特開2020-191354(P2020-191354A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2020191354-コイル部品 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-191354(P2020-191354A)
(43)【公開日】2020年11月26日
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20201030BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20201030BHJP
【FI】
   H01F17/04 F
   H01F17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-95128(P2019-95128)
(22)【出願日】2019年5月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】浅井 深雪
(72)【発明者】
【氏名】川原 崇宏
(72)【発明者】
【氏名】荒田 正純
(72)【発明者】
【氏名】大久保 等
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB08
5E070BB03
5E070CB06
5E070CB12
5E070CB13
(57)【要約】
【課題】耐電圧の向上が図られたコイル部品を提供する。
【解決手段】 コイル部品10においては、コイルCの近傍に配置された第2磁性部30が、第1磁性部28を構成する金属磁性粉含有樹脂よりもFeの割合が高くなるように設計されているため、コイルCの磁束の流れの円滑化が図られている。第2磁性部30は、第1磁性部28に比べて相対的に耐電圧が低くなっているが、第1磁性部に包囲されているため、磁性体26の表面には露出していない。そのため、コイルCと外部端子電極14A、14Bとが第2磁性部30を介して短絡する事態が効果的に抑制されており、コイルCと外部端子電極14A、14Bとの間の短絡が抑制され得る。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が設けられた絶縁基板と、
前記絶縁基板の一方面の前記貫通孔周りに形成された第1の平面コイルパターンが絶縁被覆された第1コイル部を有するコイルと、
前記絶縁基板と前記コイルとを一体的に覆う磁性体と、
前記磁性体の表面に設けられ、前記コイルの端部にそれぞれ接続される一対の外部端子電極と
を備え、
前記磁性体が、
Feを含む金属磁性粉を含有する金属磁性粉含有樹脂で構成され、前記磁性体の表面を構成する第1磁性部と、
前記第1磁性部に包囲され、かつ、前記コイルの少なくとも一部を覆っており、前記第1磁性部を構成する前記金属磁性粉含有樹脂よりもFeの組成比が高い第2磁性部と
を有する、コイル部品。
【請求項2】
前記コイルが、前記絶縁基板の他方面の前記貫通孔周りに形成された第2の平面コイルパターンが絶縁被覆された第2コイル部を有する、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第2磁性部が前記コイルの内側領域の全域に存在している、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記磁性体の表面から前記第2磁性部までの距離である前記第1磁性部の厚さの最小厚さが、前記第1磁性部を構成する金属磁性粉含有樹脂に含まれる金属磁性粉の最大粒の長さより長い、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記磁性体が、絶縁基板の厚さ方向において対向する一対の主面と、絶縁基板の厚さ方向に直交する方向において対向するとともに前記一対の外部端子電極がそれぞれ設けられる一対の端面とを有し、
前記磁性体の前記主面から前記第2磁性部までの距離である前記第1磁性部の主面側厚さが、前記磁性体の前記端面から前記第2磁性部までの距離である前記第1磁性部の端面側厚さより短い、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第2磁性部が、Feを含む金属磁性粉を含有する金属磁性粉含有樹脂で構成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコイル部品として、たとえば特許文献1には、コイルと、コイルを覆う磁性体と、磁性体の側面に設けられるとともにコイル部と電気的に接続された外部電極とを備えたコイル部品が開示されている。本文献のコイル部は、絶縁基板の両面のそれぞれに絶縁被覆されたコイルパターンが設けられた構成を有する。また、本文献の磁性体は、相対的に高い磁束密度を有する金属磁性粉含有樹脂により構成されており、コイルの近傍に位置する第1磁性体と、相対的に低い磁束密度を有する金属磁性粉含有樹脂で構成されており、第1磁性体よりもコイルから離れて位置する第2磁性体とからなっており、コイルの周囲に生じる磁束の飽和を緩和している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−19062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術に係るコイル部品では、第1磁性体を構成する金属磁性粉含有樹脂における金属磁性粉の割合が、第2磁性体を構成する金属磁性粉含有樹脂における金属磁性粉の割合より高いと考えられ、第1磁性部の耐電圧が比較的低くなっている。そのため、コイルと外部電極との間に介在する箇所の第1磁性体において短絡が生じる事態が起こり得る。
【0005】
本発明は、耐電圧の向上が図られたコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るコイル部品は、貫通孔が設けられた絶縁基板と、絶縁基板の一方面の貫通孔周りに形成された第1の平面コイルパターンが絶縁被覆された第1コイル部を有するコイルと、絶縁基板とコイルとを一体的に覆う磁性体と、磁性体の表面に設けられ、コイルの端部にそれぞれ接続される一対の外部端子電極とを備え、磁性体が、Feを含む金属磁性粉を含有する金属磁性粉含有樹脂で構成され、磁性体の表面を構成する第1磁性部と、第1磁性部に包囲され、かつ、コイルの少なくとも一部を覆っており、第1磁性部を構成する金属磁性粉含有樹脂よりもFeの組成比が高い第2磁性部とを有する。
【0007】
上記コイル部品においては、第1磁性部に比べて相対的に耐電圧が低い第2磁性部が、第1磁性部に包囲されている。そのため、磁性体の表面に第2磁性部は露出しておらず、磁性体の表面に設けられた外部端子電極と第2磁性部とは接しない。したがって、コイルと外部端子電極とが第2磁性部を介して短絡する事態が効果的に抑制され、コイルと外部端子電極との間の短絡が抑制され得る。
【0008】
本発明の他の側面に係るコイル部品では、コイルが、絶縁基板の他方面の貫通孔周りに形成された第2の平面コイルパターンが絶縁被覆された第2コイル部を有する。
【0009】
本発明の他の側面に係るコイル部品では、第2磁性部がコイルの内側領域の全域に存在している。
【0010】
本発明の他の側面に係るコイル部品では、磁性体の表面から第2磁性部までの距離である第1磁性部の厚さの最小厚さが、第1磁性部を構成する金属磁性粉含有樹脂に含まれる金属磁性粉の最大粒の長さより長い。
【0011】
本発明の他の側面に係るコイル部品では、磁性体が、絶縁基板の厚さ方向において対向する一対の主面と、絶縁基板の厚さ方向に直交する方向において対向するとともに一対の外部端子電極がそれぞれ設けられる一対の端面とを有し、磁性体の主面から第2磁性部までの距離である第1磁性部の主面側厚さが、磁性体の端面から第2磁性部までの距離である第1磁性部の端面側厚さより短い。
【0012】
本発明の他の側面に係るコイル部品では、第2磁性部が、Feを含む金属磁性粉を含有する金属磁性粉含有樹脂で構成されている。
【0013】
本発明の他の側面に係るコイル部品では、第2磁性部の表面を覆う絶縁被覆層をさらに備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐電圧の向上が図られたコイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態に係るコイル部品の概略斜視図である。
図2図2は、図1に示すコイル部品の分解図である。
図3図3は、図1に示すコイル部品のIII−III線断面図である。
図4図4は、図1に示すコイル部品のIV−IV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
図1〜4を参照しつつ、実施形態に係るコイル部品の構造について説明する。説明の便宜上、図示のようにXYZ座標を設定する。すなわち、コイル部品の厚さ方向をZ方向、外部端子電極の対面方向をX方向、Z方向とX方向とに直交する方向をY方向と設定する。
【0018】
コイル部品10は、平面コイル素子であり、直方体形状を呈する本体部12と、本体部12の表面に設けられた一対の外部端子電極14A、14Bとによって構成されている。本体部12は、X方向において対向する一対の端面12a、12bと、Z方向において対向する一対の主面12c、12dと、Y方向において対向する一対の側面12e、12fを有する。一対の外部端子電極14A、14Bは、一対の端面12a、12bの全面を覆うように設けられている。コイル部品10は、一例として、長辺2.5mm、短辺2.0mm、高さ0.8〜1.0mmの寸法で設計される。
【0019】
本体部12は、絶縁基板20と、絶縁基板20に設けられたコイルCと、磁性体26とを含んで構成されている。
【0020】
絶縁基板20は、非磁性の絶縁材料で構成された板状部材であり、その厚さ方向から見て略楕円環状の形状を有している。絶縁基板20の中央部分には、楕円形の貫通孔20cが設けられている。絶縁基板20としては、ガラスクロスにエポキシ系樹脂が含浸された基板で、板厚10μm〜60μmのものを用いることができる。なお、エポキシ系樹脂のほか、BTレジン、ポリイミド、アラミド等を用いることもできる。絶縁基板20の材料としては、セラミックやガラスを用いることもできる。絶縁基板20の材料としては、大量生産されているプリント基板材料が好ましく、特にBTプリント基板、FR4プリント基板、あるいはFR5プリント基板に用いられる樹脂材料が最も好ましい。
【0021】
コイルCは、絶縁基板20の一方面20a(図2における上面)に設けられた平面空芯コイル用の第1導体パターン23Aが絶縁被覆された第1コイル部22Aと、絶縁基板20の他方面20b(図2における下面)に設けられた平面空芯コイル用の第2導体パターン23Bが絶縁被覆された第2コイル部22Bと、第1導体パターン23Aと第2導体パターン23Bとを接続するスルーホール導体25とを有する。
【0022】
第1導体パターン23A(第1の平面コイルパターン)は、平面空芯コイルとなる平面渦巻状パターンであり、Cuなどの導体材料でめっき形成されている。第1導体パターン23Aは、絶縁基板20の貫通孔20c周りに巻回するように形成されている。第1導体パターン23Aは、より詳しくは、図2に示すように、上方向(Z方向)から見て外側に向かって右回りに3ターン分だけ巻回されている。第1導体パターン23Aの高さ(絶縁基板20の厚さ方向における長さ)は全長に亘って同一である。
【0023】
第1導体パターン23Aの外側の端部23aは、本体部12の端面12aにおいて露出し、端面12aを覆う外部端子電極14Aと接続されている。第1導体パターン23Aの内側の端部23bは、スルーホール導体25に接続されている。
【0024】
第2導体パターン23B(第2の平面コイルパターン)も、第1導体パターン23A同様、平面空芯コイルとなる平面渦巻状パターンであり、Cuなどの導体材料でめっき形成されている。第2導体パターン23Bも、絶縁基板20の貫通孔20c周りに巻回するように形成されている。第2導体パターン23Bは、より詳しくは、上方向(Z方向)から見て外側に向かって左回りに3ターン分だけ巻回されている。すなわち、第2導体パターン23Bは、上方向から見て、第1導体パターン23Aとは反対の方向に巻回されている。第2導体パターン23Bの高さは全長に亘って同一であり、第1導体パターン23Aの高さと同一に設計し得る。
【0025】
第2導体パターン23Bの外側の端部23cは、本体部12の端面12bにおいて露出し、端面12bを覆う外部端子電極14Bと接続されている。第2導体パターン23Bの内側の端部23dは、第1導体パターン23Aの内側の端部23bと、絶縁基板20の厚さ方向において位置合わせされており、スルーホール導体25に接続されている。
【0026】
スルーホール導体25は、絶縁基板20の貫通孔20cの縁領域に貫設されており、第1導体パターン23Aの端部23bと第2導体パターン23Bの端部23dとを接続する。スルーホール導体25は、絶縁基板20に設けられた孔と、その孔に充填された導電材料(たとえばCu等の金属材料)とで構成され得る。スルーホール導体25は、絶縁基板20の厚さ方向に延びる略円柱状または略角柱状の外形を有する。
【0027】
また、図3および図4に示すように、第1コイル部22Aおよび第2コイル部22Bはそれぞれ樹脂壁24A、24Bを有する。第1コイル部22Aの樹脂壁24Aは、第1導体パターン23Aの線間、内周および外周に位置している。同様に、第2コイル部22Bの樹脂壁24Bは、第2導体パターン23Bの線間、内周および外周に位置している。本実施形態では、導体パターン23A、23Bの内周および外周に位置する樹脂壁24A、24Bは、導体パターン23A、23Bの線間に位置する樹脂壁24A、24Bよりも厚くなるように設計されている。
【0028】
樹脂壁24A、24Bは、絶縁性の樹脂材料で構成されている。樹脂壁24A、24Bは、第1導体パターン23Aや第2導体パターン23Bを形成する前に絶縁基板20上に設けることができ、この場合には樹脂壁24A、24Bにおいて画成された壁間において第1導体パターン23Aや第2導体パターン23Bがめっき成長される。樹脂壁24A、24Bは、第1導体パターン23Aや第2導体パターン23Bを形成した後に絶縁基板20上に設けることができ、この場合には第1導体パターン23Aおよび第2導体パターン23Bに樹脂壁24A、24Bが充填や塗布等により設けられる。
【0029】
第1コイル部22Aおよび第2コイル部22Bは、第1導体パターン23Aおよび第2導体パターン23Bと樹脂壁24A、24Bとを上面側から一体的に覆う絶縁層27をそれぞれ有する。絶縁層27は、絶縁樹脂または絶縁磁性材料で構成され得る。絶縁層27は、第1コイル部22Aの導体パターン23Aおよび第2コイル部22Bの導体パターン23Bと磁性体26の第1磁性部28との間に介在して、導体パターン23A、23Bと第1磁性部28に含まれる金属磁性粉との間の絶縁性を高めている。
【0030】
磁性体26は、絶縁基板20およびコイルCを一体的に覆っている。より詳しくは、磁性体26は、絶縁基板20およびコイルCを上下方向から覆うとともに、絶縁基板20およびコイルCの外周を覆っている。また、磁性体26は、絶縁基板20の貫通孔20cの内部およびコイルCの内側領域を充たしている。
【0031】
磁性体26は、図3および図4に示すように、第1磁性部28と第2磁性部30とを備えて構成されている。
【0032】
第1磁性部28は、磁性体26の全ての表面、すなわち、端面12a、12b、主面12c、12d、側面12e、12fを構成している。
【0033】
第1磁性部28は、金属磁性粉含有樹脂で構成されている。金属磁性粉含有樹脂は、金属磁性粉体がバインダ樹脂により結着された結着粉体である。第1磁性部28を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉は、少なくともFeを含む磁性粉(たとえば鉄ニッケル合金(パーマロイ合金)、カルボニル鉄、アモルファス、非晶質または結晶質のFeSiCr系合金、センダスト等)を含んで構成されている。バインダ樹脂は、たとえば熱硬化性のエポキシ樹脂である。本実施形態では、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントでは80〜92vol%であり、質量パーセントでは95〜99wt%である。磁気特性の観点から、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントで85〜92vol%、質量パーセントで97〜99wt%であってもよい。第1磁性部28を構成する金属磁性粉含有樹脂の磁性粉は、1種類の平均粒径を有する粉体であってもよく、複数種類の平均粒径を有する混合粉体であってもよい。第1磁性部28を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉が混合粉体の場合、平均粒径が異なる磁性粉の種類やFe組成比は、同一であってもよく、異なっていてもよい。一例として、3種類の平均粒径を有する混合粉体の場合、最大の平均粒径を有する磁性粉(大径粉)の粒径が15〜30μm、最小の平均粒径を有する磁性粉(小径粉)の粒径が0.3〜1.5μm、大径粉と小径粉との間の平均粒径を有する磁性粉(中間粉)が3〜10μmとすることができる。混合粉体100重量部に対して、大径粉は60〜80重量部の範囲、中径粉は10〜20重量部の範囲、小径粉は10〜20重量部の範囲で含まれてもよい。
【0034】
磁性粉の平均粒径は、粒度分布における積算値50%での粒径(d50、いわゆるメジアン径)で規定され、以下のようにして求められる。第1磁性部28の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影する。撮影したSEM写真をソフトウェアにより画像処理をおこない、磁性粉の境界を判別し、磁性粉の面積を算出する。算出した磁性粉の面積を円相当径に換算して粒子径を算出する。たとえば100個以上の磁性粉の粒径を算出し、これらの磁性粉の粒度分布を求める。求めた粒度分布における積算値50%での粒径を平均粒径d50とする。磁性粉の粒子形状は、特に制限されない。
【0035】
第2磁性部30は、絶縁基板の一方面20aに設けられた第1コイル部22Aの少なくとも一部および他方面20bに設けられた第2コイル部22Bの少なくとも一部を直接覆っている。第2磁性部30は、第1コイル部22Aの全部および第2コイル部22Bの全部を覆う態様であってもよい。本実施形態では、第2磁性部30は、絶縁基板20の貫通孔20c内を充たしており、コイルCの内側領域も充たしている。第2磁性部30は、第1磁性部28によって周囲を包囲されており、磁性体26の表面には露出していない。
【0036】
第2磁性部30は、金属磁性粉含有樹脂で構成されている。第2磁性部30を構成する金属磁性粉含有樹脂の樹脂には、たとえば熱硬化性のエポキシ樹脂が用いられ得る。第2磁性部30を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉は、少なくともFeを含む磁性粉(たとえば鉄ニッケル合金(パーマロイ合金)、カルボニル鉄、アモルファス、非晶質または結晶質のFeSiCr系合金、センダスト等)を含んで構成されている。第2磁性部30を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉は、1種類の平均粒径を有する粉体であってもよく、複数種類の平均粒径を有する混合粉体であってもよい。第2磁性部30を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉が混合粉体の場合、平均粒径が異なる磁性粉の種類やFe組成比は、同一であってもよく、異なっていてもよい。一例として、3種類の平均粒径を有する混合粉体の場合、最大の平均粒径を有する磁性粉(大径粉)の粒径が15〜30μm、最小の平均粒径を有する磁性粉(小径粉)の粒径が0.3〜1.5μm、大径粉と小径粉との間の平均粒径を有する磁性粉(中間粉)が3〜10μmとすることができる。混合粉体100重量部に対して、大径粉は60〜80重量部の範囲、中径粉は10〜20重量部の範囲、小径粉は10〜20重量部の範囲で含まれてもよい。
【0037】
磁性粉の平均粒径は、粒度分布における積算値50%での粒径(d50、いわゆるメジアン径)で規定され、以下のようにして求められる。第2磁性部30の断面のSEM写真を撮影する。撮影したSEM写真をソフトウェアにより画像処理をおこない、磁性粉の境界を判別し、磁性粉の面積を算出する。算出した磁性粉の面積を円相当径に換算して粒子径を算出する。たとえば100個以上の磁性粉の粒径を算出し、これらの磁性粉の粒度分布を求める。求めた粒度分布における積算値50%での粒径を平均粒径d50とする。磁性粉の粒子形状は、特に制限されない。
【0038】
第2磁性部30を構成する金属磁性粉含有樹脂は、第1磁性部28を構成する金属磁性粉含有樹脂よりもFeの割合(組成比)が高くなるように設計されている。そのため、第2磁性部30の耐電圧は、第1磁性部28の耐電圧よりも低い。また、第2磁性部30を構成する金属磁性粉含有樹脂は、第1磁性部28を構成する金属磁性粉含有樹脂に比べて、高い飽和磁束密度(Bs)を有する。たとえば、第2磁性部30の飽和磁束密度は、第1磁性部28の飽和磁束密度の1.5倍〜20倍の高さであってもよい。このように、高い飽和磁束密度を有する第2磁性部が、コイルCの近傍に設けられることで、コイルCの磁束の流れの円滑化が図られている。
【0039】
第2磁性部30は、たとえば印刷法またはディスペンサ法により形成することができる。すなわち、第2磁性部30が形成されるべき領域に、金属磁性粉含有樹脂の材料となる金属磁性粉と樹脂とが混錬されたペーストを印刷法またはディスペンサ法により付与し、その後ペーストを硬化することで、第2磁性部30が形成され得る。
【0040】
コイル部品10においては、コイルCの近傍に配置された第2磁性部30が、第1磁性部28を構成する金属磁性粉含有樹脂よりもFeの割合が高くなるように設計されているため、コイルCの磁束の流れの円滑化が図られている。第2磁性部30は、第1磁性部28に比べて相対的に耐電圧が低くなっているが、第1磁性部に包囲されているため、磁性体26の表面には露出していない。すなわち、第2磁性部30は、磁性体26の表面に設けられた外部端子電極14A、14Bとは直接接しておらず、耐電圧が相対的に高い第1磁性部28を介して隣接している。したがって、コイルCと外部端子電極14A、14Bとが第2磁性部30を介して短絡する事態が効果的に抑制されており、コイルCと外部端子電極14A、14Bとの間の短絡が抑制され得る。
【0041】
また、上述したコイル部品10では、高い飽和磁束密度を有する第2磁性部30がコイルCの内側領域の全域に存在しているため、コイルCのコイル軸に沿った磁束の流れの円滑化が図られている。
【0042】
さらに、コイル部品10においては、第1磁性部28の厚さ(すなわち、磁性体26の表面から第2磁性部30までの距離)に関する最小厚さが、第1磁性部28を構成する金属磁性粉含有樹脂に含まれる金属磁性粉の最大粒の長さより長くなるように設計されている。最大粒の長さはたとえば50〜300μmである。最大粒は、第1磁性部28の断面の写真をソフトウェアにより画像処理をおこない磁性粉の境界を判別することで判定することができる。たとえば100個程度の磁性粉の長さを測定し、最も長い磁性粒を最大粒と判定することができる。磁性粉の粒子形状は、特に制限されない。そのため、第1磁性部28に含まれる大きな磁性粉を介して、磁性体26の外部と第2磁性部30とが導通する事態が効果的に抑制されている。
【0043】
また、コイル部品10においては、磁性体26の主面12c、12dから第2磁性部30までの距離である第1磁性部28の主面側厚さD1が、磁性体26の端面12a、12bから第2磁性部30までの距離である第1磁性部28の端面側厚さD2より短くなるように設計されている。主面側厚さD1はたとえば50〜300μmであり、端面側厚さD2はたとえば60〜400μmである。この場合、磁性体26の端面12a、12b側において、第2磁性部30と外部端子電極14A、14Bとの離間距離が十分に確保され、第2磁性部30と外部端子電極14A、14Bとが短絡する事態が抑制され得る。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態に限らず、様々な態様をとり得る。たとえば、コイルCは、第1コイル部および第2コイル部の両方を備える態様であってもよく、第1コイル部のみを備える態様であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…コイル部品、12…本体部、14A、14B…外部端子電極、20…絶縁基板、22A…第1コイル部、22B…第2コイル部、23A…第1導体パターン、23B…第2導体パターン、26…磁性体、28…第1磁性部、30…第2磁性部、C…コイル。
図1
図2
図3
図4