【解決手段】回答が回答者の個性を示す第1アンケートの回答を示す第1アンケート情報と前記回答者の生理状態を示す第1生理情報と、回答が回答者の個性を示さない第2アンケートの回答を示す第2アンケート情報と前記回答者の生理状態を示す第2生理情報とを取得する取得部と、判定の対象者が提供する第2生理情報又は第2アンケート情報と所属条件とに基づき対象者が所属するクラスタを推定する所属クラスタ推定部と、推定結果のクラスタにおける第1アンケート情報と第1生理情報との関係を示す状態関係情報と、対象者の第1生理情報とに基づいて対象者の状態を判定する状態判定部とを備え、第1アンケート情報と第1生理情報とを組み合わせた情報は個性を示す状態判定装置。
回答が回答者の個性を示さないアンケートを第1アンケートとし、回答が回答者の個性を示すアンケートを第2アンケートとして、前記第1アンケートに対する回答者の回答を示す情報である第1アンケート情報と、前記第1アンケートの回答者の生理状態を示す情報であって前記第1アンケートの回答者の個性を示さない情報である第1生理情報と、前記第2アンケートに対する回答者の回答を示す情報である第2アンケート情報と、前記第2アンケートの回答者の生理状態を示す情報であって前記第2アンケートの回答者の個性を示す情報である第2生理情報と、のうち、判定の対象となる判定対象者について、前記第1生理情報と、第2生理情報又は前記第2アンケート情報とを取得する取得部と、
前記第2生理情報又は前記第2アンケート情報と、前記第2生理情報又は前記第2アンケート情報に基づく所属条件とに基づいて、前記判定対象者が、回答者の母集団を形成する複数のクラスタのいずれに所属するかを推定する所属クラスタ推定部と、
前記複数のクラスタのそれぞれに予め定められる前記第1アンケート情報と前記第1生理情報との関係を示す状態関係情報であって前記所属クラスタ推定部の推定結果に対応する前記状態関係情報と、前記判定対象者が提供する前記第1生理情報と、に基づいて、前記第1アンケートに対する前記判定対象者の回答を推定する回答推定部と、
前記回答推定部が推定した前記回答に基づいて、前記判定対象者の状態を判定する状態判定部と、
を備え、
前記第1生理情報と前記第1アンケート情報とは、前記第1生理情報と前記第1アンケート情報とを組合せた情報が個性を示す情報である、
状態判定装置。
前記母集団を構成する人を母集団形成者として、複数の前記母集団形成者が提供する第1生理情報及び第1アンケート情報に基づいて、前記クラスタごとの状態関係情報を取得する状態関係情報取得部と、
前記回答推定部が推定した前記回答に関する所定の条件である更新条件が満たされる場合に、前記回答と、前記判定対象者が提供する前記第1生理情報とに基づいて前記状態関係情報を更新する第1更新部と、
をさらに備える請求項1に記載の状態判定装置。
回答が回答者の個性を示さないアンケートを第1アンケートとし、回答が回答者の個性を示すアンケートを第2アンケートとして、前記第1アンケートに対する回答者の回答を示す情報である第1アンケート情報と、前記第1アンケートの回答者の生理状態を示す情報であって前記第1アンケートの回答者の個性を示さない情報である第1生理情報と、前記第2アンケートに対する回答者の回答を示す情報である第2アンケート情報と、前記第2アンケートの回答者の生理状態を示す情報であって前記第2アンケートの回答者の個性を示す情報である第2生理情報と、のうち、判定の対象となる判定対象者について、前記第1生理情報と、第2生理情報又は前記第2アンケート情報とを取得する取得ステップと、
前記第2生理情報又は前記第2アンケート情報と、前記第2生理情報又は前記第2アンケート情報に基づく所属条件とに基づいて、前記判定対象者が、回答者の母集団を形成する複数のクラスタのいずれに所属するかを推定する所属クラスタ推定ステップと、
前記複数のクラスタのそれぞれに予め定められる前記第1アンケート情報と前記第1生理情報との関係を示す状態関係情報であって前記所属クラスタ推定ステップにおける推定結果に対応する前記状態関係情報と、前記判定対象者が提供する前記第1生理情報と、に基づいて、前記第1アンケートに対する前記判定対象者の回答を推定する回答推定ステップと、
前記回答推定ステップにおいて推定された前記回答に基づいて、前記判定対象者の状態を判定する状態判定ステップと、
を有し、
前記第1生理情報と前記第1アンケート情報とは、前記第1生理情報と前記第1アンケート情報とを組合せた情報が個性を示す情報である、
状態判定方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、実施形態の状態判定装置1の機能構成の一例を示す図である。状態判定装置1は、判定対象者の状態を判定する。判定対象者の状態とは、眠気や情動状態等の状態である。
状態判定装置1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサやメモリや記憶部100などを備え、プログラムを実行する。状態判定装置1は、プログラムの実行によって、取得部101、クラスタリング部102、状態関係情報取得部103、所属条件取得部104、所属クラスタ推定部105、状態情報取得部106、状態判定部107、更新判定部108、第1更新部109、第2更新部110及び出力部111を備える装置として機能する。
【0016】
取得部101は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成される。取得部101は、これらの入力装置を自装置に接続するインタフェースとして構成されてもよい。取得部101は、自装置に対する各種情報の入力を受け付ける。取得部101に入力される各種情報は、判定対象者から提供される第1生理情報と、判定対象者以外の複数の人から提供される第1アンケート情報及び第1生理情報とを含む。以下、判定対象者以外の人を、母集団形成者という。
【0017】
第1アンケート情報は、第1のアンケート(以下「第1アンケート」という。)に対する回答者による回答を示す情報である。
第1アンケートの質問事項は、回答者の状態に関する質問事項を含む。第1アンケート情報は、第1アンケートの質問事項に対する回答者の回答を示す情報である。第1アンケートの質問事項は、例えば、性格診断のための質問であってもよい。この場合、第1アンケート情報は、性格診断のための質問に対する回答者の回答を示す情報である。第1アンケート情報は、コンピュータが読み取り可能な形式で第1アンケートに対する回答者の回答を示せば、どのような形式で第1アンケートに対する回答者の回答を示してもよい。第1アンケート情報は、例えば、第1アンケートに対する回答者の回答を示す値であってもよい。第1アンケートに対する回答者の回答を示す値は、例えば、第1アンケートに対する回答者の回答がイエスである場合に1であって、第1アンケートに対する回答者の回答がノーである場合に0であってもよい。第1アンケート情報は、第1アンケートに対する回答者の回答をVAS(Visual Analogue Scale)で示してもよい。
【0018】
第1生理情報は、第1アンケートの質問事項に対する回答者の第1の生理状態(以下「第1生理状態」という。)を示す情報である。第1生理状態は、変化が第1アンケートに対する回答者の回答の変化と相関をもつ生理状態である。第1生理情報は、回答者から取得される。第1生理情報は、第1生理状態を示す情報であればどのような情報であってもよい。第1生理情報は、例えば、第1生理状態を示す値(以下「第1生理値」という。)であってもよい。第1生理値は、例えば、心電図の波形を示す物理量、脈拍、指尖脈派、耳朶脈派、皮膚温度、皮膚抵抗、呼吸、瞳孔径、視線、瞬き又は表情筋電であってもよい。なお、心電図の波形を示す物理量とは、例えば、心電図の波形の振幅の最大値であってもよいし、周波数であってもよい。生理情報が値を示す複数の物理量は、例えば、心電図の波形を示す物理量、脈拍、指尖脈派、耳朶脈派、皮膚温度、皮膚抵抗、呼吸、瞳孔径、視線、瞬き又は表情筋電のうち少なくとも2つ以上の物理量であってもよい。
なお、第1生理情報は、第1アンケートに回答している時に第1アンケートの回答者から取得される生理状態に関する情報であってもよい。
【0019】
第1生理情報及び第1アンケート情報は、それぞれは個性を示さない情報であって、第1生理情報と第1アンケート情報との組合せによって、提供者の個性を示す情報である。個性を示さないとは、情報の変化と眠気や情動状態等の人の状態の変化との関係における個人差が表れないことを意味する。個性を示すとは、情報の変化と眠気や情動状態等の人の状態の変化との関係に個人差が表れることを意味する。また、第1アンケート情報は、個性を示さない情報であるので、第1アンケートは、回答が回答者の個性を示さないアンケートである。
【0020】
取得部101に入力される各種情報は、さらに、判定対象者から提供される第2アンケート情報及び第2生理情報と、母集団形成者から提供される第2アンケート情報及び第2生理情報とを含む。第2アンケート情報は、第2のアンケート(以下「第2アンケート」という。)に対する回答者による回答を示す情報である。第2アンケートは、質問事項の一部又は全部が第1アンケートの質問事項とは異なる。
【0021】
第2アンケートの質問事項は、例えば、性格診断のための質問であってもよい。この場合、第2アンケート情報は、性格診断のための質問に対する回答者の回答を示す情報である。第2アンケート情報は、コンピュータが読み取り可能な形式で第2アンケートに対する回答者の回答を示せば、どのような形式で第2アンケートに対する回答者の回答を示してもよい。第2アンケート情報は、例えば、第2アンケートに対する回答者の回答を示す値であってもよい。第2アンケートに対する回答者の回答を示す値は、例えば、第2アンケートに対する回答者の回答がイエスである場合に1であって、第1アンケートに対する回答者の回答がノーである場合に0であってもよい。第2アンケート情報は、第2アンケートに対する回答者の回答をVAS(Visual Analogue Scale)で示してもよい。
【0022】
第2生理情報は回答者の第2の生理状態(以下「第2生理状態」という。)を示す情報である。第2生理状態平常時や安静時の生理状態である。第2生理情報は、回答者から取得される。第2生理情報は、第2生理状態を示す情報であればどのような情報であってもよい。第2生理情報は、例えば、第2生理状態を示す値(以下「第2生理値」という。)であってもよい。第2生理値は、例えば、心電図の波形を示す物理量、脈拍、指尖脈派、耳朶脈派、皮膚温度、皮膚抵抗、呼吸、瞳孔径、視線、瞬き又は表情筋電であってもよい。なお、心電図の波形を示す物理量とは、例えば、心電図の波形の振幅の最大値であってもよいし、周波数であってもよい。生理情報が値を示す複数の物理量は、例えば、心電図の波形を示す物理量、脈拍、指尖脈派、耳朶脈派、皮膚温度、皮膚抵抗、呼吸、瞳孔径、視線、瞬き又は表情筋電のうち少なくとも2つ以上の物理量であってもよい。
なお、第2生理情報は、第2アンケートに回答している時に第2アンケートの回答者から取得される生理状態に関する情報であってもよい。
【0023】
第2生理情報及び第2アンケート情報は、それぞれ個性を示す情報である。個性を示す情報とは、情報の変化と眠気や情動状態等の人の状態の変化との関係に個人差がある情報である。具体的には、第2生理情報は第2生理情報の提供者の眠気や情動状態等の人の状態の変化と生理状態の変化との関係に個人差がある情報である。具体的には、第2アンケート情報は第2アンケート情報の回答者の眠気や情動状態等の人の状態の変化と第2アンケートに対する回答の変化との関係に個人差がある情報である。また、第2アンケート情報は、個性を示す情報であるので、第2アンケートは、回答が回答者の個性を示すアンケートである。
第2生理状態及び第2アンケートの質問事項は、後述するクラスタリング部102のクラスタリング結果であるクラスタに、第2生理情報及び第2アンケート情報の提供者を分類可能な情報である。
【0024】
(個性を示さない情報と個性を示す情報とについての詳細な説明)
ここで、個性を示さない情報と個性を示す情報とについて詳細に説明する。上述したように、第1生理情報及び第1アンケート情報はそれぞれ単独では個性を示さないが、組合せによって個性を示す情報である。以下、第1生理情報が心拍であって第1アンケート情報が快又は不快の度合を示す値である場合を例に個性を示す情報を説明する。心拍は、一般に、第1生理情報の提供者に不快な刺激が与えられた時に低下する傾向を示す。例えば、3秒間で10拍/分程度の低下を示す。そのため、「3秒間で10拍/分低下した」という事象は、人に依らず起きることである。また、「度合が80程度の不快を感じた」という事象や「度合が70程度の眠たさである」という事象もまた、人に依らず生じる事象である。このように、第1生理情報と第1アンケート情報とは、それぞれは、個性を示さない情報である。しかしながら、「度合が80の時に、心拍が3秒間で10拍/分低下する」という事象は生じない人も生じる人もいる。そのため、個人差がある事象である。
後述するクラスタリング部102は、上記個人差がある事象に応じて、第1生理情報及び第1アンケート情報の提供者をクラスタリングする。
【0025】
次に、第2生理情報及び第2アンケート情報について説明する。第2生理情報及び第2アンケート情報は、それぞれが個性を示す情報である。第2生理情報は、例えば、安静時など人の状態ができるだけ変化しない場合における、2分〜10分程度の期間の平均の心拍数や血圧である。平均の心拍数や血圧は、個人差が大きく、例えば、心拍が70という数値は、人それぞれで異なる。このように、第2生理情報は、個性を示す情報である。
第2アンケート情報は第2生理情報として取得することはできない情報であって、例えば、人の認知能力や、感情への感受性、気分の特性、行動の特性、他人への共感能力、現象を説明する論理的認知能力等の個人差が表れる情報である。このように、第2アンケート情報は、生理状態を示す情報以外の個性を示す情報である。ここまでで、個性を示さない情報と個性を示す情報とについての詳細な説明を終了する。
【0026】
取得部101は、入力された各種情報をクラスタリング部102、状態関係情報取得部103、所属条件取得部104、所属クラスタ推定部105、状態情報取得部106、状態判定部107、第1更新部109、第2更新部110及び出力部111に出力する。
【0027】
クラスタリング部102は、第1アンケート情報及び第1生理情報に基づいて、第1アンケート情報及び第1生理情報を提供した提供者を複数のクラスタにクラスタリング(分類)する。第1アンケート情報及び第1生理情報の提供者とは、第1アンケートの質問事項に対する回答者であって、第1生理情報を提供した回答者である。クラスタリング部102は、第1アンケート情報及び第1生理情報に基づいて第1アンケート情報及び第1生理情報の提供者を複数のクラスタにクラスタリング可能であれば、どのようなクラスタリングの手法によって提供者をクラスタリングしてもよい。クラスタリング部102は、例えば、k−meansの手法によってクラスタリングしてもよい。クラスタリング部102は、例えば、データが統計分布に従うと仮定したモデルベースクの手法によってクラスタリングしてもよい。クラスタリング部102は、例えば、線形回帰の手法によってクラスタリングしてもよい。クラスタリング部102は、例えば、時系列解析の手法によってクラスタリングしてもよい。
【0028】
なお、クラスタリング部102は、クラスタリングにおいて、第1アンケート情報及び第1生理情報を正規化してもよい。正規化することで、第1アンケート情報及び第1生理情報の個人差に起因するばらつきを抑制することができる。クラスタリング部102によるクラスタリングの結果は、記憶部100に記録される。
【0029】
以下、クラスタリング部102に入力される第1生理情報を入力生理情報という。以下、クラスタリング部102に入力される第1アンケート情報を入力アンケート情報という。
【0030】
状態関係情報取得部103は、クラスタリング部102がクラスタしたクラスタごとに、状態式関係情報を取得する。状態関係情報は、対応するクラスタにおける第1アンケート情報と第1生理情報との間の関係を表す情報である。状態関係情報は、例えば、対応するクラスタにおける第1アンケート情報と第1生理情報との間の関係を表す式(以下「状態式」という。)である。状態式は、クラスタが異なっても同じであてもよいし、クラスタが異なっている場合に異なっていてもよい。状態式は、例えば、以下の式(1)で表される多項式(以下「状態多項式」という。)である。
【0032】
式(1)において、Yは、状態式の値であって第1アンケート情報(すなわち、第1アンケートの回答者の回答)を表す。第1アンケート情報は、回答者の状態に関する質問事項を含むことから、状態式の値Yは、第1アンケートの回答者による自身の状態の主観的な評価を表す。以下、状態式の値Yを状態値という。式(1)において、a、b及びcは状態多項式における係数を表す。状態式における式(1)の係数a、b及びcの値は、クラスタごとに異なってもよいし、同じであってもよい。式(1)において、X1、X2及びX3は、第1生理状態を表す変数である。すなわち、X1、X2及びX3には、第1生理値が代入される。X1、X2及びX3は、第1生理状態を表す変数であれば、どのような変数であってもよい。X1、X2及びX3は、例えば、心電図の波形を示す物理量、脈拍、指尖脈派、耳朶脈派、皮膚温度、皮膚抵抗、呼吸、瞳孔径、視線、瞬き又は表情筋電の値を表す変数であってもよい。
【0033】
なお、状態多項式は、必ずしも3項の多項式でなくてもよく、多項式であればどのような項数の式であってもよい。状態多項式は、例えば、4項以上の式であってもよいし、2項の多項式であってもよい。また、状態多項式は、多項式であればどのような多項式であってもよく、必ずしも線形な多項式である必要は無い。状態多項式は、非線形な多項式であってもよい。
所定の手法とは、対象とする人の状態を推定可能な手法であればどのような手法でもよく、例えば、機械学習である決定木、ランダムフォレスト、サポートベクター、ディープラーニングなどの回帰や分類であってもよい。
状態関係情報取得部103において、所定の手法が機械学習の手法である場合、例えば、目的変数は第1アンケート情報であり、説明変数は第2生理情報又は第2アンケート情報である。
【0034】
状態関係情報取得部103が状態式を取得するとは、例えば、状態多項式における係数の値を決定することである。状態関係情報取得部103が取得した状態関係情報は、記憶部100に記録される。
以下、説明の簡単のため状態関係情報は状態式であると仮定する。また、以下、説明の簡単のため状態式は、式(1)で表される状態多項式であると仮定する。
【0035】
所属条件取得部104は、第2アンケート情報と、第2生理情報と、クラスタリング部102によるクラスタリングの結果とに基づいて、所定の手法によって所属条件を取得する。所属条件は、第1アンケート情報及び第1生理情報に基づいて母集団形成者がクラスタリングされた結果と、第2アンケート情報及び第2生理情報に基づいて母集団形成者がクラスタリングされた結果とが同一となる条件である。
所定の手法とは、対象とする人の状態を推定可能な手法であればどのような手法でもよく、例えば、機械学習である決定木、ランダムフォレスト、サポートベクター、ディープラーニングなどの回帰や分類であってもよい。
【0036】
所属条件は、例えば、第2アンケート情報及び第2生理情報に基づいて、クラスタリング部102が決定した各クラスタのいずれのクラスタに、第2アンケート情報及び第2生理情報の提供者が所属するかを決定する決定木である。
所属条件取得部104において、所定の手法が機械学習の手法である場合、例えば、目的変数はクラスタリング部102が決定したクラスタであり、説明変数は第2生理情報又は第2アンケート情報である。
【0037】
図2は、実施形態における所属条件を説明する説明図である。
図2は、決定木である。
図2は、実験によって得られた決定木の一例である。
図2は、クラスタリング部102によって第1クラスタから第5クラスタまでの5つのクラスタに、第1アンケート情報及び第1生理情報の提供者が分類された場合における決定木の一例である。
【0038】
図2に示す決定木にしたがって、第2アンケート情報及び第2生理情報の提供者は所属するクラスタが判定される。具体的には、まず、平均呼吸周波数は29450.25以上か否かが判定される(ステップS101)。平均呼吸周波数は、第2生理情報の一例である。ステップS101において、平均呼吸周波数は29450.25以上である場合(ステップS101:YES)、第2アンケート情報及び第2生理情報の提供者の所属するクラスタは第1クラスタであると判定される。
【0039】
一方、ステップS101において、平均呼吸周波数は29450.25未満である場合(ステップS101:NO)、皮膚抵抗水準標準偏差が0.258以上か否かが判定される(ステップS102)。皮膚抵抗水準標準偏差は、第2生理情報の一例である。ステップS102において、皮膚抵抗水準標準偏差が0.258未満である場合(ステップS102:NO)、第2アンケート情報及び第2生理情報の提供者の所属するクラスタは第2クラスタであると判定される。
【0040】
一方、ステップS102において、平均呼吸周波数は29450.25以上である場合(ステップS102:YES)、第2アンケートの質問事項のひとつである質問事項Aに対する回答を示す値が、58.5以上か否かが判定される(ステップS103)。
図2において、質問事項Aに対する回答を示す値は、トレントアレイキサイミアスケールによって示される値である。質問事項Aに対する回答を示す値は、第2アンケート情報の一例である。ステップS103において、質問事項Aに対する回答を示す値が58.5未満である場合(ステップS103:NO)、第2アンケート情報及び第2生理情報の提供者の所属するクラスタは第3クラスタであると判定される。
【0041】
一方、ステップS103において、質問事項Aに対する回答を示す値が58.5以上である場合(ステップS103:YES)、第2アンケートの質問事項のひとつである質問事項Bに対する回答を示す値が、26.5以上か否かが判定される(ステップS104)。
図2において、質問事項Bは、物的因子の認知傾向に関する質問事項である。
図2において、質問事項Bに対する回答を示す値は、Systemizing Quotientによって示される値である。質問事項Bに対する回答を示す値は、第2アンケート情報の一例である。ステップS104において、質問事項Bに対する回答を示す値が26.5未満である場合(ステップS104:NO)、第2アンケート情報及び第2生理情報の提供者の所属するクラスタは第4クラスタであると判定される。
【0042】
一方、ステップS104において、質問事項Bに対する回答を示す値が26.5以上である場合(ステップS104:YES)、第2アンケート情報及び第2生理情報の提供者の所属するクラスタは第5クラスタであると判定される。
【0043】
なお、
図2に示す所属条件は、第2アンケート情報及び第2生理情報に基づく条件であったが、所属条件は、必ずしも、第2アンケート情報及び第2生理情報に基づく必要は無い。所属条件は、第2アンケート情報だけに基づいてもよいし、第2生理情報だけに基づいてもよい。
【0044】
図1の説明に戻る。所属クラスタ推定部105は、判定対象者が提供した第2生理情報及び第2アンケート情報と、所属条件とに基づいて、判定対象者が複数の所定のクラスタのいずれに所属するか推定する。すなわち、所属クラスタ推定部105は、判定対象者が提供した第2生理情報及び第2アンケート情報と、所属条件とに基づいて、回答者の母集団を形成する複数のクラスタのいずれに所属するかを推定する。
【0045】
状態情報取得部106は、判定対象者の第1生理情報と所属クラスタ推定部105が推定したクラスタに対応する状態関係情報とに基づいて、状態情報を取得する。状態情報は、判定対象者の状態を示す情報である。状態情報は、例えば、状態値である。すなわち、状態情報は、例えば、判定対象者の状態を示す値である。状態情報が示す判定対象者の状態は、例えば、判定対象者の情動であってもよい。
以下、所属クラスタ推定部105が推定したクラスタに対応する状態関係情報を、対応クラスタ状態関係情報という。所属クラスタ推定部105が推定したクラスタに対応する状態関係情報とは、状態関係情報取得部103が取得した状態関係情報のうち、所属クラスタ推定部105が推定したクラスタに対して取得された状態関係情報である。
【0046】
状態情報取得部106が、状態情報を取得するとは、例えば、状態情報取得部106が、判定対象者の第1生理情報と対応クラスタ状態式とに基づいて、状態値を算出することである。対応クラスタ状態式とは、所属クラスタ推定部105が推定したクラスタに対応する状態式である。所属クラスタ推定部105が推定したクラスタに対応する状態式とは、状態関係情報取得部103が取得した状態式のうち、所属クラスタ推定部105が推定したクラスタに対して取得された状態式である。
状態情報取得部106は、例えば、対応クラスタ状態式に対して判定対象者の第1生理値を代入し、代入結果を状態値として取得する。
状態情報が判定対象者の状態を示す情報であることから、状態情報取得部106が取得する状態情報は、判定対象者による第1アンケートの回答の推定結果である。このことから、状態情報取得部106が状態情報を取得するとは、状態情報取得部106が第1アンケートに対する判定対象者の回答を推定することを意味する。
【0047】
状態判定部107は、状態情報取得部106が取得した状態情報に基づいて、判定対象者の状態を判定する。状態判定部107は、例えば、状態情報が状態値であって状態値が所定の値以上である場合に、判定対象者は、眠い状態である、と判定する。
【0048】
更新判定部108は、更新条件が満たされるか否かを判定する。更新条件は、状態情報取得部106が取得した状態情報に関する条件であればどのような条件であってもよい。更新条件は、例えば、状態情報取得部106が算出した状態値が、対応するクラスタにおける状態値の平均値を所定の値以上に変化させる値である、という条件であってもよい。更新条件は、例えば、状態情報取得部106が算出した状態値が、所定の値未満であるという条件であってもよい。
【0049】
第1更新部109は、更新条件が満たされた場合に、状態関係情報の更新に関する所定のアルゴリズムにしたがい、状態値と判定対象者の第1生理情報とに基づいて対応クラスタ状態関係情報を更新する。以下、状態関係情報の更新に関する所定のアルゴリズムを状態関係情報更新アルゴリズムという。状態関係更新アルゴリズムは、対象とする人の状態を推定可能な手法であればどのような手法でもよく、例えば、機械学習である決定木、ランダムフォレスト、サポートベクター、ディープラーニングなどの回帰や分類であってもよい。
第1更新部109は、更新に際して、例えば、状態情報が状態式である場合、対応クラスタ状態式の係数の値を更新する。
【0050】
第2更新部110は、更新判定部108が更新条件が満たされたと判定した場合に、被更新生理情報を入力生理情報とし被更新アンケート情報を入力アンケート情報として、クラスタリング部102にクラスタリングを実行させる。被更新生理情報は、母集団形成者が提供する第1生理情報に対して判定対象者が提供する第1生理情報を加えた情報である。被更新アンケート情報は、母集団形成者が提供する第1アンケート情報に対して判定対象者アンケート情報を加えた情報である。判定対象者アンケート情報は、判定対象者が提供する第1生理情報と、対応クラスタ状態関係情報とに基づいて、取得される第1アンケート情報である。例えば、判定対象者アンケート情報は、判定対象者が提供する第1生理情報を対応クラスタ状態式に代入した値である。
【0051】
出力部111は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。出力部111は、これらの表示装置を自装置に接続するインタフェースとして構成されてもよい。出力部111は、更新条件が満たされない場合における状態情報取得部106の取得結果を出力する。
【0052】
図2は、実施形態における状態判定装置1が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
取得部101が複数の母集団形成者が提供した第1生理情報、第1アンケート情報、第2生理情報及び第2アンケート情報を取得する(ステップS201)。取得部101は、取得部101に複数の母集団形成者が提供した第1生理情報、第1アンケート情報、第2生理情報及び第2アンケート情報が入力されることで、第1生理情報、第1アンケート情報、第2生理情報及び第2アンケート情報を取得する。
【0053】
ステップS201において取得された第1生理情報及び第1アンケート情報に基づいて、クラスタリング部102が、母集団形成者を複数のクラスタにクラスタリングする(ステップS202)。状態関係情報取得部103が、ステップS202においてクラスタリングされた各クラスタにおける状態関係情報を取得する(ステップS203)。
【0054】
所属条件取得部104が、ステップS201において取得された第2アンケート情報及び第2生理情報と、ステップS202におけるクラスタリングの結果とに基づいて、所属条件を取得する(ステップS204)。
【0055】
取得部101が、判定対象者が提供した第1生理情報、第2生理情報及び第2アンケート情報を取得する(ステップS205)。例えば、取得部101は、取得部101に判定対象者が提供した第1生理情報、第2生理情報及び第2アンケート情報が入力されることで、第1生理情報、第2生理情報及び第2アンケート情報を取得する。
【0056】
所属クラスタ推定部105が、ステップS205において取得された第2生理情報及び第2アンケート情報と所属条件とに基づいて、判定対象者がステップS102においてクラスタリングされた複数のクラスタのいずれに所属するか推定する(ステップS206)。
【0057】
状態情報取得部106が、判定対象者の第1生理情報とステップS206における推定結果とに基づいて、状態情報を取得する(ステップS207)。
【0058】
更新判定部108が、更新条件が満たされたか否かを判定する(ステップS208)。更新条件が満たされた場合(ステップS208:YES)、第1更新部109が、ステップS206において判定対象者が所属すると判定されたクラスタの状態関係情報を、状態情報と判定対象者の第1生理情報とに基づいて更新する(ステップS209)。
【0059】
ステップS209の次に、第2更新部110が、被更新生理情報及び被更新アンケート情報に基づいて、クラスタリング部102にクラスタリングを実行させる(ステップS210)。
ステップS210の処理が実行された次に、ステップS203の処理に戻る。
【0060】
一方、ステップS208において、更新条件が満たされない場合(ステップS208:NO)、状態判定部107は、ステップS207において取得された状態情報に基づいて、判定対象者の状態を判定する(ステップS211)。出力部111が、ステップS211の判定結果を出力する(ステップS212)。ステップS212の次に、処理が終了する。
【0061】
以下、状態判定装置1が、複数の第1生理情報及び第1アンケート情報に基づいて、第1生理情報及び第1アンケート情報の提供者をクラスタリングする処理をクラスタリング処理という。クラスタリング処理は、ステップS202の処理である。
以下、状態判定装置1が、状態関係情報を取得する処理を状態関係情報取得処理という。状態関係情報取得処理は、ステップS203の処理である。以下、状態判定装置1が所属条件を取得する処理を所属条件取得処理という。所属条件取得処理は、ステップS204の処理である。
【0062】
以下、状態判定装置1が、クラスタリング処理の結果である複数のクラスタのいずれに判定対象者が所属するかを、第2生理情報及び第2アンケート情報に基づいて判定する処理を、所属クラスタ判定処理という。所属クラスタ判定処理は、ステップS206の処理である。
【0063】
以下、状態判定装置1が、所属クラスタ判定処理の判定結果が示すクラスタに応じた状態関係情報によって状態情報を取得する処理を、状態情報取得処理という。状態情報取得処理は、ステップS207の処理である。
【0064】
(実験結果)
図4は、実施形態の状態判定装置1が取得する所属条件の精度を示す実験結果の一例を示す図である。所属条件の精度とは、第2生理情報、第2アンケート情報及び所属条件に基づいて判定された提供者の所属するクラスタが、クラスタリング部102によって所属すると判定されたクラスタと一致する確率である。精度が高いほど、一致する確率が高いことを示す。
図4の横軸は、クラスタリング部102によって生成されたクラスタの数を示す。
図4の縦軸は、所属条件の精度を示す。
図4において所属条件の精度は1が最大値である。すなわち、
図4において所属条件の精度が1である場合、第2アンケート情報及び所属条件に基づいて判定された提供者の所属するクラスタは、クラスタリング部102によって所属すると判定されたクラスタと必ず一致する。
図4は、クラスタリング部102によって生成されたクラスタの数が5以下である場合には、所属条件の精度が0.7以上であって精度が高いことを示す。
【0065】
図5〜
図7は、実施形態における第1アンケート情報の一例を示す実験結果の図である。より具体的には、
図5〜
図7は、1日に48回の精神動態覚醒水準課題テストプログラム(PVTテスト)を3日に渡り、14名の男性に対して行った実験結果の一例である。すなわち、
図5〜
図7は、PVTテストが異なる3日で実施された実験結果の一例である。PVTテストは、1日2セッションが行われ、中間でカフェイン摂取による覚醒変化を導入したテストであった。各セッション直後に実験被験者自身の眠気・覚醒度などについて主観評価がアンケートにて実施された。
【0066】
PVTテストにおいて被験者から取得した第1生理情報は、心電図の指標HR、CSI、CVI及びHF/(LF+HF)と、脈波と、瞳孔径と、頭部の動きとであった。HRとは、i分における心拍回数RR
iを意味する(iは1以上の整数)。CSIとは、RR
i+1/RR
iのプロット図(以下ローレンツプロット)のL/Tを意味する。Lは、ローレンツプロット中の対角軸の分散を意味する。TはLと直行する軸の分散を意味する。CVIは、Log
10(LxT)を意味する。心電波形を周波数空間変換した際に得られるパワースペクトラムにおいて0.04Hz<f<0.15Hzの区間でのパワー値の積分値を意味する。HF(High Frequency)は秒間の心拍変動の周波数解析におけるパワースペクトラムにおいて0.224Hz<f<0.28Hzの区間でのパワー値の積分値を意味する。LF(Low Frequency)は、秒間の心拍変動の周波数解析におけるパワースペクトラムにおいて0.04Hz<f<0.12Hzの区間でのパワー値の積分値を意味する。HF/(LF+HF)は、LF(0.15Hz<)とHF(0.15Hz>)との比を意味する。
【0067】
1回のPVTテストにおける脈波を示す値は、具体的には、1回のPVTテストにおける脈派頂点間の振幅値の平均である。1回のPVTテストにおける瞳孔径を示す値は、具体的には、1回のPVTテストにおける瞳孔径の平均値である。1回のPVTテストにおける頭部の動きを示す値は、具体的には、1回のPVTテストにおける頭部の移動量の平均値である。
【0068】
図5は、実施形態における第1アンケート情報の一例を示す実験結果の第1の図である。
図5(A)〜(E)はそれぞれ、被験者の男性14名うち“Sub1”、“Sub11”、“Sub17”、“Sub20”、“Sub27”の識別子が割り当てられた各人に対するPVTテスト実施直後の実験者自身の主観評価結果である。
図5(A)〜(E)において横軸は、試行経過時間を表す。
図5(A)〜(E)において、縦軸は、主観眠気値を表す。主観眠気値は、第1アンケート情報が示す値の1つであって、値が大きいほど被験者は眠いと感じていることを表す。
図5(A)〜(E)の各図は、1日目の実験結果と2日目の実験結果と3日目の実験結果とを示す。
【0069】
図6は、実施形態における第1アンケート情報の一例を示す実験結果の第2の図である。
図6(A)〜(E)はそれぞれ、被験者の男性14名うち“Sub2”、“Sub4”、“Sub6”、“Sub7”、“Sub9”の識別子が割り当てられた各人に対するPVTテスト実施直後の実験者自身の主観評価結果である。
図6(A)〜(E)において横軸は、試行経過時間を表す。
図6(A)〜(E)において、縦軸は、主観眠気値を表す。
図6(A)〜(E)の各図は、1日目の実験結果と2日目の実験結果と3日目の実験結果とを示す。
【0070】
図7は、実施形態における第1アンケート情報の一例を示す実験結果の第3の図である。
図7(A)〜(D)はそれぞれ、被験者の男性14名うち“Sub12”、“Sub19”、“Sub21”、“Sub29”の識別子が割り当てられた各人に対するPVTテスト実施直後の実験者自身の主観評価結果である。
図7(A)〜(D)において横軸は、時間を表す。
図7(A)〜(D)において、縦軸は、主観眠気値を表す。
図7(A)〜(D)の各図は、1日目の実験結果と2日目の実験結果と3日目の実験結果とを示す。
【0071】
図8は、実施形態におけるクラスタリング処理の実行結果の一例を示す実験結果の図である。
図8は、
図5〜
図7に示す実験結果に基づいてBayzian−FDAの手法を用い、クラスタ数k=1〜8で、状態判定装置1がクラスタリングを行った結果を示す。
図8は、
図5〜
図7に示す実験結果に基づいてBayzian−FDAの手法におけるk=1〜8で状態判定装置1がクラスタリングを行った結果、ベイジアン尤度BICがk=2において最小値であったことを示す。Bayzian−FDAにおけるkは、クラスタ数を意味する。
【0072】
k=2において最小値であることは、
図8に示すように、
図5〜
図7の実験結果の被験者が2つのクラスタに分類されることを意味する。
図8は、
図5に示す実験結果の被験者(すなわち、“Sub1”、“Sub11”、“Sub17”、“Sub20”及び“Sub27”の被験者)が2つのクラスタのうちの一方のクラスタに所属することを示す。
図8は、
図6及び
図7に示す実験結果の被験者(すなわち、“Sub2”、“Sub4”、“Sub6”、“Sub7”、“Sub9”、“Sub12”、“Sub19”、“Sub21”、“Sub29”の被験者)が他方のクラスタに所属することを示す。
【0073】
図5から
図7に示す実験結果に基づき所定の装置が機械学習によって推定する状態値の精度は以下の通りであった。一般線形化モデルを用いて誤差項を二項分布として相関係数を算出した場合には、各被験者の状態予測推定の相関係数平均は0.44である値であった。一方、個別のクラスタにおいて同様にクラスタに属する被験者に対し状態予測推定の相関係数を算出した場合には、R
2=0.53であった。このように、個別のクラスタにおいて同様にクラスタに属する被験者に対し状態予測推定の相関係数を算出することで、状態値の推定精度が向上した。
【0074】
図9は、実施形態における状態情報取得処理の実行結果の一例を示す実験結果の第1の図である。
図9は、
図6(C)が示す実験結果に基づいて、状態判定装置1が“Sub6”の被験者に対して状態情報取得処理を実行した結果を示す。
図9は、横軸3日目のPVT試行の経過時間を表す。
図9は、縦軸が眠気値を表す。眠気値は、状態値の1つであって、値が大きいほど眠気が強いことを示す。眠気値はSub6の主観評価値であり、緑線はSub6を除く全被験者から学習した関係式を用いた推定結果を示す。
図9は、状態予測推定の相関係数R
2が0.41であることを示す。
【0075】
図10は、実施形態における状態情報取得処理の実行結果の一例を示す実験結果の第2の図である。
図10は、状態判定装置1が、
図6(C)が示す実験結果の半分の結果を
図6(C)が示す実験結果にさらにくわえて、“Sub6”の被験者に対する状態情報取得処理を実行した結果を示す。
図10は、横軸が3日目のPVT試行を表す。
図10は、縦軸が眠気値を表す。眠気値はSub6の申告値であり、緑線はSub6が属するクラスタ内被験者からSub6を除いた被験者から学習した関係式を用いた推定結果を示す。
図10は、状態予測推定の相関係数R
2が0.57であることを示す。
ここまでで
図9及び
図10についての説明を終了する。
【0076】
図8に示すクラスタのいずれに“Sub6”の被験者が所属するかを判定する所属クラスタ判定処理においては、状態判定装置1は、
図5〜
図7が示す2日目の主観時系列の特徴を部分的に抽出可能なプロトコルを実行した。
【0077】
図8に示すクラスタのいずれに“Sub6”の被験者が所属するかを判定する所属クラスタ判定処理における第2生理情報は、PVTテストに準ずる単純タスクを実行する被験者の複数の日に渡る生理状態を示す情報であった。
PVTテストに準ずる単純タスクにおける第2生理情報は、PVTテストに準ずる単純タスクを実行する被験者の複数の日に渡る生理状態の情報である。PVTテストに準ずる単純タスクは、朝、昼、晩等の日常生活の中で眠気の異なる時間帯に短時間に数回実行された。PVTテストに準ずる単純タスクは、安静状態で実行された。
被験者から取得される第2生理情報は、心電図のHR、CSI、CVI及びHF/(LF+HF)と、脈波と、瞳孔径と、頭部の動きとであった。
【0078】
図8に示すクラスタのいずれに“Sub6”の被験者が所属するかを判定する所属クラスタ判定処理におけるプロトコルは、相関がより強いクラスタに被験者が属すると判定するプロトコルであった。
ここまでで、
図5〜
図10の実験結果の説明を終了する。
【0079】
ここで、
図2の実験結果を取得した際の実験の詳細について説明する。第2生理情報は2分間の安静時の生理活動から以下に示す生理から算出された値を用いた。皺眉筋、大頬骨筋、笑筋の筋電位活動状態(平均活動量、偏差等の活動ゆらぎ)、平均呼吸周波数、周波数の偏差等のゆらぎ、瞬きの頻度、皮膚抵抗水準の平均、偏差、最大、最小値、指先PPGセンサから出力されたデータにおける基線及び振幅の、平均、偏差、最大、最小値、心拍情報における、RRI平均、標準偏差、最大、最小、SSD、NN、Pnn、LF、HF、CVI、CSI等の心拍解析手法を用い情報を取得した。簡易アンケート情報は、BIS/BAS(行動調節)、STAI−trait(不安特性)、STAI−state(不安状態)、IRI(共感)、BDI(抑うつ度)、TAS(失感情)、ERQ/EQ(情動調節)、PSQI(睡眠習慣)、Empathizing Quotient /Systemizing Quotient日本語版を用いた。これら簡易情報を基に決定木を用いてクラスタの推定を実施し、5クラスタでの推定おいて、4つの簡易データがクラスタの推定に寄与する結果を得た。
ここまでで、
図2の実験結果を取得した際の実験の詳細についての説明を終了する。
【0080】
図11は、実施形態の状態判定装置1が判定対象者の状態を判定する精度と、従来の装置が判定対象者の状態を判定する精度とを示す実験結果の一例を示す図である。
図11の横軸は、被験者を表す。
図11の縦軸は、状態予測推定の相関係数R
2の値を示す。
図11は、被験者ごとに、従来の装置における状態予測推定の相関係数R
2の値と、状態判定装置1における状態予測推定の相関係数R
2の値とを示す。
図11は、従来の装置では、状態予測推定の相関係数R
2の平均値が0.45であることを示す。
図11は、状態判定装置1では、状態予測推定の相関係数R
2の平均値が0.51であることを示す。
図11は、個人差はあるものの、大多数の被験者において、従来の装置よりも状態判定装置1の方が、状態予測推定の相関係数R
2の値が大きいことを示す。
【0081】
このように構成された実施形態の状態判定装置1は、予め母集団形成者が提供する第1生理情報及び第1アンケート情報に基づいてクラスタリングされた結果である複数のクラスタのいずれに、判定対象者が所属するかを判定する。状態判定装置1は、判定結果が示すクラスタごとの状態関係情報に基づいて、判定対象者の状態を示す情報である状態情報を取得する。状態判定装置1は、取得された状態情報に基づいて判定対象者の状態を判定する。このように、状態判定装置1は、一次元的な方法によって人の状態を判定することはせず、判定対象者が所属するクラスタに応じた状態式によって判定対象者の状態を判定する。そのため、状態判定装置1は、人の状態の変化の個人差に起因する判定精度の悪化を抑制することができる。
【0082】
このように構成された実施形態の状態判定装置1は、クラスタリング処理、状態関係情報取得処理、所属条件取得処理、所属クラスタ判定処理及び状態情報取得処理を実行する。そのため、このように構成された実施形態の状態判定装置1は、クラスタリング処理に要する時間を必要とする。クラスタリングの手法は、機械学習に要する時間よりも少ないため、クラスタリング処理に要する時間は、機械学習に要する時間よりも少ない。そのため、このように構成された実施形態の状態判定装置1は、機械学習の手法によって判定対象者の状態を判定するまでに要する時間以下の時間で、判定対象者の状態を判定することができる。
【0083】
また、このように構成された実施形態の状態判定装置1は、被更新生理情報及び被更新アンケート情報に基づいて、状態値を算出した後にも、クラスタリング処理を実行する。以下、状態情報を取得した後のクラスタリング処理を、再クラスタリング処理という。再クラスタリング処理は、ステップSS210の処理である。そのため、このように構成された実施形態の状態判定装置1は、再クラスタリング処理の実行後には、再クラスタリング処理の実行前よりも精度よく人の状態を判定することができる。
【0084】
また、このように構成された実施形態の状態判定装置1は、状態情報と判定対象者の第1生理情報とに基づいて、状態関係情報の係数の値を更新する。以下、状態情報を取得した後の状態情報を更新する処理を、状態情報更新処理という。状態情報更新処理は、ステップS209の処理である。そのため、このように構成された実施形態の状態判定装置1は、状態情報更新処理の実行後には、状態情報更新処理の実行前よりも精度よく人の状態を判定することができる。
【0085】
(変形例)
なお、第1生理情報、第2生理情報、第1アンケート情報及び第2アンケート情報は、状態判定装置1の判定の目的となる状態が有意な差として変化する状況において取得された情報であることが望ましい。
例えば、判定の目的となる状態が眠気である場合には、第1生理情報、第2生理情報、第1アンケート情報及び第2アンケート情報は、朝、昼、晩等の日常生活の中で眠気の異なる時間帯に取得されることが望ましい。
また、大きな負荷が与えられると、被験者の生理状態は、大きな負荷によって複雑に変化してしまう場合がある。そのため、第1生理情報及び第2生理情報は、大きな負荷が被験者に与えられた後に取得された情報ではないことが望ましい。例えば、判定の目的となる状態が人の快・不快である場合には、第1生理情報及び第2生理情報と第1アンケート情報及び第2アンケート情報とは、人が快や不快と感じる刺激を提供者が感じたときに取得されることが望ましい。人が快や不快と感じる刺激とは、例えば、画像、音楽、触覚、匂い、味である。また第1生理情報及び第2生理情報と第1アンケート情報及び第2アンケート情報とは、快から不快まで様々な刺激の情報が取得されることが望ましい。またその刺激の負荷は小さな負荷から大きな負荷であっても良い。
【0086】
なお、状態判定装置1の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0087】
なお、第2生理情報は第1生理情報と同じ情報量か、もしくはそれ以下であってもよい。また、第2アンケート情報は第1アンケート情報と同じ情報量か、もしくはそれ以下であってもよい。
なお、所属条件は必ずしも第2生理情報及び第2アンケート情報の両方に基づく条件でなくてもよい。この場合、取得部101は、第2生理情報又は第2アンケート情報のうち、所属条件が基づく情報だけを取得してもよい。すなわち、取得部101は、第2生理情報だけを取得してもよいし、第2アンケート情報だけを取得してもよい。
【0088】
なお、第1更新部109は、状態関係更新部の一例である。なお、状態情報取得部106は、回答推定部の一例である。
【0089】
なお、状態判定装置1は、ネットワークを介して通信可能に接続された複数台の情報処理装置を用いて実装されてもよい。この場合、状態判定装置1が備える各機能部は、複数の情報処理装置に分散して実装されてもよい。例えば、クラスタリング部102及び状態関係情報取得部103とその他の機能部とはそれぞれ異なる情報処理装置に実装されてもよい。
【0090】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。