【課題】回転体を動力軸に装着する際、動力軸回りの位置合わせを不要とし、異音や騒音を抑え、かつ、回転体を停止又は低速側に操作したときに、素早く停止又は低速になる新たな動力伝達構造を提供する。
【解決手段】駆動部9の出力を少なくとも停止を含む2段階以上に切り替え可能な回転体の動力伝達機構であって、前記動力伝達機構は、(a)動力軸20の回転を前記回転体に伝達する一方向クラッチ50以外の回り止め機構、または、(b)前記動力軸と前記回転体の速度差を減衰させるブレーキ機構を備え、前記回転体は、前記駆動部の動力軸の回転を前記回転体に伝達する一方向クラッチを備え、前記駆動部の出力を、停止を含む低速側に切り替えたときに少なくとも、前記(a)または前記(b)が作用する、前記回転体の動力伝達機構とした。
前記ブレーキ機構は、前記回転体のボス部の内部に摩擦材を配置し、動力軸表面と接触する機構とするか、および/または、前記動力軸に摩擦材を配置し、前記ボスの内周面と接触する機構とした、請求項1または請求項2記載の回転体の動力伝達機構。
【背景技術】
【0002】
プロペラファン、ターボファン、シロッコファン、グリスフィルタなどの回転体を動力軸に取り付ける時、様々な方式の動力伝達構造(回り止め)が工夫されてきた。
その一つは、特許文献1の
図4に記載されているように、動力軸にDカットを付ける方式であるが、回転体であるファンを取り付ける際に、動力軸のDカットに合わせて、動力軸の周方向に位置を揃えないと取り付けることができず、その位置合わせに手間を要していた。
特許文献2の
図4および
図5に記載のように、動力軸に駆動ピンを圧入し、回転体であるファンのファンボスに設けられた係合溝に駆動ピンを係合させる方式が多く用いられている。この方式もまた、動力軸の駆動ピンとファンボスの係合溝と位置合わせを要する上に、構造上微小なガタがあるため、異音や騒音の原因となることが多い。また、異音や騒音を防止するためにガタをなくし係合をきつくすると、位置合わせを厳密に行う必要があるばかりではなく、抜けにくくなるという不具合が発生する。
特許文献3には、動力軸を羽根に取り付ける機構が記載されている。動力軸には、その途中に係合子であるピンが取り付けられている。他方、羽根側には、金属製の板体状にゴムまたは軟質プラスチック等よりなるワッシャー状の当接盤が装着されている。羽根に設けた当接盤に対して、動力軸に設けたピンが喰い込むように押圧し、羽根と動力軸を固定するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで、回転体を動力軸に取り付ける方式は、特許文献1〜3のように様々提案されてきた。
しかし、特許文献1および特許文献2の方式は、回転体と動力軸の位置合わせが容易でなく、異音や騒音が発生することがあった。
また、特許文献3の方式は、動力軸の方向に限らずファンを取り付けられるものであるが、板状のゴムまたは軟質プラスチックよりなる当接盤にモータの強いトルクがかかるため、ゴムまたは軟質プラスチックの劣化が激しく、劣化が起きると部品を交換しなければならないという欠点があった。
特に、レンジフードは、排気を行うためのシロッコファンや油煙等を回収するためのグリスフィルタなどの回転体を備えている。これらの回転体をモータで回転させて、排気や排気に含まれる油の回収を図っている。
シロッコファンやグリスフィルタなどの回転体は、調理によって発生した油煙に由来する油等が付着しやすいため、定期的な清掃が必要となる。そのため、着脱の容易性は重要である。
【0005】
本発明は、ファンおよびフィルタ等の回転体を動力軸に装着する際、動力軸回りの位置合わせを不要とし、異音や騒音を抑え、かつ、回転体を停止又は低速側に操作したときに、素早く停止又は低速になる新たな動力伝達構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、駆動部の出力を少なくとも停止を含む2段階以上に切り替え可能な回転体の動力伝達機構であって、前記動力伝達機構は、(a)前記動力軸の回転を前記回転体に伝達する一方向クラッチ以外の回り止め機構または、(b)前記動力軸と前記回転体の速度差を減衰させるブレーキ機構を備え、前記回転体は、前記駆動部の動力軸の回転を前記回転体に伝達する一方向クラッチを備え、前記駆動部の出力を、停止を含む低速側に切り替えたときに少なくとも、前記(a)または前記(b)が作用する、前記回転体の動力伝達機構とすることで、課題の解決を図った。
回転体4に一方向クラッチ50を設けたため、動力軸20の周方向に位置決めする必要なく、回転体4を動力軸20に装着できるようになった。また、前記駆動部9の出力を、停止を含む低速側に切り替えたときには、時間を要せず作業者が切り替えた駆動部9の出力に合致した回転速度にすることができるようになった。
【0007】
本発明の一態様は、上記態様に加え、前記回り止め機構は、動力軸20に設けられた突出部を、回転体4に設けられた弾性材60に圧接させたものとすることで、課題の解決を図った。
この態様により、突出部を弾性材60に圧接する新規で簡単な機構の回り止め機構が提供される。
【0008】
本発明の一態様は、上記態様に加え、前記ブレーキ機構は、前記回転体4のボス部40の内部に摩擦材70を配置し、動力軸表面と接触する機構とするか、および/または、動力軸20に摩擦材70を配置し、ボス部40の内部部材と接触するものとすることで、課題の解決を図った。
この態様により、動力軸20の回転を制動する新規な摩擦ブレーキ機構が提供される。
【0009】
本発明の一態様は、上記態様に加え、前記一方向クラッチ50全体が、適宜な方向にずれることを許容するように設けられていることで、課題の解決を図った。
一方向クラッチ50が適宜な方向にずれることで、一方向クラッチ50のセンターから多少ずれた方向から動力軸20が挿入されても、動力軸20の挿通ができるようになった。
【0010】
本発明の一態様は、上記態様に加え、前記回転体がファンおよび/またはフィルタであることで、課題の解決を図った。
ファンやフィルタは、清掃等のため着脱の容易性が求められる回転体であり特に本発明に有効である。
【0011】
本発明の一態様は、上記態様に加え、レンジフードとしたことで、課題の解決を図った。
レンジフードは、油等の汚れにより、回転体であるファンやグリスフィルタの定期的な清掃が要求されるものであり、本発明が特に有効である。
【発明の効果】
【0012】
回転体に一方向クラッチを設けたため、動力軸の周方向に位置決めする必要なく、回転体を動力軸に装着できるようになった。
また、回転体のボス部に設けられた係合溝に駆動ピンを係合させる必要がなくなったため、異音や騒音を防止できるようになった。
さらに、前記駆動部の出力を、停止を含む低速側に切り替えたときには、時間を要せず作業者が切り替えた駆動部の出力に合致した回転速度にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施例1>
(実施例1のレンジフードの概要)
本発明に係るレンジフード1について説明する。
図1は、本実施例におけるレンジフード1の平面図、正面図、底面図、右側面図、右上から見た斜視図、右下から見た斜視図、
図2は、本実施例におけるレンジフード1の整流板7を取り外した時の右下から見た斜視図、
図3は、レンジフード設置時における手前側−奥側の前後方向の断面図を示す。
【0015】
本発明のレンジフード1は、下方または周囲で行われる調理によって発生する湯気や油煙等を捕集するための、上方に凹状の内面パネル5を内面に有する薄型のフード2を有する。フード2は、上部後方に位置する連通口6付近で、排気ダクト(図示せず)に接続された送風機ボックス3と連結される。送風機ボックス3は、内部にシロッコファンであり空気の流れを発生させるファン4を有する。従って、ファン4が稼働すると連通口6は負圧となり、内面パネル5の下方の空気は連通口6を通して吸入され、排気ダクトを通して外部に排出される。
【0016】
連通口6には、空気の流れを通過させる孔を有する円盤状のグリスフィルタ8と、グリスフィルタ8の円盤の中心に動力軸20を着脱装置10により連結され、グリスフィルタ8を回転させるモータ81が設けられる。
【0017】
内面パネル5の下方の空気は、調理によって発生する油煙等を含んでおり、ファン4が稼働すると、連通口6に存在する、即ちファン4が発生させた空気の流れの流路上であってファン4より上流側に位置するグリスフィルタ8の孔に吸引され、その孔を通過することになる。グリスフィルタ8は、グリスフィルタのモータ81により回転可能に設けられており、レンジフード1が稼働(通常運転)すると、ファン4が空気の流れを発生させると共にグリスフィルタのモータ81がグリスフィルタ8を回転させる。グリスフィルタ8が回転すると、空気は孔を通って通過するが、油分はグリスフィルタ8の表面に衝突する。レンジフード1は、グリスフィルタ8を回転させることにより、空気に含まれる油分を捕集する。
【0018】
グリスフィルタ8と動力軸20を連結する着脱装置10は、整流板7の直上に位置するので、作業者が、グリスフィルタ8を洗浄等するために動力軸20から取り外す場合は、まず整流板7を取り外し、
図2に示すようにグリスフィルタ8を露出させてから着脱装置10を操作する。
本発明のレンジフード1の構造は、一例を示すものであって、これに限るものではない。
【0019】
実施例1は、(a)一方向クラッチ50以外の動力軸20の回転を回転体4に伝達する回り止め機構を備え、駆動部9の出力を、停止を含む低速側に切り替えたときに前記(a)の回り止め機構が作用する実施例である。
【0020】
(動力伝達機構の概要)
図4は、動力軸20へファン4を装着する直前の状態を示している。ファンのモータ9は、動力軸20を介してファン4を駆動する。着脱装置10は、ファン4に一体となるよう取り付けられ、ファン4を動力軸20に取り付ける際には、着脱装置10に動力軸の先端部21を挿入することで、ファン4が動力軸20に装着される。
ファン4が動力軸20に着脱装置10を用いて装着されることで、ファンのモータ9の駆動力がファン4に伝達される。
【0021】
図5は、ファンボス40、一方向クラッチ50、弾性材60の組み立てを示す分解図である。ファンボス40は、ファン4(図示されていない)に設けられており、両者は一体になっている。ファンボス40には、ドーナッツ状に孔(一方向クラッチ取付孔513)が設けられた一方向クラッチ固定板51が配設されている。一方向クラッチ固定板51の一方向クラッチ取付孔513には、三方にキー512が設けられ、一方向クラッチ50に設けられたキー溝502にはめ込まれ固定される。
次いで、一方向クラッチ50の上から一方向クラッチカバー52が被せられる。一方向クラッチカバー52の周囲3か所に設けられたカバー取付孔521は、固定板取付孔511、ファンボス取付孔41と位置合わせされて、取付ねじ53により、ファンボス40に固定される。
【0022】
一方向クラッチカバー52の膨出部524には、弾性材60がはめ込まれる。弾性材60の中央には、動力軸挿通孔65が設けられており、動力軸20が挿通できるようになっている。
【0023】
(一方向クラッチと一方向クラッチ固定板の取り付け関係)
図6は、一方向クラッチ50と一方向クラッチ固定板51との取り付け関係を示す要部拡大図である。
前述したように、一方向クラッチ固定板51の内周面にある一方向クラッチ取付孔513には、三方に一方向クラッチ50のキー溝502と嵌るキー512が設けられている。
また、一方向クラッチ50のキー溝502の深さaは、一方向クラッチ固定板51のキー512の高さdよりわずかに大きく構成されており、一方向クラッチ取付孔513内で、a−dだけ一方向クラッチ50を動力軸20に近づいたり、遠ざかったりする方向に動く遊びを持たせてある。
さらに、一方向クラッチ50のキー溝502の幅cは、一方向クラッチ固定板51のキー512の幅bよりわずかに広く構成されており、一方向クラッチ50は、一方向クラッチ取付孔513内で、c−bだけ動力軸周方向に動くように遊びを持たせている。
そのため、一方向クラッチ50は、わずかに適宜方向に動くことができる。
動力軸20をファン4に設けた一方向クラッチ50に挿通するには、一方向クラッチ50のセンターに正確に差し込まなければならないが、上記遊びにより、多少センターからずれても挿通できる。
そして、ファンのモータ9が始動すると、一方向クラッチ50のキー溝502と一方向クラッチ固定板51のキー512は噛み合い、遊びがあっても駆動連結する。
なお、動力軸方向に遊びを設けてもよい。
一方向クラッチ50は、適宜な方向にずれることを許容し、一方向クラッチ50のセンター合わせを厳密に行うことなく動力軸20を挿通でき、また、一方向クラッチ50の特性上、動力軸20の周方向に対してどのような方向からでも挿通できる部材であって、容易にファン4を動力軸20に取り付けることができる。
【0024】
(回り止め)
図7は、ファンのモータ9、動力軸20、突出部であるシャフトピン25、弾性材60の配置関係を示す側面図である。着脱装置10は、ファンボス40に固設され、図示されていないファン4と一体化されている。ファンボス40に、上記した弾性材60が設けられている。ファン4のモータ9(一部しか図示されていない)からは動力軸20が出ている。前記した弾性材60の動力軸挿通孔65に動力軸20を挿通することで、動力軸20は、一方向クラッチ50を通って着脱装置10にはめ込まれる。
動力軸20には、突出部であるシャフトピン(突出部)25が突出しており、弾性材60に強く押圧されることで、シャフトピン(突出部)25が弾性材60を変形させてめり込んでいる様子が
図7から分かる。
図8は、
図7を別角度からみた斜視図であり、
図9はファン4の側面からの断面図である。動力軸20に設けられたシャフトピン(突出部)25が弾性材60に押圧されて喰い込んでいる。ファンボス40に設けられた一方向クラッチカバー52内には、前記したように一方向クラッチ50が設けられている。
動力軸20は、シャフトピン(突出部)25と弾性材60の連結を介してファン4と駆動連結されるとともに、一方向クラッチ50を介してファン4と駆動連結される。
【0025】
(実施例1の作用)
動力軸20へファン4を装着する直前の状態を示している
図4に記載のように、着脱装置10に動力軸の先端部21を挿入することで、ファン4が動力軸20に装着される。着脱装置10へ動力軸20を挿入すると、
図5に記載のように、弾性材60、一方向クラッチ50、ファンボス40の順に動力軸の先端部21が通ってゆく。
動力軸20のシャフトピン(突出部)25が弾性材60に当接し、強く押圧されシャフトピン(突出部)25が弾性材60を変形させて喰い込んだ位置で、着脱装置10に設けられた図示されていないロック機構により動力軸20と着脱装置10は係合されファン4の装着は完了する。
一方向クラッチ50は、ファンのモータ9の駆動力を伝達する方向には動力軸20と噛み合うが、ファンのモータ9の出力を、停止を含む低速側に切り替えたときには、一方向クラッチ50と動力軸20との駆動接続は切れる。
【0026】
(1)モータを始動または出力を高速側に切り替えたとき
ファンのモータ9を始動したときには、一方向クラッチ50による駆動連結に加え、弾性材60と動力軸20に設けられたシャフトピン(突出部)25による駆動連結の2方式の駆動連結機構が併存することとなる。
一方向クラッチ50を設けず、弾性材60と動力軸20に設けられたシャフトピン(突出部)25による駆動連結機構のみを設けた場合にあっては、ファンのモータ9の駆動開始操作時に、動力軸20に大きなトルクがかかる。この大きなトルクは、弾性材60に対して、動力軸20から突出した突出部であるシャフトピン(突出部)25を捻じるような変形を与えようとする。
これに対して、前記2方式の駆動連結機構を併存させた場合、一方向クラッチ50の駆動連結は瞬時に、かつ、強固になされ、弾性材60に変形が起きるほどシャフトピン(突出部)25が動く前に、一方向クラッチ50による駆動連結がなされる。このため、ファンのモータ9の駆動力のすべてが一方向クラッチ50によりファン4に伝えられることになる。弾性材60とシャフトピン(突出部)25の当接箇所にはほとんどトルクがかからず、弾性材60の繰り返し変形による劣化は防がれる。
仮に、ファンのモータ9の駆動開始操作時に弾性材60がシャフトピン(突出部)25との当接箇所で変形が起きたとしても、一方向クラッチ50による駆動連結により弾性材60にかかっていたトルクがかからなくなって変形は解消し、弾性材60の劣化は防がれる。
【0027】
ファンのモータ9の出力を高速側に切り替えたとき、すなわち、低速から高速へと切り替えたときも、上述したのと同様に、弾性材60に大きなトルクがかかることはない。
【0028】
(2) モータの出力を、停止を含む低速側に切り替えたとき
ファンのモータ9の出力を、作業者が停止を含む低速側に切り替えたときには、高速で漕いでいた自転車のペダルを急にゆっくり回したように、一方向クラッチ50の駆動連結は断たれ、回転方向とは逆の方向に力が働くが、その逆方向の力を動力軸20のシャフトピン(突出部)25と弾性材60の駆動連結で受け止めることで、当該駆動連結は回り止めとして作用し、ファンのモータ9の出力に合致するように動力軸20の回転数が落ちる。
停止を含む低速側への切り替え操作時には、ファンのモータ9の始動時のように大きなトルクがかかることはなく、ファン4の空気抵抗等も加わるから、弾性材60が当該操作により大きく変形することはなく、弾性材60の劣化は防がれる。
【0029】
一方向クラッチ50のみでは、停止を含む低速側に切り替え操作した通りのファン4の回転数となるまで時間がかかっていたところ、当該切り替えに伴う反応性が高まる。また、一方向クラッチ50のみでは、ファン4の回転数が落ちるのに時間がかかり、作業者は、低速側に切り替えた操作がうまくいかなかったものと勘違いし、何回も操作を繰り返すことが起きかねない。これに対して、本実施例では、一方向クラッチ50のみで駆動連結する場合よりも早く、ファン4の回転数がファンのモータ9の出力と合致するため、高速で回転していたファン4の回転音が、前記合致した出力の回転音に落ち、作業者がファンのモータ9の出力を切り替えたことが、作業者に伝わる。
【0030】
<実施例1の変形例>
実施例1では、シャフトピン(突出部)25を動力軸20から突出する突出部としたが、シャフトピン(突出部)25に代わって、Eリングを動力軸20に設けてもよい。
また、実施例1では回転体をファン4としていたが、グリスフィルタ8であってもよい。
【0031】
<実施例2>
実施例2は、(b)動力軸20と回転体4の速度差を減衰させるブレーキ機構を備え、駆動部9の出力を、停止を含む低速側に切り替えたときに前記(b)のブレーキ機構が作用する実施例である。
一方向クラッチ50は、ファンのモータ9による駆動力を、動力軸20を介してファン4に伝達する方向(正方向)にしか駆動を連結しない。そのため、ファンのモータ9の出力を、停止を含む低速側に切り替えたときには、ファン4、特にシロッコファンは重く、回転するモーメントが大きいため、停止するまで時間を要する。
そこで、
図10に示すようにファンボス40の内部にOリング取付溝26を設け、Oリング70からなる摩擦材をはめ込み、動力軸表面と接触させることで、ブレーキをかけるようにした。
一方向クラッチ50により、ファン4と動力軸20とが駆動連結されている間は、ファン4と動力軸20は、同じ回転数で回転し、両者の間に摩擦が生じることはない。ところが、ファンのモータ9の出力を、停止を含む低速側に切り替えたときには、一方向クラッチによる駆動連結は切れる。ファン4の回転数は中々落ちないのに対して、動力軸20の回転数は即座に落ち、両者の間に回転速度の差が生じることとなる。
そこで、動力軸表面が、ファンボス40の内部に設けた摩擦材であるOリング70と接触し、摩擦ブレーキとして働き両者の間の回転速度差が小さくなるように機能する。または、動力軸表面とOリング70とが摩擦により駆動連結し、回転差が生じないように機能する。
そして、ファンのモータ9の出力に応じた動力軸20の回転数になった時点で、両者の間に生じる摩擦はなくなる。例えば、ファンのモータ9の出力を高速から低速に作業者が操作したときには、操作通りの低回転数に動力軸20がなった時点で、ファン4(ファンボス40)と回転軸20の回転数は一致し、ファンボス40の内周面に設けたOリング70と動力軸20との摩擦もなくなる。
以上のように、摩擦ブレーキにより、ファンのモータ9の出力を、停止を含む低速側に切り替えたときには、時間を要さずにファン4の回転数がモータ9の出力と合致させることができる。
また、前記駆動部の出力を、停止を含む低速側に切り替えたときのみ、ブレーキは作用するので、ブレーキに大きなトルクがかかることはなく、ブレーキの劣化が抑制される。
【0032】
<実施例2の変形例1>
摩擦材を動力軸20側に設け、ファンボス40の内周面と接触するようにしてもよい。
なお、摩擦材は、一例としてOリング70を実施例2として示したが、摩擦を生じるものであれば材質、形状を問わないことはいうまでもない。
【0033】
<実施例2の変形例2>
実施例2は、ブレーキを摩擦ブレーキとしたものであったが、渦電流を利用した電磁ブレーキのように、非接触式のブレーキであってもよい。動力軸20には円盤を設け、これをファンボス40に設けた電磁石等の磁石で挟む。ファン4と動力軸20の間に回転速度の差が生じると、渦電流が発生し、回転抵抗(ブレーキ力)が発生する。
【0034】
以上のように、回転体に一方向クラッチを設け、位置決めすることなく回転体を動力軸に装着でき、また、前記駆動部の出力を、停止を含む低速側に切り替えたときには、時間を要せず作業者が切り替えた駆動部の出力に合致した回転速度にすることができる、全く新たな動力伝達機構が提供される。