【解決手段】 ポリウレタン原料(I)を含む組成物をメカニカルフロス法にて発泡させて得られる発泡性組成物を硬化して得られるウレタン発泡体であり、ポリウレタン原料(I)は、イオン導電性基および活性エネルギー線重合性官能基を有するウレタンプレポリマー(A)と、活性エネルギー線重合性シリコーン(B)とを含み、JIS K 6796における抽出溶媒をアセトンにしたゲル分率が90%以上である導電性ポリウレタン発泡体。
前記発泡性組成物におけるSH−INDEX((ポリチオール(III)の含有量[g]×ポリチオール(III)の官能基数)/(ポリチオール(III)の分子量[g/mol]×プレポリマー(A)の活性エネルギー線重合性の官能基量[mol])が、0.5〜1.5の範囲にある、請求項2記載の導電性ポリウレタン発泡体。
前記プレポリマー(A)の80℃におけるJIS K 7117−2に準じた粘度が、1〜20Pa・sである、請求項1〜4の何れか一項に記載の導電性ポリウレタン発泡体。
前記発泡性組成物におけるSH−INDEX((ポリチオール(III)の含有量[g]×ポリチオール(III)の官能基数)/(ポリチオール(III)の分子量[g/mol]×プレポリマー(A)の活性エネルギー線重合性の官能基量[mol])が、0.5〜1.5の範囲にある、請求項10記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明における活性水素を含む官能基としては、好ましくは、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基などが挙げられる。活性水素を含む官能基は、1種であってもよいし、複数種を組み合わせてもよい。
【0018】
本発明における活性水素と反応し得る官能基としては、好ましくは、アルコキシ基、イソシアネート基、エポキシ基などが挙げられる。活性水素と反応し得る官能基は、1種であってもよいし、複数種を組み合わせてもよい。
【0019】
本発明におけるイオン導電性基とは、カチオン性またはアニオン性を有する官能基を示す。イオン性導電性基としては、例えば、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム等塩に由来するカチオン性のものであることが好ましい。なお、アニオン性のイオン導電性基としては、例えば、スルホン酸基等が例示される。
【0020】
本発明における活性エネルギー線とは、X線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線などを示す。また、紫外線、可視光線、赤外線をまとめて「光」と表現する場合がある。
【0021】
本発明における活性エネルギー線重合性とは、活性エネルギー線反応性基(好ましくは、光反応性官能基)を有することを示し、より好ましくは、エチレン性またはアセチレン性(好ましくはエチレン性)の不飽和炭素結合を含む官能基を有することを示す。この不飽和炭素結合を含む官能基としては、アルケニル基(ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペテニル基、ヘキセニル基等)や(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。また、活性エネルギー線反応性基のことを、活性エネルギー線重合性官能基と呼ぶことがある。
【0022】
本発明における固形分とは、溶媒(特に有機溶媒)以外の組成物を構成する成分、又はその質量や体積を意味する。
【0023】
本発明における導電剤とは、ウレタン発泡体に添加されることで、ウレタン発泡体の導電性を向上させることが可能な剤であり、例えば、抵抗値を11(LogΩ)以下(好ましくは、9(LogΩ)以下)とし得る添加剤を示す。なお、抵抗値は、以下の方法に従って測定することができる。
A4サイズで肉厚2mmのローラ上に形成したサンプルを平板状に置き、両端に各500gfを荷重する。R8340a(測定装置の名称)の端子を接続し、100V×10sec印加時の平均抵抗値を測定する。測定条件を以下に示す。
測定器 ADVANTEST社製 R8340a
印加電圧 100V
印加時間 10sec
測定環境 22℃ 55%RH
荷重 500gf(両端にそれぞれ荷重)
測定方法 平板測定法
【0024】
以下、導電性ポリウレタン発泡体を得るための発泡性組成物、導電性ポリウレタン発泡体の製造方法、導電性ポリウレタン発泡体の構造、画像表示装置、について其々説明する。なお、以下、導電性ポリウレタン発泡体を、単にウレタン発泡体と表記する場合がある。
【0025】
<<<<発泡性組成物>>>>
導電性ポリウレタン発泡体は、ポリウレタン原料(I)を含む発泡性組成物を硬化して得られる。発泡性組成物は、ポリウレタン原料(I)を含む組成物を、メカニカルフロス法にて発泡させて得られる。発泡性組成物は、ポリチオール(III)を含むことが好ましく、その他の成分(IV)を更に含んでいてもよい。なお、メカニカルフロス法は、通常、造泡用気体(II)の存在下で実施され、発泡性組成物もこの造泡用気体(II)を含むが、最終的に得られる導電性ポリウレタン発泡体自体は、構造内(発泡体のセル内)に、造泡用気体(II)を含んでいてもよいし、造泡用気体(II)を含まなくてもよい。以下、(I)〜(IV)のそれぞれの成分について説明する。
【0026】
<<<ポリウレタン原料(I)>>>
ポリウレタン原料(I)は、プレポリマー(A)と、活性エネルギー線重合性シリコーン(B)とを含む。
【0027】
<<プレポリマー(A)>>
プレポリマー(A)は、骨格中に組み込まれた、イオン導電性基および活性エネルギー線重合性官能基を有する。
【0028】
なお、ウレタンプレポリマー(A)は、通常、ポリオール、ポリイソシアネートを含む原料から得られるものであるが、イオン導電性基および活性エネルギー線重合性官能基については、どのような形でウレタンプレポリマー(A)に導入されてもよい。ウレタンプレポリマー(A)は、例えば、ポリオール(a−1)、ポリイソシアネート(a−2)、活性水素含有基または活性水素と反応し得る官能基を有する導電剤(a−3)、および、活性水素含有基または活性水素と反応し得る官能基を有する活性エネルギー線重合性化合物(a−4)、を合成することで得られる。
【0029】
なお、これら(a−1)〜(a−4)は、互いに異なる成分であってもよいが、導電剤(a−3)や活性エネルギー線重合性化合物(a−4)が2つ以上のアルコール性水酸基を有している場合には、これらをポリオール(a−1)として扱ってもよく、また、導電剤(a−3)や活性エネルギー線重合性化合物(a−4)が2つ以上のイソシアネート基を有する場合には、これらをポリイソシアネート(a−2)として扱ってもよい。
【0030】
これら(a−1)〜(a−4)を含むプレポリマー合成用の組成物を、プレポリマー用組成物(a)とする場合がある。
【0031】
プレポリマー(A)は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、モノオール、モノイソシアネート、活性水素含有基および活性水素と反応し得る官能基を有しない導電剤、活性水素含有基および活性水素と反応し得る官能基を有しない活性エネルギー線重合性化合物、等を含んでいてもよい。
【0032】
プレポリマー(A)は、80℃におけるJIS K 7117−2に準じた粘度が、1〜20Pa・sであることが好ましく、1〜10Pa・sであることがより好ましく、1.5〜7.5Pa・sであることが更に好ましい。この粘度は、各成分の含有量等を調整することで変更可能である。
【0033】
以下、(a−1)〜(a−4)のそれぞれの成分について説明する。なお、以下に示す(a−1)〜(a−4)は1例であり、本発明の効果を阻害しない範囲内で適宜変更可能である。
【0034】
<ポリオール(a−1)>
ポリオール(a−1)は、1つの分子に2個以上の水酸基を有する化合物であり、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されない。
【0035】
ポリオール化合物は、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリジエン系ポリオール、水添ポリジエンポリオール等が挙げられる。
【0036】
ポリエステルポリオールとしては、ポリオールとポリカルボン酸を脱水縮合反応して得られるポリエステルポリオールや、ε−カプロラクトン、メチルバレロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合で得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0037】
ポリエステルポリオールを形成するポリオールは、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されない。
【0038】
ポリオールとしては、例えば、
エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,4−テトラコサンジオール、1,6−テトラコサンジオール、1,4−ヘキサコサンジオール、1,6−オクタコサンジオールグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール;
1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、2,5−ノルボルナンジオール、1,3−アダマンタンジオール、ダイマージオール等の脂環族ポリオール;
ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の芳香族ポリオール;
等を挙げることができる。これらは1つ又は複数を組み合せて用いることができる。
【0039】
ポリカルボン酸は、その分子構造中にカルボキシル基を複数有する物であり、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されない。
【0040】
ポリカルボン酸としては、例えば、
コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;
フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;
ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸及びヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環族ポリカルボン酸;
これらのポリカルボン酸の酸エステル;
等を挙げることができる。
【0041】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール等の多価アルコールの少なくとも1種と、
ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等と
を反応させて得られるもの等が挙げられる。
【0042】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、
エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルをそれぞれ重合させて得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及び、これらのコポリエーテルが挙げられる。
【0043】
また、グリセリンやトリメチロールエタン等の多価アルコールを用い、上記の環状エーテルを重合させて得ることもできる。
【0044】
ポリエステルエーテルポリオールとしては、ポリカルボン酸と、ジエチレングリコール、もしくはプロピレンオキシド付加物等のグリコール等とを脱水縮合反応で得られるものが挙げられる。
【0045】
ポリカルボン酸としては、例えば、
コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;
フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;
ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸及びヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環族ポリカルボン酸;
これらのポリカルボン酸の酸エステル;
等を挙げることができる。
【0046】
ポリオール化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0047】
<ポリイソシアネート(a−2)>
ポリイソシアネート(a−2)は、1つの分子に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されない。
【0048】
ポリイソシアネートとしては、例えば、
2官能のポリイソシアネートとして、2,4−トルエンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トルエンジイソシアネート(2,6−TDI)、m−フェニレンジイソシネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジアネート(2,4’−MDI)、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’−MDI)、水素添加MDI、キシリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素添加XDI、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、等の芳香族系のもの;
シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族のもの;
ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等のアルキレン系のもの;
2官能以上のポリイソシアネートとして、ポリメリックMDI;
3官能以上のポリイソシアネートとして、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、1,3,5−トリメチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン−4,6,4’−トリイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’テトライソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、1,8−ジイソシアナトメチルオクタン等;
これらのポリイソシアネートの変性体や誘導体等;
等が挙げられる。
【0049】
ポリイソシアネート(a−2)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0050】
ポリイソシアネートの含有量は、特に限定されないが、イソシアネートインデックスが、50〜200または70〜150等となるように配合することができる。なお、イソシアネートインデックスとは、プレポリマー用組成物(a)のポリイソシアネート(a−2)と反応し得る水酸基に対するポリイソシアネート(a−2)におけるイソシアネート基の当量比を百分率で表した数値である。
【0051】
<導電剤(a−3)>
導電剤(a−3)としては、活性水素含有基または活性水素と反応し得る官能基を有する導電剤である限り特に限定されない。
【0052】
導電剤(a−3)としては、4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩等を骨格中に含むものが挙げられる。
【0053】
導電剤(a−3)は、4級アンモニウム塩を骨格中に含むものであることが好ましい。
【0054】
導電剤(a−3)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0055】
導電剤(a−3)の含有量は、特に限定されないが、プレポリマー用組成物(a)中、0.01〜5質量%であることが好ましい。
【0056】
<活性エネルギー線重合性化合物(a−4)>
活性エネルギー線重合性化合物(a−4)としては、活性水素含有基または活性水素と反応し得る官能基を有する活性エネルギー線重合性化合物である限り特に限定されない。活性エネルギー線重合性化合物(a−4)は、1分子中にこのような官能基を複数含んでいてもよい。
【0057】
活性水素含有基として水酸基を有する活性エネルギー線重合性化合物(a−4)としては、例えば、アリルエーテルグリコール、ヒドロキシエチルアリルエーテルなどのアリルエーテル基を有するモノオール;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル基を有するモノオール;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどの(メタ)アクリル基を有するモノオールなどが挙げられる。
【0058】
活性エネルギー線重合性化合物(a−4)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0059】
活性エネルギー線重合性化合物(a−4)の含有量は、特に限定されないが、プレポリマー用組成物(a)中、1〜25質量%であることが好ましい。
【0060】
<<活性エネルギー線重合性シリコーン(B)>>
活性エネルギー線重合性シリコーン(B)としては、分子内に不飽和炭素結合を含む官能基を有するシリコーンであればよく、特に限定されない。活性エネルギー線重合性シリコーン(B)は、不飽和炭素結合を含む官能基を1分子中に複数(好ましくは、1分子中に2〜3個)含んでいてもよい。
【0061】
活性エネルギー線重合性シリコーン(B)としては、例えば、シロキサン構造を有するノニオン性界面活性剤(例えば、ジメチルシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体等)の主鎖の末端及び側鎖の少なくとも1つに(メタ)アクリロイル基を付与した化合物((メタ)アクリル変性シリコーン)等が挙げられる。活性エネルギー線重合性シリコーン(B)としては、より具体的には、両末端シラノールポリジメチルシロキサン、両末端シラノールポリジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、両末端シラノールポリジメチルジフェニルシロキサン等の両末端シラノールシロキサンポリマー、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルアルコキシシラン等と、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン等のエチレン性不飽和結合含有シラン化合物等とを、触媒(例えば、2−エチルヘキサン酸錫)の存在下で、脱水縮合反応および脱アルコール反応させて得られるもの等が挙げられる。
【0062】
活性エネルギー線重合性シリコーン(B)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0063】
活性エネルギー線重合性シリコーン(B)の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは500〜50,000であり、より好ましくは1,000〜10,000であることが好ましい。
【0064】
活性エネルギー線重合性シリコーン(B)の含有量は、特に限定されないが、発泡性組成物中、0.01〜5質量%であることが好ましい。
【0065】
<<<造泡用気体(II)>>>
造泡用気体としては、特に限定されないが、ポリオールやイソシアネート等の反応に悪影響を与えない気体であることが好ましく、乾燥空気や不活性ガス(例えば、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等)であることがより好ましい。
【0066】
発泡性組成物中の造泡用気体(II)の含有量は、発泡密度等に応じて適宜を変更することが可能である。
【0067】
造泡用気体(II)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0068】
<<<ポリチオール(III)>>>
ポリチオール(III)は、ポリウレタン原料(I)に含まれる活性エネルギー線重合性の官能基(不飽和炭素結合)とエンチオール反応することが可能である。このようなエンチオール反応による硬化とすることで、酸素阻害を防止し、所望の硬化物を得ることが可能である。
【0069】
ポリチオールとしては、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル、脂肪族ポリチオール、芳香族ポリチオールが挙げられる。
【0070】
メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステルでは、メルカプトカルボン酸として、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸等が挙げられ、多価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びソルビトール等が挙げられる。これらの中では、臭気が少ない点で、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル類が好ましく、具体的には、例えば、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
【0071】
脂肪族ポリチオール、芳香族ポリチオールとしては、エタンジチオール、プロパンジチオール、ヘキサメチレンジチオール、デカメチレンジチオール、トリレン−2,4−ジチオール、キシレンジチオール等が挙げられる。
【0072】
ポリチオール(III)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0073】
ポリチオール(III)の官能基数は、2.0〜6.0であることが好ましい。ポリチオール(III)を複数含む場合には、その平均官能基数とする。
【0074】
発泡性組成物がポリチオール(III)を含む場合、発泡性組成物におけるSH−INDEXが、0.5〜1.5の範囲であることが好ましい。なお、SH−INDEXは「(ポリチオール(III)の含有量[g]×ポリチオール(III)の官能基数)/(ポリチオール(III)の分子量[g/mol]×プレポリマー(A)の活性エネルギー線重合性の官能基量[mol]」によって得られる。
【0075】
<<<その他の成分(IV)>>>
発泡性組成物は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、その他の成分を含むことができる。その他の成分としては、溶媒、分散媒、触媒、整泡剤、発泡剤、気泡剤、重合開始剤、光安定剤、架橋剤、界面活性剤、増粘剤、気泡核剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、酸素捕捉剤、充填剤、補強剤、難燃剤、表面処理剤等の公知の添加成分等が挙げられる。
【0076】
<<<<導電性ポリウレタン発泡体>>>>
導電性ポリウレタン発泡体の構造は、特に限定されず、その用途に応じて適宜の構造とすればよい。
【0077】
導電性ポリウレタン発泡体を画像形成装置に組み込む場合、導電性ポリウレタン発泡体を、ロール状の導電性発泡ロールとすることが好ましい。導電性ポリウレタン発泡体を導電性発泡ロールとした場合、導電性発泡ロールのロール内径、ロール外径、ウレタン発泡体の厚み、長さ等については、導電性発泡ロールを組み込む画像形成装置の形状および大きさ等に応じて適宜変更可能である。
【0078】
導電性ポリウレタン発泡体の密度は、30〜800kg/m
3であることが好ましく、50〜500kg/m
3であることがより好ましい。また、ウレタン発泡体のセル径は、1〜300μmであることが好ましい。
【0079】
導電性ポリウレタン発泡体は、JIS K 6796における抽出溶媒をアセトンにしたゲル分率が90%以上であり、好ましくは91.5%以上であり、より好ましくは93%以上であり、特に好ましくは95%以上である。
【0080】
本発明によれば、特定の成分を配合することにより、上述した高いゲル分率としつつも、硬度を損なわない導電性ポリウレタン発泡体とすることができる。なお、このようなゲル分率は、発泡性組成物中の活性エネルギー線重合性を有する各化合物の官能基の量および各種製造条件(例えば反応時間等)を変更することにより適宜調整可能である。
【0081】
導電性ポリウレタン発泡体は、下記測定方法によって得られる10%CLDが、200kPa以下であることが好ましい。
(10%CLDの測定方法)
JIS K 6400−2に準じ、サンプルサイズを50mm×50mm×厚み5mmとし、50%予備圧縮を一回行った後、10%圧縮時のCLDを測定する。
【0082】
導電性ポリウレタン発泡体は、独立気泡発泡体であってもよいし、連続気泡発泡体でもよい。
【0083】
なお、導電性ポリウレタン発泡体を導電性発泡ロールとする場合、全てをウレタン発泡体としてもよいし、その一部をウレタン発泡体としてもよいが、少なくともロール外表面の全てがウレタン発泡体からなることが好ましい。
【0084】
導電性発泡ロールの一部をウレタン発泡体とする場合、その他に用いられる材質は、特に限定されず、金属、ガラス、セラミックス、樹脂、ゴム等と組み合わせることが可能である。
【0085】
<<<<導電性ポリウレタン発泡体の製造方法の好適例>>>>
導電性ポリウレタン発泡体の製造方法は、好ましくは、以下の工程を含む。
(工程1:調製工程)
ポリオール(a−1)、ポリイソシアネート(a−2)、活性水素含有基または活性水素と反応し得る官能基を有する導電剤(a−3)、および、活性水素含有基または活性水素と反応し得る官能基を有する活性エネルギー線重合性化合物(a−4)から合成されるプレポリマー(A)と、活性エネルギー線重合性シリコーン(B)とを含むポリウレタン原料(I)を調製する工程である。
(工程2:発泡工程)
ポリウレタン原料(I)と、造泡用気体(II)とを、窒素雰囲気下で機械撹拌し、発泡させることで、発泡性組成物を得る工程である。
(工程3:塗工工程(任意工程))
導電性ポリウレタン発泡体が導電性発泡ロールである場合に実施され得る工程であり、ロール軸を回転させながら、ロール軸上に発泡性組成物を塗工する工程である。
(工程4:照射工程)
発泡性組成物に活性エネルギー線を照射する工程である。
【0086】
さらに、照射工程により得られたウレタン発泡体の加工(切断や研磨等)を行う加工工程を設けてもよい。
【0087】
なお、導電性ポリウレタン発泡体の製造方法は、本発明の効果を阻害しない限り、各工程を順番に実施する形態のみならず、一部の工程および別工程の順番を入れ替える形態や、一部の工程および別の工程(例えば、調製工程および発泡工程)を同時に実施する形態や、一部の工程を繰り返し実施する形態等も含まれる。
【0088】
以下、各工程(調製工程、発泡工程、塗工工程、照射工程)について説明する。なお、各原料については前述の通りであるため記載を省略する場合がある。
【0089】
<<<調製工程>>>
調製工程は、公知の方法を用いることができる。例えば、プレポリマー(A)を撹拌しながら活性エネルギー線重合性シリコーン(B)を所定の量添加し、ポリウレタン原料(I)とすることができる。
【0090】
調製工程は、プレポリマー(A)を合成する合成工程を含んでいてもよい。合成工程は、公知の方法に従って実施でき、例えば以下の方法に従って実施することができる。
【0091】
容器に、ポリイソシアネート(a−2)を適当量投入し、窒素雰囲気下で撹拌する。ここにポリオール(a−1)、導電剤(a−3)、活性エネルギー線重合性化合物(a−4)を滴下してプレポリマー用組成物(a)とし、プレポリマー用組成物(a)を所定の時間撹拌し、反応を完了させ、プレポリマー(I)とする。
【0092】
合成工程においては、反応を促進するため、必要に応じて触媒を添加してもよい。
【0093】
触媒としては、特に限定されず、金属触媒、例えば、錫系触媒、鉛系触媒、その他の金属触媒アミン系触媒、その他の酸性触媒、塩基性触媒等の公知の触媒が挙げられる。これらの触媒のうちの1種又は2種以上を用いることができる。
【0094】
触媒の添加量は、特に限定されないが、プレポリマー用組成物(a)中、例えば、0.001〜5質量%等とすることができる。
【0095】
更に、ポリチオール(III)を配合する場合、ポリウレタン原料(I)を調製する際に同時に配合してもよいし、ポリウレタン原料(I)を調製した後に配合してもよい。
【0096】
<<<発泡工程>>>
発泡工程では、いわゆるメカニカルフロス(機械発泡)法を使用することができる。
【0097】
メカニカルフロス法は、通常、組成物を撹拌羽根等で撹拌することにより、雰囲気中の気体を組成物に混入させて発泡させる方法である。そのため、発泡工程は、通常、造泡用気体(II)雰囲気下にて実施される。
【0098】
撹拌装置としては、メカニカルフロス法に一般に用いられる撹拌装置を特に制限なく使用可能であるが、例えば、ホモジナイザー、ディゾルバー、メカニカルフロス発泡機等を使用することができる。
【0099】
造泡用気体(II)は、ウレタン発泡体中の気泡(セル)を形成するものであり、所望のウレタン発泡体の密度等に応じて、造泡用気体(II)の混入量を決定すればよい。
【0100】
造泡用気体(II)の種類としては、前述のように、乾燥空気や不活性ガス(例えば、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等)を使用することができる。造泡用気体(II)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0101】
なお、各組成物の不要な反応を制御するために、発泡工程以外の工程も、乾燥空気や不活性ガス雰囲気下にて実施してもよい。
【0102】
<<<塗工工程>>>
塗工工程は、導電性ポリウレタン発泡体が導電性発泡ロールである場合に実施され得る工程であり、ロール軸を回転させながら、ロール軸上に発泡性組成物を塗工する工程である。
【0103】
塗工工程において、ロール軸の材質、ロール軸の形状、ロール軸の回転速度等は、特に限定されず、公知の条件とすればよい。
【0104】
また、塗工工程においては、ロール軸上への発泡性組成物の供給手段も特に限定されず、ロール軸上に発泡性組成物を吐出する等して塗工を実施してもよいし、発泡性組成物を含む層にロール軸を接触させることで塗工を実施してもよい。また、発泡性組成物の供給速度も適宜変更可能である。
【0105】
塗工工程を複数回実施し、発泡性組成物の厚みを調整してもよい。
【0106】
<<<照射工程>>>
照射工程は、発泡性組成物に、活性エネルギー線を照射する工程である。
【0107】
照射工程では、活性エネルギー線反応性基(好ましくは、光反応性官能基)が反応する特定の波長の活性エネルギー線(好ましくは、光)を照射し、架橋を行う。なお、光重合開始剤等を併用する場合には、その光重合開始剤が反応する波長とすることも可能である。
【0108】
活性エネルギー線の照射量は、発泡性組成物の配合や厚み等によって設定すればよい。
【0109】
塗工工程を実施する場合、ウレタン発泡体の厚みは、前述の塗工工程における塗工速度等を変更することでも調整可能であるが、塗工工程と照射工程とを複数回繰り返してロールの厚みを増加させることも可能である。
【0110】
塗工工程を実施する場合、照射工程を経て得られたウレタン発泡体からロール軸を引き抜くことで、ロール状のウレタン発泡体を得ることができる。なお、ウレタン発泡体からロール軸を引き抜かずに、ロール軸とウレタン発泡体とを含めた一体の部品として、画像形成装置に供給されてもよい。
【0111】
また、前述したその他の成分(IV)については、照射工程前のどの工程で配合されてもよい。
【0112】
また、上述した塗工工程または照射工程において、原料粘度を下げることや硬化の促進を目的とした加熱を実施してもよい。加熱温度および加熱時間は、特に限定されず、加熱の目的や使用する原料に応じて適宜変更すればよい。
【0113】
<<<<画像形成装置>>>>
本発明の導電性ポリウレタン発泡体を組み込むことが可能な電子写真方式の画像形成装置としては、特に限定されないが、好ましくはレーザープリンターが挙げられる。本発明の導電性ポリウレタン発泡体は、低硬度であり、且つ、導電剤のブリードが防止されるため、レーザープリンターの帯電ロール(感光ドラムを帯電させるロール体)として好ましく使用することが可能である。
【実施例】
【0114】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0115】
<<<原料>>>
使用した原料は以下の通りである。
<<ポリオール(a−1)>>
PPG1000:ポリプロピレングリコール、分子量1000
PPG2000:ポリプロピレングリコール、分子量2000
PPG3000:ポリプロピレングリコール、分子量3000
BEPG:ブチルエチルプロパンジオール
<<ポリイソシアネート(a−2)>>
TDI:トルエンジイソシアネート
<<導電剤(a−3)>>
カチオンIN:水酸基含有第四級アンモニウム塩型カチオン性導電剤、日油製
<<活性エネルギー線重合性化合物(a−4)>>
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
<<活性エネルギー線重合性シリコーン(B)>>
整泡剤A:TEGORAD 2100、エボニック製
なお、TEGORAD 2100は、以下に示したような構造を有する。
<<ポリチオール(III)>>
チオール3F:Lecad803 SC有機化学製
チオール4F:Lecad804 SC有機化学製
チオール6F:Lecad806 SC有機化学製
なお、チオール4Fは、以下に示したような構造を有する。
<<その他の成分>>
導電剤A:1SX−1090、高分子イオン導電剤、大成ファインケミカル社製
【0116】
<<<ロール状ウレタン発泡体の製造>>>
<<実施例1>>
<調製工程>
表1に記載された配合量にて、(a−1)〜(a−4)を混合してプレポリマー(A)を合成した。合成は、次の条件で行った。
1.(a−1)および(a−2)を混合して窒素雰囲気化で80℃に加熱し3h反応させた。
2.混合物の温度を60℃とした後、(a−3)成分を添加し1h反応させた。
3.混合物に(a−4)成分を添加し1h反応させた。
4.混合物の温度を80℃に上げて、光重合開始剤、酸化防止剤、光安定剤等の添加剤を、プレポリマー100gに対して合計で1〜1.5gの範囲となるように配合した。
次に、表1に記載された配合量にて、プレポリマー(A)とシリコーン(B)、ポリチオール(III)とを混合してポリウレタン原料(I)を調製した。混合物の粘度が高い場合は80℃程度まで加熱した。
<発泡工程、塗工工程、照射工程>
機械発泡を行い、発泡性組成物を調製した。機械発泡は、大気下でインラインホモミキサーを使用し二酸化炭素を混ぜて実施。Φ5の金属製の軸両端を回転治具でチャッキングし、軸を50rpmの速度で回転させながら、発泡された原料を軸の片側端部を起点に必要な長さ(L寸、250mm)まで塗布した。なお、塗工厚が、1.5mmとなるように塗工した。
塗布完了後、照射機(高圧水銀ランプ)により原料にUVを照射し、硬化させた。
なお、照射条件は、100mW/cm
2以上で10,000mJ/cm
2相当とした。
<加工工程>
硬化物の両端を切断して必要寸法を残し、硬化物表面を円筒研削機を用い研磨して、ローラとした。
【0117】
<<実施例2〜13、比較例1〜4>>
使用する原料を表1に示したものに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜13、比較例1〜4に係るロール状ウレタン発泡体を得た。
【0118】
なお、得られたロール状ウレタン発泡体は、十分な導電性を有するものであった。
【0119】
<<<物性測定>>>
以下に示す物性測定を実施した。測定結果を表1に示す。
【0120】
<<粘度>>
JIS K 7117−2に準じ、80℃におけるプレポリマー(A)の粘度を測定した。
【0121】
<<ゲル分率>>
各ロール状ウレタン発泡体について、JIS K 6796における抽出溶媒をアセトンにし、ゲル分率を測定した。
【0122】
<<10%CLD>>
JIS K 6400−2に準じ、各ロール状ウレタン発泡体をサンプルサイズ50mm×50mm×厚み5mmとなるようにカットし、50%予備圧縮を一回行った後、10%圧縮時のCLDを測定した。
【0123】
<<<評価試験>>>
<<画像評価>>
各ロール状ウレタン発泡体を使用して、画像評価試験を行った。評価方法は以下の通りである。
<評価方法>
ブリード評価として、22℃55%RHの環境下に馴染ませた各ローラの両端に500gの荷重を掛け、印加電圧1000Vで6時間の連続通電試験を実施する。このブリード評価された導電性ローラを画像形成装置にセットして、画像評価を実施した。導電性ローラにブリードがあると、他のローラにブリードした物質が付着して画像に滲み、白抜け、黒ポチ等の現象が観察される。また、導電性ローラの硬度が高いと、密着性が低下し、同様に画像評価が悪化する。この画像の状態によって、ロール状ウレタン発泡体のブリードの抑制効果および低硬度の達成を評価した。
<評価基準>
○:ブリードした物質に由来する滲み、白抜け、黒点等が観察されなかった。
×:ブリードした物質に由来する滲み、白抜け、黒点等が観察された。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】