特開2020-18954(P2020-18954A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-18954消泡剤、これを含む樹脂水分散体及び水溶性樹脂水溶液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-18954(P2020-18954A)
(43)【公開日】2020年2月6日
(54)【発明の名称】消泡剤、これを含む樹脂水分散体及び水溶性樹脂水溶液
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/04 20060101AFI20200110BHJP
   C08G 65/28 20060101ALN20200110BHJP
【FI】
   B01D19/04 B
   B01D19/04 A
   C08G65/28
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-142272(P2018-142272)
(22)【出願日】2018年7月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】松村 陽平
(72)【発明者】
【氏名】田中 優己
(72)【発明者】
【氏名】平川 剛
【テーマコード(参考)】
4D011
4J005
【Fターム(参考)】
4D011CB01
4D011CB02
4D011CB03
4D011CB04
4D011CB06
4D011CB08
4D011CC06
4D011CC07
4J005AA04
4J005AA12
4J005BD02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水性発泡液(樹脂水分散体、水溶性樹脂水溶液等)に適用しても安定して優れた消泡性能を示す消泡剤の提供。
【解決手段】特定の化学式で表される炭素数1〜25のアルコ−ルのオキシアルキレン基、グリシドールの反応残基、アルキルグリシジルエーテルの反応残基又はアルケニルグリシジルエーテルの反応残基の1〜100の付加物からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリエーテル化合物を含有してなり、比重が0.985〜1.010である消泡剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物(A1)、式(2)で表される化合物(A2)、式(3)で表される化合物(A3)及び式(4)で表される化合物(A4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリエーテル化合物(A)を含有してなり、
比重(25℃)が0.985〜1.010であること特徴とする消泡剤。
【化1】
は炭素数1〜25の活性水素化合物の反応残基、R及びRは炭素数1〜24の1価の有機基、Rは炭素数1〜24の2価の有機基、AO及びOAは炭素数2〜18のオキシアルキレン基、グリシドールの反応残基、炭素数4〜18のアルキルグリシジルエーテルの反応残基又は炭素数5〜18のアルケニルグリシジルエーテルの反応残基を表し、nは1〜100の整数で一分子中に複数のnが存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよく、sは1〜10の整数、pは0〜10の整数、qは0〜9の整数、rは0〜9の整数、mは0〜9の整数、p+rは1〜10の整数、p+q+rは1〜10の整数、p+q+r+mは2〜10の整数である。
【請求項2】
ポリエーテル化合物(A)の1重量%イオン交換水溶液での曇点が20℃以下である請求項1に記載の消泡剤。
【請求項3】
さらにシリカ微粒子(B)を含み、ポリエーテル化合物(A)の重量に基づいて、シリカ微粒子(B)の含有量が0.1〜25重量%である請求項1又は2に記載の消泡剤。
【請求項4】
さらに脂肪酸、脂肪酸エステル、アルコール及び鉱油からなる群より選ばれる少なくとも1種の疎水性液体(C)を含み、疎水性液体の20℃での粘度が5000mPa・s以下である請求項1〜3のいずれかに記載の消泡剤。
【請求項5】
疎水性液体(C)の含有量が、ポリエーテル化合物(A)の重量に基づいて、1〜50重量%である請求項4に記載の消泡剤。
【請求項6】
さらに、ワックス及び固体アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機核剤(D)を含み、有機核剤(D)の融点が少なくとも50℃である請求項1〜5のいずれかに記載の消泡剤。
【請求項7】
有機核剤(D)の含有量が、ポリエーテル化合物(A)の重量に基づいて、0.1〜10重量%である請求項6に記載の消泡剤。
【請求項8】
請求項1〜7に記載の消泡剤と水性媒体(E)とを含むことを特徴とする消泡剤組成物。
【請求項9】
請求項1〜7に記載の消泡剤と水性媒体(E)とを含み、水性媒体(E)の含有量がポリエーテル化合物(A)の重量に基づいて、50〜900重量%であることを特徴とするエマルション消泡剤。
【請求項10】
樹脂と、水と、請求項1〜7のいずれかに記載の消泡剤、請求項8に記載の消泡剤組成物又は請求項9に記載のエマルション消泡剤とを含むことを特徴とする樹脂水分散体。
【請求項11】
水溶性樹脂と、水と、請求項1〜7のいずれかに記載の消泡剤、請求項8に記載の消泡剤組成物又は請求項9に記載のエマルション消泡剤とを含むことを特徴とする水溶性樹脂水溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消泡剤、これを含む樹脂水分散体及び水溶性樹脂水溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
「一般式{RO(AO)n}mX (ただし式中Rは炭素数8〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基又はアルキルフェニル基を表し、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン鎖の1単位を表し、nは1〜30、mは1〜3の整数をそれぞれ表し、Xは炭素数1〜6の1〜3価のカルボン酸残基を表し、該残基が多価カルボン酸の場合には該残基はカルボキシル基、その塩又はそのエステルである)99.5〜70重量部と、0.5〜30重量部の炭化水素系ワックス、疎水性シリカ、高級脂肪酸アミド及びオルガノポリシロキサンの内から選ばれた一種以上の疎水性で、かつ粒径30μm以下の微粒子固体を含有する消泡剤組成物」が知られている(特許文献1の請求項2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−68401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の消泡剤を水性発泡液(樹脂水分散体、水溶性樹脂水溶液等)に適用すると、消泡性能が不十分であるという問題がある。
本発明の目的は、水性発泡液(樹脂水分散体、水溶性樹脂水溶液等)に適用しても、安定して優れた消泡性能を示す消泡剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の消泡剤の特徴は、式(1)で表される化合物(A1)、式(2)で表される化合物(A2)、式(3)で表される化合物(A3)及び式(4)で表される化合物(A4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリエーテル化合物(A)を含有してなり、
比重が0.985〜1.010である点を要旨とする。
【0006】
【化1】
【0007】
は炭素数1〜25の活性水素化合物の反応残基、R及びRは炭素数1〜24の1価の有機基、Rは炭素数1〜24の2価の有機基、AO及びOAは炭素数2〜18のオキシアルキレン基、グリシドールの反応残基、炭素数4〜18のアルキルグリシジルエーテルの反応残基又は炭素数5〜18のアルケニルグリシジルエーテルの反応残基を表し、nは1〜100の整数で一分子中に複数のnが存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよく、sは1〜10の整数、pは0〜10の整数、qは0〜9の整数、rは0〜9の整数、mは0〜9の整数、p+r(p及びrの和)は1〜10の整数、p+q+r(p、q及びrの和)は1〜10の整数、p+q+r+m(p、q、r及びmの和)は2〜10の整数である。
【0008】
本発明の消泡剤組成物の特徴は、上記の消泡剤と水性媒体(E)とを含む点を要旨とする。
【0009】
本発明のエマルション消泡剤の特徴は、上記の消泡剤と水性媒体(E)とを含み、水性媒体(E)の含有量がポリエーテル化合物(A)の重量に基づいて、50〜900重量%である点を要旨とする。
【0010】
本発明の樹脂水分散体の特徴は、樹脂と、水と、上記の消泡剤、上記の消泡剤組成物又は上記のエマルション消泡剤とを含む点を要旨とする。
【0011】
本発明の水溶性樹脂水溶液の特徴は、水溶性樹脂と、水と、上記の消泡剤、上記の消泡剤組成物又は上記のエマルション消泡剤とを含む点を要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の消泡剤は、水性発泡液(樹脂水分散体、水溶性樹脂水溶液等)に適用しても、消泡剤の分離が無く、安定して優れた消泡性能を発揮する。
【0013】
本発明の消泡剤組成物は、水性発泡液(樹脂水分散体、水溶性樹脂水溶液等)に適用しても、消泡剤の分離が無く、安定して優れた消泡性能を発揮する。
【0014】
本発明のエマルション消泡剤は、水性発泡液(樹脂水分散体、水溶性樹脂水溶液等)に適用しても、消泡剤の分離が無く、安定して優れた消泡性能を発揮する。
【0015】
本発明の樹脂水分散体は、上記の消泡剤を含むので、安定して優れた消泡性能を発揮する。
【0016】
本発明の水溶性樹脂水溶液は、上記の消泡剤を含むので、安定して優れた消泡性能を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<ポリエーテル化合物(A)>
炭素数1〜25の活性水素化合物の反応残基(R)は、炭素数1〜25の活性水素化合物から活性水素を除いた反応残基を意味する。
炭素数1〜25の活性水素含有化合物としては、水酸基(−OH)、イミノ基(−NH−)、アミノ基(−NH)及び/又はカルボキシル基(−COOH)を少なくとも1個含む化合物が含まれ、アルコール、アミド、アミン、カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸及びアミノカルボン酸が含まれる。
【0018】
アルコールとしては、モノオール(メタノール、ブタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール及びイソステアリルアルコール等)及びポリオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、テトラグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジヒドロキシアセトン、フルクトース、グルコース、マンノース、ガラクトース、スクロース、ラクトース及びトレハロース等)等が挙げられる。
【0019】
アミドとしては、モノアミド(ギ酸アミド、プロピオン酸アミド及びステアリルアミド等)及びポリアミド(マロン酸ジアミド及びエチレンビスオクチルアミド等)等が挙げられる。
【0020】
アミンとしては、モノアミン(ジメチルアミン、エチルアミン、アニリン及びステアリルアミン等)及びポリアミン(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミン等)等が挙げられる。
【0021】
カルボン酸としては、モノカルボン酸(酢酸、ステアリン酸、オレイン酸及び安息香酸等)及びポリカルボン酸(マレイン酸及びヘキサン二酸等)等が挙げられる。
【0022】
ヒドロキシカルボン酸としては、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、リンゴ酸及び12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0023】
アミノカルボン酸としては、グリシン、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸及び12−アミノラウリン酸等が挙げられる。
【0024】
炭素数1〜24の1価の有機基(R、R)としては、アルキル基(R)、アルケニル基(R’)、アシル基(−COR)、アロイル基(−COR’)、N−アルキルカルバモイル基(−CONHR)、N−アルケニルカルバモイル基(−CONHR’)、アルキルカルボニルアミノ基(−NHCOR)、アルケニルカルボニルアミノ基(−NHCOR’)、アルキルカルボキシアミノ基(アルキルカーバメート基、−NHCOOR)及びアルケニルカルボキシアミノ基(アルケニルカーバメート基、−NHCOOR’)が含まれる。
【0025】
アルキル基(R)としては、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル及びオクタデシル等が挙げられる。
【0026】
アルケニル基(R’)としては、ビニル、プロペニル、ヘキセニル、イソオクテニル、ドデセニル及びオクタデセニル等が挙げられる。
【0027】
炭素数1〜24の2価の有機基(R)としては、アルキレン基(T)、アルケニレン基(T’)、1−オキサアルキレン基(−OT−)、1−オキサアルケニレン基(−OT’−)、1−オキソアルキレン基(−COT−)、1−オキソアルケニレン基(−COT’−)、1−アザ−2−オキソアルキレン基(−NHCOT−)、1−アザ−2−オキソアルケニレン基(−NHCOT’−)、1−オキソ−2−アザアルキレン基(−CONHT−)、1−オキソ−2−アザアルケニレン基(−CONHT’−)、1−アザ−2−オキソ−3−オキサアルキレン基(−NHCOOT−)及び1−アザ−2−オキソ−3−オキサアルケニレン基(−NHCOOT’−)が含まれる。
【0028】
アルキレン基(T)としては、メチレン、エチレン、イソブチレン、1,10−デシレン、1,2−デシレン、1,12−ドデシレン、1,2−ドデシレン及び1,11−ヘプタデシレン等が挙げられる。
【0029】
アルケニレン基(T’)としては、エチニレン、イソブチニレン、1,10−デシニレン、1−オクチルエチニレン、1−オクテニルエチレン及び1,11−ヘプタデシレン−8−エン等が挙げられる。
【0030】
炭素数2〜18のオキシアルキレン基、グリシドールの反応残基、炭素数4〜18のアルキルグリシジルエーテルの反応残基又は炭素数5〜18のアルケニルグリシジルエーテルの反応残基(AO、OA)のうち、炭素数2〜18のオキシアルキレン基としてはオキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン、オキシイソブチレン、オキシ−1,2−デシレン、オキシ−1,12−ドデシレン、オキシ−1,2−ドデシレン及びオキシ−1,2−オクタデシレン等が挙げられる。
【0031】
また、(AO、OA)のうち、炭素数4〜18のアルキルグリシジルエーテルとしては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル及びオクタデシルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0032】
また、(AO、OA)のうち、炭素数5〜18のアルケニルグリシジルエーテルとしては、ビニルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキセニルグリシジルエーテル、ドデセニルグリシジルエーテル及びオクタデセニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0033】
nは、1〜100の整数であり、好ましくは10〜90の整数、さらに好ましくは15〜80の整数である。
【0034】
式(1)で表される化合物(A1)としては、ブタノールのプロピレンオキシド付加体、ブタノールのエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック付加体、ブタノールのエチレンオキシド/プロピレンオキシドランダム付加体、デシルアルコールのエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック付加体、ドデシルアルコールのプロピレンオキシド/エチレンオキシドブロック付加体、2−エチルヘキシルアルコールのエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック付加体、トリメチロールプロパンのプロピレンオキシド/エチレンオキシドブロック付加体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ブロック付加)、グリセリンのプロピレンオキシド付加体、グリセリンのエチレンオキシド/2−エチルヘキシルグリシジルエーテルブロック付加体、モノドデシルアミンのエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック付加体及びペンタエリスリトールのエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック付加体等が挙げられる。
【0035】
式(2)で表される化合物(A2)としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ブロック付加)のジオレート、グリセリンのエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック付加体のモノステアレート、マレイン酸とエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック付加体のモノメチルエーテルとのエステル化物等が挙げられる。
【0036】
式(3)で表される化合物(A3)としては、エチレンビスステアリルアミドのエチレンオキシド付加体並びにトリメリット酸とポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレングリコールモノブチルエーテル及び2−エチルヘキサノールとのエステル化物等が挙げられる。
【0037】
式(4)で表される化合物(A4)としては、ひまし油のエチレンオキシド付加体、グリセリンビス(12−ヒドロキシステアレート)のエチレンオキシド付加体及びひまし油のエチレンオキシド付加体のオレート等が挙げられる。
【0038】
これらのうち、消泡性能の観点から、式(1)で表される化合物(A1)及び式(2)で表される化合物(A2)が好ましい。
【0039】
ポリエーテル化合物(A)の1重量%イオン交換水溶液での曇点(℃)は、20以下が好ましく、さらに好ましくは19以下、特に好ましくは17以下、最も好ましくは15以下である。この範囲であると、さらに優れた消泡性能を発揮する。
【0040】
1重量%イオン交換水溶液での曇点は、親水性の尺度となる物性値の一つであり、曇点が高いほど親水性が大きいことを意味し、以下のようにして測定される値である。
【0041】
イオン交換水99g及び試料1gを均一溶解させ(溶解しない場合溶解するまで冷却する)、この試料水溶液約5ccをガラス製の試験管に採り、温度計を試料溶液に入れて攪拌しながら、昇温させて試料溶液を白濁させた後、攪拌しながら、ゆっくり冷却して試料溶液が完全に透明となる温度を読みとり、これを曇点とする。
【0042】
ポリエーテル化合物(A)の重量に基づいて、オキシエチレン基の占める割合(重量%)が、50以下であることが好ましく、さらに好ましくは40以下、特に好ましくは32以下である。
【0043】
本発明の消泡剤の比重は0.985〜1.010であり、好ましくは0.987〜1.006、特に好ましくは0.991〜1.002、最も好ましくは0.995〜1.001である。この範囲であると、さらに優れた消泡性能を発揮する。
【0044】
なお、比重は、JIS K5600−2−4:2014(金属製ピクノメータ、25℃)により測定できる。
【0045】
比重は、ポリエーテル化合物(A)の化学構造等によって調整できる。オキシエチレン基及びヒドロキシル基の重量割合が大きいほど、比重は大きくなる傾向があり、一方、アルキル基、アルケニル基、アルキレン基及びアルケニレン基等の炭化水素基の重量割合が大きいほど、比重は小さくなる傾向がある。そして、式(1)〜式(4)で表された化学構造とすることにより、比重を適切な範囲とすることができ、優れた消泡性能を発揮できる。
【0046】
また、比重は、シリカ微粒子(B)及び/又は疎水性液体(C)の添加によっても好ましい範囲に微調整することが可能である。シリカ微粒子(B)を添加すると消泡剤の比重は大きくなり、疎水性液体(C)を添加すると消泡剤の比重は小さくできる。
【0047】
<シリカ微粒子(B)>
比重は、シリカ微粒子(B)及び/又は疎水性液体(C)により微調整することがより好ましい。すなわち、本発明の消泡剤は、消泡性能の観点から、さらにシリカ微粒子(B)を含むことが好ましい。
シリカ微粒子(B)としては、親水性シリカ微粒子及び疎水性シリカ微粒子が使用できる。
【0048】
親水性シリカ微粒子は、市場から容易に入手でき、商品名として、AEROSILシリーズ(50、130、300等、日本アエロジル株式会社、「AEROSIL」はエボニック デグサ ゲーエムベーハーの登録商標である。以下、同様である。)、Nipsilシリーズ(VN3、AQ、LP、NA等、東ソー・シリカ株式会社、「Nipsil」は東ソー・シリカ株式会社の登録商標である。以下、同様である。)等が挙げられる。
【0049】
親水性シリカ微粒子の個数基準のメジアン径(d50、μm)としては、0.01〜50が好ましく、さらに好ましくは0.02〜30、特に好ましくは0.03〜20、最も好ましくは0.2〜3である。この範囲であると消泡性能がより優れる。
【0050】
個数基準のメジアン径(d50)は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置を使用して測定される{たとえば、Partica LA−950V2(フローセル式、分散質の屈折率=1.45、分散媒の屈折率=1.33、反復回数15)、堀場製作所株式会社を使用して次のように測定される。}。
【0051】
<測定法>
イオン交換水をフローセルに入れて循環(循環強度5)しながら、ブランク測定を行う。測定試料{親水性シリカ微粒子}をイオン交換水に加え、超音波分散機UP400S{Hielscher Ultrasonic GmbH製}にて、1分間、強度20で処理して分散液とする。この分散液をフローセルに少しずつ加えて、適切な透過光強度(青色LEDの透過光強度が80〜90%又は赤色LEDの透過光強度が70〜90%)に調整して測定を行う。
なお、測定値はブランク測定の値が差し引かれて算出される。
【0052】
疎水性シリカ微粒子としては、親水性シリカ微粒子を公知の疎水化剤で疎水化処理した疎水性シリカ微粒子が含まれる。
【0053】
疎水化剤としては、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーン樹脂、ハロシラン及びアルコキシシラン等が含まれる。
【0054】
疎水性シリカ微粒子は、市場からも容易に入手でき、たとえば、商品名として、Nipsil SS−10、SS−40、SS−50及びSS−100(東ソー・シリカ株式会社)、AEROSIL R972、RX200及びRY200(日本アエロジル株式会社 )及びSIPERNAT D10、D13及びD17(エボニックジャパン株式会社、「SIPERNAT」はエボニック デグサ ゲーエムベーハーの登録商標である。)等が挙げられる。
【0055】
疎水性シリカ微粒子のメタノール湿潤性(M値)は、30〜85が好ましく、さらに好ましくは35〜80、特に好ましくは40〜75、最も好ましくは45〜70である。この範囲であると、消泡性能がさらに良好となる。
【0056】
M値は、疎水性の度合いを表す指標であり、濃度の相違するいくつかの水/メタノール混合溶液のうち、メタノール濃度が最も小さい均一分散液の容量%を意味し、以下のようにして測定される値である。この値が高い程、疎水性が高いといえる。
【0057】
<メタノール湿潤性(M値)の測定方法>
メタノール濃度を5容量%の間隔で変化させた水/メタノール混合溶液を調製し、これを容積10mlの試験管に5ml入れる。次いで測定試料0.2gを入れ、試験管にふたをして、20回上下転倒してから1〜2分間静置した後、内容物を観察して、凝集物がなく、測定試料の全部が湿潤して均一分散した分散液のうち、メタノール濃度が最も小さい分散液のメタノールの濃度(容量%)をM値とする{M値の単位(容量%)は記載しないことが通例である。}。
【0058】
疎水性シリカ微粒子の個数基準のメジアン径(d50、μm)としては、0.01〜50が好ましく、さらに好ましくは0.02〜30、特に好ましくは0.03〜20、最も好ましくは0.3〜7である。この範囲であると消泡性能がより優れる。
【0059】
個数基準のメジアン径(d50)は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置を使用して測定される{たとえば、Partica LA−950V2(バッチセル式、分散質の屈折率=1.45、分散媒の屈折率=1.33、反復回数15)、堀場製作所株式会社を使用して次のように測定される。}。
【0060】
<測定法>
メタノールをフローセルに入れて、ブランク測定を行う。測定試料{疎水性シリカ微粒子}に少しずつメタノールを加えながら、測定試料の凝集体が無くなるように均一混合して分散液とする。凝集体が均一分散されにくい場合には、必要に応じて分散機を用いて均一分散させてもよい。この分散液をバッチセルに少しずつ加えて均一にし、適切な透過光強度(青色LEDの透過光強度が80〜90%又は赤色LEDの透過光強度が70〜90%)に調整して測定を行う。
なお、測定値はブランク測定の値が差し引かれて算出される。
【0061】
シリカ微粒子(B)を含有する場合、シリカ微粒子(B)の含有量(重量%)は、ポリエーテル化合物(A)の重量に基づいて、0.1〜25が好ましく、さらに好ましくは0.3〜20、特に好ましくは0.5〜18、最も好ましくは1〜15である。これらの範囲であると、消泡性能がさらに良好となる。
【0062】
シリカ微粒子(B)の真比重は2.0であるから、たとえば、比重1.000のポリエーテル化合物(A)が1重量%のシリカ微粒子(B)を含有すると、比重はシリカ微粒子を含有しない場合に比べて0.004〜0.005高くなる。
【0063】
シリカ微粒子(B)以外に、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ又はアクリル樹脂等の微粒子又はこれらの疎水化した微粒子も使用できる。
【0064】
<疎水性液体(C)>
疎水性液体(C)としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、アルコール及び鉱油からなる群より選ばれる少なくとも1種が用いられる。
【0065】
脂肪酸としては、炭素数12〜18の分岐鎖脂肪酸及び炭素数12〜18の不飽和脂肪酸が含まれ、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸及びパルミトレイン酸等が挙げられる。
【0066】
脂肪酸エステルとしては、炭素数8〜18の脂肪酸と炭素数1〜18のアルコールのエステルが含まれ、オレイン酸メチル、パルミチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、菜種油、ひまし油、ソルビタンモノオレート及びグリセリンモノオレート等が挙げられる。
【0067】
アルコールとしては、炭素数6〜10の直鎖飽和アルコール、炭素数8〜18の分岐鎖飽和アルコール及び炭素数12〜18の不飽和アルコールが含まれ、ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、イソステアリルアルコール及びオレイルアルコール等が挙げられる。
【0068】
鉱油としては、減圧蒸留、油剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製及び水素化精製等を適宜組み合わせて原油を精製したものが含まれる。
【0069】
疎水性液体(C)の比重は1.000よりも小さく、脂肪酸の比重は0.88〜0.91、脂肪酸エステルの比重は0.87〜0.99、アルコールの比重は0.83〜0.86、鉱油の比重は0.81〜0.95であるので、これらを含有すると、消泡剤の比重はこれらの含有量に応じてこれらを含有しない場合に比べて小さくなる。
【0070】
疎水性液体(C)の粘度(mPa・s)は、5000以下が好ましく、さらに好ましくは3000以下、特に好ましくは1000以下、最も好ましくは4〜60である。
【0071】
なお、粘度は、JIS K7117−1:1999の付属書1(SB型粘度計、25℃、60rpm、1分後の粘度を測定)に準拠して測定できる。
【0072】
疎水性液体(C)を含有する場合、疎水性液体(C)の含有量(重量%)は、ポリエーテル化合物(A)の重量に基づいて、1〜50が好ましく、さらに好ましくは2〜45、特に好ましくは3〜40、最も好ましくは4〜35である。
【0073】
<有機核剤(D)>
本発明の消泡剤は、ワックス及び固体アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機核剤(D)を含んでもよい。
【0074】
ワックスとしては、融点50℃以上のワックスが含まれ、アマイドワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、アルコール変性ポリエチレンワックス及び酸変性ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0075】
固体アルコールとしては、融点50℃以上かつ炭素数18〜30のアルコールが含まれ、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコール等が挙げられる。
【0076】
有機核剤(D)の融点(℃)は、少なくとも50が好ましく、さらに好ましくは70以上、特に好ましくは80以上、最も好ましくは105〜145である。
【0077】
融点は、JIS K7121−1987{特に、3.(2)及び8.6(1)}に準拠して測定される(以下同様である。)。すなわち、測定試料を示差走査熱量測定(DSC)装置(たとえば、DSC−6200、セイコーインスツル株式会社)の容器(たとえば、560−002、セイコーインスツル株式会社)に入れ、窒素ガスを40mL/分流入しながら、融解ピーク終了時より約30℃高い温度まで加熱速度毎分10℃で加熱溶融させ、その温度に10分間保った後、融解温度より約100℃低い温度まで冷却速度毎分5℃で冷却し、装置が安定するまで保持してから、加熱速度毎分10℃で昇温時に観測される融解ピークを融点とする。
【0078】
有機核剤(D)を含有する場合、有機核剤(D)の含有量(重量%)は、ポリエーテル化合物(A)の重量に基づいて、0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは0.3〜8、特に好ましくは0.5〜7、最も好ましくは1〜5である。
【0079】
<水性媒体(E)>
本発明の消泡剤組成物は、上記の消泡剤と水性媒体(E)とを含んでいる。
【0080】
水性媒体(E)としては、水及び水と水溶性化合物とからなる水溶液が含まれる。
【0081】
水としては、水道水、工業用水、蒸留水、イオン交換水、蒸留水、地下水等が利用できる。これらのうち1種類を使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0082】
水溶性化合物としては、25℃の水100gへの溶解度が1g以上の化合物が含まれる。このような水溶性化合物としては、化粧料用、農薬用、食品用又はコーティング材用等の乳化分散組成物に用いられるものであれば制限なく使用でき、糖類、無機塩、有機塩、炭素数1〜4の1価アルコール、炭素数2〜8の多価アルコール及び水溶性高分子(多糖類を含む)等が使用できる。水溶性化合物は、これらのうち1種類を使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0083】
これらの水溶性化合物うち、多価アルコール及び水溶性高分子が好ましく、さらに好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド及び多糖類(キサンタンガム及びグアガム等)である。
【0084】
水性媒体(E)は防腐剤(防菌・防黴剤辞典、日本防菌防黴学会昭和61年第1版発行、1−32頁等)を含んでもよい。
【0085】
水性媒体(E)の含有量(重量%)は、ポリエーテル化合物(A)の重量に基づいて、50〜900が好ましく、さらに好ましくは75〜750、特に好ましくは100〜500、最も好ましくは120〜400である。この範囲であると、消泡性能がさらに優れる。
【0086】
本発明のエマルション消泡剤は、上記の消泡剤と水性媒体(E)とを含み、水性媒体(E)の含有量がポリエーテル化合物(A)の重量に基づいて、50〜900重量%である。
【0087】
水性媒体(E)の含有量(重量%)は、ポリエーテル化合物(A)の重量に基づいて、50〜900が好ましく、さらに好ましくは75〜750、特に好ましくは100〜500、最も 好ましくは120〜400である。この範囲であると、消泡性能がさらに優れる。
【0088】
本発明のエマルション消泡剤を、O/W型エマルションとする場合、油相(すなわち、上記の消泡剤)の体積基準のメジアン径(d50、μm)は、0.1〜100が好ましく、さらに好ましくは0.5〜60、特に好ましくは0.7〜40、最も好ましくは1〜20である。この範囲であると消泡性能がより優れる。
【0089】
体積基準のメジアン径(d50)は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置を使用して測定される{たとえば、Partica LA−950V2(フローセル式、分散質の屈折率=1.40、分散媒の屈折率=1.33、反復回数15)、堀場製作所株式会社を使用して次のように測定される。}。
【0090】
<測定法>
イオン交換水をフローセルに入れて循環(循環強度5)しながら、ブランク測定を行う。測定試料{O/W型エマルション}のイオン交換水分散液をフローセルに少しずつ加えて、適切な透過光強度(青色LEDの透過光強度が80〜90%又は赤色LEDの透過光強度が70〜90%)に調整して測定を行う。
なお、測定値はブランク測定の値が差し引かれて算出される。
【0091】
本発明の消泡剤は、公知の有機化学反応を適用して製造できる。本発明の消泡剤が複数種のポリエーテル化合物(A)からなる場合や他の成分{シリカ微粒子(B)、疎水性液体(C)及び/又は有機核剤(D)}を含む場合、これらを均一混合することにより製造できる。
【0092】
シリカ微粒子(B)を用いる場合、シリカ微粒子(B)が消泡剤全体に均一分散していることが好ましい。シリカ微粒子(B)を均一分散する方法としては、特に限定されず、公知の分散方法、分散機を用いることができる。
【0093】
有機核剤(D)を用いる場合、次の方法によって、有機核剤(D)を消泡剤全体に分散することが好ましい。
【0094】
有機核剤(D)と、ポリエーテル化合物(A)及び/又は疎水性液体(C)の一部とを加熱攪拌しながら、有機核剤(D)を溶解させて溶解液を得る溶解工程、
ポリエーテル化合物(A)及び/又は疎水性液体(C)の残部を攪拌しながら、この残部に溶解液を投入して混合物を得る混合工程、並びに
混合物を均質化処理して有機核剤(D)の分散液を得る分散工程を含む方法。
【0095】
加熱攪拌の温度(℃)としては、有機核剤(D)が溶解できれば制限がないが、60〜180が好ましく、さらに好ましくは80〜160、特に好ましくは100〜150、最も好ましくは110〜145である。
【0096】
加熱攪拌の時間としては、有機核剤(D)が溶解できれば制限がないが、ポリエーテル化合物(A)及び疎水性液体の酸化、分解等を防ぐため、できるだけ短時間とすることが好ましい。
【0097】
加熱攪拌は、密閉下で行ってもよいし(加圧下でもよい)、開放下で行ってもよい。
【0098】
均質化処理は、有機核剤(D)を均質化できれば制限はないが、乳化分散機(ビーズミル、ディスパーミル、ホモジナイザー又はゴーリンホモジナイザー、超音波乳化機等)を用いて均質化処理することが好ましい。
【0099】
本発明の消泡剤組成物は、上記の消泡剤と水性媒体(E)とを均一混合することにより製造できる。水性媒体(E)が上記の消泡剤に溶解していてもよいし、水性媒体(E)が上記の消泡剤に分散したW/Oエマルションになっていてもよいし、上記の消泡剤に水性媒体(E)が分散したO/Wエマルションになっていてもよい。W/OもしくはO/Wエマルションとする方法としては、特に限定されず、公知の乳化分散方法、乳化分散機を用いることができる。
【0100】
本発明の消泡剤、消泡剤組成物及びエマルション消泡剤は、各種水性発泡液に対して効果的であり、特に樹脂分散体及び水性樹脂水溶液の製造及び/又は使用時の泡の抑制に有効であり、優れた消泡性能を発揮する。
【0101】
本発明の消泡剤、消泡剤組成物又はエマルション消泡剤を樹脂水分散体に適用する場合、いずれのタイミングで添加してもよいが、樹脂製造における脱モノマー工程及び/又は樹脂製造後に添加することが好ましい。また、添加に際しては消泡剤、消泡剤組成物又はエマルション消泡剤を適当な希釈溶媒(たとえば水)で希釈してもよい。
【0102】
本発明の樹脂水分散体は、樹脂と、水と、上記の消泡剤、消泡剤組成物又はエマルション消泡剤とを含んでいる。
樹脂としては、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、スチレンブタジエン共重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、アクリロニトリルスチレンブタジエン及びポリ塩化ビニル等が含まれる。
【0103】
消泡剤の含有量は発泡状態に応じて適宜決定できるが、樹脂水分散体に含まれる消泡剤の含有量は、樹脂水分散体の重量に基づいて、0.01〜1重量%程度である。
【0104】
水の含有量は用途等に応じて適宜決定できるが、樹脂水分散体に含まれる水の含有量は、樹脂の重量に基づいて、50〜10000重量%程度である。
【0105】
本発明の水溶性樹脂水溶液は、水溶性樹脂と、水と、上記の消泡剤、消泡剤組成物又はエマルション消泡剤とを含んでいる。
水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体(メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、澱粉、澱粉誘導体(酸化澱粉及びカチオン化澱粉等)、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール及び多糖類(キサンタンガム及びグアガム等)が含まれる。
【0106】
消泡剤の含有量は発泡状態に応じて適宜決定できるが、水溶性樹脂水溶液に含まれる消泡剤の含有量は、水溶性樹脂の重量に基づいて、0.01〜1重量%程度である。
【0107】
水の含有量は用途等に応じて適宜決定できるが、水溶性樹脂水溶液に含まれる水の含有量は、水溶性樹脂の重量に基づいて、300〜10000重量%程度である。
【実施例】
【0108】
以下、特記しない限り「部」は重量部を、「%」は重量%をそれぞれ意味し、また、「曇点」は1重量%イオン交換水溶液での曇点(℃)を意味する。
【0109】
ポリエーテル化合物(A)として、以下のポリエーテル化合物(a1)〜(a10)を使用した。
ポリエーテル化合物(a1):ブタノールのプロピレンオキシド(40モル)付加体、曇点7℃、オキシエチレン基の占める割合は0重量%
ポリエーテル化合物(a2):ブタノールのプロピレンオキシド(18モル)付加体、曇点15℃、オキシエチレン基の占める割合は0重量%
ポリエーテル化合物(a3):ブタノールのプロピレンオキシド(10モル)付加体、曇点20℃、オキシエチレン基の占める割合は0重量%
ポリエーテル化合物(a4):2−エチルヘキシルアルコールのエチレンオキシド(31モル)プロピレンオキシド(48モル)ブロック付加体、曇点14℃、オキシエチレン基の占める割合は32重量%
ポリエーテル化合物(a5):グリセリンのプロピレンオキシド(50モル)付加体、曇点17℃、オキシエチレン基の占める割合は0重量%
ポリエーテル化合物(a6):トリメチロールプロパンのプロピレンオキシド(68モル)エチレンオキシド(10モル)ブロック付加物、曇点12℃、オキシエチレン基の占める割合は10重量%
ポリエーテル化合物(a7):ブタノールのプロピレンオキシド(25モル)付加体のオレート、曇点0℃以下、オキシエチレン基の占める割合は0重量%
ポリエーテル化合物(a8):エチレンオキシド(6モル)プロピレンオキシド(30モル)ブロックコポリマーのジステアレート、曇点0℃以下、オキシエチレン基の占める割合は10重量%
ポリエーテル化合物(a9):エチレンオキシド(5モル)プロピレンオキシド(20モル)ブロックコポリマーのモノステアレート、曇点0℃以下、オキシエチレン基の占める割合は13重量%
ポリエーテル化合物(a10):ひまし油のエチレンオキシド(6モル)付加体、曇点0℃以下、オキシエチレン基の占める割合は26重量%
【0110】
シリカ微粒子(B)として、以下のシリカ微粒子(b1)〜(b4)を使用した。
シリカ微粒子(b1):SIPERNAT D10(エボニックジャパン株式会社、疎水性シリカ微粒子)、M値70、個数基準のメジアン粒子径7μm。
シリカ微粒子(b2):NIPSIL SS−215(東ソー・シリカ株式会社、疎水性シリカ微粒子)、M値65、個数基準のメジアン粒子径6μm。
シリカ微粒子(b3):AEROSIL 300(日本アエロジル株式会社、親水性ヒュームドシリカ微粒子)、個数基準のメジアン粒子径0.2μm。
シリカ微粒子(b4):AEROSIL R972(日本アエロジル株式会社、疎水性ヒュームドシリカ微粒子)、M値45、個数基準のメジアン粒子径0.3μm。
シリカ微粒子(b5):NIPSIL G−300(東ソー・シリカ株式会社、親水性シリカ微粒子)、個数基準のメジアン粒子径3μm。
【0111】
疎水性液体(C)として、以下の疎水性液体(c1)〜(c4)を使用した。
疎水性液体(c1):オレイン酸メチル、粘度5mPa・s
疎水性液体(c2):オレイン酸、粘度30mPa・s
疎水性液体(c3):菜種油、粘度60mPa・s
疎水性液体(c4):EXXSOL D110(エクソンモービルコーポレーション、鉱油)、粘度5mPa・s
【0112】
有機核剤(D)として、以下の有機核剤(d1)〜(d2)を使用した。
有機核剤(d1):エチレンビスステアリルアミド、融点145℃
有機核剤(d2):SX−105(日本精蝋株式会社、フィッシャートロプシュワックス)、融点105℃
【0113】
水性媒体(E)として、以下の水性媒体(e1)〜(e4)を使用した。
水性媒体(e1):PVA−424H(株式会社クラレ、部分けん化ポリビニルアルコール)8部、イオン交換水82部及びエチレングリコール10部を均一混合した水溶液。
水性媒体(e2):JL−25E(日本酢ビ・ポバール株式会社、部分けん化ポリビニルアルコール)6部及びイオン交換水94部を均一混合した水溶液。
水性媒体(e3):JL−25E(日本酢ビ・ポバール株式会社、部分けん化ポリビニルアルコール)6部、イオン交換水74部及びグリセリン20部を均一混合した水溶液。
水性媒体(e4):キサンタンガム1部、イオン交換水89部及びソルビトール10部を均一混合した水溶液。
【0114】
<製造例1>
加熱、攪拌、冷却の可能な容器内で有機核剤(d1)1部及びポリエーテル化合物(a1)30部を加熱攪拌しながら140℃まで昇温し、この温度にてさらに15分間加熱攪拌を続けて溶解液(1)を得た。
【0115】
次いで、25℃に調節したポリエーテル化合物(a2)50部を攪拌しながら、これに溶解液(1)を投入し、攪拌しながら25℃まで冷却して有機核剤含有ポリエーテル(1)を得た。
【0116】
<製造例2>
加熱、攪拌、冷却の可能な容器内で有機核剤(d2)5部及びポリエーテル化合物(a7)30部を加熱攪拌しながら115℃まで昇温し、この温度にてさらに15分間加熱攪拌を続けて溶解液(2)を得た。
【0117】
次いで、25℃に調節したポリエーテル化合物(a7)50部を攪拌しながら、これに溶解液(2)を投入し、攪拌しながら25℃まで冷却して有機核剤含有ポリエーテル(2)を得た。
【0118】
<実施例1>
攪拌の可能な容器内で、ポリエーテル化合物(a1)50部、ポリエーテル化合物(a2)10部、ポリエーテル化合物(a3)10部、ポリエーテル化合物(a7)30部、シリカ微粒子(b1)5部及び疎水性液体(c1)4部を30分間攪拌混合した後、ゴーリンホモジナイザー(マントンゴーリン社製)を用いて3500psi(24.1MPa)にて均質化処理して、本発明の消泡剤(1)を得た。消泡剤(1)の比重は1.001であった。
【0119】
<実施例2〜6>
実施例1で用いた成分を表1のように変えたこと以外、実施例1と同様に各成分を攪拌混合し、均質化処理して、本発明の消泡剤(2)〜(6)を得た。
【0120】
【表1】
【0121】
<実施例7>
攪拌の可能な容器内で、ポリエーテル化合物(a1)50部、ポリエーテル化合物(a2)40部及びポリエーテル化合物(a7)10部を30分間攪拌混合して、本発明の消泡剤(7)を得た。消泡剤(7)の比重は0.996であった。
【0122】
<実施例8>
攪拌の可能な容器内で、ポリエーテル化合物(a1)25部及びポリエーテル化合物(a2)75部を30分間攪拌混合して、本発明の消泡剤(8)を得た。消泡剤(8)の比重は1.001であった。
【0123】
<実施例9>
攪拌・減圧の可能な容器内で、水性媒体(e1)120部を撹拌混合しながら容器内を0.1気圧に減圧した後、減圧下で撹拌を続けながら上記の消泡剤(1)109部を少しずつ添加し、攪拌しながら大気圧に戻して、本発明のO/W型エマルション消泡剤(9)を得た。消泡剤(9)の体積基準のメジアン径(d50)は1μmであった。
【0124】
<実施例10>
水性媒体(e1)120部を水性媒体(e2)400部に変えたこと以外、実施例8と同様にして、本発明のO/W型エマルション消泡剤(10)を得た。消泡剤(10)の体積基準のメジアン径(d50)は5μmであった。
【0125】
<実施例11>
水性媒体(e1)120部を水性媒体(e3)200部に変えたこと以外、実施例8と同様にして、本発明のO/W型エマルション消泡剤(11)を得た。消泡剤(11)の体積基準のメジアン径(d50)は3μmであった。
【0126】
<実施例12>
消泡剤(1)109部を消泡剤(5)127部に変えたこと、水性媒体(e1)120部を水性媒体(e3)200部に変えたこと以外、実施例8と同様にして、本発明のO/W型エマルション消泡剤(12)を得た。消泡剤(12)の体積基準のメジアン径(d50)は3μmであった。
【0127】
<実施例13>
消泡剤(1)109部を消泡剤(5)127部に変えたこと、水性媒体(e1)120部を水性媒体(e4)200部に変えたこと以外、実施例8と同様にして、本発明のO/W型エマルション消泡剤(13)を得た。消泡剤(13)の体積基準のメジアン径(d50)は20μmであった。
【0128】
<比較例>
攪拌の可能な容器内で、ポリエーテル化合物(a1)50部、ポリエーテル化合物(a2)10部、ポリエーテル化合物(a3)10部、ポリエーテル化合物(a7)30部及び疎水性液体(c1)4部を30分間攪拌混合した後、ゴーリンホモジナイザー(マントンゴーリン社製)を用いて3500psi(24.1MPa)にて均質化処理して、比較用の消泡剤(H)を得た。消泡剤(H)の比重は0.983であった。
【0129】
消泡剤(1)〜(8)及び(H)並びにエマルション消泡剤(9)〜(13)を用いて、以下のようにして消泡性能を評価し、評価結果を表1に示した。
【0130】
<消泡性能の評価>
1.消泡試験液の調製
アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(BST101、バンコク・シンセティックス社、水分55%)150g及び評価試料(消泡剤又はエマルション消泡剤)30mgを均一混合し評価用樹脂水分散体を調製してから300ml滴下漏斗に移し、漏斗内で5日静置した後、滴下漏斗の下部から評価用樹脂水分散体の半量を採取して消泡試験液(下層1)とした。続けて残り半量を採取して消泡試験液(上層1)とした。なお、エマルション消泡剤(8)〜(12)は、水性媒体(E)を除く成分{ポリエーテル化合物(A)、シリカ微粒子(B)、疎水性液体(C)及び有機核剤(D)}の重量が30mgとなるように加えた。
また、評価試料(消泡剤又はエマルション消泡剤)を使用しないこと以外上記と同様にして消泡試験液(上層)及び(下層)を調製した。
【0131】
2.消泡性能試験
ガラス製500mLメスシリンダー(以下、発泡管と称する。)を立てた状態で60℃に温度調節したウォーターバスに発泡管の100mlの目盛りまで浸漬させて、この発泡管に、60℃に温度調節した消泡試験液(上層又は下層)50mlを入れ、ディフューザ(JIS K2518:2017)を発泡管の底部まで挿入し0.2L/分で窒素ガスをバブリングすることによって消泡試験液を泡立てながら、変化する泡及び発泡液の容量を試験開始15分後に読み取った。数値の小さい方が消泡性能が高いことを意味し好ましい。消泡試験液(上層)及び(下層)の評価結果を表2に示す。表中、「−」は15分以内に500mlを越えたため評価を中止したことを示す。
【0132】
【表2】
【0133】
本発明の消泡剤又はエマルション消泡剤のいずれを用いた場合でも比較用の消泡剤を用いた場合に比べて安定した消泡性能を発揮した。また、比較用の消泡剤は消泡試験液(上層)と消泡試験器(下層)との間で消泡性能に大きな差があったが、本発明の消泡剤及びエマルション消泡剤は、消泡試験液(上層)と消泡試験液(下層)との間で消泡性能に違いは見られなかった。
以上の通り、本発明の消泡剤及びエマルション消泡剤を用いると、樹脂水分散液を塗工した場合消泡剤によるハジキ等の欠陥や、消泡性不足による残泡を生じないことが予測できる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の消泡剤は、樹脂水分散体及び/又は水溶性樹脂の使用される化学工業、石油工業、織物工業又は紙パルプ工業等の分野において、樹脂水分散体及び/又は水溶性樹脂の使用工程用として好適である。