特開2020-190149(P2020-190149A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-190149(P2020-190149A)
(43)【公開日】2020年11月26日
(54)【発明の名称】倒壊防止構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20201030BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20201030BHJP
【FI】
   E04H9/02 301
   F16F7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-96692(P2019-96692)
(22)【出願日】2019年5月23日
(71)【出願人】
【識別番号】510148773
【氏名又は名称】株式会社アイ・エム・エー
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】真崎 雄一
(72)【発明者】
【氏名】細川 洋治
【テーマコード(参考)】
2E139
3J066
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC26
2E139AC32
2E139BA02
2E139BD22
2E139CA21
2E139CC01
3J066AA22
3J066BA03
3J066BB01
3J066BC01
3J066BC10
3J066BF01
(57)【要約】
【課題】急激な階崩壊を抑制するとともに、階崩壊時に生存空間を確保する、建物の倒壊防止構造を提供する。
【解決手段】台座と、前記台座の上部に並列および積層する複数の箱状体と、最下段の前記箱状体と前記台座との間に配置する支持板と、を有し、前記箱状体は、前面と背面を開口した中空の立方体であり、前記台座は、鋼管からなる台座管を複数本並べて起立して構成し、隣接する前記箱状体どうしは接する面を一体に連結することを特徴とする、倒壊防止構造。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座と、
前記台座の上部に並列および積層する複数の箱状体と、
最下段の前記箱状体と前記台座との間に配置する支持板と、を有し、
前記箱状体は、前面と背面を開口した中空の立方体であり、
前記台座は、鋼管からなる台座管を複数本並べて起立して構成し、
隣接する前記箱状体どうしは接する面を一体に連結することを特徴とする、
倒壊防止構造。
【請求項2】
請求項1に記載の倒壊防止構造において、
前記台座管の内部には、前記台座管よりもヤング係数の低い材料を充填して硬化した柱状体を有し、
前記支持板の下面には、前記台座管に挿入可能な支持足と突設し、
前記柱状体の上面は、前記台座管の上端よりも所定の高さだけ下げた位置にあり、
前記支持足の長さは、前記柱状体の上面から前記台座管の上端までの高さよりも長いことを特徴とする、
倒壊防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の倒壊防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の倒壊を防止する構造としては、建物の基礎部と梁の間に箱状体を積層する構造が知られている。
この構造は、建物の柱が破損した時に積層した箱状体により柱の軸力を引き受けるものであり、積層した箱状体が各層毎に順番に変形することにより、急激な階崩壊を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−122159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、地震による被害が多発しているが、建物の階が崩壊したときに垂れ壁や腰壁により生存空間が確保され、建物内部にいた人が助かった例があった。
従来の建物の倒壊防止構造は、急激な階崩壊を防止することで全倒壊を防ぐものであるが、例えば建物の上層の急激な崩壊等により荷重が過大となり、全ての箱状体が変形してしまう場合には、最終的に生存空間が確保されないおそれがある。
【0005】
本発明は、急激な階崩壊を抑制するとともに、階崩壊時に生存空間を確保する、建物の倒壊防止構造(倒壊防止構造体)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本願発明の倒壊防止構造は、台座と、前記台座の上部に並列および積層する複数の箱状体と、最下段の前記箱状体と前記台座との間に配置する支持板と、を有し、前記箱状体は、前面と背面を開口した中空の立方体であり、前記台座は、鋼管からなる台座管を複数本並べて起立して構成し、隣接する前記箱状体どうしは接する面を一体に連結することを特徴とする。
また、前記台座管の内部には、前記台座管よりもヤング係数の低い材料を充填して硬化した柱状体を有し、前記支持板の下面には、前記台座管に挿入可能な支持足と突設し、前記柱状体の上面は、前記台座管の上端よりも所定の高さだけ下げた位置にあり、前記支持足の長さは、前記柱状体の上面から前記台座管の上端までの高さよりも長いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)積層した箱状体が各層ごとに順番に変形するため、急激な階崩壊を抑制する。
(2)台座管を介した圧縮力の作用した柱状体は、台座管により周方向を拘束されるため、コンファインド効果が発揮され、柱状体の耐力や靭性が向上する。
(3)支持足を介して柱状体に荷重が作用すると、柱状体が圧縮変形するため、支持板に作用した衝撃力を吸収し、台座管に過大な衝撃力が作用するのを抑制する。
(4)台座は鋼管からなるため、建物の重量や階崩壊による荷重を受けても変形せず、階崩壊時に生存空間が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の倒壊防止構造の斜視図
図2】箱状体の斜視図
図3】支持板の斜視図(1)
図4】支持板の斜視図(2)
図5】本発明の倒壊防止構造の配置状態の説明図
図6】箱状体の変形の説明図(1)
図7】箱状体の変形の説明図(2)
図8】柱状体の変形の説明図
図9】台座により生存空間が確保された状態の説明図
図10】その他の実施例にかかる台座の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の倒壊防止構造を詳細に説明する。
【0010】
[実施例1]
(1)倒壊防止構造
本発明の倒壊防止構造は、複数の箱状体1を台座2の上部に並列および積層して構成するものである(図1)。
中空の台座2の内部には柱状体3を配置する。
また、最下段の箱状体1の下部には支持板4を配置し、支持板4の下面には支持足5を突設する。
【0011】
(2)箱状体
箱状体1は、前面と背面を開口した中空の立方体であり、鋼板により構成する(図2)。
箱状体1は、各面のそれぞれ対応する位置にボルト挿通孔11を設ける。
箱状体1は、並列および積層し、接する面のボルト挿通孔11にボルト及びナットにより構成する連結材12のボルトを挿通し、ナットを螺合して連結する。
【0012】
(3)台座
台座2は、鋼管からなる台座管21を複数本並べて起立したものである。
台座管21の内部には、柱状体3を充填する。
柱状体3は、発泡コンクリート等の、台座管21よりもヤング係数の低い材料を台座管21の内部に充填して硬化したものである。
【0013】
(4)支持板
支持板4は、箱状体1と台座2との間に配置する板状体である。
支持板4は、上面に連結ボルト41を突設する(図3)。
連結ボルト41は、箱状体1のボルト挿通孔11に対応した位置に突設し、ボルト挿通孔11に挿通してナット42を締め付けて、支持板4の上面に箱状体1を固定する。
支持板4の下部に突設する支持足5は、台座管21に挿入可能な断面形状とし、台座管21の上端から内部に挿入する。
台座管21の内部に充填する柱状体3は、台座管21の上端まで充填せず、所定の高さだけ下げた位置を上面とする。そして、柱状体3の上面により支持足5の下端を支持する。
支持足5の長さは、柱状体3の上面から台座管21の上端までの高さよりも長くする。
このように構成することにより、柱状体3により支持足5を支持している状態のとき、支持板4と台座管21とは接しない。
支持板4は、1枚の板状体を並列する複数の台座管21の上端に亘って配置してもよいし(図3)、1本の台座管21及び支持足5毎に1枚の板状体を配置してもよい(図4)。このとき、1枚の支持板4は、台座管21の内径よりも大きくする。
【0014】
(5)倒壊防止構造の配置
本発明の倒壊防止構造は、柱6の近傍であって梁7と基礎部8との間に配置する(図5)。
台座2の下端は基礎部8に固定するが、箱状体1の上端と梁7は連結しない。このように構成することにより、梁7と基礎部8が相対的にずれた場合でも、倒壊防止構造にせん断力が作用せず、せん断力による変形が生じない。
【0015】
(6)倒壊防止構造の作用
(6.1)箱状体の作用
柱6崩壊時、本発明の倒壊防止構造は柱6の代わりに軸力を支持する。倒壊防止構造はせん断力による変形が生じないため、軸力支持の効果が常に発揮される。
そして、受ける軸力が大きくなると、積層した箱状体1が層ごとに変形し、衝撃を吸収する(図6図7)。
積層した箱状体1は、階崩壊に至る段階で各層ごとに順番に変形するため、急激な階崩壊を抑制する。
【0016】
(6.2)柱状体の作用
本発明の倒壊防止構造は、柱状体3の上面により支持足5の下端を支持するため、箱状体1から支持板4にかかる荷重は、支持足5を介して柱状体3に作用する(図8(a))。
支持足5は台座管21の内部に収まっており、支持板4と台座管21は接していないため、支持板4に作用した衝撃力は台座管21には直接伝達されず、支持足5から柱状体3を介して、台座管21に側圧により伝達されるので、台座管21は座屈を生じない。
柱状体3は、台座管21の中に充填されているので、衝撃力による圧縮力が作用し続けても裸の発泡コンクリートのように崩壊することなく、歪みを保ちながら形状を維持する。また、圧縮力の作用した柱状体3は台座管21により周方向を拘束されるため、コンファインド効果が発揮され、柱状体3の耐力や靭性が向上する。
【0017】
また、柱状体3はヤング係数が低いため、荷重が大きくなると圧縮変形する(図8(b))。
柱状体3は台座管21の上端から所定の高さだけ下げた位置が上面となる。また、支持足5の長さは柱状体3の上面から台座管21の上端までの高さよりも長いため、支持板4の下面と台座管21の上端との間は所定の距離離れている。このため、支持足5を介して柱状体3に荷重が作用すると、この距離だけ、柱状体3が圧縮変形する。
柱状体3が圧縮変形するため、支持板4に作用した衝撃力を吸収し、台座管21に過大な衝撃力が作用するのを抑制する。
そして、柱状体3が圧縮変形して支持板4の下部が台座管21の上端に当接すると、支持板4に作用する荷重は、台座管21により支持される。
【0018】
(6.3)台座の作用
階崩壊時、箱状体1により急激な階崩壊が抑制されるため、台座2には過大な荷重は作用しない。
そして、台座2は鋼管からなるため、建物の重量や階崩壊による荷重を受けても変形せず、階崩壊時に生存空間Sが確保される(図9)。
【0019】
[その他の実施例]
(1)台座の構造
実施例1における台座2は、台座管21を隣接して配置し、内部に柱状体3を充填したが、建物が低層な場合などで想定される荷重が小さい場合には、台座管21を所定の間隔を空けて配置してもよいし(図10(a))、内部に柱状体3を充填せず、台座管21により直接支持板4を支持してもよい(図10(b))。このとき、支持板4は、支持足5を突設しない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 箱状体
11 ボルト挿通孔
12 連結材
2 台座
21 台座管
3 柱状体
4 支持板
41 連結ボルト
42 ナット
5 支持足
6 柱
7 梁
8 基礎部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10