【解決手段】複数の磁石挿入孔14を有するとともに熱可塑性樹脂から構成される回転子コア12と、複数の磁石挿入孔14のそれぞれに挿入された永久磁石7と、回転子コア12の中央部に挿通されるシャフト9と、周方向での係合を可能にする連結係合部30とを有する回転子ユニット10(20)を複数個備えてなり、複数個の回転子ユニット10(20)が連結係合部30を介して軸方向に連結されることによって、回転子3が構成される。
前記連結係合部は、軸方向に突出するとともに軸方向から見て円弧形状をしている第1係合部と、前記第1係合部に係合するように凹設されるとともに軸方向から見て円弧形状をしている第2係合部とを備えることを特徴とする、請求項2に記載の回転子。
前記連結係合部は、前記シャフトに設けられて軸方向に延在するキーまたはキー溝に係合するように構成された凹部または凸部であることを特徴とする、請求項1に記載の回転子。
前記回転子コアを構成する前記熱可塑性樹脂は、炭素繊維で強化されたポリフェニレンサルファイド樹脂であることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の回転子。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、この発明に係る回転子3および回転電機1の実施の形態を説明する。
【0012】
以下では、回転電機1として、ハイブリッド電気自動車(HEV)や電気自動車(EV)などの車両に搭載される回転電機1を述べるが、これは説明のための例示であって、車両搭載以外の他の用途の回転電機1であってもよい。
【0013】
また、以下に述べる寸法、形状、材質、磁極の数、1つの磁極を構成する永久磁石7の数や配置方法などは、この発明を説明するための例示であって、回転電機1における回転子3の仕様などにより、適宜に変更される。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
〔回転電機の全体構成〕
まず、
図1を参照しながら、回転電機1の全体構成を説明する。
【0015】
図1は、この発明の一実施形態に係る回転電機1を説明する図である。回転電機1は、永久磁石埋込式のブラシレスの回転電機である。回転電機1は、車両が走行するときには電動機(モータ)として機能し、車両が制動されるときには発電機(ジェネレータ)として機能する。
【0016】
回転電機1は、円柱状の回転子3と、円筒状の固定子5とを備える。回転子3と一体化されたシャフト9の軸方向の両端部は、図示しないケースに設けられた軸受によって、回転自在に支持されている。固定子5は、回転子3の外周側において所定の隙間を有するように、ケースに固定される。固定子コア50のティース部51には、巻回されたコイル52が配設されている。回転子3の回転位置を検出して、検出された回転子3の回転位置に応じて、コイル52に流す電流の切り替えを制御することによって、回転子3およびシャフト9が回転する。このように、回転電機1においては、回転子3に一体化されたシャフト9がトルクを出力する。
【0017】
〔回転子および回転子ユニット〕
図2から
図10を参照しながら、回転子3および回転子3を構成する第1回転子ユニット10を説明する。
【0018】
〔第1実施形態〕
図2から
図6に示すように、回転子ユニットとしての第1回転子ユニット10は、回転子コア12と永久磁石7とを有する。回転子コア12は、円環部13と、複数の磁石挿入孔14と、軸支部16,18と、連結係合部30とを有する。
【0019】
複数の磁石挿入孔14は、円環部13の外周側において、周方向に均等に離間配置されている。永久磁石7の磁場を効率的に利用するために、複数の磁石挿入孔14は、円環部13において、可能な限り外周側に寄せて配置されるのが好ましい。例えば、磁石挿入孔14の外側コーナ部と円環部13の外周面との間で、1mm程度の間隔を有するように、磁石挿入孔14が配置される。
【0020】
複数の磁石挿入孔14のそれぞれには、永久磁石7が挿入される。図示した例では、8個の磁石挿入孔14が設けられているので、磁極数が8となる。図示した例では、磁石挿入孔14が、回転中心Oを中心にして、45度の角度で周方向に均等に離間配置されている。
【0021】
磁石挿入孔14は、軸方向から見て略矩形形状をしている。磁石挿入孔14の軸方向の長さは、円環部13の軸方向長さと同じであり、永久磁石7の軸方向長さよりも長くなるように寸法構成されている。永久磁石7は、例えば、他側から磁石挿入孔14に挿入される。磁石挿入孔14の他側では、永久磁石7の挿入が容易になるように、C面またはR面の面取りが磁石挿入孔14の長辺側に設けられている。磁石挿入孔14の一側では、永久磁石7が行き止まりになるように、ストッパー部が磁石挿入孔14の短辺側に設けられている。
【0022】
回転子コア12の中央部には、軸支部16,18が、軸方向に立設されている。すなわち、回転子コア12の軸方向の一側には、軸方向に突出する一側の軸支部16が設けられている。回転子コア12の軸方向の他側には、軸方向に突出する他側の軸支部18が設けられている。回転子コア12の中央部、一側の軸支部16および他側の軸支部18のそれぞれには、シャフト9を挿通するための軸孔15が形成されている。シャフト9は、その一端に雄ネジ部が形成された軸部と、雄ネジ部に螺合する雌ネジ部とを備える。軸部の雄ネジ部と雌ネジ部とを螺合させることより、軸方向に一体化されたシャフト9が形成される。シャフト9は、車両の駆動輪に動力を伝達する出力軸として用いたり、出力軸の回転を減速する減速機構に接続したりすることができる。
【0023】
回転子コア12は、熱可塑性樹脂から構成され、射出成形によって作製される。回転子コア12を構成する熱可塑性樹脂は、耐熱性が高くて、成形時の収縮が少ない樹脂、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂などを挙げることができる。回転子コア12を構成する熱可塑性樹脂は、好ましくは、炭素繊維で強化されたポリフェニレンサルファイド樹脂である。炭素繊維で強化されたポリフェニレンサルファイド樹脂は、例えば、無機系添加剤を含むことができる。この発明を限定しない例示として、炭素繊維で強化されたポリフェニレンサルファイド樹脂は、三菱ケミカル株式会社製の品番PPS−C−15T15である。当該樹脂は、15重量%の炭素繊維を含有する。当該構成によれば、耐熱性が高くて、成形時の収縮が少ない回転子コア12の成形体を得ることができる。
【0024】
永久磁石7は、軸方向から見て略矩形形状をしているとともに、軸方向に延びる板状形状をしている。すでに着磁されている永久磁石7は、各磁石挿入孔14に対して1つずつ挿入配置され、それぞれが回転子コア12における1つの磁極を形成する。永久磁石7では、例えば、外周側の長辺面がN極であるとき、内周側の長辺面がS極になる。
図6に示すように、永久磁石7が、回転子コア12の8つの磁石挿入孔14に配置されるときに、回転子コア12の周方向に沿って隣り合う磁極の間では、磁界方向が互いに逆になるように配置される。すなわち、外周側の磁極の極性は、周方向に沿って順に、N極,S極,N極,S極,N極,S極,N極,S極になり、内周側の磁極の極性は、周方向に沿って順に、S極,N極,S極,N極,S極,N極,S極,N極になる。
【0025】
永久磁石7は、好ましくは、ネオジムと鉄とホウ素とを主成分とするネオジム磁石、サマリウムとコバルトとを主成分とするサマリウムコバルト磁石などの希土類磁石である。永久磁石7は、より好ましくは、永久磁石の中でも最も強い磁力を持つネオジム磁石である。当該構成によれば、高いトルクを持った回転電機1を提供できる。なお、用途によっては、フェライト磁石やアルニコ磁石などを用いることもできる。
【0026】
磁石固定材が、それぞれの磁石挿入孔14において、永久磁石7との隙間に充填される。永久磁石7の磁場を効率的に利用するために、磁石固定材は、例えば、磁石挿入孔14における内周側の隙間に充填される。磁石固定材は、永久磁石7を回転子コア12に固定する働きを有する。磁石固定材としては、成形性および耐熱性に優れた熱硬化性樹脂が用いられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂などを用いることができる。
【0027】
図7に示すように、回転子コア12の外周部すなわち円環部13の外周部には、外リング17が配設されている。外リング17は、回転子コア12を構成する熱可塑性樹脂の耐熱性および耐クリープ性を向上させるために設けられている。外リング17は、永久磁石7の磁場を妨げない特性を有する材質、例えば、保磁力が小さく透磁率が大きい軟質磁性材料からなる。外リング17は、例えば、鉄、ケイ素鋼(電磁鋼板)、パーマロイ、センダスト、ソフトフェライトなどからなる。外リング17は、回転子コア12を作製するときに、インサート成形(一体成形)によって一体的に配設される。
【0028】
図7に示すように、回転子コア12の一側の軸支部16および他側の軸支部18の外周部には、内リング19が配設されている。内リング19は、回転子コア12を構成する熱可塑性樹脂の耐熱性および耐クリープ性を向上させるために設けられている。内リング19は、各種の金属材料からなる。内リング19は、磁場の影響をほとんど受けない非磁性体からなり、例えば、アルミニウム(常磁性体)や銅(反磁性体)からなる。内リング19は、回転子コア12を作製するときに、インサート成形(一体成形)によって一体的に配設される。
【0029】
図4、
図5、
図7および
図9に示すように、第1回転子ユニット10の他側の軸支部18の軸方向端面には、周方向での係合を可能にする連結係合部30が設けられている。当該構成によれば、回転子コア12の軸方向端面を有効利用できるとともに、連結係合部30を成形によって容易に形成できる。連結係合部30は、凸形状の第1係合部31と凹形状の第2係合部32とが、軸方向から見て周方向に交互に配設されることによって構成されている。凸形状の第1係合部31は、軸方向に突出するとともに軸方向から見て円弧形状をしている。第2係合部32は、軸方向に突出した第1係合部31を受け入れできるように、軸方向に凹んだ凹形状をしている。凹形状の第2係合部32は、第1係合部31に係合するように凹設されるとともに軸方向から見て円弧形状をしている。当該構成によれば、周方向での係合を可能にするとともに、第1回転子ユニット10を軸方向に動かすことで、第1係合部31および第2係合部32を容易に係合状態または非係合状態にすることができる。
【0030】
図10(A)に示すように、第1係合部31および第2係合部32は、軸方向から見て、例えば、180度の角度で周方向に交互に延在するように全周を2等分した円弧形状をしている。第1係合部31および第2係合部32は、
図10(B)に示すように、軸方向から見て、90度の角度で周方向に交互に延在するように全周を4等分した円弧形状にすることができる。第1係合部31および第2係合部32は、
図10(C)に示すように、45度の角度で周方向に交互に延在するように全周を8等分した円弧形状にすることができる。いずれの場合においても、第1係合部31および第2係合部32は、軸方向から見て、対称軸Sを挟んで線対称になっているとともに、周方向に交互に配設されている。当該構成によれば、互いに対面する、一方の第1回転子ユニット10aの連結係合部30と他方の第1回転子ユニット10bの連結係合部30とが、容易に係合できる。
【0031】
軸方向の他側から見て永久磁石7の磁極の配列が全く同じである、2つの第1回転子ユニット10(一方の第1回転子ユニット10aおよび他方の第1回転子ユニット10b)を準備する。すなわち、軸方向の他側から見て永久磁石7の磁極が全く同じに位置する、永久磁石7が装着された一方の第1回転子ユニット10aと、永久磁石7が装着された他方の第1回転子ユニット10bとを準備する。
【0032】
図9に示すように、一方の第1回転子ユニット10aの他側および他方の第1回転子ユニット10bの他側を対面させることによって、2つの第1回転子ユニット10,10が、連結係合部30を介して軸方向に連結される。すなわち、
図9に示すように、一方の第1回転子ユニット10aにおける第1係合部31と、他方の第1回転子ユニット10bにおける第2係合部32とが対面した状態で2つの第1回転子ユニット10,10を近接させることによって、一方の連結係合部30と他方の連結係合部30とが係合する。
【0033】
シャフト9の軸部が、係合している2つの第1回転子ユニット10,10の各軸孔15に挿通される。シャフト9の軸部の雄ネジ部と雌ネジ部との螺合により、2つの第1回転子ユニット10,10が一体的に固定される。これにより、
図8に示すように、2つの第1回転子ユニット10,10を一体化した回転子3が、作製される。作製された回転子3では、例えば、外周側の磁極の極性は、周方向に沿って順に、N極,S極,N極,S極,N極,S極,N極,S極になり、内周側の磁極の極性は、周方向に沿って順に、S極,N極,S極,N極,S極,N極,S極,N極になる。永久磁石7による同じ磁極は、2つの第1回転子ユニット10,10にわたって、軸方向に直線状に延びている。
【0034】
他側に連結係合部30を有する回転子コア12は、一方の第1回転子ユニット10aおよび他方の第1回転子ユニット10bにおいて同形である。したがって、第1回転子ユニット10用の金型を使用して、一方の第1回転子ユニット10aおよび他方の第1回転子ユニット10bにおける各回転子コア12が射出成形されるので、回転子コア12を低コストで製造できる。連結係合部30を介して2つの第1回転子ユニット10,10を軸方向に連結することによって、大きな磁場を持った磁極の軸方向長さを2倍にした回転子3が容易に得られる。磁極の軸方向長さ(面積)を大きく確保できるので、回転電機1におけるトルクを向上させることができる。なお、当該回転子3に対応する固定子5は、軸直交方向に複数に分割されることなく、一つのものから構成されている。
【0035】
上記構成によれば、回転子コア12が熱可塑性樹脂から構成されるとともに、複数個の第1回転子ユニット10,10が連結係合部30を介して軸方向に連結されることによって回転子3を軸方向に長尺化できるので、回転子3ひいては回転電機1の高性能化および低コスト化を容易に実現できる。
【0036】
〔第2実施形態〕
図11を参照しながら、第2実施形態に係る回転子3を説明する。
図11は、この発明の第2実施形態に係る回転子3を説明する図である。
【0037】
図11において、回転子3が、例えば、4つの回転子ユニット10,20,20,10から構成されている。両側に配設される第1回転子ユニット10,10は、上述した実施形態のものと同じものである。2つの第2回転子ユニット20,20が、両サイドの第1回転子ユニット10,10の間に挟まれている。第2回転子ユニット20においては、上述した第1回転子ユニット10との比較で、連結係合部30が一側の軸支部16および他側の軸支部18の両方に設けられている点が相違している。
【0038】
図11に示すように、回転子ユニットとしての第2回転子ユニット20では、連結係合部30が、一側の軸支部および他側の軸支部の各軸方向端面に設けられている。当該構成によれば、回転子コア12の軸方向端面を有効利用できるとともに、連結係合部30を成形によって容易に形成できる。連結係合部30は、凸形状の第1係合部31と凹形状の第2係合部32とが、軸方向から見て周方向に交互に配設されることによって構成されている。凸形状の第1係合部31は、軸方向に突出するとともに軸方向から見て円弧形状をしている。第2係合部32は、軸方向に突出した第1係合部31を受け入れできるように、軸方向に凹んだ凹形状をしている。凹形状の第2係合部32は、第1係合部31に係合するように凹設されるとともに軸方向から見て円弧形状をしている。
【0039】
第2回転子ユニット20の第1係合部31および第2係合部32は、
図10(A)のような全周を2等分した円弧形状、
図10(B)のような全周を4等分した円弧形状、
図10(C)のような全周を8等分した円弧形状にしたりすることができる。いずれの場合においても、第2回転子ユニット20の第1係合部31および第2係合部32も、軸方向から見て、対称軸Sを挟んで線対称になっているとともに、周方向に交互に配設されている。
【0040】
第2回転子ユニット20における一側の連結係合部30が、第2回転子ユニット20における他側の連結係合部30または第1回転子ユニット10における他側の連結係合部30と係合するように構成されている。具体的には、第2回転子ユニット20における一側の凸形状の第1係合部31は、第2回転子ユニット20における他側の凹形状の第2係合部32、または、第1回転子ユニット10における他側の凹形状の第2係合部32と係合するように構成されている。第2回転子ユニット20における一側の凹形状の第2係合部32は、第2回転子ユニット20における他側の凸形状の第1係合部31、または、第1回転子ユニット10における他側の凸形状の第1係合部31と係合するように構成されている。
【0041】
第2回転子ユニット20における他側の連結係合部30が、第2回転子ユニット20における一側の連結係合部30または第1回転子ユニット10における一側の連結係合部30と係合するように構成されている。具体的には、第2回転子ユニット20における他側の凸形状の第1係合部31は、第2回転子ユニット20における一側の凹形状の第2係合部32、または、第1回転子ユニット10における一側の凹形状の第2係合部32と係合するように構成されている。第2回転子ユニット20における他側の凹形状の第2係合部32は、第2回転子ユニット20における一側の凸形状の第1係合部31、または、第1回転子ユニット10における一側の凸形状の第1係合部31と係合するように構成されている。
【0042】
第2回転子ユニット20における回転子コア12も、熱可塑性樹脂から構成され、射出成形によって作製される。回転子コア12を構成する熱可塑性樹脂は、耐熱性が高くて、成形時の収縮が少ない樹脂、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂などを挙げることができる。回転子コア12を構成する熱可塑性樹脂は、好ましくは、炭素繊維で強化されたポリフェニレンサルファイド樹脂である。炭素繊維で強化されたポリフェニレンサルファイド樹脂は、例えば、無機系添加剤を含むことができる。この発明を限定しない例示として、炭素繊維で強化されたポリフェニレンサルファイド樹脂は、三菱ケミカル株式会社製の品番PPS−C−15T15である。当該樹脂は、15重量%の炭素繊維を含有する。
【0043】
図11において図示しない磁石挿入孔のうち、永久磁石が挿入される側(他側)では、永久磁石の挿入が容易になるように、C面またはR面の面取り部が磁石挿入孔の長辺側に設けられている。磁石挿入孔のうち、磁石挿入孔が挿入される側の反対側、すなわち反挿入側(一側)は、永久磁石が行き止まりになるように、ストッパー部が磁石挿入孔の短辺側に設けられている。
【0044】
軸方向の他側から見て永久磁石7の磁極の配列が全く同じである、2つの第1回転子ユニット10(一方の第1回転子ユニット10aおよび他方の第1回転子ユニット10b)および2つの第2回転子ユニット20(一方の第2回転子ユニット20aおよび他方の第2回転子ユニット20b)を準備する。すなわち、
図11の左側から右側に順に、軸方向から見て永久磁石7の磁極が全く同じに位置する、一側から他側の一方の第1回転子ユニット10aと、一側から他側の一方の第2回転子ユニット20aと、一側から他側の他方の第2回転子ユニット20bと、他側から一側の他方の第1回転子ユニット10bとを配設する。
【0045】
図11に示すように、一方の第1回転子ユニット10aの他側と一方の第2回転子ユニット20aの一側とを、一方の第2回転子ユニット20aの他側と他方の第2回転子ユニット20bの一側とを、他方の第2回転子ユニット20bの他側と他方の第1回転子ユニット10bの他側とを、それぞれ対面させる。これによって、一方の第1回転子ユニット10aと一方の第2回転子ユニット20aと他方の第2回転子ユニット20bと他方の第1回転子ユニット10bとが、それぞれの連結係合部30を介して軸方向に連結される。すなわち、一方の第1回転子ユニット10aにおける第1係合部31と、一方の第2回転子ユニット20aにおける第2係合部32とが対面した状態で2つの回転子ユニット10,20を近接させると、一方の連結係合部30と他方の連結係合部30とが係合する。同様に、一方の第2回転子ユニット20aにおける第1係合部31と、他方の第2回転子ユニット20bにおける第2係合部32とが対面した状態で2つの第2回転子ユニット20,20を近接させると、一方の連結係合部30と他方の連結係合部30とが係合する。また、他方の第2回転子ユニット20bにおける第1係合部31と、他方の第1回転子ユニット10bにおける第2係合部32とが対面した状態で2つの回転子ユニット20,10を近接させると、一方の連結係合部30と他方の連結係合部30とが係合する。
【0046】
シャフトが一方の第1回転子ユニット10aと一方の第2回転子ユニット20aと他方の第2回転子ユニット20bと他方の第1回転子ユニット10bの各軸孔15に挿通される。シャフトの雄ネジ部と雌ネジ部との間での螺合により、4つの回転子ユニット10,20,20,10が、一体的に固定される。これにより、4つの回転子ユニット10,20,20,10を一体化した回転子3が、作製される。当該回転子3では、例えば、外周側の磁極の極性は、周方向に沿って順に、N極,S極,N極,S極,N極,S極,N極,S極になり、内周側の磁極の極性は、周方向に沿って順に、S極,N極,S極,N極,S極,N極,S極,N極になる。永久磁石7による磁極は、4つの回転子ユニット10,20,20,10にわたって、軸方向に直線状に延びている。
【0047】
他側に連結係合部30を有する回転子コア12は、一方の第1回転子ユニット10aおよび他方の第1回転子ユニット10bにおいて同形である。したがって、第1回転子ユニット10用の金型を使用して、一方の第1回転子ユニット10aおよび他方の第1回転子ユニット10bにおける各回転子コア12が射出成形されるので、第1回転子ユニット10用の回転子コア12を低コストで製造できる。また、一側および他側の両方に連結係合部30を有する回転子コア12は、一方の第2回転子ユニット20aおよび他方の第2回転子ユニット20bにおいて同形である。したがって、第2回転子ユニット20用の金型を使用して、一方の第2回転子ユニット20aおよび他方の第2回転子ユニット20bにおける各回転子コア12が射出成形されるので、第2回転子ユニット20用の回転子コア12を低コストで製造できる。連結係合部30を介して4つの回転子ユニット10,20,20,10を軸方向に連結することによって、大きな磁場を持った磁極の軸方向長さを4倍にした回転子3が容易に得られる。磁極の軸方向長さ(面積)を大きく確保できるので、回転電機1におけるトルクを向上させることができる。
【0048】
上記構成によれば、回転子コア12が熱可塑性樹脂から構成されるとともに、複数個の回転子ユニット10,20,20,10が連結係合部30を介して軸方向に連結されることによって回転子3を軸方向に長尺化できるので、回転子3ひいては回転電機1の高性能化および低コスト化を容易に実現できる。
【0049】
〔第3実施形態〕
図12を参照しながら、第3実施形態に係る回転子3を説明する。
図12は、この発明の第3実施形態に係る回転子3を説明する図である。
【0050】
図12において、第1回転子ユニット10の他側の円環部13の軸方向端面には、連結係合部30が設けられている。当該構成によれば、回転子コア12の軸方向端面を有効利用できるとともに、連結係合部30を成形によって容易に形成できる。具体的には、連結係合部30が、円環部13の内周側に設けられている。当該構成によれば、磁石挿入孔14を円環部13の外周側に寄せることによって形成される内周側の余白部分を有効利用できる。
【0051】
連結係合部30は、凸形状の第1係合部31と凹形状の第2係合部32とが、軸方向から見て周方向に交互に配設されることによって構成されている。凸形状の第1係合部31は、軸方向に突出するとともに軸方向から見て円弧形状をしている。第2係合部32は、軸方向に突出した第1係合部31を受け入れできるように、軸方向に凹んだ凹形状をしている。凹形状の第2係合部32は、第1係合部31に係合するように凹設されるとともに軸方向から見て円弧形状をしている。当該構成によれば、周方向での係合を可能にするとともに、第1回転子ユニット10を軸方向に動かすことで、第1係合部31および第2係合部32を容易に係合状態または非係合状態にすることができる。
【0052】
円環部13の内周側に配設される第1回転子ユニット10の第1係合部31および第2係合部32は、
図10(A)のような全周を2等分した円弧形状、
図10(B)のような全周を4等分した円弧形状、
図10(C)のような全周を8等分した円弧形状にしたりすることができる。いずれの場合においても、第1回転子ユニット10の第1係合部31および第2係合部32も、軸方向から見て、対称軸を挟んで線対称になっているとともに、周方向に交互に配設されている。
【0053】
第2実施形態と同様に、連結係合部30は、第2回転子ユニットの一側の円環部の内周側および他側の円環部13の内周側の両方に設けることもできる。また、一側および他側の円環部の内周側に配設される第2回転子ユニットの第1係合部および第2係合部は、
図10(A)のような全周を2等分した円弧形状、
図10(B)のような全周を4等分した円弧形状、
図10(C)のような全周を8等分した円弧形状にしたりすることができる。
【0054】
〔第4実施形態〕
図13を参照しながら、第4実施形態に係る回転子3を説明する。
図13は、この発明の第4実施形態に係る回転子3を説明する図である。
【0055】
第4実施形態に係る回転子3では、連結係合部30として働くキー溝(凹部)42が、第1回転子ユニット10の回転子コア12の軸孔15の周面に設けられていることを特徴としている。シャフト9には、軸方向に延在するとともに径方向外側に突出するキー(凸部)41が設けられている。シャフト9に形成されるキー41は、連結される回転子コア12の数量分だけ軸方向に延在している。回転子コア12のキー溝42は、シャフト9のキー41に係合するように、軸方向に延在するとともに径方向外側に凹んでいる。したがって、回転子コア12のキー溝42は、シャフト9に対する回転子コア12の周方向での係合を可能にする。
【0056】
第1回転子ユニット10の回転子コア12は、連結係合部30として働くキー溝(凹部)42を少なくとも1つ備えている。
図13では、2つのキー溝42が、軸方向から見て180度の角度で等配されている。なお、同様に、連結係合部30として働くキー溝42を、第2回転子ユニットの回転子コアの軸孔の周面に設けることもできる。当該構成によれば、回転子コア12においてシャフト9を挿通するための軸孔15を有効利用できるとともに、連結係合部30を成形によって容易に形成できる。
【0057】
〔第5実施形態〕
図14を参照しながら、第5実施形態に係る回転子3を説明する。
図14は、この発明の第5実施形態に係る回転子3を説明する図である。
【0058】
第5実施形態に係る回転子3では、連結係合部30として働くキー(凸部)41が、第1回転子ユニット10の回転子コア12の軸孔15の周面に設けられていることを特徴としている。シャフト9には、軸方向に延在するとともに径方向内側に凹んだキー溝(凹部)42が設けられている。シャフト9に形成されるキー溝42は、シャフト9の一端から他端まで軸方向に延在している。回転子コア12のキー41は、シャフト9のキー溝42に係合するように、軸方向に延在するとともに径方向内側に突出している。したがって、回転子コア12のキー41は、シャフト9に対する回転子コア12の周方向での係合を可能にする。
【0059】
第1回転子ユニット10の回転子コア12は、連結係合部30として働くキー(凸部)41を少なくとも1つ備えている。
図14では、2つのキー41が、軸方向から見て180度の角度で等配されている。なお、同様に、連結係合部30として働くキー41を、第2回転子ユニットの回転子コアの軸孔の周面に設けることもできる。当該構成によれば、回転子コア12においてシャフト9を挿通するための軸孔15を有効利用できるとともに、連結係合部30を成形によって容易に形成できる。
【0060】
〔第6実施形態〕
図15を参照しながら、第6実施形態に係る回転子3を説明する。
図15は、この発明の第6実施形態に係る回転子3を説明する図である。
【0061】
第6実施形態に係る回転子3では、回転子コア12に形成された磁石挿入孔14を補強する補強部が、磁石挿入孔14の一側(永久磁石7を挿入する側の反対側)に設けられていることを特徴としている。すなわち、補強部として働くブリッジ部14aおよび肉盛り部14bが、回転子コア12を構成する熱可塑性樹脂の耐クリープ性および磁石挿入孔14の形状安定性を向上させるために、各磁石挿入孔14に設けられている。
【0062】
ブリッジ部14aは、略矩形形状の磁石挿入孔14での対向する2つの長辺をつなぐように長辺の略中央に設けられている。ブリッジ部14aは、磁石挿入孔14の一部分または全体を覆う構成にすることができる。ブリッジ部14aは、挿入された永久磁石7を行き止まりにするストッパー部としても働く。この発明を限定しない例示として、ブリッジ部14aは、幅が3mm、厚みが0.8mmである。当該構成によれば、回転子コア12の磁石挿入孔14を補強できる。
【0063】
図15において破線で示す肉盛り部14bは、磁石挿入孔14の周囲部分を囲繞するとともに、円環部13の一側の端面よりも盛り上がっているように構成されている。この発明を限定しない例示として、肉盛り部14bは、幅が1.1mm、盛り上がり高さが0.8mmである。当該構成によれば、回転子コア12の磁石挿入孔14を補強できる。
【0064】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0065】
上記実施形態では、回転子3が、2つの第1回転子ユニット10(一方の第1回転子ユニット10aおよび他方の第1回転子ユニット10b)、または、2つの第1回転子ユニット10(一方の第1回転子ユニット10aおよび他方の第1回転子ユニット10b)および2つの第2回転子ユニット20(一方の第2回転子ユニット20aおよび他方の第2回転子ユニット20b)から構成されているが、第2回転子ユニット20の数を適宜に増減させることができる。したがって、回転子3は、少なくとも2つの第1回転子ユニット10を含み、少なくとも1つの第2回転子ユニット20をさらに含むことができる。
【0066】
永久磁石7および磁石挿入孔14は、周方向に直線状に延びる形状のものを例示したが、軸方向に凸状のV字形状にしたり、U字形状にしたりすることができる。
【0067】
図1に示した固定子5では、ティース部51の数が12個のものを例示したが、ティース部51の数などは、特に限定されるものではない。固定子5の巻線も、集中巻および分布巻のいずれのものであってもよい。
【0068】
図1に示した固定子5の巻線は、例えば、U相、V相、及び、W相の3つのコイル52(3相巻線)から構成される。
【0069】
回転電機1は、固定子5に対する回転子3の相対的な回転位置を検出する磁気センサ(例えば、ホール素子)を備えることができる。磁気センサは、回転子3に埋設された永久磁石7のN極およびS極の磁極の切り替えから回転子3の回転数および回転方向を検出することができる。
【0070】
この発明の回転電機1は、車両用に限定されるものでなく、広く一般的な電動機および発電機にも使用できる。
【0071】
この発明および実施形態をまとめると、次のようになる。
【0072】
この発明の一態様に係る回転子3は、
複数の磁石挿入孔14を有するとともに熱可塑性樹脂から構成される回転子コア12と、
前記複数の磁石挿入孔14のそれぞれに挿入された永久磁石7と、
前記回転子コア12の中央部に挿通されるシャフト9と、
周方向での係合を可能にする連結係合部30とを有する回転子ユニット10(20)を複数個備えてなり、
複数個の前記回転子ユニット10(20)が前記連結係合部30を介して軸方向に連結されることによって、回転子が構成されることを特徴とする。
【0073】
上記構成によれば、回転子コア12が熱可塑性樹脂から構成されるとともに、複数個の回転子ユニット10(20)が連結係合部30を介して軸方向に連結されることによって回転子3を軸方向に長尺化できるので、回転子3の高性能化および低コスト化を容易に実現できる。
【0074】
また、一実施形態の回転子3では、
前記連結係合部30は、前記回転子コア12の軸方向端面に設けられている。
【0075】
上記実施形態によれば、
回転子コア12の軸方向端面を有効利用できるとともに、連結係合部30を成形によって容易に形成できる。
【0076】
また、一実施形態の回転子3では、
前記連結係合部30は、軸方向に突出するとともに軸方向から見て円弧形状をしている第1係合部31と、前記第1係合部31に係合するように凹設されるとともに軸方向から見て円弧形状をしている第2係合部32とを備える。
【0077】
上記実施形態によれば、周方向での係合を可能にするとともに、回転子ユニット10(20)を軸方向に動かすことで、第1係合部31および第2係合部32を容易に係合状態または非係合状態にすることができる。
【0078】
また、一実施形態の回転子3では、
前記第1係合部31および前記第2係合部32は、軸方向から見て線対称であり且つ周方向に交互に配設されている。
【0079】
上記実施形態によれば、対面する2つの回転子ユニット10(20)の各連結係合部30,30が、容易に係合できる。
【0080】
また、一実施形態の回転子3では、
前記連結係合部30は、前記シャフト9に設けられて軸方向に延在するキー41またはキー溝42に係合するように構成された凹部42または凸部41である。
【0081】
上記実施形態によれば、回転子コア12においてシャフト9を挿通するための軸孔を有効利用できるとともに、連結係合部30を成形によって容易に形成できる。
【0082】
また、一実施形態の回転子3では、
前記回転子コア12を構成する前記熱可塑性樹脂は、炭素繊維で強化されたポリフェニレンサルファイド樹脂である。
【0083】
上記実施形態によれば、耐熱性が高くて、成形時の収縮が少ない回転子コア12の成形体を得ることができる。
【0084】
また、一実施形態の回転子3では、
前記永久磁石7は、ネオジム磁石である。
【0085】
上記実施形態によれば、高いトルクを持った回転電機1を提供できる。
【0086】
また、一実施形態の回転子3では、
前記回転子コア12の外周部には、軟質磁性材料からなる外リング17が配設されている。
【0087】
上記実施形態によれば、回転子コア12を構成する熱可塑性樹脂の耐熱性および耐クリープ性を向上させることができる。
【0088】
また、一実施形態の回転子3では、
前記回転子コアにおける軸支部16,18の外周部には、金属材料からなる内リング19が配設されている。
【0089】
上記実施形態によれば、回転子コア12を構成する熱可塑性樹脂の耐熱性および耐クリープ性を向上させることができる。
【0090】
また、一実施形態の回転電機1では、
上記の回転子3を備える。
【0091】
上記実施形態によれば、回転子コア12が熱可塑性樹脂から構成されるとともに、複数個の回転子ユニット10(20)が連結係合部30を介して軸方向に連結されることによって回転子3の軸方向長さを長くできるので、回転電機1の高性能化および低コスト化を容易に実現できる。