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特開2020-191777トランスデューサ並びにこれを用いたアクチュエータ及びエネルギハーベスタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-191777(P2020-191777A)
(43)【公開日】2020年11月26日
(54)【発明の名称】トランスデューサ並びにこれを用いたアクチュエータ及びエネルギハーベスタ
(51)【国際特許分類】
   H02K 35/02 20060101AFI20201030BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20201030BHJP
【FI】
   H02K35/02
   H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-84235(P2020-84235)
(22)【出願日】2020年5月13日
(31)【優先権主張番号】特願2019-91261(P2019-91261)
(32)【優先日】2019年5月14日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】門田 祥悟
(72)【発明者】
【氏名】藤原 良元
(72)【発明者】
【氏名】進士 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】韓 冬
(72)【発明者】
【氏名】木根 諒
【テーマコード(参考)】
5H641
【Fターム(参考)】
5H641BB06
5H641BB19
5H641GG02
5H641GG07
5H641HH03
(57)【要約】
【課題】力と電気との変換効率が優れたトランスデューサを提供する。
【解決手段】トランスデューサ1は、磁石10Aと、磁石10Aの磁極面11と重なる配線20とを備える。配線20は、磁極面11と重なる部分において、互いに同方向に電流が流れる複数の配線部分21〜23を有し、且つ、磁極面11に対して垂直な方向における幅をaとし、磁極面と平行な方向における幅をbとした場合、a/bで定義されるアスペクト比が1を超える。このように、配線20のアスペクト比が1超であることから、磁石10Aと重なる部分により多くの配線部分を配置することが可能となる。これにより、電気と力の相互変換効率を高めることが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石と、
前記磁石の磁極面と重なる配線と、を備え、
前記配線は、前記磁極面と重なる部分において、互いに同方向に電流が流れる複数の配線部分を有し、且つ、前記磁極面に対して垂直な方向における幅をaとし、前記磁極面と平行な方向における幅をbとした場合、a/bで定義されるアスペクト比が1を超えることを特徴とするトランスデューサ。
【請求項2】
前記配線の断面が矩形であることを特徴とする請求項1に記載のトランスデューサ。
【請求項3】
前記磁石は、前記磁極面がN極である第1の磁石と、前記磁極面がS極である第2の磁石を含み、
前記第1の磁石と重なる前記複数の配線部分と、前記第2の磁石と重なる前記複数の配線部分には、互いに逆方向の電流が流れることを特徴とする請求項1又は2に記載のトランスデューサ。
【請求項4】
前記配線は、コイル軸方向が前記磁極面に対して垂直となるようスパイラル状に巻回されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のトランスデューサ。
【請求項5】
前記磁石は、前記磁極面がN極である第1の磁石と、前記磁極面がS極である第2の磁石を含み、
前記第1の磁石と重なる前記配線からなる第1のコイルパターンと、前記第2の磁石と重なる前記配線からなる第2のコイルパターンには、互いに逆方向に周回する電流が流れることを特徴とする請求項4に記載のトランスデューサ。
【請求項6】
前記磁石の前記磁極面の幅が3mm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項7】
前記複数の配線が基板上に形成されており、前記磁石と前記複数の配線のギャップのばらつきが10μm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のトランスデューサと、前記配線に駆動電流を供給する駆動回路とを備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のトランスデューサと、前記配線に流れる誘導電流に基づいて出力電圧を生成する整流変圧回路とを備えることを特徴とするエネルギハーベスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁誘導デバイスであるトランスデューサに関し、特に、アクチュエータ又はエネルギハーベスタとして利用できるトランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁石とコイルを用いて微弱な振動を電力に変換する装置が注目されている。このような装置は、エネルギハーベスタ又はマイクロ発電デバイスと呼ばれ、外部電源や電池が不要な電源フリー自立型モジュールへの応用が期待されている。例えば、特許文献1には、板状の磁石と2つのコイルを用いたエネルギハーベスタが開示されている。また、特許文献2には、多極磁石とそれに合わせた蛇行形状コイルを用いたアクチュエータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−268229号公報
【特許文献2】国際公開第2017/126577号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エネルギハーベスタにおいて発電量と発生電圧を大きくするためには、磁石と重なる配線の本数を増やすこと、並びに、配線の電気抵抗を小さくすることが有効である。しかしながら、磁石と重なる配線の本数を増やすために配線を細くすると電気抵抗が大きくなり、配線の電気抵抗を小さくするために配線を太くすると磁石と重なる配線の本数が減るため、両立は必ずしも容易ではないという問題があった。
【0005】
このような問題は、配線に電流を流すことによって、磁石と配線の位置関係を相対的に変化させるアクチュエータにおいても生じる問題である。アクチュエータにおいて、許容電流値内で発生力を大きくし発熱量を小さくするためには、エネルギハーベスタと同様、磁石と重なる配線の本数を増やし電気抵抗を小さくすることが有効である。しかしながら、上述のとおり、これらを両立することは必ずしも容易ではない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、発電量と発生電圧の両方が大きいエネルギハーベスタ、並びに、発生力は大きいが発熱量は小さいアクチュエータとして利用可能なトランスデューサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるトランスデューサは、磁石と、磁石の磁極面と重なる配線とを備え、配線は、磁極面と重なる部分において、互いに同方向に電流が流れる複数の配線部分を有し、且つ、磁極面に対して垂直な方向における幅をaとし、磁極面と平行な方向における幅をbとした場合、a/bで定義されるアスペクト比が1を超えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、配線のアスペクト比が1超であることから、配線の幅を小さくできるためより多くの配線部分を磁石と重なるように配置することができ、また、配線の厚みを大きくできるため電気抵抗を小さくすることが可能となる。これにより、発電量と発生電圧の両方が大きいエネルギハーベスタ、或いは、発生力が大きく発熱量が小さいアクチュエータを実現できる。
【0009】
本発明において、配線の断面は矩形であっても構わない。これによれば、配線の断面積を最大化することが可能となる。
【0010】
本発明において、磁石は、磁極面がN極である第1の磁石と、磁極面がS極である第2の磁石を含み、第1の磁石と重なる複数の配線部分と、第2の磁石と重なる複数の配線部分には、互いに逆方向の電流が流れるものであっても構わない。これによれば、同極の磁石を用いた場合および同方向の電流を流した場合と比べ、より大きな発電力又は駆動力を得ることが可能となる。
【0011】
本発明において、配線は、コイル軸方向が磁極面に対して垂直となるようスパイラル状に巻回されていても構わない。これによれば、3次元的な動きを電力に変換することができ、或いは、配線に電流を流すことによって3次元的な駆動を行うことが可能となる。この場合、磁石は、磁極面がN極である第1の磁石と磁極面がS極である第2の磁石を含み、第1の磁石と重なる配線からなる第1のコイルパターンと、第2の磁石と重なる配線からなる第2のコイルパターンには、互いに逆方向に周回する電流が流れるものであっても構わない。これによれば、同極の磁石を用いた場合および同方向の電流を流した場合と比べ、より大きな発電力又は駆動力を得ることが可能となる。
【0012】
本発明において、磁石の磁極面の幅は3mm以下であっても構わない。これによれば、エネルギハーベスタとして利用する際には振幅の小さい微弱な振動を効率よく電力に変換することが可能となり、また、ステッピングアクチュエータとして利用する際には、位置決め分解能を向上させることが可能となる。
【0013】
本発明において、複数の配線が基板上に形成されており、磁石と複数の配線のギャップのばらつきが10μm以下であっても構わない。これによれば、ギャップのばらつきに起因する発電量の低下や発熱量の増加を最小限に抑えることが可能となる。
【0014】
本発明によるトランスデューサは、配線に駆動電流を供給する駆動回路をさらに備えるものであっても構わない。これによれば、本発明によるトランスデューサをアクチュエータとして用いることが可能となる。
【0015】
本発明によるトランスデューサは、配線に流れる誘導電流に基づいて出力電圧を生成する整流変圧回路をさらに備えるものであっても構わない。これによれば、本発明によるトランスデューサをエネルギハーベスタとして用いることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明によれば、発電量と発生電圧の両方が大きいエネルギハーベスタ、並びに、発生力は大きいが発熱量は小さいアクチュエータとして利用可能なトランスデューサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第1の実施形態によるトランスデューサ1の構成を示す模式的な斜視図である。
図2図2(a)はトランスデューサ1の略平面図であり、図2(b)は図2(a)に示すA−A線に沿った略断面図である。
図3図3は、本発明の第2の実施形態によるトランスデューサ2の構成を示す図であり、(a)は略平面図、(b)は(a)に示すB−B線に沿った略断面図である。
図4図4は、本発明の第3の実施形態によるトランスデューサ3の構成を示す図であり、(a)は略平面図、(b)は(a)に示すC−C線に沿った略断面図である。
図5図5は、本発明の第4の実施形態によるトランスデューサ4において、磁石10A,10Bとコイルパターン20R,20Lがx方向に1/4ピッチずれた状態で重ねられている状態を示している。
図6図6は、本発明の第4の実施形態によるトランスデューサ4において、磁石10A,10Bとコイルパターン20R,20Lがy方向に1/4ピッチずれた状態で重ねられている状態を示している。
図7図7は、各実施形態によるトランスデューサ1〜4をアクチュエータとして用いる場合の駆動回路30の回路図である。
図8図8は、各実施形態によるトランスデューサ1〜4をエネルギハーベスタとして用いる場合に必要な回路を示すブロック図である。
図9図9は、モデルNo.1〜No.4,No.9〜No.18のトランスデューサの構成を示す略断面図である。
図10図10は、モデルNo.5のトランスデューサの構成を示す略断面図である。
図11図11は、モデルNo.6のトランスデューサの構成を示す略断面図である。
図12図12は、モデルNo.7のトランスデューサの構成を示す略断面図である。
図13図13は、モデルNo.8のトランスデューサの構成を示す略断面図である。
図14図14は、モデルNo.19〜No.22のトランスデューサの構成を示す略断面図である。
図15図15は、モデルNo.23のトランスデューサの構成を示す略断面図である。
図16図16は、モデルNo.24のトランスデューサの構成を示す略断面図である。
図17図17は、モデルNo.25のトランスデューサの構成を示す略断面図である。
図18図18は、モデルNo.26のトランスデューサの構成を示す略断面図である。
図19図19は、モデルNo.1〜No.8のトランスデューサのパラメータ及びシミュレーション結果を示す表である。
図20図20は、モデルNo.9〜No.18のトランスデューサのパラメータ及びシミュレーション結果を示す表である。
図21図21は、モデルNo.19〜No.26のトランスデューサのパラメータ及びシミュレーション結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0019】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるトランスデューサ1の構成を示す模式的な斜視図である。また、図2(a)はトランスデューサ1の略平面図であり、図2(b)は図2(a)に示すA−A線に沿った略断面図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、第1の実施形態によるトランスデューサ1は、平板状の磁石10Aと、配線部分21〜23を含む配線20を備えている。磁石10Aは、xy平面を磁極面とし、配線20と向かい合う側の磁極面11がN極であり、その反対側の磁極面12がS極である。図1及び図2に示す例では、磁石10Aのxy平面形状が略正方形であるが、本発明がこれに限定されるものではない。磁石10Aは、真空蒸着法などを用いて支持基板上に形成した膜でもよく、めっき法や電析法などを用いて支持基板上に成膜した厚膜でもよく、焼結磁石やボンド磁石などのバルク状磁石でも構わない。特に限定されるものではないが、磁石10Aとしては磁気特性の観点から異方性ネオジム磁石を用いることが好ましい。磁化容易軸は厚み方向(z方向)である。
【0021】
配線20は平面視で、つまりz方向から見て、磁石10Aと重なりを有している。図1及び図2に示す例では、配線20を構成する3本の配線部分21〜23が磁石10Aと重なっているが、配線部分の本数がこれに限定されるものではない。配線20は、銅(Cu)などの良導体からなり、そのxz断面は矩形である。特に、配線20のz方向における幅をaとし、配線20のx方向における幅をbとした場合、a/bで定義されるアスペクト比は1を超えている。つまり、図2(b)に示すようにy方向から見ると、配線20は縦長形状を有している。
【0022】
アスペクト比の高い配線20を形成する方法としては、次の方法が挙げられる。まず、基板上にチタン(Ti)や金(Au)などからなるシード層を形成した後、フォトリソグラフィー法によってシード層をパターニングする。次に、基板上のシード層以外の部分に永久レジストを構成する樹脂を形成した後、シード層に通電することで銅(Cu)などからなるメッキ層を形成する。これにより、高アスペクト比の配線20を形成することができる。但し、配線20の形成方法がこれに限定されるものではなく、リフトオフ等他の技術を用いて配線20を形成しても構わない。
【0023】
配線20の主要部分(ブリッジ部や取り回し部を除く)は、1層であっても構わない。これによれば、高アスペクト比な配線であるゆえに、磁石からの磁場が強い範囲全体に配線20を配置することがでるとともに、層を重ねる構造ではないため層間配線が不要となり、製造時の工数を減らすことができる。また、配線20は基板上に固定され、かつ、樹脂中に埋め込まれ、さらに樹脂の最表面の表面粗さ(Rz)が10μm以下に整えられていても構わない。これによれば、磁石と配線を近づけることが可能となり、発電量や駆動力が向上する。
【0024】
配線20の配線部分21〜23には、互いに同一方向に電流が流れるよう構成されている。これにより、例えば、符号Iで示す方向に電流を流すと、磁石10Aと配線20の間には図2(b)に示すローレンツ力Fが働く。このように、配線20に電流を流すと、磁石10Aと配線20のx方向における相対的な位置関係が変化することから、アクチュエータとして機能する。或いは、外力が作用することによって、磁石10Aと配線20のx方向における相対的な位置が変化すると、配線20には誘導電流が発生する。したがって、本実施形態によるトランスデューサ1は、エネルギハーベスタとして用いることができる。
【0025】
そして、本実施形態においては、配線20のアスペクト比が1を超えていることから、配線20の断面積を確保しつつ、より多くの配線部分21〜23を磁石10Aと重なるように配置することができる。配線20のアスペクト比については1超であれば特に限定されないが、2程度とすることが好ましい。また、配線20のxz断面については矩形である必要はなく、例えばz方向を長軸方向とする楕円形であっても構わない。但し、断面を矩形とすることにより、断面積を最大化することが可能となる。
【0026】
<第2の実施形態>
図3は、本発明の第2の実施形態によるトランスデューサ2の構成を示す図であり、(a)は略平面図、(b)は(a)に示すB−B線に沿った略断面図である。
【0027】
図3に示すように、第2の実施形態によるトランスデューサ2は、磁石10A,10Bがx方向に隣接して2個配置されているとともに、磁石10Aと磁石10Bは、極性が逆となるよう配置されている。例えば、図3(b)に示す左側の磁石10Aは、配線20と向かい合う側の磁極面11がN極であるのに対し、図3(b)に示す右側の磁石10Bは配線20と向かい合う側の磁極面12がS極である。さらに、配線20は、6つの配線部分21〜26を有しており、このうち配線部分21〜23は磁石10Aと重なる一方、配線部分24〜26は磁石10Bと重なる。その他の構成は、第1の実施形態によるトランスデューサ1と同様である。したがって、配線20のアスペクト比は1を超えている。
【0028】
本実施形態においては、配線20に符号Iで示す方向に電流を流すと、配線部分21〜23には−y方向に電流が流れ、配線部分24〜26には+y方向に電流が流れる。このため、符号Iで示す方向に電流を流すと、磁石10A,10Bと配線20の間には、いずれも図3(b)に示すローレンツ力Fが働く。或いは、外力が作用することによって、磁石10A,10Bと配線20のx方向における相対的な位置が変化すると、配線20には誘導電流が発生する。
【0029】
このように、本実施形態によるトランスデューサ2は、磁石10A,10Bがx方向に隣接して2個配置されていることから、アクチュエータとして用いた場合の駆動力や、エネルギハーベスタとして用いた場合の発電力を第1の実施形態によるトランスデューサ1の2倍以上に高めることが可能となる。使用する磁石10A,10Bの数については特に限定されず、より多くの磁石をストライプ状又はマトリクス状に配置することによって、駆動力又は発電力をより高めることが可能となる。
【0030】
<第3の実施形態>
図4は、本発明の第3の実施形態によるトランスデューサ3の構成を示す図であり、(a)は略平面図、(b)は(a)に示すC−C線に沿った略断面図である。
【0031】
図4に示すように、第3の実施形態によるトランスデューサ3は、磁石10Aと重なる配線20がスパイラル状に巻回されている。スパイラル状に巻回された配線20のコイル軸はz方向である。その他の構成は、第1の実施形態によるトランスデューサ1と同様である。したがって、配線20のアスペクト比は1を超えている。
【0032】
本実施形態においては、配線20に符号Iで示す方向に電流を流すと、磁石10Aと配線20との間で磁気吸引力が生じ、磁石10Aと配線20の距離が接近する。このため、例えば配線20が固定されている場合、磁石10Aが−z方向に変位する。逆に、配線20に符号Iで示す方向とは逆方向に電流を流すと、磁石10Aと配線20との間で磁気反発力が生じ、磁石10Aと配線20の距離が離れる。このため、例えば配線20が固定されている場合、磁石10Aが+z方向に変位する。
【0033】
このため、本実施形態によるトランスデューサ3は、配線20に電流を流すことによって磁石10Aを変位させるアクチュエータとして機能する。或いは、外力が作用することによって、磁石10Aと配線20のz方向における相対的な位置が変化すると、配線20には誘導電流が発生するため、エネルギハーベスタとしても機能する。そして、本実施形態においては、配線20のアスペクト比が1を超えているため、配線20の断面積を確保しつつ、より多くのターン数を得ることが可能となる。
【0034】
<第4の実施形態>
図5は、本発明の第4の実施形態によるトランスデューサ4の構成を示す略平面図である。
【0035】
図5に示すように、第4の実施形態によるトランスデューサ4は、マトリクス状に配置された複数の磁石10A,10Bと、磁石10A,10Bと重なる複数のコイルパターン20R,20Lからなる配線20を有している。上述の通り、磁石10Aは、配線20と向かい合う側の磁極面11がN極であり、その反対側の磁極面12がS極である。また、磁石10Bは、配線20と向かい合う側の磁極面12がS極であり、その反対側の磁極面11がN極である。磁石10Aの磁極面11(N極)と磁石10Bの磁極面12(S極)は同一平面を構成している。磁石10Aのx方向及びy方向には磁石10Bが隣接し、磁石10Bのx方向及びy方向には磁石10Aが隣接する。磁石10A,10Bの平面形状が正方形である場合、x方向及びy方向における幅は3mm以下であることが好ましい。
【0036】
コイルパターン20R,20Lは、磁石10A,10Bと同一ピッチでマトリクス状に配置されている。ここで、矢印Iで示す方向に電流を流すと、コイルパターン20Rには右回り(時計回り)に電流が流れ、コイルパターン20Lには左回り(反時計回り)に電流が流れる。そして、図5に示す状態では、磁石10A,10Bとコイルパターン20R,20Lがx方向に1/4ピッチずれた状態で重ねられている。
【0037】
その結果、コイルパターン20R,20Lのうち、+y方向に電流が流れる配線部分は磁石10Aと重なり、−y方向に電流が流れる配線部分は磁石10Bと重なる。このため、配線20に電流を流すと、第2の実施形態において説明したように、互いに同じ方向(−x方向又は+x方向)にローレンツ力が作用する。或いは、外力が作用することによって、磁石10A,10Bと配線20のx方向における相対的な位置が変化すると、配線20には誘導電流が発生する。
【0038】
そして、本実施形態においても、配線20のアスペクト比が1超であることから、配線20の断面積を確保しつつ、より多くのターン数を得ることが可能となる。
【0039】
図6は、磁石10A,10Bとコイルパターン20R,20Lがy方向に1/4ピッチずれた状態で重ねられている状態を示している。この場合、コイルパターン20R,20Lのうち、+x方向に電流が流れる配線部分は磁石10Aと重なり、−x方向に電流が流れる配線部分は磁石10Bと重なる。このため、配線20に電流を流すと、互いに同じ方向(−y方向又は+y方向)にローレンツ力が作用する。或いは、外力が作用することによって、磁石10A,10Bと配線20のy方向における相対的な位置が変化すると、配線20には誘導電流が発生する。
【0040】
このように、本実施形態によるトランスデューサ4は、配線20に電流を流すことによって、磁石10A,10Bとコイルパターン20R,20Lの相対的な位置関係をx方向又はy方向に移動させることが可能となる。或いは、外力によって磁石10A,10Bとコイルパターン20R,20Lの相対的な位置関係がx方向又はy方向に変化すると、配線20には誘導電流を発生させることが可能となる。
【0041】
さらに、磁石10A,10Bとコイルパターン20R,20Lの平面位置がほぼ一致した状態で配線20に電流を流すと、第3の実施形態によるトランスデューサ3と同様、磁石10A,10Bと配線20との間で磁気吸引力又は磁気反発力が生じる。或いは、磁石10A,10Bとコイルパターン20R,20Lの平面位置がほぼ一致した状態で、外力によって磁石10A,10Bとコイルパターン20R,20Lのz方向における距離が変化すると、配線20には誘導電流が発生する。したがって、本実施形態によるトランスデューサ4は、3次元的な動きを電力に変換することができ、或いは、配線20に電流を流すことによって3次元的な駆動を行うことが可能となる。特に、磁石10A,10Bのx方向及びy方向における幅を3mm以下とすれば、2mm程度の微弱な振動を効率よく電力に変換することが可能となる。
【0042】
<第5の実施形態>
図7は、各実施形態によるトランスデューサ1〜4をアクチュエータとして用いる場合の駆動回路30の回路図である。
【0043】
図7に示す駆動回路30は、制御信号CNTに基づいて駆動信号Dを生成する制御回路31と、駆動信号Dを駆動電流Iに変換するアンプ32とを有している。制御信号CNTは、アクチュエータであるトランスデューサ1〜4の動作量を指示する信号であり、例えばアクチュエータであるトランスデューサ1〜4を手ぶれ補正機構として使用する場合には、加速度センサなどから供給される手ぶれ検出信号が該当する。制御回路31は、制御信号CNTに基づき、駆動量を示す駆動信号Dを生成し、これをアンプ32に供給する。そして、アンプ32によって駆動信号Dが駆動電流Iに変換され、これが配線20に供給される。これにより、制御信号CNTに基づいて、磁石10A又は磁石10Bと配線20を相対的に2次元駆動又は3次元駆動させることが可能となる。
【0044】
<第6の実施形態>
図8は、各実施形態によるトランスデューサ1〜4をエネルギハーベスタとして用いる場合に必要な回路を示すブロック図である。
【0045】
各実施形態によるトランスデューサ1〜4をエネルギハーベスタとして用いる場合、整流変圧回路40に誘導電流Iを入力する。誘導電流Iは、配線20に生じる電流である。整流変圧回路40は、誘導電流Iを整流し、出力電圧OUTを生成する。これにより、トランスデューサ1〜4に外力が作用すると、出力電圧OUTを得ることが可能となる。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0047】
例えば、第1〜第4の実施形態によるトランスデューサ1〜4は、磁石とコイルパターンがz方向に向かい合う構成を有しているが、一対のコイルパターンによって磁石をz方向から挟み込む構成であっても構わないし、一対の磁石によってコイルパターンをz方向から挟み込む構成であっても構わない。このような構成を有するトランスデューサによれば、アクチュエータやエネルギハーベスタに使用した場合により高い駆動力又は発電力を得ることが可能となる。
【実施例】
【0048】
種々の構成を有するトランスデューサのモデルNo.1〜No.26を想定し、エネルギハーベスタとして利用した場合の発電量と発生電圧、並びに、アクチュエータとして利用した場合の発生力と発熱量をシミュレーションした。シミュレーションには、株式会社JSOL社製の電磁界解析ソフトJMAG−Designerを用い、有限要素法解析によって2次元シミュレーションを行った。
【0049】
モデルNo.1〜No.4の構成は図9に示す通りであり、x方向及びy方向における幅が2mm、z方向における厚みが0.5mmである磁石10Aと、コイルを構成する3本の配線部分21〜23を想定した。配線部分21〜23に流れる電流方向は互いに同じである。磁石10Aの磁気特性には、JMAGライブラリ内のTDK製ネオジム磁石NEOREC 46HF(残留磁束密度Br:1.38T、保磁力Hcb:1070kA/m)を選択した。着磁方向はz方向である。コイルを構成する配線部分21〜23のz方向における厚みはa、x方向における幅はbであり、磁石10Aと配線部分21〜23のz方向におけるギャップg1〜g3は、いずれも0.15mmである。配線部分21〜23のy方向における長さは2mmであり、全長に亘って磁石10Aと重なりを持たせた。a,bの値は図19に示すとおりであり、モデルNo.1〜No.4におけるaの値はそれぞれ40μm、80μm、120μm、160μmである。bの値はいずれも80μmである。配線部分21〜23の材料特性としては、JMAGライブラリ内の銅(比抵抗1.67×10−8Ω・m)を選択した。なお、磁石、磁石10A及び配線部分21〜23のy方向における長さは2mmとし、全部品を20℃に設定とした。
【0050】
モデルNo.5の構成は図10に示す通りであり、1本の配線部分22によってコイルが構成されている点において、モデルNo.1〜No.4と相違している。図19に示すように、モデルNo.5におけるa,bの値はそれぞれ160μm、400μmであり、図9に示す配線部分21と22の間、並びに、配線部分22と23の間を同じ導電材料で埋めた構成に相当する。
【0051】
モデルNo.6の構成は図11に示す通りであり、コイルを構成する配線部分21〜23のエッジがR=0.04mmでフィレットがけされた形状を有する点において、モデルNo.4と相違している。図19に示すように、モデルNo.6におけるa,bの値はモデルNo.4と同じである。
【0052】
モデルNo.7の構成は図12に示す通りであり、磁石10Bと配線部分24〜26が追加されている点において、モデルNo.4と相違している。磁石10Aと磁石10Bのx方向における間隔は0.5mmである。モデルNo.7においては、磁石10A,10Bの着磁方向が互いに同じであり、配線部分21〜26に流れる電流方向も互いに同じである。磁石10Aと配線部分21〜26のz方向におけるギャップg1〜g6は、いずれも0.15mmである。図19に示すように、モデルNo.7におけるa,bの値はモデルNo.4と同じである。
【0053】
モデルNo.8の構成は図13に示す通りであり、磁石10A,10Bの着磁方向が互いに逆であり、配線部分21〜23に流れる電流方向と配線部分24〜26に流れる電流方向が互いに逆である点において、モデルNo.7と相違している。
【0054】
モデルNo.9は、配線部分22,23の厚みaをそれぞれ2μm、1μm薄くし、これにより、ギャップg2が0.148mm(ギャップg1より−2μm)、ギャップg3が0.149mm(ギャップg1より−1μm)である点において、モデルNo.4と相違している。したがって、ギャップg1〜g3の最小値と最大値の差(ばらつき)は、図20に示すように2μmである。
【0055】
モデルNo.10は、配線部分22,23の厚みaをそれぞれ4μm、2μm薄くし、これにより、ギャップg2が0.146mm(ギャップg1より−4μm)、ギャップg3が0.148mm(ギャップg1より−2μm)である点において、モデルNo.4と相違している。したがって、ギャップg1〜g3の最小値と最大値の差(ばらつき)は、図20に示すように4μmである。
【0056】
モデルNo.11は、配線部分22,23の厚みaをそれぞれ6μm、3μm薄くし、これにより、ギャップg2が0.144mm(ギャップg1より−6μm)、ギャップg3が0.147mm(ギャップg1より−3μm)である点において、モデルNo.4と相違している。したがって、ギャップg1〜g3の最小値と最大値の差(ばらつき)は、図20に示すように6μmである。
【0057】
モデルNo.12は、配線部分22,23の厚みaをそれぞれ8μm、4μm薄くし、これにより、ギャップg2が0.142mm(ギャップg1より−8μm)、ギャップg3が0.146mm(ギャップg1より−4μm)である点において、モデルNo.4と相違している。したがって、ギャップg1〜g3の最小値と最大値の差(ばらつき)は、図20に示すように8μmである。
【0058】
モデルNo.13は、配線部分22,23の厚みaをそれぞれ10μm、5μm薄くし、これにより、ギャップg2が0.14mm(ギャップg1より−10μm)、ギャップg3が0.145mm(ギャップg1より−5μm)である点において、モデルNo.4と相違している。したがって、ギャップg1〜g3の最小値と最大値の差(ばらつき)は、図20に示すように10μmである。
【0059】
モデルNo.14は、配線部分22,23の厚みaをそれぞれ12μm、6μm薄くし、これにより、ギャップg2が0.138mm(ギャップg1より−12μm)、ギャップg3が0.144mm(ギャップg1より−6μm)である点において、モデルNo.4と相違している。したがって、ギャップg1〜g3の最小値と最大値の差(ばらつき)は、図20に示すように12μmである。
【0060】
モデルNo.15は、配線部分22,23の厚みaをそれぞれ14μm、7μm薄くし、これにより、ギャップg2が0.136mm(ギャップg1より−14μm)、ギャップg3が0.143mm(ギャップg1より−7μm)である点において、モデルNo.4と相違している。したがって、ギャップg1〜g3の最小値と最大値の差(ばらつき)は、図20に示すように14μmである。
【0061】
モデルNo.16は、配線部分22,23の厚みaをそれぞれ16μm、8μm薄くし、これにより、ギャップg2が0.134mm(ギャップg1より−16μm)、ギャップg3が0.142mm(ギャップg1より−8μm)である点において、モデルNo.4と相違している。したがって、ギャップg1〜g3の最小値と最大値の差(ばらつき)は、図20に示すように16μmである。
【0062】
モデルNo.17は、配線部分22,23の厚みaをそれぞれ18μm、9μm薄くし、これにより、ギャップg2が0.132mm(ギャップg1より−18μm)、ギャップg3が0.141mm(ギャップg1より−9μm)である点において、モデルNo.4と相違している。したがって、ギャップg1〜g3の最小値と最大値の差(ばらつき)は、図20に示すように18μmである。
【0063】
モデルNo.18は、配線部分22,23の厚みaをそれぞれ20μm、10μm薄くし、これにより、ギャップg2が0.13mm(ギャップg1より−20μm)、ギャップg3が0.14mm(ギャップg1より−10μm)である点において、モデルNo.4と相違している。したがって、ギャップg1〜g3の最小値と最大値の差(ばらつき)は、図20に示すように20μmである。
【0064】
モデルNo.19〜No.22の構成は図14に示す通りであり、磁石10Aと、コイルを構成する6本の配線部分21〜26を想定した。配線部分21〜23に流れる電流方向と、配線部分24〜26に流れる電流方向は互いに逆である。磁石10Aのサイズ及び磁気特性、並びに、配線部分21〜26の電気特性は、モデルNo.1〜No.18と同じである。モデルNo.19〜No.22におけるa,bの値は、図21に示す通りである。磁石10Aと配線部分21〜26のz方向におけるギャップg1〜g6は、いずれも0.15mmである。配線部分21,26は磁石10Aと重なりを有しておらず、配線部分22,25はx方向における半分が磁石10Aと重なりを有しており、配線部分23,24は全長に亘って磁石10Aと重なっている。
【0065】
モデルNo.23の構成は図15に示す通りであり、2本の配線部分22,25によってコイルが構成されている点において、モデルNo.22と相違している。図21に示すように、モデルNo.23におけるa,bの値はそれぞれ160μm、400μmであり、図14に示す配線部分21と22の間、並びに、配線部分22と23の間を同じ導電材料で埋め、配線部分24と25の間、並びに、配線部分25と26の間を同じ導電材料で埋めた構成に相当する。
【0066】
モデルNo.24の構成は図16に示す通りであり、コイルを構成する配線部分21〜26のエッジがR=0.04mmでフィレットがけされた形状を有する点において、モデルNo.22と相違している。
【0067】
モデルNo.25の構成は図17に示す通りであり、磁石10Bが追加されるとともに、配線部分21A〜25A,21B〜25Bが用いられている点において、モデルNo.22と相違している。磁石10Aと磁石10Bのx方向における間隔は0.5mmである。モデルNo.25においては、磁石10A,10Bの着磁方向が互いに同じである。また、配線部分21A〜23A,24B,25Bに流れる電流方向と、配線部分24,25B,21B〜23Bに流れる電流方向は互いに逆である。磁石10A,10Bと配線部分21A〜25A,21B〜25Bのz方向におけるギャップは、いずれも0.15mmである。
【0068】
モデルNo.26の構成は図18に示す通りであり、磁石10Bと配線部分27〜29が追加されている点において、モデルNo.22と相違している。磁石10Aと磁石10Bのx方向における間隔は0.5mmである。モデルNo.26においては、磁石10A,10Bの着磁方向が互いに逆であり、配線部分21〜23,27〜29に流れる電流方向と、配線部分24〜26に流れる電流方向は互いに逆である。磁石10A,10Bと配線部分21〜29のz方向におけるギャップは、いずれも0.15mmである。
【0069】
シミュレーション結果を図19図21に示す。モデルNo.1〜No.26をエネルギハーベスタとして利用した場合の計算では、コイル(配線)を固定し、磁石を振幅2mm(片振幅1mm)、周波数10Hzで振動させ、コイルに誘導起電力を発生させる動磁場解析を行った。比較的低周波であるのは、環境発電を想定したためである。振動方向はx方向又はz方向である。z方向の振動では磁石とコイルのギャップ値が変化するが、最小で0.15mmとなるように磁石の初期位置を設定した。コイルは純抵抗と接続し、その純抵抗にて消費される電力を発電量とし、コイル両端の電圧を発生電圧とした。なお、コイルのインダクタンスは本モデルでは十分に小さいためゼロとし、コイルの抵抗値は計算式(R=ρNL/ab)から算出した。なお、Rは抵抗値、ρは比抵抗、Nは配線の数、Lは配線の長さ(2mm)である。また、純抵抗の抵抗値は、発電量を最大とするためコイルの抵抗値と同値とした。
【0070】
モデルNo.1〜No.26をアクチュエータとして利用した場合の計算では、磁石とコイルを両方固定し、コイルに1A通電させ、コイルにローレンツ力を発生させる静磁場解析を行った。電気回路の制限で電流値の上限が決まっているデバイスを想定した。
【0071】
図19及び図20に示すように、モデルNo.1〜No.18における発電量、発生電圧、発生力及び発熱量は、モデルNo.2において得られた値を100%とした相対値である。このうち、モデルNo.9〜No.18に関しては、モデルNo.4において得られた値を100%とした発電量及び発熱量の相対値も示されている。図21に示すように、モデルNo.19〜No.26における発電量、発生電圧、発生力及び発熱量は、モデルNo.20において得られた値を100%とした相対値である。尚、モデルNo.2における発電量は2.710×10−8W、発生電圧は1.726×10−5V、発生力は0.0009656N、発熱量は0.156844Wである。また、モデルNo.20における発電量は1.083×10−8W、発生電圧は1.436×10−5V、発生力は0.0027521N、発熱量は0.0313688Wである。ここで、発電量は1周期の値を平均化したものであり、発生電圧は絶対値を1周期で平均化したものである。また、発生力は、上記の方法で計算したローレンツ力値であり、発熱量は上記の方法で計算した抵抗値と通電量(1A)をもとに計算式(P=RI)から算出した値である。
【0072】
モデルNo.1〜No.4の比較や、モデルNo.19〜No.22の比較から分かるように、アスペクト比(a/b)が大きくなるほど、エネルギハーベスタとして利用した場合の発電量が増加し、アクチュエータとして利用した場合の発熱量が低下した。アスペクト比の小さいモデルNo.5及びNo.23では、モデルNo.4及びNo.22よりもより大きな発電量が得られたが、コイル本数が少ないことから、エネルギハーベスタとして利用した場合の発生電圧が小さく、アクチュエータとして利用した場合の発生力が小さかった。また、配線部分21〜26をフィレットがけしたモデルNo.6及びNo.24においては、モデルNo.4やNo.22と比べ、エネルギハーベスタとして利用した場合の発電量がやや低下し、アクチュエータとして利用した場合の発熱量がやや増加した。
【0073】
2つの磁石10A,10Bを用いたモデルNo.7,No.8,No.25,No.26では、モデルNo.4やNo.22と比べ、エネルギハーベスタとして利用した場合の発電量及び発生電圧が大幅に増加し、アクチュエータとして利用した場合の発生力が大幅に増加した。特に、磁石10A,10Bの着磁方向が逆であるモデルNo.8、No.26においては顕著であった。
【0074】
ギャップg1〜g3にばらつきを持たせたモデルNo.9〜No,18では、ばらつきが大きいほど、エネルギハーベスタとして利用した場合の発電量が低下し、アクチュエータとして利用した場合の発熱量が増加した。具体的には、ギャップg1〜g3のばらつきを10μm以下に抑えることにより、ばらつきのないモデルNo.4を基準とした発電量の低下を5%未満とすることができるとともに、ばらつきのないモデルNo.4を基準とした発熱量の増加を4%未満とすることができる。
【符号の説明】
【0075】
1〜4 トランスデューサ
10A,10B 磁石
11,12 磁極面
20 配線
20R,20L コイルパターン
21〜29,21A〜25A,21B〜25B 配線部分
30 駆動回路
31 制御回路
32 アンプ
40 整流変圧回路
CNT 制御信号
D 駆動信号
F ローレンツ力
駆動電流
誘導電流
OUT 出力電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21