【解決手段】金属箔層(12)と、絶縁性を有する第1樹脂層(13)と、第1樹脂層の少なくとも一部に積層された第2樹脂層(15)と、を備え、第1樹脂層(13)には、カーボンナノチューブを含む導電インキを用いて回路パターン(14)が印刷されている。
前記開封検出処理部によって、前記回路パターンが破断したことが検出された場合、該回路パターンが配された前記収容部が開封されたことを表す情報を前記収容部毎に出力する
ことを特徴とする請求項12に記載の開封検出装置。
請求項12から14のいずれか1項に記載の開封検出装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記開封検出処理部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図9は、一般的な開封検出シート90の断面の一例を示す図である。
図9の(a)は、収容部96が配置されていない部分の断面を示し、(b)は、収容部96が配置されている部分の断面を示す。なお、
図9は、収容部96を形成する収容シート95に貼付された開封検出シート90を示している。
【0006】
開封検出シート90は、アルミニウム箔層94、絶縁層93、回路層92、およびポリエチレンテレフタレート(PET)シート91を積層した構成を有する。開封検出シート90において、収容部96を形成する収容シート95の、収容物97が押し出される側の面にはアルミニウム箔層94が貼付されている。なお、アルミニウム箔層94には、アルミニウム合金箔が用いられてもよい。
【0007】
回路層92は、収容部96の配置に合わせた回路パターンを有する導線を含んでいる。収容部96に収容されている収容物97が取り出される場合、当該収容部96を構成する部分の開封検出シート90が破られ、回路層92に含まれる導線の一部が断線する。開封検出シート90は、回路層92に含まれる導線の断線の有無に基づいて、収容部96の開封の有無を検出する構成を備えている。
【0008】
従来、回路層92に含まれる導線は、アルミニウム箔にエッチング加工を施すことによって形成される。一般的なエッチング加工は、以下の(1)〜(4)の工程で行われる。
【0009】
(1)ポリエステルフィルムなどの基材にアルミニウム箔を貼り合せる工程
(2)回路パターンに合わせてレジストインキを印刷してパターニングする工程
(3)酸などでエッチングする工程
(4)アルカリなどでレジストインキを剥離する工程。
【0010】
エッチング加工は複雑で大掛かりな加工方法である。エッチング加工の各工程において加熱、乾燥、UV照射などの処理が必要であるため、エネルギーの消費が避けられない。さらに、上記の(3)の工程では酸廃液、(4)の工程ではアルカリ廃液、が発生するため、これらの廃液の処理のためにもエネルギーを消費しなければならない。このように、エッチング加工を用いて作製された開封検出シートを適用した包装材は、開封検出機能を備えていない包装材に比べ、大幅なコストアップが避けられない。
【0011】
一方、銀ペーストなどの金属ペーストを用いて、収容部96の配置に合わせた回路パターンをアルミニウム箔上に印刷する方法によって、回路層92を形成することも可能である。この方法によれば、エッチング加工を用いることなく、開封検出シートを作製することができる。しかし、金属ペーストが高価であるため、開封検出シートを適用した包装材のコストアップは避けられない。
【0012】
本発明の一態様は、開封検出シートの構成を簡略化して、開封検出シートを製造するための工程を減少させた開封検出シートを提供し、安価な包装材を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る開封検出シートは、アルミニウムを含む金属から成る金属箔層と、絶縁性を有する第1樹脂層と、導電物質を含むインキを用いて印刷された回路パターンと、前記回路パターンの少なくとも一部を被覆する第2樹脂層とが、この順で積層されて成る。
【0014】
上記の構成によれば、回路パターンは導電物質を含むインキを用いた印刷によって形成される。これにより、工程数が多く、大幅なコストアップが避けられないエッチング加工、および銀ペーストなどの金属ペーストを用いずに、回路パターンを形成することが可能である。よって、開封検出シートを製造するための工程を減少させることができる。
【0015】
前記開封検出シートには検出対象領域が設定されており、前記回路パターンは、前記検出対象領域において前記開封検出シートが破られたときに、前記回路パターンが破断するように配置されていてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、開封検出シートが破られたときに、回路パターンが破断する。すなわち、開封検出シートが破られる前後において、回路パターンの電気的な信号に変化が生じる。例えば、このような開封検出シートを包装材に適用すれば、所定の電圧を回路パターンに印加した場合に検出される電流値の変化に基づいて、検出対象領域の開封検出シートが破られたか否かを検出する開封検出機能を有する包装材を実現することができる。
【0017】
前記回路パターンは、前記第2樹脂層によって被覆されていない部分に接続部を有し、前記接続部を介して、前記回路パターンに電圧が印加される構成であってもよい。
【0018】
このような開封検出シートを包装材に適用すれば、接続部を介して回路パターンの電気的な信号を検出する開封検出機能を有する包装材を実現することができる。例えば、破断した回路パターンが再び電気的に導通することを、第2樹脂層に用いた樹脂が破断面を覆うことによって回避することができる。また、回路パターンの第2領域においては、回路パターンが露出しているため、電気的な接続を設けることができる。
【0019】
前記第1樹脂層は、前記金属箔層に絶縁性の樹脂を塗布することにより形成されてもよい。
【0020】
前記第1樹脂層の単位面積当たりの乾燥重量は、1.48g/m
2以上、3.70g/m
2以下であってもよい。
【0021】
前記インキは、前記導電物質としてカーボンナノチューブを含んでいてもよい。
【0022】
カーボンナノチューブを含ませることによって、導電インキの導電性が向上することが知られている。回路パターンの印刷に用いるインキに含ませるカーボンナノチューブの量を調整することにより、回路パターンの導電率を調整することが可能である。
【0023】
前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層に樹脂を塗布することにより形成されてもよい。
【0024】
前記第1樹脂層とは反対側の面に積層された、熱融着性を有する第3樹脂層を、さらに備えていてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、熱融着によって開封検出シートを検出対象に容易に取付けることができる。
【0026】
本発明の一態様に係る包装材は、前記の開封検出シートを含み、収容物を収容する収容部を備える包装材であって、前記開封検出シートが破られることによって、前記収容物が前記収容部から取り出される構成であってもよい。
【0027】
これにより、収容物が取り出されたことを検出する機能を備える包装材を実現することができる。
【0028】
前記包装材は、前記収容部を構成する凹部を1または複数有し、各凹部の開口を前記開封検出シートが封止する構成であってもよい。
【0029】
前記開封検出シートの前記回路パターンは、前記収容部毎に独立しており、互いに導通していない構成であってもよい。
【0030】
これにより、包装材のどの収容部から収容物が取り出されたのかを検出する機能を備える包装材を実現することができる。
【0031】
本発明の一態様に係る開封検出装置は、前記収容部が開封されたことを検出する開封検出装置であって、前記開封検出シートが備える前記回路パターンと電気的に接続可能な端子部と、前記回路パターンに生じた電気的な信号の変化に基づいて、前記回路パターンの破断を検出する開封検出処理部と、を備える。
【0032】
開封検出シートが破られたとき、回路パターンが破断する。上記の構成によれば、開封検出装置は、回路パターンに生じた電気的な信号の変化に基づいて、回路パターンの破断を検出する。これにより、開封検出装置は、包装材の収容物を収容する収容部が開封されたことを検出することができる。
【0033】
開封検出装置は、前記開封検出処理部によって、前記回路パターンが破断したことが検出された場合、該回路パターンが配された前記収容部が開封されたことを表す情報を前記収容部毎に出力する構成であってもよい。
【0034】
上記の構成によれば、開封検出装置は、収容部が開封されたことを表す情報を出力することができる。これにより、各収容部の開封状況をユーザに確認させることができる。
【0035】
開封検出装置は、破断した前記回路パターンが印刷されている前記収容部が開封されたことを表す情報を、外部機器に送信する通信部をさらに備えていてもよい。
【0036】
上記の構成によれば、開封検出装置は、収容部が開封されたことを表す情報を、外部機器から出力させることができる。ここで、外部機器は、収容部が開封されたことを表す情報を表示する表示部を備える電子機器が望ましい。より具体的には、外部機器としては、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末などが挙げられる。なお、開封検出装置と外部機器とは有線接続されていてもよいし、無線接続されていてもよい。無線接続の場合、例えば、Bluetooth(登録商標)が用いられてもよい。
【0037】
本発明の各態様に係る開封検出装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記開封検出装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記開封検出装置をコンピュータにて実現させる開封検出装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0038】
本発明の一態様に係る開封検出シートの製造方法は、アルミニウムを含む金属から成る金属箔層に、絶縁性を有する第1樹脂を塗布して第1樹脂層を形成する第1樹脂塗布工程(ステップS1)と、前記第1樹脂層に導電物質を含むインキを用いて回路パターンを印刷する回路パターン印刷工程(ステップS2)と、前記回路パターンの少なくとも一部を被覆するように第2樹脂を塗布して第2樹脂層を形成する第2樹脂塗布工程(ステップS3)と、を含む。
【0039】
上記の構成よれば、第1樹脂層、回路パターン、および第2樹脂層は、同様の方法によって形成される。このような方法で製造された開封検出シートは、エッチング加工などを用いて製造されたものに比して、設備投資費用およびエネルギー消費などが低く抑制され、製造コストを低く抑えることが可能である。よって、このような方法によって製造された開封検出シートを適用すれば、開封検出機能を有する包装材などをより安価に提供することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の一態様によれば、開封検出シートの構成を簡略化して、開封検出シートを製造するための工程を減少させた開封検出シートを提供し、安価な包装材を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0043】
(開封検出シート10の構成)
まず、本発明に係る開封検出シート10の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る開封検出シート10を適用した包装材100の構成を示す断面図である。
図1に示すように、開封検出シート10は、1または複数の凹部を有する収容シート31と貼り合わされることによって、薬および食品などの収容物33を収容するための空間である収容部32を形成する。
【0044】
開封検出シート10は、金属箔層12、第1樹脂層13、回路パターン14、および第2樹脂層15、を備えている。なお、
図1では、金属箔層12の、第1樹脂層13と接する面とは反対側の面に熱融着性を有する第3樹脂層11を備える開封検出シート10を示している。第3樹脂層11は、開封検出シート10と収容シート31とを熱融着させるために設けられた層である。
【0045】
金属箔層12は、金属から成る層である。金属箔層12として用いられる金属としては、アルミニウム、およびアルミニウム合金などが挙げられる。ここで、アルミニウムは、アルミニウム(Al)および不可避的不純物を含んでいる。アルミニウム合金とは、アルミニウム(Al)および不可避的不純物の他に、鉄(Fe):0.10〜0.60mass%(以下、mass%を単に%と記す。)、ケイ素(Si):0.01〜0.50%、銅(Cu):0.01〜0.20%を含有するアルミニウム合金を意図している。例えば、金属箔層12としては、日本工業規格(JIS)1N30の硬質アルミニウム箔が使用され得る。このアルミニウム箔の表面はブライト面であってもよいし、マット面であってもよい。以下では一例として、片面がブライト面、もう一方の面がマット(いわゆる、艶消し)面(第3面)であるアルミニウム箔を使用した場合を例に挙げて説明する。なお、金属箔の厚さ(すなわち金属箔層12の厚さ)は、収容物33を安定して収容しつつ、収容物33が取り出されるときには容易に破られ得る開封検出シート10を実現できる厚さであればよく、例えば、15〜20μmであればよい。
【0046】
第1樹脂層13は、金属箔層12に積層された、絶縁性を有する層である。第1樹脂層13は、金属箔層12に絶縁性の樹脂(第1樹脂)を塗布することにより形成され得る。第1樹脂層13の単位面積当たりの乾燥重量は、1.48g/m
2以上、3.70g/m
2以下であることが望ましい。例えば、第1樹脂層13の単位面積当たりの乾燥重量が1.48g/m
2未満の場合、第1樹脂層13が薄くなり、例えば開封検出シート10と収容シート31とを熱融着させるための熱(例えば140℃)および圧力(例えば、0.25MPa)が加えられたときに、第1樹脂層13が絶縁層としての十分な厚さを維持できない虞がある。一方、第1樹脂層13の単位面積当たりの乾燥重量を3.70g/m
2より大きくして第1樹脂層の厚さを増せば、絶縁性は向上するものの、必要以上に厚くすることは用いる樹脂量が増えるためコストアップになる。絶縁性の樹脂を塗布する工程では、3.70g/m
2以下までは、2回の工程で塗布が可能である。それゆえ、第1樹脂層13の単位面積当たりの乾燥重量を3.7g/m
2より大きくしてさらに厚く塗布するためには、絶縁性の樹脂を塗布する工程を例えば3回以上繰り返す必要があるため、開封検出シート10を製造するための工程数が増加してしまう。
【0047】
第1樹脂層13に用いられる絶縁性を有する樹脂としては、塩化ビニルおよび酢酸ビニルなどを主成分とする樹脂が用いられ得る。第1樹脂層13の一方の面(第1面)は、金属箔層12のブライト面と接する。なお、第1樹脂層13の反対側の面(第2面)には、導電物質を含む導電インキを用いて回路パターン14が印刷される。
【0048】
回路パターン14は、導電物質を含むインキを第1樹脂層13に塗布することによって形成される。回路パターン14の形成に用いられる導電インキは、顔料、樹脂、導電物質、および溶剤などを含むインキである。顔料としては、これに限定されるものではないが、例えばカーボン粒子(いわゆるカーボンブラック)を含んでいてもよい。この場合、回路パターン14は、開封検出シート10に印刷された黒色の線として示される。
【0049】
導電インキは、導電物質としてカーボンナノチューブを含んでいてもよい。カーボンナノチューブを添加し、分散させることによって、導電インキの導電性が向上することが知られている。回路パターン14を形成するために用いる導電インキの濃度、塗布量、およびカーボンナノチューブの添加量などを調整することにより、回路パターン14の導電率を調整することが可能である。
【0050】
第2樹脂層15は、回路パターン14の少なくとも一部を被覆するように積層されている。換言すれば、第2樹脂層15は、第1樹脂層13と金属箔層12とが接する面とは反対側の面(第2面)の少なくとも一部に積層されている。その結果、第1樹脂層13には、第2樹脂層15によって覆われた回路パターン14を有する第1領域と、第2樹脂層15によって覆われていない回路パターン14を有する第2領域とがある。第2樹脂層15は、樹脂(第2樹脂)を、回路パターン14の少なくとも一部を被覆するように塗布することによって形成される。
【0051】
第2樹脂層15は、例えば、エポキシ樹脂を主成分とする樹脂層であってもよい。第2樹脂層15の単位面積当たりの乾燥重量は、0.8g/m
2以上、2.0g/m
2以下であることが好ましく、より望ましくは、1.0g/m
2以上、1.8g/m
2以下であってもよい。第2樹脂層15の単位面積当たりの乾燥重量が0.8g/m
2未満の場合、第2樹脂層15が薄くなり、例えば開封検出シート10を後述する包装材100に熱融着させるときの熱などに耐え得る十分な耐熱性が得られない。十分な耐熱性が得られない場合、導電インキが回路パターン14の外に流れてしまう虞がある。一方、第2樹脂層15の単位面積当たりの乾燥重量が2.0g/m
2を超えると、第2樹脂層15が厚くなり、開封検出シート10を加工したり、成型したりするために加える熱の伝導性が悪化する。第2樹脂層15を必要以上に厚くすることは、用いる樹脂量が増えるためコストアップになる。また、熱伝導性が悪化すれば、開封検出シート10の加工および成型などに要するエネルギーも増加する。
【0052】
なお、
図1に示す開封検出シート10は、上記の他に、金属箔層12の、第1面とは反対側の第3面に積層された第3樹脂層11を備えている。第3樹脂層11は、開封検出シート10を他の部材(例えば、収容シート31)に熱融着して使用するために設けられる層である。
【0053】
第3樹脂層11は、熱融着性を有する樹脂を金属箔層12に塗布することによって形成され得る。開封検出シート10を包装材100に熱融着させるときの条件は、第3樹脂層11に用いる樹脂に応じて適宜変更されるが、典型的には、温度140℃、および圧力0.25MPaであってもよい。
【0054】
なお、開封検出シート10を他の方法(例えば、糊など)によって他の部材と接着させてもよい。開封検出シート10は、開封検出機能を導入したい任意の場面において好適に利用され得るため、部材に接着させることなく適用されてもよい。
【0055】
(包装材100)
続いて、包装材100について説明する。包装材100は、
図1に示すように、開封検出シート10を含み、収容物33を収容する収容部32を備える。包装材100は、開封検出シート10が破られることによって、収容物33が収容部32から取り出されるように、構成されている。
【0056】
収容物33を収容する収容部32には、開封検出シート10が、収容シート31の各凹部の開口を封止するように配されている。このような構成を備える包装材100は、収容物33が取り出されたことを検出する機能を備える。ここで、収容シート31としては、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルムが適用され得る。
【0057】
なお、
図1には、収容シート31を適用した包装材100を例示したがこれに限定されない。例えば、板状、またはシート状の部材と、開封検出シート10とによって収容物33を取り囲むように収容部32が構成された包装材であってもよい。あるいは、開封検出シート10のみによって収容部32が形成された包装材であってもよい。すなわち、収容シート31は、包装材100の必須の構成要素ではない。
【0058】
<検出対象領域5>
次に、開封検出シート10によって開封が検出される対象となる検出対象領域5について、
図2を用いて説明する。
図2は、包装材100を第1樹脂層13および第2樹脂層15が設けられた側から見たときの外観の例を示す図である。
【0059】
開封検出シート10には検出対象領域5が設定されており、回路パターン14は、検出対象領域5において開封検出シート10が破られたときに、回路パターン14が破断するように配置されている。
図2は、4つの検出対象領域5a〜5dを有する包装材100を示す図である。
図2に示す包装材100は、例えば、1日に1錠服用される錠剤を4日分包装することができる。
【0060】
図1に示すように、包装材100において、開封検出シート10の回路パターン14は、収容物33を収容する収容部32毎に独立している。すなわち、検出対象領域5毎に独立しており、互いに導通していない。例えば、
図2に示す包装材100の検出対象領域5aにおいて開封検出シート10が破られたとき、検出対象領域5aに配された回路パターン14は破断するが、その他の検出対象領域5b〜5dに配された回路パターン14は破断しない。
【0061】
ある検出対象領域5において開封検出シート10が破られた場合、当該回路パターン14の電気的な信号に変化が生じる。例えば、各検出対象領域5に配された回路パターン14に所定の電圧を印加した場合、破断した回路パターン14において電流値の変化が検出される。このような構成を備える包装材100を、後述の開封検出装置20に接続することによって、検出対象領域5の開封検出シート10が破られたか否かを検出する開封検出機能を実現することができる。
【0062】
なお、包装材100が備える検出対象領域5の数はユーザが服用する錠剤の数に応じて適宜変更可能であり、4つに限定されない。例えば、検出対象領域5を7つ有する包装材100(図示せず)であれは、1日に1錠服用される錠剤を1週間分包装することができる。
【0063】
<接続部16>
図2に示すように、包装材100に適用された開封検出シート10の回路パターン14には、第2樹脂層15によって被覆されていない接続部16が設けられている。後述の開封検出装置20および20aの端子部29と包装材100の開封検出シート10とが、接続部16において接触し、電気的に導通するように接続される。なお、接続部16を設ける位置は、開封検出装置20および20aの端子部29の形状および位置に合わせて適宜変更され得る。
【0064】
(開封検出シート10の製造方法)
続いて、金属箔層12、第1樹脂層13、回路パターン14、および第2樹脂層15、を備える開封検出シート10の製造方法について、
図3を用いて説明する。
図3は、開封検出シート10の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0065】
まず、金属箔層12に用いるアルミニウム箔、またはアルミニウム合金箔の片側の面の全体に、絶縁性の樹脂を塗布し、第1樹脂層13を形成する(ステップS1:第1樹脂塗布工程)。ステップS1には、グラビア印刷などの方法が適用され得る。
【0066】
次に、ステップS1において形成された第1樹脂層13上に導電インキを用いて回路パターン14を印刷する(ステップS2:回路パターン印刷工程)。回路パターン14を印刷する方法にも、グラビア印刷が適用され得る。
【0067】
次に、ステップS2において印刷された回路パターン14の少なくとも一部を被覆するように第2樹脂を塗布して第2樹脂層15を形成する(ステップS3:第2樹脂塗布工程)。ステップS3にも、グラビア印刷などの方法が適用され得る。
【0068】
なお、開封検出シート10にさらに第3樹脂層11を設ける場合も、ステップS1〜S3と同様、グラビア印刷などの方法が適用され得る(第3樹脂塗布工程)。
【0069】
ここで、グラビア印刷とは、金属箔、フィルムなどの印刷に使用される凹版印刷の一種である。例えばステップS1およびステップS3における樹脂の塗布はそれぞれ、主に、以下の(1)〜(5)に示すような工程で行われる。
【0070】
(1)版面にくぼみが設けられたグラビア印刷シリンダの一部を、金属箔層12として用いる金属箔に塗布する樹脂溜めに浸し、版面のくぼみを樹脂で満たす。グラビア印刷シリンダの版面に設けられたくぼみの深さを調整することによって、塗布する樹脂の厚さおよび乾燥重量などを調整することができる。
【0071】
(2)グラビア印刷シリンダを回転させながら、樹脂溜めから引き上げる。
【0072】
(3)ドクターブレードによってグラビア印刷シリンダの版面のくぼみ以外の部分に付着している樹脂を除去する。
【0073】
(4)金属箔を、圧着ローラーとグラビア印刷シリンダとの間を通し、グラビア印刷シリンダの版面のくぼみ内の樹脂を金属箔に移す。
【0074】
(5)乾燥させたのち、次の工程に進む。
【0075】
ステップS2においては、樹脂の代わりに導電インキを使用すればよい。すなわち、開封検出シート10が備える各樹脂層、および回路パターン14は、すべて同様の設備(例えば、グラビア印刷設備)を用いて形成することができる。
【0076】
上記のように、本発明に係る開封検出シート10の製造方法では、回路パターン14も、第1樹脂層13および第2樹脂層15の形成と同様の方法によって形成する。このような方法で製造された開封検出シート10は、エッチング加工などを用いて製造された従来のものに比して製造コストを低く抑えることができる。開封検出シート10を適用すれば、より安価な開封検出機能を有する包装材などを実現することができる。
【0077】
〔実施形態2〕
本発明の開封検出シート10を適用した包装材100において、収容物33を収容する収容部32が開封されたことを検出する開封検出装置20について、
図4〜
図6を用いて説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0078】
(開封検出装置20の外観)
図4の(a)は、
図2に示す包装材100を開封検出装置20に取り付けた様子を示す外観図である。
図4の(b)は、端子部29が設けられている側から開封検出装置20をみたときの外観を示す図である。
【0079】
図4に示すように、開封検出装置20の端子部29と包装材100の開封検出シート10とが、
図2に示す接続部16において接触し、電気的に導通するように接続される。
【0080】
(開封検出装置20の構成)
続いて、開封検出装置20の構成について、
図5を用いて説明する。
図5は、開封検出装置20の構成例を示すブロック図である。
【0081】
開封検出装置20は、端子部29、電源部21、開封検出処理部22a、記憶部23、表示制御部24、および表示部25を備えている。
【0082】
端子部29は、包装材100の開封検出シート10に印刷された回路パターン14の接続部16と接触し、開封検出装置20と包装材100の回路パターン14とを電気的に導通させるための端子である。
【0083】
電源部21は、バッテリ、および電池などであり、開封検出装置20の各機能を実行するために要する電力を開封検出装置20の各部に供給する。また、電源部21から供給される電力の一部は、端子部29に接続された開封検出シート10の回路パターン14に対して開封検出処理部22aによって印加する電圧が供される。
【0084】
開封検出処理部22aは、回路パターン14に生じた電気的な信号の変化に基づいて、回路パターン14の破断を検出する。より具体的には、開封検出処理部22aは、端子部29に接続された包装材100の各検出対象領域5に配された回路パターン14に対して所定の電圧を印加し、そのときに検出される電流値を計測する。開封検出処理部22aは、測定された電流値が、予め設定された電流値以上か否かに基づいて、検出対象領域5に配された個々の回路パターン14の破断を検出する。
【0085】
また、開封検出処理部22aは、包装材100が有するどの収容部32が開封されたか、および各収容部32が開封されたことが最初に検出された日時などの情報を、収容部32毎に収集する。なお、開封検出装置20に接続された開封検出シート10が交換されるまで、開封検出処理部22aによって収集した情報が記憶部23に保持される構成であってもよい。
【0086】
さらに、開封検出処理部22aは、記憶部23から開封検出アプリ231を読み出して、収集した情報に基づいて、表示部25に表示させる画面などを生成する。ここで、開封検出アプリ231は、収容部32毎の開封状況をユーザに通知するための表示内容を生成するための処理を開封検出処理部22aが実行するためのアプリケーションプログラムである。
【0087】
表示制御部24は、開封検出処理部22aによって生成された表示内容が表示部25において表示されるよう、表示部25を制御する。なお、表示制御部24は、開封検出処理部22aによって過去に収集された情報を記憶部23から読み出して、表示部25に表示する構成であってもよい。
【0088】
表示部25は、画像やテキストデータが示す文字列などを表示するLCD(液晶ディスプレイ:Liquid Crystal Display)、PDP(プラズマディスプレイ:Plasma Display Panel)、または有機EL(Organic LED)などの、薄型フラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display)であってもよい。また、表示部25には、タッチパネル(図示せず)が重畳されており、ユーザによるタッチ操作が行なわれた位置やジェスチャの種類などを検出する構成であってもよい。
【0089】
なお、ここでは、開封検出装置20が表示部25を備える構成を例に挙げて説明するがこれに限定されない。例えば、より大きな画面を備える外部のディスプレイなどの表示装置(図示せず)に表示内容を送信し、該ディスプレイに表示させる構成であってもよい。これにより、収容部32(
図1参照)の開封状況を大きく表示させることができるため、ユーザの利便性が向上する。
【0090】
上記の構成によれば、開封検出装置20は、回路パターン14に生じた電気的な信号の変化に基づいて、回路パターン14の破断を検出し、包装材100の収容部32が開封されたことを検出する。また、開封検出装置20は、開封検出処理部22aによって、回路パターン14が破断したことが検出された場合、破断した回路パターン14が配された検出対象領域5(収容部32に対応)が開封されたことを表す情報を収容部32毎に出力する。
【0091】
(検出結果の出力例)
図6は、開封検出装置20において表示される開封状況の一例を示す図である。
図6では、
図2に示す包装材100が開封検出装置20に接続されている。なお、
図6では、包装材100の検出対象領域5a〜5c(それぞれ収容部32に対応)に配された開封検出シート10が破られ、検出対象領域5a〜5cの回路パターン14が破断している状態における開封検出結果が表示されている例を示している。
【0092】
図6に示すように、開封検出装置20の表示部25には、収容部32毎の開封状況を表す情報、および、いつ開封が検出されたかを示す情報が表示される。図中の「開封」、および「未開封」は、開封状況を表す情報である。また、図中の、「2018/03/20」、「(一昨日)」、「午前7:04」などは、いつ開封されたかを示す情報である。
【0093】
なお、開封状況の出力は、表示部25に文字列を含む内容を表示させることに限定されない。たとえば、開封済と未開封とを異なる色の光を点灯させる構成であってもよいし、スピーカなどから音声によって開封すべき収容部32を指示する音声を出力する構成であってもよい。
【0094】
このような情報を表示することによって、開封検出装置20は、各収容部32の開封状況をユーザに適切に確認させることができる。開封検出装置20および包装材100を用いれば、一例として、ユーザは、毎日決まったタイミングで服用すべき薬を飲み忘れたり、所定の間隔をおいて服用すべき薬を誤って短い間隔で服用してしまったりすることを適切に防止することができる。
【0095】
〔実施形態3〕
本発明の開封検出シート10を適用した包装材100において、収容部32が開封されたことを検出し、その検出結果を外部機器50に送信する機能を備える開封検出装置20aについて、
図7および
図8を用いて説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0096】
(開封検出装置20aの構成)
図7は、開封検出装置20aの構成例を示すブロック図である。なお、
図7には、開封検出装置20aと通信可能に接続される外部機器50の要部構成も示されている。開封検出装置20aは、外部機器50に、開封検出処理部22による検出結果(例えば、検出対象領域5に対応する収容部32の開封状況を表す情報)を送信する通信部27をさらに備えている。外部機器50は、回路パターン14が配されている検出対象領域5に対応する収容部32が開封されたことを表す情報を表示部54に表示させる制御部51を備えている。なお、
図7に示す開封検出装置20aは、表示部25などを備えていないが、これに限定されるものではなく、
図5に示す開封検出装置20と同様に表示部25を備える構成であってもよい。
【0097】
(外部機器50の構成)
外部機器50は、収容部32が開封されたことを表す情報を表示する表示部54を備える電子機器である。外部機器50の例としては、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末などが挙げられる。外部機器50は、
図7に示すように、通信部52、制御部51、表示部54、記憶部53を備えている。外部機器50は、通信部52を介して、開封検出装置20aとの間のデータ送受信を行う。なお、開封検出装置20aと外部機器50とは有線接続されていてもよいし、無線接続されていてもよい。無線接続の場合、例えば、Bluetooth(登録商標)が用いられ得る。
【0098】
制御部51は、CPUである。制御部51は、記憶部53から開封検出アプリ531を読み出して、開封検出装置20aから受信した情報に基づいて、表示部54に表示させる画面などを生成する。ここで、開封検出アプリ531は、収容部32毎の開封状況をユーザに通知するための表示を生成するための処理を制御部51が実行するためのアプリケーションプログラムである。
【0099】
表示部54は、画像やテキストデータが示す文字列などを表示するLCD(液晶ディスプレイ:Liquid Crystal Display)、PDP(プラズマディスプレイ:Plasma Display Panel)、または有機EL(Organic LED)などの、薄型フラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display)であってもよい。また、表示部54には、タッチパネル(図示せず)が重畳されており、ユーザによるタッチ操作が行なわれた位置やジェスチャの種類などを検出する構成であってもよい。
【0100】
(検出結果の出力例)
図8は、
図2に示す開封検出シート10を適用した包装材100を接続した開封検出装置20aからの検出結果を受信した外部機器50が、開封状況を表示する場合の一例を示す図である。なお、
図8では、
図6と同様、包装材100の検出対象領域5a〜5c(それぞれ収容部32に対応)に配された開封検出シート10が破られ、検出対象領域5a〜5cの回路パターン14が破断している状態における開封検出結果が表示されている例を示している。
【0101】
制御部51は、通信部52を介して、開封検出装置20aから、包装材100が有するどの収容部32が開封されたか、および各収容部32が開封された日時などの情報を取得する。そして、制御部51は、外部機器50の表示部54に、収容部32毎の開封状況(すなわち、「開封」済か、「未開封」か)を表す情報、および、いつ開封が検出されたかを示す情報などを表示させる。
【0102】
この構成によれば、開封検出装置20aは、開封状況を表す情報を外部機器50に送信し、外部機器50にて表示させるため、開封検出装置20aは必要最小限の機能を備えていればよい。それゆえ、開封検出装置20aを製造するためのコストを低く抑えることができる。
【0103】
〔ソフトウェアによる実現例〕
開封検出装置20および20aの制御ブロック(特に開封検出処理部22aおよび22)、および外部機器50の制御部51は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0104】
後者の場合、開封検出装置20、20a、および外部機器50は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0105】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0106】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0107】
第1樹脂層13の単位面積当たりの乾燥重量が異なる開封検出シート10を作成し、絶縁層として第1樹脂層13が機能するために必要な絶縁性の樹脂量について検討した。表1は、第1樹脂層13の単位面積当たりの乾燥重量が異なる開封検出シート10について、絶縁性能を評価した結果である。
【0108】
なお、金属箔層12にはアルミニウム箔を用い、アルミニウム箔のマット面側に第3樹脂層11を形成し、アルミニウム箔のブライト面側に第1樹脂層13を形成した。第1樹脂層13の形成には、タナカケミカル製のNo.8800NLを用いた。
【0109】
また、作成された開封検出シート10は、CKD社製M2機を用いて、温度140℃、および圧力0.25MPaを加えて、開封検出シート10と収容シート31とを熱融着させた。なお、この熱融着処理を熱シールといい、熱シール処理において加えられる温度および圧力を想定したものである。
【0110】
第1樹脂層13の絶縁性判定は、テスター(最大測定抵抗値40MΩ)によって計測される開封検出シート10の抵抗値(第1樹脂層上で10mm離した点同士を測定)が、最大測定抵抗値より大きければOKとし、抵抗値が最大測定抵抗値より小さい場合にはNGとした。
絶縁性能判定は、熱シール前および熱シール後に行った。
【0111】
【表1】
【0112】
表1に示す結果によれば、第1樹脂層13の単位面積当たりの乾燥重量は、1.48g/m
2以上であれば、熱シール処理後においても絶縁層として機能した。
【0113】
第1樹脂層13を形成するために絶縁性の樹脂を塗布する工程を装置によって行う場合、1回の工程で塗布できる樹脂の量は用いる装置に依存する。それゆえ、装置を用いて絶縁性の樹脂を厚く塗布するためには、1回の工程で塗布できる樹脂量が多い装置を用いるか、あるいは、複数回の工程によって塗布(重ね塗り)する必要がある。第1樹脂層13の単位面積当たりの乾燥重量を3.70g/m
2より大きくするためには、絶縁性の樹脂を塗布する工程を3回以上行わなければならない可能性がある。そこで、第1樹脂層13の単位面積当たりの乾燥重量は、3.70g/m
2以下であることが望ましい。