【解決手段】少なくとも一つ以上の層からなるシェルを有する中空粒子であり、前記少なくとも一つ以上の層は、ビニル系樹脂を含有し、リン原子及び/又は硫黄原子を含有する中空粒子により前記課題を解決する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(中空粒子)
本発明の中空粒子は、以下の構成:
(i)少なくとも一つ以上の層からなるシェルを有する。
(ii)少なくとも一つ以上の層は、ビニル系樹脂を含有する。
(iii)少なくとも一つ以上の層は、リン原子及び/又は硫黄原子を含有する。
を有する。上記構成(i)〜(iii)を有することで、十分な耐擦傷性を有する成形物を作製するのに適した中空粒子を提供できる。特に、構成(iii)は、中空粒子の物理強度を向上させ、その結果、中空粒子を含む成形物に十分な耐擦傷性を付与し得る。
(i)シェル
中空粒子は、少なくとも一つ以上の層からなるシェルを有している。シェルを構成する層は、一つからなっていても、二つ以上の複数層からなっていてもよい。
(ii)ビニル系樹脂
少なくとも一つ以上の層は、ビニル系樹脂を含有する。ビニル系樹脂は、ビニル系単量体から構成された部位を含有する樹脂である。特に芳香族環を有しないビニル系単量体から構成されたビニル系樹脂は耐候性が高く、経時での黄変等を抑制できるため好ましい。シェル全体が、ビニル系樹脂から構成されてもよい。ビニル系樹脂は、少なくとも1種以上のエポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体の重合体を、ポリアミン系化合物のような架橋性単量体で架橋した重合体であることが好ましい。ビニル系樹脂の具体的な説明は、以下の別項目で行う。
【0008】
(iii)リン原子及び/又は硫黄原子
少なくとも一つ以上の層は、リン原子及び/又は硫黄原子を含有する層である。これら原子が少なくとも一つ以上の層に含有されることで硬化性樹脂中での中空粒子の分散性を向上させることができたり、中空粒子の物理強度を向上させることができたりすることで、成形物に十分な耐擦傷性を付与し得る。少なくとも一つ以上の層のリン原子及び/又は硫黄原子は蛍光X線分析によりその存在の確認ができる。リン原子及び/又は硫黄原子は、ビニル系樹脂自体にリン原子及び/又は硫黄原子を含むモノマーを用いることで含有させてもよいが、特に、以下で説明するリン原子及び硫黄原子を含有する表面処理剤で表面処理を行うことで、少なくとも一つ以上の層に含有させることが好ましい。また、シェル全体が、リン原子及び/又は硫黄原子を含有した層であってもよいし、一部の層のみにリン原子及び/又は硫黄原子を含有してもよい。リン原子又は硫黄原子は、0.2〜5.00質量%の含有量であることが好ましい。含有量が0.2質量%未満の場合、中空粒子を含む成形物に十分な耐擦傷性を付与できないことがある。5.00質量%より多い場合、硬化性樹脂中での中空粒子の分散性が低下したり、成形物の硬度が高くなりすぎたりして耐擦傷性が低下することがある。含有量は0.2質量%、0.3質量%、0.5質量%、1.00質量%、1.50質量%、2.00質量%、2.50質量%、3.00質量%、3.50質量%、4.00質量%、4.50質量%、5.00質量%をとり得る。含有量は0.2〜4.00質量%であることがより好ましく、0.3〜3.00質量%であることが更に好ましい。リン原子及び硫黄原子は、少なくとも一つ以上の層に、どちらか一方の原子のみ含まれていてもよく、両方の原子が含まれていてもよい。両方の原子が含まれる場合、その含有量を0.2〜10.0質量%とし得る。
【0009】
(iv)他の物性
更に、中空粒子が、ATR−FTIRにより中空粒子を測定して得られた赤外線吸収スペクトルから810cm
−1での吸光度(A810)と1720cm
−1での吸光度(A1720)の比α(吸光度比α:A810/A1720)を算出した場合、0.015〜0.50の吸光度比αを示す粒子であることが好ましい。吸光度A810は、ビニル基CHの面外変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。また、吸光度A1720は、カルボニル基のC=O伸縮振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。吸光度比αは、中空粒子のラジカル反応性基の導入量の程度を示す指標として使用できる。具体的には、吸光度比αが大きくなると、粒子に導入されたラジカル反応性基が大きくなるという傾向を示す。粒子にラジカル反応性基を導入することで、硬化性樹脂中での分散性や硬化後の樹脂との密着性が高まり、耐擦傷性の高い成形物が得られやすい。吸光度比αが0.015未満の場合、中空粒子の分散性や密着性が低下して耐擦傷性が低い成形物が得られることがある。基本的に吸光度比αが大きいほど耐擦傷性が高い成形物が得られるため、吸光度比αが大きいことが好ましいが、0.50より大きい場合、経時で中空粒子に導入したラジカル反応性基が反応して分散液中で凝集を起こすことがある。吸光度比αは0.015、0.020、0.030、0.050、0.100、0.150、0.200、0.250、0.300、0.350、0.400、0.450、0.50をとり得る。吸光度比αは0.015〜0.400であることがより好ましく、0.020〜0.300であることが更に好ましい。
【0010】
中空粒子は、10〜90%の中空率を有することが好ましい。10%未満であると、中空部が小さく,所望の特性が得られないことがある。90%より大きい場合、中空部が大きくなりすぎて中空粒子の強度が低下することがある。中空率は10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%をとり得る。より好ましい中空率は10〜80%であり、更に好ましい中空率は10〜70%である。
中空粒子は、単分散性の評価の指標であるCV値が30%以下であることが好ましい。CV値が30%を超える場合、粗大な粒子の存在により耐擦傷性が低下することがある。CV値は0%、5%、10%、15%、20%、25%、30%をとり得る。CV値は、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましい。
中空粒子のシェルには,ピンホールが少ないことが好ましい。シェルのピンホールが多い場合、低分子のバインダー成分が中空内部に浸入しやすい。そのため、中空粒子を低屈折率材料に使用した際に十分な低屈折率化ができないことがあったり、熱伝導率調整剤として使用した際に熱伝導率を調整できなかったりすることがある。
【0011】
また、中空粒子は、10〜150nmの平均粒子径を有していることが好ましい。平均粒子径が10nm未満の中空粒子は、中空粒子同士の凝集が発生して、取扱い性に劣ることがある。150nmより大きい中空粒子は、コーティング剤や樹脂と混練した場合に表面の凹凸や粒子界面での散乱が大きくなり、白化することがある。平均粒子径は10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、100nm、120nm、150nmをとり得る。平均粒子径は30〜100nmであることがより好ましく、平均粒子径は30〜80nmであることが更に好ましい。
【0012】
(v)ビニル系樹脂の詳細な説明
ビニル系樹脂が、ケイ素成分を含有する有機−無機ハイブリッドビニル系樹脂(Si含有樹脂)であることが好ましい。本明細書において、「有機−無機」とは、ケイ素を無機成分とし、ケイ素以外の樹脂を有機成分としていることを意味する。
また、Si含有樹脂は、XPSでの測定において、0.001≦Si/C≦0.1の関係を満たすケイ素原子の存在比Siと炭素原子の存在比Cとを有することが好ましい。Si/Cが0.001未満の場合、架橋密度が低くなり、低分子のバインダー成分が中空内部に浸入しやすくなることがある。0.1を超える場合、架橋密度が高すぎるため、ピンホールが発生しやすくなり、低分子のバインダー成分が中空内部に浸入しやすくなることがある。Si/Cは0.001、0.002、0.005、0.01、0.015、0.02、0.035、0.05、0.07、0.1をとり得る。Si/Cは、0.002〜0.05であることがより好ましく、0.002〜0.02であることが更に好ましい。
【0013】
Si含有樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレオイル基、フマロイル基、スチリル基及びシンナモイル基等のラジカル反応性官能基を有する少なくとも一つの単量体を重合、又は共重合して得られる共重合体をポリアミン系化合物のような架橋性単量体で架橋されたSi含有樹脂が好ましい。
Si含有樹脂は、少なくとも1種以上のエポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体と、少なくとも1種以上のシリル基を有するラジカル反応性単量体とからなる共重合体を、ポリアミン系化合物のような架橋性単量体で架橋した共重合体であることが好ましい。なお、エポキシ基とオキセタン基、シリル基とを併せて、非ラジカル反応性官能基ともいう。
【0014】
(1)エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体
少なくとも1種以上のエポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体は、エポキシ基又はオキセタン基とラジカル反応性官能基とを有する。
ラジカル反応性官能基は、ラジカル重合で反応するエチレン性不飽和基(ビニル基又はビニル基含有官能基)であれば特に限定されない。例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレオイル基、フマロイル基、スチリル基及びシンナモイル基等が挙げられる。中でも反応性の制御が容易なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基が好ましい。
【0015】
エポキシ基又はオキセタン基は、アミノ基、カルボキシ基、クロロスルホン基、メルカプト基、水酸基、イソシアナート基等を有する化合物と反応して重合体を生成する官能基である。
ラジカル反応性官能基とエポキシ基又はオキセタン基とを有する反応性単量体としては、特に限定されない。例えば、p−グリシジルスチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル(メタ)アクリレート及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0016】
(2)シリル基を有するラジカル反応性単量体
少なくとも1種以上のシリル基を有するラジカル反応性単量体は、シリル基とラジカル反応性官能基とを有する。
ラジカル反応性官能基は、ラジカル重合で反応するエチレン性不飽和基であれば特に限定されない。例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレオイル基、フマロイル基、スチリル基及びシンナモイル基等が挙げられる。中でも反応性の制御が容易なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基が好ましい。
シリル基とラジカル反応性官能基とを有する反応性単量体としては、特に限定されない。例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、8−メタクリロキシオクチルトリエトキシシラン及び3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの単量体は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0017】
(3)エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体とシリル基を有するラジカル反応性単量体とからなる共重合体
前記共重合体において、エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体とシリル基を有するラジカル反応性単量体に由来する成分の割合(質量比)は、1:100〜0.001であることが好ましい。シリル基を有するラジカル反応性単量体に由来する成分の割合が0.001未満の場合、シェルの強度が低くなり中空粒子が潰れたり、中空粒子が得られなかったりすることがある。100より大きい場合、シェルが脆くなりすぎて、ピンホールが発生しやすくなることによりフィルムの断熱性を高くし難くなることがある。割合は1:100、70、50、30、10、5、3、1、0.05、0.01、0.005、0.001をとり得る。より好ましい割合は1:10〜0.001であり、更に好ましい割合は1:1〜0.01である。
【0018】
(4)単官能単量体(他の単量体)
エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体からなる重合体は、反応性官能基を1つだけ有する単官能単量体に由来する成分を含んでいてもよい。単官能単量体としては、例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜25のアルコールとのエステル等が挙げられる。
【0019】
(メタ)アクリル酸と炭素数1〜25のアルコールとのエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、(シクロ)ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
単官能単量体は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体とシリル基を有するラジカル反応性単量体に由来する成分の含有量は、反応性単量体に由来する成分全体の10質量%以上であることが好ましい。10質量%未満であると、中空粒子とならないことがある。含有量は、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%をとり得る。エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体とシリル基を有するラジカル反応性単量体に由来する成分の含有量は、より好ましくは30質量%以上であり、更に好ましくは50質量%以上である。
【0020】
(5)架橋性単量体
ビニル系樹脂は、ポリアミン系化合物のような架橋性単量体由来の成分を含んでいてもよい。
ポリアミン系化合物としては、例えば、エチレンジアミン及びその付加物、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン及びその変性品、
N−アミノエチルピペラジン、ビス−アミノプロピルピペラジン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス−ヘキサメチレントリアミン、ジシアンジアミド、ジアセトアクリルアミド、各種変性脂肪族ポリアミン、ポリオキシプロピレンジアミン等の脂肪族アミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3−アミノ−1−シクロヘキシルアミノプロパン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン等の脂環族アミン及びその変性物、
【0021】
4,4’−ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、2,4’−トルイレンジアミン、m−トルイレンジアミン、o−トルイレンジアミン、メタキシリレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族アミン及びその変性物、その他特殊アミン変性物、
アミドアミン、アミノポリアミド樹脂等のポリアミドアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールのトリ−2−エチルヘキサン塩等の3級アミン類
等が挙げられる。
前記架橋性単量体は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0022】
(6)表面処理剤
中空粒子は、少なくとも一つ以上のアニオン性基を有する化合物で処理された表面を有していてもよい。この化合物で処理された表面は、中空粒子に耐熱性や有機溶媒中での分散性、低分子のバインダー成分が中空内部に侵入しにくくなるという性質を付与する。
アニオン性基を有する化合物としては、塩酸、有機二酸無水物、オキソ酸(例えば、硝酸、燐酸、硫酸、炭酸のような無機酸やカルボン酸化合物、硫酸のアルキルエステル化合物、スルホン酸化合物、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物等の有機酸が挙げられる)から選択される。これら化合物の内、リン原子及び/又は硫黄原子を構成成分として含む化合物であることが好ましい。
【0023】
カルボン酸化合物としては、カルボキシ基を含有する化合物であれば特に限定されない。例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸等の直鎖状カルボン酸;ピバリン酸、2,2−ジメチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、2,2−ジメチル吉草酸、2,2−ジエチル酪酸、3,3−ジエチル酪酸、2−エチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、4−メチルオクタン酸、ネオデカン酸等の分枝鎖状カルボン酸;ナフテン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の環状カルボン酸等を挙げることができる。これらの中で有機溶媒中での分散性を効果的に高めるためには、炭素数4〜20の直鎖状カルボン酸、分枝鎖状カルボン酸等が好ましい。
また、カルボン酸化合物としてはビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレオイル基、フマロイル基、スチリル基及びシンナモイル基等のラジカル反応性官能基を有するカルボン酸も使用できる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸、ビニル安息香酸等が挙げられる。
【0024】
硫酸のアルキルエステル化合物としては、ドデシル硫酸等が挙げられる。
スルホン酸化合物としては、スルホ基を含有する化合物であれば特に限定されない。例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
リン酸エステル化合物は、リン酸のエステル化合物で有れば特に限定されない。例えば、ドデシルリン酸、下記一般式(a)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸がある。
【0026】
前記式中、R
1は、炭素数4〜19のアルキル基又はアリル基(CH
2=CHCH
2−)、(メタ)アクリル基、スチリル基である。炭素数4〜19のアルキル基としてはブチル基、ペンチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ステアリル基が挙げられる。これら基は、直鎖状でも、分岐状であってもよい。また、これらは1種類でも複数種を併用してもよい。
R
2は、H又はCH
3である。
nは、アルキレンオキサイドの付加モル数であり、全体を1モルとした場合、0〜30の付加モル数を与えるのに必要な範囲の数値である。
aとbの組み合わせは、1と2又は2と1の組み合わせである。
また、日本化薬社のKAYAMER PM−21等も使用することができる。
【0027】
また、オキソ酸としては、酸基を有する重合体も使用することができる。例えば、ディスパービック103、ディスパービック110、ディスパービック118、ディスパービック111、ディスパービック190、ディスパービック194N、ディスパービック2015(以上ビックケミー社製)、ソルスパース3000、ソルスパース21000、ソルスパース26000、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース41000、ソルスパース41090、ソルスパース43000、ソルスパース44000、ソルスパース46000、ソルスパース47000、ソルスパース53095、ソルスパース55000(以上ルーブリゾール社製)、EFKA4401、EFKA4550(以上エフカ アディティブズ社製)、フローレンG−600、フローレンG−700、フローレンG−900、フローレンGW−1500、フローレンGW−1640(以上共栄社化学社製)、ディスパロン1210、ディスパロン1220、ディスパロン2100、ディスパロン2150、ディスパロン2200、ディスパロンDA−325、ディスパロンDA−375(以上楠本化成製)、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824、アジスパーPB881、アジスパーPN411(以上味の素ファインテクノ社製)、サイクロマーP(ACA)Z200M、サイクロマーP(ACA)Z230AA、サイクロマーP(ACA)Z250、サイクロマーP(ACA)Z251、サイクロマーP(ACA)Z300、サイクロマーP(ACA)Z320、サイクロマーP(ACA)Z254F(以上ダイセル・オルネクス社製)、アートキュアRA−3704MB、アートキュアRA−3953MP、アートキュアRA−4101、アートキュアMAP−4000、アートキュアMAP−2801、アートキュアRA-331MB、アートキュアRA−341(以上根上工業社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
また必要に応じてシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤、イソシアネート系化合物等で表面処理を行ってもよい。
前記シラン系カップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシランや、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン、トリメチルシリルクルロライド等のクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のシラン系カップリング剤が挙げられる。
上記シラン系カップリング剤以外に、下記一般式(I)で表されるシラン系カップリング剤も挙げられる。
【0030】
一般式(I)において、R
1は、それぞれ独立して、置換又は非置換の、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜4のアルコキシアルキル基又はフェニル基を表す。
R
2は、それぞれ独立して、置換又は非置換の、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜4のアルコキシアルキル基又はフェニル基を表す。
R
3は、炭素数1〜30の2価の有機基を表す。
R
4は、水素原子又はメチル基を表す。
mは0〜2の整数を表す。
R
1及びR
2中、炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルが挙げられる。これらアルキル基には、可能であれば、構造異性体が含まれる。
R
1及びR
2中、炭素数2〜4のアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル、メトキシエチル、エトキシメチル、メトキシブチル、エトキシエチル、ブトキシメチルが挙げられる。これらアルコキシアルキル基には、可能であれば、構造異性体が含まれる。
R
1及びR
2の置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシ基、アミノ基、フェニル基等が挙げられる。
R
3中、炭素数1〜30の2価の有機基としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン等のアルカンジイル基が挙げられる。アルカンジイル基は、アルキル基で置換された分岐構造を有していてもよい。
【0031】
一般式(I)で表されるシラン系カップリング剤の具体例としては、
3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、
4−(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリエトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルメチルジメトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルメチルジエトキシシラン、
5−(メタ)アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、5−(メタ)アクリロキシペンチルトリエトキシシラン、5−(メタ)アクリロキシペンチルメチルジメトキシシラン、5−(メタ)アクリロキシペンチルメチルジエトキシシラン、
6−(メタ)アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、6−(メタ)アクリロキシヘキシルトリエトキシシラン、6−(メタ)アクリロキシヘキシルメチルジメトキシシラン、6−(メタ)アクリロキシヘキシルメチルジエトキシシラン、
7−(メタ)アクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、7−(メタ)アクリロキシヘプチルトリエトキシシラン、7−(メタ)アクリロキシヘプチルメチルジメトキシシラン、7−(メタ)アクリロキシヘプチルメチルジエトキシシラン、
8−(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、8−(メタ)アクリロキシオクチルトリエトキシシラン、8−(メタ)アクリロキシオクチルメチルジメトキシシラン、8−(メタ)アクリロキシオクチルメチルジエトキシシラン、
9−(メタ)アクリロキシノニルトリメトキシシラン、9−(メタ)アクリロキシノニルトリエトキシシラン、9−(メタ)アクリロキシノニルメチルジメトキシシラン、9−(メタ)アクリロキシノニルメチルジエトキシシラン、
10−(メタ)アクリロキシデシルトリメトキシシラン、10−(メタ)アクリロキシデシルトリエトキシシラン、10−(メタ)アクリロキシデシルメチルジメトキシシラン、10−(メタ)アクリロキシデシルメチルジエトキシシラン、
11−(メタ)アクリロキシウンデシルトリメトキシシラン、11−(メタ)アクリロキシウンデシルトリエトキシシラン、11−(メタ)アクリロキシウンデシルメチルジメトキシシラン、11−(メタ)アクリロキシウンデシルメチルジエトキシシラン、
12−(メタ)アクリロキシドデシルトリメトキシシラン、12−(メタ)アクリロキシドデシルトリエトキシシラン、12−(メタ)アクリロキシドデシルメチルジメトキシシラン、12−(メタ)アクリロキシドデシルメチルジエトキシシラン、
13−(メタ)アクリロキシトリデシルトリメトキシシラン、13−(メタ)アクリロキシトリデシルトリエトキシシラン、13−(メタ)アクリロキシトリデシルメチルジメトキシシラン、13−(メタ)アクリロキシトリデシルメチルジエトキシシラン、
14−(メタ)アクリロキシテトラデシルトリメトキシシラン、14−(メタ)アクリロキシテトラデシルトリエトキシシラン、14−(メタ)アクリロキシテトラデシルメチルジメトキシシラン、14−(メタ)アクリロキシテトラデシルメチルジエトキシシラン
等が挙げられる。
【0032】
本発明に用いられるシラン系カップリング剤はこれらに限定されるものではない。なお、シラン系カップリング剤は、例えば、信越シリコーン社のようなシリコーン製造メーカーから入手し得る。
上記シラン系カップリング剤の中でも、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、8−メタクリロキシオクチルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0033】
前記チタネート系カップリング剤としては、味の素ファインテクノ社製のプレンアクトTTS、プレンアクト46B、プレンアクト55、プレンアクト41B、プレンアクト38S、プレンアクト138S、プレンアクト238S、プレンアクト338X、プレンアクト44、プレンアクト9SA、プレンアクトETが挙げられるが、本発明に用いられるチタネート系カップリング剤はこれらに限定されるものではない。
前記アルミネート系カップリング剤としては、味の素ファインテクノ社製のプレンアクトAL−Mが挙げられるが、本発明に用いられるアルミネート系カップリング剤はこれらに限定されるものではない。
前記ジルコネート系カップリング剤としては、マツモトファインケミカル社製のオルガチックスZA−45、オルガチックスZA−65、オルガチックスZC−150、オルガチックスZC−540、オルガチックスZC−700、オルガチックスZC−580、オルガチックスZC−200、オルガチックスZC−320、オルガチックスZC−126、オルガチックスZC−300が挙げられるが、本発明に用いられるジルコネート系カップリング剤はこれらに限定されるものではない。
前記イソシアネート系化合物としては、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、tert-ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、シクロフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、フェニルイソシアネート、4−ブチルフェニルイソシアネート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルアクリラート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートが挙げられるが、本発明に用いられるイソシアネート系化合物はこれらに限定されるものではない。
前記表面処理剤は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0034】
(7)他の添加物
本発明の効果を阻害しない範囲で、中空粒子は、必要に応じて、顔料粒子(顔料)、染料、安定剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、熱安定剤、レベリング剤、滑剤、帯電防止剤等の他の添加物を含んでいてもよい。
顔料粒子としては、当該技術分野で用いられる顔料粒子であれば特に限定されない。例えば、雲母状酸化鉄、鉄黒等の酸化鉄系顔料;鉛丹、黄鉛等の酸化鉛系顔料;チタンホワイト(ルチル型酸化チタン)、チタンイエロー、チタンブラック等の酸化チタン系顔料;酸化コバルト;亜鉛黄のような酸化亜鉛系顔料;モリブデン赤、モリブデンホワイト等の酸化モリブデン系顔料等の粒子が挙げられる。顔料粒子は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0035】
(8)中空粒子の用途
中空粒子は、耐擦傷性の向上が望まれている用途である塗料、紙、情報記録紙、断熱フィルム、熱電変換材料の添加剤として有用である。また、中空粒子は光拡散フィルム(光学シート)、導光板インク、反射防止膜、光取出し膜等に用いられるコーティング剤(塗布用組成物)の添加剤、光拡散板、導光板等の成形体形成用のマスターペレットの添加剤、化粧品の添加剤としても有用である。
(a)コーティング剤
コーティング剤は、少なくとも前記中空粒子を含有する。コーティング剤は任意のバインダーを含んでいてもよい。
バインダーとしては、特に限定されず、公知のバインダー樹脂を用いることができる。バインダー樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられ、より具体的には、フッ素系樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、バインダー樹脂は、1つの反応性単量体単独重合体であってもよいし、複数のモノマーの共重合体であってもよい。また、バインダーとして反応性単量体を使用してもいい。
例えば反応性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、(シクロ)ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数1〜25のアルコールとのエステルのような単官能性反応性単量体、
【0036】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の多官能性反応性単量体
が挙げられる。
【0037】
また、これらの反応性単量体を使用する際は電離放射線により硬化反応を開始させる重合開始剤を用いてもよい。例えば、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N−アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N−アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等が挙げられる。
また、バインダーとしては、例えばケイ素アルコキシドの加水分解物等の無機系バインダーを使用することもできる。ケイ素アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシランが挙げられる。
公知のバインダー製品として、例えば、三菱レイヨン社製のダイヤナールLR−102やダイヤナールBR−106等が挙げられる。
コーティング剤中の中空粒子の含有量は、使用する用途によって適宜調整されるが、バインダー100質量部に対して、0.1〜1000質量部の範囲で使用できる。
【0038】
コーティング剤には、通常分散媒体が含まれる。分散媒体としては水性及び油性の媒体がいずれも使用できる。油性の媒体としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール等のエーテル系溶剤等が挙げられる。水性の媒体としては、水、アルコール系溶剤(例えば、イソプロピルアルコール)が挙げられる。油性の媒体を使用する場合は、上記シラン系カップリング剤で表面処理された中空粒子を使用することが、分散性の向上の観点から好ましい。更に、シラン系カップリング剤として、上記一般式(I)で表されるシラン系カップリング剤の内、R
3が大きな炭素数の二価の有機基である化合物がより好ましい。例えば、媒体として、メチルイソブチルケトンのようなケトン系溶剤を使用する場合は、8−メタクリロキシオクチルトリエトキシシランを使用することが特に好ましい。
更に、コーティング剤には、硬化剤、着色剤、帯電防止剤、レベリング剤等の他の添加剤が含まれていてもよい。
コーティング剤の被塗布基材としては、特に限定されず、用途に応じた基材が使用できる。例えば、光学用途では、ガラス基材、透明樹脂基材等の透明基材が使用される。
【0039】
(b)マスターペレット
マスターペレットは、中空粒子と基材樹脂とを含む。
基材樹脂としては、通常の熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。例えば(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。特に透明性が求められる場合には(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂がよい。これらの基材樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、基材樹脂は、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、フィラー等の添加剤を微量含んでいてもかまわない。
【0040】
マスターペレットは、中空粒子と基材樹脂とを溶融混練して、押出成形、射出成形等の成形方法により製造できる。マスターペレットにおける中空粒子の配合割合は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜60質量%程度、より好ましくは0.3〜30質量%程度、更に好ましくは0.4〜10質量%程度である。配合割合が60質量%を上回ると、マスターペレットの製造が難しくなることがある。また、0.1質量%を下回ると、本発明の効果が低下することがある。
マスターペレットは、例えば押出成形、射出成形又はプレス成形することにより成形体となる。また、成形の際に基材樹脂を新たに添加してもよい。基材樹脂の添加量は最終的に得られる成形体に含まれる中空粒子の配合割合が0.1〜60質量%程度となるように添加するのがよい。なお、成形時には、例えば紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、フィラー等の添加剤を微量添加してもよい。
【0041】
(c)化粧料
中空粒子を配合しうる具体的な化粧料としては、おしろい、ファンデーション等の固形状化粧料、ベビーパウダー、ボディーパウダー等のパウダー状化粧料、化粧水、乳液、クリーム、ボディーローション等の液状化粧料等が挙げられる。
これらの化粧料へ中空粒子の配合割合は、化粧料の種類によっても異なる。例えば、おしろい、ファンデーション等の固形状化粧料の場合は、1〜20質量%が好ましく、3〜15質量%が特に好ましい。また、ベビーパウダー、ボディーパウダー等のパウダー状化粧料の場合は、1〜20質量%が好ましく、3〜15質量%が特に好ましい。更に、化粧水、乳液、クリームやリキッドファンデーション、ボディーローション、プレシェーブローション等の液状化粧料の場合は、1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%が特に好ましい。
【0042】
また、これらの化粧料には、光学的な機能の向上や触感の向上のため、マイカ、タルク等の無機化合物、酸化鉄、酸化チタン、群青、紺青、カーボンブラック等の着色用顔料、又はアゾ系等の合成染料等を添加できる。液状化粧料の場合、液状の媒体として、特には限定されないが、水、アルコール、炭化水素、シリコーンオイル、植物性又は動物性油脂等を用いることもできる。これらの化粧料には、前記他の成分以外に、化粧品に一般的に用いられる保湿剤、抗炎症剤、美白剤、UVケア剤、殺菌剤、制汗剤、清涼剤、香料等を添加することにより、各種機能を追加することもできる。
【0043】
(d)断熱フィルム
断熱フィルムは、少なくとも前記中空粒子を含有する。前記中空粒子を含有するフィルムやシート状形状物は、中空粒子内部に空気層を有するため、断熱フィルムとして使用できる。また、前記中空粒子の粒子径が小さいため、透明性の高い断熱フィルムが得られ、バインダーが中空部に侵入しにくいため高い断熱性を有する断熱フィルムが得られやすい。前記断熱フィルムは前記のコーティング剤をディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて、加熱や紫外線照射、焼成することで得ることができる。
【0044】
(e)反射防止膜
反射防止膜は、少なくとも前記中空粒子を含有する。前記中空粒子を含有するフィルムやシート状形状物は、中空粒子内部の空気層により屈折率が低下するため、反射防止膜として使用できる。また、前記中空粒子は高い耐熱性を有するため、高い耐熱性を有する反射防止膜が得られる。前記反射防止膜は前記のコーティング剤をディップ法、スプレー法、スピンコート法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて、加熱や紫外線照射、焼成することで得ることができる。
(f)反射防止膜付基材
反射防止膜付基材は、ガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックレンズ、プラスチックパネル等の基材、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板等の基材の表面に前記の反射防止膜を形成したものである。用途によって異なるが、被膜が単独であるいは基材上に保護膜、ハードコート膜、平坦化膜、高屈折率膜、絶縁膜、導電性樹脂膜、導電性金属微粒子膜、導電性金属酸化物微粒子膜、その他必要に応じて用いるプライマー膜等と組み合わせて形成されている。なお、組み合わせて用いる場合、反射防止膜が必ずしも最外表面に形成されている必要はない。
【0045】
(g)光取出し膜
光取出し膜は、少なくとも前記中空粒子を含有する。LEDや有機EL照明は、空気層と発光層の屈折率差が大きいため、発光した光が素子内部に閉じ込められやすい。そのため、発光効率を向上させる目的に光取出し膜が使用されている。前記中空粒子を含有するフィルムやシート状形状物は、中空粒子内部の空気層により屈折率が低下するため、光取出し膜として使用することが可能である。また、前記中空粒子が高い耐熱性を有するため、高い耐熱性を有する光取出し膜が得られる。前記光取出し膜は前述のコーティング剤をディップ法、スプレー法、スピンコート法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて、加熱や紫外線照射、焼成することで得ることができる。
(h)光取出し膜付基材
光取出し膜付基材は、ガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックレンズ、プラスチックパネル等の基材、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板等の基材の表面に前述の光取出し膜を形成したものである。用途によって異なるが、被膜が単独であるいは基材上に保護膜、ハードコート膜、平坦化膜、高屈折率膜、絶縁膜、導電性樹脂膜、導電性金属微粒子膜、導電性金属酸化物微粒子膜、その他必要に応じて用いるプライマー膜等と組み合わせて形成されている。なお、組み合わせて用いる場合、光取出し膜が必ずしも最外表面に形成されている必要はない。
【0046】
(i)積層体
積層体は、少なくとも基材と、前記中空粒子を含有した硬化樹脂層からなる。積層体は、中空粒子内部に空気層を有するため、断熱フィルムや反射防止フィルムとして使用できる。
積層体は、前記コーティング剤をディップ法、スプレー法、スピンコート法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて、加熱や紫外線照射、焼成することで得ることができる。基材には、上記(a)〜(h)で例示したものをいずれも使用できる。
硬化樹脂層は、JIS K5600−5−1:1999に記載の屈曲試験(円筒形マンドレル法)に付した場合、割れを起こし始めるマンドレルの直径が8mm以下となる耐屈曲性を有することが好ましい。割れを起こし始めるマンドレルの直径は6mm以下がより好ましい。
断熱フィルムや反射防止フィルムとして使用するためには、比較的多量の中空粒子を含有させる必要がある。市販されている無機系組成の中空粒子を硬化樹脂層に多量に添加すると、塗膜の剛性が高くなりすぎるため、屈曲性が低下し、曲面に貼り付けた際や、打ち抜き加工時にクラックを生じさせやすい。しかし、前記中空粒子は、有機系組成であるため、硬化樹脂層に多量に添加しても、塗膜の剛性が高くなりすぎることなく、屈曲性の高い積層体が得られ易い。なお、硬化樹脂層への中空粒子の添加量は、必要とする断熱性や反射防止性によって変わるが10〜70重量%が好ましい。
硬化樹脂層は、0.05〜10μmの厚さを有していることが好ましく、0.05〜3μmが更に好ましい。基材は、1〜300μmの厚さを有していることが好ましい。
【0047】
(9)中空粒子の製造方法
中空粒子は、特に限定されないが、例えば、非反応性溶媒を含有する重合体粒子を作製する工程(重合工程)と、重合体粒子から非反応性溶媒を相分離させる工程(相分離工程)と、非反応性溶媒を除去する工程(溶媒除去工程)を経ることにより製造できる。
従来の中空粒子の製造方法は、シェルが反応性単量体を1回重合させることで形成されており、有機溶媒(非反応性溶媒)とシェルとの相分離が重合と同時に行われる。本発明の発明者等は、この方法において、相分離と重合とを同時に行う工程が、ピンホールの発生と単分散性の低下を生じさせていると考えた。また、シェルのピンホールが、中空粒子を熱伝導率調整剤として使用した際におけるフィルムの熱伝導率の低減及びフィルムの反射率の低減を阻害していると考えた。そこで、発明者等は、非反応性溶媒の相分離前に、一旦、重合体粒子を形成し、その後に相分離を生じさせれば、ピンホールの発生を抑制でき、かつ単分散性を向上できると考えた。
具体的には、ラジカル反応性官能基と非ラジカル反応性官能基とを有する反応性単量体を、両官能基のいずれか一方に基づいて重合させることにより重合体粒子を作製する。非反応性溶媒は、予め反応性単量体と混合するか、重合体粒子作製後に吸収させることにより、重合体粒子中に含有させる。次いで、両官能基の残存する他方の官能基による重合により、重合体と非反応性溶媒とが相分離することで、非反応性溶媒を内包したマイクロカプセル粒子が得られる。この後、非反応性溶媒を除去することで中空粒子が得られる。
【0048】
前記において、重合と相分離とを分けることで、
・従来の製造方法で存在していたシェルの重合体間の隙間が存在しなくなり、得られる中空粒子のシェルでのピンホールの発生を抑制できる
・中空粒子の形状が油滴に依存せず、相分離前の重合体粒子の形状や粒度分布に依存するため、単分散性の高い中空粒子が得られやすい
という利点を有する。以下、製造方法の説明を記載する。
【0049】
(A)重合工程
重合工程では、ラジカル反応性官能基と非ラジカル反応性官能基とを有する反応性単量体を、両官能基のいずれか一方に基づいて重合させることにより重合体粒子を作製する。非反応性溶媒は、予め反応性単量体と混合するか、重合体粒子作製後に吸収させることにより、重合体粒子中に含有させる。
【0050】
(a)重合体粒子の作製方法
重合体粒子の作製方法としては、塊状重合法、溶液重合法、分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知の方法の中から、任意の方法を採用できる。その中でも、重合体粒子を比較的簡便に作製できる懸濁重合法、乳化重合法が好ましい。更に、単分散性の高い重合体粒子が得られやすい乳化重合法がより好ましい。
重合体粒子は、ラジカル反応性官能基又は非ラジカル反応性官能基を重合させることにより得られる。
【0051】
重合は、重合対象の官能基を重合させる化合物を添加して行うことが好ましい。
(i)ラジカル反応性官能基を重合させる場合、この化合物には重合開始剤を使用できる。重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、クメンハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジメチルビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ビス(tert−ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ブチル−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレラート、2−エチルヘキサンペルオキシ酸tert−ブチル、ジベンゾイルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド及びtert−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物類、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(2,2’−アゾビス(2−メチル−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルカプロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−エトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−n−ブトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピネート)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピネート)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)等のアゾ化合物類が挙げられる。重合開始剤は、1種のみ使用していてもよく、2種以上併用してもよい。
【0052】
また、前記の過硫酸塩類及び有機過酸化物類の重合開始剤と、ナトリウムスルホキシレートホルムアルデヒド、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、過酸化水素、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸及びその塩、第一銅塩、第一鉄塩等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤を重合開始剤として使用してもよい。
【0053】
重合が乳化重合である場合、重合開始剤は、水溶媒下で乳化重合が可能な水溶性の重合開始剤であることが好ましい。水溶性の重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等のアゾ化合物類が挙げられる。
【0054】
(ii)重合体粒子は、ラジカル反応性官能基を先に重合して、重合体中に未反応の非ラジカル反応性官能基を有することが好ましい。非ラジカル反応性官能基を先に重合すると、非反応性溶媒の吸収がしにくくなることがある。
重合体粒子は、ラジカル反応性官能基と非ラジカル反応性官能基の一方の反応性官能基を重合することで、重合体中に未反応の他方の反応性官能基を有することが好ましい。しかし、重合体粒子の製造時に重合する官能基は、その全量が重合せず、部分的に重合しても大きな問題はないし、他方の反応性官能基が一部重合しても大きな問題はない。例えば、グリシジルメタクリレートのラジカル反応性官能基を重合させて、エポキシ基を有する重合体粒子を作製する際には、未反応のラジカル反応性官能基が残存してもよいし、部分的にエポキシ基が開環反応してもよい(言い換えると、重合体粒子中に相分離が可能な量のエポキシ基が残っていればよい)。
連鎖移動剤の使用量の上限は、反応性単量体100質量部に対して、50質量部である。
(iii)連鎖移動剤を、反応性単量体の重合時に使用してもよい。連鎖移動剤としては、特に限定されず、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロロメタン、ジブロモメタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物が挙げられる。連鎖移動剤は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0055】
(b)非反応性溶媒の吸収
重合体粒子への非反応性溶媒の吸収は、重合体粒子の製造時又は製造後に行うことができる。また、非反応性溶媒の吸収は、非反応性溶媒と相溶しない分散媒の存在下又は非存在下で行うことができる。分散媒の存在下で行う方が、非反応性溶媒の吸収を効率よく行うことができるので好ましい。重合体粒子の製造方法が媒体を使用する場合、媒体は分散媒としてそのまま使用してもよく、一旦、重合体粒子を媒体から単離した後、分散媒に分散してもよい。
【0056】
重合体粒子を含む分散媒には、分散媒に相溶しない非反応性溶媒が添加され、一定時間撹拌等を行うことで重合体粒子に非反応性溶媒を吸収させることができる。
また、重合体粒子の製造時での非反応性溶媒の吸収は、重合体粒子の作製に適切な分散媒と非反応性溶媒を選定することで実現できる。例えば、水溶媒下で重合体粒子を乳化重合で作製する場合、水に相溶しない非反応性溶媒を事前に水溶媒に添加しておき、反応性単量体を重合させることで、重合体粒子の作製と重合体粒子の吸収を同時に行うことができる。重合体粒子の作製と重合体粒子の吸収を同時に行うと、非反応性溶媒の吸収にかかる時間を削減できる。
【0057】
(i)分散媒
分散媒としては、重合体粒子を完全に溶解させない液状物であれば特に限定されない。例えば、水;エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、デカン、ヘキサデカン等のアルカン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒が挙げられる。これらは、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0058】
(ii)非反応性溶媒
非反応性溶媒としては、分散媒に相溶しない液状物であるものであれば特に限定されない。ここで分散媒に相溶しないとは、非反応性溶媒の分散媒への溶解度(25℃時)が10質量%以下のことである。例えば分散媒として水を使用した場合、使用できる非反応性溶媒としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、デカン、ヘキサデカン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1,4−ジオキサン、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。これらは、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
非反応性溶媒の添加量は、特に限定されないが、重合体粒子100質量部に対して、20〜5000質量部である。20質量部未満であると、得られる中空粒子の中空部が小さくなり、所望の特性が得られないことがある。5000質量部を超えると、中空部が大きくなりすぎて得られる中空粒子の強度が低下することがある。
【0059】
(B)相分離工程
次に、残存する反応性官能基を重合させて、重合体と非反応性溶媒とを相分離させる。相分離により、非反応性溶媒を内包したマイクロカプセル粒子が得られる。なお本発明において、中空粒子の中空とは、中空部に空気が存在する場合だけでなく、非反応性溶媒や他の分散媒体が中空部に存在しているマイクロカプセル粒子も含む趣旨である。
残存する反応性官能基を重合させるために添加する化合物は、前記重合工程に記載した、ラジカル反応性官能基を重合させるための重合開始剤、非ラジカル反応性官能基を重合させるための架橋剤と同じものを使用できる。
【0060】
(C)溶媒除去(置換)工程
中空粒子は、必要に応じてマイクロカプセル粒子に内包された非反応性溶媒を除去又は置換することで、中空部に空気や他の溶媒が存在する中空粒子を得ることができる。非反応性溶媒の除去方法としては特に限定されず、減圧乾燥法等が挙げられる。減圧乾燥法の条件は、例えば、500Pa以下の圧力、30〜200℃、30分〜50時間が挙げられる。また、非反応性溶媒を溶媒置換操作によって置換できる。例えば非反応性溶媒を内包したマイクロカプセル粒子又は、それらの分散液に、適当な分散媒体に加え、撹拌等を行うことで粒子内部の非反応性溶媒を分散媒体に置換させる。その後余分な非反応性溶媒と分散媒体を減圧乾燥法や遠心分離法、限外ろ過法等により除去することで非反応性溶媒を置換できる。溶媒置換は一回だけ行ってもいいし、複数回実施してもよい。
中空粒子は、必要に応じて中空粒子の溶媒分散液として使用してもよい。例えば、相分離工程後に得られる非反応性溶媒を内包したマイクロカプセル粒子の分散液の状態のまま使用してもよいし、他の分散溶媒で置換した溶媒分散液として使用してもよい。
中空粒子は、必要に応じて中空粒子の溶媒分散液を乾燥させた乾燥粉体として使用してもよい。中空粒子の乾燥方法としては特に限定されず、減圧乾燥法等が挙げられる。なお、乾燥粉体中には、乾燥せずに残った分散溶媒や非反応性溶媒等が残存していてもよい。
(D)その他工程
相分離工程後の中空粒子分散液中にアニオン性基を有する化合物を添加して撹拌したり、溶媒除去工程後に中空粒子にアニオン性基を有する化合物を添加し混合したりすることで中空粒子の表面をアニオン性基を有する化合物で処理することができる。中でも、相分離工程後に余分な架橋剤を除去した後に、中空粒子分散液中にアニオン性基を有する化合物を添加し、撹拌することが好ましい。処理条件は、例えば、30〜200℃、30分〜50時間が挙げられる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。まず、実施例に使用した各種測定法の詳細を下記する。
(平均粒子径、中空率)
以下のように中空粒子の平均粒子径及び中空率を測定した。
すなわち10質量%の表面処理された中空粒子イソプロピルアルコール分散液又は中空粒子メチルイソブチルケトン分散液を70℃の真空乾燥機(圧力は100kPa以下)で4時間乾燥し、乾燥粉体を得た。中空粒子を、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製H−7600)を用いて、加速電圧80kVの条件下、倍率約3万倍でTEM写真を撮影した。このとき四酸化ルテニウム染色等を用いることによって、より明確に粒子を確認することができた。この写真に撮影された任意の100個以上の粒子の粒子径及び内径を観察した。この時、粒子の中心を通るように5箇所以上の粒子径及び内径を測定、平均することで、平均粒子径、平均内径とした。更に、(平均内径)
3/(平均粒子径)
3×100の式より、中空粒子の中空率を求めた。
【0062】
(分散粒子径)
以下のように中空粒子の有機溶媒中での分散粒子径を測定した。
すなわち、10質量%中空粒子イソプロピルアルコール分散液又は中空粒子メチルイソブチルケトン分散液をイソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトンで希釈し、約0.1質量%に調製した分散液にレーザー光を照射し、イソプロピルアルコール中で分散した中空粒子から散乱される散乱光強度をマイクロ秒単位の時間変化で測定した。そして、検出された中空粒子に起因する散乱強度分布を正規分布に当てはめて、平均粒子径を算出するためのキュムラント解析法により中空粒子のZ平均粒子径を求めた。このZ平均粒子径を有機溶媒中での分散粒子径とした。このZ平均粒子径の測定は、市販の粒子径測定装置で簡便に実施できた。以下の実施例及び比較例では、マルバーン社(Malvern Instruments Ltd.)の粒子径測定装置(商品名「ゼータサイザーナノZS」)を使用してZ平均粒子径を測定した。
【0063】
(リン原子量、硫黄原子量、ケイ素原子量)
以下のように中空粒子のリン原子量、硫黄原子量を測定した。
すなわち10質量%の表面処理された中空粒子イソプロピルアルコール分散液又は中空粒子メチルイソブチルケトン分散液を70℃の真空乾燥機(圧力は100kPa以下)で4時間乾燥し、乾燥粉体を得た。蛍光X線分析装置 RIX-2100(リガク社製)を使ってオーダー分析(FPバルク法)により、リン原子量、硫黄原子量を測定した。すなわち、カーボン製試料台(日新EM社製)上に導電性カーボン両面テープ(日新EM社製)を貼りつけ、張り付けた導電性カーボン両面テープ上に試料11mgを量り取り、試料を10mmφ以上広がらないように調整しPPフィルムを被せて装置付属の10mmφ用試料ケースにセットし測定試料とした。下記条件にて、P、S、Siの測定を行い、オーダー分析法により、含有原子量を求めた。
【0064】
<装置条件>
・装置:RIX−2100(リガク社製)
・X線管球ターゲット:Rh
・分析法:オーダー分析 FPバルク法
・測定径:10mm
・スピン:有り
・雰囲気:Vac
・試料形態:金属
・バランス成分:C
7H
10O
3
・試料保護膜補正:有り(PP Film)
・スムージング:11点
・フラックス成分、希釈率、不純物除去:なし
【0065】
<P測定条件>
・P−Kα
・管球:Rh(30KV−100mA)
・1次フィルタ:OUT
・アッテネータ:1/1
・スリット:Std.
・分光結晶:GE
・検出器:PC
・PHA LL:150 UL:300
・2θ:141.180deg(測定範囲:137〜144deg)
・ステップ:0.05deg
・測定時間:0.4sec
【0066】
<S測定条件>
・S−Kα
・管球:Rh(30KV−100mA)
・1次フィルタ:OUT
・アッテネータ:1/1
・スリット:Std.
・分光結晶:GE
・検出器:PC
・PHA LL:150 UL:300
・2θ:110.820deg(測定範囲:107〜114deg)
・ステップ:0.05deg
・測定時間:0.4sec
【0067】
<Si測定条件>
・Si−Kα
・管球:Rh(30KV−100mA)
・1次フィルタ:OUT
・アッテネータ:1/1
・スリット:Std.
・分光結晶:PET
・検出器:PC
・PHA LL:100 UL:300
・2θ:109.040deg(測定範囲:106〜112deg)
・ステップ:0.05deg
・測定時間:0.4sec
【0068】
(吸光度比α;反応性基導入量)
以下のように中空粒子の吸光度比α;反応性基導入量を測定した。
すなわち10質量%の表面処理された中空粒子イソプロピルアルコール分散液又は中空粒子メチルイソブチルケトン分散液を70℃の真空乾燥機(圧力は100kPa以下)で4時間乾燥し、乾燥粉体を得た。乾燥粉体を以下の条件にて、赤外分光分析ATR測定を行なって、赤外吸収スペクトルを得た。得られた赤外吸収スペクトルから、810cm
−1の吸光度(A810)と1720cm
−1の吸光度(A1720)との吸光度比α(A810/A1720;反応性基導入量)を求めた。
吸光度A810、A1720は、Thermo SCIENTIFIC社から商品名「フーリエ変換赤外分光光度計 Nicoet iS10」で販売されている測定装置に、ATRアクセサリーとしてThermo SCIENTIFIC社製「Smart−iTR」を接続して測定した。以下の条件にて赤外分光分析ATR測定を行った。
【0069】
<測定条件>
・測定装置:フーリエ変換赤外分光光度計 Nicolet iS10(Thermo SCIENTIFIC社製)及び一回反射型水平状ATR Smart−iTR(Thermo SCIENTIFIC社製)
・ATRクリスタル:Diamond with ZnSe lens、角度=42°
・測定法:一回ATR法
・測定波数領域:4000cm
−1〜650cm
−1
・測定深度の波数依存性:補正せず
・検出器:重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器及びKBrビームスプリッター・分解能:4cm
−1
・積算回数:16回(バックグランド測定時も同様)
【0070】
ATR法では、試料と高屈折率結晶の密着度合によって測定で得られる赤外吸収スペクトルの強度が変化するため、ATRアクセサリーの「Smart−iTR」で掛けられる最大荷重を掛けて密着度合をほぼ均一にして測定を行なった。
以上の条件で得られた赤外線吸収スペクトルは、次のようにピーク処理をしてそれぞれのA810とA1720を求めた。
赤外吸収スペクトルから得られる810cm
−1での吸光度A810は、ビニル基CHの面外変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度であった。この吸光度の測定では、810cm
−1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離を実施しなかった。吸光度A810は、825cm
−1と795cm
−1を結ぶ直線をベースラインとして、820cm
−1と800cm
−1間の最大吸光度を意味した。
また、1720cm
−1での吸光度A1720は、カルボニル基のC=O伸縮振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度であった。この吸光度の測定では、1720cm
−1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離を実施しなかった。吸光度A1720は、1820cm
−1と1540cm
−1を結ぶ直線をベースラインとして、1740cm
−1と1700cm
−1間の最大吸光度を意味した。
【0071】
(耐擦傷性)
以下のように中空粒子を用いた硬化物の耐擦傷性を評価した。
すなわち10質量%の表面処理された中空粒子のイソプロピルアルコール分散液又は中空粒子メチルイソブチルケトン分散液30質量部、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学社製NKエステルA−DPH)6.6質量部、光重合開始剤(BASF社製IRGACURE1173)0.33質量部、メチルエチルケトン(和光純薬社製試薬特級)10質量部を混合し、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、型式SONIFIER450)を用いて3分間強制撹拌し、コーティング剤を得た。コーティング剤をギャップ12.5μmのアプリケーターが付いた自動塗工装置(井元製作所社製IMC−70F0−C型、引き速:10mm/sec)を用いて易接着加工PET基材(東レ社製ルミラーU34、厚み100μm)に塗布して塗膜を得た。得られた塗膜を、60℃のオーブンで1分間乾燥させた後に、紫外線照射装置(JATEC社製J−Cure、型式JUC1500、引き速:0.4m/min、積算光量:2000mJ/cm
2)に2回通して硬化させることで、中空粒子を含有する硬化物を作製した。#0000スチールウールを用い、荷重500gで10回摺動し、硬化物の表面を目視観察し、以下の基準で耐擦傷性を評価した。
評価基準:
キズがほとんど認められなかった:◎
キズが僅かに認められた:○
キズが多数認められた:△
面が全体的に削られていた:×
【0072】
(耐屈曲性)
耐屈曲性は、JIS K5600−5−1:1999に記載の屈曲試験(円筒形マンドレル法)により評価した。この試験では、円筒形のマンドレルの周囲に巻き付けられた試験片の硬化樹脂層への割れの有無を確認した。徐々にマンドレルの直径を小さくしていき、割れが生じた直径を試験片の耐屈曲性を示す値とした。直径の値が小さいほど耐屈曲性が高いと評価した。
【0073】
実施例1
撹拌機、温度計を備えた2Lの反応器にイオン交換水1440質量部とp−スチレンスルホン酸ナトリウム1.6質量部、過硫酸カリウム0.8質量部を加え70℃まで昇温し、窒素置換して内部を窒素雰囲気とした。グリシジルメタクリレート70質量部と3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン10質量部、n−オクチルメルカプタン1.6質量部、トルエン80質量部を混合し、混合溶液を4時間かけて反応器に滴下し、重合反応を行うことでエポキシ基が残存した重合体粒子を得た。乳化重合にトルエンを添加していたため、エポキシ基が残存した重合体粒子はトルエンで膨潤されていた。
次に、残存しているエポキシ基を重合させるために、エチレンジアミン40質量部を添加し、24時間70℃で重合を行った。重合体粒子中のエポキシ基が反応することで、重合体とトルエンが相分離し、中空粒子分散液を得た。中空粒子分散液2000質量部を50nmの細孔径を有するセラミックフィルターを用いてイオン交換水20000質量部でクロスフロー洗浄し、過剰なエチレンジアミンを除去した後に、固形分が10質量%となるように適宜濃縮やイオン交換水の添加を行い、10質量%中空粒子水分散液を得た。
【0074】
10質量部のドデシルリン酸をイソプロピルアルコール500質量部に溶解させた後に、10質量%中空粒子水分散液500質量部を加え、内部超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、型式SONIFIER450)を用いて30分間撹拌することで、表面処理された中空粒子分散液を得た。次に表面処理された中空粒子分散液をイソプロピルアルコール5000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮やイソプロピルアルコールの添加を行い、10質量%中空粒子イソプロピルアルコール分散液を得た。
10質量%中空粒子イソプロピルアルコール分散液500質量部に50質量部の3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加え、70℃で10時間撹拌することで、反応性基が導入された中空粒子分散液を得た。表面処理された中空粒子分散液をイソプロピルアルコール5000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるようにイソプロピルアルコールを添加し、10質量%の表面処理された中空粒子イソプロピルアルコール分散液を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は69nm、イソプロピルアルコール中での分散粒子径は102nmであり、分散性の優れた中空粒子であった。また、中空率は29%と高く、リン原子量が1.6質量%、硫黄原子量が0.2質量%であり、反応性基導入量は0.06であった。得られた中空粒子を用いてフィルムを作製し、耐擦傷性の評価を行ったところほとんどキズが認められず、優れた耐擦傷性を有するフィルムであった。
【0075】
実施例2
ドデシルリン酸に代えてポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸を30質量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに代えて3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを使用したこと以外は実施例1と同様にして10質量%中空粒子イソプロピルアルコール分散液を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は70nm、イソプロピルアルコール中での分散粒子径は99nmであり、分散性の優れた中空粒子であった。また、中空率は29%と高く、リン原子量が0.5質量%、硫黄原子量が0.3質量%であり、反応性基導入量は0.14であった。得られた中空粒子を用いてフィルムを作製し、耐擦傷性の評価を行ったところほとんどキズが認められず、優れた耐擦傷性を有するフィルムであった。
実施例3
ドデシルリン酸に代えてドデシルベンゼンスルホン酸を13質量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに代えて3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン25質量部を使用したこと以外は実施例1と同様にして10質量%中空粒子イソプロピルアルコール分散液を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は69nm、イソプロピルアルコール中での分散粒子径は95nmであり、分散性の優れた中空粒子であった。また、中空率は30%と高く、リン原子量が0質量%、硫黄原子量が1.2質量%であり、反応性基導入量は0.07であった。得られた中空粒子を用いてフィルムを作製し、耐擦傷性の評価を行ったところほとんどキズが認められず、優れた耐擦傷性を有するフィルムであった。
【0076】
実施例4
グリシジルメタクリレート70質量部に代えて、グリシジルメタクリレート68質量部とメチルメタクリレート2質量部、ドデシルリン酸に代えてポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸を30質量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして10質量%中空粒子イソプロピルアルコール分散液を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は68nm、イソプロピルアルコール中での分散粒子径は93nmであり、分散性の優れた中空粒子であった。また、中空率は32%と高く、リン原子量が0.5質量%、硫黄原子量が0.3質量%であり、反応性基導入量は0であった。得られた中空粒子を用いてフィルムを作製し、耐擦傷性の評価を行ったところキズが僅かに認められるが、優れた耐擦傷性を有するフィルムであった。
実施例5
ドデシルリン酸に代えてポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸を30質量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに代えて8−メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン30質量部を使用したこと以外は実施例1と同様にして10質量%中空粒子イソプロピルアルコール分散液を得た。更に10質量%中空粒子イソプロピルアルコール分散液をメチルイソブチルケトン5000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるようにメチルイソブチルケトンを添加し、10質量%の表面処理された中空粒子メチルイソブチルケトン分散液を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は68nm、メチルイソブチルケトン中での分散粒子径は96nmであり、分散性の優れた中空粒子であった。また、中空率は30%と高く、リン原子量が0.6質量%、硫黄原子量が0.3質量%であり、反応性基導入量は0.06であった。得られた中空粒子を用いてフィルムを作製し、耐擦傷性の評価を行ったところほとんどキズが認められず、優れた耐擦傷性を有するフィルムであった。
比較例1
グリシジルメタクリレート60質量部とアゾビスイソブチロニトリル2質量部、シクロヘキサン90質量部、ヘキサデカン10質量部を混合し油相を調整した。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0質量部をイオン交換水1440質量部に溶解させた水相に油相を加え、氷浴下で超音波ホモジナイザーを用いて2時間強制分散させた。撹拌機、温度計を備えた2Lの反応器に入れ、窒素置換して内部を窒素雰囲気とした後に、60℃で4時間かけて反応させた。次に、残存しているエポキシ基を重合させるために、エチレンジアミン40質量部を添加し、24時間70℃で重合し、中空粒子分散液を得た。得られた分散液を50nmのセラミックフィルターを用いてイオン交換水20000質量部でクロスフロー洗浄を行った後に、イソプロピルアルコール20000質量部で洗浄し、過剰なエチレンジアミンを除去した後に、固形分が10質量%となるように適宜濃縮やイソプロピルアルコールの添加を行い、10質量%中空粒子イソプロピルアルコール分散液を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は98nm、イソプロピルアルコール中での分散粒子径は452nmであり、有機溶媒中で分散性の悪い中空粒子であった。また、中空率は35%と高く、リン原子量が0質量%、硫黄原子量が0質量%であり、反応性基導入量は0であった。得られた中空粒子を用いてフィルムを作製し、耐擦傷性の評価を行ったところ基材から塗膜面が全体的に削れており、耐擦傷性の劣るフィルムであった。
【0077】
比較例2
jER828(三菱化学社製、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量184〜194)70質量部、トルエン90質量部、ヘキサデカン10質量部を混合し油相を調製した。ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド16質量部をイオン交換水1440質量部に溶解させた水相に油相を加え、超音波ホモジナイザーを用いて2時間強制分散させた。撹拌機、温度計を備えた2Lの反応器に入れ、エポキシ基を重合させるために、エチレンジアミン30質量部を添加し、4時間80℃で重合させた。N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン30質量部を加え更に4時間反応し中空粒子分散液を得た。得られた分散液を50nmのセラミックフィルターを用いてイオン交換水20000質量部でクロスフロー洗浄し、過剰なアミン類を除去した後に、固形分が10質量%となるように適宜濃縮やイオン交換水の添加を行い、10質量%中空粒子水分散液を得た。
7.5質量部のテトラエトキシシランをエチルアルコール500質量部に溶解させた後に、10質量%中空粒子水分散液500質量部を加え、60℃で4時間加熱することで、テトラエトキシシランで表面処理された中空粒子を得た。次に表面処理された中空粒子分散液をイソプロピルアルコール5000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮やイソプロピルアルコールの添加を行い、10質量%中空粒子イソプロピルアルコール分散液を得た。
10質量%中空粒子イソプロピルアルコール分散液に500質量部に2.5質量部の3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを加え、60℃で4時間撹拌することで、反応性基が導入された中空粒子分散液を得た。反応性基が導入された中空粒子分散液をイソプロピルアルコール5000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮やイソプロピルアルコールの添加を行い、10質量%中空粒子イソプロピルアルコール分散液を得た。固形分が10質量%となるようにイソプロピルアルコールを添加し、10質量%中空粒子イソプロピルアルコール分散液を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は108nm、イソプロピルアルコール中での分散粒子径は158nmであった。また、中空率は32%と高く、リン原子量が0質量%、硫黄原子量が0質量%であり、反応性基導入量は0.01であった。得られた中空粒子を用いてフィルムを作製し、耐擦傷性の評価を行ったところ基材から塗膜面が全体的に削れており、耐擦傷性の劣るフィルムであった。
以下の表1に、中空粒子の製造に使用した原料及び物性をまとめて示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
表2の実施例1〜5は、比較例1〜2との比較により、小粒径で、耐擦傷性の高いフィルムを作製するのに適した中空粒子を製造できることが分かった。
【0081】
実施例6(反射防止膜・反射防止膜付基材)
実施例1で作製した10質量%の表面処理された中空粒子イソプロピルアルコール分散液20質量部、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学社製NKエステルA−DPH)4質量部、光重合開始剤(BASF社製IRGACURE1173)0.20質量部を混合し、超音波ホモジナイザーを用いて5分間強制撹拌し、コーティング剤を得た。コーティング剤0.5mlをスライドガラス(松浪硝子工業社製S1111)に滴下し、スピンコーター(共和理研社製、型式K−359SD1)を用いて、塗布して塗膜を得た。得られた塗膜を、室温(約25℃)及び常圧下で乾燥させた。乾燥した塗膜を紫外線照射装置(JATEC社製J−Cure、型式JUC1500、引き速:0.4m/min、積算光量:2000mJ/cm
2)に2回通して硬化させることで、ガラス基板上に反射防止膜が形成されている反射防止膜付基材を作製した。積分球(島津製作所社製、型式ISR−2200)を備えた紫外可視分光光度計(島津製作所社製、型式UV−2450)を用いて光源550nm、入射角8°からの反射防止膜付基材の上面からの反射率を測定したところ反射率は7.3%であり、反射防止膜が付いていないスライドガラスの反射率(8.4%)より低く、反射防止性に優れていた。
【0082】
実施例7(光取出し膜・光取出し膜付基材)
実施例1で作製した10質量%の表面処理された中空粒子イソプロピルアルコール分散液20質量部、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学社製NKエステルA−DPH)4質量部、光重合開始剤(BASF社製IRGACURE1173)0.20質量部を混合し、超音波ホモジナイザーを用いて5分間強制撹拌し、コーティング剤を得た。コーティング剤0.5mlをスライドガラス(松浪硝子工業社製S1111)に滴下し、スピンコーター(共和理研社製、型式K−359SD1)を用いて、塗布して塗膜を得た。得られた塗膜を、室温(約25℃)及び常圧下で乾燥させた。乾燥した塗膜を紫外線照射装置(JATEC社製J−Cure、型式JUC1500、引き速:0.4m/min、積算光量:2000mJ/cm
2)に2回通して硬化させることで、ガラス基板上に光取出し膜が形成されている光取出し膜付基材を作製した。
光取出し膜付基材の全光線透過率を、ヘーズメーターを用いて測定したところ、光取出し膜付基材の全光線透過率は94.5%であり、光取出し膜が付いていないスライドガラスの全光線透過率(92.0%)より大きかった。これは、光取出し膜中に中空粒子を含有しているため、光取出し膜の屈折率が低下し、空気界面での反射が抑制されたため、全光線透過率が向上したと考えられる。
全光線透過率は、JIS K7361-1:1997「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法−第1部:シングルビーム法」に記載の方法に準じて以下の手順で測定した。
すなわち、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製、型式:HM-150型)を用いて装置光源の安定後、作製した光取出し膜付基板を光源(D65)、ダブルビーム法にて測定する。安定時間は30分後に測定を行い、安定していることを確認する。試験数を2回とし、その平均を全光線透過率とした。
【0083】
実施例8(導光板インク・導光板)
実施例1で作製した10質量%の表面処理された中空粒子イソプロピルアルコール分散液をメチルエチルケトンで3回洗浄し、10質量%中空粒子メチルエチルケトン分散液を得た。10質量%中空粒子メチルエチルケトン分散液45質量部、アクリル系樹脂(DIC社製アクリディックA−181、固形分45%)10質量部、ポリエーテルリン酸エステル系界面活性剤(日本ルーブリゾール社製ソルスパース41000)1.0質量部を混合し、光拡散性組成物(導光板インク)を得た。
5インチの透明アクリル板に前記光拡散性組成物をドットピッチ500μm、ドットの径50μmになるようにスクリーン印刷し、導光板を得た。
【0084】
実施例9
実施例1で作製した10質量%の表面処理された中空粒子イソプロピルアルコール分散液20質量部、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学社製NKエステルA−DPH)2質量部、光重合開始剤(BASF社製IRGACURE1173)0.20質量部、メチルエチルケトン20質量部を混合し、超音波ホモジナイザーを用いて5分間強制撹拌し、コーティング剤を得た。コーティング剤1.0mlを厚み100μmのポリエチレンテレフタレート基材(東レ社製ルミラーU34)に滴下し、ギャップ値25μmのアプリケーターを用いて塗布し、60℃で2分間乾燥させて塗膜を得た。乾燥した塗膜を紫外線照射装置(JATEC社製J−Cure、型式JUC1500、引き速:0.4m/min、積算光量:2000mJ/cm
2)に2回通して硬化させることで、ポリエチレンテレフタレート基材上に中空粒子を含有している硬化樹脂層が積層された積層体を作製した。得られた硬化樹脂層の厚みは約2μmであった。
JIS K5600−5−1:1999に基づいて、マンドレル屈曲試験機を用い、硬化樹脂層を外側に配置し、屈曲した時に硬化樹脂層が割れを起こし始める最低直径は2mmであり、屈曲性の高い積層体であった。
比較例3
実施例1で作製した10質量%の表面処理された中空粒子イソプロピルアルコール分散液20質量部の代わりに、市販されている20.5質量%の中空シリカ粒子イソプロピルアルコール分散液(日揮触媒化成社製スルーリア1110、粒子径50nm)9.8質量部を使用したこと以外は実施例9と同様にして積層体を作製した。得られた硬化樹脂層の厚みは約2μmであった。
JIS K5600−5−1:1999に基づいて、マンドレル屈曲試験機を用い、硬化樹脂層を外側に配置し、屈曲した時に硬化樹脂層が割れを起こし始める最低直径は10mmであり、屈曲性の低い積層体であった。