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特開2020-189937塗料組成物、加飾フィルム、及び加飾成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-189937(P2020-189937A)
(43)【公開日】2020年11月26日
(54)【発明の名称】塗料組成物、加飾フィルム、及び加飾成形品
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/14 20060101AFI20201030BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20201030BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20201030BHJP
【FI】
   C09D175/14
   C09D7/61
   C09D5/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-96663(P2019-96663)
(22)【出願日】2019年5月23日
(11)【特許番号】特許第6663528号(P6663528)
(45)【特許公報発行日】2020年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】松山 展也
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG142
4J038DG221
4J038FA112
4J038FA252
4J038FA262
4J038GA03
4J038GA15
4J038HA216
4J038HA446
4J038JA02
4J038JA03
4J038JA17
4J038JA19
4J038JA25
4J038JA32
4J038JA33
4J038JA55
4J038JA56
4J038JA62
4J038JC30
4J038JC35
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038MA14
4J038NA03
4J038NA04
4J038NA05
4J038NA11
4J038PA07
4J038PA17
4J038PB05
4J038PB07
4J038PB09
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】優れた加温伸張性(例えば30%以上)を有するとともに、耐溶剤性及び耐薬品性に優れた硬化膜を形成することが可能な、アルコール類を希釈溶剤として含有しうる電離放射線硬化型の塗料組成物を提供する。
【解決手段】電離放射線硬化型の塗料組成物である。6以上の(メタ)アクリロイル基を有する、その重量平均分子量が3,000〜50,000であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)を含有し、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)が、水酸基及び3以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位(a)と、2以上の水酸基を有する分子量100以下のアルコールに由来する構成単位(b)と、イソホロンジイソシアネートに由来する構成単位(c)と、カルビノール変性ポリシロキサンに由来する構成単位(d)と、を有するシリコーン変性オリゴマーである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電離放射線硬化型の塗料組成物であって、
6以上の(メタ)アクリロイル基を有する、その重量平均分子量が3,000〜50,000であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)を含有し、
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)が、水酸基及び3以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位(a)と、2以上の水酸基を有する分子量100以下のアルコールに由来する構成単位(b)と、イソホロンジイソシアネートに由来する構成単位(c)と、カルビノール変性ポリシロキサンに由来する構成単位(d)と、を有するシリコーン変性オリゴマーであり、
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)中の前記構成単位(d)の含有量が、前記構成単位(a)〜(c)の合計に対して、0.1〜10質量%であり、
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)の含有量が、塗料固形分を基準として、30質量%以上である塗料組成物。
【請求項2】
前記多官能(メタ)アクリレートモノマーが、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの少なくともいずれかである請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記アルコールが、エチレングリコール及びグリセリンの少なくともいずれかである請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
その平均一次粒子径が1〜100nmである無機フィラーをさらに含有し、
前記無機フィラーの含有量が、塗料固形分を基準として、1〜50質量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
フィルム状のプラスチック基材と、
前記プラスチック基材の少なくとも一方の面上に配設される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料組成物で形成された塗工膜を硬化させた硬化膜と、を備える加飾フィルム。
【請求項6】
樹脂製の成形品本体と、
前記成形品本体の少なくとも一部の表面上に配設される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料組成物で形成された塗工膜を硬化させた硬化膜と、を備える加飾成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電離放射線硬化型の塗料組成物、この塗料組成物を用いた加飾フィルム、及び加飾成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の内外装を構成するための材料として、加飾フィルムの需要が増大している。このような状況の下、加飾フィルムに対しては、良好な硬度物性とともに、優れた耐候性や耐薬品性を備えることが重要視されており、無黄変で電離放射線硬化型の塗料組成物をフィルムの保護膜に用いることが一般的になっている。
【0003】
加飾フィルムは、通常、フィルムインサート成形やインモールド成形などの種々の成形方法によって作製される。但し、被加飾体の形状の多様化に伴い、加飾フィルムに対しては、加熱成形工程(数十℃以上の温度条件下)での屈曲性や延伸性(以下、「加温伸張性」とも記す)を有することが要求される。このため、加飾フィルムの保護膜についても加温伸張性を有することが要求される。
【0004】
耐薬品性と加温伸張性を両立すべく、例えば、硬化させていない又は半硬化させたフィルムで保護膜を形成し、成形後に保護膜を完全に硬化させる方法が提案されている(特許文献1)。また、保護膜を形成するための樹脂組成物にイソシアネートやアミン等の成分を含有させておき、加熱して硬化不良部分を完全に硬化させる方法が提案されている(特許文献2)。さらに、電離放射線硬化型の塗料組成物に熱可塑性樹脂を配合する手法(特許文献3)や、モノマー等の成分の配合を設定することで架橋密度を制御したハードコート層を備えた成形用フィルム(特許文献4)が提案されている。
【0005】
また、特性の組成を有するウレタンアクリレートオリゴマーを含有する活性エネルギー線硬化型の組成物、及びこの組成物を硬化させて形成した硬化膜を有するフィルムが提案されている(特許文献5及び6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3233595号公報
【特許文献2】特開昭57−126819号公報
【特許文献3】特許第5151179号公報
【特許文献4】特開2011−148964号公報
【特許文献5】特開2016−186039号公報
【特許文献6】特開2018−111793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で提案された方法は、成形加工先が必ずしも硬化装置を保有しているとは限らないため、やや汎用性に欠ける場合があるとともに、被加飾体の形状によっては活性エネルギー線がうまく照射されない箇所が生ずることがあり、硬化不良が発生しやすくなる場合があった。また、特許文献2で提案された方法は、樹脂組成物のポットライフが短くなりやすいとともに、最終物性にムラが生じやすくなる場合があった。さらに、特許文献3〜6で提案されたフィルム等は、耐薬品性が必ずしも十分であるとは言えなかった。
【0008】
なお、車両内外装を構成する基材には、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)やポリカーボネート(PC)などの樹脂材料が用いられることが多い。但し、これらの樹脂材料は耐溶剤性が低いため、これらの樹脂材料で構成された基材に接触する塗膜や硬化膜を形成するための塗料組成物には、基材を劣化等させにくいアルコール類を希釈溶剤として用いる必要がある。しかし、加飾フィルムの塗膜や硬化膜を形成するための一般的な塗料組成物(樹脂組成物)に配合される硬化型の樹脂成分は、必ずしもアルコール類に溶解しやすいものではなかった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、優れた加温伸張性(例えば30%以上)を有するとともに、耐溶剤性及び耐薬品性に優れた硬化膜を形成することが可能な、アルコール類を希釈溶剤として含有しうる電離放射線硬化型の塗料組成物を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記の電離放射線硬化型の塗料組成物を用いて得られる加飾フィルム及び加飾成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明によれば、以下に示す塗料組成物が提供される。
[1]電離放射線硬化型の塗料組成物であって、6以上の(メタ)アクリロイル基を有する、その重量平均分子量が3,000〜50,000であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)を含有し、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)が、水酸基及び3以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位(a)と、2以上の水酸基を有する分子量100以下のアルコールに由来する構成単位(b)と、イソホロンジイソシアネートに由来する構成単位(c)と、カルビノール変性ポリシロキサンに由来する構成単位(d)と、を有するシリコーン変性オリゴマーであり、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)中の前記構成単位(d)の含有量が、前記構成単位(a)〜(c)の合計に対して、0.1〜10質量%であり、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)の含有量が、塗料固形分を基準として、30質量%以上である塗料組成物。
[2]前記多官能(メタ)アクリレートモノマーが、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの少なくともいずれかである前記[1]に記載の塗料組成物。
[3]前記アルコールが、エチレングリコール及びグリセリンの少なくともいずれかである前記[1]又は[2]に記載の塗料組成物。
[4]その平均一次粒子径が1〜100nmである無機フィラーをさらに含有し、前記無機フィラーの含有量が、塗料固形分を基準として、1〜50質量%である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の塗料組成物。
【0011】
また、本発明によれば、以下に示す加飾フィルム及び加飾成形品が提供される。
[5]フィルム状のプラスチック基材と、前記プラスチック基材の少なくとも一方の面上に配設される、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の塗料組成物で形成された塗工膜を硬化させた硬化膜と、を備える加飾フィルム。
[6]樹脂製の成形品本体と、前記成形品本体の少なくとも一部の表面上に配設される、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の塗料組成物で形成された塗工膜を硬化させた硬化膜と、を備える加飾成形品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた加温伸張性(例えば30%以上)を有するとともに、耐溶剤性及び耐薬品性に優れた硬化膜を形成することが可能な、アルコール類を希釈溶剤として含有しうる電離放射線硬化型の塗料組成物を提供することができる。また、本発明によれば、この電離放射線硬化型の塗料組成物を用いて得られる加飾フィルム及び加飾成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<塗料組成物>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の電離放射線硬化型の塗料組成物は、6以上の(メタ)アクリロイル基を有する、その重量平均分子量が3,000〜50,000であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)を含有する。そして、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)の含有量が、塗料固形分を基準として、30質量%以上である。以下、本発明の塗料組成物の詳細について説明する。
【0014】
(ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1))
塗料組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)(以下、単に「ウレタンアクリレートオリゴマー」とも記す)を樹脂成分として含有する。このウレタンアクリレートオリゴマーは、カルビノール変性ポリシロキサンに由来する構成単位(d)をその分子構造中に有する、いわゆるシリコーン変性オリゴマーである。このように、塗料組成物は、シリコーン成分を単に配合するのではなく、その分子構造中に組み込んだシリコーン変性オリゴマーを含有するため、シリコーン成分がブリードアウトする等の不具合が生じにくい。また、形成される塗膜や硬化膜中に撥水成分となるシリコーン成分を含有させることができるので、耐薬品性に優れた塗膜や硬化膜を形成可能な塗料組成物とすることができる。さらに、塗料組成物は、その分子構造中にシリコーン成分を組み込んだシリコーン変性オリゴマーを含有するため、滑り性及び耐擦傷性が向上した塗膜や硬化膜を形成可能となることが期待される。
【0015】
ウレタンアクリレートオリゴマーは、その分子構造中に6以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーである。6以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタンアクリレートオリゴマーを用いることで、耐溶剤性及び耐薬品性に優れた硬化膜を形成可能な塗料組成物とすることができる。
【0016】
ウレタンアクリレートオリゴマーの重量平均分子量は3,000〜50,000であり、好ましくは4,000〜40,000である。重量平均分子量が上記範囲内のウレタンアクリレートオリゴマーを用いることで、加温伸張性(例えば30%以上)を有するとともに、耐溶剤性及び耐薬品性に優れた硬化膜を形成可能な塗料組成物とすることができる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される、ポリスチレン換算の値である。
【0017】
塗料組成物中のウレタンアクリレートオリゴマーの含有量は、塗料固形分を基準として、30質量%以上であり、好ましくは50〜100質量%である。塗料固形分を基準とするウレタンアクリレートオリゴマーの含有量が少なすぎると、形成される硬化膜の耐溶剤性及び耐薬品性が低下するとともに、硬化膜どうしが接触すると貼り付きやすくなり、タックフリー性が低下する。
【0018】
[構成単位(a)]
ウレタンアクリレートオリゴマーは、水酸基及び3以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位(a)を有する。この構成単位(a)を有することで、6以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタンアクリレートオリゴマーとすることができる。構成単位(a)を構成する多官能(メタ)アクリレートモノマーは、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの少なくともいずれかが好ましい。
【0019】
[構成単位(b)]
ウレタンアクリレートオリゴマーは、2以上の水酸基を有する分子量100以下のアルコールに由来する構成単位(b)を有する。この構成単位(b)を構成するアルコールは、いわゆる短鎖アルコールである。このような短鎖アルコールに由来する構成単位(b)を有することで、後述するイソホロンジイソシアネートに由来する構成単位(c)が密に繰り返して連続した構造を有するウレタンアクリレートオリゴマーとすることができる。このような構造を有するウレタンアクリレートオリゴマーは、アルコール類に溶解しやすい。さらに、このような構造を有するウレタンアクリレートオリゴマーを用いることで、耐溶剤性及び耐薬品性に優れた硬化膜を形成可能な塗料組成物とすることができるとともに、硬化膜のタックフリー性を向上させることができる。なお、構成単位(b)を構成するアルコールは、エチレングリコール及びグリセリンの少なくともいずれかが好ましい。
【0020】
[構成単位(c)]
ウレタンアクリレートオリゴマーは、イソホロンジイソシアネートに由来する構成単位(c)を有する。この構成単位(c)を有するウレタンアクリレートオリゴマーを用いることで、耐溶剤性及び耐薬品性に優れた硬化膜を形成可能な塗料組成物とすることができる。なお、脂環式ポリイソシアネートであるイソホロンジイソシアネートに代えて、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネートを用いると、ウレタンアクリレートオリゴマーの結晶性が高くなり過ぎるとともに、合成することがそもそも困難になりやすい。また、芳香族ポリイソシアネートを用いると、形成される硬化膜の耐候(光)性が低下する。
【0021】
[構成単位(d)]
ウレタンアクリレートオリゴマーは、カルビノール変性ポリシロキサンに由来する構成単位(d)を有する。カルビノール変性ポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【0022】
【0023】
一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、又は−R−OH(但し、Rはアルキレン基)で表される基を表す。但し、R〜Rのうちの少なくとも1つは−R−OHで表される基である。m及びnは、それぞれ独立に、0又は正の整数(但し、m+n≧1)を表す。なお、R〜Rは、相互に結合して環構造を形成していてもよい。
【0024】
カルビノール変性ポリシロキサンとしては、市販品や新たに合成したもの等を用いることができる。カルビノール変性ポリシロキサンの重量平均分子量は、相溶性や粘度等の観点から、10,000以下であることが好ましく、3,000以下であることがさらに好ましい。
【0025】
(溶剤)
塗料組成物には、有機溶剤等の溶剤をさらに含有させることができる。すなわち、ウレタンアクリレートオリゴマーを適当な有機溶剤に溶解し、希釈させた状態で用いることができる。有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ノルマルヘキサンなどの炭化水素類;エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルセロソルブなどのグリコールエーテル類;を挙げることができる。なかでも、耐溶剤性の低い基材への塗工、形成される硬化膜を接触させる部材等への影響、及びその他の樹脂成分との混合等を考慮すると、アルコール類が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルがさらに好ましい。
【0026】
(無機フィラー)
塗料組成物には、無機フィラーをさらに含有させることができる。無機フィラーを含有させることで、形成される硬化膜の耐摩耗性等の物性を向上させることができる。無機フィラーとしては、例えば、アルミナやナノシリカ等の微粒子を用いることができる。なかでも、アルミナ微粒子を用いることが好ましい。無機フィラーの平均一次粒子径は、分散性や透明性の観点から、1〜100nmであることが好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。塗料組成物中の無機フィラーの含有量は、塗料固形分を基準として、1〜50質量%とすることが好ましい。本明細書における「平均一次粒子径」は、体積基準の粒子径分布の50%累積値(D50)を意味する。なお、粒子の粒子径分布は、レーザー回析式の粒度分布測定装置を使用して測定することができる。
【0027】
(その他の成分)
塗料組成物には、必要に応じて、ウレタンアクリレートオリゴマーとは官能基数や構造が異なる(メタ)アクリレートポリマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートモノマー等のエチレン性不飽和二重結合を有する硬化型樹脂成分をさらに含有させることができる。また、上記の硬化型樹脂成分以外にも、エチレン性不飽和二重結合を有する各種の硬化型成分を含有させることができる。このような硬化型成分としては、例えば、アクリル当量が150g/eq以上であるアクリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートモノマーなどを挙げることができる。
【0028】
塗料組成物には、光重合開始剤を含有させることができる。光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノン等を挙げることができる。なお、公知の硬化促進剤を光重合開始剤と併用してもよい。光重合開始剤の量は、ウレタンアクリレートオリゴマーを含む硬化型樹脂成分100質量部に対して、3〜10質量部とすることが好ましい。
【0029】
塗料組成物には、各種の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、熱可塑性樹脂、帯電防止剤、ワックス、熱安定剤、難燃剤、消臭剤、紫外線吸収剤(UVA)、ラジカル捕捉剤(HALS)、界面活性剤等を挙げることができる。紫外線吸収剤やラジカル捕捉剤を含有させることで、形成される硬化膜の耐候性をさらに向上させることができるために好ましい。また、シリコーン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤を含有させることで、形成される硬化膜の耐溶剤性や防汚性を向上させることができるために好ましい。
【0030】
<加飾フィルム>
前述の塗料組成物を用いることで、車両内外装等の各種成形品を加飾するのに好適な加飾フィルムを得ることができる。すなわち、本発明の加飾フィルムは、フィルム状のプラスチック基材と、このプラスチック基材の少なくとも一方の面上に配設される、前述の塗料組成物で形成された塗工膜を硬化させた硬化膜と、を備える。
【0031】
プラスチック基材を構成するためのプラスチック(樹脂)としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)等を挙げることができる。なかでも、車両内外装の加飾用途ではPMMAやPCが好ましい。プラスチック基材は、積層フィルムであることも好ましい。
【0032】
フィルム状のプラスチック基材の厚さは、操作性及び加工性等の観点から、25〜500μmであることが好ましい。
【0033】
プラスチック基材の塗料組成物が塗布される面(硬化膜が配設される面)は、塗料組成物の密着性を向上させる目的で、表面処理されていることが好ましい。表面処理としては、プライマー処理、サンドブラスト処理、溶剤処理などの表面凹凸化処理;コロナ放電処理、クロム酸処理、オゾン・紫外線照射処理などの酸化処理;などを挙げることができる。一方、加飾フィルムをインモールド転写に用いる場合、塗料組成物との剥離性を向上させる目的で、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、又はフッ素樹脂等によってプラスチック基材の表面が離型処理されていることが好ましい。
【0034】
加飾フィルムは、従来公知の方法にしたがって製造することができる。例えば、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、スクリーンコートなどの公知のコーティング方法でプラスチック基材の表面に塗料組成物を塗布して塗工膜を形成する。次いで、形成した塗工膜に所定線量の紫外線や電子線を照射し、塗工膜を硬化させて硬化膜を形成することで、加飾フィルムを得ることができる。紫外線や電子線を照射する装置としては、キセノンランプ、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、無電極ランプ、LEDランプ、キセノンフラッシュランプ、エキシマランプ等の公知の紫外線照射装置や電子線照射装置を使用することができる。
【0035】
塗工膜や硬化膜の厚さは、用途に応じて適宜設定すればよい。具体的には、塗工膜や硬化膜の厚さは、通常、100nm〜10μmであり、3〜5μmとすることが好ましい。なお、厚さ100nm前後の低屈折率層をさらに積層配置することで、反射防止効果を持たせた加飾フィルムとすることもできる。
【0036】
<加飾成形品>
前述の塗料組成物や、この塗料組成物を用いて製造した加飾フィルムを用いることで、種々の加飾成形品を得ることができる。すなわち、本発明の加飾成形品は、樹脂製の成形品本体と、この成形品本体の少なくとも一部の表面上に配設される、前述の塗料組成物で形成された塗工膜を硬化させた硬化膜と、を備える。
【0037】
前述の通り、本発明の塗料組成物は、優れた加温伸張性を有するとともに、耐溶剤性及び耐薬品性に優れた硬化膜を形成することが可能な材料である。このため、この塗料組成物で形成された塗工膜を硬化させた硬化膜を備える加飾成形品は、加温伸張性、耐溶剤性、及び耐薬品性に優れた硬化膜を少なくとも一部の表面に有する。このような特性を有する加飾成形品の具体例としては、車両内外装、建材内外装、家電、モバイル用途等を挙げることができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0039】
<ウレタンアクリレートオリゴマーの製造>
(ウレタンアクリレートオリゴマーA)
三口フラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレート1,696部、エチレングリコール420部、カルビノール変性ポリシロキサン(分子量1,000)120部、ジブチル錫ラウレート4部、2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)8部、及び酢酸プロピル4,000部を仕込んだ。均一に撹拌した後、60℃に制御しながらイソホロンジイソシアネート1,883部を投入した。その後、70℃で15時間撹拌して反応を完結させ、重量平均分子量5,000のウレタンアクリレートオリゴマーA(6官能)の溶液(固形分50%)を得た。得られたウレタンアクリレートオリゴマーA中の構成単位(d)の含有量は、構成単位(a)〜(c)の合計に対して、3.0%であった。また、得られたウレタンアクリレートオリゴマーAは、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類に可溶であった。
【0040】
(ウレタンアクリレートオリゴマーB)
三口フラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレート2,328部、エチレングリコール262部、カルビノール変性ポリシロキサン(分子量1,000)120部、ジブチル錫ラウレート4部、BHT8部、及び酢酸プロピル4,000部を仕込んだ。均一に撹拌した後、60℃に制御しながらイソホロンジイソシアネート1,410部を投入した。その後、70℃で15時間撹拌して反応を完結させ、重量平均分子量3,000のウレタンアクリレートオリゴマーB(6官能)の溶液(固形分50%)を得た。得られたウレタンアクリレートオリゴマーB中の構成単位(d)の含有量は、構成単位(a)〜(c)の合計に対して、3.0%であった。また、得られたウレタンアクリレートオリゴマーBは、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類に可溶であった。
【0041】
(ウレタンアクリレートオリゴマーC)
三口フラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレート1,163部、エチレングリコール393部、カルビノール変性ポリシロキサン(分子量1,000)96部、ジブチル錫ラウレート4部、BHT8部、及び酢酸プロピル4,800部を仕込んだ。均一に撹拌した後、60℃に制御しながらイソホロンジイソシアネート1,643部を投入した。その後、70℃で15時間撹拌して反応を完結させ、重量平均分子量7,000のウレタンアクリレートオリゴマーC(6官能)の溶液(固形分40%)を得た。得られたウレタンアクリレートオリゴマーC中の構成単位(d)の含有量は、構成単位(a)〜(c)の合計に対して、3.0%であった。また、得られたウレタンアクリレートオリゴマーCは、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類に可溶であった。
【0042】
(ウレタンアクリレートオリゴマーD)
ペンタエリスリトールトリアクリレートに代えて、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートを用いたこと以外は、前述のウレタンアクリレートオリゴマーAの場合と同様にして、重量平均分子量6,000のウレタンアクリレーオリゴマートD(10官能)の溶液(固形分40%)を得た。得られたウレタンアクリレートオリゴマーD中の構成単位(d)の含有量は、構成単位(a)〜(c)の合計に対して、3.0%であった。また、得られたウレタンアクリレートオリゴマーDは、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類に可溶であった。
【0043】
(ウレタンアクリレートオリゴマーE)
三口フラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレート1,284部、エチレングリコール290部、グリセリン72部、カルビノール変性ポリシロキサン(分子量1000)96部、ジブチル錫ラウレート4部、BHT8部、及び酢酸プロピル4,800部を仕込んだ。均一に撹拌した後、60℃に制御しながらイソホロンジイソシアネート1,555部を投入した。その後、70℃で15時間撹拌して反応を完結させ、重量平均分子量37,000のウレタンアクリレートオリゴマーE(9官能)の溶液(固形分40%)を得た。得られたウレタンアクリレートオリゴマーE中の構成単位(d)の含有量は、構成単位(a)〜(c)の合計に対して、3.1%であった。また、得られたウレタンアクリレートオリゴマーEは、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類に可溶であった。
【0044】
(ウレタンアクリレートオリゴマーF)
カルビノール変性ポリシロキサンを用いなかったこと以外は、前述のウレタンアクリレートオリゴマーCの場合と同様にして、重量平均分子量7,000のウレタンアクリレートオリゴマーF(6官能)の溶液(固形分40%)を得た。得られたウレタンアクリレートオリゴマーFには、構成単位(d)が含まれていない。また、得られたウレタンアクリレートオリゴマーFは、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類に可溶であった。
【0045】
(ウレタンアクリレートオリゴマーG)
カルビノール変性ポリシロキサンを用いなかったこと以外は、前述のウレタンアクリレートオリゴマーDの場合と同様にして、重量平均分子量6,000のウレタンアクリレートオリゴマーG(10官能)の溶液(固形分40%)を得た。得られたウレタンアクリレートオリゴマーGには、構成単位(d)が含まれていない。また、得られたウレタンアクリレートオリゴマーGは、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類に可溶であった。
【0046】
(ウレタンアクリレートオリゴマーH)
三口フラスコに、ヒドロキシエチルアクリレート633部、エチレングリコール615部、カルビノール変性ポリシロキサン(分子量1,000)120部、ジブチル錫ラウレート4部、BHT8部、及び酢酸プロピル4,000部を仕込んだ。均一に撹拌した後、60℃に制御しながらイソホロンジイソシアネート2,751部を投入した。その後、70℃で15時間撹拌して反応を完結させ、重量平均分子量3,000のウレタンアクリレートオリゴマーH(2官能)の溶液(固形分50%)を得た。得られたウレタンアクリレートオリゴマーH中の構成単位(d)の含有量は、構成単位(a)〜(c)の合計に対して、3.0%であった。また、得られたウレタンアクリレートオリゴマーHは、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類に可溶であった。
【0047】
(ウレタンアクリレートオリゴマーI)
三口フラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレート1,454部、エチレングリコール492部、カルビノール変性ポリシロキサン(分子量1,000)120部、ジブチル錫ラウレート4部、BHT8部、及びアクリロイルモルフォリン(ACMO、KJケミカルズ社製)4,000部を仕込んだ。均一に撹拌した後、60℃に制御しながらイソホロンジイソシアネート2,054部を投入した。その後、70℃で15時間撹拌して反応を完結させ、重量平均分子量7,700のウレタンアクリレートオリゴマーI(6官能)の溶液(固形分100%(無溶剤))を得た。このウレタンアクリレートオリゴマーIは、ウレタンアクリレートオリゴマーCを50%含有するものである。得られたウレタンアクリレートオリゴマーI中の構成単位(d)の含有量は、構成単位(a)〜(c)の合計に対して、3.0%であった。また、得られたウレタンアクリレートオリゴマーIは、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類に可溶であった。
【0048】
<塗料組成物の調製及び加飾フィルム(試験片)の作製>
(実施例1)
ウレタンアクリレートオリゴマーAの溶液(固形分50%)100部、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、商品名「Irgacure184」、BASFジャパン社製)4部、及びアルミナ微粒子分散液(商品名「NANOBYK−3610」、ビックケミージャパン社製、固形分37%)5部(但し、アルミナ分として)を混合した。プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を添加して希釈し、塗料固形分25%の塗料組成物を得た。得られた塗料組成物を(i)厚さ25μmの易成形PETフィルム(帝人デュポン社製)、及び(ii)厚さ75μmのPMMAフィルム(三菱ケミカル社製)に、乾燥後の膜厚が3μmとなるようにワイヤーバーを用いてそれぞれ塗工した。100℃の乾燥機で40秒乾燥した後、80W/cmの高圧水銀灯にて約300mJ/cmの条件で硬化させて硬化膜を形成し、2種類の試験片(加飾フィルム)を得た。
【0049】
(実施例2)
ウレタンアクリレートオリゴマーAの溶液に代えて、ウレタンアクリレートオリゴマーBの溶液を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、塗料固形分25%の塗料組成物を得た。そして、得られた塗料組成物を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2種類の試験片(加飾フィルム)を得た。
【0050】
(実施例3)
ウレタンアクリレートオリゴマーAの溶液に代えて、ウレタンアクリレートオリゴマーCの溶液を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、塗料固形分25%の塗料組成物を得た。そして、得られた塗料組成物を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2種類の試験片(加飾フィルム)を得た。
【0051】
(実施例4)
ウレタンアクリレートオリゴマーAの溶液に代えて、ウレタンアクリレートオリゴマーDの溶液を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、塗料固形分25%の塗料組成物を得た。そして、得られた塗料組成物を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2種類の試験片(加飾フィルム)を得た。
【0052】
(実施例5)
ウレタンアクリレートオリゴマーAの溶液に代えて、ウレタンアクリレートオリゴマーEの溶液を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、塗料固形分25%の塗料組成物を得た。そして、得られた塗料組成物を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2種類の試験片(加飾フィルム)を得た。
【0053】
(実施例6)
ウレタンアクリレートオリゴマーCに対する固形分比で0.2%のUV反応性シリコーン系添加剤(商品名「BYK−UV3500」、ビックケミージャパン社製)をさらに用いたこと以外は、前述の実施例3の場合と同様にして、塗料固形分25%の塗料組成物を得た。そして、得られた塗料組成物を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2種類の試験片(加飾フィルム)を得た。
【0054】
(実施例7)
ウレタンアクリレートオリゴマーAの溶液に代えて、ウレタンアクリレートオリゴマーIとACMOを含有する溶液(ウレタンアクリレートオリゴマーI:ACMO=65:35(質量比))を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、塗料固形分25%の塗料組成物を得た。得られた塗料組成物の塗料固形分中のウレタンアクリレートオリゴマーCの含有量は、30%以上であった。そして、得られた塗料組成物を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2種類の試験片(加飾フィルム)を得た。
【0055】
(比較例1)
ウレタンアクリレートオリゴマーAの溶液に代えて、ウレタンアクリレートオリゴマーFの溶液を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、塗料固形分25%の塗料組成物を得た。そして、得られた塗料組成物を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2種類の試験片(加飾フィルム)を得た。
【0056】
(比較例2)
ウレタンアクリレートオリゴマーAの溶液に代えて、ウレタンアクリレートオリゴマーGの溶液を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、塗料固形分25%の塗料組成物を得た。そして、得られた塗料組成物を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2種類の試験片(加飾フィルム)を得た。
【0057】
(比較例3)
ウレタンアクリレートオリゴマーAの溶液に代えて、ウレタンアクリレートオリゴマーHの溶液を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、塗料固形分25%の塗料組成物を得た。そして、得られた塗料組成物を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2種類の試験片(加飾フィルム)を得た。
【0058】
(比較例4)
ウレタンアクリレートオリゴマーAの溶液に代えて、アクリルアクリレート(二重結合当量260g/eq、重量平均分子量30,000)の溶液を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、塗料固形分25%の塗料組成物を得た。そして、得られた塗料組成物を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2種類の試験片(加飾フィルム)を得た。
【0059】
(比較例5)
ウレタンアクリレートオリゴマーAの溶液に代えて、アクリルアクリレート(二重結合当量830g/eq、重量平均分子量30,000)の溶液を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、塗料固形分25%の塗料組成物を得た。そして、得られた塗料組成物を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2種類の試験片(加飾フィルム)を得た。
【0060】
(比較例6)
ウレタンアクリレートオリゴマーFに対する固形分比で0.2%のUV反応性シリコーン系添加剤(商品名「BYK−UV3500」、ビックケミージャパン社製)をさらに用いたこと以外は、前述の比較例1の場合と同様にして、塗料固形分25%の塗料組成物を得た。そして、得られた塗料組成物を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2種類の試験片(加飾フィルム)を得た。
【0061】
(比較例7)
ウレタンアクリレートオリゴマーAの溶液に代えて、ウレタンアクリレートオリゴマーIとACMOを含有する溶液(ウレタンアクリレートオリゴマーI:ACMO=50:50(質量比))を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、塗料固形分25%の塗料組成物を得た。得られた塗料組成物の塗料固形分中のウレタンアクリレートオリゴマーCの含有量は、30%未満であった。そして、得られた塗料組成物を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2種類の試験片(加飾フィルム)を得た。
【0062】
<評価>
(1)外観
硬化膜の外観(色味・相溶性)を目視観察し、5段階(劣1→・・・→5良好)で評価した。結果を表1に示す。
【0063】
(2)タックフリー性
2つの試験片の硬化膜どうしが接触するように貼り合わせるとともに、10kg荷重で30秒間放置した。そして、以下に示す評価基準にしたがってタックフリー性を評価した。結果を表1に示す。
○:貼り付きなし。
△:剥離するまでに若干間があったが、接触面に異常は生じなかった。
×:剥離しない、又は接触面に異常が生じた。
【0064】
(3)加温伸張性
引張試験機(商品名「AGS−X」、島津製作所社製)を使用して引張試験を実施し、硬化膜の加温伸張性を評価した。具体的には、まず、易成形PETフィルムを用いて作製した試験片(幅10mm×長さ110mm)を、チャック間距離60mmとして引張試験機にセットした。次いで、120℃の温度条件下、50mm/minの速度で試験片を引っ張り、硬化膜に亀裂が生ずる時点までの伸び(加温伸長度(%))を測定し、加温伸張性の指標とした。なお、チャック間距離が120mmになった時点で伸びを「加温伸長度=100%」とした。加温伸長度(%)の測定結果を表1に示す。
【0065】
(4)耐溶剤性
PMMAフィルムを用いて作製した試験片の硬化膜表面にスポイトを用いてキシレンを2滴垂らした後、常温で30分放置した。次いで、硬化膜表面を布で乾拭きし、硬化膜表面を目視観察して耐溶剤性を5段階(劣1→・・・→5優)で評価した。結果を表1に示す。
【0066】
(5)耐薬品性
PMMAフィルムを用いて作製した試験片の硬化膜表面を1kg荷重した布で20往復乾拭きした。その後、乾拭きした硬化膜表面に手肌用の化粧料(商品名「ニュートロジーナ(登録商標)」、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製)を直径30mmの円を描くように綿棒で塗布した。80℃の乾燥機中に6時間放置した後、硬化膜表面を布で乾拭きし、硬化膜表面を目視観察して耐薬品性を5段階(劣1→・・・→5優)で評価した。結果を表1に示す。
【0067】
【0068】
実施例1〜4と、比較例1及び2とを比較すると、実施例1〜4のほうが耐薬品性に優れていることがわかる。特に、ウレタンアクリレートオリゴマーの分子量が大きいほど、耐薬品性に優れている。イソホロン環状構造が連続的に繰り返した構造を有するウレタンアクリレートオリゴマーを用いたことで、硬化膜の加温伸張性及び耐薬品性が向上したとともに、シリコーン変性オリゴマーであるウレタンアクリレートオリゴマーを用いたため、基材まで薬品(化粧料)が浸透しなかったと考えられる。
【0069】
実施例1〜3の評価結果から、ウレタンアクリレートオリゴマーの分子量が大きいほど加温伸張性は向上するが、耐薬品性が若干低下したことがわかる。但し、シリコーン変性オリゴマーであるウレタンアクリレートオリゴマーを用いたため、耐薬品性が大幅に低下することはなかった。また、実施例5の評価結果から、グリセリンに由来する構成単位を有するウレタンアクリレートオリゴマーを用いれば、分子量が大きくても耐薬品性が低下しないことがわかる。これは、官能基(アクリロイル基)の数が多いとともに、イソホロン環状構造がより密に繰り返した構造を有するウレタンアクリレートオリゴマーを用いたためであると考えられる。
【0070】
比較例3の評価結果から、官能基(アクリロイル基)の数が少ないウレタンアクリレートオリゴマーを用いると、十分な加温伸張性を示す一方で、耐溶剤性及び耐薬品性が顕著に低下することがわかる。
【0071】
実施例3と実施例6を比較すると、シリコーン系添加剤を用いることで耐溶剤性が向上したことがわかる。しかし、実施例6と比較例6を比較すると、シリコーン変性オリゴマーであるウレタンアクリレートオリゴマーを用いずに、UV反応性シリコーン系添加剤を用いると、耐薬品性が低下したことがわかる。比較例6では、耐薬品性を評価する際、硬化膜表面を乾拭きしたことで硬化膜表面のシリコーン系添加剤が拭き取られたとともに、滑りが低下して若干傷ついたために、耐薬品性が低下したと考えられる。
【0072】
実施例7と比較例7を比較すると、一定量以上のウレタンアクリレートオリゴマーを含有させることで、塗料組成物が十分に硬化し、有効な耐溶剤性及び耐薬品性が発現することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の塗料組成物は、加飾フィルムや加飾成形品を製造するための材料として有用である。

【手続補正書】
【提出日】2019年12月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電離放射線硬化型の塗料組成物であって、
6以上の(メタ)アクリロイル基を有する、その重量平均分子量が3,000〜50,000であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)を含有し、
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)が、水酸基及び3以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位(a)と、2以上の水酸基を有する分子量100以下のアルコールに由来する構成単位(b)と、イソホロンジイソシアネートに由来する構成単位(c)と、カルビノール変性ポリシロキサンに由来する構成単位(d)と、を有するシリコーン変性オリゴマーであり、
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)中の前記構成単位(d)の含有量が、前記構成単位(a)〜(c)の合計に対して、0.1〜10質量%であり、
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)の含有量が、塗料固形分を基準として、50質量%以上である塗料組成物。
【請求項2】
前記カルビノール変性ポリシロキサンの重量平均分子量が、3,000以下である請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記多官能(メタ)アクリレートモノマーが、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの少なくともいずれかである請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記アルコールが、エチレングリコール及びグリセリンの少なくともいずれかである請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
その平均一次粒子径が1〜100nmである無機フィラーをさらに含有し、
前記無機フィラーの含有量が、塗料固形分を基準として、1〜50質量%である請求項1〜のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
フィルム状のプラスチック基材と、
前記プラスチック基材の少なくとも一方の面上に配設される、請求項1〜のいずれか一項に記載の塗料組成物で形成された塗工膜を硬化させた硬化膜と、を備える加飾フィルム。
【請求項7】
樹脂製の成形品本体と、
前記成形品本体の少なくとも一部の表面上に配設される、請求項1〜のいずれか一項に記載の塗料組成物で形成された塗工膜を硬化させた硬化膜と、を備える加飾成形品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
すなわち、本発明によれば、以下に示す塗料組成物が提供される。
[1]電離放射線硬化型の塗料組成物であって、6以上の(メタ)アクリロイル基を有する、その重量平均分子量が3,000〜50,000であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)を含有し、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)が、水酸基及び3以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位(a)と、2以上の水酸基を有する分子量100以下のアルコールに由来する構成単位(b)と、イソホロンジイソシアネートに由来する構成単位(c)と、カルビノール変性ポリシロキサンに由来する構成単位(d)と、を有するシリコーン変性オリゴマーであり、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)中の前記構成単位(d)の含有量が、前記構成単位(a)〜(c)の合計に対して、0.1〜10質量%であり、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)の含有量が、塗料固形分を基準として、50質量%以上である塗料組成物。
[2]前記カルビノール変性ポリシロキサンの重量平均分子量が、3,000以下である前記[1]に記載の塗料組成物。
]前記多官能(メタ)アクリレートモノマーが、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの少なくともいずれかである前記[1]又は[2]に記載の塗料組成物。
]前記アルコールが、エチレングリコール及びグリセリンの少なくともいずれかである前記[1]〜[3]のいずれかに記載の塗料組成物。
]その平均一次粒子径が1〜100nmである無機フィラーをさらに含有し、前記無機フィラーの含有量が、塗料固形分を基準として、1〜50質量%である前記[1]〜[]のいずれかに記載の塗料組成物。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
また、本発明によれば、以下に示す加飾フィルム及び加飾成形品が提供される。
]フィルム状のプラスチック基材と、前記プラスチック基材の少なくとも一方の面上に配設される、前記[1]〜[]のいずれかに記載の塗料組成物で形成された塗工膜を硬化させた硬化膜と、を備える加飾フィルム。
]樹脂製の成形品本体と、前記成形品本体の少なくとも一部の表面上に配設される、前記[1]〜[]のいずれかに記載の塗料組成物で形成された塗工膜を硬化させた硬化膜と、を備える加飾成形品。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
参考例7)
ウレタンアクリレートオリゴマーAの溶液に代えて、ウレタンアクリレートオリゴマーIとACMOを含有する溶液(ウレタンアクリレートオリゴマーI:ACMO=65:35(質量比))を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、塗料固形分25%の塗料組成物を得た。得られた塗料組成物の塗料固形分中のウレタンアクリレートオリゴマーCの含有量は、30%以上であった。そして、得られた塗料組成物を用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、2種類の試験片(加飾フィルム)を得た。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
参考例7と比較例7を比較すると、一定量以上のウレタンアクリレートオリゴマーを含有させることで、塗料組成物が十分に硬化し、有効な耐溶剤性及び耐薬品性が発現することがわかる。