【解決手段】下肢筋力評価装置が、ユーザが座っている状態から立ち上がるまでの間において、ユーザの左右の少なくとも一方の下肢の角度を取得し、下肢が第1の方向へ最初に最も傾いたときの角度を示す第1下肢最大値、下肢が第1の方向とは逆の第2の方向へ最も傾いたときの角度を示す下肢最小値、下肢が第1の方向へ再び最も傾いたときの角度を示す第2下肢最大値、立ち上がり開始時点から第1下肢最大値が検出された時点までの第1下肢経過時間、立ち上がり開始時点から下肢最小値が検出された時点までの第2下肢経過時間、及び立ち上がり開始時点から第2下肢最大値が検出された時点までの第3下肢経過時間のうちの少なくとも1つの下肢パラメータを検出し、少なくとも1つの下肢パラメータを用いてユーザの下肢筋力を評価し、評価結果を出力する。
前記ユーザが複数回数立ち上がることによって、複数の第1下肢最大値、複数の下肢最小値、複数の第2下肢最大値、複数の第1下肢経過時間、複数の第2下肢経過時間及び複数の第3下肢経過時間のうちの少なくとも1つの下肢パラメータ群を検出し、
さらに、前記複数の第1下肢最大値の平均、前記複数の下肢最小値の平均、前記複数の第2下肢最大値の平均、前記複数の第1下肢経過時間の平均、前記複数の第2下肢経過時間の平均、前記複数の第3下肢経過時間の平均、前記複数の第1下肢最大値の標準偏差、前記複数の下肢最小値の標準偏差、前記複数の第2下肢最大値の標準偏差、前記複数の第1下肢経過時間の標準偏差、前記複数の第2下肢経過時間の標準偏差、及び前記複数の第3下肢経過時間の標準偏差のうちの少なくとも1つの下肢パラメータを算出する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の下肢筋力評価方法。
前記下肢筋力の評価値を目的変数とし、前記少なくとも1つの下肢パラメータを説明変数とする重回帰式に、検出された前記少なくとも1つの下肢パラメータを代入することにより、前記下肢筋力の評価値を算出する、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の下肢筋力評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示の基礎となった知見)
上記の特許文献1は、圧力マット、足パッド又は力プレートなどの感知モジュールを必要としている。そのため、特許文献1は、感知モジュールが破損しやすいという課題と、感知モジュールの設置に大きな手間がかかるという課題を有している。
【0013】
また、特許文献2は、歩行動作により下肢筋力を評価している。しかしながら、特許文献2において、歩行動作を安定して計測するためには、広いスペースが必要である。したがって、屋内環境のような空間の大きさに限りがある場所では、安定した歩行計測が困難であるため、高い精度で下肢筋力を評価することが困難である。
【0014】
以上の課題を解決するために、本開示の一態様に係る下肢筋力評価方法は、コンピュータが、ユーザが座っている状態から立ち上がるまでの間において、前記ユーザの左右の少なくとも一方の下肢の角度を取得し、前記下肢が第1の方向へ最初に最も傾いたときの前記角度を示す第1下肢最大値、前記下肢が前記第1の方向とは逆の第2の方向へ最も傾いたときの前記角度を示す下肢最小値、前記下肢が前記第1の方向へ再び最も傾いたときの前記角度を示す第2下肢最大値、前記ユーザの立ち上がり開始時点から前記第1下肢最大値が検出された時点までの第1下肢経過時間、前記ユーザの立ち上がり開始時点から前記下肢最小値が検出された時点までの第2下肢経過時間、及び前記ユーザの立ち上がり開始時点から前記第2下肢最大値が検出された時点までの第3下肢経過時間のうちの少なくとも1つの下肢パラメータを検出し、前記少なくとも1つの下肢パラメータを用いて前記ユーザの下肢筋力を評価し、評価結果を出力する。
【0015】
この構成によれば、下肢が第1の方向へ最初に最も傾いたときの角度を示す第1下肢最大値、下肢が第1の方向とは逆の第2の方向へ最も傾いたときの角度を示す下肢最小値、下肢が第1の方向へ再び最も傾いたときの角度を示す第2下肢最大値、ユーザの立ち上がり開始時点から第1下肢最大値が検出された時点までの第1下肢経過時間、ユーザの立ち上がり開始時点から下肢最小値が検出された時点までの第2下肢経過時間、及びユーザの立ち上がり開始時点から第2下肢最大値が検出された時点までの第3下肢経過時間は、ユーザの下肢筋力に相関がある下肢パラメータである。そのため、ユーザの下肢筋力に相関がある複数の下肢パラメータのうちの少なくとも1つの下肢パラメータを用いてユーザの下肢筋力が評価されるので、ユーザの下肢筋力を高い精度で評価することができる。
【0016】
また、上記の下肢パラメータが用いられるので、ユーザに対して5回立ち上がり動作テスト又は10m歩行動作テストのような制約のある動作テストを課さなくてもよく、かつ大がかりな装置も不要である。そのため、本構成では、ユーザの下肢筋力を容易に評価することができる。
【0017】
また、上記の下肢筋力評価方法において、さらに、前記ユーザの左右の少なくとも一方の下肢に装着されたセンサから得られたセンサデータに基づいて前記角度を取得してもよい。
【0018】
この構成によれば、加速度センサ又は角速度センサなどのセンサを、ユーザの左右の少なくとも一方の下肢に装着することで、ユーザの下肢筋力を容易に評価することができる。
【0019】
また、上記の下肢筋力評価方法において、モーションキャプチャシステムを用いて前記角度を取得してもよい。
【0020】
この構成によれば、モーションキャプチャシステムによってユーザの下肢の骨格の動きを取得することにより、ユーザの下肢筋力を容易に評価することができる。
【0021】
また、上記の下肢筋力評価方法において、前記ユーザが複数回数立ち上がることによって、複数の第1下肢最大値、複数の下肢最小値、複数の第2下肢最大値、複数の第1下肢経過時間、複数の第2下肢経過時間及び複数の第3下肢経過時間のうちの少なくとも1つの下肢パラメータ群を検出し、さらに、前記複数の第1下肢最大値の平均、前記複数の下肢最小値の平均、前記複数の第2下肢最大値の平均、前記複数の第1下肢経過時間の平均、前記複数の第2下肢経過時間の平均、前記複数の第3下肢経過時間の平均、前記複数の第1下肢最大値の標準偏差、前記複数の下肢最小値の標準偏差、前記複数の第2下肢最大値の標準偏差、前記複数の第1下肢経過時間の標準偏差、前記複数の第2下肢経過時間の標準偏差、及び前記複数の第3下肢経過時間の標準偏差のうちの少なくとも1つの下肢パラメータを算出してもよい。
【0022】
この構成によれば、ユーザが複数回数立ち上がることによって、複数の第1下肢最大値、複数の下肢最小値、複数の第2下肢最大値、複数の第1下肢経過時間、複数の第2下肢経過時間及び複数の第3下肢経過時間のうちの少なくとも1つの下肢パラメータ群が検出される。そして、複数の第1下肢最大値の平均、複数の下肢最小値の平均、複数の第2下肢最大値の平均、複数の第1下肢経過時間の平均、複数の第2下肢経過時間の平均、複数の第3下肢経過時間の平均、複数の第1下肢最大値の標準偏差、複数の下肢最小値の標準偏差、複数の第2下肢最大値の標準偏差、複数の第1下肢経過時間の標準偏差、複数の第2下肢経過時間の標準偏差、及び複数の第3下肢経過時間の標準偏差のうちの少なくとも1つの下肢パラメータが算出される。ユーザの測定状態によっては、不適正なセンサデータが取得されるおそれがある。しかしながら、ユーザが複数回数立ち上がることによって、取得されたセンサデータから外れ値を排除することができ、取得されたセンサデータの精度を向上させることができる。
【0023】
また、上記の下肢筋力評価方法において、前記ユーザが座っている状態から立ち上がるまでの間において、前記ユーザの左下肢及び右下肢の両方の角度を取得し、前記左下肢及び前記右下肢に対応する前記第1下肢最大値、前記左下肢及び前記右下肢に対応する前記下肢最小値、前記左下肢及び前記右下肢に対応する前記第2下肢最大値、前記左下肢及び前記右下肢に対応する前記第1下肢経過時間、前記左下肢及び前記右下肢に対応する前記第2下肢経過時間、及び前記左下肢及び前記右下肢に対応する前記第3下肢経過時間のうちの少なくとも1つの下肢パラメータを検出し、さらに、前記左下肢に対応する前記第1下肢最大値と前記右下肢に対応する前記第1下肢最大値との平均、前記左下肢に対応する前記下肢最小値と前記右下肢に対応する前記下肢最小値との平均、前記左下肢に対応する前記第2下肢最大値と前記右下肢に対応する前記第2下肢最大値との平均、前記左下肢に対応する前記第1下肢経過時間と前記右下肢に対応する前記第1下肢経過時間との平均、前記左下肢に対応する前記第2下肢経過時間と前記右下肢に対応する前記第2下肢経過時間との平均、及び前記左下肢に対応する前記第3下肢経過時間と前記右下肢に対応する前記第3下肢経過時間との平均のうちの少なくとも1つの下肢パラメータを算出してもよい。
【0024】
この構成によれば、ユーザが座っている状態から立ち上がるまでの間において、ユーザの左下肢及び右下肢の両方の動きに基づいて下肢筋力が評価されるので、ユーザの下肢筋力をより高い精度で評価することができる。
【0025】
また、上記の下肢筋力評価方法において、前記下肢筋力の評価値を目的変数とし、前記少なくとも1つの下肢パラメータを説明変数とする重回帰式に、検出された前記少なくとも1つの下肢パラメータを代入することにより、前記下肢筋力の評価値を算出してもよい。
【0026】
この構成によれば、下肢筋力の評価値を目的変数とし、少なくとも1つの下肢パラメータを説明変数とする重回帰式に、検出された少なくとも1つの下肢パラメータが代入されることにより、下肢筋力の評価値が算出されるので、予め重回帰式を記憶しておくことにより、容易に下肢筋力の評価値を算出することができる。
【0027】
また、上記の下肢筋力評価方法において、さらに、前記ユーザが座っている状態から立ち上がるまでの間において、前記ユーザの腰部の角度を取得し、さらに、前記腰部が第1の方向へ最初に最も傾いたときの前記角度を示す第1腰部最大値、前記腰部が前記第1の方向とは逆の第2の方向へ最も傾いたときの前記角度を示す腰部最小値、前記腰部が第1の方向へ再び最も傾いたときの前記角度を示す第2腰部最大値、前記ユーザの立ち上がり開始時点から前記第1腰部最大値が検出された時点までの第1腰部経過時間、前記ユーザの立ち上がり開始時点から前記腰部最小値が検出された時点までの第2腰部経過時間、及び前記ユーザの立ち上がり開始時点から前記第2腰部最大値が検出された時点までの第3腰部経過時間のうちの少なくとも1つの腰部パラメータを検出し、前記少なくとも1つの下肢パラメータと前記少なくとも1つの腰部パラメータとを用いて前記ユーザの下肢筋力を評価してもよい。
【0028】
この構成によれば、ユーザが座っている状態から立ち上がるまでの間において、ユーザの腰部の動きと、ユーザの下肢の動きとに基づいて下肢筋力が評価されるので、ユーザの下肢筋力をより高い精度で評価することができる。
【0029】
本開示の他の態様に係る下肢筋力評価プログラムは、ユーザが座っている状態から立ち上がるまでの間において、前記ユーザの左右の少なくとも一方の下肢の角度を取得し、前記下肢が第1の方向へ最初に最も傾いたときの前記角度を示す第1下肢最大値、前記下肢が前記第1の方向とは逆の第2の方向へ最も傾いたときの前記角度を示す下肢最小値、前記下肢が前記第1の方向へ再び最も傾いたときの前記角度を示す第2下肢最大値、前記ユーザの立ち上がり開始時点から前記第1下肢最大値が検出された時点までの第1下肢経過時間、前記ユーザの立ち上がり開始時点から前記下肢最小値が検出された時点までの第2下肢経過時間、及び前記ユーザの立ち上がり開始時点から前記第2下肢最大値が検出された時点までの第3下肢経過時間のうちの少なくとも1つの下肢パラメータを検出し、前記少なくとも1つの下肢パラメータを用いて前記ユーザの下肢筋力を評価し、評価結果を出力するようにコンピュータを機能させる。
【0030】
この構成によれば、下肢が第1の方向へ最初に最も傾いたときの角度を示す第1下肢最大値、下肢が第1の方向とは逆の第2の方向へ最も傾いたときの角度を示す下肢最小値、下肢が第1の方向へ再び最も傾いたときの角度を示す第2下肢最大値、ユーザの立ち上がり開始時点から第1下肢最大値が検出された時点までの第1下肢経過時間、ユーザの立ち上がり開始時点から下肢最小値が検出された時点までの第2下肢経過時間、及びユーザの立ち上がり開始時点から第2下肢最大値が検出された時点までの第3下肢経過時間は、ユーザの下肢筋力に相関がある下肢パラメータである。そのため、ユーザの下肢筋力に相関がある複数の下肢パラメータのうちの少なくとも1つの下肢パラメータを用いてユーザの下肢筋力が評価されるので、ユーザの下肢筋力を高い精度で評価することができる。
【0031】
また、上記の下肢パラメータが用いられるので、ユーザに対して5回立ち上がり動作テスト又は10m歩行動作テストのような制約のある動作テストを課さなくてもよく、かつ大がかりな装置も不要である。そのため、本構成では、ユーザの下肢筋力を容易に評価することができる。
【0032】
本開示の他の態様に係る下肢筋力評価装置は、ユーザが座っている状態から立ち上がるまでの間において、前記ユーザの左右の少なくとも一方の下肢の角度を取得する取得部と、前記下肢が第1の方向へ最初に最も傾いたときの前記角度を示す第1下肢最大値、前記下肢が前記第1の方向とは逆の第2の方向へ最も傾いたときの前記角度を示す下肢最小値、前記下肢が前記第1の方向へ再び最も傾いたときの前記角度を示す第2下肢最大値、前記ユーザの立ち上がり開始時点から前記第1下肢最大値が検出された時点までの第1下肢経過時間、前記ユーザの立ち上がり開始時点から前記下肢最小値が検出された時点までの第2下肢経過時間、及び前記ユーザの立ち上がり開始時点から前記第2下肢最大値が検出された時点までの第3下肢経過時間のうちの少なくとも1つの下肢パラメータを検出する検出部と、前記少なくとも1つの下肢パラメータを用いて前記ユーザの下肢筋力を評価する評価部と、評価結果を出力する出力部と、を備える。
【0033】
この構成によれば、下肢が第1の方向へ最初に最も傾いたときの角度を示す第1下肢最大値、下肢が第1の方向とは逆の第2の方向へ最も傾いたときの角度を示す下肢最小値、下肢が第1の方向へ再び最も傾いたときの角度を示す第2下肢最大値、ユーザの立ち上がり開始時点から第1下肢最大値が検出された時点までの第1下肢経過時間、ユーザの立ち上がり開始時点から下肢最小値が検出された時点までの第2下肢経過時間、及びユーザの立ち上がり開始時点から第2下肢最大値が検出された時点までの第3下肢経過時間は、ユーザの下肢筋力に相関がある下肢パラメータである。そのため、ユーザの下肢筋力に相関がある複数の下肢パラメータのうちの少なくとも1つの下肢パラメータを用いてユーザの下肢筋力が評価されるので、ユーザの下肢筋力を高い精度で評価することができる。
【0034】
また、上記の下肢パラメータが用いられるので、ユーザに対して5回立ち上がり動作テスト又は10m歩行動作テストのような制約のある動作テストを課さなくてもよく、かつ大がかりな装置も不要である。そのため、本構成では、ユーザの下肢筋力を容易に評価することができる。
【0035】
本開示の他の態様に係る下肢筋力評価システムは、上記に記載の下肢筋力評価装置と、前記ユーザの左右の少なくとも一方の下肢に装着され、計測したセンサデータを前記下肢筋力評価装置へ送信するセンサと、を備える。
【0036】
この構成によれば、加速度センサ又は角速度センサなどのセンサを、ユーザの左右の少なくとも一方の下肢に装着することで、ユーザの下肢筋力を容易に評価することができる。
【0037】
以下添付図面を参照しながら、本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本開示を具体化した一例であって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0038】
(実施の形態)
以下、
図1及び
図2に基づいて本実施の形態に係る下肢筋力評価システムを説明する。
【0039】
図1は、本開示の実施の形態における下肢筋力評価システムの構成を示すブロック図である。
図2は、本開示の実施の形態において、センサ装置をユーザに装着した状態を示す図である。
【0040】
本実施の形態の下肢筋力評価システムは、下肢筋力評価装置1とセンサ装置2とを備える。
【0041】
下肢筋力評価装置1は、例えば、スマートフォン又はタブレット端末等の端末機器である。
【0042】
センサ装置2は、例えば、ユーザ(被験者)3の左右の下肢の少なくとも一方に装着される。
図2に示す例では、センサ装置2は、例えば、ユーザ3の右下肢の足首に装着されている。
【0043】
センサ装置2は、検出部21と、通信部22とを備える。下肢筋力評価装置1とセンサ装置2とは、例えばBluetooth(登録商標)などの無線通信規格により互いに通信可能に接続されている。なお、下肢筋力評価装置1とセンサ装置2とは、有線通信方式により互いに通信可能に接続されてもよい。
【0044】
検出部21は、ユーザ3の体の変位を検出する。
【0045】
まず、検出部21の詳細について説明する。
【0046】
検出部21は、立ち上がり動作中のユーザ3の体動を検出する。検出部21としては、例えば、公知の姿勢センサを採用することができる。
【0047】
検出部21は、ユーザ3の体の角速度を検出して角速度信号を出力する。姿勢センサは、一般的には3軸の加速度センサ、3軸のジャイロセンサ(角速度センサ)及び3軸の地磁気センサ(角変位測定)等を備えているので、ユーザ3の体の上下左右前後方向の加速度及び回転角度を1つのセンサで計測することができる。
【0048】
検出部21は、例えば、スマートフォン又はタブレット端末等の端末機器に取り付けられた角速度センサであってもよい。検出部21は、ローデータをそのまま出力する必要はなく、例えば、オフセット又は感度を校正処理した後のデータを出力してもよい。検出部21は、センサ装置2に別途内蔵された温度センサにより測定された温度を用いて、温度補償の校正処理を行ってもよい。
【0049】
検出部21は、立ち上がり時におけるユーザ3の水平左右方向を回転軸とする角速度を検出する。
【0050】
また、検出部21は、加速度センサであってもよい。この場合、検出部21は、鉛直方向又は水平前後方向へ作用する加速度を検出する。また、検出部21は、3軸の加速度を合成した合成加速度を利用してもよい。
【0051】
なお、センサ装置2の取り付け位置は、特に限定されない。センサ装置2は、足首又は大腿部にベルト等で巻き付けて装着されることが好ましく、特に、立ち上がり中の下肢の動きを捉えることが可能な足部に装着されることが好ましい。センサ装置2は、ユーザ3の膝から足首の間に装着されることが好ましい。センサ装置2は、足首に装着される場合は、ユーザ3の一方の足の足首のみに装着されてもよい。本実施の形態では、センサ装置2は、ユーザ3の一方の足の足首の前方部分に装着される。なお、センサ装置2は、ユーザ3が身に着けている靴又は衣類(ズボン又はソックス等)に貼り付けたり、靴又は衣類の内部に組み込んだり、クリップ等で靴又は衣類に挟み込んだりすることにより、ユーザ3の体に装着してもよい。センサ装置2が足首の前方部分の位置に取り付けられた場合、外乱(立ち上がり以外の運動による変動)が少ない状態で加速度又は回転角度などが測定できる。これにより、ユーザ3の体の加速度又は回転角度を精度よく測定できるという利点が得られる。
【0052】
また、検出部21は、例えば、所定のサンプリング周波数(例えば、100Hz)で体動信号を測定する。体動を測定するサンプリング周波数は、体動の速度に追従できる周波数であれば特に限定されないが、例えば、10〜1000Hzの範囲であることが好ましい。
【0053】
通信部22は、無線通信方式又は有線通信方式により検出部21によって検出されたセンサデータを下肢筋力評価装置1へ送信する。
【0054】
下肢筋力評価装置1は、通信部11と、プロセッサ12と、メモリ13と、表示部14とを備える。
【0055】
プロセッサ12は、例えば、CPU(中央演算処理装置)であり、動作タイミング提示部121、センサデータ取得部122、パラメータ検出部123、下肢筋力評価部124及び評価結果提示部125を備える。
【0056】
メモリ13は、例えば、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリ等の各種情報を記憶可能な記憶装置である。
【0057】
動作タイミング提示部121は、被検者(ユーザ3)が立ち上がり動作を行うタイミングを提示する。動作タイミング提示部121は、ユーザ3が立ち上がり動作を開始するタイミングを表示部14に表示する。なお、動作タイミング提示部121は、スピーカから出力される音声又はブザー音で立ち上がり動作を行うタイミングを提示してもよい。また、動作タイミング提示部121は、LED(発光ダイオード)等の発光部で立ち上がり動作を行うタイミングを提示してもよい。なお、動作タイミング提示部121は、例えば、視覚により提示する機能及び聴覚により提示する機能のうちの少なくとも一方を有していてもよい。
【0058】
動作タイミング提示部121が立ち上がり動作のタイミングを提示するパターンとしては、例えば、初めに、動作タイミング提示部121は、ブザー音と同じタイミングで立ち上がるように、音声案内をユーザ3に通知する。そして、動作タイミング提示部121は、音声案内を通知してから0.5秒が経過した後、ブザー音を出力する。これにより、動作タイミング提示部121は、立ち上がり動作のタイミングを提示してもよい。なお、動作タイミング提示部121は、複数回立ち上がり動作をユーザ3に行わせる場合、ブザー音を複数回出力してもよい。その場合は、ブザー音を出力するタイミングは、予め設定される。ブザー音は、予め設定された時間間隔で出力される。具合的には、1秒〜3秒につき1回のタイミングで立ち上がる場合、0.33〜1Hzの周期の範囲内で、ブザー音を出力する時間間隔が設定されてもよい。また、動作タイミング提示部121は、座った状態から立ち上がるタイミングだけではなく、起立状態から座るタイミングも提示してもよい。
【0059】
立ち上がりの提示回数は1回でもよいが、例えば、3〜5回の複数回数であってもよい。
【0060】
通信部11は、センサ装置2によって送信されたセンサデータを受信する。通信部11は、受信したセンサデータをプロセッサ12へ出力する。センサデータを受信する方法としては、無線通信方式又は有線通信方式を適用することができる。その場合に、通信部11は、センサデータを受信することが可能な通信方式を用いて、センサデータを受信する。
【0061】
センサデータ取得部122は、ユーザ3が座っている状態から立ち上がるまでの間において、ユーザ3の左右の少なくとも一方の下肢の角度を取得する。センサデータ取得部122は、ユーザ3の左右の少なくとも一方の下肢に装着されたセンサ装置2から得られたセンサデータに基づいて角度を取得する。
【0062】
センサデータ取得部122は、検出部21からの信号を取得し、ローパスフィルタなどによるデータ処理を施してノイズを除去する。なお、ローパスフィルタのカットオフ周波数は4Hz〜20Hzが好ましい。また、検出部21が1軸角速度センサである場合、センサデータ取得部122は、1軸角速度センサからの角速度信号を時間で1次積分することで角度に変換してもよい。しかし、単純に角速度を積分しただけでは、ドリフトが発生するおそれがある。そこで、センサデータ取得部122は、角速度の積分結果に対して回帰曲線を算出し、算出した回帰曲線の値を積分結果から減算することにより、相対角度を算出してもよい。また、センサデータ取得部122は、ハイパスフィルタを用いることでドリフトを抑制してもよい。
【0063】
また、検出部21が加速度センサである場合、センサデータ取得部122は、検出した加速度を、立ち上がり時におけるユーザ3の水平左右方向を回転軸とする角度に変換してもよい。センサデータ取得部122は、加速度センサの鉛直方向又は水平前後方向へ作用する加速度を角度に変換する。
【0064】
Angle=arccos(a/g)・・・(1)
上記の式(1)において、aは加速度であり、gは重力加速度である。センサデータ取得部122は、上記の式(1)に基づき、加速度信号から角度を算出してもよい。
【0065】
なお、センサ装置2の検出部21は、検出した角速度を時間で積分することで角度に変換してもよく、センサデータ取得部122は、検出部21によって変換された角度を取得してもよい。
【0066】
パラメータ検出部123は、下肢筋力を評価するための下肢パラメータを検出する。
【0067】
図3は、本実施の形態における下肢パラメータについて説明するための図である。
図3において、縦軸は、下肢の角度を示し、横軸は、時間を示す。
図4は、本実施の形態において、ユーザの立ち上がり動作を示す図である。
【0068】
パラメータ検出部123は、下肢が第1の方向へ最初に最も傾いたときの角度を示す第1下肢最大値V1、下肢が第1の方向とは逆の第2の方向へ最も傾いたときの角度を示す下肢最小値V2、下肢が第1の方向へ再び最も傾いたときの角度を示す第2下肢最大値V3、ユーザ3の立ち上がり開始時点から第1下肢最大値V1が検出された時点までの第1下肢経過時間T1、ユーザ3の立ち上がり開始時点から下肢最小値V2が検出された時点までの第2下肢経過時間T2、及びユーザ3の立ち上がり開始時点から第2下肢最大値V3が検出された時点までの第3下肢経過時間T3のうちの少なくとも1つの下肢パラメータを検出する。
【0069】
図3及び
図4において、時刻tsは、ユーザ3の立ち上がり開始時点を示し、時刻t1は、第1下肢最大値V1が検出された時点を示し、時刻t2は、下肢最小値V2が検出された時点を示し、時刻t3は、第2下肢最大値V3が検出された時点を示し、時刻tfは、ユーザ3の立ち上がり終了時点を示す。
【0070】
ユーザ3の下肢が鉛直方向に平行である場合、下肢の角度は、0度となる。下肢が膝を中心に鉛直方向からユーザ3の前方に向かって傾いた時の角度は正の符号で表され、下肢が膝を中心に鉛直方向からユーザ3の後方に向かって傾いた時の角度は負の符号で表される。
【0071】
ここで、ユーザ3の立ち上がり動作について説明する。
【0072】
図4に示すように、ユーザ3は、椅子に座っている状態から立ち上がる。まず、立ち上がり開始時点(時刻ts)では、ユーザ3の下肢は、鉛直方向と平行となっている。このとき、下肢の角度は0度である。
【0073】
次に、時刻t1において、ユーザ3は、足首を底屈させる。これにより、ユーザ3の下肢は膝を中心に前方に傾き、第1下肢最大値V1が検出される。
【0074】
次に、時刻t2において、ユーザ3は、足首を背屈させる。これにより、ユーザ3の下肢は膝を中心に後方に傾き、下肢最小値V2が検出される。
【0075】
次に、ユーザ3は、臀部を椅子から離し、膝を伸展させ始める。
【0076】
次に、時刻t3において、ユーザ3は、膝を伸展させる。このとき、ユーザ3の下肢は膝を中心に前方に傾き、第2下肢最大値V3が検出される。
【0077】
次に、時刻tfにおいて、ユーザ3は、立ち上がり動作を終了する。このとき、ユーザ3の下肢は鉛直方向と平行となり、下肢の角度は0度となる。
【0078】
パラメータ検出部123は、センサデータ取得部122によって取得された信号に基づき、センサ装置2が装着されているユーザ3の立ち上がり角度の第1下肢最大値V1、下肢最小値V2、第2下肢最大値V3、第1下肢経過時間T1、第2下肢経過時間T2及び第3下肢経過時間T3の少なくとも1つを含む下肢パラメータを検出する。また、パラメータ検出部は、検出部21によって得られた加速度信号から変換された角度に基づいて、第1下肢最大値V1、下肢最小値V2、第2下肢最大値V3、第1下肢経過時間T1、第2下肢経過時間T2及び第3下肢経過時間T3の少なくとも1つを含む下肢パラメータを検出してもよい。
【0079】
パラメータ検出部123は、例えば、信号が閾値を超えた時点(座位状態から立ち上がりを開始した時点)を基準として、次に信号が閾値を超えた時点(起立状態)までに要した時間を立ち上がり区間として算出してもよい。また、パラメータ検出部123は、例えば、角速度及び加速度の総和が閾値を超える期間を立ち上がり区間として算出してもよい。なお、閾値は最大値の5%であってもよい。
図3において、時刻tsから時刻tfまでの期間が立ち上がり区間である。
【0080】
パラメータ検出部123は、立ち上がり区間を0〜100%の区間としたとき、立ち上がり区間の0〜50%の信号の最大値を第1下肢最大値V1として検出してもよく、立ち上がり区間の51%〜100%の信号の最大値を第2下肢最大値V3として検出してもよい。また、パラメータ検出部123は、立ち上がり区間の0〜100%の信号の最小値を下肢最小値V2として検出してもよい。さらに、パラメータ検出部123は、立ち上がり開始時点から第1下肢最大値V1が検出されるまでの時間を第1下肢経過時間T1として検出し、立ち上がり開始時点から下肢最小値V2が検出されるまでの時間を第2下肢経過時間T2として検出し、立ち上がり開始時点から第2下肢最大値V3が検出されるまでの時間を第3下肢経過時間T3として検出する。
【0081】
下肢筋力評価部124は、パラメータ検出部123によって検出された少なくとも1つの下肢パラメータを用いてユーザ3の下肢筋力を評価する。下肢筋力評価部124は、下肢筋力の評価値を目的変数とし、少なくとも1つの下肢パラメータを説明変数とする重回帰式に、検出された少なくとも1つの下肢パラメータを代入することにより、下肢筋力の評価値を算出する。下肢筋力の評価値は、下肢筋力値を体重で割った値である。
【0082】
メモリ13は、パラメータ検出部123によって検出された下肢パラメータに基づいてユーザ3の下肢筋力を数値化するための重回帰式を記憶している。この重回帰式は、予め下肢筋力値が異なる数十人の被検者に立ち上がり動作を実行させ、下肢筋力の評価値を取得し、パラメータ検出部123によって検出された少なくとも1つの下肢パラメータと、取得された下肢筋力の評価値とを用いて重回帰直線を算出することによって導出される。
【0083】
下肢筋力評価部124は、下肢筋力値を体重で割った値を下肢筋力の評価値として算出する。下肢筋力評価部124は、転倒リスクの危険性を示す値として下肢筋力の評価値を出力してもよい。その場合は、例えば、下肢筋力評価部124は、下肢筋力の評価値が0.4以下である場合は転倒の危険性が高いと評価してもよい。また、下肢筋力評価部124は、下肢筋力の評価値を0.2刻みで評価してもよい。その場合は、例えば、下肢筋力評価部124は、下肢筋力の評価値が0.4以下であれば転倒の危険性が非常に高いと評価し、下肢筋力の評価値が0.4より大きく0.6以下であれば転倒の危険性が高いと評価し、下肢筋力の評価値が0.6より大きく0.8以下であれば転倒の危険性がやや高いと評価し、下肢筋力の評価値が0.8より大きければ転倒の危険性が低いと評価してもよい。例えば、下肢筋力の評価値が0.9である場合、下肢筋力評価部124は、転倒の危険性が低いと評価する。また、下肢筋力の評価値が0.5である場合、下肢筋力評価部124は、転倒の危険性が高いと評価する。
【0084】
なお、下肢筋力評価部124は、下肢筋力値を目的変数とし、少なくとも1つの下肢パラメータを説明変数とする重回帰式に、検出された少なくとも1つの下肢パラメータを代入することにより、下肢筋力値を算出してもよい。また、下肢筋力評価部124は、下肢筋力値のみを算出してもよいし、下肢筋力の評価値のみを算出してもよいし、下肢筋力値及び下肢筋力の評価値の両方を算出してもよい。
【0085】
下肢筋力評価部124は、算出した下肢筋力値又は下肢筋力の評価値をメモリ13に記憶してもよい。また、メモリ13は、下肢筋力値又は下肢筋力の評価値に対応付けた評価メッセージを予め記憶してもよい。例えば、転倒リスクがやや高いという評価には「転倒リスクがやや高くなっています。運動を心がけましょう。」という評価メッセージが対応付けられる。また、転倒リスクが低いという評価には「転倒リスクは低いです。この調子で運動を続けて下さい。」という評価メッセージが対応付けられる。
【0086】
メモリ13は、下肢筋力評価部124によって算出された下肢筋力値及び下肢筋力の評価値の少なくとも一方を記憶してもよい。また、メモリ13は、評価メッセージを記憶してもよい。
【0087】
評価結果提示部125は、下肢筋力評価部124によって評価された評価結果を表示部14へ出力する。評価結果は、下肢筋力評価部124によって算出された下肢筋力値、下肢筋力の評価値及び評価メッセージの少なくとも1つである。
【0088】
表示部14は、評価結果提示部125から出力された下肢筋力値、下肢筋力の評価値及び評価メッセージの少なくとも1つを示す評価結果を表示する。表示部14は、例えば、液晶表示パネル又は発光素子であり、ユーザ3が画像を見やすい位置に配置される。表示部14は、例えば、腕時計型液晶ディスプレイであってもよい。これにより、ユーザ3は、腕に装着した腕時計型液晶ディスプレイを視認しながら立ち上がり動作を行うことができる。
【0089】
表示部14は、今回算出された下肢筋力の評価値と過去の下肢筋力の評価値とを比較するために、下肢筋力の評価値の推移をグラフで表示してもよい。なお、過去の下肢筋力の評価値は、メモリ13から読み出される。
【0090】
なお、下肢筋力評価装置1が視認しにくい位置、例えば、足部に装着されている場合、下肢筋力評価装置1は、表示部14に替えてスピーカを備えてもよい。スピーカは、下肢筋力評価部124による評価結果を、ブザー音又は音声により出力してもよい。例えば、スピーカは、転倒リスクが高いと評価された場合、ブザー音を出力してもよい。
【0091】
また、本実施の形態において、下肢筋力評価システムは、下肢筋力評価装置1とセンサ装置2とを備えているが、本開示は特にこれに限定されない。下肢筋力評価システムは、下肢筋力評価装置1のみを備えてもよい。この場合、下肢筋力評価装置1が、センサ装置2の検出部21を備えてもよく、下肢筋力評価装置1が直接ユーザ3の下肢に装着されてもよい。
【0092】
また、下肢筋力評価装置1とネットワークを介して通信可能に接続されたサーバが、センサデータ取得部122、パラメータ検出部123、下肢筋力評価部124及び評価結果提示部125の一部又は全部を備えてもよい。
【0093】
次に、
図5を用いて、本実施の形態における下肢筋力評価処理を説明する。
【0094】
図5は、本実施の形態において、立ち上がり動作を利用した下肢筋力評価処理を説明するためのフローチャートである。
図5に示すフローチャートは、下肢筋力評価装置1を用いた、下肢筋力の算出及び評価の手順を示している。
【0095】
被験者(ユーザ3)は、センサ装置2を足首に装着する。さらに、被験者は、センサ装置2を装着した後、センサ装置2の電源スイッチ(図示せず)をON状態にする。なお、電源スイッチがON状態になると、下肢筋力評価装置1又はセンサ装置2は、立ち上がり回数の入力を受け付けてもよい。
図5に示すフローチャートでは、立ち上がり回数は1回である。また、被験者は、下肢筋力評価装置1の電源スイッチ(図示せず)をON状態にする。
【0096】
まず、動作タイミング提示部121は、立ち上がり動作の開始タイミングを表示部14に提示する(ステップS1)。
【0097】
次に、センサデータ取得部122は、センサ装置2によって検出された加速度又は角速度を示すセンサデータを取得する(ステップS2)。このとき、センサ装置2の検出部21は、ユーザ3の下肢の加速度又は角速度を検出する。通信部22は、検出部21によって検出された加速度又は角速度をセンサデータとして下肢筋力評価装置1へ送信する。下肢筋力評価装置1の通信部11は、センサ装置2によって送信されたセンサデータを受信し、受信したセンサデータをセンサデータ取得部122へ出力する。
【0098】
センサデータ取得部122は、センサ装置2から取得したセンサデータを角度に変換する。センサデータが角速度である場合、センサデータ取得部122角速度を積分した角度に変換する。角度は、足首の底屈又は背屈で変化する水平左右方向を回転軸とする回転角度である。
【0099】
その後、被検者は、座った状態から立ち上がり、座位姿勢から起立姿勢に変化する。なお、椅子の高さは膝関節よりも低いことが望ましい。また、立ち上がり動作は、椅子に座った姿勢ではなく、床にしゃがんだ姿勢から起立姿勢に変化するまでの動作であってもよい。
【0100】
被検者が立ち上がり動作を行っている間、センサデータ取得部122は、センサ装置2からの加速度又は角速度を取得する。なお、センサデータ取得部122は、検出結果である加速度又は角速度を、所定のサンプリング時間に対応付けた離散値として取得する。
【0101】
次に、パラメータ検出部123は、立ち上がり動作が終了したか否かを判断する(ステップS3)。ここで、立ち上がり動作が終了していないと判断された場合(ステップS3でNO)、ステップS2に処理が戻る。
【0102】
一方、立ち上がり動作が終了したと判断された場合(ステップS3でYES)、パラメータ検出部123は、複数の下肢パラメータのうちの少なくとも1つの下肢パラメータを検出する(ステップS4)。複数の下肢パラメータは、下肢が第1の方向へ最初に最も傾いたときの角度を示す第1下肢最大値V1、下肢が第1の方向とは逆の第2の方向へ最も傾いたときの角度を示す下肢最小値V2、下肢が第1の方向へ再び最も傾いたときの角度を示す第2下肢最大値V3、ユーザ3の立ち上がり開始時点から第1下肢最大値V1が検出された時点までの第1下肢経過時間T1、ユーザ3の立ち上がり開始時点から下肢最小値V2が検出された時点までの第2下肢経過時間T2、及びユーザ3の立ち上がり開始時点から第2下肢最大値V3が検出された時点までの第3下肢経過時間T3である。
【0103】
パラメータ検出部123は、上記の複数の下肢パラメータを全て検出してもよいし、下肢筋力の評価に用いる下肢パラメータのみを検出してもよい。
【0104】
パラメータ検出部123は、立ち上がり区間を0〜100%の区間としたとき、足首の底屈角度及び背屈角度から、立ち上がり区間の0〜50%の角度の最大値を第1下肢最大値V1として検出し、立ち上がり区間の51%〜100%の角度の最大値を第2下肢最大値V3として検出する。また、パラメータ検出部123は、立ち上がり区間の0〜100%の角度の最小値を下肢最小値V2として検出する。さらに、パラメータ検出部123は、立ち上がり開始時点から第1下肢最大値V1が検出されるまでの時間を第1下肢経過時間T1として検出し、立ち上がり開始時点から下肢最小値が検出されるまでの時間を第2下肢経過時間T2として検出し、立ち上がり開始時点から第2下肢最大値V3が検出されるまでの時間を第3下肢経過時間T3として検出する。
【0105】
次に、下肢筋力評価部124は、パラメータ検出部123によって検出された少なくとも1つの下肢パラメータを用いてユーザ3の下肢筋力の評価値を算出する(ステップS5)。下肢筋力評価部124は、少なくとも1つの下肢パラメータを、予め構築した下肢筋力評価モデル(重回帰式)に入力することにより、下肢筋力の評価値を算出する。下肢筋力の評価値は、下肢筋力値を体重で割った値である。なお、下肢筋力評価部124は、パラメータ検出部123によって検出された少なくとも1つの下肢パラメータを用いて下肢筋力値を算出してもよい。下肢筋力評価部124は、下肢筋力値及び下肢筋力の評価値の少なくとも一方を算出する。
【0106】
次に、下肢筋力評価部124は、下肢筋力の評価値をメモリ13に記憶する(ステップS6)。なお、下肢筋力評価部124は、算出した下肢筋力値をメモリ13に記憶してもよい。下肢筋力評価部124は、算出した下肢筋力値及び下肢筋力の評価値の少なくとも一方をメモリ13に記憶する。
【0107】
次に、評価結果提示部125は、下肢筋力評価部124によって算出された下肢筋力の評価値を含む下肢筋力の評価結果を表示部14に出力する(ステップS7)。なお、評価結果提示部125は、下肢筋力の評価値だけでなく、評価値に対応付けられた評価メッセージを含む下肢筋力の評価結果を表示部14に出力してもよい。表示部14は、評価結果提示部125から出力された下肢筋力の評価結果を表示する。
【0108】
図6は、本実施の形態において表示される評価結果画面の一例を示す図である。
【0109】
表示部14は、
図6に示す評価結果画面を表示する。評価結果画面は、過去の下肢筋力の評価値と、今回の下肢筋力の評価値とを示す下肢筋力モニタ141と、評価メッセージ142とを含む。
図6の下肢筋力モニタ141では、下肢筋力の評価が1か月に1回行われ、過去6か月間の下肢筋力の評価値と、今月の下肢筋力の評価値とが表示されている。
【0110】
また、「先月よりも下肢筋力が向上しており、転倒リスクは非常に低い状態です。これからも良い状態を保つようにしてください。」という評価メッセージ142が表示されている。評価結果提示部125は、今月の下肢筋力の評価値が先月の下肢筋力の評価値よりも高く、かつ今月の下肢筋力の評価値が0.8より大きい場合に、
図6に示す評価メッセージ142をメモリ13から読み出し、表示部14へ出力する。
【0111】
なお、本実施の形態では、今回の下肢筋力の評価値とともに、過去の下肢筋力の評価値が表示されるが、本開示は特にこれに限定されず、今回の下肢筋力の評価値のみが表示されてもよい。この場合、下肢筋力評価部124は、下肢筋力の評価値をメモリ13に記憶しなくてもよい。
【0112】
以上のような処理によって、下肢筋力評価装置1は、被検者の立ち上がり動作から、被検者の下肢筋力を簡便に評価することができる。特に、下肢筋力の評価値が0.4以下である場合に転倒リスクが高まる。そのため、下肢筋力の評価結果を用いることで、下肢筋力の低下以外の転倒リスクを容易に推定することが可能である。
【0113】
そして、下肢筋力評価装置1は、上記のような比較的シンプルな構成であり、簡便に下肢筋力を評価することができるので、小規模な病院又は介護施設においても容易に導入することができる。また、高齢者でも容易に被検者となることができる。これにより、より多くの高齢者の下肢筋力の状態を把握することができるため、リハビリテーションのプランを早期に立てることができ、下肢筋力の低下に伴う骨折などを予防することが可能となる。
【0114】
上記のように、下肢が第1の方向へ最初に最も傾いたときの角度を示す第1下肢最大値、下肢が第1の方向とは逆の第2の方向へ最も傾いたときの角度を示す下肢最小値、下肢が第1の方向へ再び最も傾いたときの角度を示す第2下肢最大値、ユーザ3の立ち上がり開始時点から第1下肢最大値が検出された時点までの第1下肢経過時間、ユーザ3の立ち上がり開始時点から下肢最小値が検出された時点までの第2下肢経過時間、及びユーザ3の立ち上がり開始時点から第2下肢最大値が検出された時点までの第3下肢経過時間は、ユーザ3の下肢筋力に相関がある下肢パラメータである。そのため、ユーザ3の下肢筋力に相関がある複数の下肢パラメータのうちの少なくとも1つの下肢パラメータを用いてユーザ3の下肢筋力が評価されるので、ユーザ3の下肢筋力を高い精度で評価することができる。
【0115】
また、上記の下肢パラメータが用いられるので、ユーザ3に対して5回立ち上がり動作テスト又は10m歩行動作テストのような制約のある動作テストを課さなくてもよく、かつ大がかりな装置も不要である。そのため、本構成では、ユーザ3の下肢筋力を容易に評価することができる。
【0116】
なお、本実施の形態では、1回の立ち上がり動作が行われるが、本開示は特にこれに限定されず、複数回数の立ち上がり動作が行われてもよい。
【0117】
この場合、パラメータ検出部123は、ユーザ3が複数回数立ち上がることによって、複数の第1下肢最大値、複数の下肢最小値、複数の第2下肢最大値、複数の第1下肢経過時間、複数の第2下肢経過時間及び複数の第3下肢経過時間のうちの少なくとも1つの下肢パラメータ群を検出してもよい。そして、パラメータ検出部123は、複数の第1下肢最大値の平均、複数の下肢最小値の平均、複数の第2下肢最大値の平均、複数の第1下肢経過時間の平均、複数の第2下肢経過時間の平均、複数の第3下肢経過時間の平均、複数の第1下肢最大値の標準偏差、複数の下肢最小値の標準偏差、複数の第2下肢最大値の標準偏差、複数の第1下肢経過時間の標準偏差、複数の第2下肢経過時間の標準偏差、及び複数の第3下肢経過時間の標準偏差のうちの少なくとも1つの下肢パラメータを算出してもよい。
【0118】
図7は、本実施の形態の変形例において、複数回数の立ち上がり動作を利用した下肢筋力評価処理を説明するためのフローチャートである。
【0119】
図7に示すステップS11〜ステップS13の処理は、
図5に示すステップS1〜ステップS3の処理と同じであるので、説明を省略する。
【0120】
立ち上がり動作が終了したと判断された場合(ステップS13でYES)、パラメータ検出部123は、立ち上がり動作が所定回数行われたか否かを判断する(ステップS14)。所定回数は、例えば3回である。所定回数は、予め決められていてもよく、ユーザ3によって設定されてもよい。1回の立ち上がり動作から下肢筋力が評価される場合、被検者の測定状態によっては、不適正な測定データが取得されるおそれがある。そのため、例えば、3〜5回程度の立ち上がり動作を実行させ、取得された測定データから外れ値を排除することによって、取得された測定データの精度を向上させることができる。
【0121】
ここで、立ち上がり動作が所定回数行われていないと判断された場合(ステップS14でNO)、ステップS11に処理が戻り、立ち上がり動作の開始タイミングが提示される。
【0122】
一方、立ち上がり動作が所定回数行われたと判断された場合(ステップS14でYES)、パラメータ検出部123は、複数の下肢パラメータ群は、複数の第1下肢最大値V1、複数の下肢最小値V2、複数の第2下肢最大値V3、複数の第1下肢経過時間T1、複数の第2下肢経過時間T2及び複数の第3下肢経過時間T3のうちの少なくとも1つの下肢パラメータ群を検出する(ステップS15)。
【0123】
次に、パラメータ検出部123は、複数の第1下肢最大値の平均、複数の下肢最小値の平均、複数の第2下肢最大値の平均、複数の第1下肢経過時間の平均、複数の第2下肢経過時間の平均、複数の第3下肢経過時間の平均、複数の第1下肢最大値の標準偏差、複数の下肢最小値の標準偏差、複数の第2下肢最大値の標準偏差、複数の第1下肢経過時間の標準偏差、複数の第2下肢経過時間の標準偏差、及び複数の第3下肢経過時間の標準偏差のうちの少なくとも1つの下肢パラメータを算出する(ステップS16)。
【0124】
次に、下肢筋力評価部124は、パラメータ検出部123によって検出された少なくとも1つの下肢パラメータを用いてユーザ3の下肢筋力の評価値を算出する(ステップS17)。
【0125】
なお、
図7に示すステップS17〜ステップS19の処理は、
図5に示すステップS5〜ステップS7の処理と同じであるので、説明を省略する。
【0126】
上記のように、ユーザ3が複数回数立ち上がることによって、取得されたセンサデータから外れ値を排除することができ、取得されたセンサデータの精度を向上させることができる。
【0127】
また、本実施の形態では、ユーザ3の左下肢及び右下肢のうちの一方のみにセンサ装置2が装着されるが、本開示は特にこれに限定されず、ユーザ3の左下肢及び右下肢の両方にセンサ装置2が装着されてもよい。
【0128】
この場合、センサデータ取得部122は、ユーザ3が座っている状態から立ち上がるまでの間において、ユーザ3の左下肢及び右下肢の両方の角度を取得してもよい。パラメータ検出部123は、左下肢及び右下肢に対応する第1下肢最大値V1、左下肢及び右下肢に対応する下肢最小値V2、左下肢及び右下肢に対応する第2下肢最大値V3、左下肢及び右下肢に対応する第1下肢経過時間T1、左下肢及び右下肢に対応する第2下肢経過時間T2、及び左下肢及び右下肢に対応する第3下肢経過時間T3のうちの少なくとも1つの下肢パラメータを検出してもよい。
【0129】
さらに、パラメータ検出部123は、左下肢に対応する第1下肢最大値と右下肢に対応する第1下肢最大値との平均、左下肢に対応する下肢最小値と右下肢に対応する下肢最小値との平均、左下肢に対応する第2下肢最大値と右下肢に対応する第2下肢最大値との平均、左下肢に対応する第1下肢経過時間と右下肢に対応する第1下肢経過時間との平均、左下肢に対応する第2下肢経過時間と右下肢に対応する第2下肢経過時間との平均、及び左下肢に対応する第3下肢経過時間と右下肢に対応する第3下肢経過時間との平均のうちの少なくとも1つの下肢パラメータを算出してもよい。
【0130】
上記のように、ユーザ3が座っている状態から立ち上がるまでの間において、ユーザ3の左下肢及び右下肢の両方の動きに基づいて下肢筋力が評価されるので、ユーザ3の下肢筋力をより高い精度で評価することができる。
【0131】
続いて、下肢筋力評価モデル(重回帰式)を用いた具体例について説明する。
【0132】
下肢筋力評価モデルは、下肢筋力の評価値を目的変数とし、立ち上がり動作における少なくとも1つの下肢パラメータを説明変数とする重回帰式である。下肢筋力評価部124は、下肢筋力評価モデルに、パラメータ検出部123によって検出された少なくとも1つの下肢パラメータを入力することにより、被検者の下肢筋力の評価値を算出する。
【0133】
重回帰式における説明変数の選択方法としては、一般に、ステップワイズ法、変数減少法又は変数増加法がある。発明者らは、立ち上がり動作に基づいて検出される複数の下肢パラメータに対して、全通りの組み合わせを試すため、変数増加法を使用し、重回帰式により算出される下肢筋力の評価値と、実際の下肢筋力の評価値との相関係数を算出した。
【0134】
まず、左右の一方の下肢のみにセンサ装置2を装着したユーザ3が、1回の立ち上がり動作を行う第1の事例について説明する。
【0135】
第1の事例において、左足首にセンサ装置2を装着した被検者12名(男性7人、女性5人)がそれぞれ1回の立ち上がり動作を行った場合、下肢筋力の評価値を推定するための重回帰式は、以下の式(2)で表される。
【0136】
下肢筋力の評価値=0.73113*(第1下肢最大値)−0.43449*(下肢最小値)+0.1399*(第2下肢最大値)+1.5997*(第1下肢経過時間)−0.69112*(第3下肢経過時間)+1.063・・・(2)
式(2)に示す重回帰式では、5つの特徴量(下肢パラメータ)が選択され、この重回帰式によって下肢筋力の評価値が推定される。この場合、パラメータ検出部123は、第1下肢最大値、下肢最小値、第2下肢最大値、第1下肢経過時間及び第3下肢経過時間を検出する。下肢筋力評価部124は、式(2)に示す重回帰式に、検出された第1下肢最大値、下肢最小値、第2下肢最大値、第1下肢経過時間及び第3下肢経過時間を代入することにより、下肢筋力の評価値を算出する。
【0137】
ここで、発明者らは、上記の5つの特徴量を用いて交差検証を行った。交差検証としては、leave−one−out交差検証が採用された。leave−one−out交差検証では、12人の被検者のデータから1人の被検者のデータをテスト事例として抜き出し、残りの被検者のデータを訓練事例として検証が行われる。そして、全事例がテスト事例となるように、12回の検証が繰り返し行われた。
【0138】
図8は、本実施の形態の第1の事例において、下肢筋力の評価値の推定値と実測値との関係を示す図である。
図8において、縦軸は、下肢筋力の評価値の実測値を表し、横軸は、下肢筋力の評価値の推定値を表している。
【0139】
第1の事例において、下肢筋力の評価値の推定値と実測値との相関係数は0.6981であった。また、下肢筋力の評価値の推定値xと実測値yとの関係は、下記の式(3)で表される。
【0140】
y=0.5933x+0.3138・・・(3)
次に、左右の一方の下肢のみにセンサ装置2を装着したユーザ3が、5回の立ち上がり動作を行う第2の事例について説明する。
【0141】
第2の事例において、左足首にセンサ装置2を装着した被検者12名(男性7人、女性5人)がそれぞれ5回の立ち上がり動作を行った場合、下肢筋力の評価値を推定するための重回帰式は、以下の式(4)で表される。
【0142】
下肢筋力=0.29444*(第1下肢最大値の平均)−0.12293*(下肢最小値の平均)+1.0616*(第1下肢経過時間の平均)+5.4164*(第1下肢経過時間の標準偏差)−1.1437*(下肢最小値の標準偏差)−0.56422*(第1下肢最大値の標準偏差)+0.14301*(第2下肢最大値の標準偏差)+0.40275・・・(4)
式(4)に示す重回帰式では、7つの特徴量(下肢パラメータ)が選択され、この重回帰式によって下肢筋力の評価値が推定される。この場合、パラメータ検出部123は、第1下肢最大値、下肢最小値、第2下肢最大値及び第1下肢経過時間を検出する。そして、パラメータ検出部123は、第1下肢最大値の平均、下肢最小値の平均、第1下肢経過時間の平均、第1下肢経過時間の標準偏差、下肢最小値の標準偏差、第1下肢最大値の標準偏差、及び第2下肢最大値の標準偏差を算出する。下肢筋力評価部124は、式(4)に示す重回帰式に、算出された第1下肢最大値の平均、下肢最小値の平均、第1下肢経過時間の平均、第1下肢経過時間の標準偏差、下肢最小値の標準偏差、第1下肢最大値の標準偏差、及び第2下肢最大値の標準偏差を代入することにより、下肢筋力の評価値を算出する。
【0143】
ここで、発明者らは、上記の7つの特徴量を用いて交差検証を行った。交差検証としては、leave−one−out交差検証が採用された。
【0144】
図9は、本実施の形態の第2の事例において、下肢筋力の評価値の推定値と実測値との関係を示す図である。
図9において、縦軸は、下肢筋力の評価値の実測値を表し、横軸は、下肢筋力の評価値の推定値を表している。
【0145】
第2の事例において、下肢筋力の評価値の推定値と実測値との相関係数は0.9226であった。また、下肢筋力の評価値の推定値xと実測値yとの関係は、下記の式(5)で表される。
【0146】
y=0.9643x+0.0234・・・(5)
次に、左右の両方の下肢にセンサ装置2を装着したユーザ3が、5回の立ち上がり動作を行う第3の事例について説明する。
【0147】
第3の事例において、両足首にセンサ装置2を装着した被検者12名(男性7人、女性5人)がそれぞれ5回の立ち上がり動作を行った場合、下肢筋力の評価値を推定するための重回帰式は、以下の式(6)で表される。
【0148】
下肢筋力=−0.022756*(左足の第1下肢最大値の標準偏差)+3.3115*(左足の第1下肢経過時間の標準偏差)−1.1156*(第1下肢最大値の両足平均の標準偏差)+0.31363*(下肢最小値の両足平均の標準偏差)+0.12802*(第2下肢最大値の両足平均の標準偏差)+0.53057・・・(6)
式(6)に示す重回帰式では、5つの特徴量(下肢パラメータ)が選択され、この重回帰式によって下肢筋力の評価値が推定される。この場合、パラメータ検出部123は、左足の第1下肢最大値、右足の第1下肢最大値、左足の下肢最小値、右足の下肢最小値、左足の第2下肢最大値、右足の第2下肢最大値、及び左足の第1下肢経過時間を検出する。そして、パラメータ検出部123は、左足の第1下肢最大値の標準偏差、左足の第1下肢経過時間の標準偏差、第1下肢最大値の両足平均の標準偏差、下肢最小値の両足平均の標準偏差、及び第2下肢最大値の両足平均の標準偏差を算出する。下肢筋力評価部124は、式(6)に示す重回帰式に、算出された左足の第1下肢最大値の標準偏差、左足の第1下肢経過時間の標準偏差、第1下肢最大値の両足平均の標準偏差、下肢最小値の両足平均の標準偏差、及び第2下肢最大値の両足平均の標準偏差を代入することにより、下肢筋力の評価値を算出する。
【0149】
ここで、発明者らは、上記の5つの特徴量を用いて交差検証を行った。交差検証としては、leave−one−out交差検証が採用された。
【0150】
図10は、本実施の形態の第3の事例において、下肢筋力の評価値の推定値と実測値との関係を示す図である。
図10において、縦軸は、下肢筋力の評価値の実測値を表し、横軸は、下肢筋力の評価値の推定値を表している。
【0151】
第3の事例において、下肢筋力の評価値の推定値と実測値との相関係数は0.9349であった。また、下肢筋力の評価値の推定値xと実測値yとの関係は、下記の式(7)で表される。
【0152】
y=0.8723x+0.0858・・・(7)
なお、本実施の形態では、センサデータ取得部122は、加速度センサ又は角速度センサを含むセンサ装置2から得られたセンサデータに基づいて下肢の角度を取得しているが、本開示は特にこれに限定されず、モーションキャプチャシステムを用いて下肢の角度を取得してもよい。モーションキャプチャシステムは、光学式、磁気式、機械式及び慣性センサ式のいずれであってもよい。例えば、光学式モーションキャプチャシステムは、下肢の関節部分にマーカを貼り付けたユーザ3をカメラで撮影し、撮影した画像からマーカの位置を検出する。センサデータ取得部122は、モーションキャプチャシステムによって検出された位置データから、ユーザ3の下肢の角度を取得する。光学式モーションキャプチャシステムとしては、例えば、インターリハ株式会社製の3次元動作分析装置が利用可能である。
【0153】
重回帰式の説明変数である立ち上がり動作の特徴量は、加速度センサ又は角速度センサだけでなく、映像から骨格情報を取得するモーションキャプチャシステムから取得してもよい。また、それぞれ異なる複数の計測位置から得られた複数の特徴量が、重回帰式の説明変数として用いられてもよい。回帰分析の精度の点から、複数の特徴量を説明変数とすることが好ましい。
【0154】
また、モーションキャプチャシステムは、深度センサ及びカラーカメラを備えてもよく、映像から被検者の関節点の位置情報を自動的に抽出し、被験者の姿勢を検出してもよい。この場合、被験者は、マーカを貼り付ける必要はない。なお、このようなモーションキャプチャシステムとしては、例えば、マイクロソフト社製のKinectが利用可能である。
【0155】
モーションキャプチャシステムを用いた立ち上がり動作の計測では、位置座標から1回の立ち上がり動作における下肢の角度が抽出され、抽出された角度から立ち上がり動作の特徴量が検出されることが好ましい。
【0156】
また、モーションキャプチャシステムがKinectである場合、モーションキャプチャシステムは、立ち上がり動作中の足首の底屈角度及び背屈角度が計測可能な位置、又は立ち上がり動作中の膝の伸展角度及び屈曲角度が計測可能な位置に配置される。
【0157】
また、モーションキャプチャシステムは、足首の底屈及び背屈の角度変化を立ち上がり動作の特徴量としてもよい。また、モーションキャプチャシステムは、膝の伸展及び屈曲の角度変化を立ち上がり動作の特徴量としてもよい。
【0158】
また、センサデータ取得部122は、ユーザ3が座っている状態から立ち上がるまでの間において、ユーザ3の腰部の角度を取得してもよい。この場合、センサデータ取得部122は、ユーザ3の下肢の角度に加えて、ユーザ3の腰部の角度を取得してもよい。なお、腰部の角度は、ユーザ3の腰部に装着されたセンサ装置によって測定された角速度から算出されてもよいし、モーションキャプチャシステムによって撮影された映像から算出されてもよい。
【0159】
そして、パラメータ検出部123は、腰部が第1の方向へ最初に最も傾いたときの角度を示す第1腰部最大値、腰部が第1の方向とは逆の第2の方向へ最も傾いたときの角度を示す腰部最小値、腰部が第1の方向へ再び最も傾いたときの角度を示す第2腰部最大値、ユーザ3の立ち上がり開始時点から第1腰部最大値が検出された時点までの第1腰部経過時間、ユーザ3の立ち上がり開始時点から腰部最小値が検出された時点までの第2腰部経過時間、及びユーザ3の立ち上がり開始時点から第2腰部最大値が検出された時点までの第3腰部経過時間のうちの少なくとも1つの腰部パラメータを検出してもよい。
【0160】
そして、下肢筋力評価部124は、少なくとも1つの下肢パラメータと少なくとも1つの腰部パラメータとを用いてユーザ3の下肢筋力を評価してもよい。この場合、下肢筋力評価部124は、下肢筋力の評価値を目的変数とし、少なくとも1つの下肢パラメータ及び少なくとも1つの腰部パラメータを説明変数とする重回帰式に、検出された少なくとも1つの下肢パラメータ及び少なくとも1つの腰部パラメータを代入することにより、下肢筋力の評価値を算出してもよい。
【0161】
上記のように、ユーザ3が座っている状態から立ち上がるまでの間において、ユーザ3の腰部の動きと、ユーザ3の下肢の動きとに基づいて下肢筋力が評価されるので、ユーザ3の下肢筋力をより高い精度で評価することができる。
【0162】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0163】
本開示の実施の形態に係る装置の機能の一部又は全ては典型的には集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0164】
また、本開示の実施の形態に係る装置の機能の一部又は全てを、CPU等のプロセッサがプログラムを実行することにより実現してもよい。
【0165】
また、上記で用いた数字は、全て本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示は例示された数字に制限されない。
【0166】
また、上記フローチャートに示す各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためのものであり、同様の効果が得られる範囲で上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。