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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-190080(P2020-190080A)
(43)【公開日】2020年11月26日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20201030BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20201030BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20201030BHJP
【FI】
   E02F9/00 N
   F01N3/28 301U
   B60K13/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-94389(P2019-94389)
(22)【出願日】2019年5月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】武藤 啓志
【テーマコード(参考)】
2D015
3D038
3G091
【Fターム(参考)】
2D015CA03
3D038BA14
3D038BB09
3D038BC02
3D038BC08
3D038BC15
3G091AA05
3G091AA18
3G091AB05
3G091BA14
3G091CA17
3G091HA01
(57)【要約】
【課題】車体の限定されたスペースにおいて、搭載性を向上させることが可能なパワーユニットの設置構造を備えた建設機械を提供する。
【解決手段】杭打機に備わるパワーユニット36は、フロアフレーム25上に搭載されたエンジン38と、該エンジンの後部側に片持ち状に取り付けられた油圧ポンプ装置39とを有して構成され、関連機器の一つとして、液体還元剤をエンジンの排気管38gに噴射することによって排気ガスの浄化処理を行う排ガス浄化装置37を備え、油圧ポンプ装置を跨ぐようにしてフロアフレームに設置されたやぐら状の架台40に排気管及び排ガス浄化装置が取り付けられ、エンジン収納ハウス35は、天板35aを有するとともに、底部には吊り動作によってエンジン、油圧ポンプ装置、排気管及び排ガス浄化装置を一体で出し入れ可能な開口を有した箱型をなし、フロアフレームに対して着脱可能に形成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラを備えた下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回ベアリングを介して旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に上下動可能に設けられた作業装置とを備え、前記上部旋回体は、前記旋回ベアリングが取り付けられる機体フレームと、該機体フレーム上の車幅方向一側部に設けられ、前記作業装置を駆動させる操作がなされる運転室と、前記機体フレーム上の車幅方向他側部に設けられ、前記作業装置の駆動力を発生させるパワーユニットと、該パワーユニット及びこれに付属する複数の関連機器を収納可能なハウスとを備えている建設機械において、
前記複数の関連機器のうちの一つは、排ガス浄化装置であり、前記機体フレームに設置されたやぐら状の架台に前記排ガス浄化装置が取り付けられ、
前記ハウスは、天板を有するとともに、底部には吊り動作によって前記排ガス浄化装置を一体で出し入れ可能な開口を有した箱型をなし、前記機体フレームに対して着脱可能に形成されていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記パワーユニットは、前記機体フレーム上に搭載されたエンジンと、該エンジンにおける冷却ファンの存在側とは反対側となる後部側に片持ち状に取り付けられた油圧ポンプ装置とを有して構成され、
前記複数の関連機器のうちの一つは、前記エンジンに取り付けられた前記油圧ポンプ装置を支持するポンプ支持具であり、該ポンプ支持具は、前記架台の上部から垂下して前記油圧ポンプ装置の自由端側を支持可能に形成されるとともに、上下方向に弾性変位可能な弾性体を備えていることを特徴とする請求項1記載の建設機械。
【請求項3】
前記排ガス浄化装置は、前記架台の上端位置よりも低い位置にあり、前記ハウスは、前記機体フレームに取り付けた状態で、前記天板が前記上部旋回体の前部及び後部間の行き来を可能にする足場となることを特徴とする請求項1又は2記載の建設機械。
【請求項4】
前記建設機械は、前記上部旋回体の前部に起伏可能なリーダと、該リーダを後方から支持するバックステーとを備えた杭打機であり、前記作業装置は、前記リーダの前面に沿って昇降可能に設けられたオーガであり、前記パワーユニットの稼働によってオーガ昇降用ウインチ装置の駆動力を発生させるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関し、詳しくは、油圧ポンプの駆動で発生させた油圧によって各種油圧機器を作動させるためのパワーユニットを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の杭打機やクローラクレーンなどの建設機械では、上部旋回体の幅方向中央に設けられたガントリやウインチなどの作業装置と、上部旋回体の両側部に設けられ、エンジンや油圧ポンプ装置を主な要素として構成するパワーユニット、制御機器などの各種機器を収納したハウス(収納室)とを備えている。このため、例えば、杭打機では、リーダを鉛直方向に立てた作業姿勢において作業者がハウスの上面に上がって各種機器の保守などを行ったり、リーダを水平方向に倒した輸送姿勢においてバックステーの可動領域を確保したりすることができるように、ハウスの上面は、平坦なデッキ状に形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、パワーユニットを構成する油圧ポンプ装置には、複数の油圧ポンプをエンジンに対して片持ち状に連結した、いわゆるタンデム型の斜板式油圧ポンプを主として用いることが一般的であり、エンジンの駆動を受けて油圧ポンプ装置で発生させた油圧により、油圧モータや油圧シリンダなどの各種機器を作動させるようになっている。このため、重量のある油圧ポンプ装置の取付部(エンジンブロック)において強度が低下することを防止するために、油圧ポンプ装置の自由端側をハウスの天板から垂下した吊持体によって支持することで、取付部に作用する負荷を良好に緩和することができる油圧ポンプの支持構造が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−118763号公報(図1図2
【特許文献2】特開2019−49112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ディーゼルエンジンを搭載した建設機械では、排気系に排ガス浄化装置の設置がなされており、高次の排ガス規制に対応すべく、排気ガス中のCOやNOxなどを高度に浄化できることが要求されている。この種の排ガス浄化装置では、例えば、還元剤である尿素水を用いた選択還元型触媒装置(SCR)などがある。このようなことから、パワーユニットを搭載する建設機械では、排ガス規制の強化に伴って各種部品が増加する傾向にあり、ハウス内の配置において設計上の制約を従来よりも受けやすくなるという課題があった。しかも、パワーユニットは、その構造上、エンジンをフロアフレームに固定するのに対し、排気管や補器類の多くはハウス側に固定していたため、製作誤差で組み立て不良も生じやすく、作業性を悪化させる要因にもなっていた。
【0006】
そこで本発明は、車体の限定されたスペースにおいて、搭載性を向上させることが可能なパワーユニットの設置構造を備えた建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の建設機械は、クローラを備えた下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回ベアリングを介して旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に上下動可能に設けられた作業装置とを備え、前記上部旋回体は、前記旋回ベアリングが取り付けられる機体フレームと、該機体フレーム上の車幅方向一側部に設けられ、前記作業装置を駆動させる操作がなされる運転室と、前記機体フレーム上の車幅方向他側部に設けられ、前記作業装置の駆動力を発生させるパワーユニットと、該パワーユニット及びこれに付属する複数の関連機器を収納可能なハウスとを備えている建設機械において、前記複数の関連機器のうちの一つは、排ガス浄化装置であり、前記機体フレームに設置されたやぐら状の架台に前記排ガス浄化装置が取り付けられ、前記ハウスは、天板を有するとともに、底部には吊り動作によって前記排ガス浄化装置を一体で出し入れ可能な開口を有した箱型をなし、前記機体フレームに対して着脱可能に形成されていることを特徴としている。
【0008】
また、前記パワーユニットは、前記機体フレーム上に搭載されたエンジンと、該エンジンにおける冷却ファンの存在側とは反対側となる後部側に片持ち状に取り付けられた油圧ポンプ装置とを有して構成され、前記複数の関連機器のうちの一つは、前記エンジンに取り付けられた前記油圧ポンプ装置を支持するポンプ支持具であり、該ポンプ支持具は、前記架台の上部から垂下して前記油圧ポンプ装置の自由端側を支持可能に形成されるとともに、上下方向に弾性変位可能な弾性体を備えていることを特徴としている。
【0009】
さらに、前記排ガス浄化装置は、前記架台の上端位置よりも低い位置にあり、前記ハウスは、前記機体フレームに取り付けた状態で、前記天板が前記上部旋回体の前部及び後部間の行き来を可能にする足場となることを特徴としている。
【0010】
また、前記建設機械は、前記上部旋回体の前部に起伏可能なリーダと、該リーダを後方から支持するバックステーとを備えた杭打機であり、前記作業装置は、前記リーダの前面に沿って昇降可能に設けられたオーガであり、前記パワーユニットの稼働によってオーガ昇降用ウインチ装置の駆動力を発生させるように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、機体フレームに設置された架台に対して排ガス浄化装置が取り付けられ、箱型のハウスが、その底部に吊り動作によって排ガス浄化装置を一体で出し入れ可能な開口を有して形成されているので、排ガス浄化装置などパワーユニットに付属する関連機器を、エンジンと同様にして機体フレーム側で支持する構成が可能になる。これにより、製作誤差による排気系の組み立て不良をなくして、機体フレーム上へのパワーユニットの設置を容易かつ迅速に行うことができる。すなわち、車体の限定されたスペースにおいて、搭載性を向上させることが可能なパワーユニットの設置構造が得られる。
【0012】
また、設計段階では、やぐら状の架台を形鋼などによって枠組みできることから、部材の追加や部品取付孔の追加などが容易に行え、仕様変更が生じても既存品との間で互換性を確保することが可能となる。つまり、排ガス規制の強化に伴って各種部品が増加した場合であっても、ハウス内の配置上の制約を受けにくくなり、設計に自由度を与えることができる。さらに、製造段階では、機体フレーム上でパワーユニットを完成に近い状態にサブ組立てした後、クレーンで吊したハウスを被せるだけの簡単な作業によってハウスを組み付けることが可能となり、リードタイムの短縮による生産性向上を図ることができる。また、保守においても、ハウスを着脱する際の作業量を減らすことができ、とりわけ、エンジンの載せ替えなどといった大掛かりな作業を必要とする状況であれば、その効果も顕著に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一形態例を示す杭打機の側面図である。
図2】同じくベースマシンの側面図である。
図3】同じくベースマシンの平面図である。
図4】同じくベースマシンの正面図である。
図5】同じくパワーユニットの要部側面図である。
図6】同じく要部平面図である。
図7】同じく架台に支持された排ガス浄化装置の要部側面図である。
図8】同じく要部平面図である。
図9】同じく要部背面図である。
図10図7のX−X断面図である。
図11図5のXI−XI断面図である。
図12】同じくポンプ支持具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至図12は、本発明を建設機械の一つである杭打機に適用したもので、杭打機11は、図1に示すように、クローラ12aを備えた下部走行体12と、該下部走行体12の上部に旋回ベアリング13を介して旋回可能に設けられた上部旋回体14とからなるベースマシンと、該上部旋回体14の前部に前後方向に揺動可能に設けられたリーダアーム15と、該リーダアーム15の先端に前後方向に起伏可能に設けられたリーダ16と、作業姿勢に起立させたリーダ16を上部旋回体14の後部側から支持する左右一対のバックステー17,17と、輸送姿勢で後方に倒伏させたリーダ16を上部旋回体14の後部側で下方から支持する後部サポートシリンダ18とを備えている。また、上部旋回体14の後端部には安定用のカウンタウエイト19が搭載されている。
【0015】
リーダ16の前部側には、リーダ16の長手方向に平行に設けられた左右一対のガイドパイプ20,20と、各ガイドパイプ20,20の車体幅方向外面側をそれぞれ摺動可能に抱持する複数のガイドギブ21を介してリーダ16の前面に沿って昇降可能に設けられた作業装置の一つであるオーガ22とを備えている。そして、リーダ16を鉛直方向に起立させた作業姿勢(図1)では、オーガ22で鋼管杭やスクリューロッド23などの施工部材を把持した状態で、これらを回転させながら地中に埋設することによって杭打ち施工が行われる。一方、リーダ16を水平方向に倒伏させた輸送姿勢(図示せず)では、縮小したバックステーシリンダ17aや後部サポートシリンダ18を、上部側が切り離されたリーダ16と共に上部旋回体14上に倒伏させた状態のままで、輸送車の荷台に搭載されるようになっている。
【0016】
上部旋回体14は、図2乃至図4に示すように、旋回ベアリング13が取り付けられるメインフレーム24と、該メインフレーム24の車幅方向両側部に設けられたフロアフレーム25,26とからなる機体フレームを備えており、上述の各種大型部品は主にメインフレーム24に装着されている。また、メインフレーム24は、前端部に左右一対のフロントジャッキ27,27が、後端部に左右一対のリヤジャッキ28,28がそれぞれ設けられている。また、右側のフロアフレーム26上の前部には、オーガ22や上部旋回体14、下部走行体12などを駆動させる操作がなされる運転室29が設置され、メインフレーム24上の中央部には、ウインチ搭載部30が設けられ、例えば、オーガ昇降用ウインチ装置など複数のウインチ装置が搭載されている。オーガ昇降用ウインチ装置からのロープ(図示せず)は、リーダ16の頂部に設けられたトップシーブブロック31を介してオーガ22に連結され(図1)、ウインチ操作を行うことによってオーガ22を昇降させることができる。
【0017】
さらに、右側のフロアフレーム26上の後部には、作動油タンク32や油圧モータ33などの油圧機器を収納する機器収納ハウス34が設けられている。一方、左側のフロアフレーム25上には、ディーゼルエンジン(以下、エンジンという)の駆動を受けて圧油を供給するための油圧源装置として、後述するパワーユニット36や、これに付属する複数の関連機器のうちの一つである排ガス浄化装置37を収納するエンジン収納ハウス35が設けられている。各ハウス34,35は、前後方向に延びた略矩形箱型をなし、歩行可能な平坦面を広く占める天板34a,35aを有するとともに、底部には吊り動作によってパワーユニット36や、排ガス浄化装置37などの各種機器を一体で出し入れ可能な開口を有して、言い換えると、底板を有していない形状に形成されている。そして、前記開口の縁部を折曲げ形成したフランジでボルト締結されることにより、対応するフロアフレーム25,26に各ハウス34,35がそれぞれ着脱可能になっている。また、各ハウス34,35の側面には複数の点検扉35b(反対側は図示せず)がそれぞれ設けられている。
【0018】
パワーユニット36は、図5及び図6に示すように、フロアフレーム25上に防振状態で搭載されたエンジン38と、該エンジン38における冷却ファン38aの存在側とは反対側となる後部側に、片持ち状に取り付けられた油圧ポンプ装置39とを有して構成されている。また、フロアフレーム25上のエンジン38の前部側には、つまり冷却ファン38aによる冷却風の流れ方向の上流側には、冷却ファン38aと対面して配置された熱交換装置の一つとしてラジエータ38bが設けられている。さらに、エンジン収納ハウス35の前部側であってラジエータ38bよりも上流側には熱交換装置上流室35cが設けられ、内部には接続管でエンジン38に接続された燃料タンク38cと、エンジン38の排気経路に供給するNOx還元用の液体還元剤として尿素水を貯留した還元剤タンク(尿素水タンク)37aとが互いに前後方向に横並びの関係で位置され、それぞれフロアフレーム25に設けられている。
【0019】
エンジン38の側方部から上方に延びる吸気管38dには、エンジン収納ハウス35の天板35aに設置されたエアクリーナ38eが接続されており、該エアクリーナ38eで吸い込んだ新気(外部空気)をエンジン38の各気筒に対して供給可能になっている。一方、エンジン38の後端側部から上向きのベローズ管38fを介して後方に延びる排気管38gには、高次の排ガス規制に対応する排ガス浄化装置37が設けられている。
【0020】
排ガス浄化装置37は、尿素水を還元剤とする選択還元型触媒(SCR)37bと、排気管38gのSCR37bに対して上流側に配置されるとともに、前記尿素水タンク37aから尿素水の供給を受けて、排気管38g内の排気ガスに向けて尿素水を噴射する噴射ノズル37cなどを有している。これにより、燃焼後の排気ガスは、排ガス浄化装置37で浄化処理がなされた後、排気口38hを経て外部に排出される。具体的には、尿素水が噴射されると、高温雰囲気下の尿素水の分解反応でアンモニアが生成され、該アンモニアによって排気ガス中のNOxが還元されて水と窒素に分解されるようになっている。
【0021】
排気経路を構成する排気管38gや排気口38h、SCR37bなどは、フロアフレーム25に設置された架台40に安定的に取り付けられている。架台40は、図7乃至図10に示すように、断面コ字状やL字状の鋼材を構成部品に用いることで剛性が高められ、基本的には、脚柱間の寸法が異なる左右一対の前脚柱40a,40a及び後脚柱40b,40bと、前脚柱40a,40aの上端間に渡された横梁40cと、左右一対の後脚柱40b,40bの上端と横梁40cとの間に平行に渡された2本の縦梁40d,40dとを組み合わせてやぐら状に形成したもので、各脚柱40a,40bの下端がフロアフレーム25にボルト締結されることにより、油圧ポンプ装置39を跨ぐように枠組みされるとともに、全体としてエンジン収納ハウス35内に収まる大きさに形成されている。また、各脚柱40a,40bや縦梁40dには、排気管38gを支持するための複数のブラケット40eが一定間隔をあけて設けられている他、センサやフィルタなどの各種補器類を取り付ける大小様々なブラケットが設けられている。
【0022】
さらに、左右一対の後脚柱40b,40b同士の後面間であって高さ方向の中間位置に渡されたアングル部材40fと、該アングル部材40fの高さ位置に対応する長さを有するとともに、下端がフロアフレーム25にボルト締結された左右一対の支柱部材40g,40gとによってSCR37bの本体(筒体)が支持されている。また、SCR37bを支持した状態で、両後脚柱40b,40bのそれぞれの後面上部には、左右一対のステー部材40h,40hが取り付けられ、SCR37bから排気口38hに向かう管路の中間部分がU字状ボルト41でステー部材40h,40h上に固定されている。こうして、排ガス浄化装置37を構成するSCR37bが架台40の上端位置である縦梁40dよりも低い位置に配置され、エンジン収納ハウス35の天板35aと縦梁40dとの間の高さ方向の隙間を小さく抑えている。
【0023】
ところで、この種の杭打機11に備わる油圧ポンプ装置39は、可変容量型の斜板式油圧ポンプである第1油圧ポンプ39aと第2油圧ポンプ39bとを直列に連結した、いわゆるタンデム型の油圧ポンプ装置に複数のギヤポンプ39cを増設して構成されており、第1油圧ポンプ39aの前端に設けられたフランジ39dがエンジンブロックにボルト締結されている。そこで、重量のある油圧ポンプ装置39の取付部において強度を確保するため、杭打機11には、パワーユニット36に付属する複数の関連機器のうちの一つとして、ポンプ支持具42が備わっている。
【0024】
ポンプ支持具42は、架台40の両縦梁40d,40dから垂下して油圧ポンプ装置39の後部(自由端側)を支持するものであり、図11及び図12に示すように、上部が両縦梁40d,40dにそれぞれ設けたブラケット40i,40iに取り付けられる架台側部材43と、該架台側部材43の下部を上下方向に貫通する円柱形状の軸部材44と、油圧ポンプ装置39に取り付けられるポンプ側部材45とを有し、軸部材44の上部に大径部46が設けられるとともに、軸部材44の下部にポンプ側部材45が設けられている。また、大径部46と架台側部材43の下部との間で、弾性体であるコイルばね47に軸部材44が挿設されている。
【0025】
架台側部材43は、軸部材44を上下方向に貫通するための第1貫通孔48aが設けられた円筒形状の第1ホルダ48と、該第1ホルダ48の両側に突設した連結腕48b,48bと、該連結腕48bに対応した一対の吊りロッド49,49とを有している。また、第1ホルダ48の側面には、第1貫通孔48aを貫通する軸部材44の摺動抵抗を低減させるための潤滑油を供給する給脂口48cが設けられている。
【0026】
吊りロッド49は、長尺の丸棒部材49aの両端部に設けた雄ねじの一方を逆ねじとしたもので、各雄ねじに自在継手であるボールジョイント49bを螺合させており、各ボールジョイント49b,49bを介して上端部が縦梁40d,40dのブラケット40i,40iにナット50,50で締結され、下端部が連結腕48bの先端部にナット51,51でそれぞれ締結されている。また、丸棒部材49aの両端部に螺合された回り止めのナット49c,49cを緩めて丸棒部材49aをボールジョイント49bに対して回転可能な状態にした後、丸棒部材49aに設けた貫通孔49dに回転操作治具(図示せず)を係合して丸棒部材49aのねじ込み量を減らす方向に回転操作すると、各ボールジョイント49b,49bが互いに離反する方向に移動し、ねじ込み量を増やす方向に回転操作すると、各ボールジョイント49b,49bが互いに接近する方向に移動するように構成されている。自在継手には、一般的なボールジョイントの他に、ユニバーサルジョイントなどを採用することができる。また、各吊りロッド49,49の一方の軸心を軸部材44の軸心よりも前側に偏芯させ、他方を後側に偏芯させて互い違いに配置されることにより、軸部材44が前後方向に傾斜することを防止している。
【0027】
大径部46は、軸部材44の上部に設けられた雄ねじ部44aと、該雄ねじ部44aに螺合する第1ナット52と、該第1ナット52の下面に当接させる座金53とを有している。第1ナット52には、軸部材44に螺合した状態で、溶接などの接合手段による回り止めが施されている。また、軸部材44が上方から座金53、コイルばね47、第1ホルダ48の順に貫通して組み合わされることにより、コイルばね47の下端が第1ホルダ48の上面に当接するとともに、上端が座金53の下面に当接し、軸部材44が下方に移動して第1ホルダ48から抜け落ちることを規制している。
【0028】
ポンプ側部材45は、軸部材44を上下方向に貫通するための第2貫通孔54aが設けられた円筒形状の第2ホルダ54と、該第2ホルダ54の両側に突設した係止腕54b,54bと、軸部材44の下部に設けられた雄ねじ部44bに螺合する第2ナット55と、第2油圧ポンプ39b後部のアダプタ56にボルト57で締結された左右一対の吊り金具58,58とを有している。また、第2ホルダ54が軸部材44によって上方から貫通されるとともに、雄ねじ部44bに螺合された第2ナット55で支持されている。第2ナット55には、該第2ナット55における溝部(図示せず)と軸部材44に設けられた貫通孔(図示せず)とを一致させた状態で、割りピン55aを貫通させることによる回り止めが施されている。さらに、係止腕54bの先端部に設けたU字状の係止溝54cを吊り金具58に設けた係止孔58aに挿入した状態で、前記回転操作治具を用いて左右の吊りロッド49,49をそれぞれボールジョイント49bにねじ込んでいくと、軸部材44及び第2ホルダ54が同時に引き上げられるとともに、コイルばね47が収縮し始める。この結果、コイルばね47に上向きの弾性力が発生し、吊り金具58を介して油圧ポンプ装置39を引き上げようとする反力が作用するようになっている。
【0029】
このように形成された杭打機11では、製造現場においてパワーユニット36を搭載する際、まず、メインフレーム24に取り付けたフロアフレーム25上に、エンジン38などの大物部品から順に各種部品が搭載されてゆき、その後、エンジン38の後部に油圧ポンプ装置39が取り付けられるとともに、燃料タンク38cや作動油タンク32などの各種配管が接続される。ここで、フロアフレーム25上には架台40が組まれ、排気経路を構成する排気管38gや排気口38h、SCR37bなどが架台40にそれぞれ取り付けられる。このとき、架台40の縦梁40dと油圧ポンプ装置39との間の空間にポンプ支持具42が取り付けられ、油圧ポンプ装置39の後部がポンプ支持具42によって吊持されるように調節がなされる。
【0030】
続いて、用意した左右のハウス34,35に吊り治具が固定され、クレーンの吊り動作によって対応するフロアフレーム25,26に順次取り付けられる。このとき、エンジン収納ハウス35では、クレーンの巻き下げ動作によって、燃料タンク38cや尿素水タンク37a、エンジン38、さらにはエンジン38の後部側において架台40に支持された油圧ポンプ装置39や排気管38g、排ガス浄化装置37などの関連機器がハウスの下部開口を通じて一体で内部に収納され、これに伴い、排気口38hが天板35a上に設けられたダクト35dの部分に位置される。最後に、ハウスの天板35aに設置されたエアクリーナ38eに吸気管38dが接続されることによってパワーユニット36の搭載が完了する。その後、複数の工程を経て、上部旋回体14には各種大型部品が装着されて機体の組み立てが行われる。そして、完成した杭打機11は、エンジン38を駆動することでパワーユニット36から必要となる動力が、例えば、オーガ昇降用ウインチ装置を作動させる圧油が得られ、オーガ22の昇降を含む各種動作によって杭打ち機能を発揮できる状態となる(図1)。
【0031】
ここで、大型の杭打機11は、現場間を移動する際に、クローラ12aやリーダ16などの分解・組立が行われたり、車体上の各種機器の保守が定期的に行われたりすることから、作業者はその都度、ハウス34,35に上がって必要な作業を行っている。このとき、ハウス34,35の天板34a,35aが作業用の足場となり、特に、エンジン収納ハウス35では、その前部が、つまり熱交換装置上流室35cの天板35aが、中間部に階段35eを有して前後方向に段差をもって形成され(図5)、これにより、上部旋回体14の前部及び後部間の行き来を昇降も兼ねて可能にする足場となっている。階段35eは、天板35aの前後の段差を傾斜をもって繋ぐ前面板35fに複数の踏み板35gを取り付けたもので、外縁部に転落防止用の手摺り35hが設置されている。また、前面板35fには、冷却ファン38aによる冷却風を取り入れる吸気口35iが設けられている(図4)。
【0032】
ところで、大型の杭打機の中でも、輸送姿勢においてバックステー17を車体から分離させないでリーダ16と共に上部旋回体14上に倒伏させた状態で輸送される杭打機11では、左右一対のバックステー17,17の基端部が、各ハウス34,35の上方であって車幅外方向に張り出した左右一対のアーム24a,24aにそれぞれ回動可能に軸支されている。これにより、バックステーシリンダ17aを縮小させることでリーダ16と共に倒伏させたバックステー17の基端部(シリンダロッド)が各ハウス34,35の天板34a,35aに沿って配置される。すなわち、各ハウス34,35における平坦状の天板34a,35aは、上述の足場機能が確保されているだけでなく、アーム24aの配置を妨げず、かつ、バックステー17の可動領域(回動範囲)をも考慮されている。
【0033】
このように、機体フレームに設置された架台40に対して排気管38g及び排ガス浄化装置37が取り付けられ、箱型のハウス34,35が、その底部に吊り動作によってエンジン38、油圧ポンプ装置39、排気管38g及び排ガス浄化装置37を一体で出し入れ可能な開口を有して形成されているので、排ガス浄化装置37などパワーユニット36に付属する関連機器を、エンジン38と同様にして機体フレーム側で支持する構成が可能になる。これにより、製作誤差による排気系の組み立て不良をなくして、機体フレーム上へのパワーユニット36の設置を容易かつ迅速に行うことができる。すなわち、車体の限定されたスペースにおいて、搭載性を向上させることが可能なパワーユニット36の設置構造が得られる。
【0034】
また、設計段階では、やぐら状の架台40を形鋼などによって枠組みできることから、部材の追加や部品取付孔の追加などが容易に行え、仕様変更が生じても既存品との間で互換性を確保することが可能となる。つまり、排ガス規制の強化に伴って各種部品が増加した場合であっても、ハウス35内の配置上の制約を受けにくくなり、設計に自由度を与えることができる。さらに、製造段階では、機体フレーム上でパワーユニット36を完成に近い状態にサブ組立てした後、クレーンで吊したハウス35を被せるだけの簡単な作業によってハウス35を組み付けることが可能となり、リードタイムの短縮による生産性向上を図ることができる。また、保守においても、ハウス35を着脱する際の作業量を減らすことができ、とりわけ、エンジン38の載せ替えなどといった大掛かりな作業を必要とする状況であれば、その効果も顕著に得られる。
【0035】
また、関連機器の一つであるポンプ支持具42が、架台40の上部から垂下して油圧ポンプ装置39の自由端側を支持可能に形成されるとともに、上下方向に弾性変位可能なコイルばね47を備えているので、ハウス35を組み付ける前段階において、広い作業スペースを確保してポンプ支持具42の組み立てや油圧ポンプ装置39の支持反力の調節(吊りロッド49の回転操作)を行うことが可能となり、作業性を大きく向上させることができる。しかも、ハウス35をより簡素に構成できることから、製作性の向上やコストの低減を図ることができる。
【0036】
さらに、フロアフレーム25,26に取り付けられた左右のハウス34,35について、その天板34a,35aがそれぞれ作業用の足場となり、その中でも、エンジン38が搭載された側では、架台40の上端位置よりも低い位置に排ガス浄化装置37として、例えば、SCR37bが配置されているので、排気系を構成するこれらの部品をエンジン収納ハウス35内に集約配置することが可能となり、その結果、天板35aをより平坦に形成することができる。こうして、エンジン収納ハウス35の天板35aが、上部旋回体14の前部及び後部間の行き来を可能にする足場となり、杭打機11の分解・組立や保守などを行う作業者の安全が確保される。
【0037】
また、エンジン収納ハウス35が、ラジエータ38bよりも冷却風の流れ方向の上流側に設けられた熱交換装置上流室35cを有して形成され、尿素水タンク37aが熱交換装置上流室35cに収納されているので、尿素水タンク37aの温度上昇を抑制して尿素水への影響を少なくすることができる。さらに、熱交換装置上流室35cには、尿素水タンク37aに対して前後方向に横並びの関係で燃料タンク38cが収納されているので、温度上昇の抑制が効率よく行え、しかも、熱交換装置上流室35c内の上部の不要な容積をなくして、冷却性に優れた構造を得ることができる。
【0038】
また、熱交換装置上流室35cの機能的な構造と相俟って、エンジン収納ハウス35の天板35aが、複数の踏み板35gを取り付けた前面板35fを介して前後方向に段差をもって形成されているので、踏み板35gによってハウス35の昇降を安全かつ迅速に行うことができる。さらに、ハウス35の奥行き寸法を利用して、踏み板35gを幅方向に拡大できることから、昇降中の足運びが容易となり、足場を無理なく移動することができる。これに加えて、前面板35fに冷却風を取り入れる吸気口35iを備えているので、総合的に最適設計を行うことができる。
【0039】
また、本発明を杭打機に、例えば、リーダ16を支持する左右一対のバックステー17,17を備えた3点式杭打機のような大型の杭打機11に適用することで、上述したように、ハウス34,35の昇降を頻繁に行ったり、輸送姿勢に起因した特別な使用態様があったとしても、排ガス浄化装置37などパワーユニット36に付属する関連機器をハウス35内にコンパクトに収納することにより、ハウス35上のスペースをより有効に活用でき、もって、実用的価値の高い杭打機11を実現することができる。
【0040】
なお、本発明は、建設機械として杭打機を例示したが、これに限られず、アースドリルやクレーンなど、上下動可能な掘削装置や荷役装置の動力源としてエンジンパワーユニットを備えた各種建設機械に適用することができる。また、架台の構造について、脚柱や梁の数、排ガス浄化装置を支持する部材などの数は任意であり、これらの部材は、製作が容易で強度的にも優れた形鋼やパイプ材を多数使用して形成することができるが、これに限らず、板材を曲げて形成したものなどが採用できる。すなわち、拡張性をもたせて複数の仕様において共通化が図れるような構造であればよい。さらに、ポンプ支持具は、油圧ポンプの自重を支持しつつ、上下方向の振動を抑制できる弾性体を備えていればよく、取り付けるスペースなどの各種条件に応じて適宜に構成することができる。
【0041】
また、ハウスの形状は、下部に開口を有するとともに、天板を平坦状に形成した箱型であれば中間位置で前後分割可能な構造としてもよく、さらには、外縁部に手摺りを並べて設置したり、踏み面に滑り止めなどの凹凸加工を施したりすることができる。この場合、ハウス上での安全な移動を確実なものとすることができる。加えて、エンジン収納ハウス内の熱交換装置上流室には、燃料タンクに換えて作動油タンクを配置することができ、熱交換装置には、エンジン冷却水を冷却するラジエータの他にも、作動油を冷却するオイルクーラなどを含めることができる。
【符号の説明】
【0042】
11…杭打機、12…下部走行体、12a…クローラ、13…旋回ベアリング、14…上部旋回体、15…リーダアーム、16…リーダ、17…バックステー、17a…バックステーシリンダ、18…後部サポートシリンダ、19…カウンタウエイト、20…ガイドパイプ、21…ガイドギブ、22…オーガ、23…スクリューロッド、24…メインフレーム、24a…アーム、25,26…フロアフレーム、27…フロントジャッキ、28…リヤジャッキ、29…運転室、30…ウインチ搭載部、31…トップシーブブロック、32…作動油タンク、33…油圧モータ、34…機器収納ハウス、34a…天板、35…エンジン収納ハウス、35a…天板、35b…点検扉、35c…熱交換装置上流室、35d…ダクト、35e…階段、35f…前面板、35g…踏み板、35h…手摺り、35i…吸気口、36…パワーユニット、37…排ガス浄化装置、37a…還元剤タンク(尿素水タンク)、37b…選択還元型触媒(SCR)、37c…噴射ノズル、38…エンジン、38a…冷却ファン、38b…ラジエータ、38c…燃料タンク、38d…吸気管、38e…エアクリーナ、38f…ベローズ管、38g…排気管、38h…排気口、39…油圧ポンプ装置、39a…第1油圧ポンプ、39b…第2油圧ポンプ、39c…ギヤポンプ、39d…フランジ、40…架台、40a…前脚柱、40b…後脚柱、40c…横梁、40d…縦梁、40e…ブラケット、40f…アングル部材、40g…支柱部材、40h…ステー部材、40i…ブラケット、41…U字状ボルト、42…ポンプ支持具、43…架台側部材、44…軸部材、44a,44b…雄ねじ部、45…ポンプ側部材、46…大径部、47…コイルばね、48…第1ホルダ、48a…第1貫通孔、48b…連結腕、48c…給脂口、49…吊りロッド、49a…丸棒部材、49b…ボールジョイント、49c…ナット、49d…貫通孔、50,51…ナット、52…第1ナット、53…座金、54…第2ホルダ、54a…第2貫通孔、54b…係止腕、54c…係止溝、55…第2ナット、55a…割りピン、56…アダプタ、57…ボルト、58…吊り金具、58a…係止孔
図1
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