかつ以下に概説される方法によって判定され得る。
【0038】
細胞毒性特性を有する標的タンパク質のエンドソーム脱出効率は、細胞生存率アッセイによって判定され得る。このアッセイを用いて、細胞生存率を50%低下させるのに要する、膜融合配列を含有する標的タンパク質(例えば、免疫RNase融合タンパク質)の濃度(IC50)を判定してもよく、かつ膜融合配列を欠く標的対照タンパク質のIC50と比較してもよい。これに関しては、標的細胞を96ウェル平底プレートに播種し、かつ種々の濃度の標的タンパク質または対照としてのバッファーとともに、100μlの総容量で37℃、5% CO
2にて72時間インキュベートする。細胞生存率は、例えば、PBS中に希釈された5mg/ml溶液の3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)の20μlの添加によって判定され得る。MTTとともに37℃、5% CO
2で4時間のインキュベーション後、培地を除去し、かつ細胞を1ウェルあたり100μlの溶解液(ジメチルスルホキシド中、10% SDS(w/v)および0.6%酢酸(v/v))中に溶解する。プレートを室温で5分間インキュベートし、その後、5分間穏やかに撹拌し、放出されたホルマザン結晶を溶かす。ホルマザン濃度は、マイクロプレートリーダー(例えば、Infinite F200Pro Tecan)を用いて570nm(参照:620nm)における吸光度を測定することによって判定する。あるいは、細胞生存率は、1ウェルあたり10μlのalamarBlue(登録商標)(ThermoScientific, Rockford, IL, USA)を添加し、および後続の細胞溶解なしで37℃、5% CO
2で4時間のインキュベーションによって判定され得る。吸光度は、MTT処理された細胞に対するものと同じ波長および器具を用いて直接測定され得る。細胞生存率は、バッファー対照に対して、標的タンパク質で処理された生存細胞のパーセンテージとして表現される。ゆえに、上記のアッセイにおいて判定された細胞生存率は、所与の膜融合配列の特性/能力を判定するための読み出しとして働く。推定膜融合配列は、細胞生存率が、それぞれの(推定)膜融合配列を欠く対応する対照融合タンパク質と比較して低下しているという条件で、SEQ ID NO:1(またはSEQ ID NO:3)と同程度の能力(膜融合特性の点において)、好ましくはSEQ ID NO:1(またはSEQ ID NO:3)よりも高い能力を有する。
【0039】
非特異的細胞毒性は、非標的細胞(例えば、抗原陰性細胞)の状況において、上記で記載される細胞生存率アッセイを用いることによって証明され得る。
【0040】
しかしながら、本発明において用いられる膜融合配列は、上記の特異的配列および上記で記載される欠失、置換、または挿入にとくに限定されるわけではないが、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:3と比較してアミノ酸付加を示す配列を含む膜融合配列にも関し得る。アミノ酸の付加は、隣接型または散在型であり得る。ゆえに、付加的アミノ酸は、本発明の膜融合配列のN末および/またはC末の末端に付加され得る。代替として、またはこれらの隣接する付加的アミノ酸に加えて、付加的アミノ酸はまた、本発明の膜融合配列のアミノ酸配列内にあり得る。付加的アミノ酸は、最高0(変化なし)、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸、好ましくは最高20個のアミノ酸、またはさらにより好ましくは最高30個のアミノ酸のポリペプチド鎖を含む。アミノ酸の付加は、本発明の膜融合配列の上記の機能的特性を変化させない可能性が高いという論理的根拠に照らして、これらの配列が、上記で規定されるSEQ ID NO:1(またはSEQ ID NO:3)と同程度の能力(膜融合特性の点において)、好ましくはSEQ ID NO:1(またはSEQ ID NO:3)よりも高い能力を有する限り、アミノ酸の付加は、最高40、50、60、70、80、90、もしくはさらに100個のアミノ酸、またはさらにそれを上回る最高200、300、400、もしくは500個のアミノ酸の長さも有し得る。
【0041】
本発明に従った構築物において、膜融合配列は、
からなる群より選択され得る。
【0042】
しかしながら、本発明において用いられる膜融合配列は、上記のSEQ ID NO:5〜20の特異的配列にとくに限定されるわけではないが、それぞれSEQ ID NO:5〜20と比較して1〜8個の置換、欠失、または挿入を示す配列を含む膜融合配列でもあり得る。この点において、置換、欠失、または挿入の程度に関しては、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:3に対して上記ですでに明示されていることと同じことが、必要に応じて変更を加えて、SEQ ID NO:5〜20に適用される。さらに、膜融合配列は、上記のSEQ ID NO:5〜20に限定されるわけではないが、該配列と比較してアミノ酸付加を示す配列を含む膜融合配列にも関し得る。この点において、アミノ酸の付加に関しては、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:3に対して上記ですでに明示されていることと同じことが、必要に応じて変更を加えて適用される。
【0043】
本発明の膜融合配列は、当業者に公知の方法によって組換えによってまたは合成的に生成/合成され得る。より具体的には、さらに下記で記載されるように、本発明の膜融合ペプチドは、当業者に公知の方法によって組換えによって産生されてもよく、または例えば、固相担体ならびに反復的な直交性脱保護およびカップリングの標準的技法を用いた自動ペプチド合成機で好都合に合成されてもよい。部分または他の作用物質のコンジュゲートのために後に用いられる対象となる、ペプチド内の遊離アミノ基を、Boc基などの標準的保護基で有利にブロックし、一方でN末残基をアセチル化して、血清中安定性を増加させ得る。そのような保護基は当業者に周知である;Greene and Wuts Protective Groups in Organic Synthesis, 1999(John Wiley and Sons, N.Y.)を参照されたい。本発明の構築物内での後の使用のためにペプチドを調製する場合、対応するC末端アミドを生成するようにそれらを樹脂から有利に切断して、インビボでのカルボキシペプチダーゼ活性を阻害する。
【0044】
上述のように、構築物の1つのモジュール、すなわち「ターゲティング部分」は、付着した分子を所与の細胞タイプへ特異的に送達することができ、かつ好ましくは、その細胞タイプと関連付けされる所与のマーカー、好ましくは抗原と関連付けし得る分子に関する。ゆえに、「ターゲティング部分」は、その標的、すなわちある特定の標的細胞とともに特異的に見出される、細胞の表面上の所与の(マーカー)構造を特異的に検出し得かつ結合し得る。
【0045】
本発明の文脈において用いられる「に結合する」という用語は、互いの、すなわち一方ではターゲティング部分、および他方では細胞表面上の対応する抗原またはエピトープの、少なくとも2つの「抗原相互作用部位」の結合(相互作用)を定義する。「抗原相互作用部位」という用語は、本発明に従って、標的にされる細胞の特異的抗原または特異的グループの抗原との特異的相互作用の能力を示す、ターゲティング部分のモチーフ、好ましくは抗体の一部または抗体フラグメントまたはサイトカインまたはリガンドを定義する。該結合/相互作用は、「特異的認識」を定義するとも理解される。「特異的に認識する」という用語は、本発明に従って、ターゲティング部分が、標的にされる細胞に特異的である少なくとも1つの表面構造と特異的に相互作用し得かつ/または結合し得ることを意味する。ターゲティング部分は、標的にされる細胞上のエピトープと相互作用し得かつ/または結合し得、一方でこの構造、抗原、またはエピトープは、標的にされる細胞に特異的である。「特異的に認識する」という用語は、ターゲティング部分の特異性に関し、すなわち標的にされる細胞と、標的にされる対象ではない、それゆえ標的にされる細胞に特異的である構造、抗原、またはエピトープを有しない細胞の特異的領域を識別し得るその能力に関する。当業者であれば、ある特定の細胞に特異的でありかつ非標的細胞上に存在しない構造、エピトープ、表面マーカー、および/または抗原を知っておりかつ導き出し得、そしてそれに応じて標的を容易に選択し得る。非限定的な例が、さらに下記で与えられる。
【0046】
本発明に従って用いられる「特異的相互作用」という用語は、ターゲティング部分が、類似した構造の(ポリ)ペプチド、構造、エピトープ、表面マーカー、および/または抗原と交差反応しないまたは本質的に交差反応しないことを意味する。
【0047】
検討中のターゲティング部分のパネルの交差反応性は、例えば従来の条件下におけるターゲティング部分の該パネルの、関心対象の構造への結合、ならびに多かれ少なかれ(構造的および/または機能的に)密接に関係したいくつかの構造への結合を査定することによって検定され得る(例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1988)およびUsing Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1999)を参照されたい)。標的にされる細胞のある特定の選定された構造(すなわち、該細胞に特異的である構造)に結合するが、他の構造のいずれにも結合しないまたは本質的に結合しないそうしたターゲティング部分のみが、関心対象の該細胞に特異的であると見なされかつ選択される。これらの方法には、とりわけ、構造的および/または機能的に密接に関係した分子との結合調査、遮断および競合調査が含まれ得る。これらの結合調査には、FACS分析、表面プラズモン共鳴(SPR、例えばBIAcore(登録商標)を用いた)、超遠心分析、等温滴定型熱量測定、蛍光異方性、蛍光分光法、または放射標識リガンド結合アッセイによるものが含まれる。
【0048】
「に結合する」という用語は、線状構造、例えば線状エピトープに関するだけでなく、ヒト標的分子またはその一部のうちの2つの領域からなる立体構造エピトープ、構造エピトープ、または不連続エピトープにも関し得る。本発明の文脈において、立体構造エピトープとは、ポリペプチドが天然タンパク質に折り畳まれた場合に分子の表面上で一体となる、一次配列においては分離された2つまたはそれを上回る数の個別のアミノ酸配列によって定義される(Sela, Science 166 (1969), 1365およびLaver, Cell 61 (1990), 553-536)。さらに、「に結合する」という用語は、本発明の文脈において、「と相互作用する」または「認識する」という用語と互換可能に用いられる。
【0049】
したがって、特異性は、当技術分野において公知の方法および本明細書において記載される方法によって実験的に判定され得る。そのような方法には、ウェスタンブロット、ELISA検定、RIA検定、ECL検定、IRMA検定、およびペプチドスキャンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0050】
上述のように、ターゲティング部分の性質は、その細胞質へ「積み荷」が送達されるべき所望の細胞に依存するため、本発明は「ターゲティング部分」に関して限定されるわけではない。当業者であれば、所与の細胞に特異的である「ターゲティング部分」または抗原を承知している。上記に沿って、細胞に特異的であるとは、ある特定のターゲティング部分または抗原が、所与の(標的)細胞上に独占的にまたは少なくとも圧倒的に存在し、一方でそれは他の細胞上に存在しないことを意味する。
【0051】
ゆえに、本発明に従った構築物において、ターゲティング部分は、抗体、抗体フラグメント、設計アンキリン反復タンパク質(DARPin)、サイトカイン、またはリガンドであり得る。
【0052】
本発明の状況におけるリガンドとは、ある特定の細胞表面分子、または構造、好ましくは細胞表面受容体(膜受容体、膜貫通型受容体)、すなわちある特定の細胞と外界との間のコミュニケーションによく参加する特化した内在性膜タンパク質の対応物であり得る。細胞外シグナル伝達分子(すなわち、通常、ホルモン、神経伝達物質、サイトカイン、増殖因子、または細胞認識分子である、細胞表面受容体の対応するリガンド)は受容体に付着し、細胞の機能の変化を誘発する。この過程は、シグナル伝達と呼ばれる。結合は、膜の細胞内側に化学的変化を引き起こす。このようにして、受容体は、細胞コミュニケーションおよびシグナル伝達において固有のかつ重要な役割を果たす。多くの細胞表面受容体は、ある特定のタイプの細胞または細胞の部分集団に特異的であり、したがって対応するリガンドは、本発明の観点から、特異的細胞を特異的に標的にするのに適切なターゲティング部分であり得る。当業者であれば、所与の細胞に特異的であるリガンドを承知しており、かつ標的にされる所望の細胞に基づき、ある特定のリガンドを選択し得る。リガンドのアミノ酸配列は当技術分野において周知であり、かつ任意のそのような公知の配列が、本発明の状況においてターゲティング部分として用いられ得る。当業者であれば、リガンド配列に関する公的情報の数々の供給源を承知している。例えば、NCBIデータベースは、多数のリガンドに対するタンパク質およびコード核酸配列の両方を含有する。関心対象の本質的に任意のリガンドに対する適当なアミノ酸および/または核酸配列を選定しかつ同定し、そして本発明に沿ってそれをターゲティング部分として用いることは、当業者にとって日常的な事である。
【0053】
特異的リガンドは、例えばサイトカインであり得る。サイトカインとは、細胞シグナル伝達において重要である広範なかつ緩いカテゴリーの小さなタンパク質(約5〜20kDa)である。それらは細胞によって放出され、かつ他の細胞、およびときには放出細胞それ自体の挙動に影響を及ぼす。サイトカインには、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、腫瘍壊死因子が含まれるが、一般的にホルモンまたは増殖因子は含まれない。サイトカインは、マクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球、および肥満細胞のような免疫細胞、ならびに内皮細胞、線維芽細胞、および様々な間質細胞を含めた広範囲の細胞によって産生され;所与のサイトカインは、1種を上回るタイプの細胞によって産生され得る。それらは、所与の細胞に対して、ある特定のタイプの細胞または細胞の部分集団に対して特異的である対応するサイトカイン受容体を介して作用し、したがって対応するサイトカインは、上記の論理的根拠に沿って、本発明の観点から、特異的細胞を特異的に標的にするのに適切なターゲティング部分であり得る。当業者であれば、所与の細胞に特異的であるサイトカインを承知しており、かつ標的にされる所望の細胞に基づき、ある特定のサイトカインを選択し得る。サイトカインのアミノ酸配列は当技術分野において周知であり、かつ任意のそのような公知の配列が、本発明の状況においてターゲティング部分として用いられ得る。当業者であれば、サイトカイン配列に関する公的情報の数々の供給源を承知している。例えば、NCBIデータベースは、多数のサイトカインに対するタンパク質およびコード核酸配列の両方を含有する。関心対象の本質的に任意のサイトカインに対する適当なアミノ酸および/または核酸配列を選定しかつ同定し、そして本発明に沿ってそれをターゲティング部分として用いることは、当業者にとって日常的な事である。理論に拘束されることなく、サイトカインの非限定的な例には、リンホカイン、モノカイン、増殖因子、および伝統的なポリペプチドホルモンが含まれる。サイトカインの中でも、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH)などの糖タンパク質ホルモン;胎盤増殖因子(PIGF)、肝細胞(hepatic)増殖因子;プロスタグランジン、線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン、OBタンパク質;腫瘍壊死因子-αおよび-β;ミュラー管阻害物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮細胞増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-βなどの神経成長因子;血小板増殖因子;TGF-αおよびTGF-βなどのトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様成長因子-Iおよび-II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン-α、-β、-γ、および-λなどのインターフェロン;マクロファージ-CSF(M-CSF)などのコロニー刺激因子(CSF);IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-21、IL-25などのインターロイキン(IL)、LIF、kitリガンドまたはFLT-3、アンギオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、腫瘍壊死因子(TNF、TNF-αなど)およびLTが含まれる。サイトカインはIFN-α2bであり得る。
【0054】
記述されるように、ターゲティング部分は、特異的抗体または抗体フラグメントでもあり得る。
【0055】
抗体または抗体フラグメントという用語は、当業者に公知でありかつ免疫グロブリン(Ig)としても知られ、それは、細菌およびウイルスなどの外来物を同定しかつ中和する、免疫系によって一般に用いられる形質細胞によって産生される大きなY字型タンパク質である。抗体は、抗原と呼ばれる外来標的の固有の部分を認識する。抗体の「Y」の各先端は、抗原上の1つの特定のエピトープに特異的であるパラトープ(鍵に似ている構造)を含有し、これら2つの構造が正確に一緒に結合するのを可能にしている。ゆえに、この特異性を考えると、当業者であれば、標的にされる所与の細胞上のある特定の構造/抗原/エピトープに高度に特異的である抗体または抗体フラグメントを容易に調製し得るため、抗体または抗体フラグメントは、本発明の観点における最も好ましいターゲティング部分である。抗体は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する糖タンパク質である。抗体は、典型的に基本的な構造単位から作製され、それぞれは2つの大きな重鎖および2つの小さな軽鎖を有する。いくつかの異なるタイプの抗体重鎖、およびいくつかの異なる種類の抗体があり、それは、それらがどの重鎖を所有するかに基づき、異なるアイソタイプに分類されることは当業者に公知である。哺乳類では、5つの異なる抗体アイソタイプが知られており、それは異なる役割を果たし、かつそれらが遭遇するそれぞれ異なるタイプの外来物に対して適当な免疫応答を指揮するのを助ける。
【0056】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているものの、タンパク質の先端における小さな領域は極めて可変的であり、わずかに異なる先端構造を有する何百万もの抗体、つまり抗原結合部位が存在するのを可能にしている。この領域は超可変領域として知られる。これらの変種のそれぞれは、異なる抗原に結合し得る。抗体のこの膨大な多様性は、免疫系が同じように多種多様な抗原を認識するのを可能にし、かつ所望の標的細胞を標的にするのに十分特異的である、本発明の観点における特異的抗体または抗体フラグメントを調製するために用いられ得る。標的にされる細胞上の事実上任意の考え得る(特異的な)構造に対して、考え得る抗体または抗体フラグメントを生成するこの能力により、抗体または抗体フラグメントは、本発明の観点におけるターゲティング部分に対する最良の選定となっている。ゆえに、この理由で、本発明のターゲティング部分は、細胞の細胞質へ送達されるべき分子の標的送達のための抗体または抗体フラグメントであり得る。
【0057】
本発明の状況において用いられる抗体またはそのフラグメントは、前述に沿って、それが、標的にされる細胞の表面上の構造に特異的に結合し得るまたは特異的に認識し得るまたは相互作用し得る抗体またはその抗原結合フラグメントである限り、とくに限定されるわけではない。
【0058】
ターゲティング部分として用いられる抗体またはその抗原結合フラグメントは、モノクローナルまたはポリクローナル抗体であり得る。
【0059】
本明細書において用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から獲得された抗体を指し、すなわち該集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る考え得る天然に所在する変異を除いては同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に向けられている。モノクローナル抗体は、それらを、他の免疫グロブリンが本質的に混入していないハイブリドーマ培養によって合成し得るという点において有利である。改変された「モノクローナル」とは、抗体の実質的に均一な集団の中にあるものとしての抗体の特徴を表し、任意の特定の方法による抗体の産生を要求するものとして解釈されるべきではない。上述のように、本発明に従って用いられるモノクローナル抗体は、Kohler, Nature 256 (1975), 495によって記載されたハイブリドーマ法によって作製され得る。
【0060】
本明細書において用いられる「ポリクローナル抗体」という用語は、1種または複数種の他の同一でない抗体の中でまたは存在下で産生された抗体を指す。一般的に、ポリクローナル抗体は、同一でない抗体を産生したいくつかの他のBリンパ球の存在下で、Bリンパ球から産生される。通常、ポリクローナル抗体は、免疫化動物から直接獲得される。
【0061】
抗体は「完全ヒト抗体」でもあり得、かつヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を指す。完全ヒト抗体は、マウスにおいて、マウス細胞において、またはマウス細胞に由来するハイブリドーマにおいて産生された場合、マウス(murine)の糖鎖を含有し得る。同様に、「マウス(mouse)抗体」または「マウス(murine)抗体」とは、マウス(mouse)/マウス(murine)免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を指す。あるいは、「完全ヒト抗体」は、ラットにおいて、ラット細胞において、ラット細胞に由来するハイブリドーマにおいて産生された場合、ラットの糖鎖を含有し得る。同様に、「ラット抗体」という用語は、ラット免疫グロブリン配列のみを含む抗体を指す。完全ヒト抗体は、例えば、完全ヒト抗体の産生およびスクリーニングを可能にする広く用いられているスクリーニング技術であるファージディスプレイによっても産生され得る。ファージ抗体も本発明の状況において用いられ得る。ファージディスプレイ法は、例えば米国特許第5,403,484号、米国特許第5,969,108号、および米国特許第5,885,793号に記載されている。完全ヒト抗体の開発を可能にする別の技術は、マウスハイブリドーマ技術の改変を伴う。マウスを、それら自身のマウス遺伝子と引き換えにヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するようにトランスジェニックにする(例えば、米国特許第5,877,397号を参照されたい)。
【0062】
抗体は、別のヒトまたは非ヒト種(例えば、マウス、ウマ、ウサギ、イヌ、ウシ、ニワトリ)由来の抗体領域(例えば、定常領域)と融合されたまたはキメラ化された、本発明の可変領域を含む抗体を指す「キメラ抗体」でもあり得る。
【0063】
抗体という用語は、組換えヒト抗体、異種抗体、およびヘテロハイブリッド抗体にも関する。「組換えヒト抗体」という用語には、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体など、組換え手段によって調製され、発現され、創出され、もしくは単離される全ヒト配列抗体;宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現された抗体、組換えのコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、または他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを伴う他の任意の手段によって調製され、発現され、創出され、もしくは単離された抗体が含まれる。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域(存在する場合)を有する。しかしながら、そのような抗体は、インビトロ突然変異誘発(または、ヒトIg配列に対してトランスジェニックな動物が用いられる場合には、インビボ体細胞突然変異誘発)に供され得、ゆえに組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列に由来しかつ関係するものの、インビボでのヒト抗体生殖系列レパートリー内には天然に存在し得ない配列である。
【0064】
抗体は、そのような抗体を産生するトランスジェニック非ヒト生物との関連で規定される「異種抗体」でもあり得る。この用語は、トランスジェニック非ヒト動物からなるものではない生物において見出され、一般的には該トランスジェニック非ヒト動物のもの以外の種由来のものに対応するアミノ酸配列またはコード核酸配列を有する抗体を指す。
【0065】
抗体は「ヘテロハイブリッド抗体」でもあり得、かつ種々の生物起源の軽鎖および重鎖を有する抗体を指す。例えば、マウス(murine)軽鎖と関連付けされたヒト重鎖を有する抗体は、ヘテロハイブリッド抗体である。ヘテロハイブリッド抗体の例には、キメラおよびヒト化抗体が含まれる。
【0066】
抗体という用語は、ヒト化抗体にも関する。非ヒト(例えば、マウス(murine)またはウサギ)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそのフラグメント(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2、または抗体の他の抗原結合部分配列など)である。しばしば、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性(complementary)決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、アフィニティー、および能力を有する、マウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体においても、持ち込まれたCDRまたはフレームワーク配列においても見出されない残基を含み得る。これらの改変は、抗体性能をさらに洗練させかつ最適化するためになされる。一般的に、ヒト化抗体は、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、かつFR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインのうちの実質的にすべてを含むと考えられる。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にヒト免疫グロブリンのものも含み得る。さらなる詳細に関しては、Jones Nature 321 (1986), 522-525;Reichmann Nature 332 (1998), 323-327、およびPresta Curr Op Struct Biol 2 (1992), 593-596を参照されたい。
【0067】
抗体のヒト化のためのよく使われる方法は、非ヒト「ドナー」抗体由来の機能的抗原結合部位がヒト「アクセプター」抗体へ移植される、CDR移植を伴う。CDR移植法は当技術分野において公知であり、かつ例えば米国特許第5,225,539号、米国特許第5,693,761号、および米国特許第6,407,213号に記載されている。別の関連した方法は、遺伝子再編成および遺伝子変換を受け得る1つまたは複数のヒト化免疫グロブリン遺伝子座を含有するように遺伝子操作されているトランスジェニック動物由来のヒト化抗体の産生である(例えば、米国特許第7,129,084号を参照されたい)。
【0068】
したがって、本発明の文脈において、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子全体ならびにそのような免疫グロブリン分子の一部(すなわち、「その抗原結合フラグメント」)に関する。さらに、該用語は、上記で述べられたように、改変されかつ/または変更された抗体分子に関する。該用語は、組換えによってまたは合成的に生成/合成された抗体にも関する。該用語は、無傷の抗体、ならびに分離した軽鎖および重鎖、Fab、Fv、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2のようなその抗体フラグメントにも関する。抗体という用語には、全くのヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、CDR移植された抗体、および一本鎖Fv(scFv)または抗体融合タンパク質のような抗体構築物も含まれるが、それらに限定されるわけではない。さらに、ターゲティング部分は、F(ab')
2、F(ab)
2、Fab'、Fv抗体フラグメント、scFv、Fab、VH、scFv-Fc、sdFv、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、ミニボディ(minibody)、タンデム-scFv、タンデム-scFv-Fc、scFv-Fc-scFv、Fab-scFv、Fab
3、IgG-scFv、scFv-IgG、IgG-V
H、または単一ドメイン抗体、好ましくはsdAb、ラクダ科由来のV
HHフラグメント、または軟骨魚類由来のV
NARフラグメントであり得る。
【0069】
抗体は、全長抗体、すなわちしばしば完全抗体とも称される免疫グロブリン分子全体であり得る。
【0070】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントは、本発明の状況において、抗体のV
HおよびV
Lドメインを有し、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。一般的に、scFvポリペプチドは、該scFvが抗原結合のための所望の構造を形成するのを可能にする、V
HおよびV
Lドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含む。一本鎖抗体の産生に関して記載された技法は、例えばPluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, N.Y. (1994), 269-315に記載されている。
【0071】
本明細書において用いられる「Fabフラグメント」は、1本の軽鎖、ならびに1本の重鎖のC
H1および可変領域から構成される。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成し得ない。
【0072】
「Fc」領域は、抗体のC
H2およびC
H3ドメインを含む2つの重鎖フラグメントを含有する。2つの重鎖フラグメントは、2つまたはそれを上回る数のジスルフィド結合によって、およびC
H3ドメインの疎水性相互作用によって一緒に保たれる。
【0073】
「Fab'フラグメント」は、1本の軽鎖、ならびにV
HドメインおよびC
H1ドメインを含有する1本の重鎖の一部、ならびにまた、2つのFab'フラグメントの2本の重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合が形成されてF(ab')
2分子を形成し得るような、C
H1とC
H2ドメインとの間の領域を含有する。
【0074】
「F(ab')
2フラグメント」は、2本の軽鎖、ならびに2本の重鎖間に鎖間ジスルフィド結合を形成し得るような、C
H1とC
H2ドメインとの間の定常領域の一部を含有する2本の重鎖を含有する。ゆえに、F(ab')
2フラグメントは、2本の重鎖間のジスルフィド結合によって一緒に保たれる2つのFab'フラグメントから構成される。
【0075】
「Fv領域」は、重鎖および軽鎖の両方由来の可変領域を含むが、定常領域を欠く。
【0076】
本発明に従って採用される抗体、抗体構築物、抗体フラグメント、抗体誘導体(すべてIg由来である)、またはそれらの対応する免疫グロブリン鎖は、当技術分野において公知の従来的技法を用いて、例えば、単独または組み合わせのいずれかで、アミノ酸の欠失、挿入、置換、付加、および/もしくは組換え、ならびに/または当技術分野において公知の他の任意の改変を用いることによってさらに改変され得る。免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の基礎となるDNA配列にそのような改変を導入するための方法は、当業者に周知である;例えば、上記引用のSambrook (1989)を参照されたい。「Ig由来ドメイン」という用語は、少なくとも1つのCDRを含む(ポリ)ペプチド構築物にとくに関する。列挙されたIg由来ドメインのフラグメントまたは誘導体とは、上記抗体分子の一部でありかつ/または化学的/生化学的もしくは分子生物学的な方法によって改変されている(ポリ)ペプチドを定義する。対応する方法は当技術分野において公知であり、かつとりわけ実験マニュアルに記載されている(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd edition (1989)および3rd edition (2001);Gerhardt et al., Methods for General and Molecular Bacteriology ASM Press (1994);Lefkovits, Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques; Academic Press (1997);Golemis, Protein-Protein Interactions: A Molecular Cloning Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press (2002)を参照されたい)。
【0077】
本明細書において言及される抗体または抗体フラグメントは、標的にされる細胞に対してターゲティング部分の特異性を決定する特異的CDRを有し得る。本明細書において採用される「CDR」という用語は、「相補性決定領域」に関し、それは当技術分野において周知である。CDRは免疫グロブリンの一部であり、それは、該分子の特異性を決定しかつ特異的リガンドと接触する。CDRは該分子の最も可変的な部分であり、かつこれらの分子の多様性に寄与する。各Vドメインには、CDR1、CDR2、およびCDR3という3つのCDR領域がある。CDR-Hは可変重鎖のCDR領域を表し、そしてCDR-Lは可変軽鎖のCDR領域に関する。VHは可変重鎖を意味し、そしてVLは可変軽鎖を意味する。Ig由来領域のCDR領域は、Kabat 「Sequences of Proteins of Immunological Interest」, 5th edit. NIH Publication no. 91-3242 U.S. Department of Health and Human Services (1991);Chothia J. Mol. Biol. 196 (1987), 901-917、またはChothia Nature 342 (1989), 877-883に記載されているように決定され得る。
【0078】
したがって、本発明の状況において、本明細書において上記で記載される抗体分子は、抗体全体(IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgA1、IgGA2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgD、またはIgEのような免疫グロブリン)、F(ab)-、Fab'-SH-、Fv-、Fab'-、F(ab')2-フラグメント、キメラ抗体、CDR移植された抗体、完全ヒト抗体、二価抗体構築物、抗体融合タンパク質、合成抗体、二価一本鎖抗体、三価一本鎖抗体、および多価一本鎖抗体からなる群より選択される。
【0079】
「ヒト化手法」は当技術分野において周知であり、かつ抗体分子、例えばIg由来分子に関してとくに記載されている。「ヒト化」という用語は、非ヒト抗体に由来する配列のある部分を含有する非ヒト(例えば、マウス(murine))抗体またはそのフラグメント(Fv、Fab、Fab'、F(ab')、scFv、または抗体の他の抗原結合部分的配列など)のヒト化形態を指す。ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリンの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の結合特異性、アフィニティー、および能力を有する、マウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種のCDR由来の残基によって置き換えられているヒト免疫グロブリンを含む。一般的に、ヒト化抗体は、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、かつFR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、一般的には2つの可変ドメインのうちの実質的にすべてを含むと考えられる。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にヒト免疫グロブリンのものも含むと考えられる;とりわけ、Jones et al., Nature 321 (1986),522-525、Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2 (1992),593-596を参照されたい。非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当技術分野において周知である。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源由来の、それに導入された1個または複数個のアミノ酸を有し、該抗体の元の結合活性を依然として保持する。抗体/抗体分子のヒト化のための方法は、Jones et al., Nature 321 (1986),522-525;Reichmann et al., Nature 332 (1988),323-327;およびVerhoeyen et al., Science 239 (1988),1534-1536にさらに詳述されている。ヒト化抗体の具体的な例、例えばEpCAMに向けられた抗体が当技術分野において公知であり、例えば(LoBuglio, Proceedings of the American Society of Clinical Oncology Abstract (1997), 1562およびKhor, Proceedings of the American Society of Clinical Oncology Abstract (1997), 847)を参照されたい。
【0080】
したがって、本発明の状況において、ヒト化されている抗体分子またはその抗原結合フラグメントは、ターゲティング部分として好ましく採用され、かつ薬学的組成物において上手く採用され得る。
【0081】
本発明に従った構築物は、ターゲティング部分が、癌に特異的な抗原、感染性疾患に特異的な抗原、または自己免疫疾患に特異的な抗原を標的にする構築物である。当業者であれば、癌に特異的である細胞に特異的である細胞表面構造、エピトープ、もしくは抗原、感染性疾患に特異的な抗原、または自己免疫疾患に特異的な抗原を承知している。したがって、当業者であれば、標的にされる所望の細胞に基づき、癌に特異的な抗原、感染性疾患に特異的な抗原、または自己免疫疾患に特異的な抗原を標的にする適当なターゲティング部分を選定しかつ選択し得る。
【0082】
理論に拘束されることなく、癌に特異的である抗原によって特徴付けされる細胞の細胞質へ送達されるべき分子の標的送達のために、対応するターゲティング部分を本発明の構築物内に組み入れることができる。例として、癌に対する抗原に特異的である任意の公知の抗体、抗体フラグメント、設計アンキリン反復タンパク質(DARPin)、リガンド、またはサイトカインが用いられ得る。例として、任意の公知の抗体またはその抗体フラグメントを、該抗体または抗体フラグメントが癌細胞を標的にし得る限り、本発明の構築物内に組み入れ得、それゆえ、例えば癌療法に用いることができる。ゆえに、腫瘍関連抗原(TAA)に結合する抗体または抗体フラグメントが選択され得る。炭酸脱水酵素IX、CCCL19、CCCL21、CSAp、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、IGF-1R、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a〜e、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、AFP、PSMA、CEACAM5、CEACAM6、B7、フィブロネクチンのED-B、H因子、FHL-1、Flt-3、葉酸受容体、GROB、HMGB-1、低酸素誘導因子(HIF)、HM1.24、インスリン様成長因子-1(ILGF-1)、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、IL-2、IL-4R、IL-6R、IL-13R、IL-15R、IL-17R、IL-18R、IL-6、IL-8、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-25、IP-10、MAGE、mCRP、MCP-1、MIP-1A、MIP-1B、MIF、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5ac、PAM4抗原、NCA-95、NCA-90、Ia、HM1.24、EGP-1、EGP-2、HLA-DR、テネイシン、Le(y)、RANTES、T101、TAC、Tn抗原、Thomson-Friedenreich抗原、腫瘍壊死抗原、TNF-α、TRAIL受容体(R1およびR2)、VEGFR、EGFR、PIGF、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、および癌遺伝子産物を含むがそれらに限定されない、多様な腫瘍関連抗原が当技術分野において公知である。本発明の構築物において利用され得る例示的な抗癌抗体には、hR1(抗IGF-1R、2009年1月20日に提出された米国仮特許出願第61/145,896号)、hPAM4(抗MUC1、米国特許第7,282,567号)、hA20(抗CD20、米国特許第7,251,164号)、hA19(抗CD19、米国特許第7,109,304号)、hIMMU-31(抗AFP、米国特許第7,300,655号)、hLL1(抗CD74、米国特許第7,312,318号)、hLL2(抗CD22、米国特許第7,074,403号)、hMu-9(抗CSAp、米国特許第7,387,773号)、hL243(抗HLA-DR、米国特許第7,612,180号)、hMN-14(抗CEACAM5、米国特許第6,676,924号)、hMN-15(抗CEACAM6、米国特許出願第10/672,278号)、hRS7(抗EGP-1、米国特許第7,238,785号)、およびhMN-3(抗CEA、米国特許第7,541,440号)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。当業者であれば、この一覧は限定的ではなく、他の任意の公知の抗TAA抗体を本発明の構築物内に組み入れ得ることを解している。
【0083】
本発明に従った構築物において、ターゲティング部分は、ヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)でもあり得る。好ましくは、ヒト化抗EGFR scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する。
【0084】
しかしながら、本発明において用いられるヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)は、上記の特異的配列にとくに限定されるわけではないが、抗体または抗原結合フラグメントがEGFRに結合する能力を有する限り、SEQ ID NO:2の配列と少なくとも95%、90%、85%、75%、70%、65%、60%、55%、または50%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる、EGFRに結合するその変種でもあり得る。上記で記載されるように、当業者であれば、そのような抗体変種を容易に生成し得、かつ所与の抗体、抗体フラグメント、または抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)がEGFRに結合し得るかどうか、当技術分野において公知の方法によりそれらを検定し得る。さらに、抗体またはその抗原結合フラグメントまたは抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)は、SEQ ID NO:2の配列を参照して最高0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれを上回る数の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む分子である。
【0085】
本発明に従った構築物において、ターゲティング部分は、ヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)でもあり得る。ヒト化抗CD22抗体の配列は、以前に米国特許第7,456,260号B2に記載されている(クローンSGIII)。
【0086】
好ましくは、ヒト化抗CD22 scFv(SGIII)抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する。
【0087】
しかしながら、本発明においてターゲティング部分として用いられ得るヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)は、上記の特異的配列にとくに限定されるわけではないが、抗体または抗原結合フラグメントがCD22に結合する能力を有する限り、SEQ ID NO:24の配列と少なくとも95%、90%、85%、75%、70%、65%、60%、55%、または50%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなる、CD22に結合するその変種でもあり得る。上記で記載されるように、当業者であれば、そのような抗体変種を容易に生成し得、かつ所与の抗体、抗体フラグメント、または抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)がCD22に結合し得るかどうか、当技術分野において公知の方法によりそれらを検定し得る。さらに、抗体またはその抗原結合フラグメントまたは抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)は、SEQ ID NO:24の配列を参照して最高0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれを上回る数の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む分子である。
【0088】
アミノ酸配列がSEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:24の配列とある特定の程度の同一性を有するかどうかを判定するために、当業者であれば、当技術分野において周知の手段および方法、例えば手作業によるまたは当業者に公知のコンピュータープログラムを用いることによるアラインメントを用いることができる。そのようなアラインメントは、例えばLipman-Pearson法(Science 227 (1985), 1435)またはCLUSTALアルゴリズムなどの公知のコンピューターアルゴリズムを用いることによって、例えば当業者に公知の手段および方法で行われ得る。そのようなアラインメントでは、最大の相同性を、アミノ酸配列内に存在する保存されたアミノ酸残基に割り当てることが好ましい。好ましい態様において、ClustalW2をアミノ酸配列の比較に用いる。ペアワイズ比較/アラインメントの場合、以下の設定が好ましくは選定される:タンパク質重み行列:BLOSUM 62;ギャップ開始:10;ギャップ伸長:0.1。多重比較/アラインメントの場合、以下の設定が好ましくは選定される:タンパク質重み行列:BLOSUM 62;ギャップ開始:10;ギャップ伸長:0.2;ギャップ距離:5;末端ギャップなし。
【0089】
本発明に従って、2つまたはそれを上回る数の核酸またはアミノ酸配列の文脈における「同一である」または「同一性パーセント」という用語は、同じであるか、または、当技術分野において公知である配列比較アルゴリズムを用いて、もしくは手作業によるアラインメントおよび目視点検によって測定される、比較のウィンドウにわたるもしくは指定された領域にわたる最大の一致に対して比較しかつ並べた場合に、EGFRに結合し得る上記で記載される核酸配列もしくはアミノ酸配列と同じ(例えば、60%または65%の同一性、好ましくは70〜95%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性)アミノ酸残基もしくはヌクレオチドを指定のパーセンテージで有する、2つまたはそれを上回る数の配列または部分配列を指す。例えば60%〜95%またはより高い配列同一性を有する配列は、実質的に同一であると見なされる。そのような定義は、検定配列の相補体にも適用される。好ましくは、記載される同一性は、長さが少なくとも約15〜25個のアミノ酸またはヌクレオチドである領域にわたって、より好ましくは、長さが約50〜100個のアミノ酸またはヌクレオチドである領域にわたって存在する。当業者であれば、当技術分野において公知であるように、例えば、CLUSTALWコンピュータープログラム(Thompson Nucl. Acids Res. 2 (1994), 4673-4680)またはFASTDB(Brutlag Comp. App. Biosci. 6 (1990), 237-245)に基づくものなどのアルゴリズムを用いて、配列の間/中での同一性パーセントを判定する方法を知っているであろう。
【0090】
FASTDBアルゴリズムは、典型的に、その算出において、配列における内部のマッチしない欠失または付加、すなわちギャップを考慮しないが、これを手作業で補正して、同一性%の過大評価を回避することができる。しかしながら、CLUSTALWは、その同一性算出において、配列ギャップを考慮に入れない。BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズム(Altschul, (1997) Nucl. Acids Res. 25:3389-3402;Altschul (1993) J. Mol. Evol. 36:290-300;Altschul (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410)も当業者にとって利用可能である。核酸配列のためのBLASTNプログラムは、11というワード長(W)、10という期待値(E)、M=5、N=4、および両鎖の比較をデフォルトとして用いる。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、3というワード長(W)および10という期待値(E)をデフォルトとして用いる。BLOSUM 62スコア行列(Henikoff (1989) PNAS 89:10915)は、50というアラインメント(B)、10という期待値(E)、M=5、N=4、および両鎖の比較を用いる。
【0091】
好ましくは、アミノ酸置換は、類似した特徴(例えば、電荷、側鎖のサイズ、疎水性/親水性、主鎖立体構造、および柔軟性のなさなど)を有する他のアミノ酸でのタンパク質内のアミノ酸の置換を指す、上記のSEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:24における「保存的置換」であり、そのため、上記ですでに詳細に概説されているように、タンパク質の生物学的活性を変更することなく、高頻度に変化がもたらされ得る。
【0092】
同様に、感染性疾患または自己免疫疾患に特異的である抗原によって特徴付けされる細胞の細胞質へ送達されるべき分子の標的送達のために、対応するターゲティング部分を本発明の構築物内に組み入れることができる。例として、感染性疾患または自己免疫疾患に対する抗原に特異的である任意の公知の抗体、抗体フラグメント、設計アンキリン反復タンパク質(DARPin)、リガンド、またはサイトカインが用いられ得る。当業者であれば、感染性疾患または自己免疫疾患に特異的である細胞に特異的である細胞表面構造、エピトープ、または抗原を承知している。
【0093】
理論に拘束されることなく、自己免疫疾患に特異的である抗原によって特徴付けされる細胞の細胞質へ送達されるべき分子の標的送達のために、対応するターゲティング部分を本発明の構築物内に組み入れることができる。例として、自己免疫疾患に対する抗原に特異的である任意の公知の抗体、抗体フラグメント、設計アンキリン反復タンパク質(DARPin)、リガンド、またはサイトカインが用いられ得る。例として、任意の公知の抗体またはその抗体フラグメントを、該抗体または抗体フラグメントが、自己免疫疾患によって影響を受けた細胞を標的にし得る限り、本発明の構築物内に組み入れ得、それゆえ、例えば自己免疫疾患の療法に用いることができる。ゆえに、例えば自己免疫疾患に特異的な抗原に結合する抗体または抗体フラグメントが選択され得る。自己免疫疾患に特異的な公知の抗原は、AMPA-GluR3、NMDA-NR1、NMDA-NR2A/B、mGluR1、mGluR5、Dsg1、Dsg3、Dsc、CD40、CD40L、CD19、CD32b、CD20、CD22、CD6、またはCD74である。
【0094】
同様に、感染性疾患に特異的である抗原によって特徴付けされる細胞の細胞質へ送達されるべき分子の標的送達のために、対応するターゲティング部分を本発明の構築物内に組み入れることができる。例として、感染性疾患に対する抗原に特異的である任意の公知の抗体、抗体フラグメント、設計アンキリン反復タンパク質(DARPin)、リガンド、またはサイトカインが用いられ得る。例として、任意の公知の抗体またはその抗体フラグメントを、該抗体または抗体フラグメントが、感染細胞を標的にし得る限り、本発明の構築物内に組み入れ得、それゆえ、例えば感染性疾患の療法に用いることができる。ゆえに、例えば感染性疾患に特異的な抗原に結合する抗体または抗体フラグメントが選択され得る。感染性疾患では、当業者に公知の任意のウイルス表面タンパク質が標的抗原であり得る。
【0095】
本発明の構築物の第3の主要なモジュールは、(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子(すなわち、「積み荷」)である。「積み荷」、すなわち細胞の細胞質へ送達されるべき分子は、細胞内で所望の機能を発揮する「エフェクター部分」であると見なされ得る。「積み荷」の性質は、細胞質へそれぞれの分子を特異的に送達することによってどの効果が達成されることが意図されるかという問いに大きく依存し、それゆえ限定されるわけではない。基本的に、任意の分子を、それが細胞の細胞質へ送達されるべき機能/機能的活性を有する限り、エフェクターまたは「積み荷」として用い得る。
【0096】
ゆえに、本発明に従った構築物は、細胞質へ送達されるべき分子(すなわち、「積み荷」)が、治療用部分、検出可能な部分、核酸分子、好ましくはsiRNA、キャリア分子、好ましくはナノ粒子、リポソーム、およびウイルスベクターからなる群より選択される構築物であり得る。細胞質へ送達されるべきこの「積み荷」は、上記およびさらに下記で記載される共有結合での化学的結合のいずれかで上記のモジュール(a)および(b)にコンジュゲートされる、または組換え方法論によって、上記およびさらに下記で記載される融合タンパク質の形態で上記のモジュール(a)および(b)に融合される。
【0097】
治療用部分(または治療用作用物質)、検出可能な部分、核酸分子、siRNA、キャリア分子、ナノ粒子、リポソーム、およびウイルスベクターという用語は当業者に公知であり、かつこれらの「積み荷」の性質は、本発明の状況においてとくに限定されるわけではない。これら「積み荷」の性質は、細胞質へそれぞれの分子を特異的に送達することによってどの効果が達成されることが意図されるかという問いに大きく依存する。
【0098】
例えば特異的化合物に知られる薬理学的反応を、標的にされる細胞内で発揮することが望まれる場合、当業者は、対応する治療用部分または治療用作用物質を容易に選択できる立場にある。さらに下記で、治療用作用物質または治療用部分の非限定的な例が与えられる。一般的に、「治療用作用物質」または「治療用部分」は、疾患の治療において有用である原子、分子、または化合物である。治療用作用物質の例には、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、薬物、毒素、酵素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫モジュレーター、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子(small)干渉RNA(siRNA)、キレート剤、ホウ素化合物、光活性剤、色素、および放射性同位体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。様々な態様において、細胞毒性剤、抗血管新生剤、アポトーシス促進剤、抗生物質、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、ケモカイン、薬物、プロドラッグ、毒素、酵素、または他の作用物質などの治療用部分/作用物質が、本明細書において記載されるインターフェロン-抗体DNL(商標)構築物に対する補助療法として用いられ得る。有用な薬物は、例えば、抗有糸分裂剤、抗キナーゼ剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗生物質、アルカロイド、抗血管新生剤、アポトーシス促進剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される薬学的特性を所有し得る。
【0099】
有用な例示的な薬物には、5-フルオロウラシル、アプリジン(aplidin)、アザリビン、アナストロゾール、アントラサイクリン、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブリオスタチン-1、ブスルファン、カリケアミシン(calicheamycin)、カンプトテシン、カルボプラチン、10-ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、セレブレックス、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、Cox-2阻害剤、イリノテカン(CPT-11)、SN-38、カルボプラチン、クラドリビン、クロファラビン、シトシンアラビノシド、カンプトテカン(camptothecan)、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン(2P-DOX)、シアノ-モルフォリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エピルビシングルクロニド、エストラムスチン、エピポドフィロトキシン、エストロゲン受容体結合剤、エトポシド(VP16)、エトポシドグルクロニド、リン酸エトポシド、フロクスウリジン(FUdR)、3',5'-O-ジオレオイル-FudR(FUdR-dO)、フルダラビン、フルタミド、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼおよびブルトン型キナーゼ阻害剤、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、L-アスパラギナーゼ、レナリドミド(lenolidamide)、ロイコボリン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、ナベルビン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、パクリタキセル、ペントスタチン、PSI-341、ラロキシフェン、セムスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、タキソール、テモゾロミド(temazolomide)(水性形態のDTIC)、トランスプラチナ(transplatinum)、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ならびにビンカアルカロイドが含まれ得る。有用なチロシンキナーゼ阻害剤には、LFM-A13、ダサチニブ、イマチニブ、またはニロチニブが含まれ得る。
【0100】
下記でより詳細に概説するように、有用な毒素には、例えばリシン、アブリン、アルファ毒素、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNase)、例えばオンコナーゼ、DNase I、ブドウ球菌(Staphylococcal)エンテロトキシン-A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素、およびシュードモナス内毒素が含まれ得る。
【0101】
有用なケモカインには、RANTES、MCAF、MIP1-α、MIP1-β、およびIP-10が含まれ得る。ある特定の態様において、アンギオスタチン、バキュロスタチン(baculostatin)、カンスタチン(canstatin)、マスピン、抗VEGF抗体、抗PIGFペプチドおよび抗体、抗血管増殖因子抗体、抗Flk-1抗体、抗Flt-1抗体およびペプチド、抗Kras抗体、抗cMET抗体、抗MIF(マクロファージ遊走阻害因子)抗体、ラミニンペプチド、フィブロネクチンペプチド、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤、組織メタロプロテイナーゼ阻害剤、インターフェロン、インターロイキン-12、IP-10、Gro-β、トロンボスポンジン、2-メトキシエストラジオール(2-methoxyoestradiol)、プロリフェリン関連タンパク質、カルボキシアミドトリアゾール(carboxiamidotriazole)、CM101、マリマスタット、ポリ硫酸ペントサン、アンジオポエチン-2、インターフェロン-α、ハービマイシンA、PNU145156E、16Kプロラクチンフラグメント、リノミド(ロキニメックス)、サリドマイド、ペントキシフィリン、ゲニステイン、TNP-470、エンドスタチン、パクリタキセル、アキュチン(accutin)、アンギオスタチン、シドフォビル、ビンクリスチン、ブレオマイシン、AGM-1470、血小板第4因子、またはミノサイクリンなどの抗血管新生剤が役に立ち得る。他の有用な治療用作用物質は、bcl-2またはp53など、好ましくは癌遺伝子および癌遺伝子産物に向けられているオリゴヌクレオチド、とりわけアンチセンスオリゴヌクレオチドを含み得る。治療用オリゴヌクレオチドの好ましい態様は、さらに下記で記載されるsiRNAである。
【0102】
治療用作用物質または部分は、放射性核種でもあり得る。
【0103】
「治療用部分/作用物質」という用語は、さらに広範な意味でも理解され得、かつ「診断用作用物質/部分」を含む。診断用作用物質/部分は、疾患を診断することにおいて有用である原子、分子、または化合物である。有用な診断用作用物質または部分には、核磁気共鳴画像法(MRI)のための放射性同位体、色素(ビオチン-ストレプトアビジン複合体を有するものなど)、造影剤、蛍光化合物または分子、および増強剤(例えば、常磁性イオン)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。診断用作用物質または部分は、好ましくは、放射性核種、放射線学的造影剤、常磁性イオン、金属、蛍光標識、化学発光標識、超音波造影剤、および光活性剤からなる群より選択される。そのような診断用作用物質は周知であり、かつ任意のそのような公知の診断用作用物質が用いられ得る。診断用作用物質の非限定的な例には、110In、111In、177Lu、18F、19F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、120I、123I、124I、125I、131I、154〜158Gd、32P、11C、13N、15O、186Re、188Re、51Mn、52mMn、55Co、72As、75Br、76Br、82mRb、83Sr、または他のγ-、β-、もしくは陽電子-放射体などの放射性核種が含まれ得る。有用な常磁性イオンには、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、またはエルビウム(III)が含まれ得る。金属造影剤には、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、またはビスマス(III)が含まれ得る。超音波造影剤には、ガス充填リポソームなどのリポソームが含まれ得る。放射線不透過性診断用作用物質は、化合物、バリウム化合物、ガリウム化合物、およびタリウム化合物より選択され得る。フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリスリン(phycoerytherin)、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド(o-phthaldehyde)、およびフルオレスカミンを含むがそれらに限定されない、多種多様な蛍光標識が当技術分野において公知である。有用な化学発光標識には、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、またはシュウ酸エステルが含まれ得る。
【0104】
下記でより詳細に例示的に概説するように、本発明に従った構築物の一部である、細胞の細胞質へ送達されるべき分子は、タンパク質、ペプチド、免疫モジュレーター、サイトカイン、インターロイキン、インターフェロン、結合タンパク質、ペプチドリガンド、キャリアタンパク質、毒素、オンコナーゼなどのリボヌクレアーゼ、siRNAなどの阻害性オリゴヌクレオチド、抗原もしくは異種抗原、PEGなどのポリマー、酵素、治療用作用物質、ホルモン、細胞毒性作用物質、抗血管新生剤、アポトーシス促進剤、または他の任意の分子もしくは凝集体など、1種または複数種の他のエフェクターも含み得る。
【0105】
検出可能な部分は、視覚的に検出可能であるまたは光の非視覚範囲にある化学的部分として理解されるべきである。「視覚的に検出可能な部分」とは、部分または色素が、色素の視覚範囲において、単に個体の目によって検出され得ることを意味する。これには、ある特定の波長の光を吸収している蛍光検出可能な色素による特異的波長の光の放射があると、当業者の目によっても検出され得る蛍光検出可能な色素が含まれる。ゆえに、本発明の状況において、検出可能な部分または色素は、例えば蛍光検出可能な部分であり得る。しかしながら、検出可能な部分は、光の非視覚範囲においても検出可能であり得る。この点において、例として、放射性部分が用いられ得る。
【0106】
視覚的に検出可能な部分および非視覚的に検出可能な部分は当業者に公知であり、かつ生物学的分野において、例えば特異的細胞の検出または局在化においてよく適用される。当業者であれば、そのような検出可能な部分に関する多くの適用を承知している。理論に拘束されることなく、蛍光検出可能な部分は好ましくかつ先行技術において広く公知であり、かつ例えばエオシンY(Lin F, Fan W, Wise GE. Anal Biochem. 1991 Aug 1;196(2):279-83)、SYPROオレンジ/レッド(Steinberg TH, Jones LJ, Haugland RP, Singer VL. Anal Biochem. 1996 Aug 1;239(2):223-37)、SYPROルビー(Berggren K, Steinberg TH, Lauber WM, Carroll JA, Lopez MF, Chernokalskaya E, Zieske L, Diwu Z, Haugland RP, Patton WF. Anal Biochem. 1999 Dec 15;276(2):129-43)、Deep Purple/Lightning fast(Bell PJ, Karuso P. J Am Chem Soc. 2003 Aug 6;125(31):9304-5;Mackintosh JA, Choi HY, Bae SH, Veal DA, Bell PJ, Ferrari BC, Van Dyk DD, Verrills NM, Paik YK, Karuso P. Proteomics. 2003 Dec;3(12):2273-88)、およびAlexa色素(Panchuk-Voloshina N, Haugland RP, Bishop-Stewart J, Bhalgat MK, Millard PJ, Mao F, Leung WY, Haugland RP. J Histochem Cytochem. 1999 Sep;47(9):1179-88)を含む。
【0107】
細胞の細胞質へ核酸分子を送達することが、とくに望ましくあり得る。核酸分子の送達は、遺伝子療法においてとくに重要度が増している。この点において、当業者であれば、どのように所望の核酸分子を調製するか多くの方法を承知している。好ましくは、核酸分子は、RNA干渉として当業者に公知のメカニズムによって特異的遺伝子の発現を特異的にノックダウンするために用いられ得るsiRNA分子である。
【0108】
さらに、核酸分子、好ましくはsiRNA(構築物)は、ウイルスベクターの形態で細胞の細胞質へ送達され得る。
【0109】
細胞の細胞質へエフェクターとしてまたは「積み荷」として送達されるべき治療用部分または治療用作用物質は、細胞毒性部分、抗体、抗体フラグメント、薬物、化学療法剤、小分子、酵素、ホルモン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、RNAi、放射性核種、ホウ素化合物、光活性剤、抗血管新生剤、およびアポトーシス促進剤からなる群より選択され得る。
【0110】
細胞毒性部分/作用物質/化合物は当業者に公知であり、かつ細胞に有害である物質に関する。細胞毒性化合物は、例えば多様な細胞運命、例えばネクローシス、細胞溶解、およびアポトーシスをもたらし得る。薬物は、例えば化学療法剤(すなわち、化学物質)、放射性核種(例えば、Lu-177、Y-90、In-111、I-131)、例えば細胞毒素、シアノトキシン、血液毒、神経毒のような、(小分子、ペプチド、またはタンパク質であり得る)植物、微生物、または動物由来の毒素であり得る。アポトーシス促進剤は、プログラム細胞死を誘導することが知られる。アポトーシス促進剤は当技術分野において公知であり、かつBax、Bak、ガレクチン3、およびBBC3が単に非限定的な例として引用される。
【0111】
治療用部分または治療用作用物質として用いられ得る酵素は、基質を種々の産物に変換することによって作用する、高度に選択的な高分子の生物学的触媒であり、それゆえ治療用部分として適切であり得る。治療用部分または治療用作用物質として用いられる酵素の性質は限定されるわけではなく、かつ治療されるまたは阻止されるべき疾患または障害に依存する。治療用部分または治療用作用物質として適切であり得る非限定的な酵素は、例えばセリンプロテアーゼ、DNase、またはRNaseであり得る。
【0112】
治療用部分または治療用作用物質として用いられ得るホルモンは、代謝、成長および発達、排泄、ならびに/または消化などの生理および挙動を調節するシグナル伝達分子のクラスに属する。ホルモンは、以下のアミン(例えば、ノルエピネフリン)、ペプチド(例えば、オキシトシン)、タンパク質(例えば、ヒト成長ホルモン)、ステロイド(例えば、テストステロン)というクラスのうちの1つに属し得る。治療用部分または治療用作用物質として用いられ得るホルモンの性質は限定されるわけではなく、かつ治療されるまたは阻止されるべき疾患または障害に依存する。
【0113】
「積み荷」またはエフェクター部分は、免疫モジュレーターでもあり得る。免疫モジュレーターとは、存在する場合、身体の免疫系を変更する、抑制する、または刺激する作用物質である。有用な免疫モジュレーターには、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、エリスロポエチン、トロンボポエチン、およびそれらの組み合わせが含まれ得る。具体的には、腫瘍壊死因子(TNF)などのリンホトキシン、インターロイキン(IL)などの造血因子、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などのコロニー刺激因子、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、またはインターフェロン-λなどのインターフェロン、および「S1因子」と命名されるものなどの幹細胞増殖因子が有用である。
【0114】
ゆえに、細胞の細胞質へ送達されるべき分子は、リンホカイン、モノカイン、増殖因子、および伝統的なポリペプチドホルモンなどのサイトカインであり得る。サイトカインは、「ターゲティング部分」の文脈において上記ですでに定義されている。それにもかかわらず、サイトカインは、それらは上述のように免疫モジュレーターの能力を有するため、細胞の細胞質へいったん送達されると、本発明の観点における「積み荷」または「エフェクター」としても採用され得るという事実を考えると、それが「ターゲティング部分」の文脈におけるサイトカインに対して上記で明示されていることと同じことが、必要に応じて変更を加えて、「積み荷」および「エフェクター」の文脈におけるサイトカインに適用される。サイトカインなどのタンパク質またはペプチド免疫モジュレーターのアミノ酸配列は、当技術分野において周知であり、かつ任意のそのような公知の配列が、本発明の状況において用いられ得る。当業者であれば、すでに上述されるように、サイトカイン配列に関する公的情報の数々の供給源を承知している。さらに、当業者であれば、「ターゲティング部分」としてのサイトカインの文脈においてすでに上述されるように、サイトカインの多くの例を知っている。
【0115】
本発明の構築物は、細胞毒性部分が、RNase Aファミリーメンバー、リシン、アブリン、アルファ毒素、サポリン、DNase I、ブドウ球菌エンテロトキシン-A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素からなる群より選択される構築物でもあり得る。細胞毒性とは、細胞に有害である細胞毒性部分の能力である。毒性とは、物質、すなわち本発明の観点における細胞毒性部分が、細胞または生物にダメージを与え得る程度である。毒性は、動物、細菌、または植物など、生物全体に対する効果、ならびに細胞(細胞毒性)または臓器など、生物の部分構造に対する効果を指し得る。とくに、本発明の状況において、毒性は、細胞に対する毒性を指す。一般的に、細胞毒性作用物質または部分は、化学的、生物学的、または物理的な性質のものであり得る。化学的毒物には、例として、鉛、水銀、およびフッ化水素酸などの無機物質、ならびにメチルアルコール、ほとんどの医薬、および生き物由来の毒などの有機化合物が含まれる。放射性化学薬品は、それらの化学的性質が理由で有毒ではないが、核から放射される放射線は高エネルギー性でありかつ細胞および組織を破壊するため、放射毒性は、本発明の観点における「細胞毒性がある」とも理解され得る。生物学的毒物には、有害な効果を有する任意の生体分子が含まれる。例がさらに下記で与えられる。物理的毒物は、それらの物理的性質により、生物学的過程を干渉する物質である。例には、炭塵、アスベスト繊維、または微細化された二酸化ケイ素が含まれ、そのすべては、生物へまたは細胞内へ送達された場合、最終的に致死性であり得る。
【0116】
細胞毒性は、標的(生物、臓器、組織、または好ましくは細胞に直接)に対するその効果により、当業者に公知の方法によって測定され得る。
【0117】
毒素または細胞毒性部分は当業者に周知であり、かつ当業者であれば、これらの細胞毒性部分に関する公的情報の数々の供給源を承知している。さらに、当業者であれば、これらの細胞毒性部分に関する多くの例を知っており、かつ細胞毒性部分を容易に選択し得る。
【0118】
すでに上述されるように、リボヌクレアーゼA(RNase A)スーパーファミリーのメンバーは、癌の抗体標的療法のための潜在的な新しいクラスのエフェクター化合物として浮上している(Newton et al., 2001;De Lorenzo et al., 2004;Arndt et al., 2005;Chang et al., 2010;Liu et al., 2014)。したがって、リボヌクレアーゼA(RNase A)スーパーファミリーのメンバーは、それゆえ好ましい「積み荷」またはエフェクター部分、すなわち細胞の細胞質へ送達されるべき分子である。
【0119】
多様な生物由来のRNase Aスーパーファミリーメンバーが公知であり、かつ好ましい「積み荷」またはエフェクター部分、すなわち細胞の細胞質へ送達されるべき分子として用いられ得る。例として、両生類RNase Aメンバーが用いられ得る。両生類RNase Aメンバーの非限定的な例は、アンフィナーゼ(amphinase)(ラナ・ピピエンスに由来する)およびRC-RNase(ラナ・カテスベイアナ(Rana catesbeiana)に由来する)である。
【0120】
他の例として、ヒトRNaseが、好ましい「積み荷」として用いられ得る。本発明に従った「積み荷」として用いられ得るヒトRNase Aメンバーの非限定的な例は、ヒト膵臓RNase(RNase 1またはHP-RNase;SEQ ID NO:22)、好酸球由来神経毒(RNase 2)、好酸球カチオン性タンパク質(RNase 3)、ヒトRNAse 4、アンギオゲニン(RNase 5;SEQ ID NO:23)、ヒトRNAse 7、およびヒトRNAse 8である。
【0121】
別の例として、ウシRNase Aが用いられ得る。
【0122】
RNAseの上記の例すべては、RNA代謝/タンパク質合成の阻害に関与し、かつそれが上記および下記で本明細書においてランピルナーゼ(オンコナーゼ(登録商標))に関してより詳細に記載されているのと同じように治療的に用いられ得、かつ同じことが、必要に応じて変更を加えて、これらのRNaseに適用される。
【0123】
好ましいRNase Aスーパーファミリーメンバーは、北部ヒョウガエルのラナ・ピピエンス由来のRNaseであるランピルナーゼ(オンコナーゼ(登録商標))であり、それは抗腫瘍剤として幅広く研究されている。それは、ヒトRNase阻害剤を逃れ(Haigis et al., 2003)、かつt-RNAの分解によってタンパク質合成を阻害する(Saxena et al., 2002)。加えて、ランピルナーゼは、癌において調節不全になっているmiRNAおよびmiRNA前駆体を標的にし、ゆえに悪性細胞増殖および腫瘍進行に要する重大なメカニズムを特異的に妨害する(Goparaju et al., 2011;Qiao et al., 2012)。その両生類起源にもかかわらず、単一剤としてのランピルナーゼは、癌患者に繰り返し投与された場合でさえ、感知できるほどの免疫原性を仲介しないことが示されている(Mikulski et al., 1993;Mikulski et al., 2002)。内在化抗体誘導体との化学的コンジュゲートまたは遺伝子融合のいずれかを用いたランピルナーゼの標的送達によって、腫瘍細胞殺傷において中程度から数千倍の増加が達成され得ることが、以前に示されている(Newton et al., 2001;Chang et al., 2005;Krauss et al., 2005b;Liu et al., 2014)。それゆえ、これらの特性は、ラナ・ピピエンスに由来するRNaseを、本発明の状況における好ましいRNase Aファミリーメンバーにしている。ゆえに、本発明に従った構築物は、RNase Aファミリーメンバーが、ラナ・ピピエンスに由来するRNaseである構築物であり得る。
【0124】
ランピルナーゼ(オンコナーゼ(登録商標))の配列は、当技術分野において周知でありかつSEQ ID NO:4として以下に示される。
式中、(
*)はピログルタメートを表す;(SEQ ID NO:4)。
【0125】
本発明は、ランピルナーゼ(オンコナーゼ(登録商標))の上記の特異的配列にとくに限定されるわけではない。むしろ、RNase Aファミリーメンバーは、SEQ ID NO:4の配列と少なくとも95%、90%、85%、75%、70%、65%、60%、55%、または50%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなるRNase A変種であり得る、ただし、該アミノ酸配列を有するタンパク質またはペプチドが、ランピルナーゼ(オンコナーゼ(登録商標))に関して記載されるものに匹敵する細胞毒性活性を有する能力を有しさえすればである。ゆえに、変種の細胞毒性能力または活性は、ランピルナーゼ(オンコナーゼ(登録商標))の活性と同程度であり得る、または好ましくはさらにより高くあり得る。当業者であれば、対応する変種を調製し得、かつ所与の変種がそれに応じて所望の活性を有するかどうかを、当技術分野において公知のかつ例えば実施例において例示される方法を適用することによって容易に判定し得る。
【0126】
さらに、上記の所望の機能を有するRNase Aの変種は、SEQ ID NO:4の配列を参照して最高0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれを上回る数、最高15、20、30、40、または50個の保存的アミノ酸置換を有し得る。
【0127】
好ましいRNase Aスーパーファミリーメンバーは、ヒト膵臓RNase(RNase 1またはHP-RNase)である。ゆえに、本発明に従った構築物は、RNase Aファミリーメンバーがヒト膵臓RNase(RNase 1)である構築物であり得る。
【0128】
ヒト膵臓RNase(RNase 1)の配列は、当技術分野において周知でありかつSEQ ID NO:22として以下に示される。
【0129】
本発明は、ヒト膵臓RNase(RNase 1)の上記の特異的配列にとくに限定されるわけではない。むしろ、RNase Aファミリーメンバーは、SEQ ID NO:22の配列と少なくとも95%、90%、85%、75%、70%、65%、60%、55%、または50%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなるRNase A変種であり得る、ただし、該アミノ酸配列を有するタンパク質またはペプチドが、ヒト膵臓RNase(RNase 1)に関して記載されるものに匹敵する細胞毒性活性を有する能力を有しさえすればである。ゆえに、変種の細胞毒性能力または活性は、ヒト膵臓RNase(RNase 1)の活性と同程度であり得る、または好ましくはさらにより高くあり得る。当業者であれば、対応する変種を調製し得、かつ所与の変種がそれに応じて所望の活性を有するかどうかを、当技術分野において公知のかつ例えば実施例において例示される方法を適用することによって容易に判定し得る。
【0130】
さらに、上記の所望の機能を有するRNase Aの変種は、SEQ ID NO:22の配列を参照して最高0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれを上回る数、最高15、20、30、40、または50個の保存的アミノ酸置換を有し得る。
【0131】
好ましいRNase Aスーパーファミリーメンバーは、アンギオゲニン(RNase 5)である。ゆえに、本発明に従った構築物は、RNase Aファミリーメンバーがアンギオゲニン(RNase 5)である構築物であり得る。
【0132】
アンギオゲニン(RNase 5)の配列は、当技術分野において周知でありかつSEQ ID NO:23として以下に示される。
【0133】
本発明は、アンギオゲニン(RNase 5)の上記の特異的配列にとくに限定されるわけではない。むしろ、RNase Aファミリーメンバーは、SEQ ID NO:23の配列と少なくとも95%、90%、85%、75%、70%、65%、60%、55%、または50%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれからなるRNase A変種であり得る、ただし、該アミノ酸配列を有するタンパク質またはペプチドが、アンギオゲニン(RNase 5)に関して記載されるものに匹敵する細胞毒性活性を有する能力を有しさえすればである。ゆえに、変種の細胞毒性能力または活性は、アンギオゲニン(RNase 5)の活性と同程度であり得る、または好ましくはさらにより高くあり得る。当業者であれば、対応する変種を調製し得、かつ所与の変種がそれに応じて所望の活性を有するかどうかを、当技術分野において公知のかつ例えば実施例において例示される方法を適用することによって容易に判定し得る。
【0134】
さらに、上記の所望の機能を有するRNase Aの変種は、SEQ ID NO:23の配列を参照して最高0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれを上回る数、最高15、20、30、40、または50個の保存的アミノ酸置換を有し得る。
【0135】
本発明は、上記で規定される(a)ターゲティング部分、(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および/あるいは(c)「積み荷」、すなわち細胞の細胞質へ送達されるべき分子、のすべての組み合わせに関する。
【0136】
本発明が関する具体的に好ましい構築物は、以下である。
【0137】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv);
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としての、ラナ・ピピエンスに由来するRNase
を含む構築物に関する。
【0138】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)であって、該ヒト化抗EGFR scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する、ヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント;
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としての、ラナ・ピピエンスに由来するRNase
を含む構築物にも関する。
【0139】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)であって、該ヒト化抗EGFR scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する、ヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント;
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としての、ラナ・ピピエンスに由来するRNaseであって、以下のアミノ酸配列SEQ ID NO:4:
(式中、(
*)はピログルタメートを表す;(SEQ ID NO:4))
を有するランピルナーゼ(オンコナーゼ(登録商標))である、RNase
を含む構築物にも関する。
【0140】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)であって、該ヒト化抗EGFR scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する、ヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント;
(b)
またはそれぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5〜20と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列からなる群より選択される1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;ならびに
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としての、ラナ・ピピエンスに由来するRNaseであって、以下のアミノ酸配列SEQ ID NO:4:
(式中、(
*)はピログルタメートを表す;(SEQ ID NO:4))
を有するランピルナーゼ(オンコナーゼ(登録商標))である、RNase
を含む構築物にも関する。
【0141】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv);
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としての、ラナ・ピピエンスに由来するRNase
を含む構築物にも関する。
【0142】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)であって、該ヒト化抗CD22 scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する、ヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント;
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としての、ラナ・ピピエンスに由来するRNase
を含む構築物にも関する。
【0143】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)であって、該ヒト化抗CD22 scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する、ヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント;
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としての、ラナ・ピピエンスに由来するRNaseであって、以下のアミノ酸配列SEQ ID NO:4:
(式中、(
*)はピログルタメートを表す;(SEQ ID NO:4))
を有するランピルナーゼ(オンコナーゼ(登録商標))である、RNase
を含む構築物にも関する。
【0144】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)であって、該ヒト化抗CD22 scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する、ヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント;
(b)
またはそれぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5〜20と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列からなる群より選択される1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;ならびに
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としての、ラナ・ピピエンスに由来するRNaseであって、以下のアミノ酸配列SEQ ID NO:4:
(式中、(
*)はピログルタメートを表す;(SEQ ID NO:4))
を有するランピルナーゼ(オンコナーゼ(登録商標))であるRNase
を含む構築物にも関する。
【0145】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv);
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としてのヒト膵臓RNase(RNase 1またはHP-RNase)
を含む構築物に関する。
【0146】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)であって、該ヒト化抗EGFR scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する、ヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント;
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としてのヒト膵臓RNase(RNase 1またはHP-RNase)
を含む構築物にも関する。
【0147】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)であって、該ヒト化抗EGFR scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する、ヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント;
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としてのヒト膵臓RNase(RNase 1またはHP-RNase)であって、以下のアミノ酸配列SEQ ID NO:22:
を有する、ヒト膵臓RNase(RNase 1またはHP-RNase)
を含む構築物にも関する。
【0148】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)であって、該ヒト化抗EGFR scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する、ヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント;
(b)
またはそれぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5〜20と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列からなる群より選択される1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;ならびに
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としてのヒト膵臓RNase(RNase 1またはHP-RNase)であって、以下のアミノ酸配列SEQ ID NO:22:
を有する、ヒト膵臓RNase(RNase 1またはHP-RNase)
を含む構築物にも関する。
【0149】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv);
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としてのヒト膵臓RNase(RNase 1またはHP-RNase)
を含む構築物にも関する。
【0150】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)であって、該ヒト化抗CD22 scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する、ヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント;
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としてのヒト膵臓RNase(RNase 1またはHP-RNase)
を含む構築物にも関する。
【0151】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)であって、該ヒト化抗CD22 scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する、ヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント;
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としてのヒト膵臓RNase(RNase 1またはHP-RNase)であって、以下のアミノ酸配列SEQ ID NO:22:
を有する、ヒト膵臓RNase(RNase 1またはHP-RNase)
を含む構築物にも関する。
【0152】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)であって、該ヒト化抗CD22 scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する、ヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント;
(b)
またはそれぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5〜20と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列からなる群より選択される1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;ならびに
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としてのヒト膵臓RNase(RNase 1またはHP-RNase)であって、以下のアミノ酸配列SEQ ID NO:22:
を有する、ヒト膵臓RNase(RNase 1またはHP-RNase)
を含む構築物にも関する。
【0153】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv);
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としてのアンギオゲニン(RNase 5)
を含む構築物に関する。
【0154】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)であって、該ヒト化抗EGFR scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する、ヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント;
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としてのアンギオゲニン(RNase 5)
を含む構築物にも関する。
【0155】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)であって、該ヒト化抗EGFR scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する、ヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント;
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としてのアンギオゲニン(RNase 5)であって、以下のアミノ酸配列SEQ ID NO:23:
を有する、アンギオゲニン(RNase 5)
を含む構築物にも関する。
【0156】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)であって、該ヒト化抗EGFR scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する、ヒト化抗EGFR抗体一本鎖Fvフラグメント;
(b)
またはそれぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5〜20と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列からなる群より選択される1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;ならびに
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としてのアンギオゲニン(RNase 5)であって、以下のアミノ酸配列SEQ ID NO:23:
を有する、アンギオゲニン(RNase 5)
を含む構築物にも関する。
【0157】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv);
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としてのアンギオゲニン(RNase 5)
を含む構築物にも関する。
【0158】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)であって、該ヒト化抗CD22 scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する、ヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント;
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としてのアンギオゲニン(RNase 5)
を含む構築物にも関する。
【0159】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)であって、該ヒト化抗CD22 scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する、ヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント;
(b)配列
またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;および
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としてのアンギオゲニン(RNase 5)であって、以下のアミノ酸配列SEQ ID NO:23:
を有する、アンギオゲニン(RNase 5)
を含む構築物にも関する。
【0160】
本発明は、
(a)ターゲティング部分としてのヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv)であって、該ヒト化抗CD22 scFv抗体は、以下のアミノ酸配列:
を有する、ヒト化抗CD22抗体一本鎖Fvフラグメント;
(b)
またはそれぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5〜20と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列からなる群より選択される1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分;ならびに
(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子としてのアンギオゲニン(RNase 5)であって、以下のアミノ酸配列SEQ ID NO:23:
を有する、アンギオゲニン(RNase 5)
を含む構築物にも関する。
【0161】
上述のように、本発明に従った構築物は、少なくとも2つ、好ましくは上記3つの主要なモジュール、すなわち(a)ターゲティング部分、(b)1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分、および(c)細胞の細胞質へ送達されるべき分子を含む。3つすべての主要なモジュールは、(化学的にまたは組換え技術によって)個々に合成され得、任意で精製され得、かつ次いで共有結合で化学的に結合され得る。ゆえに、本発明に従った構築物は、ターゲティング部分、1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分、および細胞の細胞質へ送達されるべき分子が、共有結合で化学的に結合されている構築物であり得る。あるいは、モジュール(a)および(b)は融合タンパク質であり得、一方でモジュール(c)は、モジュール(a)および(b)を含む該融合タンパク質に共有結合で化学的に結合されている。別の選択肢において、モジュール(a)および(c)は融合タンパク質であり得、一方でモジュール(b)は、モジュール(a)および(c)を含む該融合タンパク質に共有結合で化学的に結合されている。別の選択肢において、モジュール(b)および(c)は融合タンパク質であり得、一方でモジュール(a)は、モジュール(b)および(c)を含む該融合タンパク質に共有結合で化学的に結合されている。
【0162】
「共有結合で化学的に結合される」という用語は、当業者に周知であるコンジュゲート技法に関する。タンパク質またはペプチドとの(とくに、本発明の膜融合部分または膜融合配列/ペプチドとの)共有結合的または非共有結合的なコンジュゲートを作製するための多くの方法が、当技術分野において公知であり、かつ任意のそのような公知の方法が利用され得る。理論に拘束されることなく、本発明に従った構築物は、N-スクシニル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)などのヘテロ二機能性架橋剤を用いることによって調製され得る。Yu et al., Int. J. Cancer 56: 244 (1994)。そのようなコンジュゲートのための一般的な技法は、当技術分野において周知である;例えば、Wong, Chemistry of Protein Conjugation and Cross-linking (CRC Press 1991);Upeslacis et al.,「Modification of Antibodies by Chemical Methods」, Monoclonal Antibodies: Principles and Applications, Birch et al. (eds.), 187-230 (Wiley-Liss, Inc. 1995);Price,「Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies」, Monoclonal Antibodies: Production, Engineering and Clinical Application;Ritter et al. (eds.), 60-84 (Cambridge University Press 1995)を参照されたい。それゆえ、互いに、好ましくは(本発明の観点における「ターゲティング部分」、1つもしくは複数の膜融合配列からなる膜融合部分、および/または「積み荷」のいずれかであり得る)タンパク質/ペプチドに、共有結合で部分を結合させるための方法が当業者に周知であるという事実を考慮すると、本明細書により提供される例は限定的ではない。タンパク質に色素を(共有結合的に)結合させるための方法の概要に関しては、例えばBrinkley M. Bioconjug Chem. 1992 Jan-Feb; 3(1):2-13の総説記事、ならびにHon-Chiu Eastwood Leung、題目編集者:Tsz-Kwong ManおよびRicardo J. Floresによって編集された書籍Biochemistry, Genetics and Molecular Biology「Integrative Proteomics」、ISBN 978-953-51-0070-6、2012年2月24日刊行の「Vinyl Sulfone: A Multi-Purpose Function in Proteomics」と題された第16章におけるLopez-Jaramilloらの記事に参照がなされる。
【0163】
本発明に従った構築物は、単に上記3つの主要なモジュール(a)、(b)、および(c)を含み得るだけではない。むしろ、個々のモジュールの間に、例えば構築物の構築を促し得る1つまたは複数のリンカー部分が置かれることが望ましくあり得る。
【0164】
本発明の構築物は、融合タンパク質でもあり得る。関心対象の融合タンパク質をコードする合成二本鎖核酸を産生する、核酸の合成、ハイブリダイゼーション、および/または増幅を含めた、融合タンパク質を作製するための多様な方法が公知である。そのような二本鎖核酸を、標準的な分子生物学的技法によって、融合タンパク質産生のための発現ベクター内に挿入し得る(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A laboratory manual, 2nd Ed, 1989を参照されたい)。
【0165】
本発明は、融合タンパク質の形態の本発明の構築物をコードする核酸分子にも関する。核酸は、例えばDNAであり、本発明の構築物の3つの主要なモジュールのうちの1つをコードする。あるいは、核酸、好ましくはDNAは、上記で規定される、インフレームで連結されている3つすべての主要なモジュールをコードする。ゆえに、核酸分子は、また、本発明の主要なモジュールのうちの1つ、2つ、または3つすべてをコードし得る。本発明の上記の核酸分子は、天然核酸分子ならびに組換え核酸分子であり得る。それゆえ、本発明の核酸分子は、天然起源、合成、または半合成のものであり得る。それは、DNA、RNA、ならびにPNAを含み得、かつそれは、それらのハイブリッドであり得る。
【0166】
調節配列を本発明の核酸分子に付加し得ることは当業者に明らかである。例えば、プロモーター、転写エンハンサー、および/または本発明のポリヌクレオチドの誘導性発現を可能にする配列が採用され得る。適切な誘導型システムは、例えばGossen and Bujard, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992), 5547-5551およびGossen, Trends Biotech. 12 (1994), 58-62によって記載される例えばテトラサイクリン調節性遺伝子発現、または例えばCrook, EMBO J. 8 (1989), 513-519によって記載されるデキサメタゾン誘導型遺伝子発現システムである。
【0167】
さらに、核酸分子は、例えばチオエステル結合および/またはヌクレオチド類似体を含有し得る。該修飾は、細胞内でのエンドヌクレアーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼに対する核酸分子の安定化に有用であり得る。核酸分子は、細胞内での該核酸分子の転写を可能にする、キメラ遺伝子を含有する適当なベクターによって転写され得る。本発明の状況において、核酸分子を標識する。核酸の検出のための方法、例えばサザンおよびノーザンブロッティング、PCR、またはプライマー伸長は、当技術分野において周知である。
【0168】
本発明の核酸分子は、上述の核酸分子のいずれかを単独でまたは組み合わせで含む、組換えによってに産生されたキメラ核酸分子であり得る。好ましくは、本発明の核酸分子は、ベクターの一部である。
【0169】
それゆえ、本発明は、本発明の核酸分子を含むベクターにも関する。したがって、本発明は、本発明の核酸を含むベクター、好ましくは発現ベクターに関する。
【0170】
本発明のベクターは、例えばプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ、または例えば遺伝子操作において従来的に用いられる別のベクターであり得、かつ適切な宿主細胞においてかつ適切な条件下で該ベクターの選択を可能にする、マーカー遺伝子などのさらなる遺伝子を含み得る。
【0171】
さらに、本発明のベクターは、本発明の核酸配列に加えて、発現制御エレメントを含み得、適切な宿主におけるコード領域の適正な発現が可能となる。そのような制御エレメントは当業者に公知であり、かつプロモーター、スプライスカセット、翻訳開始コドン、翻訳部位、およびベクター内にインサートを導入するための挿入部位を含み得る。好ましくは、本発明の核酸分子は、真核または原核細胞における発現を可能にする発現制御配列に機能的に連結されている。したがって、本発明は、本発明の核酸を含むベクターに関し、該核酸は、真核および/または原核(宿主)細胞に該ベクターをトランスフェクトした場合に、宿主細胞によって認識される制御配列に機能的に連結されている。
【0172】
真核および原核(宿主)細胞における発現を確実にする制御エレメントは、当業者に周知である。本明細書において上述されるように、それらは、通常、転写の開始を確実にする調節配列、ならびに任意で、転写の終結および転写産物の安定化を確実にするポリAシグナルを含む。付加的な調節エレメントには、転写ならびに翻訳エンハンサー、および/または天然に関連するもしくは異種のプロモーター領域が含まれ得る。例えば哺乳類宿主細胞における発現を可能にする考え得る調節エレメントには、CMV-HSVチミジンキナーゼプロモーター、SV40、RSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、ヒト伸長因子1α-プロモーター、グルココルチコイド誘導型MMTV-プロモーター(マウス乳房腫瘍ウイルス)、メタロチオネインもしくはテトラサイクリン誘導型プロモーター、またはCMVエンハンサーもしくはSV40-エンハンサーのようなエンハンサーが含まれる。神経細胞における発現に関しては、ニューロフィラメント-、PGDF-、NSE-、PrP-、またはthy-1プロモーターを採用し得ることが想定される。該プロモーターは当技術分野において公知であり、かつとりわけCharron, J. Biol. Chem. 270 (1995), 25739-25745に記載されている。原核細胞における発現に関しては、例えばtac-lac-プロモーターまたはtrpプロモーターを含めた、数多くのプロモーターが記載されている。転写の開始に関与しているエレメントの他に、そのような調節エレメントは、ポリヌクレオチドの下流に、SV40-ポリA部位またはtk-ポリA部位などの転写終結シグナルも含み得る。この状況において、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(In-vitrogene)、pSPORT1(GIBCO BRL)、pX(Pagano, Science 255 (1992), 1144-1147)、pEG202およびdpJG4-5(Gyuris, Cell 75 (1995), 791-803)などの酵母ツーハイブリッドベクター、またはλgt11もしくはpGEX(Amersham-Pharmacia)などの原核細胞用発現ベクターなど、適切な発現ベクターが当技術分野において公知である。本発明の核酸分子の他に、ベクターは、分泌シグナルをコードする核酸配列をさらに含み得る。そのような配列は当業者に周知である。さらに、用いられる発現システムに応じて、本発明のペプチドを細胞コンパートメントへ指揮し得るリーダー配列が、本発明の核酸分子のコード配列に付加され得、かつ当技術分野において周知である。該リーダー配列は、翻訳、開始、および終結配列、ならびに好ましくは、翻訳されたタンパク質、つまりそのタンパク質のペリプラズム空間または細胞外培地への分泌を指揮し得るリーダー配列と適当な段階で会合する。任意で、異種配列は、所望の特徴、例えば発現した組換え産物の安定化または簡易精製を付与するC末またはN末の識別ペプチドを含む融合タンパク質をコードし得る。いったんベクターが適当な宿主内に組み入れられると、宿主は、ヌクレオチド配列の高レベルな発現に適した条件下で維持され、かつ所望のとおり、本発明の抗体分子またはそのフラグメントの収集および精製が後続し得る。
【0173】
さらに、本発明のベクターは、発現ベクターでもあり得る。本発明の核酸分子およびベクターは、細胞内への直接導入用に、またはリポソーム、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス)、エレクトロポレーション、弾道(例えば、遺伝子銃)、もしくは他の送達システム用に設計され得る。加えて、本発明の核酸分子のための真核生物発現システムとして、バキュロウイルスシステムが用いられ得る。
【0174】
本発明は、本発明のベクターを含む宿主細胞にも関する。ゆえに、本発明は、本発明のベクターをトランスフェクトされたもしくは形質転換された宿主、または本発明のベクターを持する非ヒト宿主に関し、すなわち本発明に従った核酸分子で、またはそのような核酸分子を含むベクターで遺伝子改変されている宿主細胞または宿主に関する。「遺伝子改変された」という用語は、宿主細胞または宿主が、その天然ゲノムに加えて、該細胞もしくは宿主にまたはその祖先/親のものに導入された、本発明に従った核酸分子またはベクターを含むことを意味する。核酸分子もしくはベクターは、ゲノムの外側で独立した分子として、好ましくは複製可能である分子として、遺伝子改変された宿主細胞内もしくは宿主内に存在し得る、またはそれは、宿主細胞もしくは宿主のゲノム内に安定して組み込まれ得る。本発明に従ったベクターによる宿主細胞の形質転換は、例えばSambrook and Russell (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, NY, USA;Methods in Yeast Genetics, A Laboratory Course Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1990に記載されているように、標準的方法によって行われ得る。宿主細胞は、用いられる特定の宿主細胞の、とくにpH値、温度、塩濃度、通気、抗生物質、ビタミン、微量元素などについての要件を満たす栄養培地中で培養される。
【0175】
本発明の宿主細胞は、任意の原核または真核細胞であり得る。適切な原核細胞は、大腸菌(E. coli)またはバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のような、クローニングに一般的に用いられるものである。さらに、真核細胞には、例えば真菌または動物細胞が含まれる。適切な真菌細胞に対する例は、酵母細胞、好ましくはサッカロミセス(Saccharomyces)属のもの、最も好ましくはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)種のものである。適切な動物細胞は、例えば昆虫細胞、脊椎動物細胞、好ましくは例えばHEK293、NSO、CHO、COS-7、MDCK、U2-OSHela、NIH3T3、MOLT-4、Jurkat、PC-12、PC-3、IMR、NT2N、Sk-n-sh、CaSki、C33Aなどの哺乳類細胞である。これらの宿主細胞、例えばCHO細胞は、リーダーペプチド除去、H鎖およびC鎖の折り畳みおよび組み立て、正しい側における分子のグリコシル化、ならびに機能的分子の分泌を含めた、本発明の抗体分子への翻訳後(posts-translational)(二次的)修飾を提供し得る。当技術分野において公知のさらなる適切な細胞株は、例えばDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)またはアメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(ATCC)のような細胞株保管所から獲得可能である。本発明に従って、初代細胞/細胞培養物が宿主細胞として機能し得ることがさらに想定される。該細胞は、とくに昆虫(ショウジョウバエ(Drosophila)またはゴキブリ(Blatta)種の昆虫のような)または哺乳類(ヒト、豚、マウス、またはラットのような)に由来する。該宿主細胞は、神経芽細胞腫細胞株のような細胞株からのおよび/またはそれに由来する細胞も含み得る。上述の初代細胞は、当技術分野において周知であり、かつとりわけ初代アストロサイト、(混合)脊髄培養物、または海馬培養物を含む。
【0176】
本発明は、本発明の個々のモジュールまたは本発明の融合タンパク質をコードする発現ベクターを持つ宿主細胞を培養培地中で培養し、かつ宿主細胞または培養培地から構築物/融合タンパク質を回収することによって、本発明の構築物を産生する方法にも関する。本発明は、本発明の宿主細胞の培養および培養物から構築物を回収する工程を含む、本発明の構築物を産生するための方法にも関し得る。
【0177】
宿主細胞、例えばCHO細胞は、発現した本発明の結合化合物に対して翻訳後(二次的)修飾を提供し得る。これらの修飾には、とりわけグリコシル化およびリン酸化が含まれる。
【0178】
本発明の構築物を回収しかつ/またはその後に精製する方法は、当業者に公知である。
【0179】
上記で規定される構築物は、医療設定においてとくに有用である。ゆえに、本発明は、本発明の構築物、本発明の核酸分子、本発明のベクターまたは本発明の宿主細胞、および任意で、薬学的に許容されるキャリアを含む薬学的組成物にも関する。
【0180】
「治療」という用語および同類のものは、所望の薬理学的および/または生理学的な効果を獲得することを概して意味するために本明細書において用いられる。したがって、本発明の治療は、ある特定の疾患の(緊急)状態の治療に関し得るが、疾患またはその症状を完全または部分的に阻止するという点において予防的治療にも関し得る。好ましくは、「治療」という用語は、疾患、ならびに/または該疾患に起因する副作用および/もしくは症状を部分的または完全に治すという点において治療的であると理解されるべきである。この点において、「緊急」とは、対象が疾患の症状を示していることを意味する。言い換えれば、治療されるべき対象は、治療を実際に必要としており、そして本発明の文脈における「緊急治療」という用語は、疾患の発症または疾患の発生後に、疾患を実際に治療するために取られる措置に関する。治療は、予防的または阻止的な治療、すなわち疾患阻止のために、例えば感染および/または疾患の発症を阻止するために取られる措置でもあり得る。
【0181】
本発明の薬学的組成物は、クリーム、泡、ジェル、ローション、および軟膏を含むがそれらに限定されない、当業者に公知の広範囲のクラスの投与の形態を介して投与され得る。
【0182】
記述されるように、本発明は、上記に従った有効量の本発明の構築物、および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤またはキャリアを含む薬学的組成物に関する。
【0183】
賦形剤またはキャリアとは、強力な活性成分を含有する製剤を増量する目的のために、活性成分、すなわち上記に従った本発明の構築物と一緒に製剤化される不活性物質である。賦形剤は、しばしば「増量剤」、「充填剤」、または「希釈剤」と称される。増量することにより、剤形を産生する場合に、原薬(drug substance)の好都合かつ精確な分配が可能となる。それらは、薬物の吸収もしくは溶解性、または他の薬物動態学的な検討事項を促すなど、様々な治療増強の目的も果たし得る。賦形剤は、製造過程においても有用であり得、予想される貯蔵寿命にわたる変性の阻止など、インビトロ安定性を助けることに加えて、粉末の流動性または非粘着特性を促すなどによって、懸念される活性物質の取り扱いを支援する。適当な賦形剤の選択は、投与の経路および剤形、ならびに活性成分および他の要素にも依存する。
【0184】
ゆえに、上記に沿って、有効量の本発明の構築物を含む薬学的組成物は、固体、液体、または気体の形態であり得、かつとりわけ、粉末、錠剤、溶液、またはエアロゾルの形態であり得る。薬学的組成物は、薬学的に許容されるキャリアおよび/または希釈剤を任意で含むことが好ましい。
【0185】
適切な薬学的なキャリア、賦形剤、および/または希釈剤の例は、当技術分野において周知であり、かつリン酸緩衝生理食塩溶液、水、油/水型乳濁液などの乳濁液、様々なタイプの湿潤剤、滅菌溶液などを含む。そのようなキャリアを含む組成物は、周知の従来的方法によって製剤化され得る。これらの薬学的組成物は、適切な用量で、すなわち当技術分野において公知の方法によって当業者により容易に決定され得る「有効量」で、対象に投与され得る。適切な薬学的組成物の投与は、局所投与によって、本発明に従ってもたらされる。投薬レジメンは、主治医および臨床的要素によって決定される。医学の技術分野において周知であるように、任意の1人の患者に対する投薬量は、患者または対象のサイズ、体表面積、年齢、投与されるべき特定の化合物、性別、投与の時間および経路、全般的健康状態、ならびに同時に投与される他の薬物を含めた、多くの要素に依存する。タンパク質性の薬学的活性物は、1回の投薬あたり1〜20mg/kg体重の間の量で存在し得るが、しかしながら、上述の要素をとりわけ考慮して、この例示的範囲を下回るまたは上回る用量が推察される。
【0186】
ゆえに、好ましくは、本発明の構築物は有効量で含まれる。「有効量」という用語は、薬学的組成物が投与されるべき対象において検出可能な治療的応答を誘導するのに十分な量を指す。上記に従って、薬学的組成物中の本発明の構築物の含有量は、それが、上記で記載される治療に有用である限り限定されるわけではないが、好ましくは組成物全体あたり重量で0.0000001-10%を含有する。さらに、本明細書において記載される構築物は、好ましくはキャリア中に採用される。一般的に、適当量の薬学的に許容される塩をキャリア中に用いて、組成物を等張性にする。キャリアの例には、生理食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液が含まれるが、それらに限定されるわけではない。好ましくは、シトレート、ホスフェート、および他の有機酸などのバッファー;塩形成対イオン、例えばナトリウムおよびカリウム;低分子量(>10個のアミノ酸残基)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミンもしくはゼラチン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;ヒスチジン、グルタミン、リジン、アスパラギン、アルギニン、もしくはグリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含めた炭水化物;単糖類;二糖類;他の糖類、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール;キレート剤、例えばEDTA;非イオン性界面活性剤、例えばTween、Pluronic、もしくはポリエチレングリコール;メチオニン、アスコルビン酸、およびトコフェロールを含めた抗酸化剤;ならびに/または防腐剤、例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;ならびにm-クレゾールを含めた、許容される賦形剤、キャリア、または安定剤は、採用される投薬量および濃度において非毒性である。適切なキャリアおよびそれらの製剤化は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1985, Mack Publishing Co.により詳細に記載されている。
【0187】
進行は、定期的査定によってモニターされ得る。本発明の構築物または本発明の薬学的組成物は、滅菌の水性または非水性溶液、懸濁液、および乳濁液、ならびにクリームおよび坐薬の状態であり得る。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの有機エステルである。水性キャリアには、生理食塩水および緩衝培地を含めた、水、アルコール性/水性溶液、乳濁液、または懸濁液が含まれる。例えば抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなど、防腐剤および他の添加物も存在し得る。さらに、本発明の薬学的組成物は、薬学的組成物の意図される使用に応じて、さらなる作用物質を含み得る。該作用物質は、例えばTween、EDTA、シトレート、スクロース、ならびに当業者に周知である、薬学的組成物の意図される使用に適切である他の作用物質であり得る。
【0188】
本発明に従って、「薬学的組成物」という用語は、患者、好ましくはヒト患者への投与のための組成物に関する。
【0189】
本発明の薬学的組成物は、癌、心血管疾患、ウイルス感染症、免疫機能不全、自己免疫疾患、神経学的障害、遺伝性代謝障害、または遺伝子障害の治療における使用のためのものであり得る。癌の例には、頭頸部癌、乳癌、腎臓癌、膀胱癌、肺癌、前立腺癌、骨癌、脳腫瘍、子宮頸癌、肛門癌、結腸癌、結腸直腸癌、虫垂癌、眼癌、胃癌、白血病、リンパ腫、肝臓癌、皮膚癌、卵巣癌、陰茎癌、膵臓癌、精巣癌、甲状腺癌、膣癌、外陰癌、子宮内膜癌、噴門癌、および肉腫が含まれる。
【0190】
心血管疾患の例には、アテローム性動脈硬化、冠動脈性心疾患、肺性心疾患、および心筋症が含まれる。
【0191】
免疫機能不全および自己免疫疾患の例には、リウマチ性疾患および喘息が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0192】
ウイルス感染症の例には、ヒト免疫不全ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルス、ならびにB型およびC型肝炎ウイルスが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0193】
神経学的障害の例には、パーキンソン病、多発性硬化症、および認知症が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0194】
遺伝性代謝障害の例には、ゴーシェ病およびフェニルケトン尿症が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0195】
本発明は、癌、心血管疾患、ウイルス感染症、免疫機能不全、自己免疫疾患、神経学的障害、遺伝性代謝障害、または遺伝子障害の治療のための方法にも関する。治療のための方法の好ましい態様に関しては、上記で規定される、癌、心血管疾患、ウイルス感染症、免疫機能不全、自己免疫疾患、神経学的障害、遺伝性代謝障害、または遺伝子障害の治療における使用のための構築物または薬学的組成物の文脈において上記で明示されていることと同じことが、必要に応じて変更を加えて適用される。
【0196】
本発明において、対象は、好ましい態様において、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、齧歯類、例えばラット、マウス、およびモルモット、または霊長類、例えばゴリラ、チンパンジー、およびヒトなどの哺乳類である。最も好ましい態様において、対象はヒトである。
【0197】
本発明は、SEQ ID NO:1に示される配列またはSEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、もしくは挿入を示す配列を含む、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分、本発明に従った構築物、本発明に従った核酸分子、本発明に従ったベクター、あるいは本発明に従った宿主細胞を含むキットにも関する。好ましい態様に関しては、本発明に従った構築物、核酸分子、ベクター、または宿主細胞の文脈において上記で明示されていることと同じことが、必要に応じて変更を加えて適用される。有利には、本発明のキットは、任意で、バッファー、保存液、ならびに/または上記および下記の使用および方法の実行のために要する残りの試薬もしくは材料をさらに含む。さらに、本発明のキットの部品は、バイアルもしくはビン中に個々に、または容器もしくは複合容器ユニット中に組み合わせで包装され得る。本発明のキットは、とりわけ本発明の方法、本発明の構築物の調製を行うために有利に用いられ得、かつ本明細書において言及される多様な適用において、例えば上記および下記で概説される使用において採用され得る。キット内に含まれ得る別の構成要素は、キットを用いる人へのその使用のための指示書である。キットの製造は、当業者に公知である好ましくは標準的な手順に従う。
【0198】
最後に、本発明は、上記で規定されるターゲティング部分の送達における使用のための、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分の使用にも関する。ゆえに、本発明は、細胞の細胞質への治療用部分、検出可能な部分、核酸分子、好ましくはsiRNA、キャリア分子、好ましくはナノ粒子、リポソーム、およびウイルスベクターの送達における使用のための、上記で規定される、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列からなる膜融合部分の使用にも関し得る。使用の好ましい態様に関しては、構築物の文脈において上記で明示されていることと同じことが、必要に応じて変更を加えて適用される。本発明は、デングウイルス糖タンパク質Eに由来する1つまたは複数の膜融合配列が、SEQ ID NO:1に示される配列を含む、上記の使用にも関し得る。好ましくは、本発明は、1つまたは複数の膜融合配列が、SEQ ID NO:1と比較して1〜8個の置換、欠失、または挿入を示す配列である、上記の使用に関し得る。再度、これらの使用の好ましい態様に関しては、構築物の文脈において上記で明示されていることと同じことが、必要に応じて変更を加えて適用される。
【0199】
本発明において、対象は、好ましい態様において、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、齧歯類、例えばラット、マウス、およびモルモット、または霊長類、例えばゴリラ、チンパンジー、およびヒトなどの哺乳類である。最も好ましい態様において、対象はヒトである。
【実施例】
【0202】
材料および方法
1.ランピルナーゼ-GS-scFvおよびランピルナーゼ-DEN-scFv融合タンパク質のクローニング
C末の(G
4S)
3リンカーに対する付加遺伝子セグメントおよび隣接する制限部位を有するランピルナーゼの遺伝子(UniProtKB/Swiss-Prot:P22069.2)を、哺乳類細胞における最適化された発現のために合成し(Entelechon, Bad Abbach, Germany)、かつサブクローニングベクターpMJA-1B内にApaLI/PvuIIフラグメントとしてクローニングした(Krauss et al., 2005a)。免疫RNaseのランピルナーゼ-GS-scFv遺伝子の生成のために、抗体C225(Goldstein et al., 1995)から生成されたヒト化抗上皮成長因子受容体(EGFR)scFv IZI08(Seifert et al., 2012)のDNA配列を、VHドメインDNA配列の5'末端にPvuII制限部位を導入するESR-1s
順方向プライマー、およびVLドメインDNA配列の3'末端にBamHI制限部位を付け加えるESR-2as
逆方向プライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。ランピルナーゼ遺伝子を含有するサブクローニングベクター内へのIZI08遺伝子の挿入前に、付加的な内部PvuIIおよびBamHI部位を分断するためのサイレント変異を導入した。その後、c-mycタグおよび6ヒスチジンタグをコードするDNA配列を含有するサブクローニングベクターpMJA-1B内に、抗EGFR scFv IZI08遺伝子をランピルナーゼ遺伝子の下流にPvuII/BamHIフラグメントとしてクローニングした。ランピルナーゼ-DEN-scFvカセットサブクローニングベクターpDEN14をもたらすオーバーラップ伸長PCRによって、RNaseと抗体部分との間の標準的(G
4S)
3リンカー配列に対するDNA配列を、デングウイルス血清型2の糖タンパク質Eのアミノ酸96〜114をコードするDNA配列によって交換した。ランピルナーゼ-GS-scFvおよびランピルナーゼ-DEN-scFv融合タンパク質コード遺伝子をEcoRIで消化し、かつ哺乳類細胞用発現ベクターpEE12.4(Lonza Biologics, Slough, UK)内にクローニングした。DNAインサートの正しい配向を、BamHIを用いた制限消化によって確認した。
【0203】
2.細胞株およびタンパク質
細胞株A431(ヒト類表皮癌腫)、MCF7(ヒト乳腺癌)、およびRaji(ヒトバーキットリンパ腫)をATCC(Manassas, VA, USA)から購入した。ヒト頭頸部扁平上皮細胞癌腫(HNSCC)細胞株HNO97(口腔(oral cavitiy))、HNO211(中咽頭)、およびHNO410 (下咽頭リンパ節転移)を、インフォームドコンセントおよびハイデルベルク大学医学部の倫理委員会による承認の後、HNSCC患者の外科的標本から確立した。A431、MCF7、およびHNSCC細胞株を、10%ウシ胎仔血清(Sigma-Aldrich)、100U/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシン(Sigma-Aldrich)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(Sigma-Aldrich, Taufkirchen, Germany)中、37℃で、5% CO
2を有する加湿インキュベーターにて培養した。Raji細胞を、10%ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンを補充したRPMI1640培地(Sigma-Aldrich)中、同一の条件下で培養した。HEK293-6E細胞(米国学術研究会議(National Research Council, Biotechnological Research Institute, Montreal, Canada)から認可を受けた)を、0.1% Kolliphor P188(Sigma-Aldrich)、4mMグルタミン(Invitrogen)、および25μg/ml G418(Carl Roth, Karlsruhe, Germany)を補充したF17培地(Invitrogen, Life Technologies, Darmstadt, Germany)中、37℃、5% CO
2、および120rpmでの振とうインキュベーターにて培養した。
【0204】
対照に関しては、ランピルナーゼがKuslima Shogen, Alfacell Corporationによって厚意により提供された。
【0205】
3.scFvおよび免疫RNaseの発現および精製
ベクターpAB1(Muller et al., 2007)を用いた、大腸菌TG1細胞(Stratagene, Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)のペリプラズムへの抗EGFR scFvの可溶性発現を、以前に記載されているように実施した(Diebolder et al., 2014)。固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によるさらなる精製のために、scFv含有ペリプラズム抽出物をSP10バッファー(20mM NaH
2P0
4、300mM NaCl、10mMイミダゾール、pH8.0)に対して4℃で十分に透析した。RNase融合タンパク質を、振とうフラスコ(Falcon, Becton Dickinson, Heidelberg, Germany)にて、浮遊増殖するHEK293-6E細胞内で一過性に発現させた。1.7〜2×10
6細胞/mlの細胞密度において、1mlの最終培養容量あたり1μgのendofreeプラスミドDNAおよび2μgのポリエチレンイミン(Polysciences, Warrington, PA, USA)を、G418不含のF17培地中にて最終培養容量の1/20で別個に調製し、混合し、室温で3分間インキュベートし、かつHEK293-6E細胞に添加した。トランスフェクションの1日後、細胞に0.5%(w/v)トリプトンTN1(Organotechnie S.A.S, La Courneuve, France)を補充した。トランスフェクションの5日後、タンパク質含有上清を収集し、かつSARTOFLOW(登録商標)Slice 200卓上クロスフローシステム(Sartorius, Goettingen, Germany)を用いて、ランピルナーゼ-GS-scFvに関してはSP20(20mM NaH
2PO
4、300mM NaCl、20mMイミダゾール、pH8.0)に対して、またはランピルナーゼ-DEN-scFvに関してはTris-HClバッファー(25mM Tris、500mM NaCl、pH8.2)に対してそれぞれ透析した。IMACによる組換えタンパク質の精製を、対応するバッファーで平衡化されたNi-NTAカラム(GE Healthcare, Muenchen, Germany)を用いて行った。バッファーによる大量の洗浄後、結合しているタンパク質を、多段階勾配のイミダゾール含有バッファーで溶出した。組換えタンパク質を含有する画分(SDS-PAGEおよびSimply Blue Safe Stain(Invitrogen)およびウェスタンブロットによって判定された)をプールし、かつPBSに対して4℃で一晩透析した。より高い分子量種からの単量体scFvフラグメントおよび免疫RNaseの最終的な精製および分離を、HiLoad 16/60 Superdex 75 prep grade column(GE Healthcare)を用い、PBSバッファー中でサイズ排除クロマトグラフィーによって行った。
【0206】
4.リボ核酸分解活性の判定
ランピルナーゼおよび免疫RNaseのリボ核酸分解活性を、蛍光発生基質6-カルボキシフルオレセイン-dArUdGdA-ブラックホールクエンチャー-1(6-FAM-dArUdGdA-BHQ-1)(biomers.net, Ulm, Germany)の切断を経時的にモニターすることによって測定した。蛍光強度を、485/535nm(励起/発光)フィルターセットを有するInfinite F200Proマイクロプレートリーダー(Tecan, Maennedorf, Switzerland)を用いて、96ウェル黒色マイクロタイタープレートで測定した。1ウェルあたり200μlの総反応容量で、100mM NaClおよび6-FAM-dArUdGdA-BHQ-1(5nM)を含有する100mM MES-NaOHバッファー(pH6.0)中にて25℃で反応を行った。RNase不含のバッファーが陰性対照としての役割を果たし、かつ過剰な濃度のRNase Aを陽性対照として用いた。それぞれが三つ組を含有する少なくとも3回の独立したアッセイを実施した。
【0207】
k
cat/K
Mの値を、方程式:
を用いて算出した。
【0208】
この方程式において、ΔF/Δtは初期反応速度を表し、F
minはRNaseの添加前の初期蛍光強度であり、F
maxは過剰なRNase Aによる基質の完全な切断後の蛍光強度であり、かつ[E]はRNase濃度である。
【0209】
5.抗体結合
平衡結合曲線の判定のために、A431細胞を、連続希釈の精製抗EGFR scFv、ランピルナーゼ-GS-scFv、またはランピルナーゼ-DEN-scFvのいずれかと三つ組でインキュベートした。結合している抗体または免疫RNaseの検出を、マウス(murine)抗c-mycモノクローナル抗体クローン9E10(Roche, Penzberg, Germany)およびヤギ抗マウスフルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジュゲート(Jackson ImmunoResearch, Suffolk, UK)を用いて実施した。染色された細胞の蛍光を、FACS Divaソフトウェア(Becton Dickinson)を用いたFACS Canto IIフローサイトメーター(Becton Dickinson)で測定した。測定された蛍光中央値からバックグラウンド蛍光を差し引き、かつ相対的アフィニティーを、GraphPad Prism 5.0(GraphPad Software, La Jolla, CA, USA)を用いて非線形回帰によって算出した。
【0210】
6.細胞生存率アッセイおよび競合分析
組換えタンパク質の抗腫瘍効力を査定するために、細胞を96ウェル平底プレート(Falcon)に播種し、かつ種々の濃度のタンパク質または対照としてのバッファーとともに、110μlの総容量で37℃、5% CO
2にて72時間インキュベートした。接着細胞株(A431、HNO97、HNO211、HNO410、MCF7)に関しては、PBS中に希釈された5mg/ml溶液の3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)の20μlの添加によって細胞生存率を判定した。MTTとともに37℃、5% CO
2で4時間のインキュベーション後、培地を除去し、かつ細胞を1ウェルあたり100μlの溶解液(ジメチルスルホキシド中、10% SDS(w/v)および0.6%酢酸(v/v))中に溶解した。プレートを室温で5分間インキュベートし、その後に、放出されたホルマザン結晶を溶かす5分間の穏やかな撹拌が続いた。ホルマザン濃度を、Infinite F200Proマイクロプレートリーダー(Tecan)を用いて570nm(参照:620nm)における吸光度を測定することによって判定した。浮遊細胞株Rajiの生存率の判定に関しては、細胞を、後続の細胞溶解なしで、1ウェルあたり10μlのalamarBlue(登録商標)(ThermoScientific, Rockford, IL, USA)とともに37℃、5% CO
2で4時間インキュベートした。吸光度を、MTT処理された細胞に対しするものと同じ波長および器具を用いて直接測定した。
【0211】
細胞生存率を、バッファー対照に対する、タンパク質で処理された生存細胞のパーセンテージとして表現した。細胞生存率がバッファー対照に対して50%低下した濃度として、IC
50を定義した。各アッセイを少なくとも二つ組で実施し、各アッセイは三つ組を含有した。
【0212】
競合分析に関しては、HNO211細胞を96ウェル平底プレート(Falcon)に播種し、かつランピルナーゼ-DEN-scFv(20nM)を添加する前に、1000nMの濃度における抗EGFR scFv IZI08とともに3時間プレインキュベートした。対照に関しては、細胞をランピルナーゼ-DEN-scFv(20nM)または抗EGFR scFv単独(1000nM)のいずれかとインキュベートした。37℃、5% CO
2での72時間のインキュベーション後、上記で記載されるように、MTTアッセイを用いて細胞生存率を判定した。すべての反応を三つ組で実施した。
【0213】
実施例1:ランピルナーゼ-GS-scFvおよびランピルナーゼ-DEN-scFvの生成
EGFR発現癌細胞の標的殺傷のために、ランピルナーゼを、臨床的に確立されたmAbのセツキシマブ(アービタックス(登録商標))と同一の特異性を有するヒト化scFvフラグメントのN末に、柔軟性のある(G
4S)
3リンカーによって融合させた(ランピルナーゼ-GS-scFv)。あるいは、ランピルナーゼを、ウイルスのエンドソーム脱出メカニズムに関与することが報告された、デングウイルス血清型2の推定ウイルス融合ペプチドを含むウイルス配列から構成されるリンカーによって該scFvフラグメントに融合させ(Melo et al., 2009;Zaitseva et al., 2010)、免疫RNaseのランピルナーゼ-DEN-scFvをもたらした。検討されたタンパク質の概要が、
図1に示されている。
【0214】
実施例2:scFvおよび免疫RNaseの発現および精製
scFvフラグメントを大腸菌で発現させ、かつペリプラズム空間から単離し、一方で免疫RNaseのランピルナーゼ-GS-scFvおよびランピルナーゼ-DEN-scFvをHEK293-6E細胞で産生し、かつIgV
Hリーダーペプチドの採用によって細胞培養上清に分泌させた(Krauss et al., 2005a)。タンパク質をNi-NTAカラムによって精製し、その後サイズ排除クロマトグラフィーを行い、>95%の純度を有する均一なタンパク質調製物が産出された。完全な精製後の産物収量は、それぞれ、scFVに関して1.9mg/l、ランピルナーゼ-GS-scFvに関して0.9mg/l、およびランピルナーゼ-DEN-scFvに関して3.2mg/lであった。
【0215】
実施例3:免疫RNaseの機能解析
scFV、ランピルナーゼ-GS-scFv、およびランピルナーゼ-DEN-scFvの細胞結合および見かけの平衡解離定数(K
D)を、EGFR発現A431細胞に対するフローサイトメトリーによって判定した。表1に示されるように、両方の免疫RNaseは、scFv単独と同程度の高いアフィニティーで標的抗原に結合した。
【0216】
(表1)フローサイトメトリーによって解析された、A431細胞への結合に関する抗体構築物のアフィニティー
【0217】
ランピルナーゼ、ランピルナーゼ-GS-scFv、およびランピルナーゼ-DEN-scFvのリボ核酸分解活性を、ランピルナーゼの核酸塩基特異性とマッチする蛍光発生RNA基質を切断し得るそれらの能力によって測定した(Lee and Raines, 2003)。柔軟性のあるグリシン-セリンリンカーによる、scFvフラグメントのN末へのランピルナーゼの融合は、野生型ランピルナーゼと比較した場合、その触媒活性をわずかに低下させた(表2)。
【0218】
(表2)ランピルナーゼおよびランピルナーゼ融合タンパク質のリボ核酸分解活性
*6-FAM-dArUdGdA-BHQ-1の切断に対するk
cat/K
M(±SE)の値は、材料および方法に記載されるように判定された。
【0219】
ランピルナーゼ-DEN-scFvの触媒活性は、ランピルナーゼ-GS-scFvと比較して約2倍低く、ランピルナーゼの折り畳みおよび立体構造のリンカー依存的変更、または基質相互作用の立体障害が生じている可能性があることを示した。
【0220】
実施例4:インビトロ細胞毒性
EGFR発現癌細胞に対する特異的毒性を評価するために、scFvフラグメント、ランピルナーゼ-GS-scFv、ランピルナーゼ-DEN-scFv、およびランピルナーゼを、EGFRを過剰発現している類表皮癌腫癌細胞A431、ならびに頭頸部癌患者の切除した腫瘍に由来するいくつかのEGFR陽性初代細胞株(HNO97、HNO211、HNO410)とともにインキュベートした。EGFR陰性の乳癌細胞株MCF7およびバーキットリンパ腫細胞株Rajiが、陰性対照としての役割を果たした。
図2および表3に示されるように、抗EGFR scFvフラグメント単独では、細胞生存率にほどんど影響を有しなかった。
【0221】
(表3)インビトロにおける、EGFR陽性細胞株に対する検定された構築物の抗腫瘍活性。IC
50値は平均±SEとして示され、かつそれぞれ三つ組で実施された少なくとも2回の独立した実験から導き出されている。
【0222】
ランピルナーゼは、EGFRから独立した様式で細胞に侵入し得るため(Rodriguez et al., 2007)、ランピルナーゼ単独で、EGFR陰性およびEGFR陽性細胞の両方に対して細胞毒性を発揮した(
図2)。柔軟性のあるグリシン-セリンリンカーによる、scFvフラグメントのN末へのランピルナーゼの融合(ランピルナーゼ-GS-scFv)は、単一剤としてのランピルナーゼと比較した場合、わずかに低減した細胞毒性をもたらした。対照的に、デングウイルスに由来する膜融合ペプチドを含有する免疫RNase(ランピルナーゼ-DEN-scFv)は、EGFR発現細胞に対して、ランピルナーゼ単独と同程度の抗腫瘍効力を呈したが、非常に高濃度でさえEGFR陰性細胞には影響を及ぼさなかった(
図2B)。ランピルナーゼ-DEN-scFvは、初代HNO211細胞株に対して最も強い細胞毒性を呈し、ランピルナーゼ-GS-scFvと比較して79倍の効能の増加に相当する18nMという平均IC
50値を有した。
【0223】
導入されたウイルスリンカー配列が、ランピルナーゼ-DEN-scFvの特異性に対して負の影響を有しないことを証明するために、本発明者らは、HNO211細胞株に対する競合アッセイを実施した。
図3に示されるように、ランピルナーゼ-DEN-scFvの細胞毒性は、50倍モルの過剰なscFvの存在下で完全に無効となり得、両化合物が同じ標的エピトープに結合すること、およびランピルナーゼ-DEN-scFvの細胞侵入はEGFR特異的であり、かつ膜融合ペプチドと原形質膜との非特異的相互作用によっては仲介されないことを裏付けた。
【0224】
参考文献