【解決手段】患者の気道入口への空気の流れの周囲空気圧に対し連続陽圧でシールされた送達のための患者インターフェース11000の製造方法は、患者の顔の人体計測データの収集を含む。患者インターフェースの使用中に、収集した人体計測データから予測した考慮が識別される。収集した人体計測データを処理して、予測した考慮に基づいて変換されたデータセットを提供する。前記変換されたデータセットは少なくとも1つのカスタマイズされた患者インターフェースコンポーネントに対応している。少なくとも1つの患者インターフェースコンポーネントは、変換されたデータセットに基づいてモデリングされる。
【背景技術】
【0003】
2.2.1 ヒト呼吸器系とその疾患
身体の呼吸器系はガス交換を促進する。鼻と口が患者の気道の入口を形成する。
【0004】
気道は一連の枝管を含み、それらは肺に深く入るにつれて狭く、短くそしておびただしくなる。肺の主要機能はガス交換であり、酸素は空気乃至静脈血に入り、二酸化炭素が運び出される。気管は左右の主気管支に分かれ、さらに分岐して最後に終末細気管支となる。気管支は誘導気道を構成し、ガス交換には関与しない。気道をさらに分割すると呼吸細気管支となり、最終的に肺胞となる。ガス交換が行われる肺の胞状の領域は、呼吸領域と呼ばれる。John B. West著「呼吸生理学」Lippincott Williams & Wilkins、9版2011年発行を参照。
【0005】
一連の呼吸器疾患が存在する。このような疾患は、例えば無呼吸、呼吸低下および過呼吸などの特定のイベントで特徴付けることができる。
【0006】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は睡眠呼吸障害(SDB)の1つで、睡眠時の上部気道の閉鎖または閉塞を含むイベントで特徴付けられる。これは異常に小さい上気道と、睡眠時の舌の領域、軟口蓋および後口咽頭壁の筋緊張の通常の喪失の組み合わせの結果である。この条件で罹患患者は典型的には30乃至120秒の間呼吸が停止し、場合によっては一晩で200乃至300回呼吸停止が起こる。昼間に過剰な眠気を生じることがたびたびあり、これは心臓血管疾患と脳損傷を起こすことがある。この症候群は特に太りすぎの中年男性に共通する障害であるが、罹患者はこの問題に気付いていないことがある。米国特許番号4,944,310(Sullivan)を参照。
【0007】
チェーン・ストークス呼吸(CSR)は睡眠呼吸障害のもう1つの形態である。CSRは患者の呼吸調整器の障害で、この場合CSRサイクルとして知られている呼吸の漸増と漸減が交互に律動的に生じる。CSRの特徴は、動脈血の脱酸素化と再酸素化が繰り返し生じる。反復低酸素症のため、CSRは有害であり得る。患者によってはCSRは睡眠中の反復覚醒に関連しており、これは重篤な睡眠障害、交感神経系活動の増悪および後負荷の増加を生じる。米国特許6,532,959(Berthon−Jones)を参照。
【0008】
肥満過呼吸症候群(OHS)は、低呼吸の既知の原因がない場合、重症の肥満と覚醒時慢性高炭酸ガス血症の組み合わせと定義される。症状には呼吸困難、起床時の頭痛と過剰な日中の眠気が含まれる。
【0009】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、共通してある特徴を有する下気道疾患の任意のグループを含む。これには空気の動きに対する抵抗の増加、呼吸の呼気相の延長および肺における正常な弾性の減少が含まれる。COPDの例は肺気腫と慢性気管支炎である。COPDは常時喫煙(第一危険因子)、職業的暴露、大気汚染および遺伝因子で発症する。症状には、労作時呼吸困難、慢性咳および痰が出ることが含まれる。
【0010】
神経筋疾患(NMD)は、内在筋肉病変を経て直接的に、または神経病変を経て間接的に筋肉の機能を損なう多くの疾病と病気を包含する広義語である。NMD患者の一部は、歩行の喪失にいたる進行性筋障害が特徴で、車椅子に束縛され、嚥下障害があり、呼吸筋力低下を生じ最後には呼吸不全による死に至る。神経筋疾患は急速進行性と緩徐進行性に分けられる:(i)急速進行性疾患は数か月にわたる筋肉の機能障害があり、数年以内に死に至るのが特徴である(例:筋萎縮性側索硬化症(ALS)と10代のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD));(ii)可変または緩徐進行性疾患:数年にわたって増悪し、平均寿命を少し短縮するのが特徴である(例:肢帯、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーおよび筋強直性ジストロフィー)。NMDにおける呼吸不全の症候には、全身衰弱の進行、嚥下障害、労作時および安静時呼吸困難、疲労、眠気、起床時の頭痛、集中することの困難および気分転換の困難が含まれる。
【0011】
胸壁疾患は、呼吸筋と胸郭間の不十分な結合にいたる胸郭変形のグループである。これらの疾患は、通常拘束性障害によって特徴づけられ、長期高炭酸ガス性呼吸不全の可能性がある。脊柱側弯症および/または後側弯症は、重篤な呼吸不全を発症することがある。呼吸不全の症候には、労作時呼吸困難、末梢浮腫、起座呼吸、反復肺感染症、起床時の頭痛、疲労、睡眠の質不良および食欲不振が含まれる。
【0012】
このような状態を改善するために一連の治療が使用されてきた。さらに別の面では、健常な個人はシステムと装置の利点を生かして、呼吸疾患の発症を防止することができる。しかしこれらには多くの欠点がある。
【0013】
2.2.2 治療
鼻持続的気道陽圧(CPAP)療法は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の治療に用いられてきた。この仮説は、持続的気道陽圧が空気的副子として作用し、軟口蓋と舌を前方に押して、後口咽頭壁乃至離せば、上気道の閉塞を防止できると言うことである。鼻CPAP療法によるOSAの治療は自由意思によるもので、患者は使用する装置に不快である、使用が困難、高価または審美的に魅力がないこと1つ、またはそれ以上が判れば、この治療を使用しないことが選択できる。
【0014】
非侵襲的換気(NIV)は、患者が十分に呼吸しおよび/または適切な酸素レベルを体内に維持することを支援するために、呼吸作業の一部またはすべてを行って、上気道を通して患者に換気補助を提供する。換気補助は患者のインターフェースを経由して提供される。NIVはCSR,OHS,COPD,MDおよび胸壁疾患の治療に使用されてきた。いくつかの形態では、これらの治療の快適さと有効性が改善できる。
【0015】
侵襲的換気(IV)は、もはや自分で効果的に呼吸できない患者に換気補助を提供し、気管切開チューブを使用して提供される。いくつかの形態では、これらの治療の快適さと有効性が改善できる。
【0016】
2.2.3 診断と治療システム
これらの治療は、治療システムまたは装置によって提供される。システムと装置は、それを使用しないで状態を診断することにも使用できる。
【0017】
治療システムは、呼吸圧力治療装置(RPT装置)、空気回路、加湿器、患者インターフェースおよびデータ管理を含む。
【0018】
2.2.3.1 患者インターフェース
患者インターフェースは、例えば空気の流れを提供することによって、呼吸装置をそのユーザにインターフェースすることに使用ができる。空気の流れは、鼻および/または口へのマスク、口へのチューブまたは患者の気管への気管開口チューブを経由して提供される。適用する治療法次第で、患者インターフェースはシールを形成してよい。例えば患者の顔の部分、治療が効果をもたらすように周囲圧力と十分に相違した圧力で、例えば周囲圧力に関して約10cmH
2Oの陽圧で、ガスを送出する。酸素の送出のようなほかの治療の形態では、約10cmH
2Oの陽圧で、ガスの気道への供給ができるシールを患者のインターフェースに含めなくてよい。
【0019】
患者インターフェースのデザインにはいろいろな難問がある。顔面は複雑な3次元の形状をしている。鼻の大きさと形は個人間でかなり異なる。頭部には骨、軟骨と軟組織があり、顔面の異なる領域は機械的な力に対して異なる反応をする。顎または下顎は頭蓋のほかの骨に関連して動くことがある。頭全体が呼吸治療の間に動くことがある。
【0020】
これらの難問のために、マスクによっては閉塞性である、審美的に好ましくない、コストが高い、装着が不十分、使用困難の1つまたはそれ以上の問題に悩み、長期間使用すると摩耗しまたは患者がシステムに不慣れだと不愉快である。例えば、飛行士専用にデザインされたマスク、個人の保護装置(例えば、フィルターマスク)の一部としてデザインされたマスク、SCUBAマスク、または麻酔薬投与のためのマスクは本来の適用には耐えるが、長期間、例えば数時間着用するのは好ましくないほど不愉快である。この不快感は患者の治療のコンプライアンスの低下に至ることがある。睡眠中にマスクを着用しなければならない場合は特にそうである。
【0021】
患者が治療に従う限り、鼻CPAP治療はある呼吸器疾患の治療に特に効果的である。マスクが不愉快で、使用困難であれば、患者は治療に従わないかもしれない。患者は自分のマスクを定期的に洗浄するよう、しばしば推奨されているが、マスクの洗浄が困難であれば(例えば、組立または分解が困難)、患者は自分のマスクを洗浄しないかもしれず、これは患者のコンプライアンスに影響する。
【0022】
その他の適用(例えば、飛行士)のためのマスクを睡眠呼吸障害に使用するのは適切ではないかもしれないが、睡眠呼吸障害に使用するようにデザインされたマスクはその他の適用に適しているかもしれない。
【0023】
これらの理由により、睡眠中の鼻CPAPの送出のための患者インターフェースは独特な分野である。
【0024】
2.2.3.1.1 シール形成部
患者インターフェースはシール形成部を含む(本明細書ではシーリング要素とも言う)。これは患者の顔面と直接接触するので、シール形成部の形状と形態は患者インターフェースの有効性と快適さに直接影響を与えることができる。
【0025】
患者インターフェースは、シール形成部分が使用中の顔面の何処に当たるかそのデザインの意図によって、一部特徴付けられる。患者インターフェースの1つの形態において、シール形成部は左と右のそれぞれの鼻孔に当たる2つの準部分を持つことができる。患者インターフェースの1形態において、シール形成部分は使用中に両方の鼻孔を囲む単一のエレメントであってよい。このような単一のエレメントとは、例えば顔面の上唇領域と鼻梁領域を覆うようにデザインしてよい。患者インターフェースの1形態において、シール形成部分は例えば顔面の下唇領域上にシールを形成するなど、使用中の口の領域を囲むエレメントになってよい。患者インターフェースの1形態において、シール形成部分は使用中の両方の鼻孔と口の部分を囲む単一のエレメントになってよい。これらの患者インターフェースの異なるタイプは、それらの製造者が付けた種々の名称で知られており、鼻マスク、顔全体マスク、鼻枕、鼻噴霧および口−鼻マスクが含まれる。
【0026】
患者の顔の1領域で効果的なシール形成部分は、患者の顔の形状、構造、ばらつきおよび敏感な部分が異なるので、別の領域には適していないことがある。例えば、患者の額を覆う水中メガネのシールを患者の鼻に使用するには適当ではない。
【0027】
さまざまな異なる顔の形状および大きさに適し、快適で効果的な1つのデザインのために、大量生産用にあるシール形成部をデザインすることができる。患者の顔の形状と大量生産された患者のインターフェースのシール形成部の間で不整合ができるまで、1つまたは両方を適合させてシールを形成しなければならない。
【0028】
シール形成部分の1つのタイプは、患者インターフェースの周辺附近に伸び、シール形成部分が患者の顔に係合しようとしており、力が患者インターフェースに加えられた時に患者の顔に抗してシールするように意図される。シール形成部分は、空気または液体で充満されたクッション、またはゴムのようなエラストマーでできた弾力性のあるシールエレメントの成形または形成面を含むことができる。このタイプのシール形成では、適合が適切でなければ、シール形成部分と顔の間にギャップがあり、シールを形成するために顔に抗して患者インターフェースに追加の力を加える必要がある。
【0029】
シール形成部のもう1つタイプは、マスクの周辺近辺に位置した薄い材料でできたフラップシールを含み、マスク内に陽圧がかかると患者の顔に抗してセルフシーリングを行う。シール形成部分の以前のタイプのように、顔面とマスク間の適合が良好ではないと、シールを形成するのに追加の力が必要になるか、またはマスク乃至故意ではない漏れが生じる。さらに、シール形成部分の形状が患者のそれに適合しない場合、使用中にしわが生じたり曲がったりすることがあり、故意ではない漏れが発生する。
【0030】
シール形成部分のもう1つのタイプは、例えば鼻孔への挿入のような摺合せエレメントを含むことができる。しかし患者によってはこれらを不快に感じる。
【0031】
シール形成部分のもう1つの形態は、接着剤を使ってシールを達成する。顔面に接着剤を絶えず適用しこれを除去するのが不便だと感じる患者もいる。
【0032】
ResMed Limitedに譲渡された以下の特許出願に、さまざまな患者インターフェース・シール形成部の技術が開示されている:WO1998/004,310、WO2006/074,513、WO2010/135,785。
【0033】
鼻枕の1形態がPuritan Bennettが製造するAdam Circuitに見出される。もう1つの鼻枕または鼻噴霧はPuritan−Bennett Corporationに譲渡された米国特4,782,832(Trimbleほか)の題目である。
【0034】
ResMed Limitedは、鼻枕を組み込んだ以下の製品を製造した:SWIFT(登録商標)鼻枕マスク、SWIFT
TMII鼻枕マスク、SWIFT
TMLT鼻枕マスク、SWIFT
TM FX鼻枕マスクおよびLIBERTY(登録商標)フルフェース・マスク。RedMedに譲渡された以下の特許出願に、鼻枕マスクが記述されている。国際特許出願WO2004/073,778(とりわけRedMed SWIFT
TM鼻枕の特徴を記載)、米国特許出願2009/0044808(とりわけRedMed SWIFT
TMLT鼻枕の特徴を記載);国際特許出願WO2005/063,328とWO2006/130,903(とりわけResMed LIBERTY
TMフルフェース・マスクの特徴を記載);国際特許出願WO 2009/052,560(とりわけResMed SWIFT
TMFX鼻枕の特徴を記載)。
【0035】
2.2.3.1.2 位置決めと安定化
陽圧空気治療に使用する患者インターフェースのシール形成部は、シールを崩壊しようとする空気圧に対応する力の影響を受ける。このようにシール形成位置を決め、それを顔の適当な部分とシーリングの関係として維持するために種々な技法が用いられてきた。
【0036】
1つの技術に接着剤の使用がある。例えば米国特許出願US2010/0000534を参照。しかし接着剤の使用は患者によっては不快である。
【0037】
もう1つの技術として、1つまたはそれ以上のひもと安定化装着帯の使用がある。このような装着帯の多くは、1つまたはそれ以上の不適合、かさばる、不快および使用がぎこちないの問題に悩まされる。
【0038】
2.2.3.1.3 ベント技術
患者インターフェースシステムのいくつかの形態は、吐き出した二酸化炭素の洗浄のためにベントを含むことがある。このベントは、患者インターフェース内部空間乃至、例えばプレナムチャンバー、患者インターフェースの外部、例えば大気へのガスの流れを作ることができる。ベントはオリフィスを含み、マスクの使用中にガスはこのオリフィスを通る。このようなベントの多くは騒々しい。そのほかのベントは使用中に閉塞し、洗浄が不十分である。あるベントは、騒音または空気流の集束のせいで、患者1000のベッドパートナー1100の睡眠を邪魔している。
【0039】
ResMed Limitedは多数の改良型マスクベント技術を開発した。国際特許出願WO1998/034,665;国際特許出願WO2000/078,381;米国特許6,581,594;米国特許出願US2009/0050156;米国特許出願2009/0044808を参照。
【0040】
以前のマスクの騒音の表(ISO17510−2:2007,1mにおける圧力10cmH
2O)
【表1】
【0041】
(*試料1つのみ、10cmH
2OにおけるCPAPモードにおけるISO3744に規定の試験方法で測定)種々の対象物の音圧レベルを以下に列記
【表2】
【0042】
2.2.3.1.4 呼吸圧力治療(PRT)装置
空気圧発生器は、例えば工業規模の換気システムのように一連の適用において知られている。しかし医療の空気圧発生器には、医療装置の信頼性、サイズおよび重量の要件のようなより汎用的な空気圧発生器では満足できない特定の要件がある。さらに医療用にデザインされた装置でも、1つまたはそれ以上の快適さ、騒音、使い易さ、効率、サイズ、重量、製造可能性、コストおよび信頼性の1つまたはそれ以上に関する欠点に悩まされる。
【0043】
あるRPT装置の特殊要件の1例は音響ノイズである。
【0044】
以前のRPT装置の騒音出力の表(試料1つのみ、10cmH
2OにおけるCPAPモードにおけるISO3744に規定の試験方法で測定。
【表3】
【0045】
睡眠呼吸障害の治療に用いられる1つの既知のRPTは、ResMedが製造するS9 Sleep Therapy Systemである。もう1つのRPT装置の実施例は人工呼吸器である。成人および小児用人工呼吸器のResMed Stellar(登録商標)シリーズのような人工呼吸器は、NMD、OHSおよびCOPD(ただしこれらに限定されない)のような多くの疾患を治療しているさまざまな患者のために侵襲および非侵襲非依存人工呼吸器のサポートが提供できる。
【0046】
ResMed Elisee(登録商標)150人工呼吸器とResMed VSIII(登録商標)人工呼吸器は、成人および小児患者の多数の疾患の治療に適した侵襲および非侵襲依存人工呼吸器を提供することができる。これらの人工呼吸器は、単一または二重肢回路の付いた容積式換気モードと気圧式換気モードを提供する。RPT装置は、典型的にはモータ駆動の送風機または圧縮ガスリザーバのような圧力発生器乃至成り、患者の気道に空気の流れを供給するように構成される。場合によっては、空気流を陽圧で患者の気道に供給することができる。RPT装置の出口は、空気回路を経由して上記の患者のインターフェースに接続される。
【0047】
2.2.3.1.5 加湿器
加湿なしに空気流を送出すると、気道が乾燥することがある。RPT装置および患者インターフェースと共に加湿器を使用すると、加湿されたガスが生成され、これが鼻粘膜の乾燥を最小限に抑え、患者の気道の快適さを増す。加えて、涼しい気候では、暖かい空気が患者インターフェースの中およびその周りの顔面に広く当たると、冷たい空気よりずっと快適である。一連の人工加湿装置が知られているが、これらは医療用加湿器の特殊要件を満たさないかもしれない。
【0048】
医療用加湿器は、空気の流れの湿度および/または温度を周囲空気に対して、要求があれば、典型的には患者が睡眠中または休息中に(例えば病院において)上げる時に使用される。ベッドの横に置く医療用加湿器は小さくてよい。医療用加湿器は、患者の周囲を加湿および/または加熱しないで、患者に送出された空気の流れだけを加湿および/または加熱するように構成できている。部屋をベースとしたシステム、例えば、サウナ、空調装置、蒸発冷却器も患者が呼吸する空気に加湿できるが、これらのシステムは部屋全体を加湿および/または加熱することになり、居住者に不快をもたらすことがある。さらに医療用加湿器は、産業用加湿器より厳しい安全の制約がある。
【0049】
多くの医療用加湿器が知られているが、これらは1つまたはそれ以上の欠点に悩まされることがある。ある医療用加湿器は不適切な加湿を行い、あるものは患者が使用するのに困難または不便である。
【0050】
2.2.3.1.6 下顎再配置
下顎再配置装置(MRD)または下顎前進装置(MAD)は睡眠時無呼吸およびいびきの治療オプションの1つである。これは歯科医または他のサプライヤー乃至入手できる調整可能な口腔歯列矯正器具で、睡眠中に下顎(下顎)を前方位置に保持する。MRDは取り外しができる装置で、患者は就寝前に自分の口に挿入し、睡眠の後で取り外す。このようにMRDはいつも装着するようにデザインされていない。MRDはオーダーメイドまたは標準形で製造され、患者の歯にフィットするようにデザインされた咬合印象部を含む。下顎にこの機械的突起は、舌の後部のスペースに拡張し、咽頭壁に張力を加えて気道の閉塞を低減し、口蓋の振動を減らす。
【0051】
ある実施例では、下顎前進装置は上顎または上顎の歯に係合するかまたはフィットする上スプリントと、上顎または下顎の歯に係合するかまたはフィットする下スプリントを含むことができる。上下スプリントは一対の連接棒を経由して共に横方向に互いに接続される。連接棒の対は上スプリントと下スプリントに対称的に固定される。
【0052】
このようなデザインにおいて、連接棒の長さは、MRDが患者の口にある時、下顎が前進位置に保持されるように選択される。連接棒の長さを調整して下顎の突起のレベルが変更できる。歯科医が下顎の突起のレベルを決め、これが連接棒の長さを決めることになる。
【0053】
あるMRDsは下顎を上顎に関して前方に押すように構築され、一方ResMed Narval CC(登録商標) MRDのようなその他のMADsは下顎を前方位置に保持するようにデザインされる。この装置も歯と顎関節(TMJ)の副作用を低減するかまたは最小限に抑える。このように、1つまたはそれ以上の歯の任意の動きを最小限にするかまたは防止するように構成される。
【0054】
2.2.3.1.7 モニタリングシステム
睡眠ポリグラフ計(PSG)は、心肺疾患の診断と予後診断のための従来のシステムである。PSGは典型的には人体に15乃至20の接触センサーを付けて、脳波記録(EEG)、心電図(ECG)、電気眼球図記録(EOG)などの種々の人体信号を記録する。これらは臨床背景における通常の適用には適しているが、このようなシステムは複雑で、潜在的に高価および/または患者が自宅で就寝する時に不快でまたは現実的ではない。
【0055】
製品またはシステムをデザインする場合、設計者には無限の選択が提供される。デザインの基準はしばしば矛盾しており、あるデザインを選択すると所定のものとははるかに離れているかまたはこれは避けられない。さらに、ある態様の快適さと効果は、1つまたはそれ以上のパラメータの僅かの微妙な変更に対して非常に繊細である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本技術をさらに詳細に説明する前に、本技術は本明細書に記載された変わることのある特定の実施例に限定されないことを理解されたい。またこの開示で使用されている専門用語は、本明細書中で議論される特定の実施例のみを記述するのが目的であり、限定する意図のないことを理解すべきである。
【0073】
5.1 治療システム
1つの形態において、本技術は呼吸器疾患を治療する器具または装置乃至成る。器具および装置は、空気のような加圧された呼吸ガスを、空気回路1600を経由して患者インターフェース3000へ、そして患者1000に供給するRPT装置を含む。
【0074】
図1Aは, RPT装置1500から陽圧の空気の供給を受ける、鼻枕の形態の患者インターフェース3000を着用した患者1000を含むシステムを示す。RPT装置からの空気は加湿器1700の中で加湿され、空気回路1600を通って患者1000供給される。ベッドパートナー1100も示されている。
【0075】
図1Bは、RPT装置1500からの陽圧の空気の供給を受ける、鼻マスクの形態の患者インターフェース3000を着用した患者1000を含むシステムを示す。RPT装置からの空気は、加湿器1700の中で加湿され、空気回路1600を通って患者1000に供給される。
【0076】
図1Cは、RPT装置1500からの陽圧の空気の供給を受ける、フルフェース・マスクの形態の患者インターフェース3000を着用した患者1000を含むシステムを示す。RPT装置からの空気は、加湿器1700の中で加湿され、空気回路1600を通って患者1000に供給される。
【0077】
1形態において本技術は、患者1000の気道入口に陽圧を適用するステップを含む呼吸障害を治療する方法を含む。
【0078】
本技術のある実施例において、陽圧の空気が1つまたはそれ以上の鼻孔を経由して患者の鼻腔に供給される。
【0079】
本技術のある実施例において、口呼吸が制限、限定され、または阻まれる。
【0080】
5.2 呼吸システムと顔の解剖学
図2Aは鼻腔と口腔、喉頭、声帯、食道、気管、気管支、肺、肺胞嚢、心臓および横隔膜を含むヒトの呼吸器系統の概観を示す。
【0081】
図2Bは、鼻腔、鼻骨、外側鼻軟骨、大鼻翼軟骨、小鼻、上唇、下唇、喉頭、硬口蓋、軟口蓋、中咽頭、舌、喉頭蓋、声帯ひだ、食道および気管を含むヒト上気道の概観を示す。
【0082】
図2Cは上唇、上赤唇、下赤唇、下唇、口の幅、エンドカンチオン、鼻翼、ホウレイ線およびケイリオンを含む識別された体表解剖学のいくつかの特徴のある顔の正面図である。さらに上方向、下方向、半径方向内側および半径方向外側も示されている。
【0083】
図2Dは、眉間、セリオン、プロナザーレ、鼻下点、上唇、下唇、スプラメントン、鼻堤、鼻翼クレストポイント、上耳底点、下耳底点を含む体表解剖学のいくつかの特徴を示した頭部の側面図である。また上方向と下方向および前方と後方の方向も示されている。
【0084】
図2Eは、頭部のさらなる側面図である。フランクフォート水平と鼻唇角も示されている。前頭面も示されている。
【0085】
図2Fは、鼻唇溝、下唇、上赤唇、鼻孔、下鼻点、耳小柱、プロナザーレ、鼻孔の主軸と矢状面を含む識別された、いくつかの特徴を示した鼻の底面図である。
【0086】
図2Gは、鼻の表面の特徴の側面図である。
【0087】
図2Hは、外側軟骨、隔壁軟骨、大きい鼻翼軟骨、小さい鼻翼軟骨、種子骨軟骨、鼻骨、上皮、脂肪組織、上顎の前頭突起と線維脂肪組織を含む鼻の皮下構造を示す。
【0088】
図2Iは、矢状面から約数ミリの鼻の内側解剖を示し、とりわけ大鼻翼軟骨の隔壁軟骨と内側脚が示されている。
【0089】
図2Jは、前頭鼻、鼻骨と頬骨を含む頭部の骨の正面図である。鼻甲介が上顎と下顎として示されている。
【0090】
図2Kは、いくつかの筋肉と共に頭部の表面の輪郭の側面図を示す。次の骨が示されている:前頭骨、ちょう形骨、鼻骨、頬骨、上顎、下顎、頭骨頭頂部、側頭と後頭部骨。オトガイ隆起が示されている。次の筋肉が示されている:顎二腹筋、咬筋、胸鎖乳突筋および僧帽筋。
【0092】
5.3 患者インターフェース
図3Aは、本技術の1形態による鼻マスクの形態の患者インターフェースを示す。本技術の1態様による非侵襲型患者インターフェース3000は以下の機能特徴を含む:自己形成構造3100(シーリングエレメントとも言う)、プレナムチャンバー3200、位置決定および安定化構造3300および空気回路1600へ接続のための接続ポート3600の1形態。いくつかの形態において、機能特徴は1つまたはそれ以上の物理的コンポーネントによって提供できる。いくつかの形態において、1つの物理的コンポーネントが1つまたはそれ以上の機能特徴を提供できる。使用中は、シール形成構造3100が患者の気道入口を囲むように配置され、気道に陽圧の空気が供給される。
【0093】
5.3.1 シール形成構造3100
本技術の1形態において、シール形成構造3100はシール形成面を提供し、さらにクッション機能を提供できる。
【0094】
本技術によるシール形成構造3100は、シリコンのような柔らかくて、柔軟性があり弾力性のある材料で構築できる。
【0095】
1つの形態において、非侵襲患者インターフェース3000のシール形成部は、一対の鼻噴霧または鼻枕を含み、それぞれの鼻噴霧および鼻枕は、患者の鼻のそれぞれの鼻孔とシールを形成するように構築、配置される。
【0096】
本技術の態様による鼻枕は下記を含む:戴頭円錐、少なくともその一部が患者の鼻の下側の底面にシールを形成する、脚、戴頭円錐の底面の柔軟な部分と戴頭円錐を脚に接続する。さらに、本技術の鼻枕が接続される構造は、脚の基部に隣接した柔軟な領域を含む。柔軟な領域は一致、作用して自在継手構造の役目をし、戴頭円錐と鼻枕が接続されている構造の変位と角度の両方の相対運動に対応する。例えば、戴頭円錐は、脚が接続されている構造に向けて軸方向に変位させることができる。
【0097】
1つの形態において非侵襲シール形成部3000は、使用中に患者の顔の上唇(これがlip superiorである)上にシールを形成するシール形成部を含む。
【0098】
1つの形態において、非侵襲患者インターフェース3000は、使用中に患者の顔の顎の部分にシールを形成するシール形成部を含む。
【0099】
5.3.2 プレナムチャンバー3200
好ましくはプレナムチャンバー3200は、使用中にシールが形成される領域における平均的なヒトの顔面の表面のでこぼこに補完的になるように形作られる周辺を有している。使用中は、プレナムチャンバー3200の周縁エッジは、顔面の隣接する表面に近接するよう位置決定される。顔との実際の接触はシール形成構造3100によって行われる。好ましくはシール形成構造3100の使用中はプレナムチャンバー3200の周辺全体に伸びることができる。
【0100】
5.3.3 位置決め安定化装置3300
好ましくは本技術の患者インターフェース3000のシール形成部3100は、位置決め安定化構造3300によって使用中のシーリング位置に保持され、通常ヘッドギアと言う。
【0101】
5.3.4 ベント3400
1形態において、患者インターフェース3000は吐き出した二酸化炭素を洗浄するように接続されかつ配置されたベント3400を含む。
【0102】
本技術によるベント3400の1つの形態は、例えば約20から約80または約40から約60または約45から約55の複数の穴を含む。場合によってはベント3400はプレナムチャンバー3200の中に位置している。
【0103】
5.3.5 額支持
1形態において、患者インターフェース3000は額支持3500を含む。
【0104】
5.3.6 分離構造(複数)
患者インターフェース3000の1形態は、少なくとも1つの分離構造、例えばスイベル3510またはボールとソケット3520を含む。
【0105】
5.3.7 接続ポート3600
接続ポート3600で空気回路1600への接続ができる。
【0106】
5.3.8 抗呼吸停止弁
1形態において、患者インターフェース3000は抗呼吸停止弁3800を含む。
【0107】
5.3.9 ポート(複数)
本技術の1形態において患者インターフェース3000は、プレナムチャンバー3200内の容積にアクセスできる1つまたはそれ以上のポート(複数)を含む。この形態の1つにおいて臨床医は酸素を補充できる。1形態において、プレナムチャンバー3200内のガスの特性、例えば圧力を直接測定できる。
【0108】
5.4 RPT装置
本技術の1態様によるRPT装置40000は、機械的および空気的コンポーネント41000、電気的コンポーネント42000から成り、1つまたはそれ以上のアルゴリズム43000を実行するように構成されている。RPT装置は、2つの部分に形成された、上部40120と下部40140,外部ハウジング40100を有する。さらに外部ハウジング40100は1つまたはそれ以上のパネル(複数)40150を含むことができる。RPT装置40000は、RPT装置40000の1つまたはそれ以上の内部コンポーネントを支持するシャーシ40160を含んでよい。RPT装置40000はハンドル40180を含んでよい。
【0109】
RPT装置40000の空気路は、入口空気フィルター41120、入り口マフラー41220、陽圧で空気を供給できる圧力発生器41400(例えば送風機41420)および出口マフラー41240と圧力センサー42720および流量センサー42740のような1つまたはそれ以上の変換器42700のような1つまたはそれ以上の空気路アイテムを含んでよい。
【0110】
1つまたはそれ以上の空気路アイテムは、空気ブロック40200と称する取外し可能な単一の構造内に位置付けできる。空気ブロック40200は外部ハウジング40100内に位置付けできる。1形態において、空気ブロック40200はシャーシ40160で支持されるかまたはその一部を形成する。
【0111】
RPT装置40000は、電源42100、1つまたはそれ以上の入力装置42200、中央コントローラ42300、治療装置コントローラ42400、圧力発生器41400、1つまたはそれ以上の保護回路42500、メモリー42600、変換器42700、データ通信インターフェース42800および1つまたはそれ以上の出力装置42900から成ることができる。電気コンポーネント42000は単一のプリント基板ユニット(PCBA)42020上に置くことができる。代案として、RPT装置40000は1つ以上のPCBA 42020を含んでよい。
【0112】
5.4.1 RPT装置の機械的および空気的コンポーネント
RPT装置は、1つまたはそれ以上の下記のコンポーネントを一体ユニットの中に含むことができる。代案の形態で、1つまたはそれ以上の次のコンポーネントが、それぞれ別のユニットとして位置することができる。
【0113】
5.4.1.1 空気フィルター(複数)
本技術の1形態によるRPT装置は、空気フィルター41100または複数の空気フィルター41100を含むことができる。
【0114】
1つの形態において、入口空気フィルター41120は、圧力発生器41400の上流の空気路の先頭に位置している。
図3Cを参照。
【0115】
1つの形態において、例えば抗菌性フィルターのような出口空気フィルター41140は空気ブロックの出口40200と患者インターフェース3000の間に位置している。
図3Cを参照。
【0116】
5.4.1.2 マフラー(複数)
本技術の1形態として、入口マフラー41220は圧力発生器41400の上流の空気路に位置している。
図3Cを参照。
【0117】
本技術の1形態として、出口マフラー41240は圧力発生器41400と患者インターフェース3000の間の空気路に位置している。
図3Cを参照。
【0118】
5.4.1.3 圧力発生器41400
本技術の1形態として、陽圧の流れを生成する、または供給する圧力発生器41400は制御可能な送風機41420である。例えば送風機41420は、ボリュートの中に収めた一つまたはそれ以上のインペラーを有するブラシレスDCモータ41440を含む。送風機は例えば約120L/分の陽圧の空気を、約4cmH
2O乃至約20cmH
2Oの範囲またはそのほかの形態で約30cmH
2Oまでの範囲で吐出できる。送風機は、その開示をここに参考のため包含する下記の任意の1つの特許、または特許出願に記載されている送風機であってよい:米国特許番号7,866,944;米国特許番号8,638,014;米国特許番号8,636,479;および国際特許出願番号WO 2013/020167。
【0119】
圧力発生器41400は、治療装置コントローラ42400の制御下にある。
【0120】
その他の形態において、圧力発生器41400はピストン駆動のポンプ、高圧源(例えば、圧縮空気リザーバ)に接続された圧力調整器またはベローズであってよい。
【0121】
5.4.1.4 変換器(複数)
変換器はRPT装置の内部でも外部でもよい。外部変換器は例えば空気回路に置かれるまたは患者インターフェースのような空気回路の一部を形成する。外部変換器はデータをRPT装置に送信または移送するドップラーレーダの動きセンサーのような非接触センサーの形態であってよい。
【0122】
本技術の1形態において、1つまたはそれ以上の変換器42700が圧力発生器41400の上流および/または下流に位置している。1つまたはそれ以上の変換器42700が、流量、空気路中のそのポイントにおける圧力または温度のような特性を測定するように構築されかつ配置される。
【0123】
本技術の1形態において、1つまたはそれ以上の変換器42700を患者インターフェース3000の近位に置くことができる。
【0124】
1形態において、変換器42700からの信号は、ローパス、ハイパスまたはバンドパス・フィルタリングなどによってフィルターにかけられる。
【0125】
5.4.1.4.1 流量変換器
本技術による流量変換器42740は、例えばSENSIRIONのSDP600シリーズ差圧変換器のような、差圧変換器に基づいたものとすることができる。
【0126】
1形態において、流量変換器42740からの合計流量Qtのような流量を表す信号は、中央コントローラ42300が受信する。
【0127】
5.4.1.4.2 圧力変換器42720
本技術による圧力変換器42720は、空気路と流体接続となるよう配置される。適当な圧力変換器の例は、HONEYWELL ASDXシリーズのセンサーである。代案の適切な圧力変換器は、GENERAL ELECTRICのNPAシリーズのセンサーである。
【0128】
1形態において、圧力変換器42720からの信号を中央コントローラ42300が受信する。
【0129】
5.4.1.4.3 モータ速度変換器
本技術の1形態において、モータ41440および/または送風機41420の回転速度を決定するのにモータ速度変換器42760が使用される。モータ速度変換器42760からのモータ速度信号は、治療装置コントローラ42400に提供できる。モータ速度変換器42760は、例えばホール効果センサーのような速度センサーであってよい。
【0130】
5.4.1.5 抗スピルバック弁
本技術の1形態において、抗スピルバック弁が加湿器50000と空気ブロック40200の間に位置している。この抗スピルバック弁は、水が加湿器50000から上流に流れるリスク、例えばモータ41440へ、を低減するよう構築されかつ配置される。
【0131】
5.4.1.6 空気回路
本技術の態様による空気回路41700は、空気の流れが例えば空気ブロック40200と患者インターフェース3000のような2つのコンポーネント間を使用中に行き来できるように構築されかつ配置される。
【0132】
具体的には、空気回路41700は空気ブロックの出口と患者インターフェースと流体接続としてよい。空気回路は、空気吐出チューブと称することができる。場合によっては、吸入と呼気のための回路の別の肢があってよい。そのほかの場合には、単一の肢が使用される。
【0133】
ある形態での空気回路41700は、例えば空気の温度を維持または上げるために、空気回路中の空気を加熱するように構成された1つまたはそれ以上の加熱エレメントを含むことができる。加熱エレメントは、加熱された有線回路の形態であってよく、温度センサーのような1つまたはそれ以上の変換器を含むことができる。1形態において、加熱された有線回路は、空気回路41700の軸の周りにらせん状に巻くことができる。加熱エレメントは、中央コントローラ42300または加湿器コントローラのようなコントローラと相互通信できる。加熱された有線回路を含む空気回路41700の1例が米国特許出願US/2011/0023874に記載されており、その全開示を参照により本明細書に包含する。
【0134】
5.4.1.7 酸素補給
本技術の1形態において、補充酸素41800が例えば空気ブロック40200の上流、空気回路41700へおよび/または患者インターフェース3000へなど、空気通路中の1つまたはそれ以上のポイントに補充される。
【0135】
5.4.2 RPT装置の電気コンポーネント
5.4.2.1 電源
電源42100は、RPT装置40000の外部ハウジング40100の中または外に置くことができる。
【0136】
本技術の1形態において、電源42100はRPT装置40000にのみ電気を提供する。本技術のもう1つの形態において、電源42100はRPT装置40000と加湿器50000の両方に電気を提供する。
【0137】
5.4.2.2 入力装置
本技術の1形態において、RPT装置40000は作業者が装置と交流できるように、ボタン、スイッチまたはダイアルの形態の1つまたはそれ以上の入力装置42200を含む。ボタン、スイッチまたはダイアルは物理的装置またはタッチスクリーンからアクセスできるソフトウエア装置であってよい。1つの形態において、ボタン、スイッチまたはダイアルはハウジング40100に物理的に接続するかまたはもう1つの形態では、中央コントローラ42300と電気的接続にあるレシーバーとの無線通信であってよい。
【0138】
1つの形態において、入力装置42200は作業者が値および/またはメニューオプションを選択できるように構築されかつ配置される。
【0139】
5.4.2.3 中央コントローラ
本技術の1形態において中央コントローラ42300は、RPT装置40000を制御するのに適当な1つまたは複数のプロセッサーである。
【0140】
適当なプロセッサーには、x86 INTELプロセッサー、MICROELECTRONICのマイクロコントローラSTM32シリーズのようなARM HoldingsのARM(登録商標)Cortex(登録商標)−Mプロセッサーに基づいたプロセッサーが含まれる。本技術のある代案の形態として、ST MICROELECTRONICSのSTR9シリーズマイクロコントローラのような32ビットRISC CPU、またはTEXAS INSTRUMENTSが製造するマイクロコントローラのMSP430ファミリーのプロセッサーのような16ビットRISC CPUも含まれる。
【0141】
本技術の1形態において、中央コントローラ42300は専用の電子回路である。
【0142】
1形態において、中央コントローラ42300は特定用途向け集積回路である。もう1つの形態において、中央コントローラ42300は離散的な電子コンポーネントを含む。
【0143】
中央コントローラ42300は、1つまたはそれ以上の変換器42700そして1つまたはそれ以上の入力装置42200からの入力信号(複数)を受信するように構成できる。
【0144】
中央コントローラ42300は、出力信号(複数)を、1つまたはそれ以上の出力装置42900、治療装置コントローラ42400、データ通信インターフェース42800および加湿器コントローラに提供するように構成できる。
【0145】
本技術のいくつかの形態において、中央コントローラ42300は、コンピュータプログラムとして表され、メモリー42600のような持続性コンピュータ可読記憶媒体に保存される1つまたはそれ以上のアルゴリズム43000のような、本明細書に記載の1つまたはそれ以上の方法論を組み込むように構成される。本技術のいくつかの形態において、中央コントローラ42300はRPT装置40000と統合することができる。しかし本技術のいくつかの形態において、いくつかの方法論は遠隔に位置した装置によって実行できる。例えば遠隔に位置した装置は、人工呼吸器の制御設定を決定し、本明細書に記載の任意のセンサーから保存されたデータを分析することによって呼吸関連のイベントを検出できる。
【0146】
5.4.2.4 時計
RPT装置40000は、中央コントローラ42300に接続された時計42320を含むことができる。
【0147】
5.4.2.5 治療装置コントローラ
本技術の1形態において、治療装置コントローラ42400は、中央コントローラ42300が実行するアルゴリズム43000の一部を形成する制御モジュール43300である。
【0148】
本技術の1形態において、治療装置コントローラ42400は専用のモータ制御の集積回路である。例えば1形態において、ONSEMIが製造しているMC33035ブラシレスDCモータコントローラが使用される。
【0149】
5.4.2.6 保護回路
本技術による1つまたはそれ以上の保護回路42500は、電気保護回路、温度および/または圧力安全回路を含むことができる。
【0150】
5.4.2.7 メモリー
本技術の1形態により、RPT装置40000はメモリー42600、例えば非揮発性メモリーを含む。いくつかの形態において、メモリー42600はバッテリー駆動のスタティックRAMを含むことができる。いくつかの形態では、メモリー42600は揮発性RAMを含むことができる。
【0151】
メモリー42600はPCBA42020上に置いてよい。メモリー42600は、EEPROMまたはNANDフラッシュの形態とすることができる。
【0152】
追加でまたは代案として、RPT装置40000は、例えばSecure Digital(SD)標準で作ったメモリーカードのような取り外し形態のメモリー42600を含む。
【0153】
本技術の1つの形態において、メモリー42600は、1つまたはそれ以上のアルゴリズム43000のような、本明細書に記載の1つまたはそれ以上の方法論を表現するコンピュータプログラムのインストラクションが搭載された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体として働く。
【0154】
5.4.2.8 データ通信システム
本技術の1形態において、データ通信インターフェース42800が提供され、中央コントローラ42300に接続される。データ通信インターフェース42800は遠隔外部通信ネットワーク4282に接続可能であるおよび/またはローカルの外部通信ネットワーク4284に接続可能である。遠隔外部通信ネットワーク4282は遠隔外部装置4286に接続可能である。ローカル外部通信ネットワーク4284はローカルの外部装置4288に接続可能である。
【0155】
1つの形態において、データ通信インターフェース42800は中央コントローラ42300の一部である。もう1つの形態において、データ通信インターフェース42800は、中央コントローラ42300とは別で、集積回路またはプロセッサーを含むことができる。
【0156】
1つの形態において、遠隔外部通信ネットワーク4282はインターネットである。データ通信インターフェース42800は有線接続(例えば、イーサネット(登録商標)経由または光ファイバー)またはインターネットに接続する無線プロトコル(例えば、CDMA、GSM(登録商標)、LTE)であってよい。
【0157】
1つの形態において、ローカル外部通信ネットワーク4284はBluetooth(登録商標)または消費者赤外プロトコルのような1つまたはそれ以上の通信標準を利用する。
【0158】
1つの形態において、遠隔外部装置4286は1つ以上のコンピュータ、例えばネットワーク・コンピュータのクラスターである。1つの形態において、遠隔外部装置4286は、物理的コンピュータと言うよりむしろ仮想コンピュータであってよい。いずれの場合でも、このような遠隔外部装置4286には臨床医のような適切に権限を与えられた人がアクセスできる。
【0159】
ローカル外部装置4288は、パーソナルコンピュータ、携帯電話、タブレットまたは遠隔制御であってよい。
【0160】
5.4.2.9 オプションのディスプレイ、警報を含む出力装置
本技術による出力装置42900は、視覚、オーディオおよび触覚ユニットの一つまたはそれ以上の形態をとることができる。視覚ディスプレイは液晶表示装置(LCD)または発光ダイオード(LED)ディスプレイであってよい。
【0161】
5.4.2.9.1 ディスプレイ・ドライバー
ディスプレイ・ドライバー4292は入力においてディスプレイ4294に表示する文字、記号または映像を受信し、それらをコマンドに変換してディスプレイ4294にこれらの文字、記号または映像を表示させる。
【0162】
5.4.2.9.2 ディスプレイ
ディスプレイ4294は、ディスプレイ・ドライバー4292から受信したコマンドに対応して文字、記号または映像を視覚的に表示するように設定される。例えば、ディスプレイ4294は8セグメント表示であってよく、この場合ディスプレイ・ドライバー4292は例えば数字「0」のような文字または記号のそれぞれを8つの論理信号に変換し、8つのそれぞれのセグメントが特定の文字または記号を表示するように活性化するかどうかを指示する。
【0163】
5.4.3 PRT装置アルゴリズム
5.4.3.1 事前処理モジュール
本技術の1形態による事前処理モジュール4310は、入力として例えば流量変換器42740または圧力変換器42720のような変換器42700から信号を受信し、1つまたはそれ以上のプロセス・ステップを実施して、もう1つのモジュール、例えば治療エンジンモジュール43200、への入力として使用される1つまたはそれ以上の出力値を計算する。
【0164】
本技術の1形態において、出力値はインターフェースまたはマスク圧力Pm、呼吸流量Qrおよび漏れ流量Qlを含む。
【0165】
本技術のいろいろな形態において、事前処理モジュール4310は下記のアルゴリズムの1つまたはそれ以上を含む:圧力補償4312、ベント流量4314、漏れ流量4316および呼吸流量4318。
【0166】
5.4.3.1.1 圧力補償
本技術の1形態において、圧力補償アルゴリズム4312は入力として、空気ブロックの出口の近位にある空気路における圧力を示す信号を受信する。圧力補償アルゴリズム4312は空気回路41700を通る時の圧力低下を推測し、出力として患者インターフェース3000における推定圧力Pmを出力する。
【0167】
5.4.3.1.2 ベント流量の推定
本技術の1形態において、ベント流量計算アルゴリズム4314は入力として、患者インターフェース3000における推定圧力、Pm、を受信し、患者インターフェース3000におけるベント3400から空気のベント流量、Qv、を推定する。
【0168】
5.4.3.1.3 漏れ流量の推定
本技術の1形態において、漏れ流量アルゴリズム4316は入力として合計流量、Qt、およびベント流量、Qv、を受信し、出力として漏れの推定を供給する。すなわち合計流量Qtとベント流量Qvの差の平均を、例えば約10秒のようないくつかの呼吸サイクルを含めるのに十分に長い期間に対して計算した漏れ流量。
【0169】
1形態において、漏れ流量アルゴリズム4316は入力として全流量Qt、ベント流量Qv、および患者インターフェース3000における推定圧力Pmを受信し、漏れコンダクタンスを計算し、漏れ流量Qlが漏れコンダクタンスと圧力Pmの関数であると決めて、出力として漏れ流量Qlを出力する。漏れコンダクタンスは、全流量Qtとベント流量Qvの差に等しいローパスフィルターを通した非ベント流量の指数およびローパスフィルターを通した圧力Pmの平方根として計算され、ここにローパスフィルターの時定数値はいくつかの呼吸サイクルを含めるのに十分に長い、例えば10秒、ものとする。漏れ流量Qlは漏れコンダクタンスと圧力Pmの関数の積として計算できる。
【0170】
5.4.3.1.4 呼吸流量の推定
本技術の1形態において、呼吸流量アルゴリズム4318は入力として全流量Qt、ベント流量Qvおよび漏れ流量Qlを受信し、ベント流量Qvおよび漏れ流量Qlを全流量Qtから差し引いて、患者への空気の呼吸流量Qrを推定する。
【0171】
5.4.3.2 治療エンジンモジュール
本技術の1形態において、治療エンジンモジュールは入力として患者インターフェース3000における1つまたはそれ以上の圧力Pmおよび患者の空気の呼吸流量Qrを受信し、出力として1つまたはそれ以上の治療パラメータを提供する。
【0172】
本技術の1形態において、治療パラメータは治療圧力Ptである。
【0173】
本技術の1形態において、治療パラメータは1つまたはそれ以上の圧力サポートのレベルおよび目標の換気である。
【0174】
いろいろな形態において、治療エンジンモジュール432000は1つまたはそれ以上、以下のアルゴリズムを含む:位相決定43210、波形決定43220、換気決定43230、吸気流制限決定43240、無呼吸/過呼吸決定43250、いびき決定43260、気道開通性決定43270、目標換気決定43280および治療パラメータ決定43290。
【0175】
5.4.3.2.1 位相決定
本技術の1形態において、RPT装置40000は位相を決定しない。
【0176】
本技術の1形態において、位相決定アルゴリズム43210は入力として呼吸流量Qrを示す信号を受信し、出力として患者1000の現在の呼吸サイクルの位相Φを出力する。
【0177】
いくつかの形態において、離散的位相決定として知られている位相出力Φは離散変数である。離散的位相決定の1つの実装は、吸気または呼気のいずれかの値をもつ双方向値位相出力Φを提供する。例えば、自発的吸気と呼気の始まりを検出すると、それぞれ0と0.5の回転の値で表される。トリガーポイントとサイクルポイントは、位相が呼気から吸気へ、および吸気から呼気へそれぞれ変化する瞬間であるから、「トリガー」と「サイクル」を行うPRT装置40000は離散的位相決定を効果的に行う。2価位相決定の1つの実装において、呼吸流量Qrが正の閾値を超える値を有している時、位相出力Φは0の離散値を持つと決定され(それによりPRT装置40000をトリガーし)、呼吸流量Qrが負の閾値よりさらに負の値を有している時、0.5回転の離散値を持つと決定される(それによりPRT装置40000をサイクルする)。
【0178】
離散位相決定のもう1つの実装は、吸気、中間吸気中止および呼気の値を持った3価位相出力Φを提供する。
【0179】
連続位相決定として知られているほかの形態では、位相出力Φは例えば0から1へ回転または0から2π半径のような連続変数である。時間に関して連続して値のある位相(回転)の変化率は、1秒当たり呼吸における自発的呼吸数が等しい。連続位相決定を行うRPT装置40000は、連続位相がそれぞれ0と0.5回転に達した時、トリガーしサイクルする。連続位相決定の1実装において、位相Φの連続値は呼吸流量Qrのファジー理論分析を使用して決定される。この実装で決定された位相の連続値はしばしば「ファジー位相」と呼ばれる。ファジー位相決定アルゴリズム4321の1実装において、呼吸流量Qrに下記のルールが適用される。
【0180】
1. もし呼吸流量がゼロで急速に増加していれば、その位相は0回転である。
2. もし呼吸流量が十分に正で着実なら、その位相は0.25回転である。
3. もし呼吸流量がゼロで急速に低下していれば、その位相は0.5回転である。
4. もし呼吸流量が十分に負で着実なら、その位相は0.75回転である。
5. もし呼吸流量がゼロで着実で、呼吸流量の5秒ローパスフィルターを通った絶対値が大きければ、その位相は0.9回転である。
6. もし呼吸流量が正で、位相が呼気であれば、その位相は0回転である。
7. もし呼吸流量が負で位相が吸気であれば、その位相は0.5回転である。
8. もし呼吸流量の5秒ローパス通過絶対値が大きいと、その位相は患者の呼吸数に等しい着実な率で増加しており、20秒の時定数でローパスフィルターを通過する。
【0181】
それぞれのルールの出力は、その位相がルールの結果であり、その大きさが、そこまでのルールが、真実であるファジーの範囲であるベクトルとして表される。呼吸流量が「大きい」、「着実」などであるファジーの範囲は、適切なメンバーシップ関数で決定される。ベクトルとして表されるルールの結果は、質量中心をとるなどのいくつかの関数で組み合わされる。このような組み合わせにおいて、ルールは等しく評価されるまたは異なって評価される。
【0182】
呼吸流量Qrとは別の連続位相決定のもう1つの実装において、Φは以前のトリガー瞬間から経過した吸入時間Tiの半分、または0.5回転プラス以前のサイクル瞬間から経過した吸入時間Teの半分(いずれかより最近のもの)として決定される。
【0183】
5.4.3.2.2 波形の決定
本技術の1形態において、治療パラメータ決定アルゴリズム43290は患者の呼吸サイクルを通じてほぼ一定の治療圧力を提供する。
【0184】
本技術のその他の形態において、治療パラメータ決定アルゴリズム43290は、圧力発生器41400を制御して、波形テンプレートに従って患者の呼吸サイクルを通じて変動する治療圧力Ptを提供する。
【0185】
本技術の1形態において、波形決定アルゴリズム43220は、位相決定アルゴリズム43210によって提供される位相値Φのドメイン上で[0,1]の範囲の値を有する波形連プレート記号Π(Φ)を提供し、治療パラメータ決定アルゴリズム43290で使用する。
【0186】
1形態において、離散または連続値位相のいずれかに適切な、波形テンプレートΠ(Φ)は方形波テンプレートで、0.5回転(含む)までの位相の値に対し値1を有し、0.5回転以上の位相の値には値0となる。1形態において、連続値位相に適切な、波形テンプレートΠ(Φ)は2つの滑らかな曲面の部分を有し、即ち滑らかな曲面(例えば、二乗余弦)は0.5回転までの位相の値に対して0から1から立ち上がり、滑らかに湾曲して(例えば指数関数的に)、0.5回転以上の位相の値に対して1から0に減衰する。
【0187】
本技術のいくつかの形態において、波形決定アルゴリズム43220は、波形テンプレートライブラリーの中からRPT装置の設定に依存して波形テンプレートΠ(Φ)を選択する。その他の形態において、波形決定アルゴリズム43220は、患者1000の現在の状態に依存した1つまたはそれ以上のパラメータ(例えば、指数関数的に湾曲する部分の時定数)を使用して、包括的な波形テンプレートから波形テンプレートΠ(Φ)を例示する。
【0188】
所定の波形テンプレートΠ(Φ)は、位相値Φの関数として値Πのルックアップテーブルとして提供される。このアプローチは、位相決定アルゴリズム43210が吸入に対して0そして呼気に対して0.5のような位相の離散値を返すときに特に適している。このアプローチは、位相決定アルゴリズム43210が連続値位相Φを返す時にも使用できる。
【0189】
5.4.3.2.3 換気の決定
本技術の1形態において、換気決定アルゴリズム43230は呼吸流量Qrの入力を受信し、現在の患者の換気、ベントを示す程度を決定する。
【0190】
いくつかの実装において、換気決定アルゴリズム43230は、患者の実際の換気の推定である換気ベントの程度を決定する。このような実装の1つは呼吸流量Qrの絶対値の半分をとることで、オプションでコーナー周波数が0.11Hzの2次ベッセルローパスフィルターのようなローパスフィルターを通す。
【0191】
その他の実装において、換気決定アルゴリズム43230は実際の患者の換気に大ざっぱに比例する換気ベントの程度を決定する。このような実装の1つは、サイクルの吸気部分にわたるピーク呼吸流量Qpeakを推定する。これと呼吸流量Qrのサンプリングを含む多くのほかの方法は、流量の波形が大きく変動しないのであれば換気に大ざっぱに比例する尺度を生成する(ここに2つの呼吸の形状は時間内に正規化され、振幅は似ている)。いくつかの簡単な例は、中央値が正の呼吸流量、呼吸流量の絶対値の中央値および流量の標準偏差を含む。正の係数を使用した呼吸流量の絶対値の任意次数の統計の任意の線形結合および正と負の両方の係数を使用したものでも換気にほぼ比例する。もう1つの例は、吸気部分の中間のK部分(時間による)における呼吸流量の平均で、ここに0<K<1である。もし流量の形状が一定であれば、換気に、正確に比例する任意の多数の尺度がある。
【0192】
5.4.3.2.4 吸気量制限の決定
本技術の1形態において、中央コントローラ42300は吸気流制限の検出のために1つまたはそれ以上のアルゴリズム43240を実行する。
【0193】
1形態において、アルゴリズム43240は入力として呼吸流量信号Qrを受信し、出力として呼吸の吸気部分が示す吸気流の制限の範囲を提供する。
【0194】
本技術の1形態において、それぞれの呼吸の吸気部分はゼロ交差検出器で識別される。時間におけるポイントを表す多数の均等に離間されたポイント(例えば、65)が、それぞれの呼吸に対して吸気流リアルタイム曲線に沿って補間器によって補間される。ポイントで描かれた曲線は、スケーラーによって目盛の付いた単位長さ(継続期間/時期)と単位面積を有し、呼吸数と深さの変化の影響を除去する。目盛付の呼吸は次いでコンパレータにおいて、
図3Iに示す吸気部分に似た、通常の閉塞していない呼吸を示す事前に保存されたテンプレートと比較される。このテンプレートから任意の時間だけ明記された閾値より逸脱した(典型的には1スケール範囲)呼吸、即ちテストエレメントで決められる咳、ため息、嚥下およびしゃっくりによるもの、は拒否される。拒否されなかったデータについて、最初のこのような目盛付のポイントの移動平均が中央コントローラ42300によって、いくつか先行するイベントについて計算される。これは第2のこのようなポイントおよびそれ以降に対して同じ吸気イベントについて繰り返される。このように中央コントローラ42300によって例えば65の目盛付のデータポイントが生成され、先行するいくつかの吸気イベントの、例えばイベント3つ、移動平均が示される。(例えば、65の)ポイントの連続して更新された移動平均を以降「目盛付の流量」と称し、Qs(t)で指定される。代案として、単一の吸気イベントは移動平均であるよりむしろ利用可能である。
【0195】
目盛付の流量から、部分閉塞の決定に関する2つの形状係数を計算できる。
【0196】
形状係数1は、中間(例えば、32)の目盛付の流量ポイントの全体平均は(例えば、65)目盛付の流量ポイントの平均に対する比率である。この比率は1を僅か超えていれば、呼吸は通常と考えられる。この比率が1またはそれ以下であれば、呼吸は閉塞していると考えられる。約1.17の比率は部分的閉塞と閉塞なしの間の閾値と考えられ、典型的な患者における適切な酸素供給のメンテナンスができる閉塞の程度と見なされる。
【0197】
形状係数2はユニットスケール流量からRMS偏差として計算され、(例えば32の)中間ポイントとなる。約0.2ユニットのRMS偏差は正常と考えられる。RMSのゼロは完全に流れ制限のある呼吸と考えられる。RMS偏差がゼロに近くなると、呼吸はより流れ制限されていると考えられる。
【0198】
形状係数1と2はどちらかの一方を使用するかまたは組み合わせて使用する。本技術のその他の形態において、サンプルポイントの数、呼吸数および中間ポイントの数は上記と異なることがある。さらに、閾値の値は記述されたもの以外とすることができる。
【0199】
5.4.3.2.5 無呼吸と呼吸低下の決定
本技術の1形態において、中央コントローラ42300は1つまたはそれ以上のアルゴリズム43250を実行して無呼吸および/または呼吸低下の存在を決定する。
【0200】
1つまたはそれ以上のアルゴリズム43250は入力として呼吸流量信号Qrを受信し、出力として無呼吸または呼吸低下が検出されたことを示すフラッグを出力する。
【0201】
1形態において、呼吸流量Qrの機能が流量の閾値以下に所定の時間低下した時、無呼吸が検出されたと言う。この機能はピーク流量、比較的短期間の平均およびピーク流量の中間の流量、たとえばRMS流量を決定することができる。流量の閾値は、流量の相対的に長期の測定である。
【0202】
1形態において、呼吸流量Qrの機能が所定の期間第2の流量閾値以下になった時呼吸低下が検出されたと言う。この機能はピーク流量、比較的短期間の平均流量または比較的短期間の平均およびピーク流量の中間の流量、例えばRMS流量を決定できる。第2の流量の閾値は、流量の比較的長期の測定である。第2の流量の閾値は、無呼吸の検出に使用される流量の閾値より大きい。
【0203】
5.4.3.2.6 いびきの決定
本技術の1形態において、中央コントローラ42300はいびきの検出のために1つまたはそれ以上のアルゴリズム43260を実行する。
【0204】
1形態において、いびきアルゴリズム43260は入力として呼吸流量信号Qrを受信し、出力としていびきの存在程度の計量を提供する。
【0205】
アルゴリズム43260は、範囲が30から300Hzの流量信号の強度を決定するステップを含む。さらにアルゴリズム43260は暗騒音、例えば送風機からのシステムにおける空気流の音、を低減するために呼吸流量信号Qrをフィルターを通すステップを含む。
【0206】
5.4.3.2.7 気道開通性の決定
本技術の1形態において、中央コントローラ42300は1つまたはそれ以上のアルゴリズム43270を実行して気道開通性の決定を行う。
【0207】
1形態において、気道開通性アルゴリズム43270は入力として呼吸流量信号Qrを受信し、約0.75Hzから約3Hzの周波数範囲における信号の強さを決定する。この周波数範囲におけるピークの存在は気道確保を示すと考える。ピークがないのは気道の閉塞と考える。
【0208】
1形態において、その中でピークを探す周波数範囲は、治療圧力Ptにおける小さな強制振動である。1実装において、強制振動は振幅が約1cmH
20の周波数2Hzである。
【0209】
1形態において、気道開通性アルゴリズム43270は入力として呼吸量量信号Qrを受信し、心臓性の信号があるかどうかを決定する。心臓性信号がなければ、閉塞した気道の兆候と考える。
【0210】
5.4.3.2.8 目標換気の決定
本技術の1形態において、中央コントローラ42300は入力として現在の換気、Vent、の測定値を受信し、1つまたはそれ以上のアルゴリズム43280を実行して換気の測定値に対する目標値Vtgtを決定する。
【0211】
本技術のいくつかの形態において、目標換気決定アルゴリズム4328はなく、目標値Vtgtは例えば、PRT装置40000の構成時にハード・コーディングによって、または入力装置42200を通した手入力によって事前に決められる。
【0212】
適応サーボ換気(ASV)のような本技術のそのほかの形態において、目標換気決定アルゴリズム43280は患者の典型的な最近の換気を示す値Vtypから目標値Vtgtを計算する。
【0213】
適応サーボ換気のいくつかの形態において、目標換気Vtgtは典型的な最近の換気Vtyp以下でなく、その高い部分として計算される。このような形態の高い部分の範囲は(80%,100%)または(85%,95%)または(87%,92%)にある。
【0214】
適応サーボ換気のいくつかの形態において、目標換気Vtgtは複数の典型的な最近の換気Vtypより僅かに大きく計算される。
【0215】
典型的な最近の換気Vtypは、現在の換気Ventの測定の分布が、いくつかの所定のタイムスケールにわたって、複数の時間事例にわたって、その周りにクラスターする傾向にある値である。すなわち現在の履歴にわたる現在の換気の測定値の中心傾向の測定値である。目標換気決定アルゴリズム4328の1実装において、最近の履歴は数分のオーダーであるが、いずれの場合でもチェーン・ストークス増大および衰退サイクルのタイムスケールより長くなければならない。目標換気決定アルゴリズム43280は、現在の換気Ventの測定値から典型的な最近の換気Vtypを決定するのに、中心傾向のいろいろな既知の測定値から任意の測定値が使用できる。このような測定値の1つは、現在の換気Ventの測定値のローパスフィルターの出力で、時定数は100秒に等しい。
【0216】
5.4.3.2.9 治療パラメータの決定
本技術のいくつかの形態において、中央コントローラ42300は1つまたはそれ以上のアルゴリズム43290を実行して、治療エンジンモジュール43200における1つまたはそれ以上のアルゴリズムから戻された値を使って、1つまたはそれ以上の治療パラメータを決定する。
【0217】
本技術の1形態において、治療パラメータは瞬時治療圧力Ptである。この形態の1実装において、治療パラメータ決定アルゴリズム43290は次式によって治療圧力Ptを決定する。
Pt = AΠ(Φ)+ P
0 (1)
どこに:
Aは圧力サポートを示す。
Π(Φ)は位相の現在値Φにおける(範囲が0から1の)波形テンプレート値で、そして
P0はベース圧力である。
【0218】
式(1)を用いて治療圧力Ptを決定することによって、治療パラメータ決定アルゴリズム43290は患者1000の自発的呼吸努力に同期させて治療圧力Ptを振動させる。すなわち上記の典型的な波形テンプレートΠ(Φ)に基づいて、治療パラメータ決定アルゴリズム43290は吸気の開始または吸気中に治療圧力Ptを増加させ、呼気の開始または呼気中に治療圧力Ptを減少させる。(非負の)圧力サポートAは振動の振幅である。
【0219】
波形決定アルゴリズム43220が波形テンプレートΠ(Φ)をルックアップテーブルとして提供すると、治療パラメータ決定アルゴリズム43290は、最寄りのルックアップテーブルを位相決定アルゴリズム4321が返した位相の現在の(Φ)値に設置して、または位相の現在の(Φ)値にまたがる2つの入力間の補間によって式(1)を適用する。
【0220】
圧力サポートAの値とベース圧力P0は、選択した圧力治療モードに応じて下記の要領で治療パラメータ決定アルゴリズム43290によって設定できる。
【0221】
5.4.3.3 治療制御モジュール
本技術の1態様による治療制御モジュール43300は、治療エンジンモジュール43200の治療パラメータ決定アルゴリズム43290から入力として治療パラメータを受信し、圧力発生器41400を制御して治療パラメータに従って空気の流れを吐出する。
【0222】
本技術の1形態において、治療パラメータは治療圧力Ptであり、治療制御モジュール43300は圧力発生器41400を制御して、患者インターフェース3000におけるマスク圧力Pmが治療圧力Ptに等しい空気の流れを吐出する。
【0223】
5.4.3.4 故障条件の検出
本技術の1形態において、中央コントローラ42300は故障条件検出の1つまたはそれ以上の方法を実行する。1つまたはそれ以上の方法で検出された故障条件は少なくとも下記の1つを含む:
停電異常(電源がないまたは不十分)。
変換器故障検出。
コンポーネントの存在の検出に失敗。
運転パラメータが推奨範囲外にある(例えば、圧力、流量、温度、PaO
2)。
検出できるアラーム信号を生成するテストアラームの故障。
故障条件を検出すると、対応するアルゴリズムが下記の1つまたはそれ以上で故障の存在を信号で伝える。
可聴、視覚および/または動的(例えば、振動)アラームの開始。
外部装置にメッセージを送信。
インシデントのロギング。
【0224】
5.5 加湿器
5.5.1 加湿器の概要
本技術の1形態において、患者に送達される空気またはガスの絶対湿度を周囲空気に対して変更するために(
図3Gに示すような)加湿器50000が提供される。典型的に加湿器50000は、空気の流れが患者の気道に送達される前に(周囲空気と比較して)絶対湿度を上げ、温度を上げるために使用される。
【0225】
加湿器50000は加湿器リザーバ、空気の流れを取り入れる加湿器入口および加湿された空気の流れを吐出する加湿器出口を含む。いくつかの形態では加湿器リザーバの入口と出口はそれぞれ加湿器入口と加湿器出口であってよい。加湿器50000は、加湿器リザーバを取り付けるように適合され、加熱エレメントを含む加湿器ベースをさらに含むことができる。
【0226】
5.5.2 加湿器の機械的コンポーネント
5.5.2.1 水リザーバ
1つの配置によれば、加湿器50000は空気の流れを加湿するために蒸発させる液体(例えば水)のある容量を保持し、または保有するように構成された水リザーバを含むことができる。水リザーバは水の所定の最大容量を保持するように構成され、例えば少なくとも一晩の睡眠のような呼吸治療セッションの間、適切な加湿を提供する。典型的にリザーバは、数百ミリリットル、例えば300ミリリットル(ml)、325ml、350mlまたは400mlの水を保持するように構成されている。そのほかの形態の加湿器50000は、建物の水道システムのような外部の水源から水の供給を受けるように構成できている。
【0227】
1つの態様によれば水リザーバは、RPT装置40000からの空気の流れがそこを通るときに湿気を加えるように構成できている。1つの態様において、水リザーバは空気の流れがリザーバの中の水と接触している時、そこを通って曲がりくねった流路を通過するのを助長するように構成できる。
【0228】
1つの形態によれば、リザーバを加湿器50000から、例えば横方向に取り外すことができる。
【0229】
リザーバは、その通常位置、作動方向からの移動および/または回転させる時、任意の開口および/またはそのサブコンポーネントを通って液体の流出が生じないように構成できている。加湿器50000で加湿する空気の流れは、典型的には加圧されているので、リザーバは漏れおよび/または流の障害物を通して空気圧が低下しないよう構成することができる。
【0230】
5.5.2.2 伝導部分
1つの配置によればリザーバは、加熱エレメント52400からリザーバ51100の中の多量の水への熱の効果的な伝導ができるように構成された伝導部分51200を含む。1形態において、伝導部分51200はプレート形状とできるが、その他の形状も適している。伝導部分51200のすべておよび一部は、アルミニウム(例えば、1mm、1.5mm、2.5mmまたは3mmのような約2mm厚さ)、その他の伝導金属またはあるプラスチックのような熱的に伝導性の材料で作ることができる。いくつかの場合には、適切な形状により伝導的でない材料で達成できる。
【0231】
5.5.2.3 加湿器リザーバ・ドック
1形態において加湿器50000は、加湿器リザーバ51100を受けるように構成された加湿器リザーバ・ドック51300(
図3Hに示す)を含むことができる。いくつかの配置において加湿器リザーバ・ドック51300は、リザーバ51100を加湿器ドック51300に保持するように構成されたロッキングレバー51350のようなロッキング機能を含むことができる。
【0232】
5.5.2.4 水位指示計
加湿器リザーバ51100は、
図3G−3Hに示すような水位指示計51500を含むことができる。いくつかの形態において水位指示計51500は、患者1000または介護者のようなユーザーに、加湿器リザーバ51100中の水量に関して1つまたはそれ以上の指示が提供できる。水位指示計51500が提供する1つまたはそれ以上の指示には、最大の水量、所定の水量、その間の25%、50%または75%、または200ml、300mlまたは400mlのような量が含まれる。
【0233】
5.5.3 加湿器の電気的コンポーネントと熱的コンポーネント
加湿器50000は、以下に列記するような多くの電気的および/または熱的コンポーネントを含むことができる。
【0234】
5.5.3.1 加湿器変換器(複数)
上記の変換器42700の代わり、またはそれに加えて、加湿器50000は1つまたはそれ以上の加湿器変換器(センサー)52100を含むことができる。加湿器変換器52100は
図5Cに示すように、1つまたはそれ以上の空気圧センサー52120、空気流量変換器52140、温度センサー52160または加湿器センサー52180を含むことができる。加湿器変換器52100は1つまたはそれ以上の出力信号を生成し、これは中央コントローラ42300および/または加湿器コントローラ52500のようなコントローラに送信される。いくつかの形態での加湿器変換器は、出力信号をコントローラに送信するとき、(空気回路41700のような)加湿器50000の外部に位置することができる。
【0235】
5.5.3.1.1 圧力変換器
RPT装置40000に付いている圧力変換器42720に加えてまたはその代わりに、1つまたはそれ以上の圧力変換器52120を加湿器50000に付けることができる。
【0236】
5.5.3.1.2 流量変換器
RPT装置40000に付いている流量変換器42740に加えてまたはその代わりに、1つまたはそれ以上の流量変換器52140を加湿器50000に付けることができる。
【0237】
5.5.3.1.3 温度変換器
加湿器50000は、1つまたはそれ以上の温度変換器52160を含むことができる。1つまたはそれ以上の温度変換器52160は、加熱エレメント52400および/または加湿器出口50040の下流の空気の流れのような1つまたはそれ以上の温度を測定するように構成できている。いくつかの形態において加湿器50000は、周囲空気の温度を検出するために温度センサー5216をさらに含むことができる。
【0238】
5.5.3.1.4 湿度変換器
1形態において加湿器50000は、周囲空気のようなガスの湿度を検出するために1つまたはそれ以上の湿度センサー52180を含むことができる。湿度センサー52180は、ある形態では加湿器出口50040に向けて配置し、加湿器50000から吐出されるガスの湿度を測定する。湿度センサーは絶対湿度センサーまたは相対湿度センサーであってよい。
【0239】
5.5.3.2 加熱エレメント
加熱エレメント52400は、ある場合には、加湿器リザーバ51100の中の1つまたはそれ以上の水分量および/または空気の流れに熱入力を提供するために加湿器50000に提供される。加熱エレメント52400は、電気的に抵抗性の加熱トラックのような熱発生コンポーネントを含んでよい。加熱エレメント52400の適切な例は、国際特許出願番号WO 2012/171072に記載されている積層加熱エレメントで、その全開示を参照により本明細書に包含する。
【0240】
いくつかの形態の加熱エレメント52400は、
図3Hに示すように熱が主として対流し、加湿器リザーバ51100に提供される加湿器のベース50060に提供できる。
【0241】
5.5.3.3 加湿器コントローラ
本技術の1つの配置によれば、加湿器50000は加湿器コントローラ52500を含むことができる。1形態において、加湿器コントローラ52500は中央コントローラ42300の一部であってよい。もう1つの形態では、加湿器コントローラ52500は別のコントローラであってよく、中央コントローラ42300と通信できる。
【0242】
1形態において、加湿器コントローラ52500は入力することで空気の流れ、リザーバ51100中の水および/または加湿器50000の(温度、湿度、圧力および/または流量のような)特性の測定値を受信できる。加湿器コントローラ52500は加湿器アルゴリズムの実行または組込みおよび/1つまたはそれ以上の出力信号を発信するようにも構成できている。
【0243】
加湿器コントローラは、中央加湿器コントローラ52510、加熱された空気回路41710の温度を制御するように構成された加熱空気コントローラ52540および/または加熱エレメント52400を制御するように構成された加熱エレメントコントローラ52520のような1つまたはそれ以上のコントローラを含むことができる。
【0244】
5.6 呼吸波形
図3Iは、ヒトの睡眠時の典型的な呼吸波形のモデルを示す。横軸が時間を表し、縦軸は呼吸流量を表している。値が変動すると、典型的な呼吸は次のような概略値を示す: 1回換気量、Vt,0.5 L,吸入時間、Ti,1.6s,最大吸気流量、Qpeak,0.4 L/s,呼気時間、Te,2.4s,最大呼気流量,Qpeak,−0.5L/s。呼吸の全持続時間Ttotは約4sである。ヒトは人工呼吸器を使用して典型的には1分あたり約15回の割合で(BPM)呼吸する。Vent約7.5L/分。典型的な負荷サイクル、TiとTtotの比は約40%である。
【0245】
図3Jは、通常約90秒のノンレム睡眠中の患者の呼吸を示したもので、呼吸数34、自動PAPで治療中、マスク圧力は約11cmH
2Oである。最上部のチャネルは酸素測定(Spo2)で、スケールは下方に90から99%の飽和の範囲である。示した期間を通じて患者は約95%の飽和を維持した。第2のチャネルは定量的呼吸空気流を示し、スケールは下方に−1から+1LPSの範囲で、吸気は正である。第3と第4のチャネルに胸部の動きと腹部の動きが示されている。
【0246】
図3Kは、治療前の患者の睡眠ポリグラフを示す。最上部から底部までに11の信号チャネルがあり横方向のスパンは6分である。最上部の2つのチャネルはいずれもEEG(脳波図)で、採取した頭皮の位置はそれぞれ異なる。第2のEEGにおける周期的スパイクは、皮質の覚醒と関連の活動を示す。第3のチャネルは正常以下のEMG(筋電図)である。覚醒近辺の増大する活動はオトガイ増張を示す。第4と第5のチャネルは、EOG(電気眼球図)である。第6のチャネルは心電図である。第7のチャネルは、約90%から70%以下への反復性脱飽和のあるパルス酸素濃度(Spo2)を示す。第8のチャネルは、差圧変換器に接続された鼻カニューレを使用した呼吸空気流である。25秒から35秒の反復性無呼吸が10秒から15秒の回復性呼吸のバーストと交互に生じ、EEGの覚醒と増大したEMG活動と一致している。第9のチャネルは、胸部の動きを示し、第10のチャネルは腹部の動きを示す。腹部は無呼吸の間を通じて動きの最高潮を示し、覚醒に至る。回復過呼吸の間、太りすぎの体の動きのために、覚醒の間にいずれもまとまりがなくなる。したがって無呼吸は閉塞的で、状態は重篤である。最下部のチャネルは姿勢で、この例では変化は見られない。
【0247】
図3Lは、患者が一連の全閉塞無呼吸を経験している場合の患者の流量データを示す。記録の期間は約160秒である。流量は約+1L/Sから約−1.5L/Sの範囲にある。無呼吸はいずれも約10から15秒続く。
【0248】
図3Mは、呼吸の吸気部分でスケールが付いており、この場合患者は低周波吸気いびきを経験している。
【0249】
図3Nは、呼吸の吸気部分でスケールが付いており、この場合患者は扁平な吸気流制限の例を経験している。
【0250】
図3Oは、呼吸の吸気部分でスケールが付いており、この場合患者は「メサ」型扁平吸気流制限を経験している。
【0251】
図3Pは、呼吸の目盛付の呼気部分を示し、患者は「パンダの耳」型吸気流制限の例を経験している。
【0252】
図3Qは、呼吸の目盛付の呼気部分を示し、患者は「椅子」型吸気流制限の例を経験している。
【0253】
図3Rは、呼吸の目盛付の呼気部分を示し、患者は「逆椅子」型吸気流制限の例を経験している。
【0254】
図3Sは、呼吸の目盛付の呼気部分を示し、患者は「M」型吸気流制限の例を経験している。
【0255】
図3Tは、呼吸の目盛付の呼気部分を示し、患者は「M」型吸気流制限の例を経験している。
【0256】
図3Uは、チェーン・ストークス呼吸の患者からのデータである。酸素飽和(Spo2);流量を示す信号;胸部の動きの3つのチャネルがある。データのスパンは6分である。流量を表す信号は、鼻カニューレに接続された圧力センサーを使用して測定した。患者は約22秒の無呼吸と約38秒の過呼吸を呈している。無呼吸の間の高周波数、低振幅の振動は心臓性である。
【0257】
図3Vは、チェーン・ストークス呼吸のほかの例の患者からのデータで、
図3Uと同じ3つのチャネルを使用している。データのスパンは10分である。患者は約30秒の過呼吸と約30秒の呼吸低下を示している。
【0258】
5.7 圧力治療モード
本技術の1形態において、治療パラメータ決定アルゴリズム43290が使用する治療圧力の式(1)におけるパラメータAとP0の値に依存して、いろいろな呼吸圧力治療モードがRPT装置40000によって実装できる。
【0259】
5.7.1 CRAP治療
本技術のこの形態のいくつかの実装において、圧力サポートAは等しくゼロであるため、治療圧力は呼吸サイクルを通じて等しいベース圧力P0となる。このような実装は、CPAP治療の項目のもとで一般にグループ化される。このような実装において、治療エンジンモジュール43200は位相(Φ)または波形テンプレートΠ(Φ)を決定する必要はない。
【0260】
CPAP治療モードにおいてベース圧力P0は、滴定の間に規定、または決定され、ハードコード化され、RPT装置40000に手入力される一定値であってよい。この代案は場合によって、一定CPAP治療と呼ばれる。代案として治療パラメータ決定アルゴリズム43290は、ベース圧力P0を指標の関数として1つまたはそれ以上の流れ制限、無呼吸、呼吸低下、開通性およびいびきのような、治療エンジンモジュール43200におけるそれぞれのアルゴリズムによって返された睡眠障害呼吸の測定値を連続して計算する。この代案は場合によってAPAP治療と言う。
【0261】
図3Fは、圧力サポートAが等しくゼロの時、中央コントローラ42300が連続してベース圧力P0を治療パラメータ決定、アルゴリズム43290のAPAP治療実装の一部として計算するために実施する方法45000を例示したフローチャートである。
【0262】
方法45000はステップ45200で開始され、ここで中央コントローラ42300が無呼吸/呼吸低下の存在の測定を第1の閾値と比較し、無呼吸/呼吸低下の存在の測定が、所定の時間に対する最初の閾値を超えているかどうか決定し、無呼吸/呼吸低下が発生しつつあることを示す。そうであれば、方法45000はステップ45400に進む;そうでなければ方法45000はステップ45300に進む。ステップ45400において、中央コントローラ423000は気道開通性の測定を第2の閾値と比較する。気道開通性の測定が第2の閾値を超えていれば、検出された無呼吸/呼吸低下が支配的と見なされ、方法45000はステップ45600に進む;そうでなければ無呼吸/呼吸低下は閉塞性と見なされ、方法45000はステップ45500に進む。
【0263】
ステップ45300において、中央コントローラ423000は流れ制限の測定を第3の閾値と比較する。流れ制限の測定が第3の閾値を超えており、吸気流れが制限されていることを示すと、方法45000はステップ45500に進む;そうでなければ方法45000はステップ45600に進む。
【0264】
ステップ45500において、中央コントローラ423000はベース圧力P0を所定の圧力増分ΔPだけ上げるが、その結果治療圧力Ptが最大治療圧力Pmaxを超えることはない。1実装において、所定の圧力増分ΔPと最大治療圧力Pmaxはそれぞれ1cmH
2Oと25cmH
2Oである。その他の実装において、圧力増分ΔPは0.1cmH
2Oと低く、3cmH
2Oと高くまたは0.5cmH
2Oと低く、2cmH
2Oと高くできる。その他の実装において、最大治療圧力Pmaxは15cmH
2Oと低く、35cmH
2Oと高くまたは20cmH
2Oと低く、30cmH
2Oと高くできる。方法45000は次のステップ45200に戻る。
【0265】
ステップ45600において、中央コントローラ423000はベース圧力P0をデクリメントだけ下げるが、低下したベース圧力は最小治療圧力Pmin以下に低下することはない。方法45000は次のステップ45200に戻る。1実装において、デクリメントはP0−Pminの値に比例し、任意の検出されたイベントがない場合、P0の最小治療圧力Pminまでの低下が指数関数的になる。1実装において、比例の定数はP0の指数関数的低下の時定数τが60分で、最小値治療圧力Pminが4cmH
2Oとなるように設定される。その他の実装において時定数τは1分と短く、300分と長くまたは5分と短く、180分と長くすることができる。その他の実装において、最小治療圧力Pminは0cmH
2Oと低く、8cmH
2Oと高く、または2cmH
2Oと低く、6cmH
2Oと高くできる。代案として、P0のデクリメントは事前に決定でき、任意の検出されたイベントがない場合、P0の最小治療圧力Pminまでの低下がリニアになる。
【0266】
5.7.2 圧力サポート換気治療
本技術の形態の他の実装において、式(1)における圧力サポートAの値は正である。このような実装は圧力サポート換気治療として知られており、CSRの治療に使用できる。圧力サポート換気治療のいくつかの実装において、サーボ換気として知られている、治療パラメータ決定アルゴリズム43290は入力として換気の現在の測定Ventと、目標換気決定アルゴリズム43280が提供する目標値Vtgtを選び、式(1)のパラメータを調整して換気の現在の測定Ventを換気の目標値Vtgtに向ける。適応サーボ換気(ASV)において、目標換気Vtgtは上記のように典型的な最近の換気Vtypから計算される。
【0267】
サーボ換気のいくつかの形態において、治療パラメータ決定アルゴリズム43290は制御方法論を使って、圧力サポートAを連続して計算し、換気の現在の測定Ventを目標換気Vtgtに向ける。このような制御方法論の1つが比例積分(PI)制御である。目標換気Vtgtが典型的な最近の換気Vtypより僅かに低く設定されるPI制御の1実装において、圧力サポートは次のように計算される:
A = G∫(Vent − Vtgt)dt (2)
ここにGはPI制御のゲインである。ゲインGが大きいと、治療エンジンモジュール43200における正のフィードバックが生じる。ゲインGが小さいと、残存未治療CSRまたは中枢性睡眠時無呼吸症となることがある。いくつかの実装において、ゲインGは例えば0.4cmH
2O/(L/min)secのような所定の値に固定される。代案としてゲインGは治療セッションの間で変化させることができ、小さい値で始め、CSRを除いて、すべてが到達した値までセッションからセッションへ増加させる。治療セッションの間にCSRの重症度を評価する治療セッションのパラメータを過去に遡って解析する従来の方法は、このような実装において採用できる。
【0268】
式(2)で計算された圧力サポートAの値は、[Amin,Amax]と定義された範囲にクリップできる。この実装において圧力サポートAは、現在の換気Ventの測定が目標の換気Vtgt以下に低下するまでデフォルトの最小圧力サポートAminのままで、ここでのポイントAは増加し始め、VentがVtgtを再度超えた時にAminに後退するのみである。
【0269】
最小圧力サポートAminの3cmH
2Oは、定常状態にある典型的な患者の全ての呼吸作業を行うのに必要な圧力サポートの50%のオーダーである。最大圧力サポートAmaxの12cmH
2Oは、典型的な患者が全ての呼吸作業を行うのに必要な圧力サポートのほぼ2倍である。従って、もし患者がいかなる努力を止めた場合、患者の呼吸をサポートするのに十分ではあるが、不快に感るかまたは半分以下の危険な値である。
【0270】
治療パラメータ決定アルゴリズム43290が適用できるその他のサーボ換気制御方法論は、比例(P)、比例−微分(PD)および比例―積分―微分(PID)を含む。
【0271】
圧力サポート換気治療モードにおいて、ベース圧力P0を場合によってはEPAPと言う。EPAPは滴定の間に規定、または決定され、バードコード化され、RPT装置40000に手入力される一定値であってよい。この代案は場合によっては、固定EPAP
圧力サポート換気治療と呼ばれる。代案として治療パラメータ決定アルゴリズム43290は、ベース圧力P0を指標の関数として1つまたはそれ以上の流れ制限、無呼吸、呼吸低下、開通性およびいびきのような、治療エンジンモジュール43200におけるそれぞれのアルゴリズムによって返された睡眠障害呼吸の測定値を連続して計算する。この代案は場合によっては自動−EPAP圧力サポート換気治療と言う。
【0272】
5.8 用語解説
本技術の公開の目的で、本技術のある形式において、1つまたはそれ以上の以下の定義を適用してよい。本技術そのほかの形態において、代案の定義が適用できる。
【0273】
5.8.1 一般
空気:本技術のある形態において、空気は大気の空気を意味し、本技術そのほかの形態では、空気は例えば酸素の多い大気の空気のような呼吸できる、ガスのいくつか、そのほかの組み合わせを意味する。
【0274】
周囲:本技術のある形態において、周囲の用語は、(i)治療システムまたは患者の外部、(ii)システムまたは患者の治療を直接取り巻いていることを意味する。
【0275】
例えば、加湿器に関する周囲湿度は、例えば患者が睡眠中の部屋の湿度ように、加湿器を直接取り巻いている湿度である。このような周囲湿度は、患者が睡眠中の部屋の外の湿度とは異なる。
【0276】
もう1つの実施例において、周囲圧力は身体を直接取り巻いているまたはその外の圧力である。
【0277】
ある形態では、周囲騒音(例えば、音響)は、例えばRPT装置が発生する騒音またはマスクまたは患者のインターフェースから出る騒音以外の、患者の居る部屋の暗騒音と考えてよい。周囲騒音は、部屋の外の源で発生する。
【0278】
持続的気道陽圧法(CPAP)治療:CPAP治療は、空気を大気に関して連続して陽圧である圧力で気道の入口へ適用することであり、圧力は患者の呼吸サイクルを通じてほぼ一定である。いくつかの形態の中で、気道の入口での圧力は吸入中の僅か高く、呼気中は僅か低い。いくつかの形態において、圧力は患者の異なる呼吸サイクル間で変動する。例えば、患者の上気道の一部閉塞の兆候の検出に対応して増加し、上気道の一部閉塞の兆候がなければ低下する。
【0279】
患者:呼吸器疾患に悩まされているかいないかを問わないヒト。
【0280】
自動陽圧気道圧力(APAP)治療:例えば呼吸から呼吸へ、最少と最大に間で、SDBの有無に依存して治療圧力が自動で調整されるCPAP治療。
【0281】
5.8.2 呼吸数サイクルの態様
無呼吸:一部の定義によれば、無呼吸は流れがある期間、例えば10秒、所定の閾値以下に低下すると起こると言われる。閉塞性無呼吸は、患者の努力にもかかわらず気道の閉塞により空気が流れないときに発生したと言われる。中枢性無呼吸は、気道が開いているにもかかわらず、呼吸努力の低下によって無呼吸が検出された時または呼吸努力がなされない時発生したと言われる。混合性無呼吸は、呼吸努力の低下または欠如が気道の閉塞と同時に生じた時に発生したと言われる。
呼吸数:患者の自発呼吸の率で、通常1分当たりの呼吸で測定される。
負荷サイクル:吸入時間の比率、合計呼吸時間とTiの比、Ttot。
努力(呼吸):呼吸努力は、呼吸を試みる患者の自発呼吸によってなされた仕事と言われる。
呼吸サイクルの呼気の部分:呼気の流れの開始から吸気の流れの開始の期間。
流れ制限:流れ制限は、患者の努力の結果が対応する流れの増加を生じない、患者の呼吸作用における事態と解釈される。呼吸サイクルの吸気部分で流れ制限が生じると、吸気流れの制限と記述される。呼吸サイクルの呼気部分で流れ制限が発生すると、呼気流れの制限と記述される。
【0282】
流れ制限のある吸気の波形のタイプ:
(i)扁平した:上昇があり、比較的平らな部分が続き、降下が続く。
(ii)M−型:2つのローカルピークがあり、1つは前縁、1つは後縁、2つのピーク間は比較的平らである。
(iii)椅子状:単一のローカルピークがあり、このピークは前縁にあり、比較的平らな部分が続く。
(iv)逆椅子形状:比較的平らな部分があり、単一のローカルピークが続き、このピークは後縁にある。
【0283】
呼吸低下:好ましく呼吸低下は流れにおける減少と言い、流れの中断ではない。一つの形態において、閾値以下の流れの低下がある期間があれば、呼吸低下が生じたと言う。呼吸努力の低減により呼吸低下が発生した時、中枢性無呼吸が生じたと言う。成人における一形態において、以下のいずれも呼吸低下と言える:
(i)患者の呼吸が少なくとも10秒間30%低下し、さらに4%の関連した脱飽和がある;または
(ii)患者の呼吸が少なくとも10秒間低下し(50%以下)、さらに少なくとも3%の関連した脱飽和または覚醒がある。
【0284】
過呼吸:通常の流量より高いレベルへの流れの増加。
呼吸サイクルの吸気部分:吸気流れの開始から呼気流れの開始までの期間を呼吸サイクルの吸気部分と言う。
開通性(気道):開いている気道の程度または気道が開いている度合、開通性の気道が開いている。気道の開通性は、(1)の値で開塞そしてゼロ(0)の値で閉塞と定量化される。
呼吸終末陽圧(PEEP):肺における気圧以上の圧力で、呼気の終りに存在する。
ピーク流量(Qpeak):呼吸気流量の波形の吸気部分の間の流量の最大値。
【0285】
呼吸流量、空気流量、患者の空気流量、呼吸空気流量(Qr):これらの同義語は、RPT装置の呼吸流量の推定を参照すると理解してよい。これに対して、患者が経験する実際の呼吸流量「真の呼吸流量」または「真の呼吸空気流」があり、通常L/分で表す。
【0286】
1回換気量(Vt):余分の努力をしない時、通常の呼吸の間に吸気するまたは呼気する空気量。
(吸気時間)(Ti): 呼吸気流量波形の吸気部分の期間。
(呼気)時間(Te):呼吸気流量波形の呼気部分の期間。
(合計)時間(Ttot):一つの呼吸気流量波形の吸気部分の開始と、続く呼吸流量波形の吸気部分の開始間の合計期間。
【0287】
典型的な最近の換気:ある所定の時間の尺度にわたって最近の値がその周りにクラスターする傾向にある換気の値。即ち換気の最近の値の中心傾向の測定。
【0288】
上部気道閉塞(UAO):は部分的および全上気道閉塞のいずれを含む。これは流量制限の状態に関連しており、上気道を横切る圧力差が増加すると、流量のレベルが僅か増加するかまたは低下することさえある。(スターリング・レジスター行動)
【0289】
換気(Vent):患者の呼吸器系で交換されるガスの合計量の測定値。換気の測定値は、単位時間当たりの吸気流と呼気流の1つまたは両方を含む。1分当たりの容量で示すと、この量はしばしば「分換気」と呼ばれる。分換気は場合によって、単に容量として与えられ、1分当たりの容量と理解される。
【0290】
5.8.3 RPT装置パラメータ
流量:単位時間当たりに送出される空気の瞬時容量(または質量)。流量と換気は同じ大きさの単位時間当たり容量または質量を有する。流量はずっと短い時間の期間にわたって測定される。場合によっては、流量への言及はスカラー量への言及となる。即ち、大きさのみを有する量となる。そのほかの場合、流量への言及はベクトル量への言及となる。即ち、大きさと方向の両方を有する量である。符号付の量の場合、流量は患者の呼吸サイクルの吸気部分に対して名目上正であるため、患者の呼吸サイクルの呼気部分に対して負である。流量は記号Qで与えられる。「流量」は場合によって、単に「流れ」と短縮される。全流量QtはRPT装置を出る空気の流量である。ベント流量Qvはベントを出て吐き出したガスの洗浄を行う空気の流量である。漏れ流量Qlは、患者のインターフェースシステムからの漏れの流量である。呼吸気流量Qrは、患者の呼吸器系が受け取った空気の流量である。
【0291】
漏れ:漏れの語は、意図しない空気の流れと解釈される。1実施例において漏れは、マスクと患者インターフェース間のシールが不完全な結果で生じる。もう1つの実施例において漏れは大気への旋回台エルボーで生じることがある。
【0292】
騒音、伝導性(音響):本明細書で伝導騒音は、例えば空気回路と患者インターフェースおよびその中の空気のような空気路で患者に伝わる騒音を指す。1形態において伝導騒音は、空気回路の終端における音圧を測定することによって定量される。
【0293】
ノイズ、放射(音響):本明細書で放射ノイズは、周囲空気によって患者にもたらされたノイズを指す。1形態において放射ノイズは、問題の対象の音響パワー/圧力レベルをISO 3744に従って測定することによって定量される。
【0294】
ノイズ、ベント(音響):本明細書でベントノイズは、患者インターフェースの穴のような任意のベントを通る空気の流れで生成されたノイズを指す。
【0295】
圧力:単位面積にかかる力。圧力は、cmH
2O、g−f/cm
2、ヘクトパスカルなど様々な単位で測定される。1cmH
2Oは1g−f/cm
2に等しく、約0.98ヘクトパスカルである。特記のない限り、本明細書において圧力はcmH
2Oで与えられる。患者インターフェースにおける圧力は記号Pmで与えられ、現在の時間におけるマスク圧力Pmで達成される目標値を示す治療圧力はPtで与えられる。
【0296】
音響パワー:音波が運ぶ単位時間当たりのエネルギー。音響パワーは音圧に波面の面積を乗じたものの平方に比例する。音響パワーは通常デシベルSWLで与えられ、これは基準パワーに関して記述され、通常10−12ワットとされる。
【0297】
音圧:媒体を通る音波の結果によってある時間における周囲圧力からの局所的偏差。音圧は通常SPLで記述される。すなわち基準圧力に対して記述され、通常20×10
−6パスカル(Pa)で、ヒトの聴力の閾値が考えられる。
【0298】
5.8.4 人工呼吸器の用語
適応サーボ換気装置(ASV):固定の目標換気よりむしろ変更可能な換気を持ったサーボ換気装置。変更可能な目標換気は、例えば患者の呼吸特性のような患者のいくつかの特性から学ぶことができる。
バックアップ率:自発的な呼吸努力でトリガーされなければ、換気装置が患者に送達する最少呼吸数を決める換気装置のパラメータ(典型的には1分あたりの呼吸数)。
サイクルド:換気装置の吸気相の終了。自発呼吸している患者に換気装置が呼吸を提供している時、呼吸サイクルの吸気部分の終りにおいて、換気装置は呼吸の提供を停止するようサイクルしたと言う。
EPAP: 呼吸の間に変動している圧力が加えられるベース圧力で、換気装置はある時間に達成しようと試みる所望のマスク圧力を生成する。
IPAP:呼吸の吸気部分の間に換気装置が達成しようとする所望のマスク圧力。
圧力サポート:換気装置の呼気の間の圧力の増加を示す数で、呼気の間の最大値と息を吐くときの最小値の間の圧力差を意味する(例えば、PS=IPAP−EPAP)。ある状況での圧力サポートは換気装置が実際に達成するものよりむしろ換気装置が達成しようと意図する差を意味する。
サーボ・ベンチレータ:患者の換気を測定するベンチレータで目標の換気を持ち、これが圧力サポートのレベルを調整して患者の換気を目標の換気に向ける。
自発/時限(S/T):自発呼吸する患者の呼吸の開始を検出しようと試みる換気装置またはその他の装置のあるモード。しかし装置が所定の時間内に呼吸を検知できない場合は、装置の呼吸の送達を自動的に開始する。
スイング:圧力サポートと同等の用語。
トリガーした:換気装置が空気の呼吸を自発呼吸している患者に送達した時、患者努力による呼吸サイクルの呼気部分の開始においてトリガーされたと言う。
典型的な最近の換気:典型的な最近の換気Vtypは、ある所定の時間スケールにおける換気の最近の測定値が、その周りにクラスターする傾向にある値である。例えば、最近の履歴における換気の測定値の中心傾向の測定値は、典型的な最近の換気の適切な値となる。
換気装置:患者に圧力サポートを提供して、呼吸の仕事の一部またはすべてを実行する機械的装置。
【0299】
5.9 関連のヒトの解剖学
5.9.1 顔の解剖学
翼:それぞれの鼻孔(複数:alar)の外部の外壁または「ウイング」
翼状の:鼻の翼の最も側面のポイント。
翼状の湾曲 (または翼状の頂点)ポイント:それぞれの翼の湾曲のベースラインにおける最後部のポイントで、翼と頬の結合で形成されるひだの中に見出される。
耳介:耳の外部の見える部分全体。
(鼻)骨組:鼻の骨組みは、鼻骨、上顎の前頭突起および前頭骨の鼻の部分から成る。
(鼻)軟骨結合骨格:鼻の軟骨結合骨格は、中間隔、側部、主要およびマイナー軟骨から成る。
軸柱:鼻孔を分け、前方の鼻から上唇まで走る皮膚の細長い一片。
軸柱角:鼻孔開口の中間を通る線と、鼻下を横断するフランクフルト水平線に垂直な線間の角度。
フランクフルト水平面:眼窩縁の最下部から左耳点に伸長する線。耳点は心耳の耳珠の上にあるノッチにおける最深ポイントである。
眉間:軟組織にあり、額の正中矢状面におけるもっとも突き出したポイント。
外側鼻軟骨:軟骨の概して三角形の板。その上縁は鼻骨と上顎の前頭突起に付いており、その下縁は大鼻翼軟骨に接続されている。
大鼻翼軟骨:外側鼻軟骨の下に横たわる軟骨の面。鼻孔の前部の周りに湾曲している。その上端は、翼の3つまたは4つのマイナー軟骨を含む丈夫な線維膜によって軟骨の前頭突起に接続されている。
鼻孔(鼻孔):鼻腔の入口を形成するほぼ楕円状の開口。鼻孔の単数形はnaris(鼻孔)である。鼻孔は鼻中隔で分けられている。
鼻唇溝または鼻唇ひだ:鼻の各側面から口角に走る、皮膚のひだまたは皮膚小溝で、頬を上唇から分けている。
鼻−唇の角度:軸柱と上唇間の角度で鼻下を横断している。
下耳底点:顔の皮膚への耳介の取り付けの最下点。
顔の皮膚への耳介の取り付けの最上点。
鼻前方:鼻の最も突出したポイントまたは先端、頭部の残りの部分の側面図で識別できる。
鼻の下にあるくぼみ:鼻の隔壁の下部境界から上唇領域の唇の頂部まで走る正中溝。
下顎点:軟組織にあり、顎の最も前方の中点。
突起部(鼻の):鼻の突起部は鼻の正中線隆起で、セリオンからプロナザーレに伸びている。
矢状面: 前部から後部に走り、人体を右半分と左半分に分けている垂直面。
Sellion:軟組織にあり、前頭縫合の領域を覆っている最も凹んだポイント。
鼻中隔軟骨:鼻中隔軟骨は隔壁の一部を形成し、鼻腔の前部を分離する。
Subalare:翼ベースの下部縁におけるポイントで、ここで翼ベースが上唇の皮膚とつながる。
鼻棘点:軟組織にあり、このポイントが正中矢状面における上唇と出会う。
スプラメンターレ:上唇歯と軟組織ポゴニオン間の下唇の正中線における最大の凹面のポイント。
【0300】
5.9.2 頭蓋骨の解剖学
前頭骨:前頭骨は、額として知られる領域に対応して、大きな垂直部、前頭鱗を含む。
下顎:下顎骨は下顎を形成する。オトガイ隆起は、顎を形成する顎の骨突起である。
上顎:上顎は上顎を形成し、下顎の上で眼窩の下にある。上顎の前頭突起は鼻の横を上方に突出し、その側面境界の前方部を形成する。
鼻骨:鼻骨は2つの小さな楕円形の骨で、個人によってその大きさと形状が異なる;顔の中央部と上部で並んで配置され、それらの接合によって鼻の「突起部」を形成する。
鼻根点:前頭骨と2つの鼻骨の交差点で、眼と鼻の突起部の上の間にあるくぼみである。
後頭骨:後頭骨は頭蓋の後方と下部に位置している。楕円形の開口、大後頭孔、を含み、ここを通して頭蓋腔が脊柱管と通じる。大後頭孔の後ろの湾曲面は後頭鱗である。
眼窩:眼球を包含する頭蓋骨内の骨の空洞。
頭頂骨:結合すると頭蓋の頂部と側面を形成する骨である。
側頭骨:側頭骨は頭蓋骨の基部と側面に位置しており、こめかみとして知られる顔の一部を支える。
頬骨:顔は、顔の上部と側面に位置し、頬の突起を形成する2つの頬骨を含む。
【0301】
5.9.3 呼吸システムの解剖学
横隔膜:胸郭の底部を横切って伸びる筋肉のシート。横隔膜は、心臓、肺および肋骨を含む胸腔を腹腔から分離する。横隔膜が収縮すると、胸郭の容積が増し、空気が肺に引き込まれる。
喉頭:喉頭即ち喉頭は声帯を収納し、咽頭(下咽頭)の下部を気管に接続する。
肺:ヒトにおける呼吸器官。肺の伝導帯は、気管、細気管支および終末細気管支を含む。呼吸ゾーンは、呼吸細気管支、肺胞管および肺胞を含む。
鼻腔:鼻腔(または鼻窩)は、顔の中央で鼻の上および後部にある空気で満たされた空間である。鼻腔は鼻中隔と呼ばれる垂直のフィンで2つに分けられる。鼻腔側には、鼻甲介(単数は「concha」)または鼻甲介と呼ばれる3つの水平の増生がある。鼻腔の前面に鼻があり、後鼻孔を経て後部が鼻咽頭に溶け込んでいる。
咽頭:鼻腔の直下(下)にあり、食道と咽頭の上部に位置している部分である。咽頭は通常、鼻咽頭(鼻咽頭)(咽頭の鼻の部分)、中咽頭(中咽頭)(咽頭の口腔の部分)および咽喉頭(下咽頭)の3つのセクションに分けられる。
【0302】
5.10 一般用語
5.10.1 材料
シリコンまたはシリコン・エレストマー:合成ゴム。本明細書において、シリコンは液体シリコンゴム(LSR)または圧縮形成シリコンゴム(CMSR)を指す。市販のLSRの1形態は、Dow Corningが製造しているSILASTIC(この商標で販売されている製品範囲に含まれている)である。LSRを製造しているもう1社はWackerである。特に明記のない限り、LSRの好ましい形態は、ASTM D2240に従って測定された約35から45の範囲のショアA(またはタイプA)圧入硬度を有している。
ポリカーボネート:ビスフェノール−Aカーボネートの典型的に透明な熱可塑性ポリマー。
【0303】
5.10.2 患者インターフェースの態様
抗呼吸停止バルブ(AAV):マスクシステムのコンポーネントまたはサブアセンブリで、フェールセーフの態様で大気に開放すると、患者の過剰なCO
2再呼吸のリスクを低減する。
エルボー:空気の流れの軸の向きを変えて、アングルを通る方向を変えるコンジット。1形態において、アングルは約90度でよい。もう1つの形態において、アングルは90度以下でよい。このコンジットはほぼ円形の断面を有している。もう1つの形態において、コンジットは楕円形または長方形の断面を有することができる。
フレーム:フレームは、ヘッドギアとの2つまたはそれ以上の接続ポイント間の張力の負荷に耐えるマスク構造を意味する。マスクのフレームは、マスクにおいて非機密耐加重構造であってよい。しかしいくつかの形態のマスクフレームも気密であってよい。
ヘッドギア:ヘッドギアは、頭に使用するようにデザインされた位置決め安定化構造の形態を意味すると解釈してよい。好ましくは、ヘッドギアは1つまたはそれ以上の筋かいの集まり、患者インターフェースを呼吸治療の送達のために患者の顔の適切な場所に置くかつ保持するように構成された、固定具とスティフナーを含む。いくつかの固定具は、発泡体と織物の積層複合材のような柔らかく、柔軟な弾性材で形成される。
メンブレン:好ましくは、曲げに対して実質的に耐性を示さないが、伸ばすことには耐性を持った、典型的には薄いエレメントを意味すると解釈される。
プレナムチャンバー:マスク・プレナムチャンバーは、容量のある空間を囲む壁を有する患者インターフェースの一部を意味すると解釈され、この容量はその中に使用中の大気以上に加圧された空気を有する。シェルはマスク・プレナムチャンバーの壁の一部を形成してよい。
シール:名詞形(「a seal」)は,2つの面のインターフェースを通る空気の流れに意図的に耐性を示す構造またはバリアを意味すると解釈される。動詞形(「to seal」)は、空気の流れに抗することを意味すると解釈される。
シェル:シェルの好ましさは、曲げ、引張りおよび圧縮剛性を有する、湾曲した、2次元の構造を意味すると解釈される。例えば、マスクの湾曲した構造壁を形成するマスクの一部である。好ましくは、その全体的な寸法に対して薄い。いくつかの形態において、シェルはファセットされてよい。ある形態は気密性ではなくてもよいが、このような壁は好ましい気密性である。
スティフナー:スティフナーは、もう1つのコンポーネントの少なくとも1方向への曲げ耐性を増すようにデザインされた構造成分を意味すると解釈される。
筋かい:筋かいは、もう1つのコンポーネントの少なくとも1方向への圧縮耐性を増すようにデザインされた構造成分を意味すると解釈される。
旋回台:(名詞)好ましくは独立して、好ましくは低トルク下で、共通軸の周りを回転するように構成されたコンポーネントのアセンブリ。1形態において旋回台は、少なくとも360度回転するように構築してよい。もう1つの形態において、旋回台は360度以下の角度で回転するように構築してよい。空気送達コンジットの状況で使用する場合は、コンポーネントのサブアセンブリは好ましくは、円筒コンジットのマッチドペアを含む。好ましくは使用中は、旋回台からの空気の漏れは、ほとんどないかまたは全くない。
固定具:固定具は張力に抗するようにデザインされた構造コンポーネントと意味すると解釈できる。
ベント:(名詞)例えば吐き出したガスを洗浄するためのマスクの内部またはコンジットから周囲空気への空気の意図的な流れを与える構造。
【0304】
5.10.3 患者インターフェースに関連して使用される用語
(表面の)湾曲:1方向へ湾曲して上がり、そして異なる方向へ湾曲して下がるサドル形状を有する表面の領域は、負の湾曲と言われる。2つの主方向へ同様に湾曲するドーム形状を有する表面の領域は、正の湾曲を有すると言われる。平坦な表面は湾曲がゼロと考えられる。
【0305】
フロッピー:下記の1つまたはそれ以上である材料、構造または複合材料の品質:
・指圧に直ちに従う。
・自重を支持しなければならない時、その形状を保持できない。
・剛体でない。
・わずかの努力で弾性的に伸ばしたり曲げたりすることができる。
【0306】
フロッピーであることの品質は、方向と関連しおり、従って特定の材料、構造または合成物は第1の方向へフロッピーであるが、例えば第1の方向と直交する第2の方向のような第2の方向では堅くまたは剛体である。
【0307】
弾力性のある:実質的に弾性的に変形でき、解放すると1秒のように、比較的短時間内にすべてのエネルギーを実質的に開放することができる。
【0308】
剛体の:患者インターフェースの入口とシーリングの関係で患者インターフェースを設定するかつ維持している時、典型的に遭遇する指圧および/または張力の負荷に対して直ちに変形しない。
【0309】
準剛体:典型的には陽圧気道圧力治療中に加えられる機械的力の影響下で、実質的に変形しない十分に剛体であることを意味する。
【0310】
5.11 患者インターフェースの特別注文(カスタマイズ)
5.11.1 カスタマイズの概観
カスタマイズされた患者インターフェースは、敏速試作技法(例えば、3D印刷)を使って製造できる。以下の実施態様において、カスタマイズは患者インターフェースの全体または少なくとも患者インターフェースのコンポーネント(例えば、自己形成構造3100、フレーム11001、位置決め安定化構造3300ほか)を対象とする。
【0311】
このようなカスタマイズは、患者に特異的に適合した患者インターフェースを形成することによって個別の経験が提供できる。良好な適合には優れたシーリング、着用中により快適および/または最適化された性能が含まれ、例えば射出成型で大量生産された従来の患者インターフェースと比較して、シールの崩壊を避けることができる。
【0312】
図4はカスタマイズされた患者インターフェースを作成する一般的なステップを要約したフローチャートである。これらのステップのそれぞれを以下の詳細に説明する。フローチャートの全てのステップが必要ではなく、このステップは所望により除外するかまたは繰り返せることが理解されよう。さらにあるステップは互いに代替えとなることを示している。
【0313】
患者インターフェースカスタマイズの方法4000は一般に、データ収集4300、データ処理4400、患者インターフェースデザイン4500および製造4600のステップを含む。図示のように、データ収集はいくつかのデータ収集技法4301、4302、4303、4304を含み、これらは協調してまたは代案として利用できる。いろいろなステップの後でいくつかの出力が生成され、出力データパッケージ4450、患者インターフェース・デザインパッケージ一式4550および最終製品4700が含まれる。
【0314】
5.11.2 データ収集4300
カスタマイズされた患者インターフェースは、患者の好み通りに視覚的に最適化されるかまたは患者のユニークな顔面構成に合うように幾何学的に最適化されるかまたはその組み合わせである。それぞれのユニークな患者個人にカスタマイズされた患者インターフェースを作成するために、
図4に示すようにデータのコレクションを集める。リラックス状態のデータ収集4301は、リラックスした変形されていない状態で取得した患者の顔の三次元データのようなデータを指す。変形した状態のデータ収集4302は、患者インターフェースまたは異なる患者睡眠姿勢(例えば、あおむけ、横向き、正面ほか)による負荷により変形した領域を示す患者の顔から収集したデータを指す。幾何形状に関連した患者データに加えて、マッピング技法4303によって圧力データも収集し、使用中に患者インターフェースに適切なシーリングが行えるようにする。審美性、快適さまたは機能性に対する、変動するユーザの好みのようなユーザ入力4304も収集する。これらのデータ収集技法のそれぞれは、以下の別々に詳細に説明する。
【0315】
5.11.2.1 リラックスした状態のデータの収集4301
図5乃至7は、患者データを取得するいろいろな方法を例示したものである。収集したデータは患者の顔のデータ、頭部のデータおよび/または顔の骨のデータを含み、3Dスキャナーまたは任意のタイプのスキャニング装置(非接触法)、または接触法(記憶物質、機械的ロッドなど)で収集できる。
【0316】
図5は、レーザースキャニングを含むデータ収集法の1つを示す。一般に、この方法では、対象物の3D面をスキャンするのに飛行時間型の方法と三角測量法が用いられる。図示のように、レーザースキャニング・システム5000はレーザー5001を含むことができ、レーザーまたは光波を対象5050(例えば、患者の頭)に向ける。次いで反射光はレンズ5002を通過し、センサー5003によって集光される。このセンサーは位置検出センサーまたは電荷結合素子を含むことができる。
図5に示すように距離daは距離dbに対応する。このように正しく校正した後は、レーザースキャニング・システム5000を使って顔の3D表面(鼻、頬、口、眼、歯、耳など)ならびに頭部の一般的形状の3D表面が取得できる。次に、対象の顔と頭部からの表面上のサンプルのポイントクラウドが創造でき、ポイントクラウドは再構築できて、関連の3D表面(例えば、患者の額を表す表面)が再生できる。いくつかの実施例において、患者は睡眠専門クリニック、薬局またはレーザースキャナーにアクセスできる、その他の場所でレーザースキャニング・システム5000を使用でき、収集されたデータは患者インターフェースのデザイナーまたは患者インターフェースのメーカに送られる。
【0317】
図6は、受け身のステレオ型写真測量法を含むもう1つのデータ収集の方法の例示である。この方法では、多重リンクされたカメラ6001、6002が被写体6050の複数の静止画をとらえ、被写体のポイントの三次元座標を推定する。推定された座標は、カメラ6001、6002から異なる位置から撮られた2つまたはそれ以上の画像において行われる測定によって決めることができる。次いで各画像上に共通点(複数)が識別され、視線(または光線)がカメラの位置から被写体のポイントまで形成される。これらの光線の交差点(三角測量)が、ポイントの三次元位置の決定に役立つ。このようにして画像上の重要な特徴が決定され、ディスプレイ6003上に三次元ポイントクラウドが生成される。使用中は、患者6050は自分の頭部と顔(鼻、頬、眼、歯、耳など)の複数の写真またはビデオ、異なる角度から撮ることができる。次いでこれらの画像は処理されて、患者の頭部と顔の三次元モデルが生成される。ある形態では、1つまたはそれ以上の所定の形状またはパターンを、例えばそれらを測定中に一時的に患者の上に置くなどして、写真測量システムの基準として使用できる。
【0318】
もう1つのデータ収集の方法は白色光干渉法を含み、これは白色光スキャニングとも言われる。この方法では、白色光を例えば顔のような測定する被写体の表面に投影する。その結果生じる干渉パターンの測定は、(カメラのような)測定システムによって取得され、処理して、患者の頭部と顔のような被写体の三次元輪郭が得られる。
【0319】
いくつかの実施例において、遠隔データ収集が可能である。例えば、患者6050は自身の写真を撮り、ハードおよび/またはソフトコピーを処理するためデザイナーおよび/またはメーカに送付する。正しく較正すると、この方法の解像度と精度は特別仕立ての患者インターフェースのデザインに適用するのに十分である。このように受け身のステレオ型写真測量法を通して、患者6050から速やかかつ効果的にデータが収集できる。
【0320】
さらに、既存技術を使用して正しい較正ができる。例えば、Xbox Kinectのようなある娯楽システムは、この技法を用いてさらなる較正の必要性なしに、正確な顔のスキャンを行う能力を有している。このようにソフトウエアを提供して患者が自分のコンピュータまたはその他のプロセッサーにXbox Kinectが「プラグ&プレイ」でき、次いで解析とデザインのためにデザイナーおよび/またはメーカに送付することができる。
【0321】
以前の2つの方法は非接触の測定法に分類される。接触法もデータ収集のみにまたは、非接触の方法と組み合わせて使用できる。データ収集の接触法では、患者の顔を物理的な装置に置き、これが表面の捕捉を塑性的に変形する。収集されたデータのタイプは、クラウドポイント・データセットとなる。
【0322】
図7Aは、データ収集のための接触または触覚データ収集システム7000を例示している。データ収集システム7000は、機械的ピンマップのような薄いロッド7001を含む。ロッド7001は、各ロッド7001が移動した距離を測定し、収集したデータをプロセッサー7003に送るこができるリニアエンコーダーおよび/または力センサー7002に連結できる。さらにエンコーダーまたは力センサー7002は、ロッド7001の動きに対する抵抗力を測定することができる。ロッド7001に代えて変形が可能または偏向させることができる織物を使うなど、バリエーションが可能である。さらなる実施例においてロッド7001は、ロッド7001と顔の間に加えられた圧力を測定するように構成できている。またロッド7001は、ロッド7001と顔の間の力または圧力によって変形するように構成できている。
【0323】
1形態において、ロッド7001は、患者の顔の表面に向けて例えばスプリングで付勢することができる。付勢(バイアス)は患者の顔とロッド7001の係合の維持を支援するが、好ましくは、付勢力は測定に影響しないよう十分に小さくする。例えば、付勢力は、力がロッド7001によって0.1mmだけ偏向した後に典型的に打ち勝つように設定される。1形態において、各ロッド7001の付勢力は、約0.5Nであるが、付勢力は例えばロッド7001の密度、各ロッドの直径または各ロッド7001の形状など特定のデータ収集システム7000に適合するように変更できる。
【0324】
ロッド7001の動きに対する抵抗を測定すると、顔の形状が「リラックスしている」かまたは「変形している」かを決めるのに役立つ。すなわち抵抗が高いと、顔の上のポイントが既に変形状態に達していることを示し、抵抗が低いのはリラックスした状態を示す。抵抗の情報は、下層の軟組織の厚みおよび/またはその領域における表面の最大たわみを予測するのに役立つ。これは軟組織の特性を特徴づける能力となり、したがって特別注文の患者インターフェースの製造の入力値となる。さらに、機械的方法と電気的方法によってロッド7001を制御して塑性的変形に抗することができる。機械的方法は、ロッド7001が動くとき粘性流体に接触させるかまたはその中にすっぽり入れてロッド7001が経験する摩擦を増減することを含む。電気的方法は、金属ロッドの動きに抗する磁場または圧電性材料を制御するソフトウエアを含む。逆に、ロッド7001が顔の上に置かれた時、ロッド7001が顔の表面を変形させ、これによって変形した状態のデータが収集できるようにロッド7001の力が使用できるかつ制御できる。
【0325】
ロッド7001は追加または代案として、弾性係数のような患者の顔の機械的特性を特徴づける。例えばロッド7001は、ロッド7001と顔の間の力(または圧力)ならびにロッド7001の移動の方向における顔のたわみの大きさを測定する。このような方法を使って、ロッド7001は顔の係数をロッド7001の移動の方向に沿って特徴付けるが、この係数は一定値ではない。例えば、変形がゼロの時の弾性係数は、顔がロッド7001によって1mm押し下げられたところで異なり、さらに顔がロッド7001によって2mm押し下げられたところで異なる。いくつかの形態において、上記の方法を使用して関係のセット(例えば、関数、表または曲線)が生成でき、所望により1つまたはそれ以上の方向における顔の潜在的に非リニアの係数が特徴づけられる。以下の詳細に記述されるように、次いでこのような関係のセットを使用して負荷にかかった顔の挙動が(例えば、有限要素モデリングのソフトウエアを使って)モデリングできる。
【0326】
それぞれのロッド7001は、患者の顔の特徴を要望通りに正確に測定するように構成された患者エンドを含むが、不快なので患者はデータ収集システム7000を使用を妨げるかもしれない。1形態において、ロッド7001患者エンドはドーム形状または平らなディスク形状を含む。各ロッド7001で測定された力または圧力は、ロッド7001の患者エンド形状の特定の形状次第で異なる。例えば、ドーム形状を使用すると、ロッド7001が患者の顔に接触するようになると、顔と接触する領域(接触領域)がドームの先端で効果的な非常に小さいポイントとなる。ロッド7001が移動を続け、顔の表面を変形させると、ドームの全表面顔と接触するまで接触領域のサイズは大きくなる。逆に、平らな形状(例えば、ディスク)を使用していると、患者の顔にある任意の湾曲は点の接触になる。
【0327】
好ましくは、ロッド7001の患者端の形状は(例えば、ドームの場合は曲率と半径、または平らなディスクであれば半径)、接触面積のサイズの変化による任意の影響を考慮されるように、接触領域の大きさが既知、または決定できる。
【0328】
いくつかの場合には、例えばデータ取集システム7000を作成するコストを低減するために、ロッド7001の数を最少限にすることが望まれる。1つの実施例において、ロッド7001を密度が変動する配列に置いてそれらの数を低減する。データ収集システム7000は、顔の曲率がその他の領域より大きくなることが期待されるように、取得する測定の解像度が高いことが要求される場合、高密度のロッド7001を含む。例えば、高密度のロッド7001は、患者の頬に置かれるデータ収集システム7000の領域に置かれ、低密度のロッドは、患者の上唇に置かれるデータ収集システム7000の領域の周りに置かれる。
【0329】
1つの形態において、データ収集システム7000は、ロッド7001を単一の方向に配置するように、顔と頭部を単一の方向に特徴づけるように配置される。しかしその他の形態では、ロッド7001はデータ収集システム7000における変動する方向に置かれ、顔と各領域における患者インターフェースクッション間の期待される係合の方向のような、顔と頭部を複数の方向に特徴づける。例えば、患者の下頬に対するデータ収集7000の領域の周りのロッド7001の方向は、患者の上頬または鼻梁に対するロッド7001の方向と異なる。いくつかの形態において、データ収集システム7000は、顔の同じ領域を異なる方向に特徴づけるよう構成された複数のロッド7001を含む。例えば、1つのロッド7001は前方/後方に沿った率を特徴づけることができ、もう1つのロッドは左右方向に沿った同じ場所における率を特徴づける。
【0330】
1つの実施例において、供給された抵抗は、患者インターフェース接触圧力とCPAP圧力を患者インターフェース内で(例えば、2乃至40cmH
2O)模倣する。このように患者の顔と頭部の変形した状態も捕獲できる。さらに、顔と頭部が負荷(例えば、圧力/力)のもとで変形する時の挙動を特徴付けることにより、患者インターフェースのカスタマイズが可能になり、患者インターフェース内に提供された圧力の変化ができる。いくつかの場合において、患者の顔と頭部の測定を患者の滴定の前に実施でき、適切な治療圧力(または圧力範囲)を決定する。このような場合、(変形の程度のような)一連の状態にわたる顔と頭部の特徴付け(例えば、弾性係数)は、患者が滴定を受けている時により適切なカスタマイズされた患者インターフェースを生成する。非接触方法は睡眠専門クリニックまたは薬局で実施できる。代案として、装置を患者のもとに届けてデータを収集し、使用後にデザイナーに返却する。
【0331】
追加の医療用映像化技法も使用でき、患者の顔と頭部の構造の三次元画像を取得する。これにはCTスキャン、超音波およびMRIが含まれるがこれに限定されない。このように診断中に生成された画像の同じセットを使用して、患者の顔と頭部(鼻、頬、口、眼、歯、耳など)の三次元表面モデルを計算し提供できる。このような方法は、表面ばかりではなく、その下にある軟組織と骨構造も捕獲する追加の利得があり、これを使って患者の患者インターフェースのデザインがさらに改良できる。
【0332】
図7Bに示すように、データ収集のもう1つの実施態様は、型をとるまたは患者の顔7050の鋳型を生成し、それらの個々の顔の特徴を鋳込み材料の中のインプリントとして捉えることを含む。このような実施態様は、石膏、熱可塑性プラスチックまたは室温で加硫処理されるシリコンのような鋳込材料が使用できる。鋳込材料7060は最初は展性があり患者の顔7050に適用してインプリントを形成し、次いで凝固して個々の患者の顔の幾何形状を鋳型7065の中永久に保存する。患者の顔を鋳込んで鋳型7065を形成するプロセスは事前のプロセスと考えられる。
【0333】
患者の顔7050の鋳型が創られると、以前に記載した非接触法または接触法を使用してそれをスキャニングする。非接触法を使用すると、鋳型7065から患者の顔7050のデジタル画像が捉えられ、スキャナー7070を使用して記録される。代案として、鋳型7065を直接患者インターフェース製造プロセスの中でユニークな顔の特徴を患者インターフェースのデザインの態様に送達/成形する方法として使用できる。鋳型7065は、患者インターフェースの共通のコンポーネントを創るのに使用されるその他のツーリング7075と集合され、新しいまたは既存の患者インターフェースのデザインに特別注文の特質を付与する。鋳型7065の一部を、例えば患者の鼻に相当する部分、
顔の鋳型全体から抽出または切り通ることができる。次いでこの切り取った部分を特別注文患者インターフェースの製造のツールの中に置く。
【0334】
5.11.2.2 変形状態データ収集4302
接触または感触のよい画像システムに関して述べたように、変形状態データ収集4302はある場合にはリラックスした状態のデータ収集の同じ方法または技法を用いて実施できる。顔変形装置8001は、変形状態収集4302のためにデータを収集する場合に有用である。顔に加える力は調整可能である。
【0335】
この方法は、剛体または準剛体の変形装置8001を患者の皮膚8050に置くことを含み、これが所定のヘッダー張力ならびにCPAP圧力のもとでCPAP治療の間、顔の変形を模倣する。変形装置8001が摩耗してしまうと、リラックスした状態のデータ収集の上記の任意方法で表面が捕捉される。任意選択で、変形装置8001を透明な材料で構築し、視覚表面捕捉方法(カメラ8002によって概略が示される)が「変形した」患者の顔の表面を捕捉できるようにする。
【0336】
変形装置8001は、容易に識別可能または医療画像上でヒトの組織と対照的な材料(例えば、X線不透過像)を含むことができる。このように医療画像上では、皮膚と装置間の境界は速やかに識別可能で、患者の皮膚上の三次元表面が計算できる。変形装置8001は睡眠専門クリニックで利用でき、または装置を患者のもとに届けてデータを収集し使用後に返却する。
【0337】
変形装置8001は、剛性の材料からシリコンクッションのような柔軟な材料を含むことができる。材料の硬度は異なるグレードの範囲があり、1乃至10Nのヘッダーの力にかかった患者の上の患者インターフェースおよびCPAP圧力が5乃至45cmH
20(任意選択で10乃至20cmH
2O)をシミュレートする。
【0338】
図8Bの例に示すように、変形装置8010は所定の位置(例えば、鼻梁8051)で顔に押しつけるようにデザインされ、皮膚の表面を変形させて患者インターフェースおよび/または空気圧をシミュレートするプッシャーまたはデフレクターの形態でよい。デフレクターを顔の上に置いてしまえば、変形した表面8055が上記の任意の方法で捕捉され、リラックスした状態のデータが収集される。
【0339】
特別注文の患者インターフェースを着用する意図のある患者は、多分仰臥位で患者インターフェースを着用する。重力が顔におよぼす影響は、重力に対する顔のアライメントの関数として変動するので、仰臥位における顔の表面幾何形状を示すことは望ましい。これは患者が横たわっている間に上記の任意の技法を使用して、スキャンによって達成される。代案として、顔の期待される幾何形状を患者の顔の直立のスキャンにアルゴリズムを適用することによって決定できる。このアルゴリズムは、患者の年齢、性別、BMI、民族性および/または受け身型の顔の動きの期待される大きさに影響する、その他の要素を考慮に入れている。この予測アルゴリズムは、詳細を説明するANSYSのような生理学的なモデリングソフトウエアを使用して実行される。
【0340】
5.11.2.3 圧力マッピング4303
患者インターフェース・シール形成構造3100の患者にかかる圧力も、最良適合と快適さのために、圧力マッピング4303を経て測定する。1実施例において、何もない患者インターフェースまたはダミーの患者インターフェースを着用して、ダミーの患者インターフェース8020と患者の皮膚8050の間に感触のよい圧力フィルムセンサー8021を配置する。圧力フィルム8021は、一定の患者人口(例えば、成人、子供、民族性など)に適合するように汎用の形状でよい。ダミーの患者インターフェース8020を着用すると、フィルム8021が患者の顔で経験する圧力値のグリッドが測定できる。患者インターフェースの周辺周りの適切なシールを確実なものとするために、所定の範囲内の圧力値を目標にする。このプロセスで取得したデータは、患者接触表面上の圧力測定のグリッドに加えてダミーの患者インターフェース8020の既知の幾何形状を含む。このようなデータをプロセッサー8022が有するコンピュータに送って、チャート、表またはこの技法で得た圧力値から圧力マップ8030のようなダイアグラムを生成するのに使用できる。
【0341】
いくつかの実施例において、ダミーの患者インターフェース8020は、人口に基づいた包括的な患者インターフェースの形状を含む。ダミーの患者インターフェース8020は、顔上の現実な患者インターフェースを模倣するために柔らかいクッションをさらに有する。いくつかの実施例において、柔らかいクッションはシリコン、発泡体、ゲルおよびその他の適当な材料を含む。
【0342】
ユーザの好みと、ユーザ入力もユーザ入力4304で収集できる。これには形状、機能、審美性、快適またはその他の好みに関する種々のデータが含まれ、リラックスした状態のデータ収集4301、変形状態のデータ収集4302および圧力マッピング4303に続いて以下の詳細に説明する。
【0343】
5.11.3 データ処理4400
ステップ4300からの収集された患者データは、その患者の患者インターフェースを作成する前に、データ処理ステップ4400で変形または処理される。データ処理4400がない場合は、スキャンした顔(表在性トポグラフィー)の鏡像を使用して患者のインターフェースを創る。しかし顔上のシーリング領域のある部分には異なるレベルのシーリング力が必要で、あるいは厳密なヘッドギアの圧力に対してより敏感で、または複雑な顔の幾何形状のためにその場所で漏れが生じる可能性が高いため、このような患者インターフェースは必ずしも理想的ではない。データ処理4400は、性能と快適さに関する、このような繊細な詳細を考慮している。
【0344】
図9Aは、患者インターフェースカスタマイズ方法4000のデータ収集4300、データ処理4400および出力データパッケージ4450の詳細なフローチャートである。
【0345】
1実施例において、リラックスした状態データ収集4301からリラックスした状態幾何形状データを使用して、変形状態幾何形状を直接測定できない場合または利用できない場合、その指示を試みるまたは提供する。リラックスしたデータ後処理4401においてシミュレーションソフトウエアを使用して、変形状態をシミュレートする。適切なシミュレーションソフトウエアの例に、リラックスしたデータ後処理ステップ4401において、「リラックスした」から「変形した」状態幾何形状データへの転換を実行するANSYSが含まれるが、これに限定されない。
【0346】
幾何形状データにおける「リラックスした」状態と「変形した」状態のデータを使って、(ANSYSのような)有限要素ソフトウエアを使用して、患者インターフェース接触領域と、経験した圧力4402のシミュレーションにおける患者の顔の間で経験するおおよその圧力を計算する。代案として、上記に説明したように圧力データを、圧力マッピング4303を経て、別々に集めることができる。このように、リラックスした状態データ収集4301から、変形した幾何形状を経験した圧力と共に推定でき、データ収集ステップの1つまたはそれ以上が利用できなくても、システムはカスタマイズされた患者インターフェースを提供することができる。
【0347】
測定データ、幾何形状または圧力データのいずれか、特別な考慮が必要なインターフェース上の領域または特徴は、特定の特徴処理4403で決定、対処できる。任意選択で、測定源の任意の組み合わせからのデータは、快適さ、有効性およびデザインへの準拠のゴールに加えて、幾何形状と圧力データセットのいずれも含む包括的なモデルが提供できる。
【0348】
さらに、ユーザの経験を増やし患者の介入を増すために、患者インターフェースカスタマイズ方法4000はプラットフォームを提案し、これを通してユーザは最終製品へのデザイン入力を有する。このシステムは、マイナーからメジャーへのデザイン制御の範囲のユーザ入力を、デザイナーおよび/または製造者のデザイン入力があってもなくても、提供することができる。これは下記を含むが、これに限定されない:審美性、機械的考慮、治療に依存する変数、快適さおよびシール特性。このデータはデータ入力4304に集められ、データ処理4400の患者好みの適用4404の中で処理される。
【0349】
5.11.3.1 関連データ後処理4401
顔は静的表面ではない。むしろ患者インターフェースからの力、顔への空気圧および重力のような外部条件との相互作用に適合かつ変化する。これらの相互作用を明らかにすると、患者に最適のシールと快適さを提供するために追加の利点が得られる。3つの実施例がこの処理を例示している。
【0350】
最初に、これらの患者インターフェースを着用している患者はCPAP圧力を経験するので、この知識を利用して快適さと患者インターフェースのシーリングが強化される。(例えば、軟組織特性または弾性係数のような)既知の特性と共に、シミュレーションソフトウエアは、患者インターフェース内の特定の圧力において顔の表面が経験する変形を予測するのに役立つ。
【0351】
組織の特性は既知で、下記の任意の顔の位置に関する集団に対して集めることができる:眉間の上、眉間、鼻根点、鼻の終端、中央人中、上唇縁、下唇縁、顎−唇ひだ、メンタルエミネンス、顎の下、前頭結節、眼窩上、側部眉間、外側鼻、眼窩下、下頬骨、外側鼻孔、鼻唇突起、上犬歯、下犬歯、メンタル小瘤前方、外側眼窩、中間外側眼窩、関節窩上、頬骨、側面、上−M2、そしゃく筋、咬合線、サブ−M2、下顎角点および中下顎角。
【0352】
図9Bは、1実施例の例示で、ここで軟組織の厚みが患者9000の少なくとも1つの次の位置の人体計測データベースから知れる:ナシアン9003、鼻の終端9004、中央人中9005、顎−唇ひだ9008、メンタルエミネンス9009、前頭結節9015、下骨頬9016、外側鼻9017、鼻唇突起9018、上犬歯9019、下犬歯9020。
図9Bに示すように、眼窩下9015、下頬骨9016、外側鼻9017、鼻唇突起9018、上犬歯9019および下犬歯9020などの位置は顔の両側に配置されている(例えば、前頭結節9015は、鼻を横切って顔の反対側に鏡像位置を有している)。
【0353】
任意の1つまたはそれ以上のこれらの位置における既知の組織特性は、軟組織の厚さ、力に基づいた弾性率データ、撓み、係数および厚さ、軟組織厚さ比情報および体格指数(BMI)の任意の1つまたはそれ以上を含む。
【0354】
2番目に、CPAP患者インターフェースを顔上に着用すると、患者の顔上の皮膚表面が有意に変形する。リラックスした状態の頭部と顔の幾何学的表面の最初の三次元測定値を使って、上記に説明した皮膚/軟組織特性の知識とシミュレーションソフトウエアを用いて表面の変化が予測できる。このような技法は対話式で、最適化プロセスがデザインプロセスに連結されている。
【0355】
3番目に、患者の就寝姿勢が与えられると、皮膚表面は重力によって変形することがある。このような変化を、シミュレーション・ソフトウエアと共に皮膚と軟組織の特性の知識を使って予測することは、種々な就寝姿勢における高性能患者インターフェースをデザインするのに役立つ。
図9Cに示すように、幾何形状における直立から背臥位への変化に関連したデータを収集して、ナシアン9003、鼻の終端9004、中央人中9005、顎−唇ひだ9008、眼窩下9015、外側鼻9017、鼻唇突起9018、上犬歯9019、下犬歯9020のような1つまたはそれ以上の関心のある領域から収集して使用できる。
【0356】
5.11.3.2 経験した圧力のシミュレーション4402
(ANSYSのような)有限要素解析(FEA)ソフトウエアを使用して、患者インターフェース接触領域と患者の顔の間で経験したおおよその圧力値が計算できる。1形態において、入力は「リラックスした」および「変形した」状態における顔の幾何形状、いろいろな位置における顔の特性(例えば、測定した弾性係数または剛性のような既知の特性を持った準構造)を含む。このような入力を使用して、顔の有限要素(FE)モデルが構築でき、それを用いて入力(変形または負荷)に対する顔の1つまたはそれ以上の反応が予測できる。例えば、顔のFEモデルを使用して患者インターフェースにおける圧力レベル(例えば、15cmH
2O)に対する顔の変形形状が予測できる。いくつかの形態において、FEモデルは患者インターフェースまたはクッションのようなその一部のモデルをさらに含むことができ、クッションの幾何形状とその特性(例えば、弾性係数のような機械的特性)から成る。このようなモデルは、例えばCPAP圧力の適用のようなクッションに内部負荷がかかった時、それらの間の負荷/圧力を含みクッションと顔の相互作用が生じ、顔が変形した場合、クッションの変形が予測できる。特に、あるポイントおけるリラックスした状態と変形した状態間の距離の変化を、対応する組織の特性と共に、あるポイント(例えば、頬骨)で経験した圧力を予測するのに用いることができる。
【0357】
5.11.3.3 特定の特性処理4403
患者の顔にある領域または特性は特別な考慮を要する。これらの特性を識別し調整すると、患者インターフェースの全体的な快適さが改善できる。上記に説明したデータ収集と推定技法から、適切な特性をカスタマイズされた患者インターフェースに適用できる。
【0358】
特に、顔の上の異なる領域は異なる要件を持っている。以下の表は関心のある予測される領域の例を示す。
【表4】
【0359】
上記の圧力感度、圧力準拠、せん断感度およびせん断準拠インジケータに加えて、顔面の髪、ヘアスタイルおよび目立った鼻梁、こけた頬などに特別な考慮が必要である。本明細書で使用される「せん断感度」は患者のせん断に対する感じを指し、一方「せん断準拠」は患者の皮膚が如何に進んでせん断と移動するかまたは準拠するかを指す。
【0360】
5.11.3.4 患者の好みの適用4404
関心のある領域に加えて、ユーザとデザイナー間の相乗効果が、患者のニーズに対してより楽しい経験と良好な患者インターフェースが提供できる。このような患者入力は患者の好みの適用4404において適用できる。
【0361】
1実施例において、オンラインポータルが創られ、患者はデザインプロセスに参画できる。カスタマイズされた患者インターフェースに最適の快適さと性能を提供するため、患者とデザイナーおよび/またはメーカ間で会話することは有利である。1つの選択肢は、患者が自分の患者インターフェースのデザインに入力できる環境およびデザイナーおよび/またはメーカもオンラインポータル経由で推奨事項を提供できる環境を創ることである。
【0362】
オンラインポータルまたはスマートフォーンを使って、患者は自分のオンライン・プロフィルを創り、治療の進行の記録をつけたり、三次元データをアップロードまたは審美および/または機能的特徴を通じてカスタマイズされた、患者インターフェースをデザインするなど種々なタスクを行うことができる。いくつかの実施例において、審美の入力は自分の患者インターフェースに現れる色、スキームおよび/またはパターンの選択を含む。ユーザも自分の患者インターフェースにパターンまたは色をアップロードでき、快適さ、触知または温度の好みに合わせて材料の仕上げが選択でき(例えば、接触、フレームまたはヘッドギアの材料)および/または種々なヘッドギアのスタイルが選択できる。いくつかの実施例において、機能的入力はヘッドギアの弾性(例えば、引張り強度特性)、患者インターフェースのタイプ(例えば、鼻、フルフェースなど)、ヘッドギアの取り付けポイント(例えば、所望のポイント数、安定性と嵩高さの妥協または磁石の様な取り付けのタイプ)、患者インターフェースの容積(嵩高さvs呼吸し易さ)、患者インターフェースにおける追加センサー、エルボー/旋回台の選択、ベント位置と方向、ユーザはメガネをかけているかどうか、油性肌または乾燥肌のような皮膚のタイプを含む。ユーザは患者インターフェースまたはそのほかの製品を注文することおよびソーシャルネットワーキングサービスに参画することもでき、ここで患者は自分たちのCPAP経験または患者インターフェースのデザインをシェアすることができる。
【0363】
図10Aは、患者の入力10010、10020、10030を取り入れるように調整された鼻の患者インターフェース10000の1例を示す。メガネに関する最初の入力10010に応じて、対応する当て物10012が所望の位置に追加される。ゲルの追加に関する第2の入力10020に応じて、対応するゲル部分10022が鼻孔に隣接して追加される。顎髭の関する第3の入力10030に応じて、顎髭パッチ10032が追加されて快適さを増す。このようにこれらの追加の患者に特有の基準が、患者インターフェースのデザインと製造において考慮される。
【0364】
情報は、患者とデザイナー間で両方向に流れる。すなわち患者の入力に加えて、デザイナーが患者にある特徴を提案することができる。例えば、デザイナーは一連の製品オプションを推奨事項と共に患者に提供できる。このような推奨事項は患者に対する問い合わせ、漏れに関するデータ、使用時間または収集したデータからのデータ(例えば、幾何学的表面または圧力マップ)のような装置の使用データ、審美的に喜ばれる患者インターフェースを生成するための肌の色合いおよび色、患者インターフェースのサイズとタイプ、および/または頭部の形状からのヘッドギアの構造などに基づいている。エルボー/チューブのタイプと方向も考慮され、推奨事項はそれらに関して患者に伝えられる。
【0365】
このように、デザイナーおよび/またはメーカは
図10Bに示す患者10100と患者10200に、彼らの頭部の形状の差に基づいて異なるヘッドギアを勧めて患者インターフェースの安定性を高める。さらに、患者10200には適切でない特定のヘッドギアは、例えば不快が予測されるので、お粗末な選択とされる。
【0366】
提案するシステムはフィードバックツールも提供し、これを使って人は三次元レンダリングに置かれた自分のカスタマイズされたデザインを見ることができ、
図10Cに示す仮想リハーサルを創ることができる。このように、1実施例において患者の頭部10300をスキャンして、そのデータを仮想ポータル1400へ送り、ここで多数の患者インターフェース10401上でレンダリングされる。ユーザは特定のタイプの患者インターフェースまたはヘッドギアのタイプを選択すると同時に、スタイル、色などの複数のパラメータが調整できる。完了すると、患者は顔にレンダリングしたデザインの絵(またはデザインのみ)を印刷して、選択したデザインをさらに処理および/または製造のために送る。
【0367】
5.11.4 出力データパッケージ4450
本明細書で使用する「データパッケージ」は、患者インターフェースをデザインするプロセスのための入力として使用されるデータパケットを意味する。データパッケージの中にはいくつかのデータのサブセットがあり、患者データ収集4300で捕捉したデータ、特定の特質処理4403後のデータの機能拡張版およびユーザ入力4304が含まれる。
【0368】
これらのデータパッケージには、患者インターフェースデザイン4500の中の患者インターフェースのデザインに必要なすべての入力情報が含まれている。患者インターフェースデザイン4500は、データパッケージの中の情報に直接応答するカスタマイズされた患者インターフェースデザインを創るために、データパッケージを入力として利用するアルゴリズムを含むことができる。代案として、データパッケージはデザイナーが直接使用してカスタマイズされた患者インターフェースデザインを創ることができ、これは高コストであるが、全面的に手製の方法である。データパッケージは必要なら将来のために保存できる。2つのデータパッケージが簡単に議論された。これらには幾何学的表面モデルデザインパッケージ4451と圧力マップデザインパッケージ4452が含まれる。
【0369】
5.11.4.1 三次元幾何学的表面モデルデザインパッケージ4451
三次元幾何学的表面モデルデザインパッケージ4451は、捕捉したデータがデータ処理4400で処理された後で、患者の顔と頭部の三次元幾何学的表面モデルを含む。三次元モデルと共に、このパッケージは明記した患者の好みと入力も含む。
【0370】
5.11.4.2 圧力マップデザインパッケージ4452
圧力マップデザインパッケージ4452は、捕捉したデータがデータ処理4400で処理された後の患者の顔の圧力マップを含む。この圧力マップと共にこのパッケージは明記した患者の好みと入力も含む。
【0371】
5.11.5 患者インターフェースデザイン4500
患者インターフェースデザイン4500は、データパッケージ4451、4452を処理するアルゴリズムのシステムを含む。患者インターフェースデザイン4500は、データパッケージである入力に応答するスマートシステムとして働き、出力をその特定のデータパッケージからのデザインされたカスタムインターフェースとして計算する。このように患者インターフェースデザイン4500は入ってくるデータパッケージを獲り、患者の好み入力と共に、データ(三次元幾何学的表面および/または2次元圧力マップ)を使用し、少なくとも1つのカスタムコンポーネントを計算する。
【0372】
図11は、患者インターフェース11000の基本的エレメンツを例示した系統図である。基本的患者インターフェース構造11000は3つの主要部分に分けられ、それぞれが同時に標準化されるかまたはカスタマイズされるかまたは要求に応じて任意の組み合わせとする。図示のように、患者インターフェース構造11000はフレーム11001、中間構造11002およびシーリングエレメント11003を含む。
【0373】
フレーム11001は、患者の顔と関連の機能的デッドスペースからオフセット距離を提供するコンポーネントであると一般に考えられている。流れ源からの空気的接続も行われるコンポーネントでもある。中間構造11002はいくつかの機能を有している。まず中間構造11002は、フレーム11001を顔からオフセットするのに役立つ。フレーム11001とシーリングエレメント11003にも取り付け方法を提供する。それは標準化されたフレームとカスタム・シーリングエレメント11003の間に幾何学的変遷を提供する。逆も同様である。中間構造11002も幾何学的または材料特性のいずれかを通してカスタマイズされ、改善された治療のユーザーの快適さ/効率を提供する。シーリングエレメント11003は、シールを達成するためにエラストマーにデザインされた幾何形状(例えば、現在の患者インターフェースデザインに似たメンブレン)または柔らかいエラストマー、発泡体、ゲル、織物および/または粘り気のある/粘着性の材料のようなシールを可能にする適切な特性の材料のいずれかを含む。
【0374】
5.11.5.1 フレームのカスタマイズ
機能性と快適さを増すために、フレーム11001はいろいろな方法でカスタマイズできる。
図12A−Cを参照しながら3つの方法を説明する。ただしカスタマイズはこれらの3つの例に限定されず、それぞれのバリエーションも可能であることが理解されよう。
【0375】
最初の例(
図12A)において、データ収集4300で議論した任意の技法を使用して
患者の顔12050をスキャンする。次いでアルゴリズムは患者の顔12050の非シーリング表面のような表面をオフセットしトリムして、患者の顔の変換コピーである患者インターフェースフレーム12010を生成する。オフセットは所定のオフセット値の01である。いくつかの実施例において、オフセット値01は約0乃至20.0mmである。少なくともいくつかその他の実施例において、オフセット値01は約5.0乃至10.0mmである。オフセット値01は顔の周りで可変または一定である。このようにいくつかの実施例では一定のオフセット値01乃至5.0mmが患者インタフェースの各ポイントに適用される。代案としてオフセット値01は、初期値01の5.0mmが鼻の隣に適用され、異なるオフセット値01の6.0mmが頬骨の知覚に適用される。この実施例において、機能的デッドスペースとベント流の要件が制御できる(例えば、機能的デッドスペースとベント流の要件は増減できる)。その結果患者インターフェースはコンパクトにでき、視覚的閉塞性は制限される。接触圧力を均等に分布させることができ、安定性が増す。この要領でヘッダーの張力も低減できる。接触面積が増大すると、以下に詳細の記述するようにシーリングも改善できる。
【0376】
オフセット値01を0mmに設定すると、患者インターフェースのフレーム12010が患者の皮膚に全面的に接触する。この接触において、快適さを増すために患者インターフェースを1つの部分から一体として形成できる。このように、フレーム12010は‘従来の’フレームとは異なり、柔らかいまたはエラストマーの材料で作ることができる。この実施例において、鼻孔または小鼻は固定点として働く。
【0377】
第2の実施例(
図12B)において、患者の顔12050をスキャンし、アルゴリズムが関連の表面をコピーしオフセットして、矢状面においてこれらの表面を標準化されたクッションインターフェーシング表面に融合する形状を有するカスタマイズされたフレームアセンブリー12020を創る。この技法は、機能的デッドスペースならびにベント流の要件が低減できる。その結果、患者インターフェースもコンパクトになり、視覚的閉塞性が制限される。この実施例はさらに、より標準化されたロック/キーインターフェースを、フレーム12020と対応する中間構造またはシーリングエレメント11003の間に提供し、これにより装置全体をカスタマイズするのに対してあるインサートのみをカスタマイズすればよいので、製造の経済性が改善される。
【0378】
第3の実施例において(
図12C)、患者の顔12050をスキャンし、アルゴリズムが関連の表面をコピーしオフセットして、前頭面においてこれらの表面を標準化されたチューブ/エルボー取り付けポイントに融合する形状を有するカスタマイズされたフレームアセンブリー12030を創る。この技法は接触圧力を均等に配分し、安定性を高め、ヘッドギアの張力を下げそしてフレーム12020に似た標準化を可能にする。このようにフレーム12030は種々のエルボー/短いチューブとのロック/キーインターフェースを提供し、またはエルボーの既存の配列を使用する(例えば、3つまたはそれ以上のエルボーの1つを選択する)。所望であれば、カスタマイズされたエルボーも創ることができる。
【0379】
既存のフレーム/ヘッドギアの組み合わせもカスタマイズなしに使用できる。これらの実施例において、中間構造および/またはシーリングエレメンツ11003をカスタマイズして標準化されたフレームまたは標準化されたフレームの配列に連結できる。以下の実施例において、1つ少ないコンポーネントをカスタマイズして価格を下げ、製造可能性を高める。
【0380】
図12D−Fにおいて、標準化された3つのフレーム12040、12041、12042がユーザに提供された。データ収集4300に基づいて、アルゴリズムが標準化されたフレーム12040、12041、12042のいずれが患者に最適なのか決定できる。次いでカスタマイズされた中間構造および/またはシーリングエレメント11003が独立して形成され、標準化されたフレームとインターロックするように構成される。顔の大きさに基づいて適切なフレームが選択され、患者インターフェースのその他のカスタマイズされたコンポーネント12070と結合するための有鍵のインターロックシステム12060を含むことができる。
【0381】
5.11.5.2 中間構造のカスタマイズ
フレームと同様に、中間構造11002も標準化するかまたはカスタマイズできる。最適の快適さとシールを達成するために、中間構造を患者データからカスタマイズしてマクロ調整および/またはマイクロ調整を患者に提供できる。本明細書で使用するマイクロ調整は、シーリング面または材料による相対的に僅かな調整で、2mm以下またはこれに等しい変形を収納する。この機能を実行可能な中間構造11002の例は、発泡体または柔らかいデュロメーター・シリコンでできたものである。さらにマイクロ調整は、シーリング面またはその他の患者インターフェースコンポーネントによる相対的に大きい調整で、2mmより大きい変形を収納する。この機能が実行できる中間構造11002の例はより高い(または厚い)デュロメーター・シリコンまたは発泡体置換である。このように1実施例(
図13A)において、中間構造13010は、マイクロ調整および/またはマイクロ調整に対して調整できる2つのコンポーネントを含む。最初のコンポーネント13012は剛体のまたは準剛体の材料で形成でき、正しいマクロ調整を提供する。いくつかの実施例において、第1のコンポーネント13012の材料はプラスチック、熱硬化性樹脂または熱可塑性エラストマーまたはそれらの組み合わせを含む。細かい調整(例えば、マイクロリフト)を行うには、第2のコンポーネント13014を組み立て、第1のコンポーネント13012に連結して柔らかくて従順な表面を形成する。第2のコンポーネント13014はシリコン、発泡体、柔らかい熱可塑性エラストマー、粘性のあるシリコン、織物またはそれらの適切な組み合わせを含む。患者13050が、正しいマクロ調整とマイクロ調整に調整された2つのコンポーネント13012、13014を持った中間構造13010を有する患者インターフェースを着用している場合、優れた快適さとシーリングが可能である。
【0382】
カスタマイズされた中間構造13010は患者インターフェースの周りに最適のシーリングを提供し、患者の快適さを増し、接触圧力を均等に分布させる。さらに、中間構造の異なる部分に要望通りに材料が選択される。例えば鼻梁領域は、単一のグレードのシリコンまたはその他のより硬い材料を含む他の領域より柔らかいグレードのシリコン、発泡体または熱可塑性エラストマーを含む。材料の選択には、患者の好みも含まれる。このように材料は、圧力ポイントを緩和し、良好なシーリングを提供しそして快適さおよび/または安定性を増すように選択される。
【0383】
中間構造13010は、フレームとシーリングエレメントを互いに固定するためのカスタマイズされたコンポーネントとして働く。追加の利点には、カスタマイズフレームアセンブリから標準のシーリングエレメンツへ、およびその逆のスムーズに変遷する方法を提供すること、審美性を高め、取替のために少なくとも1つのコンポーネントの取替でコンポーネントを切り離す能力を含む。予め決められたロック/幾何形状を使用して、コンポーネントが間違ってほかの装置の正しくないコンポーネントにまたは適合しない機能性を持ったその他の装置または競合相手の製品に連結されるのを防止する。
【0384】
図13Bに示すように、ある中間構造13010は1つ以上のサイズおよび/または形状のフレーム13040、13042に連結できる。少なくともいくつかの実施例において単一の中間構造を、いろいろなサイズ、形状および/または多様なフレームに連結可能である。このように中間構造13010は、カスタマイズされたシーリングコンポーネントのアダプターの役目をすることができる。この能力を使って、患者は患者インターフェースを保持でき、従ってシーリングおよび/または快適さが改善される。
【0385】
5.11.5.3 シーリングエレメントのカスタマイズ
カスタマイズできる第3のコンポーネントはシーリングエレメントで、カスタマイズによって優れたシーリングと快適さを提供する。このようなカスタマイズの1例が
図11とユーザ入力を参照しながら簡単に説明された最適な快適さとシールは、所定の場所における適切な材料の選択と配置によって達成される。例えば、鼻梁の領域には柔らかいグレードのシリコン、発泡体または熱可塑性エラストマーが使用できる。材料の選択は患者の好みにも基づいており、シリコンクッション、発泡体、織物、編物、粘着性シリコン、熱可塑性エラストマー、ゲル、ポリウレタンおよびその他の適切な重合体およびこれらの任意の組み合わせを含む。材料を適切に選択することによって、圧力ポイントからの軽減が実現される。さらに患者の皮膚(例えば、顔ひげなど)の圧力とせん断に敏感な領域にも適切に対処できる。いくつかの実施例において、適当な材料は柔軟性があり、マクロのレベルでの患者インターフェースと顔の相互作用の改善に役立つ。
【0386】
シーリングエレメント13510幾何形状をカスタマイズして、快適さとシールの収集した患者データに合わせる。このような幾何学的な修正は、装置のマクロ調整とマイクロ調整のいずれにも影響する。適切なシーリングを提供するには、患者の顔13550の三次元幾何学的データと二次元の圧力データが、シーリングエレメント13510の幾何形状を決定する(
図13C)。例えば、シーリングエレメント13510の厚さは、二次元の圧力マップまたは変形した三次元表面データに部分的に基づいている。実施例を使ってリラックスした状態のデータ(実施例において実線で示す)と変形した三次元表面データ(実施例において点線で示す)および圧力マップを解析して、改善されたシーリングエレメント13510を患者13550用にカスタマイズできる。このように、変形した三次元表面データまたは圧力マップを考慮して、シーリングエレメント13510をシーリングエレメント13511の形状に修正できる。
【0387】
さらに、シーリング表面積(患者インターフェースが患者の皮膚に接触する総面積)を、1cm
2乃至30cm
2の範囲から選択して、患者インターフェースのシールを改善するかまたは接触圧力を分配して良好な快適さを得ることができる。
図13Dは、患者13550用の2つの可能性のある患者インターフェース13500、13502の例示で、それぞれがシーリング装置13520、13522を有している。シーリングエレメント13520は約15cm
2のシーリング領域を提供できるが、シーリングエレメント13522は約7cm
2のシーリング領域が提供できる。患者インターフェースの正しいシーリングのためには、接触の領域内に実線のあることで、この領域では平方センチメートル当たりのグラムで表したシーリング力が患者インターフェースにおける空気圧を超える。この条件は接触の領域の多くの部分で満足するが、満足するところでは実線がなければならない。圧力データとリラックスした状態/変形した状態の両方を解析して、正しいシーリング領域が選択され、適切なシーリングが提供され、一方患者インターフェース3000の不要な容積は低減される。
【0388】
シーリングエレメント13510の厚さと材料は患者インターフェースの快適さに貢献できる。いくつかの実施例において、シーリングエレメント13510の厚さは患者の快適さの好みに合うように0mm乃至50mmの範囲である。このように、最適シーリングエレメント13510は接触圧力を効果的に配分し、シーリング表面積に基づいて最適のシーリングを提供し、顔の構造および/または就寝位置における差異に関して患者インターフェース3000の安定性を改善し、本明細書に記載の任意の技法に基づいて快適さとシーリングを高める。
【0389】
5.1.5.3.1 クッションフィラー
クッションを有する実施態様において、クッションは充填材を含んで患者マスクに快適な取り付けを提供し、呼吸治療器具に効果的なシールを提供する。(例えば、
図14A−14Bに示される)典型的な実施態様において、マスククッション14102は内部クッションコンポーネント14104を採用している。外側バリアー14106はオプションでメンブレンでよいが、内部クッションに適用してチャンバー14108または内部クッションコンポーネント14104に関してセルを形成する。このチャンバーは任意選択で柔軟性があってよい。外側バリアー14106とチャンバー14108は、内部クッションコンポーネントに関して、マスククッション14102の患者接触側の役目をすることができる。このようにいくつかの実施態様においてクッションコンポーネントの内部特質は、患者の顔の特徴と少なくとも部分接触であるバリアーまたはバリアーメンブレンのより近位の外部特質と比較して、マスクと顔の接点に関して患者からより遠位である。さらに内部クッションコンポーネントは、外側バリアーによって完全にまたは部分的にカプセル化できる。このような場合には、チャンバーは外側バリアーと内部クッションコンポーネントによって形成された空洞である。さらに1つまたはそれ以上のコンポーネントは省略できることが理解されよう。例えば、チャンバー14108および/または外部バリアー14106は省略でき、皮膚と直接接触にある内部クッションコンポーネント14104となる。
【0390】
典型的には、内部クッションコンポーネントは柔らかくおよび/または弾力性があり、外側バリアーは天然材料または合成材料のしなやかおよび/または弾性的な層である。しかしいくつかの実施態様において、少なくとも一部を剛性または準合成材料で形成できる。任意選択で、内部クッションコンポーネントは、外部バリアーの少なくとも一部の充填材の役目をすることができる。
【0391】
いくつかの実施態様において、それぞれのバリアーまたはメンブレンはシリコン、ポリウレタンおよび/またはポリエチレンから形成される。バリアーは粘弾性の材料からも形成できる。マスククッションのコンポーネントおよび/またはメンブレンのいずれかまたは、両方のしなやかまたは弾性的な性質は、チャンバーに柔軟性の特質を提供する役目をする。いくつかの実施態様においてバリアーは、約0.2乃至5ミリメータの範囲のオーダーのように薄い。好ましくは、バリアーは約0.2乃至0.6ミリメータである。しかしいくつかの実施態様においてそれはこの範囲を超え、十分にしなやかで患者の顔の特定の領域または輪郭をシーリングと快適で効果的なシールができ、しかもチャンバーの内部の実体を維持している。
【0392】
さらに、外部バリアーは気体または液体のようなチャンバー材料14110を、チャンバー内で内部クッションコンポーネントとその他のバリアーまたはその他のバリアーメンブレンの間またはバリアーによって実質的に閉じ込められた領域内に保持する役目をすることができる。チャンバー材料は、マスククッションの所望の応答特性次第で、チャンバーを充填または部分的に充填する。好ましくはチャンバー材料は、チャンバー内で移動し、流れ、浸透するかまたは外部バリアーまたは外部バリアーメンブレンのような柔軟または弾力性のあるコンポーネントにかかる患者接触圧力に応答して変形する。例えば液体の外層は、外部バリアーと内部クッションコンポーネントの間に形成されたチャンバー内にとどまりまたは流れる。このようにいくつかの実施態様において、内部クッションコンポーネントが提供する構造と柔軟性は、このようなクッションコンポーネントを利用しているマスクが、患者のマクロ顔面特徴と一致するように働き(例えば、鼻および/または口)、一方チャンバーの外層はマクロ顔面局所解剖学に適合する。同様に、チャンバーの材料の選択した粘性または変形能次第で、外部バリアーは、使用中の動きに起因する顔面の輪郭の変化に対して(例えば、顔の表情)、内部クッションより速やかに応答し、呼吸治療の漏れに対してより効果的なシールを維持する。
【0393】
図14Cと14Dの実施態様に例示されているように、外部バリアー14106は、内部クッションコンポーネントの長さ(線Lで示す)に沿って延長するのに加えて、内部クッションコンポーネント14104の周辺を(線Pで示す)取り巻くチャンバーを形成できる。しかしこのチャンバーと内部クッションは、種々な形態に形成できる。チャンバーは、チャンバーの異なるセクションまたはセルによって達成される所望の柔軟性次第で、それぞれが同じチャンバー材料または異なるチャンバー材料を含む1つまたは複数の離散的セルで形成される。種々のチャンバー形態を示す例の実施態様が
図14C−14Eの断面のイラストに例示されている。
【0394】
図14Cにおいてチャンバー14108は、内部クッションコンポーネント14104の部分的周辺に沿って延びる。この例においてチャンバー14108は、マスククッションの内側壁部分(
図14Cと
図14Dで「ISW」で示す)の境界に沿って、また顔接触頂部(
図14Cと
図14Dで「FCS」で示す)の境界に沿って実質的に延びるが、外部壁部(
図14Cと
図14Dで「ESW」で示す)に沿ってはそうではない。
図14Cにおいてチャンバー14108は、マスククッションの顔接触頂部の境界に沿って実質的に延びるが、内壁部または外壁部のいずれかに沿って実質的に伸びない。
図14Eの実施例において、チャンバーはマスククッションの顔接触頂部の境界に沿って形成され、柔軟性のあるチャンバーフラップFを形成する。
図14Eのフラップ部Fは、外部側壁に近い顔接触頂部から延びるように例示されているが、代案または追加のフラップ部(図示せず)は任意選択で内壁部に近い顔接触頂部から延びる。これらの実施例のそれぞれは実質的に連続して囲まれたチャンバーとして一般に示されているが、内壁部、外壁部および顔接触頂部は、いくつかの実施態様においてそれぞれチャンバーの離散的セルで形成され、チャンバーの1つまたはそれ以上のその他の離散的セルに隣接することができる。
【0395】
有益なことには、クッションのコンポーネントの異なる材料または材料特性は、呼吸マスク用のクッションとして使用した場合、組み合わせて相乗的性能を生み出すことができる。
図14Fに例示されているように、任意の実施態様の内部クッションコンポーネントは、オープンセルまたはクローズドセル発泡体のような柔らかいバネ発泡体14560である。このコンポーネントは任意選択でポリエーテル、ウレタンまたはその他のエラストマー14562で形成できる。これはゲル14566または気泡、ビード、ペレット、ポリエステルおよび/またはスポンジボール14564をその中に含むゲルで形成することもできる。このような場合、ビード、ペレットおよび/またはスポンジボールは柔らかいおよび/または柔軟性がある。任意選択で、このようなビード、ペレットおよび/またはスポンジボールは液体または任意のそのほかのクッションコンポーネントまたはチャンバー材料でよい。内部クッションコンポーネントは、ゲルが飽和しているまたは浸透しているオープンセル発泡体で形成することさえできる。さらなる実施例として、内部クッションコンポーネントは母型構造のような三次元スペーサー織物またはその他の三次元構造またはパターンで形成できる。
【0396】
チャンバー材料が、流動性を有する物質または十分に低い粘度でチャンバー内でその動きを促進するその他の材料の場合は、本明細書で議論する1つまたはそれ以上の利点が達成される。その材料は例えば、空気のような気体または水のような液体、液体ゲル、食塩水またはオイルでよい。その材料は無菌水でもよい。このような低粘度では、チャンバー材料14110はチャンバー内を動くばかりではなく、随意に流れて内部クッションコンポーネントの材料または構造を通してまたは通過する。このようにいくつかの実施態様において、チャンバー材料は内部クッションコンポーネントを飽和させるかまたは内部クッションコンポーネントの部分がチャンバーの囲いの中に包まれるかまたは保持される程度まで、内部クッションコンポーネント多孔質またはオープン構造を通って移動する。例えば泡内部クッションコンポーネント内での流体の浸透は、内部クッションに、流体がない場合より大きい密度が提供でき、圧力下で患者が接触した時に異なる感触を与える。
【0397】
流体またはガスのようなチャンバー材料のチャンバーと内部クッションコンポーネント間の移動の例は、
図14Iと14Jを参照して考えることができる。この例では、マスククッション14102がチャンバー14108内で、これらの図では「+」記号で示されるチャンバー材料14110を有する。
図14Jに例示したように患者が外部バリアー14106に接触するなどして、外力FCがかかりマスククッションが圧縮されると、チャンバー材料14110が流れる(内部クッション14104とチャンバー14108の間の境界を横断する
図14Jの矢印で示される)。このような負荷のもとで外部チャンバー10の材料は、内部クッションコンポーネントまたはその開口部に事実上粘弾性の速さで移動する。負荷または力FCを緩めると、マスククッション14102は
図14Iに例示した非圧縮状態に戻る。このような場合、力FCが弱くなるとチャンバー材料14110はチャンバー14108に戻る。
【0398】
しかし
図14Fに例示されたクッションのようにいくつかの実施態様において、随意の内部バリアーメンブレン14512を含めて、チャンバー材料が内部クッションコンポーネントの材料または構造を通すかまたはそれらの中に浸透するのを妨げるかまたは防止する。このように、内部バリアーメンブレンは内部クッションコンポーネントを内部的にカプセル化して、チャンバーと内部クッションコンポーネントの間で材料が凝縮するのを防止する。このように内部と外部バリアーメンブレンはチャンバーの材料に対して2重シール空気袋として働き、チャンバーを内部クッションコンポーネントから離す。例えば、粘度の異なるゲルを内部クッションコンポーネントとチャンバー材料(内部バリアーメンブレン内)に利用して、低粘度ゲルをチャンバー内のチャンバー材料に利用できる。同様に、チャンバー内で水のような流体の流れが、内部バリアーがそれらの間にある状態で、例えばゲル内部クッションコンポーネントと混合するのを防止する。さらなる例において、例えば発泡体内部クッションコンポーネント内で、水のような流体の浸透を防止することによって、患者が使用する場合に軽い感触を内部クッションに提供できる。さらに、内部クッションコンポーネントの発泡体の量とチャンバー内の液体量の比率を変えることによって、患者が気付くマスククッションの硬さまたは快適さが調整できる。同様にチャンバーおよび/または外部バリアーの順応性または柔軟性に関して、内部クッションコンポーネントの順応性または柔軟性の程度を変えることによって、ユニークなマスク性能品質が提供できる。
【0399】
さらに
図14Fに例示されるように、本技術のマスククッションのコンポーネントは組み込まれまたは別のマスク相互接続コンポーネント14516を含み、このコンポーネントは任意選択で接着剤14518または他の締め付け剤またはコンポーネントによってマスククッションの別の部分に接着される。マスク相互接続コンポーネントは、クッションをマスクフレームに組み合わせてマスクアセンブリーとする取り付け装置の役目をする。この実施例において、マスク相互接続コンポーネント14516は、相互接続をマスクフレームに一時的に加えるオプションのクリップ14520を含む。マスク相互接続コンポーネント14516はキャップとして働き、チャンバー材料を外部バリアーメンブレン内に保持するのを支援する。このように相互接続は外部バリアーメンブレンに接着できる。もしこのような実施態様において組み込むのであれば、内部クッションコンポーネントおよび内部バリアーメンブレンに任意選択で接着できる。
【0400】
取外しできるマスククッション14102のマスクフレーム14690への組込が
図14G−Hに示す実施態様に例示されている。このバージョンでは、内部クッションコンポーネント14104のキャップ部分14672に使用する材料の撓みやすい性質によって、内部クッションコンポーネントキャップ部分がマスクフレームに対する相互接続として働くのを可能にする。この例においてマスクフレームは、キャップ部分に取り付けるようなサイズとされる。
図14Hに示すようにマスククッションは、次いでチャネル14692に押し込まれるかまたは挿入され、そこに保持される。チャネル14692の突起部14694で形成される圧縮取り付けおよびキャップ部14672の柔軟性、外部バリアーメンブレンおよび/または内部クッションコンコンポーネントが圧力シールを創り出し、ガスがガスポート14696を経てマスクに供給されるとき、処理ガスの圧力がマスクフレームとマスククッションの間から漏れるのを防止する。
【0401】
5.11.5.3.2 カスタマイズされたゲルクッション
以前に述べたチャンバー内の挿入のような充填材の組成またはクッションの1つまたはそれ以上のコンパートメンツまたはマスククッションの空気袋は、それ自身収集された患者データに基づいて選択され、快適さおよび/または性能を最適化する。このような組成は1つまたはそれ以上のゲルまたは他の流動性を有する材料を含む。クッションの中に配置すると、異なるタイプのゲルまたは材料がさまざまな構造特性を提供し、それぞれの患者のカスタマイズを可能にする。
【0402】
1実施例において(
図14およびK14Lを参照)、マスククッション14102は内部クッションコンポーネント14104および外部バリアー14106を使用し、内部クッションコンポーネント14104に関して内部クッションに加えてチャンバー14108を形成する。クッション14102の特性は、例えば内部クッションコンポーネント14104の各コンパートメントに加えられた各材料の量、形状、アライメントおよび/またはその他の特性(例えば、厚さ、形状、柔軟性、方向性湾曲)およびその形態のカスタマイズによって変動する。このように
図14Kに示す実施例において、第1の層14802、第2 の層14804および第3の層18106は内部クッションコンポーネント14104の中で積み重ねられる。図示のように、それぞれの層は異なる材料を含んでいる。さらに3つの材料の3つの層のそれぞれは任意の数の層または材料を使用してよく、以下に詳細を述べるように任意のバリエーションが可能である。この実施例において、3つの層は3つの異なる材料を含んでいる。しかし1つまたはそれ以上の層は、もう1つの層として同じ材料を含んでよい。本明細書では異なる‘材料’の参照は、変動する化学組成の材料に限定されないことが理解されよう。例えば、異なる材料への参照は、変動する材料特性を達成するための異なる形態(例えば、上記の種々の層における使用)における1つの物質(例えば混合物における単一の化合物)の使用を含む。例えば、圧縮性物質の密度を変えるまたは発泡体状物質の気孔率を変えると材料特性のバリエーションができ、異なる‘材料’を効果的に創ることができる。
【0403】
層14802、14804、14806に配置された材料は、シリコンまたは特性の変わるゲルのように、例えば、変動するデュロメータまたは気孔率を有するゲルのように流動性を有する。変動する特性を持った材料を使用すると、変動する形状と厚さの流動性の材料の層の使用が可能になり、内部クッションコンポーネント14104内に形成されて、クッション14102に対する所望の特性を達成する。ある場合には、異なるタイプの材料を単一のクッションで使用できる(例えば、クッションはゲルと所定のグレードのシリコンのいずれも含むことができる)。少なくともいくつかの実施例において、変動するグレードのシリコンが(複数の)層に使用される。加えて、多孔質発泡体状シリコンが使用でき、この場合発泡体の気孔率/密度が変動して、層の中の物質の機械的特性が調整され、クッションそのものが調整される。さらに、「中空」層(例えば、空気またはその他の適切なガスの層)も使用できる。圧縮性のガスを使用する場合は、材料が含まれているところ(例えば、内部クッションコンポーネント14104)の圧力が変動して、その結果特性が変動する。
【0404】
ある場合には、化学反応で発泡体状のシリコンが生成され、これがガス状の副産物を生成する。患者インターフェース(または内部クッションコンポーネント14104)の製造プロセスは、ガス状の副産物が患者インターフェース内で所定の場所に向けられるように、またはガス状の副産物の発生元のチャンバーにとどまるように構成される。少なくともいくつかの中空層は、ガス状の副産物を受け取って、中空層に満たすおよび/または加圧するように構成される。さらにまた代案として、ガス状の副産物は発泡体状のシリコンを含む、ガス状の副産物の起源である、任意のチャンバーを加圧するのに利用できる。ある場合には、患者インターフェース(または内部クッションコンポーネント14104)を、ガス状の副産物の所定の行き先の場所がガス状の副産物の起源の上になるように、ガス状の副産物が行き先の場所まで上がるように方向付けする。
【0405】
内部クッションコンポーネント14104内に置くその他の適切な材料は、温度のような外部変数を感知するかつ反応するように構成されている。例えば内部クッションコンポーネント14104は、温度によって色が変わるように(すなわちサーモクロミック)構成された層を含むことができる。このような層は、患者(または臨床医)に視覚的フィードバックメカニズム提供し、内部クッションコンポーネント14104が顔と密接な接触している箇所を決定する。
【0406】
各材料の層形成は、材料を連続して提供するおよび/または各層を形成するために導入された各材料の量を変動させて達成できる。各層の形状と構造は、材料を注入する内部クッションコンポーネント14104における異なるサイズのコンパートメントを用いて(例えば、
図14A−Cを参照)または材料をが注入されるときのクッション14102の方向を変えることができる。デザイナーが層の視覚的確認ができるように、例えば、各層の着色を違えて、各層をその他の層から視覚的に差別化できる。これはマスクで使用する層のカスタマイズの視覚的確認をユーザに提供し、マスクの次回の繰り返しのためのデータを得るためのフィードバックを改善することもできる。例えば、患者が単に「赤」コンポーネントは杓子定規であると言えば、デザイナーは問題と解法を速やかに識別する。さらに、材料または層を着色することによって、審美性が改善されるか患者の所望するようにカスタマイズできる。ある場合には、1つまたはそれ以上の層は、層の識別のために、患者の好みによる1つまたはそれ以上の香り付け剤を含む。さらに1つまたはそれ以上の層は薬剤を含み、皮膚を通して吸収または吸入のために気道への投入、放出するように構成できる。
【0407】
このように、層の数と材料ならびに選択した層の形状と相対的位置は、患者を念頭に置いて選択される。データ収集4300からの情報を使用して、患者Aに対する第1のクッションは、第1のコンパートメントに注入される材料Xと第2のコンパートメントに注入される材料Yで製造される(またはそれぞれ第1の層と第2の層それぞれを1つのコンパートメントとして)。第2の患者、患者B、については、材料Yは好ましくは第1のコンパートメントへ注入し、材料Zは第2のコンパートメントへ注入するとデータ収集が示す(またはそれぞれ第1の層と第2の層それぞれを1つのコンパートメントとして)。
【0408】
層またはコンパートメントは同じサイズまたは形状とする必要のないことが理解されよう。例えば、
図14Kのクッション14102の断面において、層14802は層14804より大きく、層14806のサイズに実質的に同じである。しかし3つの層14802、14804、14806の形状は全く異なる。異なる患者に対して、同じクッション14102を選択し、同じ材料とするが、層のサイズと形状は
図14Lに示すように変動する。この例では、層14806が最少で、層14804が最大である。このように、層またはコンパートメントのサイズと形状を変更して、剛性の大小を異なる位置において達成できる。
【0409】
1つまたはそれ以上のコンパートメントは、進行中にカスタマイズが可能であるように構成できる。例えば1つまたはそれ以上のコンパートメントはポートを含み、ここを通して流動性を有する物質を導入または除去できる。とりわけ、顔の敏感な領域(例えば、鼻骨または上唇)に置くチャンバーと交信するポートを含むのは好都合である。このように、もし患者が購入した患者インターフェースが、患者の鼻骨に過大な圧力をかけていることに気付けば、患者はこのポートを通じて該当するチャンバーにおける流動性のある材料の部分が除去できる。
【0410】
図14Mと14Nは層状のゲルクッション14102の一例を示す。この例において、層は垂直方向に配置され、クッションの特性がクッション14102の底部14902から垂直方向にクッション14102の上端14904(例えば、ユーザの鼻梁の近位まで)まで変わるようになっている。このように、例えば最初のゲルで形成される第1の層14192は、底部14902に近く使用され、2番目のゲルの第2の層14914、シリコンの3番目の層14916および中に空気の入った第4の「中空」の層14918が続く。
【0411】
簡単に説明すると、使用する層の数は、1層から任意の数の層まで使用できる。単層の場合、患者インターフェースは、各患者のハウジングに導入された流動性を有する材料のタイプまたは導入された流動性を有する材料の量を変えることによってカスタマイズできる。これに関して、材料を内部クッションコンポーネント14104に入れると、クッション14102がベローアウトできるので、このプロセスを使用して、クッション14102の選択された部分の剛性も各ポイントまたは異なる領域で変化させることができる(例えば、壁の厚さまたは弾性係数のような壁の材料の特性を変えて)。このように材料の最初の量を、最初の領域におけるクッション14102内に載せ、一方材料の2番目の量(または2番目の材料も一緒に)を2番目の領域におけるクッション14102に載せ、最初の領域で起こるベローアウトと比較して、2番目の領域で起こるクッションのベローの量を変える。例えば、クッションの2番目の領域は最初の領域と比較して、外部壁厚が薄くでき、2番目の領域をよりベローされた形状とできる。これは標準ツールを使用してカスタマイズされたクッションの生産を可能にする。さらに、クッション14102は対称に示されているが、その必要のないことは理解されよう。
【0412】
ある場合には、内部クッションコンポーネント14104はカスタマイズのように、その剛性を変更できるように構成される。1つの形態において、内部クッションコンポーネント14104は、内部クッションコンポーネントが患者の顔に合わせて変形するように患者に載せることができるように、最初は比較的柔らかく構成し、次いで高剛性に‘設定’する。例えば、内部クッションコンポーネント14104は、互いに流体連結ではない複数のチャンバーを含み(
図14P参照)、患者の顔に載せた時変形するように比較的柔軟に構成される。複数のチャンバーは流動性を有する材料を含み、互いに混合すると剛性を増す。複数のチャンバーは、患者が壊すことのできる、例えば内部クッションコンポーネント14104によって、および/または任意の壊れやすいシール14922に接続されたタブ14924に力を加えることによって壊すことのできる、1つまたはそれ以上の壊れやすいシール14922で少なくとも部分的に分離される。タブは、クッションの外表面から突き出している板形状の形式でよい。タブは1形態において、そこから取り外すことができるように、穿孔によって内部クッションコンポーネント14104に接続できる。このような配置での内部クッションコンポーネント14104は、タブを取り外す力を加えると壊れやすいシール14922に構成されている。
【0413】
さらに、内部クッションコンポーネント14104は患者が内部クッションコンポーネント14104の剛性を増す反応を開始するのに、また永久歪みが生じる前に、内部クッションコンポーネントを顔に載せるのに十分な時間があるように構成できる。その他の場合には、その剛性を増す反応が内部クッションを患者の顔に載せている間に始まるように、硬化までの反応時間が短いように内部クッション14104は構成されている。
【0414】
内部クッションコンポーネント14104は、固定の構成と柔軟な構成の間で複数の変換ができるように再設定できる材料を含む。1つの形態において、内部クッションコンポーネント14104は、加熱すると柔軟になって患者が自分の顔に載せることのできる熱可塑性材料を含む。有利には、再設定できる材料を使用すると、患者は患者の顔の形状の任意の変化に従って患者インターフェースが再構成でき、または設定プロセスの間に生じた任意のミス(例えば、内部クッションコンポーネント14104の落下または正しくない設置)が許容できる。
【0415】
もう1つの実施例において、内部クッションコンポーネント14104は部分的に高剛性に‘設定’できる材料を含む。例えば内部クッションコンポーネント14104は、紫外線に当てると硬化する(即ち硬化)感光性樹脂を含むことができる。この形態では、患者は内部クッションコンポーネント14104を自分の顔に載せ、内部クッションコンポーネント14104を紫外線に当てる。さらに、または代案として、患者は内部クッションコンポーネント14104の硬化させたい部分のみを紫外線に当てる。いくつかの実施例において、所望の部分を正確にまた的確に硬化させるためそしてほかの領域は流動性を有するままとするために、紫外線源としてレーザーが使用できる。
【0416】
各層の総数および各層で使用される材料の量を変動することに加えて、クッション14102そのものを幾通りかの方法で修正してカスタマイズを改善する。例えば、クッション14102は複数の標準サイズで形成でき(例えば、小さい、中間、大きい、特大)または異なるサイズの内部クッションコンポーネント14104を含むことができる。さらに、クッション14102そのものを、剛性を変える材料また構成および/またはある量の材料を内部クッションコンポーネント14104の特定の領域に受け入れるサイズとする。このようにクッション14102は、その中に何も材料が配置されていなければ実質的に剛体から薄いメンブレン、少なくともいくつかの方向に置いて実質的に構造性の剛性を有していないまでの範囲にあり、ゲルのような材料をその中に受け入れる容器の役目をし、そして剛性を提供する。クッション14102に構造要素が追加できて、その構造を所定の位置で強固にする。例えば
図14Oに示すように、リブ14112がチャンバー14108の断面に追加されて4つの位置で剛性を増している。リブ14112はワイヤーの薄いバンドまたは共成形したプラスチックまたは重合体材料で形成できる。リブ14112の包含、位置、量および/または方向性は、記述したように構造を強固にするデータ収集4300に基づいて変動できることが理解されよう。
【0417】
このように、データ収集4300からの情報を使用してオーダーメイドのクッションを生成する。この情報はレーザースキャニングデータ、受け身のステレオ型写真測量法のデータ、接触収集データ、変形装置データ、圧力マッピングデータ、ならびにトポグラフィー、顔構造データ(例えば、いろいろな方向への剛性)および/または下に横たわる顔の造り(例えば、皮膚、筋肉および/または合成データを予測するおよび/または引き出すデータ)を含む上記に議論した任意のデータのタイプを含む。
【0418】
データ収集4300からこのような情報を使ってオーダーメイドのクッションが形成できる。1つの実施例において、人体計測のデータまたはデータ収集4300からその他の情報を受け取り、適当なクッションまたは(チャンバーのような)クッションコンポーネントを選択するシステムが構成できる。このシステムは、受け取った人体計測のデータに基づき、インジェクターに指示を出して1つまたはそれ以上の材料をクッションへのチャンバーへの少なくとも1つの層に導入する。
【0419】
患者からのフィードバックを使ってクッション14102の適合度を改善することもできる。例えば患者の顔の画像を、クッション14102を使用した直後に入手できる。この画像は、患者インターフェースと患者間の圧力が高すぎる領域を(例えば、高圧を示す赤みを探すことによって)示すことができる。患者は漏れがありそうな領域(即ち、皮膚との接触が不十分)に関するフィードバックが提供できる。このようなフィードバックをインターネットまたはスマートフォンを経由してメーカまたはデザイナーに送ることができる。このデータを使って、クッション14102を改善して漏れ領域の剛性を上げるおよび/または患者と患者インターフェース間で過大な圧力のある個所の剛性を下げることができる。
【0420】
5.11.5.4 容積スケーリング
接触の快適さ、シーリングおよび安定性を考慮して、ここで物理的なデッドスペースと呼吸の快適さに注目する。物理的なデッドスペースと呼吸の快適さは、患者インターフェースの容積に対応する。患者インターフェースとコンポーネントの全体的な形状を作れば、スケーリングステップを実施して患者インターフェースの容積を約1%乃至約50%の範囲内で変更する。このスケーリングは上方でも下方でもよい。すなわちいくつかの実施例において、まず望ましい容積を決め、患者インターフェースの形状を要望通りにスケールアップするかまたはダウンして望ましい容積に合った物理的な頭部形状を制御する。このようなスケーリングは、スケーリングプロセスの間に重要なポイントが変更されないと言う点で快適さとシーリングを関与する。例えば、接触領域はそのままで、患者インターフェースを要望通りに患者の鼻および/または口から外側にオフセットする。患者インターフェースの容積のスケーリングはベント流れの要件を変えるのにも役立つことが理解されよう。
【0421】
5.11.5.5 ヘッドギアとアンカリングコンポーネント
上記の患者インターフェースの3つの要素に加えて、ヘッドギアも患者に合わせてカスタマイズできる。正しいヘッドギアの性能は、シーリング、快適さおよび審美性を含め種々の特性に影響し、コンポーネントを修正かつコンポーネントの位置を修正することによって実現できる。
【0422】
図15A−Bは患者インターフェースに関連したヘッドギアの一例を示す。患者15050はヘッドギア15004で固定された患者インターフェース15002を着用している。この例では、ヘッドギア15004は患者インターフェース15002の第1の端に取り付けられた第1のひも15010と第2のひも15012を含む。第2のひも15012は所定の形状を形成できるレジダイザーを含む。第1のひも15010と第2のひも15012は、患者の頭部の後方に向けて伸び(
図15Bを参照)、頸部アタッチメント15040において第3のひも1514と冠アタッチメント15042にそれぞれ取り付けられる。
図15Bにうまく示されているように、第1のひも15010と第2のひも15012で形成されたベクターはそれぞれV15010とV15012のラベルが付けられる。
【0423】
ヘッドギア15004はいくつかの方法で修正できる。まずひもベクターV15010とV15012を調整する。耳の間隔、口と眼、ならびに頭部の形状、頸の形状および顔の輪郭のような収集した患者データを分析してベクターが修正できる。いくつかの実施例において、アタッチメント・ポイントの数および顔面の敏感な特徴(眼、耳など)のクリアリングに依存して、ベクターV15010とV15012を水平面xから約0度から約90度までに調整できる。
【0424】
2番目に、第2のひも15012のレジダイザーも修正できる。いくつかの実施例において、眼の位置と頬の輪郭が判れば、患者の顔の輪郭に追従するようにひも15012を形成し、患者の眼をクリアして刺激を低減し、患者インターフェースからの眺めの障害物を低減する。
【0425】
3番目に、収集した頭部および/または頸の形状および/またはサイズを考慮して、任意のひも15010、15012、15014の長さを修正する。例えば、異なる緯度における頭部の外周(例えば、C1)が判れば、ひもの長さが予測でき、患者に勧めることができる。いくつかの実施例においてひも15010、15012、15014は伸縮素材とすることができる。このような場合、伸縮材料の長さおよび/または剛性を収集したデータに基づいて調整できる。
【0426】
最後に、頭部および/または頸の形状とサイズの収集したデータを考慮して、頸アタッチメント15040と冠アタッチメント15042を調整する。この例において、頭部と頸の形状の幾何形状は、頸アタッチメント15040と冠アタッチメント15042の位置(経度)を決定することができる。第3のひも15014の長さも頸アタッチメント15040と冠アタッチメント15042に基づいて調整できる。
【0427】
さらに、患者インターフェースを患者が着用した時の安定性を改善するために、収集したデータに基づいてアンカリング・ポイントが選択できる。メガネのようにアンカリング・ポイントが鼻梁である場合、鼻梁、口、眼、耳および歯が呼吸患者インターフェースのアンカリング・ポイントとして働く。このように、これらの特徴の位置が判れば、患者インターフェースが十分な安定性を発揮するようデザインできる。
図16Aは、患者の患者インターフェースに関連したアンカリング・ポイントの例示であるアルゴリズムを使って収集したデータを解析してアンカリング・ポイントの最適位置を決めることができる。ある可能性のあるアンカー・ポイントが
図16Aに識別されており、鼻梁アンカー・ポイント16002、口アンカー・ポイント16004、16006および耳アンカー・ポイント16008が含まれる。データを収集し、収集したデータからアンカー・ポイントの位置を解析して、最適な性能と安定性を有する患者インターフェースとヘッドギアを形成する。
【0428】
ここで
図16Bに戻ると、CPAP治療中に、位置決定および安定化構造16070(例えば、ヘッドギア)からまたは患者16050、患者インターフェース16060からの、所望しない移動は分断するかまたは切り離され、そして特に、シール分裂力のこの移動を妨げる位置決定および安定化構造16070または患者インターフェースそのもののコンポーネントを経由したシーリングエレメント16062からの移動は分断するかまたは切り離される。これは、位置決定および安定化構造16070間における弾性または柔軟なジョイント部16080、患者インターフェースのフレームまたはシーリングエレメント16062によって達成できる。患者インターフェースはカスタマイズされているので、シーリングエレメント16062は僅かの物理的乱れに敏感であり得て、位置決定および安定化構造16070、患者インターフェースおよびシーリングエレメント16062も互いに分離されてこのような乱れのインパクトを低減する。カスタマイズされた患者インターフェースは、シール分裂力を扱う従来の厚さのシーリングエレメント16062の必要のないよりかさばらない患者インターフェースを可能にする。より薄いシーリングエレメント16062を有する流線型のカスタマイズされた患者インターフェースは、例えばチューブのトルクまたは患者の頭部の動きで生じるシール分裂力の分離による非常に信頼性の高い固定シールを維持することによって安定性を得る。
【0429】
5.11.6 動的安定化の技法
患者インターフェース16110の異なる部分のカスタマイズのために上記の技法と実施例に加えて、動的安定化のための技法も採用できる。以前に説明したように、患者の顔の特徴と皮膚は静的エレメントではなく、治療中に変形し頻繁に動きによっての技法は、患者の皮膚および/または顔面特徴の動きおよび/または変形の間の、患者インターフェースの安定化と適切なシーリングの提供に向けられる。これらの技法の例示を支援するために、
図16Cと16Dは異なる就寝姿勢における患者インターフェース16110上の患者の頭部の動きのある影響を例示したものである。
【0430】
図16Cは、ベッド枕16120の上に患者が頭部を横たえている概略図である。頭部16100は頭蓋骨16102、皮膚16104および鼻16106、着用した患者インターフェースを含む。
図16Cに示すように、患者が頭部16100をベッド枕16120上に置いて横たわっている時、頭蓋骨16102、皮膚16104および患者インターフェース16110は全体に軸「Y1」と直線になり、患者インターフェース16110は鼻16106と直線になり、患者の皮膚16104と鼻の領域周りの患者インターフェース16110間に適切なシーリングができるようにその周りに置かれる。
【0431】
図16Dに戻ると、患者16100が頭を動かし始めると、アライメントの難しさが生じる。特に
図16Dに示すように、頭蓋骨16102をベッド枕16120に向けると、患者インターフェース16110は患者インターフェースの関連のヘッドギア16108とベッド枕16120間の摩擦のために皮膚16104と頭蓋骨16102ほど動かない。このように軸「Y2」は一般に皮膚のアライメントを表し、軸「Y3」は患者インターフェースのアライメントを表し、Y2とY3は互いに異なる。少なくともいくつかの実施例において、Y2とY3間の違いは約1度乃至約60度または約10度乃至約75度の範囲にある。患者インターフェースはこのミスアライメントを補償するように構成される。
【0432】
皮膚の動きおよび/または変形は、ある顔の特徴に関連したせん断とたわみ特性と特徴付けられる。患者インターフェースの特徴は、皮膚のある場所におけるこのような動きおよび/または変形を補償するように構成される。例えば、皮膚のせん断は眼窩16205で生じる(
図16Eに示す)。患者インターフェースは皮膚のせん断を補償するように形成され、例えば約1mm乃至約50mm、好ましくは縦方向の動き(例えば、上下)の約40mm、約1mm乃至約50mm、好ましくは横方向の動きの(例えば、横に)約28mmとする。換言すれば、動きは約50mmの範囲内で任意の方向に生じる。
【0433】
患者インターフェース16110は、患者が上唇を上方に引き寄せるように、上方へのけいれん/鼻のけいれんを補償することができるように製造できる。具体的には、患者インターフェース16110は翼角16210の変動を治療中に約1度乃至30度の間、そして好ましくは鼻のけいれんにより鼻16215のコ−ナーが上方へ動く時および鼻の側面のけいれんより側面に動くときに生じる約27度を補償するように構成できる。この補償を使って、シーリングエレメント16062および/またはフレーム12020の形状と輪郭をデザインかつ構成する。シーリングエレメント16062および/またはフレムーム12020の許容差はこの補償に基づいて導入された。例えば、患者の鼻のけいれんによる動きが少ないと、より正確なシーリングエレメント16062および/またはフレーム12020が提供される。一方患者の鼻のけいれんの動きが大きな距離におよぶと、シールの分裂を最小限にするかまたは避けるために、シーリングエレメント16062および/またはフレーム12020に大きい許容差が提供される。患者インターフェース16110は追加または代案として、鼻のコーナー16215と鼻の中央16220の上方への動き、それぞれ9mmと4mm、を補償する。患者インターフェースは、約1mm乃至約4mmの鼻の幅16225の増大をさらに補償する。患者インターフェースは、すべてのタイプの鼻のけいれん(例えば、横へおよび/または上下)の結果生じる第1の状態16300から第2の状態16305への頬のふくらみを収容するように構成され、第1の状態16300と第2の状態16305は約1mmから10mm離間されている。
【0434】
図16Gは、力をヘッドギア16352に加えたときの影響を例示した平面図で、本明細書で位置決定および安定化構造とも呼ばれ、患者16350が着用する。図示のように、第1の斜めの力T1が患者の耳に近い位置16Aにあるヘッドギアに加えられる。力1は、ヘッドギア16352とフレーム16354の間の分岐点における位置16Bで第2の力T2となり、位置16Cで第3の力となる。いくつかの構成において、患者インターフェースは位置16Cで外側に波打つのように構成され、フレームの動きを隔離し、チューブの引きずりによる動きから鼻孔フレームを分離し、シールを維持する。少なくともいくつかの実施例において、ヘッダー16352は約1ニュートン乃至約10ニュートンの力を補償するように構成され、患者の顔に赤マークを生じる可能性の高いシール接触が減少したり、患者とのシールが崩壊したり、患者に不快を生じることはない。このような力を補償するいくつかの例が以下に示されるが、これらは単なる例示でありその他の方法と技法も可能であることが理解されよう。
【0435】
図16Hに示す第2の実施態様において、患者インターフェース16400はシーリングエレメント16402に接続されたコンジット16401を含み、これは第1の部分16404と第2の部分16406を有するヘッドギア16403に取付けられる。図示のように、第1の部分16404と第2の部分16406は異なる材料で形成してよい。具体的には、第1の部分16404と第2の部分16406は異なる材料特性を有する材料で形成できる。例えば、患者の頭の後部周りに配置された第1の部分16404は、実質的に非弾性材量(例えば、第2の部分16406より弾性が少ない)で形成でき、一方頬に配置されシーリングエレメント16402に伸びる第2の部分16406は弾性材料、第1の部分16404より弾性が多い、で形成できる。代案として、第1の部分16404は、患者の皮膚または皮膚に対して容易に滑らない材料、粘着性のある材料または接着剤で形成でき、一方第2の部分16406は皮膚の上で簡単に滑べ異なる材料で形成できる。第1の部分16404と第2の部分16406は、皮膚に関して異なる摩擦係数を有する材料で形成でき(例えば、第1の部分16404は第2の部分16406より高い摩擦係数を有する)、同じ力を両方16404、16406にかけた場合、第2の部分16406が第1の部分16404より滑る。
【0436】
第1の部分16404は比較的非伸縮自在の材料で作られ、第2の部分16406は伸縮性材料で作られる。第2の部分16406には織物のカバーまたはラップが提供される。第2の部分16406の顔に接触する面は、特性(例えば、シリコンタブ)を提供するかまたは摩擦を増して第2の部分16406と患者の皮膚の間の相対動きを防止するかまたは最小限にする材料で作られる。第2の部分16406の外部接面は滑らかにして、ベッドの枕またはベッドのリンネルに対する患者の動きから患者インターフェース16400への力の移動を防止する。患者インターフェース16400では、それが伸縮力と移動を補償する第2の部分16406の特性が可能なので、シーリングエレメント16402がヘッドギアにかかるほとんどの摂動から切り離される。さらに、第1の部分16404の力は、第2の部分16406を経てシーリングエレメント16402に全面的に移送されない。このように、患者インターフェース16400のヘッドギア16403は、患者の頭部を安定かつしっかりとホールドし、着用と脱着が容易である。
【0437】
図16Iに示す第3の実施態様において、患者インターフェース16410は、シーリングエレメント16412に接続されたコンジット16411を含み、これは次いで第1の部分16414(例えば、冠ひも)と第2の部分16416(例えば、側面ひも)を有するヘッドギア16413に取付けられる。第2の部分16416は、患者の皮膚と接触し、第1の部分16414より高い弾力性を有する弾性力のある内部層16417aを含む。第1の部分16414は相対的に弾力性がなく引き伸ばすことができず、例えばネオプレン材料でできている。図示のように、第1の部分16414と第2の部分16416が形成できるが、第2の部分16416は16417a、16417bの二重層の構造となっている。第2の部分16406の内部層16417a(例えば、患者接触層)は、例えばリボンのように、張力に対して融通性がなく、圧縮に対して相対的に崩壊しやすい。側面のひも16416はバックル16419を経て長さの調整ができる。側面のひも16416を短くすると、側面のひも16416の張力の弾性力の融通性が増す。側面のひも16416に張力がかかっていない休息状態で、弾力性のある内部層16417aと外部層16417b間に長さの不釣り合いがあれば、弾力性のある内部層16417aは僅かに崩れる。例えば、チューブのトルクによって張力がかかると、側面のひも16416はその張力を冠ひも16414に直接伝える。この状態でヘッドギア16413の作動部分は相対的に非弾性であるので、シールの崩壊を生じることのあるヘッドギア16413の延びはない。患者インターフェース16410では、伸縮力と動き、それが補償するのを第2の部分16416の層が可能なので、シーリングエレメント16412はヘッドギア16413にかかる外部の力を除きすべての力から切り離される。さらに、患者インターフェース16410のヘッドギアは、弾性材料が張力を維持するように圧縮力がかかった時に崩壊する第1と第2の部分16414、16416を含む。
【0438】
図16Jに示す第4の実施態様において、患者インターフェース16420はシーリングエレメント16422に接続されたコンジット16421を含み、これは第1の部分16424と第2の部分16426および第2の部分16426およびカップリングの第1の部分16424を経てシーリングエレメント16422に延びるワイヤー形態16428を有するヘッドギア16423に取付けられる。頬枕の形態でよい第2の部分16426は、第2の部分16426に対する顔の摩擦がシーリングエレメント16422に移らないように滑るなどして(例えば、ヘッドギア滑り)ワイヤー形態16428に沿って横切る(例えば、前後方向に滑る)ように構成される。1つの実施例において、第2の部分16426は患者の耳と患者の上唇の間で滑ることができる。換言すれば、第2の部分16426はワイヤー形態16428の遠位端の間で滑ることができる。ワイヤー形態16428は第1の部分16424とシーリングエレメント16422を接続する単一のワイヤーまたは2つ以上のワイヤーまたはその他の適切な材料または構造を含むことが理解されるであろうが、図示のようにワイヤー形態16428上部ワイヤーと下部ワイヤーを含む。図示のように、第1の部分16424はシリコンまたはBreath−O−Preneで形成され、第2の部分16426は編むまたは織ることのできる繊維で形成される。患者インターフェース16420では、動きのある場合または外部力が第2の部分16426に適用されていても、シーリングエレメント16422は、適切なシーリングで患者の鼻の正しい位置にしっかりと保持される。例えば、見合う力がシーリングエレメント16422に加えられていなくても、ベッド枕と第2の部分16426間の摩擦によって第2の部分が動くことがある。例えば、シーリングエレメント16422が崩壊する前に耐えることのできる最大量の力は10ニュートンである。第2の部分16246の顔の接触面に特徴(例えばシリコンタブ)を設けるかまたは摩擦を増して第2の部分16246と患者の皮膚の間の相対運動を防止/最小限にする材料で作る。第2の部分16246の外部接面を滑らかにして、ベッド枕またはベッドのリンネルに対する患者の動きから患者インターフェース16420への力の移動を防止する。
【0439】
いくつかの実施例において、上記の実施例の組み合わせが可能であることが理解されよう。例えば、頬枕を異なる材料または剛性を有するその他の部分と組み合わせて患者インターフェース16400の動きを最小限にすることができる。
【0440】
5.11.7 カスタマイズされた鼻孔カバー
前記の実施態様はヘッドギアにかかる力を補償する追加の構造を提供するよう試みているが、以下に記述する実施例は患者インターフェースのサイズを最小限にしながらそれを安定化させる。1実施例において、特にシーリングエレメントのサイズと患者の顔と接触しているシーリングエレメントの表面積を最小限にする。もう1つの実施例において、シーリングエレメントの厚さと患者インターフェースの深さを最小限にする。
図17Aは、安定性と最小化の両方を提供することを目的とした患者インターフェースのこのような実施例を例示している。この実施例において患者インターフェースは、空気吐出コンジットまたはチューブ17005とヘッドギア17010取付けられた鼻孔カバー17000の形態のフレームアセンブリーを含む。これらコンポーネントのそれぞれの詳細は、今後の図を参照して別々に詳細に説明されよう。
【0441】
図17Bは、鼻、鼻下、前鼻、鼻柱、上赤唇、下唇および鼻唇溝の位置を含む鼻の底部の構造を示す注釈付ダイアグラムである。シーリングエレメントは、前鼻、両方の鼻の外部周辺および鼻下に沿って延び、その中にある両方の鼻を本質的に囲むまたは取り巻く点線P1で示された周辺の回りにシールを形成するように構成される。周辺は、上唇、鼻唇溝または唇に進入しないように注意して最小限にできる。
【0442】
鼻孔カバー17000およびシーリングエレメントを含む患者インターフェースのそれぞれのコンポーネントのサイズと形状は、患者ごとにカスタマイズでき、適切な取り付けを提供する。データ収集4300に記載したように測定値を取得して、所望する鼻孔カバーの三次元モデルを部分的にまたはそのすべてを各患者にコンピュータで生成できる。例えば
図17Cに示すように、イメージ捕捉のステップで複数のマーカー17100が患者の鼻および患者の上唇上で選択され(この場合興味のあるポイント数は16)、これらのマーカー17100に基づいて鼻孔カバー17000のモデルがデザインされる。その他の実施例ではマーカー17100は眼、耳、額、顎、頬などを含め患者の顔の異なる位置で選択されるが、理想的には各鼻の周辺、鼻柱(即ち鼻孔間の中央のセグメント)、鼻孔シル、鼻の隅部、翼ひだ溝および鼻の下の輪郭に置くことを含む。少なくともいくつかの実施例において、ポイント数は必要な解像度(例えば、隣接するマーカーの距離)に基づいて変動する。少なくともいくつかの実施例において、鼻の周りの解像度は約0.1mm乃至約0.75mmである。鼻の周りの解像度は約0.5mmで、顔のその他の領域より大きいが、それは僅か0.75mmである。マーカー17100は、鼻唇の角度に平行した面を画成するように選択される。網掛け部分17102で示される曲線の付いた面は、マーカー17100で画成されてよく、鼻孔の周りの鼻の面に、上唇の部分、
図17Bの周辺P1に対応する周辺を有する曲線の付いた面に対応する。
【0443】
図17Aを参照して以前に述べたように、吐出コンジット17005は、空気またはその他のガスがそこを通って流れるようにカスタマイズされた鼻孔カバー17000に接続される。吐出コンジット17005の動きは、鼻孔カバー17000の安定性に影響することがある。このように鼻孔カバー17000は所定の位置、角度および方向でチューブ17005を受けるように構成され、チューブ17005から鼻孔カバー17000への生温いまたは予定された力の影響を低減する。1つの実施例において、データ収集の段階で、面17102の下の自由空間に楕円位置17120が画成できる。楕円位置17120は、鼻唇の角度の面pz1に平行な面pz2を画成する(
図17D)。チューブのトルクとそれによって生じるカスタマイズされた鼻孔カバーへの力を最小限にするため、患者の顔と物理的な接触することなくまたフレームアセンブリー17000によって一部形成されたプレナムチャンバー17200によって画成されたデッドスペースに十分な容積を持たせることによって、接合点を軸z1に沿った患者の顔にできるだけ近づけて、チューブの角度、位置および方向を、チューブー鼻孔カバーの接合点(例えば、チューブ接続/鼻孔カバー17000の接続ポート)におけるモーメントアームが低減するように選択する。これによってチューブのトルクで生じる治療中のシ−ルの崩壊が最小限になり、その深さを少なくすることによってマスクの嵩が低減される。
【0444】
いくつかの実施例において
図17Aに示すように、鼻孔カバー17000をヘッドギア17010を経て患者に相対的に置くことができる。
図17Eに示すように、正しい取付けのできる鼻孔カバー17000を製造するために、ヘッドギア17010のリジダイザーアーム17250のためのヘッドギアベクター17130も画成できる。ヘッドギアベクター17130は、好ましくは眼および耳および鼻孔カバー17000上のポイント間の中点を横切る仮想の線で、例えば鼻孔カバー17000の側面である。スロット17135またはレセスまたはソケットは、以前に述べたポイントにおいて鼻孔カバー17000の中で画成される。スロット17135の角度、方向および位置を以下に詳細に説明する。画像を捉えそしてモデリングが完了すると、患者インターフェースのコンポーネントを製造し、組み立てることができる。それぞれのコンポーネントをある特定の患者用にカスタマイズできることが理解されよう。カスタマイズはそれぞれのマスクコンポーネントについて複数の取り付け(例えば、20の取り付け)を生成することを含み、患者はこれらの取り付けの1つにマッチする。代案として、カスタマイズはある患者用に個人的に製造された注文仕立てのコンポーネントを形成することを含む。
【0445】
5.11.7.1 プレナムチャンバーを画成するカスタマイズフレーム
図17F−17Iに示すように、カスタマイズされた鼻孔カバー17000はフレームアセンブリー17000の表面の一部を形成する。フレーム17000はプレナムチャンバー17200の一部を画成する。フレーム17000は剛体のまたは準柔軟な材料で形成でき、全体的に半球状またはドーム形状の構造が画成できる。フレーム17000の内部から分かるように(
図17F)、フレーム10200は内部壁17210およびシール受け入れ面17220を含む。フレーム17000はプレナムチャンバー17200の一部、その内部壁17210と患者の皮膚の間のデッドスペースまたは空洞が画成でき、一方シール受け入れ面17220は、
図17K−17Nを参照して説明するようにシーリングエレメント17300を受け入れるインターフェースを提供する。
【0446】
フレーム17000は三次元形状をシーリングエレメント17300に与えて、両鼻孔の周りに気密のハウジングを形成する。フレーム17000とシーリングエレメント17300はプレナムチャンバー17200の一部を形成し、これが2つの鼻孔の周辺と鼻孔からの短い距離d1で画成された小さい空洞を画成する(
図17G−1を参照)。距離d1は典型的には30mm以下で、理想的にはできるだけ小さく、患者の顔と物理的接触なしにそしてプレナムチャンバー17200内のデッドスペースに十分な容積を与える。いくつかの実施例において、デッドスペースまたは空洞はプレナムチャンバー17200内に囲まれた領域と定義され、患者の皮膚はプレナムチャンバー17200をフレーム17000内に近似する切頂円錐体(
図17G−2)内のスペースの推定によって定義される。このように、プレナムチャンバー17200内の容積は下記のように推定される:
容積=(EH)*II/12 [(ED1*ED2)+(ED3*ED4)+(ED1*ED2*ED3*ED4)
1/2]
ここにED1とED2は鼻マーキングの周辺のおおよその直径、EHは鼻へのチューブ入口/接続ポートのおおよその距離である。少なくともいくつかの実施例において、フレーム17000のサイズはヒトの鼻のサイズの関数で、ヒトの鼻のほぼ1乃至2倍である。切頂円錐体の高さ(即ち、深さ、フレームの距離d1)は制御可能でまた調整可能である。1つの実施例において距離d1は、プレナムチャンバー17200内のデッドスペースができるだけ短く、最小にするように選択される。もう1つの実施例において、患者のベントの好みを考慮することができ、距離d1はユーザが定義した呼吸の快適さのレベルを達成するように選択され、できるだけ短い距離でなくてもよい。
【0447】
5.11.7.2 カスタム・ベント
以前に指摘したように、フレーム17000はヘッドギアを受け入れるために複数のスロット17135、この例では2つのスロットを含むことができる。スロット17135間に位置しているのは、吐出コンジット(図示せず)を受け入れるための全体として楕円形のまたは円形の開口17230である。フレーム17000は、開口17230の上の外面上のベントホール17240も含む。フレーム17000上のベントホール17240は、これらが良好な炭酸ガスの洗浄ができるように、そして呼吸の快適さを改善するような位置に置かれる。例えば、ベントホール17240は図示のように軸柱のみの位置に隣接して置かれる。ベントホール17240はフレーム17000上にあるように示されているが、フレーム17000の開口17230と吐出コンジット17005間に配置されたエルボー上に位置しているエルボーの中にも置くことができることが理解されよう。エルボーは、患者がフレーム17000からエルボーを吐出コンジット17005と共に取り外すことができる速やかな取外し型である。
【0448】
ベントホール17240の数は、プレナムチャンバー17200によって画成されたデッドスペースに基づいて選択される(例えば、プレナムチャンバー17200と患者の顔で囲まれた容積)。デッドスペースは計算でき、良好な炭酸ガスの洗浄ができ、呼吸の快適さを改善するのに必要なベントホール17240の数は選択できる。いくつかの実施例において、コンピュータアルゴリズムまたは参照テーブルを使用してベントホール17240の数を決定する。ベントホール17240の数、フレーム17000上の複雑な面の上のベントホールの位置、ベントホール17240の幾何形状/輪郭およびベントホール17240の入口/出口の方向は、意図する治療圧力,意図する騒音レベル、意図するCO
2洗浄および意図する拡散性に基づいて選択される。ベントのこれらの特徴も、デッドスペースの容積の関数に基づいて選択される。ベントのこれらの特徴も所望の湿度レベル、例えばレインアウトの防止に基づいて選択される。もう1つの実施例において、バッフルまたは散布器をカスタマイズして、意図する騒音レベルおよび意図する拡散性を達成するために提供される。ベント17240のカスタマイズには、各患者に対する自動化された計算流体力学(CFD)および/または計算された時のデッドスペースの容積と幾何形状に基づく参照テーブルとの比較を含む。
【0449】
図17Jのフレーム17000は、吐出コンジット17005の開口17230への連結およびヘッドギア17010のリジダイザーアーム17250を経たスロット17135への連結を例示している。1つの実施例において、リジダイザーアーム17250は実質的にL−形状で、スロット17135への挿入および連結のために全般に前頭面に延びている第1の端17252およびヘッドギア17010に連結するために(例えば、上記の任意のひもへの連結)矢状面に延びている第2の端17254を含む。リジダイザーアーム17250は実質的に剛体で硬く、金属またはポリプロピレン、Hytrelなどの硬い重合体で形成される。さらに、リジダイザーアーム17250のL−形状によって安定した固定と患者の顔に抗して安定したシーリングが提供され、ヘッドギアの力、例えば力F1、を受け止め、フレーム17000上で力F2を作ってフレーム17000を患者の鼻孔に向けて押す。ヘッドギア17010のさらなるカスタマイズについてその詳細を以下に述べる。
【0450】
5.11.7.3 カスタム・シーリングエレメント
快適さと優れたシーリングを提供するために、鼻孔カバーはフレーム17000のシール受け入れ面17220に連結されたカスタム・シーリングエレメント17300を含む。シーリングエレメントは、フレーム17000に取付け可能なクッションの形態でよく、患者が動いている間または外部力(例えば、ヘッドギアの部分に抗するベッド枕の力)が働いている間、患者の皮膚に対してシールを維持する接着性または粘性の部材を有することができる。このようなシーリングエレメント17300はフレーム17000の最小化が補償でき、動きに対して患者に優しい解決法が提供でき、その結果患者インターフェースはより快適にそしてかさばらなくなる。
【0451】
シーリングエレメント17300は、接着剤を使って患者に鼻のある部分に留めるように構成できる。
図17Kに示すようにシーリングエレメント17300は、複数の層を含むクッションの形態でよい。露出した層が接着層である。接着層の間は低密度の(より素直な)発泡体の層と高密度(少なく素直な)発泡体の層である。これらの層は互いにサンドイッチ構造となる。発泡体の層は互いに薄い発泡体の層17302を形成する。適切な発泡体が国際公開番号2014/117227で議論されており、その全開示を参照により本明細書に包含する。使用中は、低密度の発泡体の層が、高密度の発泡体の層より患者の顔に近い。低密度の発泡体の層の厚さは4mmで、高密度の発泡体の層のそれは3mmである。その他の実施例において、高密度の発泡体の層は使用中患者の顔により近い。さらなる実施例において、密度の変わることのない発泡体の単一の層がある。接着層の1つは、発泡体の層17302に積層または適用した感圧性の(PSA)裏打ち17304である。本明細書で使用する用語シーリングエレメントおよびクッションはどちらを使っても変わりはなく、シーリングエレメント17300として記述された材料は単なる例であり、その他の適切な材料が使用できることが理解されよう。その他の適切な接着剤および/または粘着性のある材料はシリコン接着剤、アクリル系接着剤およびその全開示を参照により本明細書に包含した米国特許8,291,906で公開された接着剤を含む。接着剤は、発泡体材料の上に積層できる。シリコンベースの接着剤は再使用可能で、洗浄して接着力を回復させるが、アクリル系接着剤は一般に1回または2回の使用である。いくつかの実施例において、発泡体の層17302は粘着性のある発泡体を含む。シーリングエレメント17300は患者の皮膚に片側を快適に付けることができ、第2の側でフレーム17000に取付けることができる。例えば、シーリングエレメントがフレーム17000を患者の皮膚に取付けたままできるように、接着剤を患者の接触側とシーリングエレメント17300の非患者接触側の両方に配置できる。代案として、シーリングエレメント17300はフレーム17000に機械的にそして取り外し可能に係合でき、患者の皮膚に取付けるのに僅か1つの接着面を含む。その他の実施例において、シーリングエレメント17300はフックまたはループファスナーを経てフレーム17000に係合する。いくつかの実施例において、シーリングエレメント17300は
図17Bの周辺P1に対応する周辺を有しており、データ収集4300で取得したデータに基づきカスタマイズして、所望の形状を形成する。フレーム17000を形成するのに収集しデータも使用して、患者に対して優れた適合を有するシーリングエレメント17300を形成するのに使用できる。
【0452】
製作中に、シーリングエレメント17300の三次元モデル17310を特定の患者にコンピュータで生成して、二次元のフラットな輪郭17300に変換できる(
図17L)。シーリングエレメント17300の三次元モデル17310を、ソフトウエアプログラムで展開して平らにし、シーリングエレメント17300の二次元平面輪郭を得る。シーリングエレメント17300はフラットシートからレーザーで切断し、バグ(bag)し、患者の名前のラベルを付け、それぞれの患者のカスタマイズされたシーリングエレメント17300を創り、オーダーメイドまたは特別仕立てとする。三次元モデル17310を二次元の平たい輪郭に変換すると、製造が速やかになり、保管が最適化され、シーリングエレメントの患者への出荷が簡単になる。
【0453】
いくつかの実施例において、寸法の似た幾人かの患者のシーリングエレメント17300をグループ化して、患者の鼻の幅に対応して1乃至3種類の標準サイズで提供される従来のマスククッションと比較して、患者の人体計測の特徴に合った最良の適合が提供できる。このグループ化は例えば、各寸法に対して組込みの許容差のある長さ、幅、厚さおよび曲面を有するシーリングエレメント17300の20種類のサイズを含む。それぞれのグループ化に対して、単一の平たい輪郭17310が製造でき、単一の輪郭はある許容差内のあるグループの幾人の患者に適している。例えば、単一の輪郭の許容差は長さに対して+/−2.5mmで、幅に対して+/−2.5mmである。
【0454】
シーリングエレメント17300は、
図17Mと17Nに示すようにフレーム17000に連結できる。具体的には、シーリングエレメント17300の第1の面17350は、フレーム17000のシール受け入れ面17220に接着または連結でき、一方第2の面17355は患者の皮膚に接着するかそうでなければ患者の皮膚に対してシールを提供する。シーリングエレメント17300は所望によりシール受け入れ面17220から切り離すこともできる。例えば、もしシーリングエレメント17300の第2の面17355の接着剤が摩減し始め、その寿命に達するかまたはシーリングエレメント17300の取替が必要になると、それを処分し、別のシーリングエレメント17300を正しい場所に取付けることができる。少なくともいくつかの実施例においてシーリングエレメント17300は、接着剤を有する二重層発泡体構造を含む。発泡体の第1の層は、使用中フレームの近位の面に配置され、使用中ユーザの顔の近くに配置される発泡体の第2の層より硬い。このような二重層は大きな調整と微小の調整を可能にし、信頼性があり快適なシールを患者に保証する。以前に指摘したように、接着剤はシーリングエレメント17300の両側に適用できる。いくつかの実施例において、発泡体の第1の層の上の(例えば、フレーム17000に隣接した層)接着剤は、発泡体の第2の層の上の(例えば、患者の皮膚に隣接した層)接着剤より大きい接着力を有する。このような構成では、シーリングエレメント17300をフレーム17000から取り外すことなく、患者はフレーム17000の位置が調整できる。接着時の使用は単なる選択肢であり、シーリングエレメント17300をフレーム17000に取付けるそのほかの方法、例えば機械的な係合または磁力による係合が考えられることが理解されよう。
【0455】
5.11.7.4 カスタム・ヘッドギア
患者インターフェースのヘッドギア17010もカスタマイズできる。患者の頭囲の測定値を使って、ヘッドギアの長さ、弾性および厚さを特定の患者に合わせて調整し、きつくなくまたは緩くなくそして患者がほとんどまたは全く調整の必要がない、しっかりした、安定し快適な患者インターフェースが提供できる。さらに、滑らかさまたは粗さのようなヘッドギアのひもの質感または表面仕上げは、患者が顔ひげまたは頭髪を有していれば、それに合わせて選択できる。レジダイザーアーム17250の輪郭、形状、アーク長および柔軟性は患者に合わせて選択できる。例えば、患者の顔は幅広いかまたは狭いことがあり、レジダイザーアーム17250は患者の顔に対して最小の締め付け圧を加え、患者の顔の輪郭を忠実になぞりそしてヘッドギアのひもが患者の眼と耳の間を最適に通るようにカスタマイズできる
【0456】
いくつの場合において、(例えば、長さの調整ができれば)ヘッドギアのひもの長さ、弾性および厚さを最適化するとひもをピンと張ったり緩めたりすることができまたは弾性のヘッドギアであれば、フランクフォート水平面におけるヘッドギアの張力を制御して、マスクを患者の顔にしっかりと保持できる。ヘッドギアの張力は患者の快適さのレベルに応じてカスタマイズでき、シールを維持するのに必要な最小限のヘッドギアの張力は確保する。ヘッドギアの締りの感触が安心を与えこのようなタイプの患者に大きな確信を与えるので、一部の患者はシールを維持する必要なヘッドギアの張力をより高い圧力を好むことがある。
【0457】
さらに、対応するタブまたはヘッドギアのレジダイザーアーム17250の突起を受け入れるスロット17135の位置と方向は、各患者にカスタマイズされたヘッドギアの適合およびヘッドギアベクトルを創る。
図17Eを参照して以前に指摘したように、スロット17135の角度、位置および方向を変更してヘッドギアのレジダイザーアーム17250に対するヘッドギアベクトル17130を変えると、ヘッドギアの優れた適合が可能になる。いくつかの実施例において、レジダイザーアーム17250には患者の頬骨の下に横わたり、患者の眼と耳の間を最適に通るようにカスタマイズされる。このように、データ収集4300ステップのデータから患者の人体計測特徴を知ることにより、ヘッドギアベクトルの角度を調整して良好な性能を達成することができる。ヘッドギアベクトルの角度は、フランクフォート水平に関連して決定できる。ヘッドギアべクトルの最適角度は、ヘッドギアベクトルに対する角度がシーリングエレメント17300のシーリング面/シーリング周囲に対して患者の顔(例えば、患者の鼻と上唇)に均等な圧力を加えるよう働くので、患者インターフェースの快適さと安定性が改善できる。ヘッドギアベクトルのような最適化がなければ、ヘッドギアのひもを締め付けるとマスクがまくれ、シールエレメント17300によるシールの影響が均等に分配されないので、最適なシール以下となる。
【0458】
もう1つの実施例において、ヘッドギアベクトルに対する最適角度は、あらかじめ加えられた負荷に対するバイアスとなり(典型的にはわずか大きい角度)、下方へのチューブのトルクを考慮する。換言すれば、もしチューブ17005がある程度の力によって下方に引っ張られると、ヘッドギアベクトルに対する角度のあらかじめ加えられた負荷が、安定性が影響を受ける前にこの、ある程度の力が収納できる。
【0459】
5.11.7.5 組み立てた鼻孔カバー
フレーム17000を含む組み立てた鼻孔カバー17000、レジダイザーアーム17250、シーリングエレメント17300、ヘッドギア17010および吐出コンジット17005が単独で
図17O−17Qに示されており、着用した姿が
図17R−17Tに示されている。患者はシーリングエレメント17300をフレーム17000に連結でき、カスタマイズされた鼻孔カバー17000をヘッドギア17010を使用して着用できる。以前に述べたように、レジダイザーアーム17250はフレーム17000からヘッドギア17010への変遷の役目をし、力をヘッドギアから向け直してフレーム17000とシーリングエレメント17300が患者の顔に向けて下方に押され、その結果シーリングエレメント17300の望ましいシールが患者の顔に行われる。データ収集4300の間に取得したデータを使用して、スロット17135の角度、位置および方向を注意深く選択して、レジダイザーアーム17250が中点間、患者の眼と耳の間を通り、またはその他の好ましい角度/位置/方向が最適で、安定および快適なシールを小さな鼻孔カバーに提供する。
【0460】
このように、このような鼻孔カバーを有することは、できるだけ小さくかつ安定したカスタマイズされたマスクである。具体的には、シーリングエレメント17300の優れた接触と患者の顔の組み合わせ、シーリングエレメント17300のフレーム17000とのインターフェースおよびL−形状のレジダイザーアーム17250、ならびにデータ収集からのカスタマイズによって、チューブの引きずりにも拘らず安定した小さいマスクおよび治療中に体の動きが生じる。フレーム17240、ベントホール17240、シーリングエレメント17300およびヘッドギア17010を参照して、カスタマイズが本明細書において説明されたことが理解されよう。いくつかの実施例において、完全に組み立てたカスタム・鼻孔カバー17000は1つまたはそれ以上のカスタム・エレメントを含む。さらにカスタマイズされたコンポーネントと標準コンポーネントは、いろいろな組み合わせで組み合わせて、コストを低減し(例えば、注文仕立てのフレーム17000および標準サイズのシーリングエレメント17300)、さらに患者にも選択できる。
【0461】
5.11.8 完全な患者インターフェース・デザインパッケージ4550
患者インターフェースおよび/またはヘッドギアをカスタマイズすると、完成した患者インターフェース・デザインパッケージ4550は、ファイルのグループであり、製造の準備のできた個別にデザインされた患者インターフェースのコンポーネントのファイルを含む。完成した患者インターフェース・デザインパッケージ4550は、下記のいずれかに関係するデータまたは情報を含む:患者インターフェースシステムにおけるコンポーネントのリスト(例えば、フレーム、中間構造、シーリングエレメント、ヘッドギアおよび/またはエルボー、チューブ、ヘッドギアクリップおよび)、CADまたは各コンポーネントのデータファイル、各コンポーネントの製造技法、各コンポーネントに要求される材料(複数)およびデザイナーおよび/またはユーザのコメンツ。患者のCADファイルおよび/または写真(もしあれば)を保管して視覚的に審美な特徴の選択を支援し、患者の好みと嗜好に従って患者インターフェースを様式化する。
【0462】
5.11.9 製造4600
完成した患者インターフェース・デザインパッケージ4550は製造4600に送られる。上記に説明した任意のコンポーネントの組み立てに利用できる多くの異なる製造技法がある。さらに、ここで説明する技法の組み合わせを使用して呼吸患者インターフェースの異なるコンポーネントを形成する。
【0463】
技法の最初のグループは主観的技法と呼ばれる。主観的技法では、データを患者の皮膚18050から収集し解析して、完成した患者インターフェース・デザインパッケージが製造に送られる(
図18A)。大きな空白のコンポーネント18010を修正して、残りの部分18014が要求するカスタムコンポーネントを形成するように余分の材料18012を取り除く。いくつかの実施例において大きな空白のコンポーネント18010は、カスタムコンポーネント18014に対して最も可能性のある変動を包含するのに十分に大きい。減法技法のもとにおけるいくつかの方法は、CNCマシンを使って大量のブロックまたは患者インターフェース形状の材料からコンポーネントを形成する機械加工を含む。ある場合には、機械加工に先立ちシリコンまたは熱可塑性エラストマーのような材料を冷凍して堅い構造にする。レーザーエッチング機を使用して材料の大きいブロックから材料を除去してコンポーネントを創る。これは堅いコンポーネントを形成したり、または薄い材料(発泡体、織物、シリコンシートなど)を切断するのに使用できる。研磨性化学品も使用して、材料を除去し、コンポーネントに異なる仕上げを創る。いくつかの実施例は、プラスチックにアセトンを使用する。
図18Bに示す切削工具18060も使用して、材料18070のシートからコンポーネント18072、18074、18076を根絶する。このようにゲルコンポーネント18072、シリコンコンポーネント1804および発泡体コンポーネント18076をシートのタイプを替えて形成する。この技法は、例えばヘッドギアおよびシーリングエレメンツを創るのに使用できる。さらに、切削工具18060は三次元形状を形成する湾曲した刃先18062を有する。
【0464】
技法の第2のグループは追加技法と呼ばれる。これらにはプラスチックまたはシリコンのコンポーネントを直接印刷するSLS/SLA/FDM印刷を含み、減法製造からの廃材を低減する。コンポーネントは高品質三次元プリンターを使用して印刷される。硬化の速いシリコングレードを使用して、シリコンコンポーネントも追加技法によって組み立てられる。シリコンおよびエラストマー印刷機も使用される。利用可能な場合は、患者も自分の患者インターフェースを自宅でまたはローカルの三次元プリンターアウトレットで印刷できる。この方法は、ブランク材からの廃材またはスクラップがほとんど出ないので、効果的かつ実質的である。繊維吹き付けも可能である。例えば、起毛材料(フェルト、シルク、混紡)も中間コンポーネントに吹き付けてシーリング材料を効果的に創る。いくつかの実施例において、材料を多軸CNCノズルで吹き付けて、のり/結合剤と混合する。このようにシーリング面のすべてまたは一部に様々な数の層を適用してカスタム・シーリングエレメントを形成する。
【0465】
さらに、マスクアセンブリーのコンポーネントに異なる製造技法が使用できる。例えば、カスタム・鼻孔カバーを形成する場合、フレームとシーリングエレメントは、同じまたは異なる技法で形成できる。さらに複数の技法を使用して、カスタム・鼻孔カバーの一コンポーネントを形成する。
【0466】
フレーム17000は例えば、異なるサイズの成形ブランク材を機械加工して形成する。少なくともいくつかの実施例において、複数の異なるサイズのブランク材を成形して広範囲のサイズをカバーする。データ取得後に意図するマスクのデザインに最も近いブランク材を選択し、そのブランク材を機械加工する。代案として、サイズ確率を使用して、多数の異なるサイズのフレームを成形し、各サイズにつきある量を成形し、最も近いサイズのフレームをある患者に選択する。
【0467】
非伝統的な機械加工技法を適用してブランク材を成形または切断、フレームおよび/またはシーリングエレメントを形成する。これらの技法には放電加工、化学エッチング、水ジェット切断および/またはレーザー切断が含まれる。放電加工では、フレームまたはシーリングエレメントのようなコンポーネントの複雑な幾何形状を高解像度で処理できる。放電加工を使用して、加工物に直接接触しないように繊細なエレメンツに清潔な表面仕上げを形成する。いくつかの実施例において、放電加工を使用してベントホールまたはリジダイザー受け入れスロットをフレームの中に創る。化学エッチングも使用して材料を実質的に取り除き、高い解像度のカスタム・幾何形状をフレーム中および/またはシーリングエレメントに創る。ある実施例では、コンポーネントの熱で影響されたゾーンを損傷することのある高熱の必要性がないので、フレームおよび/またはシーリングエレメントの脆弱なエレメンツの製造に化学エッチングが望ましい。水ジェット切断を使用してフレームおよび/またはシーリングエレメントを、高解像度の複雑な幾何形状を作る熱の影響を受けたゾーンの無い簡単なプロセスで形成する。レーザー切断を使用して、フレームおよび/またはシーリングエレメントに適した種々の材料から正確なエッジおよび切り込みを創る。
【0468】
さらに、シーリングエレメントを高速砥石切断工具で加工して、所望の形状に形成する。少なくともいくつかの実施例において、ミーリングプロセスに先立ちシーリングエレメントを冷凍する。その後必要ならシーリングエレメントを解凍するかまたは室温まで加熱する。複数の技法を順番にまたは連続して使用できることが理解されよう。
【0469】
5.11.10 ツーリング
積層造形より効果的なカスタマイズコンポーネント製造には、成形型を速やかに試作できる(例えば、三次元プリンター)。いくつかの実施例において、急速三次元印刷されたツーリングは、コスト効率の良い低容量の製造法を提供する。アルミおよび/または熱可塑性物質の樹脂型も可能である。樹脂型は鋼のツールと比較して成型部品の数が少なく、コスト効率が良い。
図18Cに示すように、機械18500を使用して樹脂型18502を創り、コンポーネント18504を成形する。使用後は樹脂型18502を溶かしてよく、リサイクルして異なるカスタマイズ患者インターフェースの製造のために異なる形状に作り替える。
【0470】
鋳型もカスタマイズコンポーネントの製造時に使用される。好ましい容量を生産する場合は、鋳型が望ましい。鋳型は成形/機械加工の間に使用する種々のグレードの鋼またはその他の材料でできている。製造プロセスは、高速試作、患者インターフェースの任意のコンポーネントを作る樹脂型および鋳型の任意の組み合わせの使用を含む。ツールの構造はツールそのものの中でも異なり、例えば下記のようなタイプの任意またはすべてのタイプのツーリングを利用する:ツールの半分、パーツのより包括的な特徴を画成し、鋳型から作られ、一方カスタマイズコンポーネントを画成するツールの半分は敏速試作または鋳型から構築される。金型と樹脂型の組み合わせも可能である。
【0471】
図18Dは変更可能なツールインサートを使用した製造の追加の例である。この方法では、堅い鋼の(または射出成型用のその他の適当な硬い材料)ツールベースが形成される。
図18Dにおいて2つの部分18510と18512が硬いツールベースを形成する。交換可能なツールインサート18522、18524、8526は例えばアルミまたは三次元印刷されたプラスチック材料を使用して形成され、それぞれのインサートが患者の異なるニーズに対応する。インサート18522、18524、18526は個々の患者用にカスタマイズされる。代案として、異なるインサートが患者インターフェースの異なるセクション、例えば鼻梁、口の幅、患者インターフェースの深さなど、を制御するように複数のインサートを同じツールに連結する。
【0472】
その他の製造技法は、同じコンポーネント内で異なる材料を有する患者インターフェースのためにマルチショット射出成型も含む。例えば、患者インターフェースクッションは、患者インターフェースの異なる領域で、異なる材料または材料の柔らかさのグレードを含む。プラスチックのシートを加熱し、そのシートをツールの鋳型上に真空引きし、それが鋳型の形状を呈するまでシートを冷却する熱成形(例えば、真空形成)も使用される。これはカスタム・鼻孔カバーのコンポーネントを成形する可変の選択肢である。さらなる形態において、最初に可鍛性のある材料も使用され、カスタム・患者インターフェースのフレーム(またはヘッドギアまたはその部分、リジダイザーのような任意のその他の適切なコンポーネント)を製造する。患者の‘雄型’もここに記載の1つまたはそれ以上の技法を使用して製造される。この可鍛性の‘テンプレート’コンポーネントを置いて、そのコンポーネントが患者に合うように成形する。次にカスタマイズされたコンポーネントを‘硬化’させて、もはや可鍛の状態にならないようコンポーネントを凝固する。このような材料の1例は、ある特定の温度に達するまで最初は可鍛ユニットで(その後不可逆的に硬化する)熱硬化性重合体、またはある特定の温度以上で可鍛になる熱硬化性プラスチック(これも熱可塑性と言う)である。カスタマイズされた織物/編物/成形も使用される。この技法は、プラスチックの代わりに糸を使うことを除けば三次元印刷プロセスと同じである。繊維コンポーネントの構造は任意の三次元形状に編み上げることができ、これはカスタマイズされたヘッドギアの組み立てに理想的である。
【0473】
次の表Aはいくつかの可能性のあるコンポーネントと製造コンポーネントの例示である。これらの組み合わせは単なる例示であり、これらの組み合わせのバリエーションも可能であることが理解されよう。
【0475】
5.11.11 典型的な実施態様
次の表Bは、カスタム・呼吸患者インターフェースのいくつかの典型的な実施態様の例示である。この場合もやはりこれらの組み合わせは単なる例示であり、これらの組み合わせのバリエーションも可能であることが理解されよう。
【0477】
表Bの実施態様A−Kは、患者インターフェース1900A−Kを例示した
図19A−Kに対応している。
図19Aにおいて、患者インターフェース19000Aは3つのカスタマイズコンポーネント、フレーム19001、中間構造19002およびシーリングエレメント19003を含む。この例においてフレーム19001は患者の顔の造りに基づいてカスタマイズされ、修正して快適さと安定性を最大限にし、しかもパーツのサイズを最小限にしている。この幾何形状は、取得した三次元面データで殆ど作られる。またフレームデザインへの入力は、チューブ/エルボーのタイプと位置、ベントの位置/タイプ、色などの患者の好みの入力による。中間構造19002もカスタマイズして、患者の顔の造りを幾何形状的にもまた間質的にもある程度微調整できる、カスタマイズされた幾何形状または材料塑性を提供する。中間構造19002のカスタマイズは、三次元モデルと二次元圧力マップの両方で行われる。シーリングエレメント19003もカスタマイズして、信頼性の高い快適なシールを達成するのに必要なマクロ調整を提供する。このような微調整は、リラックスした状態と変形状態の差(例えば、使用中の大きい撓み/動きの領域を説明する軟材料の厚い領域)を明らかにするためのものである。データ収集技法と上記のアルゴリズムを使用して患者インターフェース19000Aを創ることができる。
【0478】
図19Bの患者インターフェース19000Bは、標準シーリングエレメント19003Sを使用していることを除けば、全般に患者インターフェース19000Aと同じである。この実施態様において、シーリングエレメント19003Sはエラストマーの標準の薄い層、発布体、ゲルおよび/または粘着性の材料で、望ましくない態様でしわにならず/変形しないように中間コンポーネントに容易に取り付けられ、そして各カスタム形状に容易に切断できる。
【0479】
図19Cの患者インターフェース19000Cは標準の中間構造19002Sを使用していることを除けば、全般に患者インターフェース19000Bと同じである。この実施態様において、異なる人体計測範囲に適合しており、従来の患者インターフェースに見られる領域に似た、オフセットと整合のゾーンを提供する、いろいろなサイズの標準中間コンポーネントが使用される。患者インターフェース19000Dは、カスタマイズされたフレーム19001およびシーリングエレメント19003(
図19D)を持った標準化された中間構造19002Sを含む。患者インターフェース19000Eにおいて、シーリングエレメント19003のみカスタマイズされ、一方フレーム19001Sと中間構造19002Sは標準化されている(
図19E)。この実施態様において標準化されたフレーム19001Sは、中間構造19002Sのいくつかのサイズの一部またはすべてとインターフェースをとることのできるいくつか利用できるサイズを含む。一方この実施態様は主として標準化されたフレーム幾何形状を参照するが、ユーザはそれでもベントまたは色またはチューブのタイプ/位置について入力できる。
【0480】
図19Fの患者インターフェース1900Fにおいて、中間構造19002のみカスタマイズされ、一方標準化されたフレーム19001Sとシーリングエレメント19003Sが提供される。中間構造19002は、個々の顔の幾何形状に合わせるために適当なオフセット機能、適合領域およびカスタマイズされたマクロおよびミクロ調整を提供する領域が提供でき、このようにしてシーリング層を取り付けることのできる安定したそして快適なカスタム・プラットフォームが可能になる。この例において中間構造19002とシーリングエレメント19003は、単一であるが2つの異なる材料でできたピースとして患者に提供できる。標準化されたフレームをインターフェースする中間構造19002の表面は、フレームの固定を可能にする幾何形状とすることができる。これは、患者データによるカスタム表面から要求される標準表面への表面のブレンドによって達成できる。1つのバリエーションにおいて患者インターフェース19000Gは、シーリングエレメント19003Sがこの実施態様において(
図19G)カスタマイズされていないことを除けば、患者インターフェース19000Fと同じである。もう1つのバリエーションにおいて、患者インターフェース1900Hは統一された中間構造とシーリングエレメント19012(
図19H)を含む。統一された中間構造とシーリングエレメント19012は、単一の材料で成形するかまたは異なる材料でマルチショット成形されるかまたは単一または複数の材料を使用して積層造形で成形できる。このように統一された中間構造とシーリングエレメント19012は、1つとしてデザインされ製造された単一のコンポーネントとして成形され、標準または以前から存在するフレーム19001Sに取付けられる。患者インターフェース19000Iは、標準化されたシーリングエレメント19003S(
図19I)を有するカスタマイズされた統一フレーム/中間構造19011を提供する。
【0481】
図19Jにおいて、患者インターフェース19000Jはカスタマイズされたフレーム19001および標準化されたシーリングエレメント19003Sを有して形成される。この実施例では中間構造が除かれている。代わりにカスタマイズされたフレーム19001がフレームと中間構造の両方の機能を果たす。最後に、完全にカスタマイズされた単一のコンポーネント19100患者インターフェース19000Kが
図19Kに示されている。単一のコンポーネント19100は単一の材料(例えば、Mirage FX, Nano)または上記の任意の材料の組み合わせで形成される。いくつかの形態において、患者インターフェース19000Kは外注金型において単一の材料で一度に形成される。代案として、患者インターフェース19000Kは、複数の材料を使用して、外注金型でマルチショット射出成形で、または複数ヘッドFDMまたは複数材料感光性樹脂版印刷または類似のいずれかを使用する、異なる特性の三次元印刷を有する複数の材料を含む急速製造技法によって直接製造される。
【0482】
5.11.12 配分4700
患者に最良の恩恵を提供し、例えばカスタム鼻孔カバーに関して述べたように、フレームとシーリングエレメント間で適切なシーリングが確実に達成されるように、マスクに関する情報を中央サーバーに記録し保存できる。このような情報は、患者がオンラインアカウントを開き、患者のプロフィールを創った時に入力でき、最初の顔の幾何形状のスキャンに関するデータ、デザインされたカスタムマスク幾何形状、個人の審美性の好みまたは流れ発生器の好みなどを含む。オンラインアカウントは患者のカスタムマスク情報が保持でき、従ってプラットフォームの役目を果たすことができ、ここでは現在の患者の顔の幾何形状のようなカスタムマスクの詳細が更新でき、さらに患者が自分のカスタムマスクをさらに発注でき、従って自分のカスタムマスクの利点を最適化し、好ましい治療に関するその患者のコンプライアンスを維持するプラットフォームの役目を果たす。
【0483】
このオンラインアカウントに従って、患者ID番号またはシーケンス(例えば、バーコード)をその患者に割り当てることができる。患者ID番号はカスタムマスクに貼り付けて製品の識別を行って、返却、最適化などのためにそれぞれのマスクのオーナーを突きとめることができる。マスク製品を個人で購入する患者には、ID番号またはシーケンスをスキャンして、伝統的な小売店またはオンラインで注文できる。少なくともいくつかの例において、ID番号またはシーケンスは少なくともバーコードシーケンスまたはパッドに印刷された記号(数字、アルファベットなど)、三次元カラー印刷またはマスクコンポーネントに印刷された幾何学的印刷のうちの1つを含む。無線周波数IDチップもマスクに埋め込むことができ、これは三次元印刷埋め込みまたは製造後に挿入される。さらに、カスタマイズされたマスクコンポーネントの物理的なコピー(例えば、フレーム)を保存して、後で補充が必要な場合にスキャンする。
【0484】
5.12 その他の注記
本特許文献の開示の一部は、著作権保護にあたる事項を含んでいる。著作権の所有者は、特許庁の特許ファイルまたは記録にそれが載っている限り、誰かが特許文献または特許の開示をフクシミリ複製することについて異議を唱えることはない。載っていなければ、何であれ著作権を留保する。
【0485】
文脈で明確に記載されていなければ、また値の範囲が記載されていなければ、それぞれの介在する値は、その範囲の上限と下限の間で、下限の単位の1/10まで、および記述された範囲の任意のそのほか、記述されたまたは介在する値は、該技術に包含される。これらの介在範囲の上限と下限は、記載された範囲における任意の具体的に除外される限界を条件として、介在範囲に独立に含めてよく、本技術の範囲内に包含される。記述した範囲が一つまたは両方の制限を含む場合、これらの含まれた制限のいずれかまたは両方を除いた範囲も該技術に含まれる。
【0486】
更に、一つまたはそれ以上の値が、技術の一部としてここに組み込まれていると記載されている場合、特記のない限り、このような値は近似することができ、実際的な技術の実装が許容するまたは必要とする範囲まで、このような値は、任意の適当な有意桁まで利用できることを理解されたい。
【0487】
特に定義されていない限り、本明細書で使用するすべての技術的用語および科学的用語は、この技術が属する当業者の一人によって共通し理解されるのと同じ意味を有している。ここに記載のものに類似または同等な任意の方法また材料も、本技術の実践またはテストで使用できるが、限られた数の例示的方法と材料がここに記載されている。
【0488】
特定の材料がコンポーネントを構築するのに使用されると確認された場合、同様の特性を有する明らかに代替の材料を代替えとして使用できる。さらに、それとは反対に特記のない限り、ここに記載の任意、そしてすべてのコンポーネントは製造が可能と理解され、それによって一緒または別に製造することができる。
【0489】
本明細書と付属の請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈で明確にそうではないと記述されていない限り、複数形を含むことに留意すべきである。
【0490】
ここで言及したすべての刊行物は、これら刊行物の主題である方法および/または材料を開示かつ記述するために参照のため取り入れられた。ここで議論する刊行物は、それらの開示の目的で、本出願の出願日に先立ち提供された。ここに記載のいずれも、本技術が先行発明の理由でこのような刊行物に先行する権利を与えられたと解釈できない。さらに記載の公開日が実際の刊行日と異なるかもしれず、それぞれ単独で確認する必要がある。
【0491】
さらにこの開示を解釈する場合、すべての用語は文脈に一致した最も広範で合理的な態様で解釈すべきである。特に語句「comprises」と「comprising」は、エレメント、コンポーネントまたはステップを参照すると非独占の態様で解釈して、参照したエレメント、コンポーネントまたはステップが、存在するかまたは利用されるかまたは明示的に参照されていないそのほかのエレメント、コンポーネントまたはステップと組み合わされるとすべきである。
【0492】
詳細な説明で使用される件名は、読者の参照を容易にするためのみ含まれており、開示または特許請求の範囲にわたって見出される主題を制限するために使用してはならない。主題の見出しは請求項または請求項の制限の範囲を解釈するのに使用してはならない。
【0493】
本明細書に記載の技術は特定の実施例を参照して記述してきたが、これらの実施例は該技術の原理と適用の単なる例示であることを理解されたい。場合によっては、用語および記号は、該技術を実践するのに要求されない特定の詳細を暗示することがある。例えば、「第1の」および「第2の」という語句が特記のない限り使用されるが、それらは任意の順序を示すことを意図せず、はっきりと異なるエレメンツを区別するために使用できる。さらに方法論におけるプロセス・ステップは順に記述または例示されてもよいが、このような順序は必要とされない。当業者は、このような順序が修正されてもよいおよび/またはそれらの特徴が同時または同期的に実施されてもよいことを認識するのであろう。
【0494】
従って、例示的な実施例に多数の変更が行われてもよく、該技術の趣旨および範囲から逸脱することなくそのほかの配置が考案され得ることを理解されたい。
前記フレームアセンブリーが、ヘッドギアと連結するリジダイザーアームを受け入れる複数のスロットを含む、請求項4〜7の何れか一項に記載の患者インターフェース。
前記位置決め安定化構造が、患者の顔の縦軸に関して約1mm乃至約30mmの横方向の皮膚のずれを補償するように構成されている、請求項12に記載の患者インターフェース。
前記位置決め安定化構造が、それぞれ最大で約9mmと約4mmの鼻の端と中位の上方への動きを補償するように構成されている、請求項12に記載の患者インターフェース。
前記位置決め安定化構造が、第1の状態と第2の状態は約1mm乃至約10mm離間されている、第1の状態から第2の状態への頬のふくらみを補償するように構成されている、請求項12に記載の患者インターフェース。
前記位置決め安定化構造が、第1の部分と第2の部分を含み、前記第1の部分と前記第2の部分は10ニュートンまでの力を位置決め安定化構造のある部分にかけた時、前記第1の部分と前記第2の部分は前記シーリングエレメントが患者の顔との接触を維持すべく、摂動を補償するように構成されている、請求項12〜17の何れか一項に記載の患者インターフェース。
前記位置決め安定化構造が第1の部分と第2の部分を含み、前記位置決め安定化構造に10ニュートンまでの力をかけた時、弾性材料を有する前記第1の部分と前記第2の部分の少なくとも1つが、前記シーリングエレメントが患者の顔との接触を維持すべく、摂動を補償するように構成されている、請求項12〜19の何れか一項に記載の患者インターフェース。
前記位置決め安定化構造が、第1の部分と第2の部分を含み、通路部分が前記第1の部分に連結され前記第2の部分と同延で、前記第2の部分が通路部分に沿って転換されることができる、請求項12〜19の何れか一項に記載の患者インターフェース。