【解決手段】モータ装置100は、鉄心21と、鉄心21に巻回された複数の巻線23と、を有する固定子2と、回転軸に対して回転可能であり、複数の永久磁石33が周方向に沿って取り付けられることで、周方向に複数の磁極が形成された回転子3と、を有するSPMモータ1と、SPMモータ1の複数の巻線23に対して電流を供給する電力供給部5と、を有し、複数の磁極のそれぞれは、磁化容易軸方向が前記固定子側に向かって集中するような配向であり、電力供給部から供給する電流は台形波である。
鉄心と、前記鉄心に巻回された複数の巻線と、を有する固定子と、回転軸に対して回転可能であり、複数の永久磁石が周方向に沿って取り付けられることで、周方向に複数の磁極が形成された回転子と、
を有するモータと、
前記モータの前記複数の巻線に対して電流を供給する電力供給部と、
を有し、
前記複数の磁極のそれぞれは、磁化容易軸方向が前記固定子側に向かって集中するような配向であり、
前記電力供給部から供給する電流は台形波である、モータ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、トルクのさらなる向上が求められている。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、回転子の構成を変更することなくトルクを向上させることが可能なモータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るモータ装置は、鉄心と、前記鉄心に巻回された複数の巻線と、を有する固定子と、回転軸に対して回転可能であり、複数の永久磁石が周方向に沿って取り付けられることで、周方向に複数の磁極が形成された回転子と、を有するモータと、前記モータの前記複数の巻線に対して電流を供給する電力供給部と、を有し、前記複数の磁極のそれぞれは、磁化容易軸方向が前記固定子側に向かって集中するような配向であり、前記電力供給部から供給する電流は台形波である。
【0007】
上記のモータ装置によれば、複数の磁極のそれぞれにおいて、磁化容易軸方向が固定子側に向かって集中するような配向であり、さらに、電力供給部から供給される電流を台形波とすることで、モータから出力されるトルクを向上させることができる。電流の波形を台形とすることによって、磁化容易軸方向が固定子側に向かって集中するような所謂集中配向とされている磁極のうち回転子の回転方向に沿った端部と、巻線に対して供給される電力供給部からの電流と、によって発生するマイナストルクを小さくすることができ、その結果、回転子の構成を変更することなくモータから出力されるトルクを向上させることが可能となる。
【0008】
ここで、前記電流は前記電流位相角が正である態様とすることができる。
【0009】
電力供給部から供給される電流位相角を正とすることにより、集中配向している磁極と、巻線に対して供給される電力供給部からの電流が鉄心に発生させる磁界との相互作用がトルクを増大させる方向に働くので、トルクをさらに向上させることができる。
【0010】
また、前記磁極は、前記磁化容易軸方向が集中する位置が前記回転子の回転方向に沿った前記磁極の中央部よりも後方に設けられる態様とすることができる。
【0011】
磁極の磁化容易軸方向が集中する位置を回転子の回転方向に沿った前記磁極の中央部よりも後方に設けた場合、磁極の回転方向に沿った後方側の端部と、電力供給部から電流が供給される巻線と、によって発生するマイナストルクをさらに抑制することができる。したがって、トルクをさらに向上させることができる。
【0012】
また、前記台形波は、実質的に電流が流れない無通電期間を有する態様とすることができる。
【0013】
台形波に無通電期間を有する構成とすることで、磁極の回転方向に沿った後方側の端部と、巻線に対して供給される電力供給部からの電流と、によって発生するマイナストルクを抑制することができる。そのため、トルクをさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転子の構成を変更することなくトルクを向上させることが可能なモータ装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るモータ装置の概略構成図である。また、
図2は
図1に示すモータ装置に含まれるSPMモータ(モータ)の一部拡大図である。
図1に示すように、モータ装置100は、SPMモータ1と、電力供給部5と、を有する。SPMモータ1は、固定子2(ステータ)と、固定子2の内部に回転自在に配置された回転子3(ロータ)とを有している。
【0018】
固定子2は、鉄心21と、鉄心21に巻装された複数の巻線23と、から構成される。鉄心21は、複数のティース25を有している。また、巻線23は、固定子2における隣接するティース25の間のスロット27に設けられる。巻線23は、スロット27を通して所定間隔で所定数配置され、巻線23への通電により、回転子3を回転させるための回転磁界を発生させる。また、回転子3は、シャフト31と、シャフト31の周囲に配置された電磁鋼板等から構成されるコア32(バックヨーク)と、コア32の外周側に設けられた永久磁石33と、を有している。
【0019】
電力供給部5は、固定子2の複数の巻線23に対して3相交流電流を流す機能を有する。電力供給部5が複数の巻線23に対して3相交流電流を流すことで回転子3を回転させるための回転磁界が形成される。回転磁界によって、回転子3は、回転軸となる軸心Xを中心に例えば矢印Pで示す回転方向(反時計回り)に回転可能とされている。
【0020】
図1に示すSPMモータ1は、スロット27を24個有した固定子2を有している。24個のスロット27それぞれを通して巻線23が集中巻で90ターン巻回されているとする。巻線23は、所定の順に電気的に接続されると共に電力供給部5にも電気的に接続される。SPMモータ1の回転子3は、16個の永久磁石33によって、N極又はS極を示す磁極を8対有している。すなわち、1個の永久磁石33が1つの磁極を構成している。このように、SPMモータ1は、16極24スロットのインナーロータ型のSPMモータである。
【0021】
図3は、SPMモータ1に含まれる複数の永久磁石33のうちの一部(隣接する2つの永久磁石33)を示している。
【0022】
まず、永久磁石33の材料について説明する。複数の永久磁石33は、同じ材料で構成された永久磁石としてもよいし、互いに異なる材料で構成された永久磁石としてもよい。具体的には、各永久磁石33は、フェライト磁石、希土類系磁石、または、合金磁石等とすることできる。ただし、永久磁石33の材料の種類は上記に限定されない。また、永久磁石の製造方法についても特に限定されず、焼結により製造されてもよいし、熱間成型および熱間加工を行って製造されてもよい。
【0023】
なお、複数の永久磁石33は、互いに異なる材料の磁石であってもよい。
【0024】
また、永久磁石33は、その配向が所謂集中配向となっている。この点について、
図3を参照しながら説明する。
図3では、複数の永久磁石33のうちの2つの永久磁石33A,33Bを示している。永久磁石33Aは、回転子の外方(作用面側)がN極となる磁石であり、永久磁石33Bは、回転子の外方(作用面側)がS極となる磁石である。永久磁石33Aは磁化容易軸方向が特定の集中点C1に集中するように配向している。集中点C1は、永久磁石33Aの周方向の中央であって、回転子3の軸心X(
図1参照)に対して永久磁石33Aよりも離間した位置(外方)、すなわち固定子2(作用面)側とされる。また、永久磁石33Bは磁化容易軸方向が特定の集中点C2に集中するように配向している。集中点C2は、永久磁石33Bの周方向の中央であって、回転子3の軸心X(
図1参照)に対して永久磁石33Bよりも離間した位置(外方)、すなわち固定子2(作用面)側とされる。
図3では、2つの永久磁石33A,33Bのみを示しているが、SPMモータ1に用いられる全ての永久磁石33について、それぞれ特定の集中点に集中するような配向を有している。
【0025】
なお、
図4は、一般的に回転子に用いられる永久磁石34A,34Bを示している。永久磁石34A,34Bは、永久磁石33A,33Bに対応する磁石であるが、それぞれ、磁化容易軸方向が一律に特定の方向に平行とされている所謂平行配向である。永久磁石34A,34Bの場合、それぞれ弓形の磁石形状の中心線に平行に磁化容易軸方向が揃っている状態である。回転子に用いられる永久磁石は、
図4に示す永久磁石34A,34Bのように配向が磁石形状の中心線に平行とされているものか、または、磁化容易軸方向が回転子の軸心に対して放射状に配向する所謂ラジアル配向のものが一般的である。永久磁石34A,34Bのように磁石形状が弓形である場合、磁石の外周面又は内周面などの円弧の中心から放射状に磁化容易軸方向が揃っているものをラジアル配向ということができる。これに対して、本実施形態に係る永久磁石33(33A,33B)は、磁化容易軸方向が固定子2側(作用面側)に向かって集中するような配向(集中配向)とされることで、トルクの向上が図られている。
【0026】
なお、
図3では、永久磁石33A,33Bの磁化容易軸方向が特定の集中点C1,C2に集中されている状態を示しているが、本実施形態に係るモータ装置100の回転子3に設けられる複数の磁極がそれぞれ「磁化容易軸方向が固定子2側(作用面側)に向かって集中するような配向」である、とは、磁化容易軸方向が一点に集中する構成に限定されるものではない。すなわち、磁化容易軸方向が集中する先は一点でなくてもよく、複数点に磁化容易軸方向が集中するような状態であってもよい。また、ある程度広さを持つ領域に磁化容易軸方向が集中する場合でもあってもよい。これらのいずれの状態であっても、磁極が「磁化容易軸方向が固定子2側(作用面側)に向かって集中するような配向」であるといえる。また、永久磁石33のような弓形の磁石の場合、周方向に沿った中心付近での磁化容易軸方向が上述の集中点に集中しているが、周方向端部に向かって離れるにつれて磁化容易軸方向が集中点に向かう方向から徐々に変化する。このような場合であっても、「磁化容易軸方向が固定子2側(作用面側)に向かって集中するような配向」を有しているという。このように、「磁化容易軸方向が固定子2側(作用面側)に向かって集中するような配向」は、
図3で示した配向に限定されない。
【0027】
図5は、永久磁石33A,33Bの表面(固定子2側の表面)における磁束密度の分布(シミュレーション結果)を示している。
図5に示すように、永久磁石33A,33Bのいずれも、表面の磁束密度は永久磁石の端部を除いて場所によらずほぼ一定となっている。なお、本実施形態では、永久磁石33A,33Bの表面磁束密度がほぼ一定である場合について説明するが、この磁束密度の分布は一例である。すなわち、表面の磁束密度の分布は、永久磁石の場所によらず一定であってもよいし、例えば、周方向中央の磁束密度が最大となるように制御されていてもよい。また、周方向中央付近の磁束密度が両端部よりも小さくなるように制御されていてもよい。このように、永久磁石33A,33Bの表面における磁束密度の分布は適宜変更することができる。
【0028】
なお、永久磁石33への着磁(磁化)方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0029】
次に、電力供給部5から供給される電流について説明する。上述のように電力供給部5は、複数の巻線23に対して、電気角において120°位相が互いにずれた3相交流電流を流すことで、回転磁界を形成している。
図1に示すモータ装置100では、電力供給部5からSPMモータ1の巻線23に対して1周期(電気角360°)が機械角45°に相当する交流電流が送られる。
図6では、一般的なモータの動作に用いられる電流波形の一種である正弦波の交流電流のうちの1相の電流の波形を示している。一般的なモータでは、
図6で示す正弦波の波形を有する電流を組み合わせた交流電流、または、正弦波ではなく矩形波(疑似正弦波)の波形を有する電流を組み合わせた交流電流が用いられている。正弦波の代わりに用いられる矩形波とは、例えば、電気角120°の矩形波電流であり、電気角120°の間所定量の電流が流れ、電気角60°の間実質的に電流が流れない(無通電)、という状態を繰り返すことで、正弦波と同様の交流型の電流を形成するものである。
【0030】
一方、本実施形態に係るモータ装置100では、電力供給部5からSPMモータ1の固定子2の巻線23に対して台形波の波形を有する電流が供給される。
図7では、7つの台形波の電流波形を示している。
図7のうち台形波L0は、
図6に示す正弦波の波形に対応する台形波である。台形波L0は、矩形波よりも長い間(例えば、
図7に示す例の場合、電気角144°の間)、巻線23に対して電流が流れる。また、実質的に電流が流れない期間(無通電期間)が電気角36°の間となる。実質的に電流が流れない状態とは、流れる電流が0または十分に小さく、磁界の変化等のような電流による実質的な状態変化が生じない状態をいう。ただし電気角140°の間に電流が流れていない状態(0A)から所定の電流値となるまでの立ち上がりの期間(立ち上がり期間)と、所定の電流値から電流が流れていない状態(0A)となるまでの立ち下がりの期間(立ち下がり期間)と、を有する。すなわち、台形波の場合、電流値の絶対値が徐々に大きくなる期間(立ち上がり期間)、電流値が一定値の期間、及び、電流値が徐々に小さくなる期間(立ち下がり期間)が電気角144°の間に含まれていることになる。台形波L0の場合、立ち上がりの期間及び立ち下がりの期間は、電気角24°分とされている。立ち上がり期間及び立ち下がり期間での単位角辺りの電流の変化量は一定とされている。このように、台形波L0では、矩形波と比較して立ち上がり期間及び立ち下がり期間を有している。
【0031】
モータ装置100では、電力供給部5から台形波L0に対応する波形を有する3相交流電流をSPMモータ1の巻線23に対して供給することで、固定子2に対して回転子3を回転させる。
【0032】
本実施形態に係るモータ装置100では、上記のように、磁化容易軸方向が固定子2側(作用面側)に向かって集中するような配向とされている永久磁石33を有する回転子3を含むSPMモータ1に対して、電力供給部5から台形の凹凸を有する台形波状の電流が流れる。これにより、SPMモータ1の固定子2に対して回転子3が回転する。
【0033】
ここで、上記のように、集中配向とされている永久磁石33が取り付けられた回転子3を含むSPMモータ1に対して台形波状の電流を流した場合、従来のモータと比べて出力トルクを向上させることができる。
【0034】
従来は、SPMモータの回転子に用いられる永久磁石の配向は、平行配向またはラジアル配向とすることが知られていた。これに対して、磁化容易軸方向が集中するような配向(集中配向)とした場合、出力トルクが向上することは知られていた。一方、SPMモータの固定子に設けられた巻線に対して通電する電流の波形としては正弦波または矩形波を用いることは知られていた。電流の波形として矩形波を選択した場合、正弦波を選択した場合と比較してトルクが向上することも知られていた。したがって、磁化容易軸方向が集中するような配向(集中配向)である永久磁石が回転子に取り付けられたSPMモータの巻線に対して矩形波の電流を通電した場合、出力トルクが向上すると考えられる。
【0035】
これに対して、本実施形態に係るモータ装置100では、磁化容易軸方向が固定子2側(作用面側)に向かって集中するような配向である永久磁石33を有するSPMモータ1の巻線23に対して通電する電流の波形を台形波とすることで、出力トルクがさらに向上する。この理由としては、台形波の電流では矩形波と比較して電流値が徐々に変化する立ち上がり期間及び立ち下がり期間を有することによると考えられる。立ち上がり期間及び立ち下がり期間において、巻線23に対して供給される電流と永久磁石33とにより発生するマイナストルクを抑制することができ、その結果、SPMモータ1から出力されるトルクを向上させることが可能となると考えられる。特に、マイナストルクが生じ得る期間の電流変化が立ち下がりとなるような台形波を採用することで、マイナストルクを低減させることができるため、SPMモータ1としての出力トルクを大きくすることができる。
【0036】
上記の点について、シミュレーションを行った結果を以下に示す。
【0037】
まず、
図1に示すSPMモータ1(ただし、シャフト31は含まず)をモデルとし、巻線23に対して通電する電流の波形を変化させた場合の出力トルクについて、解析ソフトを用いたシミュレーションによって算出した。解析条件等を含む諸元について、表1に示す。解析ソフトは、JMAG−Designer Ver.17.1(JSOL社製)を使用した。
【0039】
上記の構造を有するSPMモータ1に対して、電力供給部5から互いに異なる3種類の波形の3相交流電流を流した場合の出力トルク(平均トルク:単位N・m)を算出した。3種類の波形とは、正弦波、矩形波、及び、台形波(
図7に示す台形波L0に対応するもの)である。出力トルクの算出結果を表2に示す。表2では、SPMモータ1に対して取り付けた永久磁石の配向が平行配向である場合(
図4参照)、ラジアル配向である場合、及び、集中配向である場合(
図3参照)、のそれぞれについて、評価を行った結果を示している。
【0041】
上記のように、本実施形態に係るモータ装置100によれば、複数の磁極のそれぞれにおいて、磁極よりも外方で磁化容易軸方向が固定子側(作用面側)に向かって集中するような配向であり、さらに、電力供給部から供給される電流を台形波とすることで、モータから出力されるトルクを向上させることができる。電流の波形を台形とすることによって、所謂集中配向とされている磁極のうち回転子3の回転方向に沿った端部と、巻線23に対して供給される電力供給部5からの電流と、によって発生するマイナストルクを小さくすることができ、その結果、回転子3の構成を変更することなくモータから出力されるトルクを向上させることが可能となる。なお、上記のモータ装置100のSPMモータ1の場合には、1個の永久磁石33によって1つの磁極が形成されているので、1個の永久磁石33の回転方向に沿った端部と電流とによって形成されるマイナストルクを抑制することで、回転子3の構成を変更することなくSPMモータ1からの出力トルクを向上させることができる。
【0042】
また、上記のように、台形波に無通電期間を有する構成とすることで、集中配向している磁極が、巻線に対して供給される電力供給部からの電流が鉄心に発生させる磁界との相互作用によって、不要なトルクを抑制することができる。そのため、トルクをさらに向上させることができる。
【0043】
なお、上記実施形態では、電力供給部5から供給される電流は台形波L0(
図7参照)である場合について説明した。この台形波L0は、電流位相差が0°であるものに対応する。これに対して、電力供給部5から供給される台形波の電流について、電流位相差を変化させてSPMモータ1に対して供給することもできる。このうち、電流位相差を正とした台形波をSPMモータ1の巻線23に対して供給することで、上述のマイナストルクをさらに抑制し、出力トルクを向上させることが可能となる。
【0044】
図7では、電流位相差が0°である台形波L0のほか、電流位相差が正とされている3種類の台形波L1〜L3と、電流位相差が負とされている3種類の台形波L4〜L6と、を示している。台形波L1〜L3は、それぞれ電流位相差が(電気角として)+18°、+12°、+6°とされている。また、台形波L4〜L6は、それぞれ電流位相差が(電気角として)−6°、−12°、−18°とされている。このような台形波L0及び台形波L1〜L6を電力供給部5からSPMモータ1に対して供給した場合の出力トルクの算出結果(平均トルク:単位N・m)を表3に示す。なお、表3でのL0及びL1〜L6は、
図7の台形波L0〜L6に対応する。なお、表3では、永久磁石が集中配向である場合のほか、平行配向及びラジアル配向の場合も参考として示している。
【0046】
表3に示す結果から、電流位相角を正とすることにより、出力トルクをさらに大きくすることができることが確認された。これは、電流位相角を正とすることにより、電流が流れる期間を前倒しにすることができることで、立ち下がり期間におけるSPMモータ1で逆向きのトルク(マイナストルク)の発生をより効果的に防ぐことができるためと考えられる。
【0047】
このように、電力供給部5から供給される電流位相角を正とすることにより、磁極の回転方向に沿った後方側の端部と、巻線23に対して供給される電力供給部5からの電流と、によって発生するマイナストルクをさらに抑制することができる。したがって、SPMモータ1からの出力トルクをさらに向上させることができる。
【0048】
なお、表3の結果によれば、電流位相角を+12°とした場合に出力トルクをより大きくすることができている。ただし、電流位相角と出力トルクとの関係は、モータの構成(特に磁極の数とスロットの数の関係等)によっても変化すると考えられる。
【0049】
また、上記実施形態では、磁極の集中点が磁極(永久磁石33)の周方向の中央に設けられる場合について説明したが、集中点は周方向に沿って移動させてもよい。このとき、磁化容易軸方向が集中する位置を、回転子3の回転方向(矢印Pで示す方向)に対して磁極の中央部よりも後方に移動させた場合、SPMモータ1からの出力トルクをさらに向上させることができる。
【0050】
図8は、集中点C3を回転方向(矢印Pで示す方向)に対して後方に設けて、磁化容易軸方向を集中させた永久磁石33Xを示している。
図8に示す永久磁石33Xでは、回転方向に沿った永久磁石33Xの長さのうち後端から1/3となる位置の付近(永久磁石33Xの角度が機械角で22.5°であるのに対して、中央部から後方へ3.75°移動させた位置)に集中点C3が設けられている。永久磁石33Xのように1つの磁石により磁極が形成されている場合、回転方向に沿った磁極の中央部とは、永久磁石33Xの実質的な外形中央部であり、それよりも後方とは、実質的な外形中央からずれた位置となる。磁化容易軸方向が集中する位置に対応する集中点C3を中央から後方に移動させると、
図8に示すように永久磁石33Xに形成される配向が、回転方向に沿った中心に対して対称ではなくなり、前後で非対称な配向となる。このような配向を有する永久磁石33XをSPMモータ1の回転子3で使用することで、磁極の回転方向に沿った後方側の端部と、巻線23に対して供給される電力供給部5からの電流と、によって発生するマイナストルクがさらに抑制される。したがって、SPMモータ1からの出力トルクをさらに向上させることができる。なお、上記実施形態で説明した永久磁石33A,33Bと同様に、「磁化容易軸方向が固定子2側(作用面側)に向かって集中するような配向」を有していればよく、磁化容易軸方向が一点に集中していなくてもよい。
【0051】
表4は、磁化容易軸方向の集中する位置が互いに異なる永久磁石を取り付けたSPMモータ1に対して、電力供給部5から電流を供給した場合の出力トルク(平均トルク:単位N・m)を算出した結果である。表4に示す結果のうち、「中央」とは、
図3に示す配向を有する永久磁石を取り付けた場合の結果であり、「後方」とは、
図8に示す配向を有する永久磁石を取り付けた場合の結果である。
【0053】
表4に示すように、磁化容易軸方向が集中する位置を後方に移動させることによって、出力トルクが向上することが確認された。なお、集中点の位置は、
図8に示す集中点C3で示す位置に限定されず、回転方向に沿って前後にさらに移動させてもよい。なお、永久磁石33Xの角度が機械角で22.5°である場合に、集中点C3を上記の位置付近とすることで、出力トルクの向上効果が高められる。
【0054】
発明は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態では、SPMモータ1について説明したが、モータの種類は特に限定されず、例えば、回転子に設けられた磁石挿入孔に対して永久磁石を挿入するIPMモータであってもよい。また、1つの磁極を構成する永久磁石の数は1個に限定されない。例えば、周方向に沿って配置された複数の永久磁石によって1つの磁極が形成される場合もある。そのような場合であっても、複数の永久磁石それぞれの配向を制御することで、上記のように1つの磁極に係る磁化容易軸方向が集中するような配向とすることによって、上記実施形態で説明した作用効果を得ることができる。また、上記実施形態では、弓形状の永久磁石33を用いて説明したが、永久磁石の形状は特に限定されない。例えば平板状の永久磁石を用いた場合でも磁化容易軸方向が集中するような配向を実現することが可能である。
【0056】
また、磁極の磁化容易軸方向が固定子側(作用面側)に向かって集中するような配向とする場合に、どの方向に磁化容易軸方向を集中させるかは適宜変更することができる。上記実施形態では、磁化容易軸方向が集中する場所を回転方向(周方向)に沿った中央部または後方とする場合について説明したが、前方としてもよい。また、磁化容易軸が集中する場所(集中点に相当する場所)は軸心Xに対して永久磁石よりも外方とするが、その位置(軸心からの距離)は適宜変更することができる。
【0057】
また、台形波の形状は適宜変更することができる。上記実施形態で説明した立ち上がり期間及び立ち下がり期間の長さは一例であり、これに限定されない。また、立ち上がり期間及び立ち下がり期間での電流の変化量も適宜変更することができる。また、無通電期間の長さも適宜変更することができる。
【0058】
また、回転子に設けられる磁極の数、配置、形状等は上記実施形態に限定されない。同様に、固定子を構成する鉄心の形状及び巻線の数及び巻回数等も適宜変更することができる。