【解決手段】 コイル部品10の第2磁性部30の上端部30aおよび下端部30bは、第3部分33および第5部分35がない場合に比べて、コイルCから離間されている。そのため、第2磁性部30の上端部30aおよび下端部30bに、磁束が集中しにくく、磁気飽和が生じにくくなっている。したがって、コイル部品10では、直流重畳特性の向上が実現されている。
前記磁性体の表面から前記第2磁性部の前記第3部分までの距離が、前記第1磁性部を構成する金属磁性粉含有樹脂に含まれる金属磁性粉の最大粒の長さより長い、請求項1〜6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術に係るコイル部品では、金属磁性板は基板の厚さ方向に関する端部においてコイル部と近接しており、この箇所に磁束が集中することで磁気飽和が生じ、直流重畳特性の低下が招かれ得る。
【0005】
本発明は、直流重畳特性の向上が図られたコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るコイル部品は、貫通孔が設けられた絶縁基板と、絶縁基板の一方面の貫通孔周りに形成された第1の平面コイルパターンが絶縁被覆された第1コイル部を有するコイルと、絶縁基板とコイルとを一体的に覆う磁性体と、磁性体の表面に設けられ、コイルの端部にそれぞれ接続される一対の外部端子電極とを備え、磁性体が、Feを含む金属磁性粉を含有する金属磁性粉含有樹脂で構成され、少なくとも絶縁基板の厚さ方向からコイルを覆う第1磁性部と、コイルの内側領域において絶縁基板の厚さ方向に延び、第1磁性部を構成する金属磁性粉含有樹脂よりもFeの組成比が高い第2磁性部とを有し、第2磁性部が、絶縁基板と同層に存在する第1部分と、第1コイル部と同層に存在する第2部分と、第1コイル部の上面位置よりも絶縁基板から離れた側に存在する第3部分とを有する。
【0007】
上記コイル部品において、コイルの内側領域において絶縁基板の厚さ方向に延びる磁性体の第2磁性部が、第1磁性部を構成する金属磁性粉含有樹脂よりもFeの組成比が高くなっており、高い飽和磁束密度を有する。第2磁性部は、絶縁基板と同層に存在する第1部分および第1コイル部と同層に存在する第2部分に加えて、第1コイル部の上面位置よりも絶縁基板から離れた側に存在する第3部分を有し、絶縁基板の厚さ方向に関して第1コイル部の上面位置より突き出ている。すなわち、絶縁基板の厚さ方向に関する第2磁性部の端部がコイルから離間されている。そのため、第2磁性部の端部に磁束集中に起因する磁気飽和が生じにくくなっており、コイル部品の直流重畳特性の向上が図られている。
【0008】
本発明の他の側面に係るコイル部品では、コイルが、絶縁基板の他方面の貫通孔周りに形成された第2の平面コイルパターンが絶縁被覆された第2コイル部を有する。
【0009】
本発明の他の側面に係るコイル部品では、第2磁性部が、第2コイル部と同層に存在する第4部分をさらに有する。
【0010】
本発明の他の側面に係るコイル部品では、第2磁性部が、第2コイル部の上面位置よりも絶縁基板から離れた側に存在する第5部分をさらに有する。
【0011】
本発明の他の側面に係るコイル部品では、第2磁性部が、Feを含む金属磁性粉を含有する金属磁性粉含有樹脂で構成されている。
【0012】
本発明の他の側面に係るコイル部品では、第2磁性部の表面を覆う絶縁被覆層をさらに備える。
【0013】
本発明の他の側面に係るコイル部品では、磁性体の表面から第2磁性部の第3部分までの距離が、第1磁性部を構成する金属磁性粉含有樹脂に含まれる金属磁性粉の最大粒の長さより長い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、直流重畳特性の向上が図られたコイル部品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
図1〜4を参照しつつ、実施形態に係るコイル部品の構造について説明する。説明の便宜上、図示のようにXYZ座標を設定する。すなわち、コイル部品の厚さ方向をZ方向、外部端子電極の対面方向をX方向、Z方向とX方向とに直交する方向をY方向と設定する。
【0018】
コイル部品10は、平面コイル素子であり、直方体形状を呈する本体部12と、本体部12の表面に設けられた一対の外部端子電極14A、14Bとによって構成されている。本体部12は、X方向において対向する一対の端面12a、12bと、Z方向において対向する一対の主面12c、12dと、Y方向において対向する一対の側面12e、12fを有する。一対の外部端子電極14A、14Bは、一対の端面12a、12bの全面を覆うように設けられている。コイル部品10は、一例として、長辺2.5mm、短辺2.0mm、高さ0.8〜1.0mmの寸法で設計される。
【0019】
本体部12は、絶縁基板20と、絶縁基板20に設けられたコイルCと、磁性体26とを含んで構成されている。
【0020】
絶縁基板20は、非磁性の絶縁材料で構成された板状部材であり、その厚さ方向から見て略楕円環状の形状を有している。絶縁基板20の中央部分には、楕円形の貫通孔20cが設けられている。絶縁基板20としては、ガラスクロスにエポキシ系樹脂が含浸された基板で、板厚10μm〜60μmのものを用いることができる。なお、エポキシ系樹脂のほか、BTレジン、ポリイミド、アラミド等を用いることもできる。絶縁基板20の材料としては、セラミックやガラスを用いることもできる。絶縁基板20の材料としては、大量生産されているプリント基板材料が好ましく、特にBTプリント基板、FR4プリント基板、あるいはFR5プリント基板に用いられる樹脂材料が最も好ましい。
【0021】
コイルCは、絶縁基板20の一方面20a(
図2における上面)に設けられた平面空芯コイル用の第1導体パターン23Aが絶縁被覆された第1コイル部22Aと、絶縁基板20の他方面20b(
図2における下面)に設けられた平面空芯コイル用の第2導体パターン23Bが絶縁被覆された第2コイル部22Bと、第1導体パターン23Aと第2導体パターン23Bとを接続するスルーホール導体25とを有する。
【0022】
第1導体パターン23A(第1の平面コイルパターン)は、平面空芯コイルとなる平面渦巻状パターンであり、Cuなどの導体材料でめっき形成されている。第1導体パターン23Aは、絶縁基板20の貫通孔20c周りに巻回するように形成されている。第1導体パターン23Aは、より詳しくは、
図2に示すように、上方向(Z方向)から見て外側に向かって右回りに3ターン分だけ巻回されている。第1導体パターン23Aの高さ(絶縁基板20の厚さ方向における長さ)は全長に亘って同一である。
【0023】
第1導体パターン23Aの外側の端部23aは、本体部12の端面12aにおいて露出し、端面12aを覆う外部端子電極14Aと接続されている。第1導体パターン23Aの内側の端部23bは、スルーホール導体25に接続されている。
【0024】
第2導体パターン23B(第2の平面コイルパターン)も、第1導体パターン23A同様、平面空芯コイルとなる平面渦巻状パターンであり、Cuなどの導体材料でめっき形成されている。第2導体パターン23Bも、絶縁基板20の貫通孔20c周りに巻回するように形成されている。第2導体パターン23Bは、より詳しくは、上方向(Z方向)から見て外側に向かって左回りに3ターン分だけ巻回されている。すなわち、第2導体パターン23Bは、上方向から見て、第1導体パターン23Aとは反対の方向に巻回されている。第2導体パターン23Bの高さは全長に亘って同一であり、第1導体パターン23Aの高さと同一に設計し得る。
【0025】
第2導体パターン23Bの外側の端部23cは、本体部12の端面12bにおいて露出し、端面12bを覆う外部端子電極14Bと接続されている。第2導体パターン23Bの内側の端部23dは、第1導体パターン23Aの内側の端部23bと、絶縁基板20の厚さ方向において位置合わせされており、スルーホール導体25に接続されている。
【0026】
スルーホール導体25は、絶縁基板20の貫通孔20cの縁領域に貫設されており、第1導体パターン23Aの端部23bと第2導体パターン23Bの端部23dとを接続する。スルーホール導体25は、絶縁基板20に設けられた孔と、その孔に充填された導電材料(たとえばCu等の金属材料)とで構成され得る。スルーホール導体25は、絶縁基板20の厚さ方向に延びる略円柱状または略角柱状の外形を有する。
【0027】
また、
図3および
図4に示すように、第1コイル部22Aおよび第2コイル部22Bはそれぞれ樹脂壁24A、24Bを有する。第1コイル部22Aの樹脂壁24Aは、第1導体パターン23Aの線間、内周および外周に位置している。同様に、第2コイル部22Bの樹脂壁24Bは、第2導体パターン23Bの線間、内周および外周に位置している。本実施形態では、導体パターン23A、23Bの内周および外周に位置する樹脂壁24A、24Bは、導体パターン23A、23Bの線間に位置する樹脂壁24A、24Bよりも厚くなるように設計されている。
【0028】
樹脂壁24A、24Bは、絶縁性の樹脂材料で構成されている。樹脂壁24A、24Bは、第1導体パターン23Aや第2導体パターン23Bを形成する前に絶縁基板20上に設けることができ、この場合には樹脂壁24A、24Bにおいて画成された壁間において第1導体パターン23Aや第2導体パターン23Bがめっき成長される。樹脂壁24A、24Bは、第1導体パターン23Aや第2導体パターン23Bを形成した後に絶縁基板20上に設けることができ、この場合には第1導体パターン23Aおよび第2導体パターン23Bに樹脂壁24A、24Bが充填や塗布等により設けられる。
【0029】
第1コイル部22Aおよび第2コイル部22Bは、第1導体パターン23Aおよび第2導体パターン23Bと樹脂壁24A、24Bとを上面側から一体的に覆う絶縁層27をそれぞれ有する。絶縁層27は、絶縁樹脂または絶縁磁性材料で構成され得る。絶縁層27は、第1コイル部22Aの導体パターン23Aおよび第2コイル部22Bの導体パターン23Bと磁性体26の第1磁性部28との間に介在して、導体パターン23A、23Bと第1磁性部28に含まれる金属磁性粉との間の絶縁性を高めている。
【0030】
磁性体26は、絶縁基板20およびコイルCを一体的に覆っている。より詳しくは、磁性体26は、絶縁基板20およびコイルCを上下方向から覆うとともに、絶縁基板20およびコイルCの外周を覆っている。また、磁性体26は、絶縁基板20の貫通孔20cの内部およびコイルCの内側領域を充たしている。
【0031】
磁性体26は、
図3および
図4に示すように、第1磁性部28と第2磁性部30とを備えて構成されている。
【0032】
第1磁性部28は、絶縁基板の一方面20aに設けられた第1コイル部22Aおよび他方面20bに設けられた第2コイル部22Bを覆っている。また、第1磁性部28は、絶縁基板20、第1コイル部22Aおよび第2コイル部22Bを内側および外側から覆っている。
【0033】
第1磁性部28は、金属磁性粉含有樹脂で構成されている。金属磁性粉含有樹脂は、金属磁性粉体がバインダ樹脂により結着された結着粉体である。第1磁性部28を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉は、少なくともFeを含む磁性粉(たとえば鉄ニッケル合金(パーマロイ合金)、カルボニル鉄、アモルファス、非晶質または結晶質のFeSiCr系合金、センダスト等)を含んで構成されている。バインダ樹脂は、たとえば熱硬化性のエポキシ樹脂である。本実施形態では、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントでは80〜92vol%であり、質量パーセントでは95〜99wt%である。磁気特性の観点から、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントで85〜92vol%、質量パーセントで97〜99wt%であってもよい。第1磁性部28を構成する金属磁性粉含有樹脂の磁性粉は、1種類の平均粒径を有する粉体であってもよく、複数種類の平均粒径を有する混合粉体であってもよい。第1磁性部28を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉が混合粉体の場合、平均粒径が異なる磁性粉の種類やFe組成比は、同一であってもよく、異なっていてもよい。一例として、3種類の平均粒径を有する混合粉体の場合、最大の平均粒径を有する磁性粉(大径粉)の粒径が15〜30μm、最小の平均粒径を有する磁性粉(小径粉)の粒径が0.3〜1.5μm、大径粉と小径粉との間の平均粒径を有する磁性粉(中間粉)が3〜10μmとすることができる。混合粉体100重量部に対して、大径粉は60〜80重量部の範囲、中径粉は10〜20重量部の範囲、小径粉は10〜20重量部の範囲で含まれてもよい。
【0034】
磁性粉の平均粒径は、粒度分布における積算値50%での粒径(d50、いわゆるメジアン径)で規定され、以下のようにして求められる。第1磁性部28の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影する。撮影したSEM写真をソフトウェアにより画像処理をおこない、磁性粉の境界を判別し、磁性粉の面積を算出する。算出した磁性粉の面積を円相当径に換算して粒子径を算出する。たとえば100個以上の磁性粉の粒径を算出し、これらの磁性粉の粒度分布を求める。求めた粒度分布における積算値50%での粒径を平均粒径d50とする。磁性粉の粒子形状は、特に制限されない。
【0035】
第2磁性部30は、コイルCの内側領域において、コイルCのコイル軸に沿うように絶縁基板20の厚さ方向(Z方向)に延びている。本実施形態では、第2磁性部30は、絶縁基板20の厚さ方向に延びる略角柱状の外形を有する。第2磁性部30は、絶縁基板20の厚さ方向に直交する断面(X−Y断面)において、絶縁基板20の貫通孔20cおよびコイルCの内側領域の内側に収まっている。本実施形態では、第2磁性部30は、絶縁基板20、第1コイル部22Aおよび第2コイル部22Bを内側から覆う第1磁性部28のさらに内側に位置している。すなわち、第1磁性部28と第2磁性部30とにより、絶縁基板20の貫通孔20cの内部およびコイルCの内側領域が充たされている。
【0036】
第2磁性部30は、金属磁性粉含有樹脂で構成されている。第2磁性部30を構成する金属磁性粉含有樹脂の樹脂には、たとえば熱硬化性のエポキシ樹脂が用いられ得る。第2磁性部30を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉は、少なくともFeを含む磁性粉(たとえば鉄ニッケル合金(パーマロイ合金)、カルボニル鉄、アモルファス、非晶質または結晶質のFeSiCr系合金、センダスト等)を含んで構成されている。第2磁性部30を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉は、1種類の平均粒径を有する粉体であってもよく、複数種類の平均粒径を有する混合粉体であってもよい。第2磁性部30を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉が混合粉体の場合、平均粒径が異なる磁性粉の種類やFe組成比は、同一であってもよく、異なっていてもよい。一例として、3種類の平均粒径を有する混合粉体の場合、最大の平均粒径を有する磁性粉(大径粉)の粒径が15〜30μm、最小の平均粒径を有する磁性粉(小径粉)の粒径が0.3〜1.5μm、大径粉と小径粉との間の平均粒径を有する磁性粉(中間粉)が3〜10μmとすることができる。混合粉体100重量部に対して、大径粉は60〜80重量部の範囲、中径粉は10〜20重量部の範囲、小径粉は10〜20重量部の範囲で含まれてもよい。
【0037】
磁性粉の平均粒径は、粒度分布における積算値50%での粒径(d50、いわゆるメジアン径)で規定され、以下のようにして求められる。第2磁性部30の断面のSEM写真を撮影する。撮影したSEM写真をソフトウェアにより画像処理をおこない、磁性粉の境界を判別し、磁性粉の面積を算出する。算出した磁性粉の面積を円相当径に換算して粒子径を算出する。たとえば100個以上の磁性粉の粒径を算出し、これらの磁性粉の粒度分布を求める。求めた粒度分布における積算値50%での粒径を平均粒径d50とする。磁性粉の粒子形状は、特に制限されない。
【0038】
第2磁性部30を構成する金属磁性粉含有樹脂は、第1磁性部28を構成する金属磁性粉含有樹脂よりもFeの割合(組成比)が高くなるように設計されている。そのため、第2磁性部30を構成する金属磁性粉含有樹脂は、第1磁性部28を構成する金属磁性粉含有樹脂に比べて、高い飽和磁束密度(Bs)を有する。たとえば、第2磁性部30の飽和磁束密度は、第1磁性部28の飽和磁束密度の1.5倍〜20倍の高さであってもよい。このように、高い飽和磁束密度を有する第2磁性部が、コイルCの内側領域において絶縁基板20の厚さ方向に延びることで、コイルCの磁束の流れの円滑化が図られている。
【0039】
第2磁性部30は、たとえば印刷法またはディスペンサ法により形成することができる。すなわち、第2磁性部30が形成されるべき領域に、金属磁性粉含有樹脂の材料となる金属磁性粉と樹脂とが混錬されたペーストを印刷法またはディスペンサ法により付与し、その後ペーストを硬化することで、第2磁性部30が形成され得る。
【0040】
第2磁性部30は、第1磁性部28を構成する金属磁性粉含有樹脂よりもFeの割合が高くなるような構成であれば、必ずしも金属磁性粉含有樹脂に限らず、磁性材料で構成された構造体(たとえば磁性板)を含んだ構成であってもよい。磁性材料で構成された構造体は、コイルCのコイル軸に沿うように配置され得る。
【0041】
第2磁性部30は、絶縁基板20の厚さ方向に連続して並ぶ第1部分31、第2部分32、第3部分33、第4部分34、および第5部分35を備えて構成されている。
【0042】
第1部分31は、絶縁基板20と同層に存在する部分である。第2部分32は、第1コイル部22Aと同層に存在する部分である。第3部分33は、第1コイル部22Aの上面位置よりも上側(すなわち、絶縁基板20から離れた側)に存在する部分である。第4部分34は、第2コイル部22Bと同層に存在する部分である。第5部分35は、第2コイル部22Bの上面位置よりも下側(すなわち、絶縁基板20から離れた側)に存在する部分である。
【0043】
第2磁性部30は、第3部分33が構成する上端部30aがコイルCの第1コイル部22Aから上方に突き出ており、第5部分35が構成する下端部30bがコイルCから下方に突き出ている。
【0044】
したがって、第2磁性部30の上端部30aおよび下端部30bは、第3部分33および第5部分35がない場合に比べて、コイルCから離間されている。そのため、第2磁性部30の上端部30aおよび下端部30bに、磁束が集中しにくく、磁気飽和が生じにくくなっている。したがって、コイル部品10では、直流重畳特性の向上が実現されている。
【0045】
第2磁性部30の第3部分33が第1コイル部22Aから上方に突き出た突出長さD1は、10〜200μmである。また、磁性体26の表面(すなわち、主面12c)から第3部分33までの距離D2は、第1磁性部28を構成する金属磁性粉含有樹脂に含まれる金属磁性粉の最大粒の長さより長く、たとえば50〜300μmである。最大粒は、第1磁性部28の断面の写真をソフトウェアにより画像処理をおこない磁性粉の境界を判別することで判定することができる。たとえば100個程度の磁性粉の長さを測定し、最も長い磁性粒を最大粒と判定することができる。磁性粉の粒子形状は、特に制限されない。この場合、第1磁性部28に含まれる大きな磁性粉を介して、磁性体26の外部と第2磁性部30とが導通する事態が効果的に抑制されている。距離D2は、突出長さD1より長くてもよく、突出長さD1より短くてもよく、突出長さD1と同じであってもよい。
【0046】
なお、本発明は、上述した実施形態に限らず、様々な態様をとり得る。
【0047】
たとえば、第2磁性部30と第1磁性部28との間の絶縁、第2磁性部30とコイルCとの絶縁、または、第2磁性部30と磁性体26の外部との絶縁をより高めるために、
図5に示すように、第2磁性部30の表面を絶縁被覆層40で覆ってもよい。絶縁被覆層40は、たとえばエポキシ樹脂等の樹脂で構成することができる。絶縁被覆層40は、第2磁性部30の表面全体を覆ってもよく、一部のみ(たとえば、絶縁基板20の厚さ方向に関する端面のみ、または、コイルCに面する側面のみ)を覆ってもよい。
【0048】
また、第2磁性部30は、
図6に示すように、下端部30bがコイルCから下方に突き出ていない態様であってもよい。
図6に示した態様では、第2磁性部30の下端部30bは、第4部分34で構成されており、第2コイル部22Bの上面と同一面を構成している。
図6の二点鎖線で示したように、磁性体26の端面12a、12bから下側の主面12d(底面)まで延びるL字断面を有する外部端子電極14A、14Bでは、第2磁性部30の下端部30bとの距離が短いと、外部端子電極14A、14Bと第2磁性部30との間で短絡が生じ得る。コイルCの両端部が底面12dに設けられた一対の外部端子電極まで引き出された底面端子構造の場合も同様である。このような場合には、第2磁性部30の下端部30bがコイルCから下方に突き出ない形態とすることで、第2磁性部30の下端部30bとの距離が十分に確保され、上記短絡が抑制される。
【0049】
さらに、磁性体26の第2磁性部30の外形形状は、角柱状に限らず、円柱状や多角形状であってもよく、球状や長球状であってもよい。また、絶縁基板20の貫通孔20cの内部およびコイルCの内側領域に第1磁性部28が存在せず、絶縁基板20の貫通孔20cの内部およびコイルCの内側領域が第2磁性部30のみで充たされた態様であってもよい。
【0050】
コイルCは、第1コイル部および第2コイル部の両方を備える態様であってもよく、第1コイル部のみを備える態様であってもよい。