特開2020-189269(P2020-189269A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立研究開発法人物質・材料研究機構の特許一覧
特開2020-189269可燃性ガス吸着回収材、及び、可燃性ガスの回収方法
<>
  • 特開2020189269-可燃性ガス吸着回収材、及び、可燃性ガスの回収方法 図000004
  • 特開2020189269-可燃性ガス吸着回収材、及び、可燃性ガスの回収方法 図000005
  • 特開2020189269-可燃性ガス吸着回収材、及び、可燃性ガスの回収方法 図000006
  • 特開2020189269-可燃性ガス吸着回収材、及び、可燃性ガスの回収方法 図000007
  • 特開2020189269-可燃性ガス吸着回収材、及び、可燃性ガスの回収方法 図000008
  • 特開2020189269-可燃性ガス吸着回収材、及び、可燃性ガスの回収方法 図000009
  • 特開2020189269-可燃性ガス吸着回収材、及び、可燃性ガスの回収方法 図000010
  • 特開2020189269-可燃性ガス吸着回収材、及び、可燃性ガスの回収方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-189269(P2020-189269A)
(43)【公開日】2020年11月26日
(54)【発明の名称】可燃性ガス吸着回収材、及び、可燃性ガスの回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20201030BHJP
   C10L 3/12 20060101ALI20201030BHJP
   B01D 53/047 20060101ALI20201030BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20201030BHJP
【FI】
   B01J20/26 A
   C10L3/12
   B01D53/047
   B01J20/34 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-95690(P2019-95690)
(22)【出願日】2019年5月22日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「高分子吸着材による可燃性ガス回収技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 泉
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012CA07
4D012CA08
4D012CB04
4D012CD04
4D012CD07
4D012CE03
4D012CF03
4D012CG01
4D012CG05
4D012CH06
4G066AC10B
4G066AC12B
4G066AC28B
4G066AC37B
4G066AC39B
4G066BA09
4G066BA12
4G066BA20
4G066BA36
4G066CA01
4G066CA51
4G066DA05
4G066GA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】随伴ガス等、特に、可燃性ガスと水蒸気とを含有するガスから、可燃性ガスをより簡便に吸着回収可能な可燃性ガス吸着回収材を提供することを課題とする。また、可燃性ガスの回収方法を提供することも課題とする。
【解決手段】粒子径が1.0mm未満の粒子を主成分とし、上記粒子が、ジエン系ゴム、及び、シリコーンゴムからなる群より選択される少なくとも1種のゴム、並びに、上記ゴムの硬化物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、可燃性ガス吸着回収材。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径が1.0mm未満の粒子を主成分とし、
前記粒子が、ジエン系ゴム、及び、シリコーンゴムからなる群より選択される少なくとも1種のゴム、並びに、前記ゴムの硬化物からなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含有する、可燃性ガス吸着回収材。
【請求項2】
前記粒子がシリコーンゴム、及び、シリコーンゴムの硬化物からなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含有する、請求項1に記載の可燃性ガス吸着回収材。
【請求項3】
前記粒子が廃タイヤ粉砕材である、請求項1に記載の可燃性ガス吸着回収材。
【請求項4】
可燃性ガス、及び、水蒸気を含有する混合ガスから前記可燃性ガスを回収するために用いられる請求項1〜3のいずれか1項に記載の可燃性ガス吸着回収材。
【請求項5】
1分子中の炭素数が3以上の炭化水素の回収に用いられる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の可燃性ガス吸着回収材。
【請求項6】
可燃性ガス、及び、水蒸気を含有する混合ガスと請求項1〜5のいずれか1項に記載の可燃性ガス吸着回収材とを接触させ、前記可燃性ガス吸着回収材に前記可燃性ガスを選択的に吸着させた後、減圧して、前記可燃性ガスを回収する、可燃性ガスの回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性ガス吸着回収材、及び、可燃性ガスの回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油及び天然ガスの採掘に伴って算出する随伴ガス、及び、随伴水処理によって生ずるガス(以下、「随伴ガス等」ともいう。)にはプロパン等の可燃性ガスが含有されることが知られている。
【0003】
このような随伴ガス等から可燃性ガスを回収するための装置として、特許文献1には「プロパン及びブタンを含有するガスであって原油の生産に伴って生じる余剰ガスの全部又は一部を昇圧するコンプレッサと、昇圧された前記余剰ガスとスポンジオイルとを気液接触させて前記余剰ガスに含まれるプロパン及びブタンを前記スポンジオイルに溶解させるとともに、前記余剰ガスから炭素数2以下のガスを分離する脱エタン塔と、プロパン及びブタンが溶解した前記スポンジオイルを前記脱エタン塔から排出するスポンジオイル移送管と、前記スポンジオイル移送管を介して前記脱エタン塔と連通しており、前記スポンジオイルからプロパン及びブタンを分離する脱ブタン塔と、前記脱ブタン塔からプロパン及びブタンを含む留分を排出するLPG留分排出管と、前記脱ブタン塔から前記スポンジオイルを排出するとともに、当該スポンジオイルを前記脱エタン塔に返送するスポンジオイル返送管と、を備えるLPG留分回収装置。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−116981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のLPG留分回収装置によればスポンジオイルに溶解させたプロパン及びブタンを脱ブタン塔を用いて分離回収可能であるものの、装置が大掛かりとなりやすく、また、エネルギーコストが大きかった。更に、随伴水処理によって生ずるガスには水蒸気が多く含有されるため、圧縮により凝縮水が生ずる問題があった。
【0006】
上記課題に鑑み本発明は、随伴ガス等、特に、可燃性ガスと水蒸気とを含有するガスから、可燃性ガスをより簡便に吸着回収可能な可燃性ガス吸着回収材を提供することを課題とする。また、本発明は、可燃性ガスの回収方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0008】
[1] 粒子径が1.0mm未満の粒子を主成分とし、上記粒子が、ジエン系ゴム、及び、シリコーンゴムからなる群より選択される少なくとも1種のゴム、並びに、上記ゴムの硬化物からなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含有する、可燃性ガス吸着回収材。
[2] 上記粒子がシリコーンゴム、及び、シリコーンゴムの硬化物からなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含有する、[1]に記載の可燃性ガス吸着回収材。
[3]上記粒子が廃タイヤ粉砕材である、[1]に記載の可燃性ガス吸着回収材。
[4] 可燃性ガス、及び、水蒸気を含有する混合ガスから上記可燃性ガスを回収するために用いられる[1]〜[3]のいずれかに記載の可燃性ガス吸着回収材。
[5] 1分子中の炭素数が3以上の炭化水素の回収に用いられる、[1]〜[4]のいずれかに記載の可燃性ガス吸着回収材。
[6] 可燃性ガス、及び、水を含有する混合物と[1]〜[5]のいずれかに記載の可燃性ガス吸着回収材とを接触させ、上記可燃性ガス吸着回収材に上記可燃性ガスを選択的に吸着させた後、減圧して、上記可燃性ガスを回収する、可燃性ガスの回収方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可燃性ガスと水蒸気とを含有するガスから、可燃性ガスをより簡便に吸着回収可能な可燃性ガス吸着回収材が提供できる。また、本発明によれば、可燃性ガスの回収方法も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ヘキサンに浸漬前のシリコーンゴムの硬化物からなるシート(左)と、上記と同様の硬化物をヘキサンに20分間浸漬したもの(右)の撮影像である。
図2】ヘキサンに浸漬前の加硫ゴムの小片(左)と、同様の加硫ゴムをヘキサンに30分間浸漬したもの(右)の撮影像である。
図3】ポリジメチルシロキサンの硬化物を含有する粒子の走査電子顕微鏡による撮影像である。
図4】ポリジメチルシロキサンの硬化物を含有する粒子へのヘキサンの吸着等温線である。
図5】活性炭へのヘキサンの30℃での吸収等温線である。
図6】NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)の粒子へのヘキサンの吸着等温線である。
図7】ポリジメチルシロキサンの硬化物を含有する粒子からのヘキサンの脱着速度を示す曲線である。
図8】ヘキサンのコロイド分散液からの吸着、回収実験装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
本明細書における基(原子群)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、本発明の効果を損ねない範囲で、置換基を有さないものとともに置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。このことは、各化合物についても同義である。
【0013】
[可燃性ガス吸着回収材]
本発明の実施形態に係る可燃性ガス吸着回収材(以下、「本可燃性ガス吸着回収材」ともいう。)は、粒子径が1.0mm未満の粒子(以下、「特定粒子」ともいう。)を主成分とし、上記粒子が、ジエン系ゴム、及び、シリコーンゴムからなる群より選択される少なくとも1種のゴム、並びに、上記ゴムの硬化物からなる群より選択される少なくとも1種のポリマー(以下、上記ゴム及び硬化物をあわせたポリマーを「ラバー等」ともいう。)を含有する、可燃性ガス吸着回収材である。
【0014】
上記によって本発明の課題を解決できる機序は必ずしも明らかではないが、本発明者は以下のとおり推測している。なお、以下の機序は推測であり、以下の機序以外の機序によって本発明の課題が解決される場合であっても本発明の範囲に含まれるものとする。
【0015】
可燃性ガスの吸着には従来、活性炭が用いられてきた。メタン、及び/又は、エタン等の分子サイズが小さな可燃性ガスでは、活性炭に弱く吸着するため、容易に脱着する。しかし、分子サイズがプロパンより大きくなると、脱着が難しくなる。更に、活性炭では、水が強吸着するため、湿度が高い条件下での(言い換えれば、対象ガスが水蒸気を含有する場合の)可燃性ガスの吸着は困難だった。
【0016】
活性炭以外にも、ジビニルベンゼン等の架橋モノマーから得られる疎水性の高分子多孔体、並びに、ゼオライト、及び、シリカゲル等の無機系の吸着材も知られているが、これらも水と強吸着してしまい、可燃性ガス吸着回収材には適用できなかった。
【0017】
本発明者は、可燃性ガスと水蒸気とを含有する混合ガス中において可燃性ガスを選択回収可能な材料を鋭意検討してきた。その結果、特定粒子を主成分とする可燃性ガス吸着回収材であれば所望の特性を満足することを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
本発明の実施形態に係る可燃性ガス吸着回収材は、主成分として特定粒子を含有する。特定粒子は、ラバー等を含有するため、疎水性が高く、混合ガス中の可燃性ガスを選択的に吸着可能である。
また、特定粒子は、凝縮性(凝縮性の定義については後述する)の可燃性ガスを取り込んで、言い換えれば、可燃性ガスを高分子ネットワーク中に溶かし込んで、保持することができる。特定粒子は可燃性ガスを吸収することで体積が膨潤するため、単位質量あたりの可燃性ガスの吸着量も大きくなりやすい。
【0019】
一般に、ラバー等が凝縮性の可燃性ガス(例えば、ヘキサン等)を吸収して膨潤することは、古くから知られていた。しかし、これはラバー等の「劣化」として捉えられており、可燃性ガスの回収のための吸着性能として利用されることはなかった。
本発明者は、その理由は2つあると考えている。一つは、可燃性ガスの吸着速度、脱着速度が遅く、吸脱着に基づく分離プロセスを設計することが困難な点と推測される。もう一つは、ラバー等を充填した回収容器では、ラバー等が可燃性ガスを吸収すると、体積が等方的に大きくなり、回収容器の下部に内面に圧力がかかり、更なる体積膨張(膨潤)を阻害してしまい、十分な吸着量が得られない点と推測される。
【0020】
一方、本可燃性ガス吸着回収材は粒子径が1.0mm未満の特定粒子を主成分とするため、比表面積がより大きくなり、可燃性ガスの吸着及び脱着がより高速となったものと推測される。
また、粒子径が1.0mm未満であるため、特定粒子はより優れた流動性を有し、膨潤による体積変化を容易に緩和できたものと推測される。以下、本可燃性ガス吸着回収材の構成について詳述する。
【0021】
〔特定粒子〕
本可燃性ガス吸着回収材は主成分(質量基準の含有量が最も多い成分)として特定粒子を含有する。本可燃性ガス吸着回収材中における特定粒子の含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する可燃性ガス吸着回収材が得られる点で、一般に可燃性ガス吸着回収材の全質量に対して、50〜100質量%が好ましい。なお、本可燃性ガス吸着回収材は、特定粒子の1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有していてもよい。本可燃性ガス吸着回収材が、2種以上の特定粒子を含有する場合には、その合計含有量が上記数値範囲内であることが好ましい。
【0022】
特定粒子は、粒子径が1.0mm未満の粒子である。なお、本明細書において、粒子径とは、球相当の構造であれば球相当径を意味し、直方体様の構造であれば、対向する面の最短距離を意味する。
【0023】
粒子の粒子径が1.0mm未満であると、比表面積がより大きくなり、また、膨潤による体積変化を容易に緩和可能である。
【0024】
ここで、ラバー等の膨潤について考える。例えば、1cm角の立方体のラバー等がある場合、可燃性ガス(例えばヘキサン等)を吸収すると膨潤するのであるが、これには、可燃性ガスがラバー等の内部に溶け込む必要がある。気相中のヘキサン濃度が高い場合、可燃性ガスはラバー等の内部に拡散溶解するが、これが直ぐに膨潤に繋がる訳ではない。
これは、表面が膨潤しようとしても、内部がこれを阻止するためである。このためラバー等の膨潤時間は、可燃性ガスが内部に到達する時間でほぼ決まっていると考えてよい。
【0025】
このため、特定粒子の粒子径は、1.0mm未満であればよく、回収対象の可燃性ガスの拡散速度に応じて適宜定めればよい。
【0026】
特定粒子の粒子径は1.0mm未満であればよいが、減圧による迅速な回収を行うためには、100μm以下であることが好ましく、30μm以下がより好ましい。
下限としては特に制限されないが、より優れたハンドリング性を有する点で、1.0μm以上が好ましい。
特定粒子はそのまま用いてもよいし、混合ガスを透過する織布又は不織布の袋等に入れて使用してもよい。
【0027】
特定粒子は、ジエン系ゴム、及び、シリコーンゴムからなる群より選択される少なくとも1種のゴム、並びに、上記ゴムの硬化物からなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含有する。なお、本明細書においてゴムとは常温常圧下でゴム状であって、化学的な硬化処理(典型的には加硫、及び、架橋等)が行われていないポリマー(高分子化合物)を意味する。
なお、特定粒子は、ラバー等の1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有していてもよい。特定粒子が、2種以上のラバー等を含有する場合には、その合計含有量が上記数値範囲内であること、即ち、50〜100質量%であることが好ましい。
【0028】
ジエン系ゴムとしては特に制限されないが、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、及び、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0029】
シリコーンゴムとしては特に制限されないが、以下の平均組成式で表される化合物が挙げられる。
SiO(4−a)/2
上記式中Rは互いに同一でも異なってもよい炭素数1〜10の非置換、又は、置換の一価の炭化水素基であり、aは1.9〜2.1の正数である。Rとしては特に制限されないが、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロアルキル基(シクロヘキシル基等)、アルケニル基、ビニル基(アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、及び、ヘキセニル基)、アリール基(フェニル基、及び、トリル基等)、並びに、これらの基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、又は、シアノ基等で置換された基(クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、及び、シアノエチル基等)等が挙げられる。なかでも、より優れた本発明の効果が得られる点で、Rがメチル基であることが好ましい。
【0030】
上記シリコーンゴムの分子鎖は直鎖状が好ましい。シリコーンゴムの平均重合度としては特に制限されないが、1,500〜10,000が好ましい。重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の数平均重合度として求められる。
【0031】
特定粒子が上記ゴムの硬化物を含有する場合、硬化方法としては特に制限されないが公知の加硫剤、及び、硬化剤等を用いて硬化する方法が挙げられる。
加硫剤としては、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、及び、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物も使用できる。また、公知の加硫促進剤を併用してもよい。
また、公知の加硫剤としては、例えば、硫黄、及び、4,4′-ジチオジモルホリンジモルホリン等が挙げられる。硫黄としては、例えば、粉末硫黄、沈降性硫黄、高分散性硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等を挙げることができる。
【0032】
また、硬化剤としては、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金族金属触媒との組み合わせからなる付加反応用硬化剤、及び、上記の有機過酸化物等が挙げられる。
【0033】
白金族金属触媒としては、白金元素単体、白金化合物、白金複合体、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、塩化白金酸のアルデヒド化合物、塩化白金酸のエーテル化合物、各種オレフィンとのコンプレックス等が挙げられる。白金族金属触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造としては、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状構造(樹脂状)等が挙げられる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、及び、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
ラバー等におけるガスの拡散速度は、吸脱着速度に大きく影響する。
ヘキサン等の比較的分子量の大きな可燃性ガスの拡散速度に関するデータは知られていないが、酸素などの小分子に対しては、ポリジメチルシロキサンのラバー等が、天然ゴムの22倍のガス透過性を示すことが知られている。これと比較して、ブタジエンゴムのガス透過性は0.8倍程度、イソプレンゴムのガス透過性は天然ゴムと同じ程度となる。
【0036】
即ち、吸脱着速度の観点からは、ポリオルガノシロキサン(特にポリジメチルシロキサン)を含むラバー等が特に優れている。ポリジメチルシロキサンのラバー等は、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)を含有するラバー等と比較すると、ガス透過性が100倍以上になる場合もある。
一方で、NBRであっても、球相当径を30μm以下とした場合には、優れた吸着性が得られる。
【0037】
石油及び天然ガスの成分として含まれる可燃性ガスは、一般に疎水性である。このため、ラバー等は疎水性であることが好ましい。ラバー等は一般に透水性があり、製造工程において十分に乾燥していないものは、数%の水を含んでいる。特に天然ゴムは、水の含有量が大きい。
【0038】
可燃性ガスの吸着回収材は、従来の乾燥法方法によって水を除去したものを使用するのが好適である。但し、幾分の水分を含む場合でも、可燃性ガスの吸脱着を繰り返すことで、内部の水分が減少し、ラバーの素材自体が疎水性に変化していく。
【0039】
なかでも、ポリオルガノシロキサン(特にポリジメチルシロキサン)を含むラバー等は、含水率が1%以下になる場合があり、水に対する耐久性も高い。ポリジメチルシロキサンを主成分として含有する粒子は、天然ゴム等を主成分として含有する粒子と比較して高価であるが、生産量の拡大とともに価格も低下するものと考えられる。
【0040】
また、粒子は、廃タイヤ粉砕材であることも好ましい。
廃タイヤ粉砕材としては特に制限されないが、トラック、及び、自家用車等に用いられるジエン系ゴム(ポリブタジエン、及び、ポリイソプレン等)の硬化物を含有する廃タイヤ等を粉砕した物が使用できる。
廃タイヤ粉砕材は、ビードワイヤー、及び、スチールコード等の金属製の素材;ポリエステルコード等の繊維状の素材;等の補強材を廃タイヤから取り除き、粉砕されたものが好ましい。上記補強材を取り除くことにより、可燃性ガスの吸着量がより多くなる。
なお、典型的には、金属製、及び、樹脂製の補強材は磁石、又は、ブロー法により取り除かれる場合が多い。
【0041】
粒子が廃タイヤ粉砕材である場合、より優れた本発明の効果が得られる機序は必ずしも明らかではないが、本発明者は以下のとおり推測している。
廃タイヤ粉砕材は、カーボンブラックを含有する。このカーボンブラックにより、廃タイヤ粉砕材は優れた吸着性能を有するものと推測される。
カーボンブラックは、タイヤの力学的強度を上げるために用いられていることが多いが、これにより、ロール粉砕等の技術により1.0mm未満に粉砕化することが容易になる。
また、カーボンブラックが含有していることにより、ジエン系ゴムの硬化度が低くても形状維持が可能になる。即ち、カーボンブラックを含有していることで、柔軟かつ可燃性ガスを吸収しやすいジエン系ゴムを粉砕化することができ、その結果として可燃性ガスの吸収及び回収性能に優れた粒子となるものと推測される。
【0042】
なお、ポリブタジエン、及び、ポリイソプレンを含むラバー等を含有する粒子は、廃タイヤを粉砕したものでもよい。
【0043】
例えば、シリコーンゴム(特にポリジメチルシロキサン)を含有する粒子の場合、例えば、可燃性ガスの一つであるヘキサンを吸収して体積が200%以上膨潤する。シリコーンゴムを含有する粒子の密度は、0.93〜1.0g/ml程度であり、ヘキサンの密度は、0.655g/ml程度である。
このため、シリコーンゴムを含有する粒子は、その質量の1.5倍程度のヘキサンを吸収すると考えてよい。但し、シリコーンゴムの硬化物は、その質量の1.0倍程度のヘキサンを吸収し、更に架橋密度が高いラバー等は、その質量の0.5倍程度のヘキサンを吸収する。
一般にシリコーンゴムを含有する粒子状のラバー等は、架橋密度がより高いため、ヘキサンの吸着量は、その質量の0.5倍程度である。
【0044】
〔用途〕
本可燃性ガス吸着回収材は、可燃性ガスを選択的に吸着し、容易に脱着することができ、可燃性ガスを回収することができる。一般に、可燃性ガス吸着回収材から可燃性ガスを脱着する際には、気化熱を必要とするため、可燃性ガス吸着回収材の温度が幾分下がる。但し、温度が下がる場合も、脱着速度の低下は僅かであり、本可燃性ガス吸着回収材は可燃性ガスの吸着回収に用いることができる。
【0045】
一方、活性炭等の水を吸収する吸着材では、可燃性ガス、及び、水蒸気の混合ガスから可燃性ガスを吸着回収する場合、可燃性ガスの分圧が小さいと大量の水を吸収してしまう。水が吸着すると脱着時に吸着材に含まれる水が凍結するため、減圧下での水の脱着が非常に遅くなり、結果的に可燃性ガス吸着回収材に水が残されてしまう場合が多い。
【0046】
本可燃性ガス吸着回収材は、可燃性ガス、及び、水蒸気の混合ガスからの可燃性ガスの選択的な回収に、特に有用である。
このような混合ガスは、数10ppm〜数万ppmの可燃性ガスを含んだ随伴水に可燃性ガス、又は、不燃性ガスを吹き込むことで発生する。この混合ガスを可燃性ガス吸着回収材に接触させることで、可燃性ガスが可燃性ガス吸着回収材に吸収できる。
【0047】
[可燃性ガスの回収方法]
本発明の実施形態に係る可燃性ガスの回収方法は、可燃性ガス、及び、水を含有する混合ガスとすでに説明した可燃性ガス吸着回収材とを接触させ、可燃性ガス吸着回収材に可燃性ガスを選択的に吸着させた後、減圧して、可燃性ガスを回収する、可燃性ガスの回収方法である。
【0048】
混合ガスと本可燃性ガス吸着回収材とを接触させる時間は、特に制限されないが、随伴ガス等における可燃性ガスの含有量によって適宜定めればよい。接触させる時間は、一般に、20時間以内であることが好ましく、2時間以内であることがより好ましい。なお、上記接触の時間を2時間とした場合、脱着時間を20分とすると、一日に10回程度の吸脱着操作を行うことができる。
【0049】
本回収方法の回収対象とする可燃性ガスとしては特に制限されず、1分子中の炭素数が1以上の可燃性ガスが挙げられる。なかでも、1分子中の炭素数が3以上の炭化水素は、備蓄や運搬が容易であり、好ましい。特に、炭素数が5以上の炭化水素は、ナフサとしての利用価値が大きく、回収することにより、資源としての有効利用が可能となる。
炭化水素としては脂肪族炭化水素、及び、芳香族炭化水素が挙げられる。脂肪族炭化水素としてはエタン、プロパン、ペンタン、及び、ヘキサン等が挙げられる。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、及び、キシレン等が挙げられる。
【0050】
回収される可燃性ガスとしては、特に制限されないが、常温・常圧で液体であるペンタン異性体、及び、1分子中の炭素数が6以上の炭化水素がより好ましい。しかし、低温又は高圧の条件下では、エタン、プロパン、及び、ブタン異性体の回収にも本回収方法は有効であり、高温、及び/又は、低圧の条件下では、BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)等の芳香族炭化水素の回収にも有効である。
【0051】
可燃性ガスから炭素数3以上の炭化水素を除去できれば、活性炭等を利用するPSA(圧力変動吸着)技術、あるいはセラミックス膜によるガス分離プロセスでの目詰まりの問題が解決され、これらの長期連続運転が可能となる。また、凝縮性の炭化水素を除去することで、地下への圧入が容易となり、温室効果ガスの排出削減につながる。
【0052】
本可燃性ガス吸着回収材は、気相中の可燃性ガスを回収するために、特定粒子を吸着材として用いる。この吸着材は、活性炭などの従来のガス吸着材と比較して、吸着力が弱く、再生が容易であるだけでなく、可燃性ガスの回収に利用できる。
【0053】
可燃性ガスの回収の適用例としては、数10ppm〜数万ppmという幅広い範囲で可燃性ガスを含む随伴水が挙げられる。このような随伴水は、減圧することで水蒸気、及び、可燃性ガスを含有する混合ガスを発生する。したがって、これを冷却すると水蒸気が分離されるが、同時にペンタン、及び、ヘキサン等の比較的高沸点の可燃性ガス成分も凝縮する。本回収方法によれば、このような凝縮性の可燃性ガス(水分と分離しにくい可燃性ガス)の回収に好適である。なお、ここでの凝縮性は、常圧における凝縮性という訳ではない。低温で高圧の条件下では、メタン、エタン、及び、プロパン等の可燃性ガスも凝縮する。
【0054】
常圧にまで減圧した随伴水中にも、ペンタン及びヘキサン等の高沸点の可燃性ガスが分散しており、メタンや窒素ガス等をバブリングすることで、これを除去する。本回収方法は、このようなプロセスで発生する水蒸気及び可燃性ガスを含有する混合ガスから可燃性ガスを回収するのにも適している。
【0055】
減圧して可燃性ガスを回収(脱着)する方法としては特に制限されないが、減圧ポンプにより減圧する方法が適用できる。
減圧度は、回収対象の可燃性ガスの量、及び/又は、蒸気圧により適宜調整すればよい。例えば、常圧で可燃性ガスを吸着させた場合は、20kPa程度に減圧すればよい。
【0056】
また、脱着に必要な時間は、回収対象の可燃性ガスの量、及び/又は、蒸気圧にもより適宜調整すればよい。具体的には、30分以内であることが好ましく、20分以内であることがより好ましい。
なお、回収の際には、本可燃性ガス吸着回収材を加熱してもよい。
【0057】
ところで、随伴水処理だけでなく、可燃性ガス、及び、水蒸気、並びに、二酸化炭素等の不燃性ガス成分を含有する混合ガスは、様々なプロセスで生じている。
天然ガス、及び/又は、随伴ガスを利用する化学プラントでは、一般に、種々の工程において減圧と圧縮による成分の分離が行われており、その都度、可燃性ガスと水(特に水蒸気)との混合物が生じている。本可燃性ガス吸着回収材によれば、このような混合物から可燃性ガスを回収することもできる。
【0058】
例えば、二酸化炭素を分離するアミンガス除去プロセスが挙げられる。
一般に、メタンと二酸化炭素とを分離するためにアミン系の液状の吸収剤が用いられるが、この際、水、及び、凝集性の可燃性ガスも一緒に吸収される。この吸収剤を再生するために吸収材を加熱、減圧すると、水蒸気、及び、可燃性ガスを含有する混合ガス(二酸化炭素を更に含有する場合が多い)が発生する。本可燃性ガス吸着回収材は、上記の混合ガスから可燃性ガスを回収できる。
【0059】
また、本可燃性ガス吸着回収材は、タンカー等から発生する揮発性ガスにも適用できる。化学プラントにおけるVOC(Volatile Organic Compounds)の回収、排水処理に関連した有機溶媒の回収にも適用できる。ガソリンスタンドにおけるガソリンベーパーの回収にも適用できる。更に、本可燃性ガス吸着回収材は、PSA(Pressure Swing Adsorption)用の充填剤としても利用できる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0061】
[参考例1]
参考例1として、ポリジメチルシロキサンを硬化させた硬化物が、ヘキサンを吸収して著しく膨潤することを示すために、膨潤度と膨潤速度とを評価した。
試料としては、ポリジメチルシロキサンを主成分とするシリコーンゴムの硬化物からなるシート(1mm×100mm×100mm)を用いた。
上記試料を適切なサイズに切断し、室温でヘキサンに浸漬して、膨潤度を評価した。
ヘキサンに浸して10分後、35mmのシートの長辺が49mmになり、20分後に51mmとなり、その後は、サイズに変化はなかった。図1には、浸漬前のシートとヘキサンに20分間の浸漬したシートの撮影像を示す。
図1の結果から、1辺が1.457倍になっていることから、試料は、体積としては3倍以上となっており、200%以上膨潤していることがわかった。
【0062】
[参考例2]
参考例2として、天然ゴムを硬化させた硬化物(加硫ゴム)が、ヘキサンを吸収して著しく膨潤することを示すために、輪ゴムを1片1mmの立方体に切断し、室温でヘキサンに30分間浸漬して、膨潤度を評価した。
【0063】
図2には、浸漬前の輪ゴムと、ヘキサンに30分間の浸漬した輪ゴムの撮影像を示す。
図2の結果から、ヘキサンに浸して30分後、試料が占める体積が倍以上になっており、100%以上膨潤している。なお、試料の膨潤度は、ヘキサンに浸漬前後のそれぞれの試料に、1kg/cmの圧力を与えて評価している。圧力をかけたままヘキサンに浸漬しても10%程度しか膨潤が起こらない。これは、試料が膨潤することで、シリンダーの内壁に圧力がかかり、摩擦抵抗が大きくなるからである。しかし、天然ゴムの硬化物では、球相当径を小さくすることで、この摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0064】
[実施例1]
実施例1として、ポリジメチルシロキサンの硬化物を含有する粒子(信越化学工業株式会社製「KMP−598」、直鎖状のポリジメチルシロキサンを架橋したもの)が、可燃性ガスを吸収し、減圧により脱着することを示すために、ポリジメチルシロキサンの硬化物を含有する粒子を用いて、ヘキサンの気相からの吸着実験を行った。図3には、上記粒子の走査電子顕微鏡による撮影像を示す。粒子は、球形に近く、その球相当径は、3〜30マイクロメートルの範囲だった。
【0065】
この試料のヘキサンの25℃での吸着等温線を図4に示した。
図4には、吸着と脱着のそれぞれのプロセスにおける吸着量を飽和蒸気圧からの相対圧力でプロットしてある。例えば、吸着プロセスでは、相対圧力が0.9005の場合、1000mgのラバーが457.6mgのヘキサンを吸収している。脱着プロセスでは、相対圧力が0.8814の場合、1000mgのラバーが446.0mgのヘキサンを吸収している。この結果が示すことは、上記粒子が、ガス状態のヘキサンに対して優れた吸収特性を有することである。
【0066】
なお、この吸着実験では、平衡時間(即ち、吸着平衡に達すると仮定した時間)を1000秒としている。上記粒子へのガス状態のヘキサンの吸着速度は、吸着平衡の近くでは、非常にゆっくりとなるため、1000秒という時間を設定することで、吸着平衡に至ったと見なしている。
【0067】
このことは、3〜30マイクロメートルの範囲の球相当径であれば、17分で0.45wt%のヘキサンを吸着できることを示しており、吸着速度が吸着材として利用できる速度であることを示している。
更に図4の吸着等温線は、脱着プロセスにおける相対圧力が0.2135の場合、38.5mgのヘキサンを吸着しており、相対圧力が0.8814の場合より400mg以上小さいことを示している。
即ち、相対圧力を変えることで、ヘキサンが回収できることを示している。図4のようなブロードな吸着等温線は、ガス状態のヘキサンの吸着がヘンリー型の吸着であることを示している。即ち、圧力が増加すると吸着量も増加する。ヘンリー型の吸着は、上記粒子が、室温でガラス転移温度以上の状態にあり、ゴム状態であることを意味する。このような吸着は、従来のガラス(固体)状態の多孔体への吸着等温線とは全く異なる。
【0068】
[参考例3]
参考例3として、図5に活性炭へのヘキサンの30℃での吸収等温線を示した。図5の横軸には、ヘキサンの相対圧力を、縦軸には、ヘキサンの吸着量を標準状態でのヘキサンの体積で示した。図4と比較した場合、活性炭へのヘキサンの吸着は、非常に低い相対圧力で起こっていることが分かる。このことは、活性炭では、圧力を非常に下げないと、ヘキサンが脱着せず、常温ではヘキサンの回収ができないことを示している。
【0069】
[実施例2]
実施例2として、ジエン系ゴムを含有する粒子が、可燃性ガスを吸収し、減圧により脱着することを示すために、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)の粒子(JSR株式会社製「PN30A」)のヘキサンの気相からの吸着実験を行った。なお、NBRはアクリロニトリルの含有量が35%であり、耐油性のゴムであることから、ブタジエンの多くがアクリロニトリルと共重合している。
走査電子顕微鏡による観察から、上記粒子の球相当径は、400マイクロメートルであることが分かった。
【0070】
この試料のヘキサンの25℃での吸着等温線を図6に示した。吸着プロセスでは、相対圧力が0.901の場合、1000mgのラバーが59.0mgのヘキサンを吸収している。脱着プロセスでは、相対圧力が0.8609の場合、1000mgのラバーが55.8mgのヘキサンを吸収している。
この結果が示すことは、NBR粉末が、ガス状態のヘキサンに対して吸収特性を有することである。但し、実施例1と比較して、吸着量は、12〜13%程度しかない。
【0071】
吸着量が小さい理由としては、一桁以上粒子径が大きく、1000秒の平衡時間(吸着平衡に達すると仮定した時間)では、ヘキサンが十分に吸着しないことが考えられる。また、耐油性の粒子であり、ヘキサンによる膨潤の程度が小さいことも理由となる。しかし、NBR中のポリブタジエンの含有量を増やし、粉末の球相当径を増やすことで、吸収速度と吸収量とが大きくなることは、容易に予想できる。
【0072】
[実施例3]
実施例3として、球相当径400マイクロメートルの廃タイヤの粉末(東洋ゴムチップ株式会社製「ゴム粉末#2500」)が、可燃性ガスの吸収特性を示すために、ヘキサン蒸気の吸着実験を行った。
廃タイヤ粉砕材としては、天然ゴムを質量比で25%以上含有するものを用いた。25℃の飽和ヘキサン蒸気に5時間晒すと、1gの廃タイヤ粉砕材が487mgのヘキサンを吸収した。この結果、廃タイヤは、ヘキサン吸着材として、利用可能なことが明らかとなった。廃タイヤ粉砕材の球相当径を小さくすることで吸収速度が大きくなることは、容易に予想できる。
【0073】
[実施例4]
実施例4として、ポリジメチルシロキサンの硬化物を含有する粒子が、可燃性ガスの回収に利用できることを示すために、吸着速度と脱着速度を評価した。粒子としては、球相当径が、3〜30マイクロメートルのものを用いた。まず、粒子を25℃の飽和ヘキサン蒸気に2時間晒した。その結果107.88gの粒子が、47.85gのヘキサンを吸収した。1g当たりの吸収量は、444mgであり、先の実施例3の吸着量よりやや小さかった。
【0074】
図7には、47.85gのヘキサンを吸収した上記粒子を実効排気量135L/minの油回転ポンプで乾燥した場合の脱着量をグラフ化した。脱着量は、3分間の減圧後に計量した。この結果、上記粒子に吸着したヘキサンは、30分以内に90質量%以上が脱着することが分かる。
【0075】
[実施例5]
実施例5として、水蒸気と可燃性ガスとの混合ガスから、可燃性ガスを選択的に吸着、回収できることを示すために、ヘキサンのコロイド分散液に空気をバブリングし、気相に蒸発したヘキサンと水蒸気との混合ガスからの吸着実験を行った。
【0076】
図8には、実施例5の実験方法を模式的に示した。まず、超音波照射によりヘキサンコロイドの10000質量ppm分散水溶液を調製し、必要に応じて希釈することで、ヘキサンのコロイド分散液を調製した。
一方、吸着材カラムには、ポリジメチルシロキサンの硬化物を含有する粒子(上記と同様のもの)を所定量封入した。ここでは、粒子が飛散しないように、ナイロン製の布に包んで実験を行った。
【0077】
吸着プロセスでは、吸着材カラム内の空気をコロイド分散液の水槽の中に送ってバブリングさせ、気相に蒸発してきたヘキサンと水蒸気とを吸着材カラムに戻した。この操作を所定時間行うことで、粒子にヘキサンを吸着させた。バブリングには、実効排気速度60L/minのダイヤフラム式ドライ真空ポンプを用いた。
【0078】
ヘキサンを吸着させた後、ヘキサンのコロイド分散液に繋がるガスバルブを閉じ、回収プロセスのバルブを開けることでヘキサンを凝縮器に導入し、回収量を計測した。
ヘキサンの回収の一つの方法は、減圧ポンプを用いて吸着材カラム内の圧力を低下させ、揮発するヘキサンを減圧ポンプの手前に設置した「冷却器」で捕捉することである。
ヘキサンの回収のもう一つの方法は、減圧ポンプを用いて吸着材カラム内の圧力を低下させ、揮発するヘキサンを減圧ポンプの後方に設置した「コンプレッサ」で液化することである。
実施例5では、ヘキサンの回収量が少ないため、前者の冷却器(今回は、液体窒素トラップ)で捕捉することで、吸着材によって回収できる重量を評価した。その結果を表1に示した。
【0079】
【表1】
【0080】
表1の実験番号1では、ヘキサン濃度を10000ppmとしており、ヘキサンの回収効率は、74.3%であった(いずれも質量基準)。この実験では、ヘキサン濃度が高いため、小型の水槽(6.5L)を用いた。小型の水槽では、水槽と吸着材カラムの距離が近く、吸着材カラムへの水の混入(0.5g)が確認された。
一方、表1の実験番号2から実験番号5では、大型の水槽を用いており、この場合は、水は、全く回収されていない。即ち、ヘキサンの選択的な回収が可能であった。実験番号2では、大型の水槽に繋がるバルブを閉めずに吸着槽のリークを行ったため、吸着したヘキサンの一部が脱着し、回収効率が下がっている。
実験番号3では、吸着材を入れずに実験を行っているが、この場合は、ヘキサンは回収されなかった。大型の水槽を用いて、50ppm、20ppmのヘキサンコロイド溶液からの回収も検討したが、回収効率は、それぞれ33.0%(実験番号4)、18.3%(実験番号4)であった。20ppmのヘキサン濃度でもヘキサンが回収され、水の回収がないことは、本可燃性ガス吸着回収材が低濃度の可燃性ガスを含む水からでも、可燃性ガスを選択的に回収できることを示している。
なお、ヘキサンの回収率は、図8に示した回収システムを改良することで、向上させることが可能であり、表1のデータは、一例を示しているに過ぎない。例えば、コロイド分散液の水槽のシール方法、ヘキサンを含むガスの輸送に用いた素材(塩ビチューブ等)の気密性の向上、コロイド分散液の容量、及び、ヘキサンの揮発方法を改良することによって回収効率は高くなる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2019年6月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
このことは、3〜30マイクロメートルの範囲の球相当径であれば、17分で45wt%のヘキサンを吸着できることを示しており、吸着速度が吸着材として利用できる速度であることを示している。
更に図4の吸着等温線は、脱着プロセスにおける相対圧力が0.2135の場合、38.5mgのヘキサンを吸着しており、相対圧力が0.8814の場合より400mg以上小さいことを示している。
即ち、相対圧力を変えることで、ヘキサンが回収できることを示している。図4のようなブロードな吸着等温線は、ガス状態のヘキサンの吸着がヘンリー型の吸着であることを示している。即ち、圧力が増加すると吸着量も増加する。ヘンリー型の吸着は、上記粒子が、室温でガラス転移温度以上の状態にあり、ゴム状態であることを意味する。このような吸着は、従来のガラス(固体)状態の多孔体への吸着等温線とは全く異なる。